JP2007329694A - 無線通信システムおよび無線通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 SDMAを用いて複数の親機と複数の端末が同時に通信を行うシステムにおいて,SDMAを用いて同時に送信される複数のフレームの送信に要する時間に差がある場合の通信容量および通信品質を向上させる。
【解決手段】 SDMAを用いて親機と複数の端末が同時に通信を行うシステムにおいて,SDMA伝送時の各端末宛てのフレーム生成に用いられる送信パラメータを,同時に送信される他のフレームの送信に要する時間を参照して調整し,フレーム送信時間の差を小さくする。
【選択図】 図3

Description

本発明は無線通信システム,および,無線通信装置に関わり,特にSDMA(空間分割多元接続)を用いる無線通信システム,および,無線通信装置にかかる。
無線通信においてマルチユーザーアクセスを実現するための様々な多元接続方式が知られている。SDMA(Space Division Multiple Access:空間分割多元接続)は周波数利用効率向上を目的とした多元接続方式で,複数のアンテナを用いて空間的に分離された伝搬路を形成する事により,同時に同一の周波数を用いて多元接続を行う。近年ではMIMO(Multiple-Input Multiple-Output:多入力多出力)無線通信技術の発展により,MIMOによる空間多重無線通信技術を複数ユーザ接続を含む形へと拡張した技術も公開されている。図1はSDMAを用いた無線通信システムの概略図を示している。図1はアクセスポイント(AP)101とu個のユーザ端末(UT)102−1〜102−uがSDMAを用いて通信を行うシステムを示している。このようなSDMAを実用化した例として特許文献1を示す。
米国公開公報US2004/0252632A1
無線通信方式の一つとしてパケットモードでデータ通信を行い,時分割方式を用いてチャネルを共用する方式がある。例えばアクセス制御方式としてCSMA/CA(衝突回避機能付きキャリア感知多元接続)を用いる無線LANの標準規格であるIEEE802.11は前記の方式に該当する。この無線通信方式では一塊のデータであるパケット(もしくはフレーム)を単位としての送受信を行う。パケットは可変長のデータサイズを有し,データの送信を行う端末は一パケットの送信終了までチャネルを占有し,送信終了後に他の端末へチャネルを開放する。
前記の時分割で無線リソースを共有するパケット通信システムにSDMAを適用すると,複数の空間パスを用いる事により1つの周波数チャネル占有時間上で複数の端末がチャネルを共用する事が可能であり,システム全体の通信容量を向上できる。
しかし,単純に前記の時分割でパケット通信を行うシステムにSDMAを適用すると十分な通信容量の向上が得られない場合が生じる。先に述べたようにパケットは可変長のデータサイズを有しており,一般に異なるパケットではデータサイズが違う。また,同一のサイズを有しているパケットでも,可変伝送レート機能を有する通信方式では,伝送レートによってパケット送信に要する時間長が大きく変わり得る。前記の送信に要する時間の異なる複数のパケットをSDMAで送信する際には,送信時間の短いパケットに割当てられる空間パス上では,パケット送信終了後もチャネル(周波数,時間軸方向のリソース)は占有されており,空間パスの一部のみが空き無線リソースとなる。空間的に分離されたパスはアンテナの組み合わせ毎に異なるので,この空き無線リソースを使用できるのは,前記のパケット送信を終えた端末間の通信のみとなる。また,時分割複信(TDD)を用いるシステムでの送受の切り替えや,時分割多元接続(TDMA)を用いて複数端末との接続切り替えを行う際には,同一のチャネルを用いて通信を行っているデータストリームの中で最も送信時間の長い通信が終了するまで,他のSDMAを用いて同時に通信を行っているデータストリーム上で待ち時間が生じる。この空き時間を有する空間パスを用いて通信を行うデータストリーム上では,本来達成可能な通信容量に対して通信容量が低下し,空き時間に起因して遅延が増加し得る。さらに,TDDを用いて,1パケット送信毎に受信確認応答(ACK)を要求するシステムにおいては,前記空きリソースは大きな通信容量の低下の要因と成り得る。
アップリンクとダウンリンクのパケット通信を時分割方式で行う通信システムにおけるSDMA伝送時の例を図2に示す。図2ではAPから2つのUTへSDMAを用いてData1,Data2を送信している。このときSDMA伝送に要する時間はData1の送信時間長t1により決められ,UT2へのデータストリーム上では空き時間t3=t1−t2が発生している。つまりUT2へのデータストリーム上では本来はt2時間で送信できるデータ量をt1時間使用して送信している事になり,本来の通信容量を達成できない。
本発明の目的はこの様な空間パスのロスの発生を抑制し,通信品質(通信容量)を改善する手法を提案する事にある。
本発明は上記課題を考慮してなされたもので,APと複数のUTの間でSDMAを用いて複数の異なるパケットを送信する際に,同時にSDMAを用いて伝送される複数パケットの送信に要する時間長を基に,各パケットの送信に用いられる送信パラメータを調節する事により,前記複数の異なるパケットの送信時間長を近づけ,好適な通信特性を提供する。
本発明の第1の特徴は,複数のアンテナを有するAPから少なくとも一つのアンテナを有する複数個のUTへSDMAを用いてそれぞれ異なるパケットを送信する無線通信システムであって,SDMA伝送に用いる伝送路品質を推定する手段と,推定された伝送路品質から伝送レートを決定する手段とを有し,決定された伝送レートからSDMA伝送する複数の異なるパケットの送信に要する送信時間を推定する手段を有し,前記推定された送信時間に基づいて各パケットの送信に用いる送信パラメータを決定する手段を有する事を要旨とする。
本発明の第2の特徴は第1の特徴を備えた無線通信システムであって,パケットの送信のフレーム化に際し,フレームのデータサイズを元のパケットのデータサイズと異なる値に設定し,パケットを複数のフレームへ分割して送信する事を要旨とする。
本発明の第3の特徴は第1の特徴を備えた無線通信システムであって,フレーム生成時の伝送レートを事前に決定された値から,各パケットの送信に要する時間長の差を基に変更する事を要旨とする。
本発明の第4の特徴はフレーム生成時にデータサイズと伝送レートの両方を変更する事を要旨とする
本発明の第5の特徴は第3の特徴を備えた無線通信システムであって,伝送レートの変更は送信ウェイトの変更もしくは受信ウェイトの変更の少なくともどちらか一方により行われる事を要旨とする。
本発明によれば,時分割方式を用いるパケット通信システムにおいて,送信時間の異なる複数のパケットのSDMA伝送時の通信品質を向上させる事ができる。
以下,本発明の実施例を説明する。
以下,本発明の第1の実施例について説明する。図3は本発明の実施例である無線通信システムを表している。図3ではアクセスポイント(AP)101からu個の送信データ201-1~201-uを,ユーザ端末(UT)102-1〜102-uに向かってSDMA伝送を用いて送信する場合を示している。図3では本発明の説明用に実際のAP, UTを簡略化して示している。以下では説明の便宜上,無線端末内で,決定された送信パラメータを基に規定のフォーマットに従って再パッケージされるパケット202-1〜202-uをフレームと呼ぶ。
図3のAPは送信フレーム制御部105と送信信号生成部106を備える。送信フレーム制御部は複数の端末宛のパケットを送信Txバッファ204から読み出し,送信信号生成部へフレーム生成方法を指示する送信パラメータを指示し,送信されるパケットを構成するデータビット列に制御情報ビットを加えて送信信号生成部へ供給する。送信信号生成部は受け取った送信パラメータと送信データビット列を基に,通信方式上必要な付加ビットや受信信号の復元時に必要となるヘッダ情報を加えて送信フレームを生成する。送信信号生成部ではさらに,フレームを構成するビット列を送信信号へマッピングした後,送信信号処理を行い,無線信号に変換して送信アンテナ103−1〜103−mから伝送する。
図3の受信端のUTでは受信信号復元部で受信した無線信号をビット列として復元し,受信フレーム制御部に受け渡す。受信フレーム制御部では受信データビット列をヘッダ情報や付加ビットを基に解析してパケットを復元して受信データ203-1〜203-uを取り出し受信Rxバッファ205へ受け渡す。APの送信信号処理では,並行して送信される複数のUTへの送信信号が,受信端である各UTにおいて他のUT宛ての信号と分離可能な状態となるようにSDMA処理が施される。一つのアンテナを有するUTや,複数のアンテナを有するが,複数のアンテナで受信した信号を用いて受信信号処理を行なう機能を有していないUTに対しては,アンテナ端104において送信信号が分離可能な状態となるように,送信側でのSDMA処理を行う。複数本のアンテナを持ち,複数のアンテナで受信した信号を用いて受信信号処理を行なう機能を有するUTに対しては,並行して送信される送信信号がアンテナ端において分離可能な状態でなくても,受信信号処理によって分離できる状態であれば良い。APでのSDMA処理はAPとUT間の伝送路情報に基づいて行われる。伝送路情報は,APとUTの間で通信される既知信号から推定されるか,若しくは,UT側で推定された伝送路情報をAP側へ通知することによって行われる。
図4は本発明の実施例である無線通信システムの送信信号生成部106と受信信号復元部107のブロック図を示している。送信信号生成部では送信ビット列の送信信号へのマッピングとSDMA送信信号処理を行う。送信信号生成部ではまず送信フレーム制御部より渡されたビット列を送信信号へとマッピング116する。SDMA送信信号処理はマッピングされた送信信号と制御部より指示された送信ウェイトベクトルV1〜Vuの乗算109を行い,複素振幅を変化させて送信アンテナ103-1〜103-mへ分配した後,コンバイナ110で合成を行う。通信方式が可変伝送レートをサポートする場合には,116でのビット列のマッピング時に,送信フレーム制御部から指示された伝送レートに基づいて1次変調を行っても良い。合成後は変調器111により変調,アップコンバージョンされた後,増幅器で信号強度を上げてアンテナから放射する。受信信号復元部は少なくとも一つのアンテナを備えており,複数本アンテナ104-1〜104-kを有する受信信号復元部は受信信号を復調器112で復調した後,複数のアンテナで受けた信号を分離・合成する受信信号処理部113で処理し,受信信号を取り出す。一つのアンテナを有するUTや,複数のアンテナを有するが,複数のアンテナで受信した信号を用いて受信信号処理を行なう機能を有していないUTはアンテナで受けた受信信号を復調器で復調し受信データを取り出す。可変伝送レートをサポートする場合には,復調されたヘッダ情報を基に復調方式を決定しても良い。
送信フレーム制御部から送信信号生成部へ渡される送信パラメータは,例えば、送受信のタイミングやフレームのデータサイズ,伝送レート等、送信フレームの時間長を決定する要因に関するパラメータである。また,送信信号生成部での送信信号の変調に必要な,伝送レートやSDMA処理に必要な送信ウェイトベクトルの値は送信フレーム制御部も有している事が望ましい。送信フレーム制御部が伝送レート,送信ウェイトベクトルの値を有する場合には,これらのパラメータは送信フレームを構成するビット列と共に送信信号生成部へ渡される。送信フレーム制御部では各UT宛のパケットを受け取り,それらパケットに対応する送信フレームの伝送レートおよびデータサイズを任意に決定する事ができる。通常の場合,フレームのデータサイズは送信パケットのデータサイズと同じ値が選ばれるが,パケットが一定以上のデータサイズを有する場合は,一つのパケットを複数のフレームに分割して送信する事が可能である。また各フレームの伝送レートは,SDMAで複数のUT宛のフレームを並行して送信する際には,各UTとAPの間の伝送路行列から求められる伝送路の品質に基づいて決定する事で最も効率の良い伝送が可能である。但し,先に述べたように,一般にパケット通信方式では,同時に伝送される複数フレームの送信時間長の違いから,伝送路品質に基づいて決定された最適な送信方法でも効率の良い伝送を行えるとは限らない。
そこで本発明の送信フレーム制御部ではSDMAを用いて同時に伝送される各フレームの送信時間長をパケットのデータサイズと伝送レートから推定し,送信時間長が異なる場合には,最も短い送信時間長との送信時間長の差に基づいて,前記複数のパケットを複数のフレームへと分割して送信する機能を備える。データサイズはパケットのヘッダに記載されているものを用いればよい。伝送レートはAPがフレームを送信する際に伝送路情報を基に決めるか,アプリケーションからの指示や以前の送信に用いた伝送レート等事前に決められたものを用いて求めることができる。パケットの分割は送信フレーム制御部で送信信号生成部へ供給される送信データ長のパラメータを変更し,パケットが分割されている事を示す情報をヘッダに記載する事により実現できる。また,パケットの送信データサイズが大きくなったときにパケットの分割(フラグメント)を行うためのフラグメントデータサイズを,最小の送信時間長を基に動的に変化させる事により,他の同時に送信される全パケットを複数のフレームに分割して送信する事も可能である。
図5に本発明の無線通信システムで用いられるフレーム構成を示す。図5では実際に使用されるフレーム構成を説明のために簡略化して示している。本発明の送受信機を用いた通信では,送受信のタイミングを決定するためのパケットの送信時間長に該当するパラメータが必要であり,送信時間長を導出するのに必要な情報を含むフレーム構成ならば図5に記載されていないフレーム構成を採用する事も可能である。また,パケットを分割する手法を用いる場合にはパケットが分割されている事を示すパラメータも必要となる。図5のフレーム構成では,ヘッダ情報に伝送レートとフレームデータ長が記載されており,これらのパラメータからフレームの送信に要する時間を求める事ができる。また,図中の分割という部分は,パケットが分割されている事を示す情報である。この分割情報としては,単に分割されている事を示すだけのものでも,該フレームに続くフレームが分割された残りフレームである事を示すものでも良い。また,本発明のシステムでは送信時間長の異なるデータを複数同時に伝送するため,受信確認応答(ACK)などの制御フレームの送信タイミングが任意に変更できない無線通信システムにおいては,これらの制御フレームの送信タイミングを遅延させる事のできるオフセット情報がヘッダ部に記載されている事が望ましい。但し,本発明の手法により,パケット送信時間長を厳密に制御し,APでUTから送られる複数の信号を分離受信する事により,オフセット情報がない場合でも通信を行う事が可能である。
図6は,図2と同じ複数のパケットの送信に,本発明の第1の実施例を用いた場合のフレーム送受信タイムチャートを示している。ここではUTが2つの場合を示しているがUTが3つ以上の場合でも本発明を適用する事ができる。図6のData 1-1とData 1-2は図2中の1つのパケットData 1を分割して生成されたフレームであり,同時に送信される送信時間長の最も短いフレームData 2 との送信時間長の差に基づいて分割されている。図6に示すように,Data 1を分割し,両者の1フレーム当りの伝送時間を近づけた事により,チャネルを早期に開放する事が可能となり,分割された残りのデータを次のUT1宛てのパケットと同時にSDMA伝送する事により,単位時間当たりの空間パス利用効率が向上している。図6ではData1-2は,新しいUT2宛てのフレームData3と共にSDMA伝送されているが,SDMAを用いないで単体で送信されても良い。またData1-2の送信時には,新しく取得した伝搬行列や伝搬行列の推定値を用いて,以前の送信時と異なる送信ウェイトを用いて伝送する事ができる。また,分割された最初のフレームをSDMA伝送に先立ってチャネル情報要求フレームと共に送信し,その後,取得した伝搬行列を用いて,残りの分割されたフレームを他方の宛先のフレームと共にSDMA伝送しても良い。
時分割で通信を行う無線通信システムにおいて,一回の送信で周波数帯域を占有する時間を1スロット(図6のTxSDMA1、TxSDMA2等)とする。通常,パケットモード通信においては,前記1スロットは送信パケットの送信時間長に等しい。本発明の方法では一つのAPが複数のフレームを並行して送信するため,前記1スロットは前記並列して送信する複数の送信フレームの送信時間長のうち最も長い送信時間長に等しいか、最も長い送信時間長に合わせて決定する。
本発明の第一の実施例である動的にパケットを分割する手法は,使用されていない空間パスが生じる時間を抑える事により伝送効率を上昇させる。但し,この手法では1つのパケットを2つに分割する事により,1パケットのデータペイロード長に対して2つ分のヘッダ情報を伝送しなくてはならない。また,図6に示すように,1送信毎にACKを返すシステムにおいては分割したフレーム送信の間にACKが入るためACKを1回とフレーム間隔の最小値の2倍だけ送信時間が増加する。これは1台のAPと2台のUTが通信を行い,APがACKを一つずつ受け取り,フレームの間隔の最小値を保障する場合であるが,他の場合でも同様に送信時間の増加を見積る事ができる。またパケットの分割数が2つ以上の場合も同様に送信時間の増加を見積る事ができる。従って,トータルスループットの面からは,分割する事による送信時間の増加よりも分割による空間パスの利用効率の向上による効果が大きい状況でのみ分割を行う事が望ましい。つまり,分割の基準となる最小送信時間長Tminと分割により抑制される空間パスの空き時間ΔTが前記の分割による送信時間の増加分dTより大きい事がトータルスループットの面からは望ましい。
図7は分割時の送信時間の増加を考慮した,本発明の第1の実施例のフローチャートを示している。図7の各処理はSDMAを用いて並行に送信する予定の全パケットに対して行う。これらの処理はその後で送信する予定であるバッファ中のパケットに対して行っても良い。図7に示す様にまず,処理301で送信パケットのサイズを確認し,次に処理302で各送信パケットの伝送レートを確信してそのときの送信時間長を求める。基本的には伝送レートとサイズが決まれば送信時間長を推定する事ができるが,厳密な送信時間はパケットのデータサイズだけでなく送信時に追加されるヘッダや通信方式に依存して必要になる付加ビットによっても変わるので,これらの情報を送信フレーム制御部が有していない場合には,送信時間長を送信信号生成部からインターフェース114を通して直接受け取っても良い。処理303では分割の基準となる最小送信時間長Tminを決める。最小送信時間長は,分割基準として採用するために必要な値Ta以上の時間長の中から最小の時間長を選ぶ。もし,全パケットの時間長が条件に該当しない場合は分割を行わない。最小送信時間が決まった後はその時間と各パケットの送信時間から,分割により抑制される空き時間ΔTを求め,これが一定の値以上Tbであったときは該パケットを分割する。それ以外の場合には分割を行わずに送信する。図7中の各処理,判定においてSDMAで送るか時分割で送るかの判定を行っても良い。実際のTminやΔTの決定に用いるTaやTbは,例えば,前記の分割により生じる送信時間の増加dTを基準として,Ta=Tb>1.5×dTと決めれば良い。
分割による送信時間の増加という面だけ見るとTminとΔTの最小値は共にdTを基準とした同一の値となるが,両者は異なる値で良い。実際,TminはSDMAを行う事により生じるオーバーヘッドを含めた値となる事が考えられる。但し,これは時間リソースのみを考えた場合であり,伝送レートの変化やQOS,処理の容易さといった他の側面を考慮して,分割による送信時間の増加ΔTより小さな最小送信時間長を用いた分割や,ΔTより小さな抑制される空間パスの空き時間のための分割が行われても良い。例えば,並行にフレームを送信するUTの中に遅延時間に対する要求の厳しいリアルタイムアプリケーションがあった場合,そのUT宛てのフレーム送信の間隔が大きくならない様に,他の端末宛の送信フレームをTminやΔT,またはトータルスループットの増加量に関わらず分割するといったQOSを用いたフレーム制御が考えられる。また,パケットのデータサイズの最小値は通信方式により決まっており,一定サイズ以下への分割は効果がないので単純に,データサイズが一定以上のパケットに対して上記処理を行うといった制限を課しても良い。
図7の処理301−304は送信フレーム制御部において行われる。パケットを複数のフレームに分割して送信する場合306には、送信フレーム制御部では,ヘッダに分割が行われた事を示すビットを付加し,UTの受信信号フレーム制御部では復調されたヘッダ情報から,パケットが分割されたものである事を判断し,複数に分割された全てのパケットを受信した後にパケットを一つにまとめ,元のパケットを再構築する。
以下,本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、SDMAを用いて同時送信するパケットのうち送信時間長のもっとも短いフレームDataに合わせて他のフレームDataの送信時間長を短縮するための送信フレーム制御を行ったが、第2の実施例では、送信時間長の長いフレームDataにあわせて他のフレームDataの送信時間長を長くする送信フレーム制御を行った。アグリゲーションを行い並列送信されるフレームの送信時間長を調節した場合,1フレームで送信されるデータ量が増加する事になり,送信に掛かるオーバーヘッドがデータ量に対して相対的に減少する事になる。よって,通信容量の面で,パケットを分割する手法に比べて効果が大きく成り得る。但し,本手法ではアグリゲーションするパケットが送信Txバッファに蓄積されている事が前提になる点や,送信パケットサイズの規格上の上限,パケットロス時の通信容量の劣化の程度に注意する必要がある。
図8は図2と同じ複数のパケットの送信に,本発明の第2の実施例を用いた場合のフレーム送受信タイムチャートを示している。図8中のフレームData4はフレームData2のデータパケットと,同じ端末UT2宛てのフレームData3のデータパケットを一つのパケットにアグリゲーションしてフレーム化したものである。フレームData4は本来2つのパケットを一つのフレームへまとめたものであるが,ヘッダにパケットアグリゲーション情報を付加し2つのパケットの境目となる場所を通知するか,もしくは境目に所定の付加ビット列を加える事で分離が可能である。図12に本実施例で用いられるフレーム構成の一例を示す。この受信後のパケット再構築のための付加情報は事前のAPとUT間で行われる手続きにより簡略化されても良い。図8におけるフレームData3のようなUT2宛てのアグリゲーション用パケットは,例えば,図3のAP内のTxバッファ204内にあるパケットの中から選択する事ができる。またアグリゲーションに用いるパケットは他のUT2宛てのパケットを任意の大きさに分割したものから選んでも良い。
本実施例におけるアグリゲーションの基準となる送信時間長はSDMA伝送を用いて同時に伝送されるフレームの中で最も長い時間長を用いる。但し,長いチャネル占有時間は通信システムの品質低下を生じさせる可能性があるため,送信時間長の最大値を設定して,その値以下で且つ送信時間長の長いものを用いる事が望ましい。例えば,SDMAに用いるチャネル情報の信頼性が保たれる時間長を送信時間長の最大値とする事が考えられる。本発明におけるアグリゲーションに用いるパケットのサイズの判定はトータルスループットの面からは,アグリゲーションにより生じるSDMA伝送時の空間パスの空き時間がアグリゲーションにより抑制される空間パスの空き時間よりは小さくなるようにすれば良い。また,単純に図8の場合を例に,アグリゲーション後のフレーム送信時間t4が基準となる送信時間長t1を超えない時間となるようにアグリゲーションするパケットを選択しても良い。但し,これは時間リソースのみを考えた場合であり,伝送レートの変化やQOS,処理の容易さといった他の側面を考慮して,特定のパケットをアグリゲーションの対象からはずすといった処理や,アグリゲーションにより生じるSDMA伝送時の空間パスの空き時間がアグリゲーションにより抑制される空間パスの空き時間より大きくなるようなアグリゲーションが行われても良い。また,送信時間長ではなく合計のパケットのデータサイズが一定の値以下になるように,アグリゲーションに用いるパケットを選択しても良い。
図8における1スロットは、いずれかのUT宛のパケットのアグリゲーション処理後に送信時間長が最長になったフレームに合わせて決定される。
本発明の第2の実施例のフローチャートを図9に示す。図9の処理311のバッファの検索は全バッファ中のパケットを検索せずに一定数のパケットを検索した所で処理を打ち切っても良い。また,フローチャートの各処理や判定を参考に、複数UTへのパケット伝送をSDMA伝送により行うか、時分割により行うかを決めても良い。図9の308−312の処理は送信フレーム制御部で行われる。
処理314で複数のパケットをアグリゲーションしてフレーム送信を行う場合には、送信フレーム制御部では,ヘッダにアグリゲーションが行われた事を示すビットを付加し,2つのパケットの境目となる場所を通知するか,もしくは境目に所定の付加ビット列を加える(図12)。UTの受信信号フレーム制御部では復調されたヘッダ情報から,パケットがアグリゲーションされたものである事を判断し,パケットを複数のパケットに分割し元のパケットを再構築する。もし,アグリゲーションされたデータが他の端末宛てのパケットである場合には,自端末宛のパケットのみを取得し,残りのパケットを廃棄する。
以下,本発明の第3の実施例について説明する。第1、第2の実施例では、パケットの分割またはアグリゲーションにより1フレームで送信するデータ量を変えて送信フレーム長をそろえるようにしたが、第3の実施例では、データの伝送レートを変更することにより送信に必要な時間長を調整して送信フレーム長をそろえる。伝送レートの変更により並列送信されるフレームの送信時間長を調節した場合,フレーム長調節の分解能は通信方式の可変伝送レートの調節量に依存し,また,適切な伝送レートは伝送路品質により決まるため,送信時間長の調節の自由度は実施例1,実施例2の手法に比べて低くなる事が考えられるが,パケットの分離,合成といったデータ通信以外に必要な手続きが不要なため,有効な手段と成り得る。
図10は,図2と同じ複数パケットの送信に本発明の第3の実施例を用いた場合のフレーム送受信タイムチャートを示している。図10では説明のためUTが2つの場合の例を示しているが,本発明はUTが3つ以上の場合にも適用可能である。図10では事前に決定された伝送レートを用いてUT1宛てのフレームData1とUT2宛てのフレームを送信した場合の送信時間長の差を確認し,それぞれのフレームの伝送レートを変更する事によりSDMA伝送で生じる空間パスの空き時間を抑制している。ここでの事前に決定された伝送レートとは,例えばアプリケーションから指示されている伝送レートや以前の送信履歴から継続して使用している伝送レート,もしくは推定された伝送路情報に基づいてトータルスループットを最適化する形で求められた伝送レートである。図10におけるR1はUT1宛てのフレームの伝送レートを,R2はUT2宛てのフレームの伝送レートを示している。図10における前記事前に決定された伝送レートはR2がR1の3倍の値になっている。図10では,本手法を用いて伝送レートを変更した結果,R2とR1の伝送レートが等しくなり,UT2宛てのフレームData2では伝送レートが低下しているため,UT2向けのデータストリーム上の通信容量は低下しているが,空間パスの空き送信時間が抑制されるため,UT1,UT2全体で考えた際のトータルスループットを改善し得る。
図10の例では、1スロットは、送信レートの変更後に送信時間長が最も長くなったフレームに合わせて決定される。
伝送レートの変更は誤り訂正のための符号化率を変更して元データの冗長度を変更したり,割り当て電力を変更して変調多値数を変更したりする事により行う事ができる。また,通信に用いる伝送レートの適正値は伝送路品質により決まるため,APでの送信信号処理を行う際の送信ウェイトを変更して利用する空間パスを変更する事によりさらに適切な伝送レートを選択し得る。
また,複数のアンテナで受信した信号を用いて受信信号処理を行なう機能を有する端末(UTa)が並行してフレームを送信する宛先端末に含まれる場合には,UTaに割当てるストリーム数を変更する事により伝送レート変更する事ができる。例えば,簡単のために1ストリーム当たりの伝送レートを一定とすると,UTaへの割り当てストリーム数を2とした場合とUTaへの割当てストリーム数を1にした場合では伝送レートを2倍変化させる事ができる。このとき,UTaと通信を行うための伝送路品質の許容範囲が大きくなる場合には,他の端末の伝送路品質を改善するような送信ウェイトに変更する事により、システム全体のトータルスループットを改善し得る。伝送レートを変更した場合には、ヘッダの伝送レート情報が変更後の伝送レートと一致するようにヘッダ中の伝送レート情報を書き換えるか、ヘッダ作成に用いるパラメータを変更後のレートと合うように設定するとよい。
本発明の第3の実施例のフローチャートを図11に示す。図11の処理315と処理316により,並行して送信を行う送信フレームの送信時間長を推定し,送信時間長の差による空間パスの空き時間を考慮した通信容量を見積もる。処理317では空間パスの空き時間を抑制する形へ伝送レートを変化させたときの通信容量を推定し,通信容量の増加が一定以上であれば伝送レートを変更してフレームを送信する。伝送レートの変化後に改善される通信品質は通信容量以外にも,例えば,遅延時間やQOSに基づいた特定の端末の通信容量等でも良い。また,フローチャートの各処理や判定を参考に、複数UTへのパケット伝送をSDMA伝送により行うか、時分割により行うかを決めても良い。図11の315−318の処理は送信フレーム制御部で行われる。
SDMAを用いた無線通信システムを示す図である。 従来のSDMA伝送システムを用いたフレーム送受信タイムチャートを示す図である。 本発明の無線通信システムを示す図である。 本発明の無線通信システムの送受信信号処理部を示す図である。 本発明の無線通信システムで用いられるフレーム構成を示した図である。 本発明の第1の実施例を用いたSDMA伝送のフレーム送受信タイムチャートを示す図である。 本発明の第1の実施例を用いたSDMA伝送のフローチャートを示す図である。 本発明の第2の実施例を用いたSDMA伝送のフレーム送受信タイムチャートを示す図である。 本発明の第2の実施例を用いたSDMA伝送のフローチャートを示す図である。 本発明の第3の実施例を用いたSDMA伝送のフレーム送受信タイムチャートを示す図である。 本発明の第3の実施例を用いたSDMA伝送のフローチャートを示す図である。 本発明の無線通信システムで用いられるフレーム構成を示した図である。
符号の説明
101・・・アクセスポイント、102・・・ユーザ端末、103・・・送信アンテナ、104・・・受信アンテナ、105・・・送信フレーム制御部、106・・・送信信号生成部、107・・・受信信号成生成部、108・・・受信フレーム制御部、109・・・乗算器、110・・・積算器、111・・・変調器、112・・・復調器、113・・・受信信号処理器、114・・・送信フレーム制御部と送信信号生成部のインターフェース、115・・・受信フレーム制御部と受信信号生成部のインターフェース、116・・・マッピング及び一次変調実行部、
201・・・送信パケット、202・・・送信フレーム、203・・・受信パケット、204・・・送信バッファ、205・・・受信バッファ、
301〜321・・・処理および判定。

Claims (20)

  1. アクセスポイントがSDMA(Space Division Multiple Access:空間分割多元接続)により複数のユーザ端末とパケット通信を行うシステムにおける無線通信方法であって,
    前記アクセスポイントにおいて、SDMAにより1スロット中に並行してデータ伝送を行う複数のユーザ端末宛の複数の送信パケットの送信に要する送信時間長を推定する第1のステップと、
    前記推定された複数の送信パケットの送信時間長に基づいて,前記1スロット中に送信する前記送信パケットの送信パラメータを決定する第2のステップと、
    前記決定された送信パラメータに基づいて前記1スロット中に前記複数のユーザ端末宛に送信する送信フレームを生成して送信する第3のステップとを有することを特徴とする無線通信方法。
  2. 前記第2のステップにおいて決定される送信パラメータは1送信フレームあたりのパケットのデータサイズであり,
    前記第3のステップにおいて、前記複数の送信パケットの中で少なくとも一つのパケットを複数のデータサイズに分割して前記送信フレームを生成することを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  3. 前記複数の送信パケットの送信パラメータは、前記1スロット中に伝送される送信パケットのうち前記送信時間長が最も短いものを基準に決定されることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信方法。
  4. 前記複数の送信パケットの送信パラメータは、前記1スロット中に伝送される送信パケットのQOS(Quality Of Service)データに基づいて決定されることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  5. 前記分割された送信パケットを含む最初の送信フレームを複数の他のパケットを含む送信フレームと並行してSDMA伝送した後に送信ウェイトを変化させて,前記分割したパケットの残りを含む送信フレームを伝送することを特徴とする請求項2記載の無線通信方法。
  6. 前記第1のステップにおいて、前記送信パケットの送信時間長は、該送信パケットのデータサイズに基づいて推定されることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  7. 前記第2のステップにおいて決定される送信パラメータは、1送信フレームあたりのデータサイズであり,
    前記第3のステップにおいて、前記複数の送信パケットの中で少なくとも一つのパケットは同一の端末宛の他の送信パケットとアグリゲーションを行い送信されることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  8. 前記第2のステップにおいて決定される送信パラメータは、各送信パケットの送信に用いられる伝送レートであり,
    前記第3のステップにおいて、前記複数の送信パケットの中で少なくとも一つの送信パケットは事前に決められた伝送レートと異なった伝送レートを用いて送信されることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  9. 前記第2のステップにおいて、前記複数の送信パケットの送信パラメータの決定は,前記アクセスポイントの送信信号処理における送信ウェイトベクトルの変更,UTの受信信号処理における受信ウェイトベクトルの変更,送信データの誤り訂正符号化の符号化率の変更,変調多値数の変更,変調方式の変更のいずれかによって行われることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  10. 前記第2のステップにおいて、前記複数の送信パケットの送信パラメータの決定は,SDMA伝送で生じる空間パスの空き時間の抑制度,通信システムのトータルスループット,通信システムの最大遅延時間の抑制度のいずれかについて最適化を行う形で行われることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
  11. アクセスポイント装置がSDMA(Space Division Multiple Access:空間分割多元接続)により複数のユーザ端末とパケット通信を行うシステムにおけるアクセスポイント装置であって,
    SDMAにより1スロット中に並行してデータ伝送を行う複数のユーザ端末宛の複数の送信パケットの送信に要する送信時間長を推定し、前記推定された複数の送信パケットの送信時間長に基づいて,前記1スロット中に送信する前記送信パケットの送信パラメータを決定する送信フレーム制御部と、
    前記決定された送信パラメータに基づいて前記1スロット中に前記複数のユーザ端末宛に送信する送信フレームを生成して出力する送信信号生成部と、
    送信信号生成部から出力された送信フレームを前記複数のユーザ端末へSDMAにより送信するアンテナ部とを有することを特徴とするアクセスポイント装置。
  12. 前記決定される送信パラメータは1送信フレームあたりのパケットのデータサイズであり,
    前記送信信号生成部において、前記複数の送信パケットの中で少なくとも一つのパケットを複数のデータサイズに分割して前記送信フレームを生成することを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
  13. 前記複数の送信パケットの送信パラメータは、前記1スロット中に伝送される送信パケットのうち前記送信時間長が最も短いものを基準に決定されることを特徴とする請求項11または12記載のアクセスポイント装置。
  14. 前記複数の送信パケットの送信パラメータは、前記1スロット中に伝送される送信パケットのQOS(Quality Of Service)データに基づいて決定されることを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
  15. 前記送信信号生成部は、前記分割された送信パケットを含む最初の送信フレームを複数の他のパケットを含む送信フレームと並行してSDMA伝送した後に送信ウェイトを変化させて,前記分割したパケットの残りを含む送信フレームを伝送することを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント装置。
  16. 前記送信フレーム制御部は、前記送信パケットの送信時間長は、該送信パケットのデータサイズに基づいて推定することを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
  17. 前記決定される送信パラメータは、1送信フレームあたりのデータサイズであり,
    前記送信信号生成部は、前記複数の送信パケットの中で少なくとも一つのパケットを同一の端末宛の他の送信パケットとアグリゲーションして前記送信フレームを生成することを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
  18. 前記決定される送信パラメータは、各送信パケットの送信に用いられる伝送レートであり,
    前記送信信号生成部は、前記複数の送信パケットの中で少なくとも一つの送信パケットを事前に決められた伝送レートと異なった伝送レートを用いて前記送信フレームを生成することを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
  19. 前記複数の送信パケットの送信パラメータの決定は,該アクセスポイント装置の送信信号処理における送信ウェイトベクトルの変更,UTの受信信号処理における受信ウェイトベクトルの変更,送信データの誤り訂正符号化の符号化率の変更,変調多値数の変更,変調方式の変更のいずれかによって行われることを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
  20. 前記複数の送信パケットの送信パラメータの決定は,SDMA伝送で生じる空間パスの空き時間の抑制度,通信システムのトータルスループット,通信システムの最大遅延時間の抑制度のいずれかを最適化する形で行われることを特徴とする請求項11記載のアクセスポイント装置。
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