JP2007325518A - 大豆発酵物及びその製造方法 - Google Patents

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祐二 埋橋
Chizuru Taki
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Abstract

【課題】発酵臭や酸味が弱く、塩分が少ないが、メラノイジンが多く含まれた大豆発酵物を提供する。
【解決手段】大豆又はその加工品が水とともに加熱され、食塩5%以下の条件で真菌によって発酵処理が施され、その後、糖が加えられた状態で加熱処理が施された大豆発酵物及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、メラノイジンが多く含まれた大豆発酵物及びその製造方法に関する。
メラノイジンは、アミノ化合物と糖との反応によってできる物質である。このメラノイジンについては、胃がんを誘発するといわれるニトロソアミンの生成を抑制すること、並びに活性酸素を除去する抗酸化作用、コレステロール低下作用、血圧降下作用及び血糖値抑制効果など有用な効果を有することが知られている。日本の伝統的食品である味噌も褐色を呈しているのは、このメラノイジンによるもので、発酵することによって、はじめて生成される。
しかしながら、味噌の発酵を進めて長熟すると、メラノイジンは、増加するものの味噌特有の発酵臭が強く風味劣化を起こす。また酸味もきつくなり好ましい状態ではない。また、味噌は、保存食として13から15%程度の食塩が本来含有されており、メラノイジンが持つ血圧降下作用と相反する。
そこで、本発明は、発酵臭や酸味が弱く、塩分が少ないが、メラノイジンが多く含まれた大豆発酵物を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、大豆又はその加工品を水とともに加熱し、食塩5%以下の条件で真菌によって発酵処理をした後、糖を加えた状態で加熱処理を行うことによって、味噌としての強い発酵臭や酸味が弱く、塩分が少ないが、メラノイジンが多く含まれた大豆発酵物を得ることができることを見出した。すなわち、本発明は、大豆又はその加工品が水とともに加熱され、食塩5%以下の条件で真菌によって発酵処理が施され、その後、糖が加えられた状態で加熱処理が施された大豆発酵物であり、また、本発明は、大豆又はその加工品を水とともに加熱し、食塩5%以下の条件で真菌によって発酵処理をした後、糖を加えた状態で加熱処理を行うことによって大豆発酵物を製造する大豆発酵物の製造方法である。
以上のように、本発明によれば、発酵臭や酸味が弱く、塩分が少ないが、メラノイジンが多く含まれた大豆発酵物及びその製造方法を提供することができる。
本発明に係る大豆発酵物及びその製造方法において用いられる大豆としては、黄大豆、黒大豆、青大豆、鞍掛け豆などタンパク質を多く含むものが好ましく、特に黄大豆が好ましい。また、これら大豆を例えば、圧片したり、粉末状に加工した加工物であっても良い。
本発明に係る大豆発酵物及びその製造方法において、真菌としては、Aspergillus oryzae, Aspergillus sojae, Aspergillus awamori, Aspergillus kawachil, Rhizopus delemer, Monascus ruberなどのAspergillus属,Rhizopus属,Monascus属などがあり、真菌による発酵処理は、4〜80℃で行なわれることが好ましく、15〜60℃で行なわれることがより好ましい。また、その処理時間は、12時間以上であることが好ましく、1日以上であることが特に好ましい。
また、本発明に係る大豆発酵物及びその製造方法において、真菌による発酵処理時に酵母類及び乳酸菌の少なくとも一以上によって発酵処理が施され、その後に糖が加えられていることが好ましい。酵母類としては、Zygosaccharomyces ruxii, Candida euchellsii, Terragenococcus halophilus, Torulopsis versatilis などがあり、乳酸菌としては、Enterococcus faecalis, Pediococcus halophilus, Streptococcus faecalis, Lactobacillus plantarum などのEnterococcus属,Pediococcus属,Streptococcus属,Lactobacillus属などがあり、酵母類や乳酸菌による発酵処理は、5〜50℃で行なわれることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。また、その処理時間は、1日以上であることが好ましく、14日以上であることが特に好ましい。
本発明に係る大豆発酵物及びその製造方法によれば、味噌としての強い発酵臭を感じることなくメラノイジン量を増やすことができる。また、加糖されているので食塩がなくても日持ち安定に優れるという効果もある。よって、本発明に係る大豆発酵物は、食塩が添加されていなくても良い。さらに、大豆発酵物と糖を加熱することにより、新たに好ましい風味が付与される。機能面においてもペプチドやサポニン、イソフラボン等の有用な成分も摂取することができる。
本発明に係る大豆発酵物及びその製造方法において、糖としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、液糖、水あめ、はちみつ、トレハオース、メイプルシュガーなどが好ましく、単糖、二糖、オリゴ糖などその糖鎖の大きさは、限定されない。本発明に係る大豆発酵物の糖度は、30〜90であることが好ましく、この状態であれば安定して常温保存することができる。糖度の調整は、加糖量や加熱時間、温度により調整される。糖を加えた状態での加熱処理は、60℃以上で行われることが好ましく、沸騰状態で行なわれることが特に好ましい。
また、本発明に係る係る大豆発酵物において、メラノイジン量は、25mg/g以上に調整されていることが好ましく、35mg/g以上に調整されていることがさらに好ましい。メラノイジン量は、加熱時間や加糖量、糖の種類等によって調整される。さらに、本発明に係る大豆発酵物は、常温で保存するため、水分活性値が、0.85以下に調整されていることが好ましく、水分活性値は、加水量や煮詰め時間によって調整される。水分活性値がそれ以上であっても、冷凍や冷蔵状態であれば、長期保存が可能である。
本発明に係る大豆発酵物は、以下のように製造される。すなわち、先ず、少なくても3時間、好ましくは10時間、原料である大豆を水中に浸漬又は大豆に水を含浸させた後、柔らかくなるまでゆでる又は蒸すなどの加熱を行った後、ミンチ機又はミキサーなどにより破砕又は粉砕し、細片状またはペースト状にした後、真菌を加えて発酵処理を行う。これらの微生物の増殖を補助する目的で米,麦,そばなどの穀類にこれらの微生物を繁殖させて加えてもよい。また、真菌とともに、酵母類及び乳酸菌の少なくとも一以上を加えて発酵処理を行うこともできる。この発酵物は、ペースト状態であり水分含量が多い。これに糖を加えて加熱することによって、本発明に係る大豆発酵物を製造することができる。
実施例1乃至3
次に、本発明に係る大豆発酵物の実施例1乃至3を作製した。先ず、蒸した米28kgにAsperigillus oryzaeの胞子((株)ピオック製)を均一に付着させ、品温30〜35℃、湿度75〜95%RHで45時間作用させて米を基質に増殖されたAsperigillus oryzaeを作製した。次に、大豆を30kg用意し3倍量の水に10時間浸漬させた後、水を切り、115℃の加熱蒸気で蒸し上げた。この蒸し上げた大豆60kgをミンチ機(直径4mmダイス)で処理した後、60%酒清液(NEDO95%を希釈して使用)9.2kgに混ぜ合わせた米を基質に増殖されたAsperigillus oryzae21kgを加え、45℃にて119時間発酵させた。その後、さらに30℃にて30日間発酵させて大豆発酵物を得た。次に、質量比を1:1として、この大豆発酵物にブドウ糖を添加し、表1に示す時間加熱処理することによって、実施例1乃至3に係る大豆発酵物を得た。また、比較例1として、ブドウ糖を加えていない大豆発酵物を用意し、比較例2として、ブドウ糖を加えたが加熱処理していない大豆発酵物を用意した。
Figure 2007325518
次に、これら実施例1乃至3、並びに比較例1及び2に係る大豆発酵物につて、メラノイジン量を以下のように測定した。すなわち先ず、サンプル5gを秤量し、それに0.1M酢酸ナトリウムバッファー50mlを加え、一昼夜室温で放置し、抽出を行った。次に、抽出液を濾過し、濾過した抽出液10mlを逆送カラム(セプパックプラスC18)に供じ、60%エタノール40mlで溶出した。溶出した液を水浴上で濃縮、乾固して、精製水20mlで定容し、吸光度を400〜700nmの連続スペクトルをとることによって測定した。測定結果を表1に示す。表1に示すように実施例1乃至3に係る大豆発酵物は、比較例1及び2に比して、メラノイジン量が多い。また、これら実施例1乃至3に係る大豆発酵物について、パネラー10名に発酵臭や酸味に関する官能試験を行なったところ、いずれも発酵臭や酸味が弱いという評価を得た。
次に、本発明に係る大豆発酵物の実施例4乃至11を作製した。先ず、蒸した米28kgにAsperigillus oryzaeの胞子((株)ピオック製)を均一に付着させ、品温30〜35℃、湿度75〜95%RHで45時間作用させて米を基質に増殖されたAsperigillus oryzaeを作製した。次に、大豆を30kg用意し3倍量の水に10時間浸漬させた後、水を切り、115℃の加熱蒸気で蒸し上げた。この蒸し上げた大豆60kgをミンチ機(直径4mmダイス)で処理した後、60%酒清液(NEDO95%を希釈して使用)9.2kgに混ぜ合わせた米を基質に増殖されたAsperigillus oryzae21kg及び酵母菌としてzygosaccharomyces ruxii(宮坂醸造(株)製)約1×106個)を加え、45℃にて119時間発酵させた。その後、さらに30℃にて30日間発酵させて大豆発酵物を得た。次に、質量比を1:1として、この大豆発酵物に表2に示す糖を添加し、90分間加熱処理することによって、実施例4乃至11に係る大豆発酵物を得た。これら実施例4乃至11に係る大豆発酵物について、上記と同様にメラノイジン量の測定を行なった。その結果を表2に示す。表2に示すように、実施例4乃至11に係る大豆発酵物も、実施例3に係る大豆発酵物と同様にメラノイジン量が多いことが分かる。
Figure 2007325518
次に、実施例3乃至11に係る大豆発酵物について、水分活性を測定した。水分活性は、水分活性測定器(EZ−100、フロイント産業株式会社製)を用いて測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2007325518
表3に示すように、実施例3乃至11に係る大豆発酵物は、水分活性が0.85以下であるので、常温保存が可能であることが分かる。
次に、実施例7に係る大豆発酵物が含まれた蒸し羊羹を作製した。すなわち、実施例7に係る大豆発酵物400重量部に小麦粉45重量部、片栗粉30重量部、砂糖30重量部、塩若干量を加えて良く混ぜ合わせ、混ぜ合わせたものに水を少しずつ加え、滑らかになるまでさらに良く混ぜ合わせる。次に、滑らかにしたものを流しかんに入れ蒸し上げることによって、蒸し羊羹を得た。実施例7に係る大豆発酵物が含まれた蒸し羊羹は、もっちりとして食感が良く、非常に風味が豊かであった。
次に、実施例5に係る大豆発酵物が含まれた練り羊羹を作製した。すなわち、先ず、水80重量部に白双糖25重量部と寒天1重量部を加えて完全溶解する。溶解した溶液に実施例5に係る大豆発酵物70重量部を加えて加熱して練り上げる。糖度68くらいで火を止め、水あめを3.5重量部加えた後、アルミパックに充填し、常温で1週間おいて安定させることによって、練り羊羹を得た。実施例5に係る大豆発酵物が含まれた練り羊羹は、大豆発酵物のざらつきを感じない滑らかな口当たりであり、非常に風味が豊かであった。
次に、実施例10に係る大豆発酵物が含まれた最中を作製した。すなわち、先ず、水60重量部に白双糖90重量部と寒天1重量部を加えて完全溶解する。溶解した溶液に実施例10に係る大豆発酵物400重量部を加えて加熱して練り上げる。滑らかになったら火を止め、水あめを15重量部加え、餡鉢に流し込む。餡鉢に流して冷却した物を竹べらで市販の最中の皮に詰め、もう一枚の皮とあわせることによって、最中を得た。実施例10に係る大豆発酵物が含まれた最中は、餡がやわらかく口どけの良い上品な風味があった。
次に、実施例9に係る大豆発酵物が含まれた饅頭を作製した。すなわち、先ず、水60重量部に上白糖140重量部を加えて溶解する。溶解した溶液にイスパタ4重量部を加え、さらに薄力粉200重両部を加えて混ぜ合わせる。生地がまとまったら15重量部程度にちぎり分ける。分けた生地を丸く押し広げて、竹べらで実施例9に係る大豆発酵物30重量部をすくって乗せて、形を整える。その後、10分ほど蒸すことによって饅頭を得た。実施例9に係る大豆発酵物が含まれた饅頭は、生地のさっくり感と餡のさらっとした食感が非常に良く合い、口あたりが良かった。

Claims (5)

  1. 大豆又はその加工品が水とともに加熱され、食塩5%以下の条件で真菌によって発酵処理が施され、その後、糖が加えられた状態で加熱処理が施された大豆発酵物。
  2. 真菌による発酵処理時に酵母類及び乳酸菌の少なくとも一以上によって発酵処理が施され、その後に糖が加えられたことを特徴とする請求項1記載の大豆発酵物。
  3. 糖度が30〜90に調整されていることを特徴とする請求項1又は2記載の大豆発酵物。
  4. 大豆又はその加工品を水とともに加熱し、食塩5%以下の条件で真菌によって発酵処理を施した後、糖を加えた状態で加熱処理を行うことによって大豆発酵物を製造する大豆発酵物の製造方法。
  5. 真菌による発酵処理時に酵母類及び乳酸菌の少なくとも一以上によって発酵処理を施し、その後に糖が加えることを特徴とする請求項4記載の大豆発酵物の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013133313A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Tropical Plant Resources Institute Inc 非アルコール性脂肪性肝疾患および/または非アルコール性脂肪肝炎の治療薬
JP2013135618A (ja) * 2011-12-28 2013-07-11 House Foods Corp 煮込み食品及びその製造方法
JP2015000009A (ja) * 2013-06-13 2015-01-05 ハウス食品グループ本社株式会社 味噌調味材及びその製造方法、並びに調味ソース及びその製造方法
JP2015000010A (ja) * 2013-06-13 2015-01-05 ハウス食品グループ本社株式会社 味噌調味材、これを使用した調味ソース、及びこれらの製造方法

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