JP2007326516A - 電動パーキングブレーキ装置 - Google Patents

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均 戸村
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【課題】 ギア位置スイッチの数を増やすことなく、2つのギア位置スイッチのいずれかの固着故障によりスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置が誤っていても、パーキングブレーキの解除や継続を支障なく行うことができる電動パーキングブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】 クラッチ2とマニュアルトランスミッション3を有する駆動系を備え、パーキングブレーキ作動による停止時、ギア位置が前進または後退と判定され、自動解除条件が成立したとき、パーキングブレーキを自動的に解除する電動パーキングブレーキ装置において、2つのニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36からのスイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置と、エンジン1の駆動力が左右後輪タイヤ8,9へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置と、が一致しないとき、システム故障であると判定する故障判定手段(図3)を設けた。
【選択図】 図3

Description

本発明は、パーキングブレーキ作動時、ギア位置が前進または後退と判定され、かつ、自動解除条件が成立したとき、パーキングブレーキを自動的に解除する電動パーキングブレーキ装置に関する。
従来、電動パーキングブレーキ装置としては、走行エンジンが回転している場合、変速機のギアが入れられ、アクセルペダルが操作され、クラッチペダルを適当に操作することにより分離クラッチが所定の寸法だけ閉じられるや否や、かけられていた駐車ブレーキを自動的に解除するものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
特許第1931402号公報
しかしながら、従来の電動パーキングブレーキ装置を、前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置を、2つのニュートラルスイッチとリバーススイッチのスイッチ信号の組み合わせにより判定する変速機(マニュアルトランスミッション)を搭載した車両に適用した場合、ニュートラルスイッチとリバーススイッチのいずれかがONまたはOFFに固着する故障をすると、変速ギア位置の判定を誤り、パーキングブレーキの作動に支障をきたす可能性があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ギア位置スイッチの数を増やすことなく、2つのギア位置スイッチのいずれかの固着故障によりスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置が誤っていても、パーキングブレーキの作動に支障をきたさない電動パーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、
動力源とクラッチと変速機と駆動輪とを有する駆動系と、
前記変速機の前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置うち、2つの位置を検出するギア位置スイッチからのスイッチ信号の組み合わせにより3つの変速ギア位置を判定するギア位置判定手段と、を備え、
パーキングブレーキ作動による停止時、ギア位置が前進または後退と判定され、自動解除条件が成立したとき、パーキングブレーキを自動的に解除する電動パーキングブレーキ装置において、
前記ギア位置判定手段にてスイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置と、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置と、が一致しないとき、システム故障であると判定する故障判定手段を設けたことを特徴とする。
よって、本発明の電動パーキングブレーキ装置にあっては、故障判定手段において、ギア位置判定手段にてスイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置と、動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置と、が一致しないとき、システム故障であると判定される。
例えば、スイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置が前進または後退位置であるにもかかわらず、動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置がニュートラル位置であるとき、システム故障であると判定される。
そして、システム故障判定に基づき、パーキングブレーキ作動による停止時、パーキングブレーキの自動解除機能を停止することで、パーキングブレーキを作動し続けることができる。
また、例えば、スイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置がニュートラル位置であるにもかかわらず、動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置が前進または後退位置であるとき、システム故障であると判定される。
そして、システム故障判定に基づき、パーキングブレーキ作動による停止時、パーキングブレーキを自動解除することができる。
この結果、ギア位置スイッチの数を増やすことなく、2つのギア位置スイッチのいずれかの固着故障によりスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置が誤っていても、パーキングブレーキの解除や継続を支障なく行うことができる。
以下、本発明の電動パーキングブレーキ装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例6に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の電動パーキングブレーキ装置が適用されたエンジン車(車両の一例)を示す全体システム図である。
前記エンジン車は、図1に示すように、エンジン1(動力源)と、クラッチ2と、マニュアルトランスミッション3(変速機)と、リヤプロペラシャフト4と、リヤディファレンシャル5と、右後輪ドライブシャフト6と、左後輪ドライブシャフト7と、右後輪タイヤ8(駆動輪)と、左後輪タイヤ9(駆動輪)と、を駆動系に備えている。
前記クラッチ2は、図外のクラッチペダルを踏み込み側にストロークさせると開放し、戻し側にストロークさせると締結する。すなわち、クラッチペダルのストローク位置によってクラッチ締結容量が変化する。
前記マニュアルトランスミッション3は、例えば、前進5速・後退1速による変速機であり、図外のシフトレバーに対する手動操作力により、1速ギア位置、2速ギア位置、3速ギア位置、4速ギア位置、5速ギア位置、ニュートラル位置、後退ギア位置の何れかを選択して変速する。ギア位置を変更するシフト操作は、通常、前記クラッチ2を開放側にしている間にシフトレバーを次のギア位置まで動かす操作し、その後、クラッチ2を締結することで行われる。
前記電動パーキングブレーキ装置は、図1に示すように、右後輪パーキングブレーキ10と、左後輪パーキングブレーキ11と、右後輪ブレーキケーブル12と、左後輪ブレーキケーブル13と、イコライザ14と、アクチュエータ15と、解除ケーブル16と、エマジェンシー解除操作部材17と、を備えている。
すなわち、電動パーキングブレーキ装置は、ドライバーの手動操作力を用いてパーキングブレーキの作動・解除を行う手動パーキングブレーキ装置に代え、アクチュエータエータ15(モータ15a+減速機15b)による電動操作力を用い、ドライバーの手動操作負担を無くして、右後輪パーキングブレーキ10と左後輪パーキングブレーキ11の作動と解除を行う。
なお、エマジェンシー解除操作部材17は、システムフェイル時等で、パーキングブレーキを手動により解除したい緊急時に用いるバックアップ手段で、解除ケーブル16は、アクチュエータエータ15を手動により動作させる位置に接続されている。
前記電動パーキングブレーキ装置の電子制御系としては、図1に示すように、電子コントロールユニット21と、パーキングスイッチ22と、イグニッションスイッチ23と、インジケータランプ24と、バッテリ25と、を備えている。
前記電子コントロールユニット21と、前記パーキングスイッチ22,イグニッションスイッチ23,インジケータランプ24,バッテリ25,及び入力情報を発するセンサ・スイッチ類とは、コネクター26により接続されたメインハーネス27とボディハーネス28を介し、信号授受や電源供給が行われる。
前記電子コントロールユニット21は、ドライバーが操作するパーキングスイッチ22からPBK作動信号により、アクチュエータ15に駆動指令を出し、右後輪パーキングブレーキ10と左後輪パーキングブレーキ11を作動し、パーキングスイッチ22からPBK解除信号により、アクチュエータ15に駆動指令を出し、右後輪パーキングブレーキ10と左後輪パーキングブレーキ11の解除を行う。
加えて、例えば、パーキングブレーキ作動による停止時、ギア位置が前進または後退と判定され、自動解除条件が成立したとき、車輪を停止させているパーキングブレーキを自動的に解除する等の自動制御機能を備えている。
前記インジケータランプ24としては、インスツルメントパネルのメータ表示部内に、パーキングブレーキが作動か非作動かを表す作動/非作動ランプと、点灯によりシステムフェイルを警告するシステムフェイルランプと、の2個のランプが設定されている。
図2は実施例1の電動パーキングブレーキ装置の制御系を示す制御ブロックであり、以下、電動パーキングブレーキ制御系の構成について説明する。
前記電子コントロールユニット21に入力情報を発するセンサ・スイッチ類として、パーキングスイッチ22と、イグニッションスイッチ23と、アクセルポジションセンサ29と、ブレーキペダルスイッチ30と、クラッチポジションセンサ31と、エンジン回転数センサ32と、エンジントルクセンサ33と、シート圧力センサ34と、ニュートラルスイッチ35(ギア位置スイッチ)と、リバーススイッチ36(ギア位置スイッチ)と、ライニング温度センサ37と、荷重センサ38と、勾配センサ39と、車輪速センサ40と、減速機回転センサ41と、を備えている。
前記アクセルポジションセンサ29は、アクセルペダル部に設置されており、アクセルペダルの動きに同期してポジション情報を発する。
前記ブレーキペダルスイッチ30は、ブレーキペダル部に設置されており、ブレーキペダルの動きに同期してON/OFF情報を発する。
前記クラッチポジションセンサ31は、クラッチペダル部に設置されており、クラッチペダルの動きに同期してポジション情報を発する。
前記エンジン回転数センサ32は、エンジン回転数情報を発する。
前記エンジントルクセンサ33は、エンジントルク情報を発する。
前記シート圧力センサ34は、ドライバーシートのクッション内部に設置されており、シート上の圧力情報を発する。
前記ニュートラルスイッチ35は、マニュアルトランスミッション3のニュートラル位置を検出し、ニュートラル位置情報(ニュートラル位置のとき1、他の位置のとき0)を発する。
前記リバーススイッチ36は、マニュアルトランスミッション3の後退位置を検出し、後退位置情報(後退位置のとき1、他の位置のとき0)を発する。
すなわち、マニュアルトランスミッション3の前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置うち、2つの位置を検出するニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36からのスイッチ信号の組み合わせにより3つの変速ギア位置を判定する(図5(a)参照)。
前記ライニング温度センサ37は、パーキングブレーキ10,11のパットまたはライニングの内部に設置されており、パーキングブレーキ摩擦材の温度情報を発する。
前記荷重センサ38は、アクチュエータ15内の駆動力伝達部品であるケーブルの連結部に設置されており、駆動力伝達部品部位での荷重情報を発する。
前記勾配センサ39は、アクチュエータ15内に設置されており、車両の勾配変化に同期して勾配程度と勾配の向きの情報を発する。
前記車輪速センサ40は、4輪のアクスルハウジング部位に設置されており、車輪速情報を発する。
前記減速機回転センサ41は、アクチュエータ15内の減速機15b部位に設置されており、減速機15bの回転数情報を発する。
前記電子コントロールユニット21からの指令により動作する出力系としては、モータ15aと、インジケータランプ24と、パーキングスイッチ用モータ42と、を備えている。
前記パーキングスイッチ用モータ42は、前記パーキングスイッチ22に設置されており、モータを駆動すると、モータ端部にある振動体が回転し、パーキングスイッチ22自体を振動させる。
図3は実施例1の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(故障判定手段)。なお、この処理は、パーキングブレーキ作動による停止時に処理を開始し、例えば、制御周期10msec毎に繰り返し実行される。
ステップS1では、エンジン1がアイドル回転数域で安定した回転状態を保っているか否かを判断し、Yesの場合はステップS2へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
ステップS2では、ステップS1でのエンジン安定回転状態であるとの判断に続き、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36とのスイッチ信号の組み合わせによりマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置を判定し(図5参照)、その判定結果が前進位置か否かを判断し、Yesの場合はステップS3へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する(ギア位置判定手段)。
ステップS3では、ステップS2でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置が前進位置であるとの判断に続き、クラッチポジションセンサ31により検出されるクラッチペダル位置Cpが規定位置Cp0以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS4へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
ここで、「規定位置Cp0」は、クラッチペダル位置Cpが踏み込み側から戻し側へ移行する途中位置であって、前進ギア位置が選択されマニュアルトランスミッション3がトルク伝達可能なとき、エンジントルクがマニュアルトランスミッション3へ伝達され、車速が発生し始めるクラッチペダル位置に設定される。
ステップS4では、ステップS3でのクラッチペダル位置Cpが規定位置Cp0以下であるとの判断に続き、車輪速センサ40により検出された車速が0km/h(車両停止)か否かを判断し、Yesの場合はステップS5へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
ステップS5では、ステップS4での車速が0km/hであるとの判断に続き、パーキングブレーキシステムが故障であると判定し、パーキングブレーキを自動的に解除する自動解除機能を停止し、リターンへ移行する。
なお、パーキングブレーキシステム故障判定に基づき、インジケータランプ24のシステムフェイルランプを点灯し、ドライバーにシステムフェイルを警告する。
次に、作用を説明する。
従来、電動パーキングブレーキ装置としては、走行エンジンが回転している場合、変速機のギアが入れられ、アクセルペダルが操作され、クラッチペダルを適当に操作することにより分離クラッチが所定の寸法だけ閉じられるや否や、かけられていた駐車ブレーキを自動的に解除するものが知られている。
また、一般的にマニュアルトランスミッションにおいては、変速ギア位置(シフトレバー操作位置)が何処にはっ低いるか否かを検出するために、前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置に対し、ニュートラル位置と後退位置を検出する2つのニュートラルスイッチとリバーススイッチを用い、図5(a)に示すように、スイッチ信号の組み合わせにより、前進位置と後退位置とニュートラル位置と(故障)を判定している。
しかし、従来の電動パーキングブレーキ装置を、前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置を、2つのニュートラルスイッチとリバーススイッチのスイッチ信号の組み合わせにより判定するマニュアルトランスミッションを搭載した車両に適用した場合、ニュートラルスイッチとリバーススイッチのいずれかがONまたはOFFに固着する故障をすると、変速ギア位置の判定を誤ってしまう。
例えば、ニュートラルスイッチがオフ固着した場合、図5(b)に示すように、本当はニュートラル位置であるにもかかわらず、前進位置と誤判定し、パーキングブレーキの自動解除機能が働き、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまう。
また、ニュートラルスイッチがオン固着した場合、図5(c)に示すように、本当は前進位置であるにもかかわらず、ニュートラル位置と誤判定し、パーキングブレーキの自動解除機能が働かず、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまう。
勿論、前進位置の全てのギア位置(例えば、1速〜5速)にもそこに入っているか否かのスイッチをそれぞれ設ければ、どの位置にシフトレバーが操作されているかを確実に検出できるが、かなりスイッチ数が増えて、その分、コストがかかってしまう。
また、2つのニュートラルスイッチとリバーススイッチを、それぞれ二重系化するという対応策もあるが、この場合もスイッチ数が増え、コストアップや周辺部品へのレイアウト上の影響がある。
これに対し、実施例1の電動パーキングブレーキ装置では、ギア位置スイッチの数を増やすことなく、2つのギア位置スイッチのいずれかの固着故障によりスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置が誤っていても、パーキングブレーキの解除や継続を支障なく行うことができるようにした。
すなわち、動力源と変速機との間に設定されたクラッチがトルク伝達可能な接続状態である場合、前進位置や後退位置では、動力源から駆動輪までの駆動系にトルク伝達可能であるのに対し、ニュートラル位置では、変速機によりトルク伝達が遮断されることで変速機から駆動輪までの駆動系にはトルク伝達されないという点に着目し、スイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置と、動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置と、が一致しないとき、システム故障であると判定する手段を採用した。
したがって、例えば、スイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置が前進または後退位置であるにもかかわらず、動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置がニュートラル位置であるとき、システム故障であると判定される。
そして、システム故障判定に基づき、パーキングブレーキ作動による停止時、パーキングブレーキの自動解除機能を停止することで、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまうことを防止できる。
また、例えば、スイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置がニュートラル位置であるにもかかわらず、動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置が前進または後退位置であるとき、システム故障であると判定される。
そして、システム故障判定に基づき、パーキングブレーキ作動による停止時、パーキングブレーキを自動解除することで、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまうことを防止できる。
この結果、ギア位置スイッチの数を増やすことなく、2つのニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれかの固着故障によりスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置が誤っていても、パーキングブレーキの解除や継続を適切に行うことができる。
以下、実施例1の電動パーキングブレーキ装置における電動パーキングブレーキ故障判定作用について説明する。
[電動パーキングブレーキ故障判定作用]
パーキングブレーキ作動による停止時、ニュートラル位置から前進位置にシフト操作し、クラッチペダルを戻し方向に操作すると共にアクセルペダルを踏み込み、ドライバーが発進を意図する場合、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常であると、エンジン回転条件(ステップS1)と、スイッチ信号の組み合わせによるギア位置判定条件(ステップS2)と、クラッチペダル位置条件(ステップS3)とは成立するが、エンジン1からの駆動力が、クラッチ2→マニュアルトランスミッション3→リヤプロペラシャフト4→リヤディファレンシャル5→左右後輪ドライブシャフト6,7→左右後輪タイヤ8,9へと伝達されることで、パーキングブレーキ作動による制動トルクより伝達された駆動トルクが上回り、左右後輪タイヤ8,9が少し回転して車輪速が生じ、車速条件(ステップS4)が成立しない。
したがって、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常である時には、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止されない。そして、例えば、自動解除条件を、クラッチペダルの戻し操作とアクセルペダルの踏み込み操作とすると、ドライバーが発進を意図して両操作を行うと、直ちに自動解除条件が成立し、作動しているパーキングブレーキが自動的に解除され、円滑な車両発進を達成することができる。
パーキングブレーキ作動による停止時であって、ニュートラル位置を維持しているが、ニュートラルスイッチ35がオフ固着(故障)であると、エンジン回転条件(ステップS1)と、図5(b)に示すように、スイッチ信号の組み合わせによる前進位置であるとの誤判定によりギア位置判定条件(ステップS2)とが成立してしまう。
しかし、この場合、パーキングブレーキが作動していることで、ドライバーがクラッチペダルを少し戻し側とし、クラッチペダル位置条件(ステップS3)が成立すると、同時に車速条件(ステップS4)も成立する。
すなわち、マニュアルトランスミッション3がトルク伝達を遮断するニュートラル位置であることで、エンジン1からの駆動力は、クラッチ2からマニュアルトランスミッション3の入力軸までは伝達されるものの、マニュアルトランスミッション3の出力軸→リヤプロペラシャフト4→リヤディファレンシャル5→左右後輪ドライブシャフト6,7→左右後輪タイヤ8,9へのトルク伝達は無く、パーキングブレーキ作動による制動トルクにより左右後輪タイヤ8,9は停止したままとなる。
したがって、ニュートラルスイッチ35がオフ固着時には、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止さると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
すなわち、スイッチ信号の組み合わせのみによりギア位置を判定した場合、図5(b)に示すように、本当はニュートラル位置であるにもかかわらず、前進位置と誤判定し、パーキングブレーキの自動解除機能が働き、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまう。
これに対し、スイッチ信号の組み合わせによるギア位置判定結果は前進位置であるが、クラッチ2の接続によるエンジントルクが伝達可能な状態で、駆動輪である左右後輪タイヤ8,9は回転せずに停止状態のままであることで判定されるギア位置はニュートラル位置であるというように一致しない場合、スイッチ信号の組み合わせによる判定結果を信用せず、駆動系でのトルク伝達状況に着目して判定したニュートラル位置であるとの判定結果を信用することで、パーキングブレーキを解除してはいけないニュートラル位置の選択時に、パーキングブレーキを解除してしまうことを確実に防止することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の電動パーキングブレーキ装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) エンジン1とクラッチ2とマニュアルトランスミッション3と左右後輪タイヤ8,9とを有する駆動系と、前記マニュアルトランスミッション3の前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置うち、2つの位置を検出するニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36からのスイッチ信号の組み合わせにより3つの変速ギア位置を判定するギア位置判定手段と、を備え、パーキングブレーキ作動による停止時、ギア位置が前進または後退と判定され、自動解除条件が成立したとき、パーキングブレーキを自動的に解除する電動パーキングブレーキ装置において、前記ギア位置判定手段(ステップS2)にてスイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置と、前記エンジン1の駆動力が左右後輪タイヤ8,9へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置と、が一致しないとき、システム故障であると判定する故障判定手段(図3)を設けたため、ギア位置スイッチの数を増やすことなく、2つのニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれかの固着故障によりスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置が誤っていても、パーキングブレーキの解除や継続を支障なく行うことができる。
(2) 前記故障判定手段(図3)は、スイッチ信号の組み合わせにより前進または後退の変速ギア位置と判定したにもかかわらず(ステップS2でYes)、前記エンジン1の駆動力が左右後輪タイヤ8,9へ伝達可能なクラッチ接続状態(ステップS3でYes)で前記マニュアルトランスミッション3より下流側での駆動系回転数の変化がない場合(ステップS4でYes)、変速ギア位置はニュートラル位置であると判定し、自動解除機能を停止する(ステップS5)ため、真のギア位置はニュートラル位置であるにもかかわらず、ニュートラルスイッチ35のオフ固着により前進位置と誤判定した時、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまうことを確実に防止することができる。
(3) 前記故障判定手段(図3)は、クラッチペダル位置Cpが、エンジン1の駆動力がマニュアルトランスミッション3に伝達され車速が発生し始める規定位置Cp0以下に戻っているとき、車速の変化をみて変速ギア位置を判定するため、クラッチ2の接続によるエンジントルクが伝達可能な状態をクラッチペダル位置により容易に管理することができると共に、駆動系回転数として駆動系の最下流で発生する車速の変化をみることで、精度良く変速ギア位置を判定することができる。
実施例2は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置の規定位置を、クラッチペダル操作速度が遅い操作速度であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定するようにした例である。なお、実施例2の電動パーキングブレーキ装置のシステム構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
図6は実施例2の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(故障判定手段)。なお、この処理は、パーキングブレーキ作動による停止時に処理を開始し、例えば、制御周期10msec毎に繰り返し実行される。
また、ステップS21,ステップS22,ステップS24,ステップS25の各ステップは、図3のフローチャートのステップS1,ステップS2,ステップS4,ステップS5の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
ステップS26では、ステップS22でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置が前進位置であるとの判断に続き、クラッチペダル操作速度Cpsによるシステム故障判定のためのクラッチペダル位置の規定位置Cpcを設定し、ステップS23へ移行する。
ここで、「クラッチペダル操作速度Cps」は、クラッチポジションセンサ31からの設定時間間隔で送られるクラッチペダル位置情報に基づき、時間微分演算により単位時間当たりのクラッチペダル位置の変化量として求める(クラッチペダル操作速度検出手段)。
また、「規定位置Cpc」は、例えば、操作速度標準値をCpstdとし、定常規定位置をCp0としたとき、
Cps/Cpstd<0.9のとき(遅い操作) Cpc=Cp0+Δθ
Cps/Cpstd≧0.9のとき(早い操作) Cpc=Cp0
の式にて与える。
すなわち、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、図7に示すように、クラッチペダル操作速度Cpsが遅い操作速度であるほど定常規定位置Cp0よりクラッチペダルの踏み込み側位置に設定する。
ステップS23では、ステップS26でのクラッチペダル操作速度Cpsに応じた規定位置Cpcの設定に続き、クラッチポジションセンサ31により検出されるクラッチペダル位置Cpが規定位置Cpc以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS24へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
次に、作用を説明する。
[電動パーキングブレーキ故障判定作用]
パーキングブレーキ作動による停止時、ニュートラル位置から前進位置にシフト操作し、クラッチペダルを戻し方向に操作すると共にアクセルペダルを踏み込み、ドライバーが発進を意図する場合、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常であると、図6のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS26→ステップS23→ステップS24→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止されない。
パーキングブレーキ作動による停止時であって、ニュートラル位置を維持しているが、ニュートラルスイッチ35がオフ固着であると、図6のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS26→ステップS23→ステップS24→ステップS25→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止さると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
ここで、ステップS26では、クラッチペダルの戻し速度が規定速度よりも遅い時は、図7に示すように、車速の出始めが早まるため、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcが、クラッチペダル操作速度Cpsが遅い操作速度であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定される。
このため、クラッチペダルの戻し速度が遅い時は、ステップS23のクラッチペダル位置条件の成立タイミングが早期となり、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常である場合には、パーキングブレーキの自動解除の早期化を達成することができる。また、ニュートラルスイッチ35がオフ固着である場合には、早期のタイミングにてシステム故障であると判定し、自動解除機能の停止の早期化を達成することができる。なお、他の作用については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例2の電動パーキングブレーキ装置にあっては、実施例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(4) クラッチペダルの操作速度Cpsを検出するクラッチペダル操作速度検出手段を設け、前記故障判定手段(図6)は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、クラッチペダル操作速度Cpsが遅い操作速度であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定するため、クラッチペダル操作速度Cpsが早いか遅いかにかかわらず、適切なタイミングでのクラッチペダル位置条件の成立判断を行うことができる。
この結果、クラッチペダルの戻し速度が遅い時、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常である場合には、パーキングブレーキの自動解除の早期化を達成することができ、ニュートラルスイッチ35がオフ固着である場合には、早期のタイミングにてシステム故障であると判定し、自動解除機能の停止の早期化を達成することができる。
実施例3は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置の規定位置を、クラッチ使用頻度が高頻度であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定するようにした例である。なお、実施例3の電動パーキングブレーキ装置のシステム構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
図8は実施例3の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(故障判定手段)。なお、この処理は、パーキングブレーキ作動による停止時に処理を開始し、例えば、制御周期10msec毎に繰り返し実行される。
また、ステップS31,ステップS32,ステップS34,ステップS35の各ステップは、図3のフローチャートのステップS1,ステップS2,ステップS4,ステップS5の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
ステップS36では、ステップS32でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置が前進位置であるとの判断に続き、走行距離S(Km)に応じたシステム故障判定のためのクラッチペダル位置の規定位置Cpcを設定し、ステップS33へ移行する。
ここで、「走行距離SKm」は、クラッチ2を交換しない限り、車両の走行距離情報をそのまま用い、クラッチ2を交換したときは、改めて交換時点から積算された走行距離情報を用いる(クラッチ使用頻度検出手段)。
また、「規定位置Cpc」は、例えば、Cp0を定常規定位置、Sを走行距離S、K1を定数としたとき、
Cpc=Cp0−K1*S/10000
の式にて与える。
すなわち、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、走行距離Sが長距離であるほど定常規定位置Cp0よりクラッチペダルの戻し側位置に設定する。
なお、走行距離Sに代え、例えば、クラッチ2の動作回数をカウントしておき、クラッチ動作カウント数が高い数値であるほど定常規定位置Cp0よりクラッチペダルの戻し側位置に設定しても良いし、また、クラッチ2のフェーシング摩耗量を検出し、フェーシング摩耗量が大きいほど定常規定位置Cp0よりクラッチペダルの戻し側位置に設定しても良い。
ステップS33では、ステップS36での走行距離Sに応じた規定位置Cpcの設定に続き、クラッチポジションセンサ31により検出されるクラッチペダル位置Cpが規定位置Cpc以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS34へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
次に、作用を説明する。
[電動パーキングブレーキ故障判定作用]
パーキングブレーキ作動による停止時、ニュートラル位置から前進位置にシフト操作し、クラッチペダルを戻し方向に操作すると共にアクセルペダルを踏み込み、ドライバーが発進を意図する場合、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常であると、図8のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS36→ステップS33→ステップS34→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止されない。
パーキングブレーキ作動による停止時であって、ニュートラル位置を維持しているが、ニュートラルスイッチ35がオフ固着であると、図8のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS36→ステップS33→ステップS34→ステップS35→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止さると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
ここで、ステップS36では、走行距離Sが増えるに従い車速の出始めが遅くなるため、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcが、走行距離Sが長距離であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定される。
このため、走行距離Sが増える、言い換えると、クラッチ2の使用頻度が高くなると、フェーシング摩耗により、クラッチ2が滑りやすくなり、トルク伝達により車速の出始めが遅くなる。
例えば、クラッチペダル位置の規定位置を、クラッチ2の使用頻度にかかわらず初期状態で最適な値となる固定値で与えた場合、走行距離が増えるほど車速が出始める前のタイミングでクラッチペダル位置条件の成立が判断されることで、システム故障判定精度を低下させる。
これに対し、クラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、走行距離Sが長距離であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定するようにしたことで、走行距離Sの長短にかかわらず、車速が出始める適正なタイミングでクラッチペダル位置条件の成立が判断されることになる。なお、他の作用については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例3の電動パーキングブレーキ装置にあっては、実施例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(5) クラッチ2の使用頻度を検出するクラッチ使用頻度検出手段を設け、前記故障判定手段(図8)は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、クラッチ使用頻度が高頻度であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定するため、クラッチ2の使用頻度の高低にかかわらず、適切なタイミングでのクラッチペダル位置条件の成立判断を行うことができる。
実施例4は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置の規定位置を、路面勾配に応じた位置に設定するようにした例である。なお、実施例4の電動パーキングブレーキ装置のシステム構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
図9は実施例4の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(故障判定手段)。なお、この処理は、パーキングブレーキ作動による停止時に処理を開始し、例えば、制御周期10msec毎に繰り返し実行される。
また、ステップS41,ステップS42,ステップS44,ステップS45の各ステップは、図3のフローチャートのステップS1,ステップS2,ステップS4,ステップS5の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
ステップS46では、ステップS42でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置が前進位置であるとの判断に続き、勾配センサ39(路面勾配検出手段)からの勾配θに応じたシステム故障判定のためのクラッチペダル位置の規定位置Cpcを設定し、ステップS43へ移行する。
ここで、「規定位置Cpc」は、例えば、Cp0を定常規定位置、勾配走行距離Sとし、K2を定数としたとき、
前上がり時:Cpc=Cp0−K2*θ
前下がり時:Cpc=Cp0+K2*θ
の式にて与える。
すなわち、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、前上がり時には勾配θが急であるほど定常規定位置Cp0よりクラッチペダルの戻し側位置に設定する。また、前下がり時には勾配θが急であるほど定常規定位置Cp0よりクラッチペダルの踏み込み側位置に設定する。
ステップS43では、ステップS46での勾配θに応じた規定位置Cpcの設定に続き、クラッチポジションセンサ31により検出されるクラッチペダル位置Cpが規定位置Cpc以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS44へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
次に、作用を説明する。
[電動パーキングブレーキ故障判定作用]
パーキングブレーキ作動による停止時、ニュートラル位置から前進位置にシフト操作し、クラッチペダルを戻し方向に操作すると共にアクセルペダルを踏み込み、ドライバーが発進を意図する場合、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常であると、図9のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS46→ステップS43→ステップS44→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止されない。
パーキングブレーキ作動による停止時であって、ニュートラル位置を維持しているが、ニュートラルスイッチ35がオフ固着であると、図9のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS46→ステップS43→ステップS44→ステップS45→リターンへと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止さると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
ここで、ステップS46では、前上がり時、勾配θが大きな角度になるに従い車速の出始めが遅くなるため、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcが、勾配θが大であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定される。
一方、前下がり時、勾配θが大きな角度になるに従い車速の出始めが早くなるため、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcが、勾配θが大であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定される。
例えば、クラッチペダル位置の規定位置を、勾配の向きや勾配程度にかかわらず平坦路を基準として固定値で与えた場合、前上がり勾配での発進時には、車速が出始める前の早期タイミングでクラッチペダル位置条件の成立が判断されるし、前下がり勾配での発進時には、車速が出始めた後の遅れたタイミングでクラッチペダル位置条件の成立が判断されることになり、システム故障判定精度を低下させる。
これに対し、クラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、車両の上り勾配となる発進であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定し、車両の下り勾配となる発進であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定するようにしたことで、勾配の向きや勾配程度にかかわらず、車速が出始める適正なタイミングでクラッチペダル位置条件の成立が判断されることになる。
特に、車両の下り勾配となる発進時には、ステップS43のクラッチペダル位置条件の成立タイミングが早期となり、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常である場合には、パーキングブレーキの自動解除の早期化を達成することができる。また、ニュートラルスイッチ35がオフ固着である場合には、早期のタイミングにてシステム故障であると判定し、自動解除機能の停止の早期化を達成することができる。なお、他の作用については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例4の電動パーキングブレーキ装置にあっては、実施例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(6) 車両が停止している路面勾配を検出する勾配センサ39を設け、前記故障判定手段(図9)は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置Cpの規定位置Cpcを、車両の上り勾配となる発進であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定し、車両の下り勾配となる発進であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定するため、勾配の向きや勾配程度にかかわらず、適切なタイミングでのクラッチペダル位置条件の成立判断を行うことができる。
特に、車両の下り勾配となる発進時には、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常である場合、パーキングブレーキの自動解除の早期化を達成することができるし、ニュートラルスイッチ35がオフ固着である場合、早期のタイミングにてシステム故障であると判定し、自動解除機能の停止の早期化を達成することができる。
実施例5は、スイッチ信号でのギア位置判定結果がニュートラル位置であるとき、故障判定を行うと共に、スイッチ信号でのギア位置判定結果が前進位置であるとき、故障判定と故障復帰判定を行うようにした例である。なお、実施例5の電動パーキングブレーキ装置のシステム構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
図10は実施例5の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(故障判定手段)。なお、この処理は、パーキングブレーキ作動による停止時に処理を開始し、例えば、制御周期10msec毎に繰り返し実行される。
また、ステップS51,ステップS53,ステップS54,ステップS55の各ステップは、図3のフローチャートのステップS1,ステップS3,ステップS4,ステップS5の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
ステップS52では、ステップS51でのエンジン安定回転状態であるとの判断に続き、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36とのスイッチ信号の組み合わせによりマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置を判定し(図5参照)、その判定結果が前進位置または後退位置の場合はステップS53へ移行し、ニュートラル位置の場合はステップS58へ移行する(ギア位置判定手段)。
ステップS56では、ステップS55での自動解除機能の停止に続き、エンジン1がアイドル回転数域で安定した回転状態を保っているか否かを判断し、Yesの場合はステップS57へ移行し、Noの場合はステップS62へ移行する。
ステップS57では、ステップS56でのエンジン安定回転状態であるとの判断に続き、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36とのスイッチ信号の組み合わせによりマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置を判定し(図5参照)、その判定結果が前進位置または後退位置か否かを判断し、Yesの場合はステップS58へ移行し、Noの場合はステップS62へ移行する。
ステップS58では、ステップS52でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置がニュートラル位置であるとの判断、もしくは、ステップS57でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置が前進位置または後退位置であるとの判断に続き、クラッチポジションセンサ31により検出されるクラッチペダル位置Cpが規定位置Cp0以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS59へ移行し、Noの場合はステップS62へ移行する。
ここで、「規定位置Cp0」は、クラッチペダル位置Cpが踏み込み側から戻し側へ移行する途中位置であって、前進ギア位置が選択されマニュアルトランスミッション3がトルク伝達可能なとき、エンジントルクがマニュアルトランスミッション3へ伝達され、車速が発生し始めるクラッチペダル位置に設定される。なお、「規定位置Cp0」に代え、実施例2,3,4で記載した「規定位置Cpc」を用いても良いことは勿論である。
ステップS59では、ステップS58でのクラッチペダル位置Cpが規定位置Cp0以下であるとの判断に続き、アクセルペダル開度変化ΔApが0以上か否か、すなわち、アクセル戻し操作無しか否かが判断され、Yesの場合はステップS60へ移行し、Noの場合はステップS62へ移行する。
ステップS60では、ステップS59でのΔap≧0であるとの判断に続き、エンジン回転数変化ΔErが設定回転数Ne0(例えば、-100rpm)以下か、すなわち、設定回転数Ne0以上のエンジン回転数の低下があるか否かを判断し、Yesの場合はステップS61へ移行し、Noの場合はステップS62へ移行する。
ステップS61では、ステップS60でのΔEr≦Ne0との判断に続き、自動解除可否判定として解除可であるとの判定結果を出し、この判定結果に基づいてパーキングブレーキを解除する。
ステップS62では、ステップS55での自動解除機能の停止後、ステップS56のエンジン回転条件と、ステップS57のギア位置条件と、ステップS58のクラッチペダル位置条件と、ステップS59のアクセル操作条件と、ステップS60のエンジン回転数変化条件のうち、1つの条件でも成立しない場合、自動解除機能の停止を維持する。
ステップS63では、ステップS53でのクラッチペダル位置条件が成立しない場合、あるいは、ステップS54での車速条件が成立しない場合、例えば、クラッチ2の戻し操作とアクセルの踏み込み操作による自動解除条件が成立するか否かが判断され、Yesの場合はステップS64へ移行し、Noの場合はリターンへ移行する。
ステップS64では、ステップS63での自動解除条件の成立との判断に続き、ドライバーの発進意図に応えるべくパーキングブレーキを自動解除する。
次に、作用を説明する。
[ギア位置スイッチ正常時]
パーキングブレーキ作動による停止時、ニュートラル位置から前進位置にシフト操作し、クラッチペダルを戻し方向に操作すると共にアクセルペダルを踏み込み、ドライバーが発進を意図する場合、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常であると、エンジン回転条件(ステップS51)と、スイッチ信号の組み合わせによるギア位置判定条件(ステップS52)と、クラッチペダル位置条件(ステップS53)とは成立するが、エンジン1からの駆動力が、クラッチ2→マニュアルトランスミッション3→リヤプロペラシャフト4→リヤディファレンシャル5→左右後輪ドライブシャフト6,7→左右後輪タイヤ8,9へと伝達されることで、パーキングブレーキ作動による制動トルクより伝達された駆動トルクが上回り、左右後輪タイヤ8,9が少し回転して車輪速が生じ、車速条件(ステップS54)が成立しない。
したがって、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36のいずれも正常である時には、図10のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS53→ステップS54→ステップS63へと進み、ステップS63において、クラッチペダルの戻し操作とアクセルペダルの踏み込み操作による自動解除条件が成立すると、ステップS64へと進み、ステップS64において、ドライバーが発進を意図に呼応し、作動しているパーキングブレーキが自動的に解除され、円滑な車両発進を達成することができる。
[ニュートラルスイッチ35のオフ固着時]
パーキングブレーキ作動による停止時であって、ニュートラル位置を維持しているが、ニュートラルスイッチ35がオフ固着(故障)であると、エンジン回転条件(ステップS51)と、図5(b)に示すように、スイッチ信号の組み合わせによる前進位置であるとの誤判定によりギア位置判定条件(ステップS52)とが成立してしまう。
しかし、この場合、パーキングブレーキが作動していることで、ドライバーがクラッチペダルを少し戻し側とし、クラッチペダル位置条件(ステップS53)が成立すると、同時に車速条件(ステップS54)も成立する。
すなわち、マニュアルトランスミッション3がトルク伝達を遮断するニュートラル位置であることで、エンジン1からの駆動力は、クラッチ2からマニュアルトランスミッション3の入力軸までは伝達されるものの、マニュアルトランスミッション3の出力軸→リヤプロペラシャフト4→リヤディファレンシャル5→左右後輪ドライブシャフト6,7→左右後輪タイヤ8,9へのトルク伝達は無く、パーキングブレーキ作動による制動トルクにより左右後輪タイヤ8,9は停止したままとなる。
したがって、ニュートラルスイッチ35がオフ固着時には、図10のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS53→ステップS54→ステップS55へと進み、パーキングブレーキの自動解除機能は停止さると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
すなわち、スイッチ信号の組み合わせのみによりギア位置を判定した場合、図5(b)に示すように、本当はニュートラル位置であるにもかかわらず、前進位置と誤判定し、パーキングブレーキの自動解除機能が働き、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまう。
これに対し、スイッチ信号の組み合わせによるギア位置判定結果は前進位置であるが、クラッチ2の接続によるエンジントルクが伝達可能な状態で、駆動輪である左右後輪タイヤ8,9は回転せずに停止状態のままであることで判定されるギア位置はニュートラル位置であるというように一致しない場合、スイッチ信号の組み合わせによる判定結果を信用せず、駆動系でのトルク伝達状況に着目して判定したニュートラル位置であるとの判定結果を信用することで、ニュートラル位置の選択時に、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまうことを確実に防止することができる。
[ニュートラルスイッチ35のオン固着時]
パーキングブレーキ作動による停止状態からギア位置をニュートラル位置から前進位置に切り替えてドライバーが発進を意図している場合、ニュートラルスイッチ35がオン固着(故障)であると、エンジン回転条件(ステップS51)は成立するものの、図5(c)に示すように、スイッチ信号の組み合わせによるギア位置をニュートラル位置と誤判定し、ステップS52からステップS58へと進んでしまう。
しかし、この場合、発進意図に基づきドライバーがクラッチペダルを戻し側に操作し、アクセルペダルも踏み込み側へ操作した場合、エンジン回転数が低下する。このため、クラッチペダル位置条件(ステップS58)と、アクセル操作条件(ステップS59)と、エンジン回転数低下条件(ステップS60)と、が共に成立する。
すなわち、マニュアルトランスミッション3がトルク伝達可能な前進位置であることで、エンジン1からの駆動力は、クラッチ2か→マニュアルトランスミッション3→リヤプロペラシャフト4→リヤディファレンシャル5→左右後輪ドライブシャフト6,7→左右後輪タイヤ8,9へとトルク伝達可能であるが、パーキングブレーキ作動による制動トルクにより左右後輪タイヤ8,9は停止したままであるため、パーキングブレーキで制動されている左右後輪タイヤ8,9がエンジン負荷となり、アクセルペダルも踏み込み操作をしてもエンジン回転数が低下する。
したがって、ニュートラルスイッチ35のオン固着時には、図10のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS58→ステップS59→ステップS60→ステップS61へと進み、パーキングブレーキは強制的に解除されると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
すなわち、スイッチ信号の組み合わせのみによりギア位置を判定した場合、図5(c)に示すように、本当は前進位置であるにもかかわらず、ニュートラル位置と誤判定し、パーキングブレーキが作動したままとなり、パーキングブレーキの作動に支障をきたしてしまう。
これに対し、スイッチ信号の組み合わせによるギア位置判定結果はニュートラル位置であるが、クラッチ2の接続によるエンジントルクが伝達可能な状態で、アクセル戻し操作を行っていないにもかかわらず、エンジン1の回転数が低下することで判定されるギア位置は前進位置であるというように一致しない場合、スイッチ信号の組み合わせによる判定結果を信用せず、駆動系でのトルク伝達状況に着目して判定した前進位置であるとの判定結果を信用することで、前進位置の選択時に、パーキングブレーキを解除して車両の発進を確保することができる。
[自動解除機能の停止からの復帰時]
例えば、一時的な原因によりニュートラルスイッチ35がオフ固着した場合、自動解除機能を停止したままとすると、その後、ドライバーがギア位置を前進位置に切り替え、発進操作を行ってもパーキングブレーキが自動解除されず、手動によりパーキングブレーキを解除する操作を要する。
この場合、図10のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS53→ステップS54→ステップS55へと進み、パーキングブレーキの自動解除機能が停止した場合、その後、ステップS56のエンジン回転条件と、ステップS57のギア位置条件と、ステップS58のクラッチペダル位置条件と、ステップS59のアクセル操作条件と、ステップS60のエンジン回転数変化条件と、の全ての条件が成立する場合に限り、ステップS61へと進み、パーキングブレーキを自動解除し、ドライバーの発進意図に呼応して自動解除機能を復帰させている。なお、ステップS56〜ステップS60の条件のうち、1つの条件でも成立しない場合には、ステップS62へと進んで、自動解除機能の停止が維持される。
すなわち、一旦、自動解除機能が停止されたが、クラッチ2の接続によるエンジントルクが伝達可能な状態で、アクセル戻し操作を行っていないにもかかわらず、エンジン1の回転数が低下することでギア位置が前進位置であると判定された場合、駆動系でのトルク伝達状況に着目して判定した前進位置であるとの判定結果を信用し、パーキングブレーキを自動解除することで、車両の発進を確保することができる。
次に、効果を説明する。
実施例5の電動パーキングブレーキ装置にあっては、実施例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
(7) 前記故障判定手段(図10)は、スイッチ信号の組み合わせによりニュートラルの変速ギア位置と判定したにもかかわらず(ステップS52でニュートラル状態)、前記エンジン1の駆動力が左右後輪タイヤ8,9へ伝達可能なクラッチ接続状態であり(ステップS58でYes)、アクセルペダル戻し操作無し(ステップS59でYes)で前記マニュアルトランスミッション3より上流側でのエンジン回転数が規定量以下に低下した場合(ステップS60でYes)、変速ギア位置は前進位置または後退位置であると判定し、パーキングブレーキを自動解除する(ステップS61)ため、真のギア位置は前進位置または後退位置であるにもかかわらず、ニュートラルスイッチ35のオン固着によりニュートラル位置と誤判定した時、パーキングブレーキ作動の維持を防止し、発進を確保することができる。
(8) 前記故障判定手段(図10)は、パーキングブレーキ作動時、変速ギア位置がニュートラル位置であるとの判定に基づき、自動解除機能を停止したとき、スイッチ信号の組み合わせにより前進または後退の変速ギア位置と判定し(ステップS57でYes)、かつ、前記エンジン1の駆動力が左右駆動タイヤ8,9へ伝達可能なクラッチ接続状態であり(ステップS58)、アクセルペダル戻し操作無し(ステップS59でYes)で前記マニュアルトランスミッション3より上流側でのエンジン回転数が規定量以下に低下した場合(ステップS60でYes)、自動解除機能を復帰させ、パーキングブレーキを自動解除する(ステップS61)ため、一旦、自動解除機能が停止された場合であっても、駆動系でのトルク伝達状況に着目して判定した前進位置または後退位置であるとの判定結果に基づき、自動解除機能を復帰し、パーキングブレーキを自動解除することで、車両の発進を確保することができる。
実施例6は、実施例5の故障判定ルーチンに対し、自動解除直後にパーキングブレーキシステムの故障を判定する故障判定ルーチンを加えた例である。
なお、実施例5の電動パーキングブレーキ装置のシステム構成は、実施例1の図1及び図2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
図11は実施例6の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(故障判定手段)。なお、この処理は、パーキングブレーキ作動による停止時に処理を開始し、例えば、制御周期10msec毎に繰り返し実行される。
また、ステップS71〜ステップS84は、図10のフローチャートのステップS51〜ステップS64の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
ステップS85では、ステップS84でのパーキングブレーキ自動解除に続き、エンジン1がアイドル回転数域で安定した回転状態を保っているか否かを判断し、Yesの場合はステップS86へ移行し、Noの場合はステップS92へ移行する。
ステップS86では、ステップS85でのエンジン安定回転状態であるとの判断に続き、ニュートラルスイッチ35とリバーススイッチ36とのスイッチ信号の組み合わせによりマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置を判定し(図5参照)、その判定結果が前進位置か否かを判断し、Yesの場合はステップS87へ移行し、Noの場合はステップS92へ移行する。
ステップS87では、ステップS86でのマニュアルトランスミッション3の変速ギア位置が前進位置であるとの判断に続き、クラッチポジションセンサ31により検出されるクラッチペダル位置変化ΔCpが規定変化量(例えば、5%)以上か否かを判断し、Yesの場合はステップS88へ移行し、Noの場合はステップS92へ移行する。
ここで、「クラッチペダル位置変化ΔCp」は、クラッチペダル位置Cpが踏み込み側から戻し側へ移行する変化、つまり、クラッチ2を締結する方向への変化をいう。
ステップS88では、ステップS87でのクラッチペダル位置ΔCpが規定変化量以上であるとの判断に続き、駆動系がトルク伝達可能な状態であるとの仮定に基づき、車速を推定し、ステップS89へ移行する。
ここで、車速の推定は、例えば、推定した車速を計算車速Vcとするとき、
Vc=エンジン回転数/トータルギア比×K3 K3;定数
の式により与えられる。
ステップS89では、ステップS88での車速の推定(計算車速Vc)に続き、車輪側センサ40により検出された実車速Vaと、計算車速Vcとが比較され、実車速Vaが規定車速未満で、かつ、計算車速Vcと実車速Vaとの車速差が規定車速差以上である場合はステップS90へ移行し、実車速Vaが規定車速未満という条件と、計算車速Vcと実車速Vaとの車速差が規定車速差以上であるという条件と、の少なくとも一方の条件でも成立しない場合はステップS92へ移行する。
ここで、例えば、実車速Vaの規定車速として3km/hを用い、計算車速Vcと実車速Vaとの車速差の規定車速差として10km/hを用いる。
ステップS90では、ステップS89での実車速Vaと計算車速Vcとの比較によるYesとの判断に続き、Yesであるとの判断開始からの経過時間が規定時間(例えば、1sec)以上であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS91へ移行し、Noの場合はステップS88へ戻る。
ステップS91では、ステップS90での車速条件成立状態が規定時間継続であるとの判断に続き、パーキングブレーキシステム故障であるとの判定に基づき、自動解除を止めて再びパーキングブレーキを作動し、リターンへ移行する。
ステップS92では、ステップS84での自動解除の直後、ステップS85のエンジン回転条件と、ステップS86のギア位置条件と、ステップS87のクラッチペダル位置変化条件と、ステップS89の車速差条件と、のうち、1つの条件でも成立しない場合、自動解除を維持する。
次に、作用を説明する。
[自動解除直後のシステム故障判定作用]
図11のフローチャートにおいて、ステップS71→ステップS72→ステップS73→ステップS74→ステップS83へと進み、ステップS83において、クラッチペダルの戻し操作とアクセルペダルの踏み込み操作による自動解除条件が成立すると、ステップS84へと進み、ステップS84において、パーキングブレーキが自動的に解除される。
しかし、ニュートラルスイッチ35のオフ固着により、選択されている真のギア位置がニュートラル位置であるにもかかわらず、前進位置と判定し、さらに、何らかの一時的な要因でステップS74での車速条件を誤判定し、ステップS83→ステップS84へと進んで、パーキングブレーキが自動解除されると、ドライバーの意図しない車両挙動により違和感を与えてしまう。
パーキングブレーキ作動による停止時であって、ニュートラル位置を維持している自動解除直後において、ニュートラルスイッチ35がオフ固着(故障)であると、エンジン回転条件(ステップS85)と、図5(b)に示すように、スイッチ信号の組み合わせによる前進位置であるとの誤判定によりギア位置判定条件(ステップS86)とが成立してしまう。
しかし、この場合、パーキングブレーキの自動解除の直後、ドライバーがクラッチペダルを戻し操作を行うことでクラッチペダル位置変化条件(ステップS87)が成立すると、その後、車速差条件(ステップS89)と規定時間継続条件(ステップS90)が成立する。
すなわち、マニュアルトランスミッション3がトルク伝達を遮断するニュートラル位置であることで、エンジン1からの駆動力は、クラッチ2からマニュアルトランスミッション3の入力軸までは伝達されるものの、マニュアルトランスミッション3の出力軸→リヤプロペラシャフト4→リヤディファレンシャル5→左右後輪ドライブシャフト6,7→左右後輪タイヤ8,9へのトルク伝達は無く、パーキングブレーキが解除されても左右後輪タイヤ8,9は走行抵抗変化等に応じて僅かに動く程度である。
したがって、ニュートラルスイッチ35がオフ固着時であるにもかかわらず、自動解除されたときは、図11のフローチャートにおいて、ステップS84からステップS85→ステップS86→ステップS87→ステップS88→ステップS89→ステップS90へと進み、ステップS88→ステップS89→ステップS90の流れを繰り返し、ステップS90にて規定時間に達すると、ステップS91へ進んで、自動解除されているパーキングブレーキを再度、作動させると共に、パーキングブレーキシステムの故障がドライバーに知らされる。
すなわち、仮に判定の誤りによりニュートラル位置の選択時であるにもかかわらず、パーキングブレーキの自動解除機能が働いた場合、自動解除後、できる限り早期のタイミングにて、前進位置の選択時であるという判断が正しい判断かどうかを行わないことには、パーキングブレーキが自動解除されたままとなってしまう。
これに対し、パーキングブレーキの自動解除直後、クラッチ2の接続によるエンジントルクが伝達可能な状態で、仮に前進位置の選択時であれば、発進車速が出ていて計算車速と実車速がほぼ一致する状況であるにもかかわらず、実車速Vaが停止あるいは極低車速域までで、計算車速Vcと実車速Vaとの車速差も大きいままであることが規定時間継続することでギア位置はニュートラル位置であると判定された場合、自動解除とした判定結果を信用せず、駆動系でのトルク伝達状況に着目して判定したニュートラル位置であるとの判定結果を信用することで、パーキングブレーキを解除してはいけないニュートラル位置の選択時における自動解除の直後、パーキングブレーキの再作動に移行し、車両の停止を確保することができる。
次に、効果を説明する。
実施例6の電動パーキングブレーキ装置にあっては、実施例5のの効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(9) 前記故障判定手段(図11)は、パーキングブレーキの自動解除の直後、スイッチ信号の組み合わせにより前進または後退の変速ギア位置と判定し(ステップS86でYes)、かつ、前記エンジン1の駆動力が左右後輪タイヤ8,9へ伝達可能なクラッチ接続状態からさらにクラッチペダルが規定量戻されたにもかかわらず(ステップS87でYes)、エンジン回転数とトータルギア比により計算される計算車速Vcと、車輪速センサ40により検出される実車速Vaと、の車速差(Vc−Va)が規定車速以上であるという状態(ステップS89でYes)が規定時間以上継続した場合(ステップS90でYes)、自動解除したパーキングブレーキを作動させる(ステップS91)ため、パーキングブレーキを解除してはいけないニュートラル位置の選択時における自動解除の直後、パーキングブレーキの再作動に移行し、車両の停止を確保することができる。
以上、本発明の電動パーキングブレーキ装置を実施例1〜実施例6に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1〜6では、電動パーキングブレーキ装置として、電動モータによる力をケーブルの牽引力に変換して、機械的な動作で摩擦制動力を付与する例を示したが、例えば、ブレーキバイワイヤシステムのように、電動ソレノイドでのバルブ作動により油圧力を与えて摩擦制動力を付与する装置としても良いし、また、電動モータ式キャリパ(EMB)の電動モータを直接制御し、モータ動作で摩擦制動力を付与する例としても良い。
実施例1〜6では、変速機として、シフトレバーに対する手動操作でシフト位置を選択するマニュアルトランスミッションの例を示したが、手動操作力に代え、アクチュエータ操作力でシフト位置を選択する自動マニュアルトランスミッションにも適用することができる。
実施例1〜6では、前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置のうち、ニュートラル位置と後退位置を検出するニュートラルスイッチとリバーススイッチを用いた例を示したが、前進位置とニュートラル位置とを検出する2つのスイッチを用いても良いし、また、前進位置と後退位置を検出する2つのスイッチを用いても良い。
実施例1〜6では、動力源としてエンジンのみを搭載したエンジン車への適用例を示したが、動力源としてエンジンとモータを搭載したハイブリッド車へも適用できるし、動力源としてモータを搭載した電気自動車や燃料電池車へも適用できる。また、実施例1〜6では、後輪駆動車への適用例を示したが、前輪駆動車や四輪駆動車へも適用することができる。
実施例1の電動パーキングブレーキ装置が適用されたエンジン車(車両の一例)を示す全体システム図である。 実施例1の電動パーキングブレーキ装置の制御系を示す制御ブロックである。 実施例1の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1でのクラッチペダル位置の規定位置を決定方法をあらわす車速とクラッチペダル位置のタイムチャートである。 正常時とニュートラルスイッチがオフ固着時とニュートラルスイッチがオン固着時におけるニュートラルスイッチとリバーススイッチとのスイッチ信号の組み合わせにより判定されるギア位置を示す図である。 実施例2の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2でのクラッチペダル操作速度に応じたクラッチペダル位置の規定位置を決定方法をあらわす車速とクラッチペダル位置のタイムチャートである。 実施例3の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例4の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例5の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例6の電子コントロールユニット21にて実行される電動パーキングブレーキ故障判定処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン(動力源)
2 クラッチ
3 マニュアルトランスミッション(変速機)
4 リヤプロペラシャフト
5 リヤディファレンシャル
6 右後輪ドライブシャフト
7 左後輪ドライブシャフト
8 右後輪タイヤ(駆動輪)
9 左後輪タイヤ(駆動輪)
10 右後輪パーキングブレーキ
11 左後輪パーキングブレーキ
12 右後輪ブレーキケーブル
13 左後輪ブレーキケーブル
14 イコライザ
15 アクチュエータ
16 解除ケーブル
17 エマジェンシー解除操作部材
21 電子コントロールユニット
22 パーキングスイッチ
23 イグニッションスイッチ
24 インジケータランプ
25 バッテリ
26 コネクター
27 メインハーネス
28 ボディハーネス
29 アクセルポジションセンサ
30 ブレーキペダルスイッチ
31 クラッチポジションセンサ
32 エンジン回転数センサ
33 エンジントルクセンサ
34 シート圧力センサ
35 ニュートラルスイッチ(ギア位置スイッチ)
36 リバーススイッチ(ギア位置スイッチ)
37 ライニング温度センサ
38 荷重センサ
39 勾配センサ(路面勾配検出手段)
40 車輪速センサ
41 減速機回転センサ

Claims (10)

  1. 動力源とクラッチと変速機と駆動輪とを有する駆動系と、
    前記変速機の前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置うち、2つの位置を検出するギア位置スイッチからのスイッチ信号の組み合わせにより3つの変速ギア位置を判定するギア位置判定手段と、を備え、
    パーキングブレーキ作動による停止時、ギア位置が前進または後退と判定され、自動解除条件が成立したとき、パーキングブレーキを自動的に解除する電動パーキングブレーキ装置において、
    前記ギア位置判定手段にてスイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置と、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置と、が一致しないとき、システム故障であると判定する故障判定手段を設けたことを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  2. 請求項1に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    前記故障判定手段は、スイッチ信号の組み合わせにより前進または後退の変速ギア位置と判定したにもかかわらず、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で前記変速機より下流側での駆動系回転数の変化がない場合、変速ギア位置はニュートラル位置であると判定し、自動解除機能を停止することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  3. 請求項1または2に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    前記故障判定手段は、クラッチペダル位置が、動力源の駆動力が変速機に伝達され車速が発生し始める規定位置以下に戻っているとき、車速の変化をみて変速ギア位置を判定することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    クラッチペダルの操作速度を検出するクラッチペダル操作速度検出手段を設け、
    前記故障判定手段は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置の規定位置を、クラッチペダル操作速度が遅い操作速度であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    前記クラッチの使用頻度を検出するクラッチ使用頻度検出手段を設け、
    前記故障判定手段は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置の規定位置を、クラッチ使用頻度が高頻度であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    車両が停止している路面勾配を検出する路面勾配検出手段を設け、
    前記故障判定手段は、車速が発生し始めるクラッチペダル位置の規定位置を、車両の上り勾配となる発進であるほどクラッチペダルの戻し側位置に設定し、車両の下り勾配となる発進であるほどクラッチペダルの踏み込み側位置に設定することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    前記故障判定手段は、スイッチ信号の組み合わせによりニュートラルの変速ギア位置と判定したにもかかわらず、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態であり、アクセルペダル戻し操作無しで前記変速機より上流側での駆動系回転数が規定量以下に低下した場合、変速ギア位置は前進位置または後退位置であると判定し、パーキングブレーキを自動解除することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  8. 請求項1乃至7の何れか1項に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    前記故障判定手段は、パーキングブレーキ作動による停止時、変速ギア位置がニュートラル位置であるとの判定に基づき、自動解除機能を停止したとき、スイッチ信号の組み合わせにより前進または後退の変速ギア位置と判定し、かつ、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態であり、アクセルペダル戻し操作無しで前記変速機より上流側での駆動系回転数が規定量以下に低下した場合、自動解除機能を復帰させ、パーキングブレーキを自動解除することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  9. 請求項1乃至8の何れか1項に記載された電動パーキングブレーキ装置において、
    前記故障判定手段は、パーキングブレーキの自動解除の直後、スイッチ信号の組み合わせにより前進または後退の変速ギア位置と判定し、かつ、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態からさらにクラッチペダルが規定量戻されたにもかかわらず、変速機入力回転数と変速比により計算される計算車速と、車速検出手段により検出される実車速と、の車速差が規定車速以上であるという状態が規定時間以上継続した場合、自動解除したパーキングブレーキを再作動させることを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  10. 動力源とクラッチと変速機と駆動輪とを有する駆動系を備え、
    パーキングブレーキ作動による停止時、前記変速機の前進・ニュートラル・後退の3つの変速ギア位置うち、2つの位置を検出するギア位置スイッチからのスイッチ信号の組み合わせによりギア位置が前進または後退と判定され、かつ、自動解除条件が成立したとき、パーキングブレーキを自動的に解除する電動パーキングブレーキ装置において、
    パーキングブレーキ作動による停止時、スイッチ信号の組み合わせにより判定した変速ギア位置が前進または後退位置であるにもかかわらず、前記動力源の駆動力が駆動輪へ伝達可能なクラッチ接続状態で生じる駆動系回転変化により判定される変速ギア位置がニュートラル位置であるとき、パーキングブレーキの自動解除機能を停止することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
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