以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態であるD級増幅器100の構成を示す回路図である。図1において、高レベル電源線1は、図示しない電源の正極に接続されており、低レベル電源線2は、同電源の負極に接続されるとともに接地されている。D級増幅器100を構成する各回路は、電界効果トランジスタ(以下、単にトランジスタという)等により構成されており、これら各回路には高レベル電源線1および低レベル電源線2を介して電源電圧VDDが与えられる。
出力バッファ回路10は、D級増幅器100の最終出力段をなしており、第1のスイッチング素子であるPチャネルトランジスタPPと、第2のスイッチング素子であるNチャネルトランジスタNPと、第3のスイッチング素子であるPチャネルトランジスタPMと、第4のスイッチング素子であるNチャネルトランジスタNMとにより構成されている。ここで、PチャネルトランジスタPPおよびPMの各ソースは高レベル電源線1に、NチャネルトランジスタNPおよびNMの各ソースは低レベル電源線2に接続されている。そして、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNPのドレイン同士が接続され、この接続点が負荷Lの一端に接続されており、同様に、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNMのドレイン同士が接続され、この接続点が負荷Lの他端に接続されている。
負荷Lは、例えばスピーカである。このD級増幅器100の稼動時、この負荷Lの一端に天絡または地絡が発生し、あるいは負荷Lの両端が短絡される事故が発生し、出力バッファ回路10を構成するトランジスタPP、NP、PMまたはNMのいずれかに許容範囲を越える電流値の過電流が流れる場合がある。本実施形態の特徴は、そのような過電流が検出された場合に、トランジスタPP、NP、PMおよびNM並びに負荷Lに損傷を与えないように、トランジスタPP、NP、PMおよびNMの状態を遷移させ、速やかに過電流を減衰させる保護機能にある。なお、この保護機能のための回路構成については後述する。
PWM変調部20は、外部から与えられる入力信号INのレベルに応じてパルス幅変調された4相のパルスPWMPP、PWMNP、PWMPMおよびPWMNMを出力する。過電流発生等のない正常動作時においては、これらのパルスPWMPP、PWMNP、PWMPMおよびPWMNMが、そのままゲート信号制御部60を通過し、ゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMとして、出力バッファ回路10のトランジスタPP、NP、PMおよびNMの各ゲートに各々供給される。
図2は、この正常動作時におけるゲート信号CNTPP、CNTPM、CNTNPおよびCNTNM(パルスPWMPP、PWMPM、PWMNPおよびPWMNM)の各波形を示すものである。図2において、期間TAでは、ゲート信号CNTPP、CNTPM、CNTNPおよびCNTNMが各々Lレベル、Hレベル、LレベルおよびHレベルとされ、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がON状態、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPの組がOFF状態とされる。従って、期間TAでは、PチャネルトランジスタPP、負荷LおよびNチャネルトランジスタNMという経路を介して電源からの電流が流れる。
また、期間TBでは、ゲート信号CNTPP、CNTPM、CNTNPおよびCNTNMが各々Hレベル、Lレベル、HレベルおよびLレベルとされ、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPの組がON状態、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がOFF状態とされる。従って、期間TBでは、PチャネルトランジスタPM、負荷LおよびNチャネルトランジスタNPという経路を介して電源からの電流が流れる。
期間TAとその後の期間TBとの間および期間TBとその後の期間TAとの間にはデッドタイムTDが介在している。このデッドタイムTDにおいては、トランジスタPP、NP、PMおよびNMの全てがOFF状態とされる。正常動作時においては、図示のように期間TAおよびTBがデッドタイムTDを間に挟んで交互に繰り返され、出力バッファ回路10による負荷Lのプッシュプル駆動が行われる。なお、期間TAおよびTBの間にデッドタイムTDを設けるのは、貫通電流の発生を防止するためである。
図1において、基準レベル発生部30は、高レベル電源線1および低レベル電源線2の間に直列に介挿されたPチャネルトランジスタ31および定電流源32を有している。そして、Pチャネルトランジスタ31のドレインと定電流源32との接続点のレベルは基準レベルREFPとして過電流検出部40に出力される。ここで、Pチャネルトランジスタ31のサイズとPチャネルトランジスタPPまたはPMのサイズとの比は、定電流源32の電流値とPチャネルトランジスタPPまたはPMのドレイン電流の許容範囲の上限値との比に一致している。従って、基準レベルREFPは、PチャネルトランジスタPPまたはPMに許容範囲の上限値に相当するドレイン電流が流れた場合の同トランジスタのドレインのレベルに相当するものとなる。また、基準レベル発生部30は、同じく高レベル電源線1および低レベル電源線2の間に直列に介挿されたNチャネルトランジスタ33および定電流源34を有している。そして、Nチャネルトランジスタ33のドレインと定電流源34との接続点のレベルは基準レベルREFNとして過電流検出部40に出力される。ここで、Nチャネルトランジスタ33のサイズとNチャネルトランジスタNPまたはNMのサイズとの比は、定電流源34の電流値とNチャネルトランジスタNPまたはNMのドレイン電流の許容範囲の上限値との比に一致している。従って、基準レベルREFNは、NチャネルトランジスタNPまたはNMに許容範囲の上限値に相当するドレイン電流が流れた場合の同トランジスタのドレインのレベルに相当するものとなる。
過電流検出部40には、基準レベルREFPおよびREFNが与えられるとともに、出力バッファ回路10におけるPチャネルトランジスタPPのドレインとNチャネルトランジスタNPのドレインとの接続点の信号OUTPと、PチャネルトランジスタPMのドレインとNチャネルトランジスタNMのドレインとの接続点の信号OUTMと、同出力バッファ回路10の各トランジスタに対するゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMとが与えられる。そして、過電流検出部40は、これらの入力信号に基づいて、出力バッファ回路10の各トランジスタにおける過電流の発生を検出し、過電流の検出結果を示す過電流検出信号IN−PCHP、IN−PCHM、IN−NCHPおよびIN−NCHMを出力する。
図3はこの過電流検出部40の構成例を示す回路図である。図3において、コンパレータ41は、信号OUTPのレベルが基準レベルREFPよりも低いときにLレベルの信号CPP、高いときにはHレベルの信号CPPを出力する。そして、ローアクティブANDゲート42は、ゲート信号CNTPPがLレベル(すなわち、PチャネルトランジスタPPがON状態)であり、かつ、コンパレータ41の出力信号CPPがLレベルである場合に、PチャネルトランジスタPPに過電流が流れていることを示す過電流検出信号IN−PCHPをアクティブレベルであるHレベルとする。同様に、コンパレータ43は、信号OUTMのレベルが基準レベルREFPよりも低いときにLレベルの信号CPMを出力し、ローアクティブANDゲート44は、ゲート信号CNTPMがLレベルであり、かつ、コンパレータ43の出力信号CPMがLレベルである場合に、PチャネルトランジスタPMに過電流が流れていることを示す過電流検出信号IN−PCHMをアクティブレベルであるHレベルとする。
また、コンパレータ45は、信号OUTPのレベルが基準レベルREFNよりも高いときにHレベルの信号CNPを出力し、ANDゲート46は、ゲート信号CNTNPがHレベルであり、かつ、コンパレータ45の出力信号CNPがHレベルである場合に、NチャネルトランジスタNPに過電流が流れていることを示す過電流検出信号IN−NCHPをアクティブレベルであるHレベルとする。また、コンパレータ47は、信号OUTMのレベルが基準レベルREFNよりも高いときにHレベルの信号CNMを出力し、ANDゲート48は、ゲート信号CNTNMがHレベルであり、かつ、コンパレータ47の出力信号CNMがHレベルである場合に、NチャネルトランジスタNMに過電流が流れていることを示す過電流検出信号IN−NCHMをアクティブレベルであるHレベルとする。
図1において、タイミング信号発生部50およびゲート信号制御部60は、過電流検出部40により過電流が検出された場合に、出力バッファ回路10のトランジスタPP、NP、PMおよびNM並びに負荷Lに損傷を与えないように、トランジスタPP、NP、PMおよびNMの状態を遷移させ、速やかに過電流を減衰させる保護回路として機能する。ここで、図4および図5を参照し、この保護回路としての機能について説明する。
図4(a)に示すように、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がON状態となった場合、PチャネルトランジスタPPまたはNチャネルトランジスタNMに過電流が流れることがある。図4(a)に示す例では、PチャネルトランジスタPPに過電流が流れたことが検出されている。この場合、本実施形態では、過電流の検出されたPチャネルトランジスタPPと同様に負荷Lから見て高レベル電源線1側にある他のPチャネルトランジスタPMを放電用スイッチング素子とする。そして、本実施形態におけるタイミング信号発生部50およびゲート信号制御部60は、図4(b)および(c)に示すように、放電用スイッチング素子でないトランジスタは直ちにOFF状態とし、放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPMについては一時的にON状態とした後、OFF状態に遷移させる。
このように各トランジスタの状態を遷移させると、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMがOFF状態になったときに、負荷Lのインダクタンスに蓄積された電気エネルギーが、NチャネルトランジスタNPのドレインと基板との間の寄生ダイオードD、負荷LおよびPチャネルトランジスタPMという放電経路を介して放電される。
ここで、過電流の検出されたPチャネルトランジスタPPをOFF状態にしたときにPチャネルトランジスタPMをOFF状態のままにしておくと、負荷Lのインダクタンスに蓄積された電気エネルギーは、PチャネルトランジスタPMのドレインと基板との間の寄生ダイオード(図示略)を経由して高レベル電源線1側に抜けようとするため、PチャネルトランジスタPMのドレインとNチャネルトランジスタNMのドレインとの接続点のレベルを大きく持ち上げ、出力バッファ回路10のトランジスタ(この場合、トランジスタPMまたはNM)や負荷Lにダメージを与え易い。
しかしながら、本実施形態では、過電流の検出されたPチャネルトランジスタPPをOFF状態にしたときにPチャネルトランジスタPMを一時的にON状態にしてからOFF状態とするので、PチャネルトランジスタPMのドレインとNチャネルトランジスタNMのドレインとの接続点のレベルの持ち上がりを低く抑え、出力バッファ回路10のトランジスタや負荷Lに過大な電圧が加わるのを抑制することができる。
他のトランジスタにおいて過電流が検出された場合も同様である。図5は、本実施形態において過電流が検出された場合に行われる各トランジスタの状態遷移の態様を過電流の検出箇所別に示したものである。図4(a)〜(c)を参照して説明したように、PチャネルトランジスタPPにおいて過電流が検出された場合にはPチャネルトランジスタPMを放電用スイッチング素子としたが、図5に示すように、PチャネルトランジスタPMにおいて過電流が検出された場合にはPチャネルトランジスタPPを、NチャネルトランジスタNPにおいて過電流が検出された場合にはNチャネルトランジスタNMを、NチャネルトランジスタNMにおいて過電流が検出された場合にはNチャネルトランジスタNPを各々放電用スイッチング素子とする。
すなわち、本実施形態では、負荷Lの一端と高レベル電源線1との間に介挿されたPチャネルトランジスタにおいて過電流が検出された場合には、負荷Lの他端と高レベル電源線1との間に介挿された他のPチャネルトランジスタを放電用スイッチング素子とし、負荷Lの一端と低レベル電源線2との間に介挿されたNチャネルトランジスタにおいて過電流が検出された場合には、負荷Lの他端と低レベル電源線2との間に介挿された他のNチャネルトランジスタを放電用スイッチング素子とするのである。そして、過電流検出後、放電用スイッチング素子でないトランジスタについては直ちにOFF状態とし、放電用スイッチング素子であるトランジスタは、一時的にON状態としてからOFF状態にするのである。
また、通常は以上のように1個のトランジスタの過電流のみが検出されるが、負荷Lの両端が短絡された場合等には、同時にON状態となる2個のトランジスタの両方において過電流が検出されることがある。この場合、本実施形態ではPチャネルトランジスタについての過電流検出を優先し、放電用スイッチング素子を決定する。すなわち、図5に示すように、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの両方において過電流が検出された場合には、PチャネルトランジスタPPについての過電流検出を優先してPチャネルトランジスタPMを放電用スイッチング素子とし、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPの両方において過電流が検出された場合には、PチャネルトランジスタPMについての過電流検出を優先してPチャネルトランジスタPPを放電用スイッチング素子とするのである。
次に、以上説明した保護回路として機能するタイミング信号発生部50およびゲート信号制御部60の具体例を説明する。
図6はタイミング信号発生部50の構成例を示す回路図である。図6において、タイマ501は、図7に示すように、過電流検出信号IN−PCHPが所定時間T1以上継続してHレベルを維持した場合に所定パルス幅の正のパルスOCPP1を出力する。同様に、タイマ502〜504も、タイマ501と同様な構成のタイマであり、タイマ502は、過電流検出信号IN−PCHMが所定時間T1以上に亙ってHレベルを維持したときにパルスOCPM1を、タイマ503は、過電流検出信号IN−NCHPが所定時間T1以上に亙ってHレベルを維持したときにパルスOCNP1を、タイマ504は、過電流検出信号IN−NCHMが所定時間T1以上に亙ってHレベルを維持したときにパルスOCNM1を各々出力する。
タイマ511〜514は、上記タイマ501〜504とともに、過電流の検出されたトランジスタに対応付けられた放電指令パルスを発生する手段を構成している。さらに詳述すると、タイマ511は、図8に示すように、パルスOCPP1をトリガとし、PチャネルトランジスタPPに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCPP2を出力するとともに、この放電指令パルスOCPP2の立ち下がり時に幅の狭いパルスOCPP2Tをトリガ出力端子Tから出力する。タイマ512〜514も、タイマ511と同様な構成のタイマであり、タイマ512は、パルスOCPM1をトリガとして、PチャネルトランジスタPMに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCPM2とその立ち下がりに同期した幅の狭いパルスOCPM2Tを出力し、タイマ513は、パルスOCNP1をトリガとして、NチャネルトランジスタNPに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCNP2とその立ち下がりに同期した幅の狭いパルスOCNP2Tを出力し、タイマ514は、パルスOCNM1をトリガとして、NチャネルトランジスタNMに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCNM2とその立ち下がりに同期した幅の狭いパルスOCNM2Tを出力する。
優先度回路520は、インバータ521〜523およびANDゲート524〜526を図示のように接続した周知の回路であり、1個の放電指令パルスのみが発生した場合にはその放電指令パルスをゲート信号制御部60に供給し、2個以上の放電指令パルスが同時に発生した場合にはそれらのうち優先度が最大である放電指令パルスを選択してゲート信号制御部60に供給する役割を果たす。
さらに詳述すると、優先度回路520は、放電指令パルスOCPP2が発生した場合には、これをそのまま放電指令パルスOCPPとしてゲート信号制御部60へ出力する。また、放電指令パルスOCPP2が発生しておらず、インバータ521の出力信号がHレベルである状態において放電指令パルスOCPM2が発生した場合、優先度回路520のANDゲート524は、放電指令パルスOCPM2を放電指令パルスOCPMとしてゲート信号制御部60へ出力する。また、放電指令パルスOCPP2およびOCPM2がいずれも発生しておらず、インバータ521および522のいずれの出力信号もHレベルである状態において放電指令パルスOCNP2が発生した場合、優先度回路520のANDゲート525は、放電指令パルスOCNP2を放電指令パルスOCNPとしてゲート信号制御部60へ出力する。また、放電指令パルスOCPP2、OCPM2およびOCNP2がいずれも発生しておらず、インバータ521、522および523のいずれの出力信号もHレベルである状態において放電指令パルスOCNM2が発生した場合、優先度回路520のANDゲート526は、放電指令パルスOCNM2を放電指令パルスOCNMとしてゲート信号制御部60へ出力する。以上のように、優先度回路520は、タイマ511〜514から出力される各放電指令パルスをOCPP2>OCPM2>OCNP2>OCNM2なる優先度に従って選択し、放電指令パルスOCPP、OCPM、OCNPまたはOCNMとして出力する。
ここで、放電指令パルスOCPP、OCPM、OCNPおよびOCNMは、各々パルス幅T2のパルスとなる。このパルス幅T2は、上述した放電用スイッチング素子が一時的にON状態となるときのON状態の継続時間を決定する。なお、その詳細については本実施形態の動作説明において明らかにする。
ORゲート530は、放電指令パルスOCPP2、OCPM2、OCNP2およびOCNM2の論理和であるパルスOCを出力する。このパルスOCは、警報の出力、電源の切断などのシステム制御に用いられる。
ORゲート541は、パルスOCPP2T、OCPM2T、OCNP2TおよびOCNM2Tの論理和であるパルスOCTを出力する。タイマ542は、図9に示すように、このパルスOCTをトリガとし、パルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFを出力する。この遮断指令パルスPNchOFFは、出力バッファ回路10の全てのトランジスタPP、PM、NPおよびNMをOFF状態とすることを指令する遮断指令信号として用いられる。ここで、パルスOCPP2T、OCPM2T、OCNP2TおよびOCNM2Tは、各々放電指令パルスOCPP2、OCPM2、OCNP2およびOCNM2のアクティブレベルから非アクティブレベルへの立ち下がり時に発生する。従って、遮断指令パルスPNchOFFは、放電指令パルスOCPP2、OCPM2、OCNP2またはOCNM2がアクティブレベルに立ち上がった後、この放電指令パルスが非アクティブレベルに立ち下がるときにアクティブレベルに立ち上がる。この遮断指令パルスPNchOFFは、上述した放電用スイッチング素子を所定時間(具体的には上述した時間T2)だけON状態にした後、出力バッファ回路10の全てのトランジスタをOFF状態とするためにアクティブレベルとされるパルスである。
なお、図10に示すように、タイマ542を、パルスOCTによりセットされ、電源断またはシステムリセットに伴って発生されるリセット信号によりリセットされるセット−リセット型フリップフロップ543に置き換え、このフリップフロップ543の出力信号を遮断指令パルスPNchOFFの代わりに遮断指令信号として採用してもよい。
以上がタイミング信号発生部50の構成の詳細である。
図11はゲート信号制御部60の構成例を示す回路図である。図11において、プリドライバ641、642、643および644は、出力バッファ回路10の各トランジスタにゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMを各々出力する回路である。プリドライバ641、642、643および644の各々の前段には、ローアクティブNANDゲート631、ANDゲート632、ローアクティブNANDゲート633およびANDゲート634が各々配置されている。そして、ローアクティブNANDゲート631、ANDゲート632、ローアクティブNANDゲート633およびANDゲート634の各々の一方の入力端子には、ローアクティブNORゲート601、ORゲート602、ローアクティブNORゲート603およびORゲート604の各出力端子が各々接続されている。また、ローアクティブNANDゲート631、ANDゲート632、ローアクティブNANDゲート633およびANDゲート634の各々の他方の入力端子には、ORゲート621、NORゲート622、ORゲート623およびNORゲート624の各出力端子が各々接続されている。
ローアクティブNORゲート601、ORゲート602、ローアクティブNORゲート603およびORゲート604の各々の一方の入力端子には、PWM変調部20から出力されるパルスPWMPP、PWMNP、PWMPMおよびPWMNMが各々入力される。また、ローアクティブNORゲート601、ORゲート602、ローアクティブNORゲート603およびORゲート604の各々の他方の入力端子には、放電指令パルスOCPMをインバータ611により反転した信号、放電指令パルスOCNM、放電指令パルスOCPPをインバータ612により反転した信号および放電指令パルスOCNPが入力される。
そして、ORゲート621には、放電指令パルスOCPP、OCNP、OCNMおよび遮断指令パルスPNchOFFが、NORゲート622には、放電指令パルスOCPP、OCPM、OCNPおよび遮断指令パルスPNchOFFが、ORゲート623には、放電指令パルスOCPM、OCNP、OCNMおよび遮断指令パルスPNchOFFが、NORゲート624には、放電指令パルスOCPP、OCPM、OCNMおよび遮断指令パルスPNchOFFが各々入力される。
以上がゲート信号制御部60の構成の詳細である。
次に本実施形態の動作を説明する。
まず、出力バッファ回路10の出力端子の天絡、地絡等がなく、出力バッファ回路10の各トランジスタに流れる電流が許容範囲内に収まっている場合、過電流検出部40は、過電流検出信号IN−PCHP、IN−PCHM、IN−NCHPおよびIN−NCHMを全て非アクティブレベルであるLレベルとする。この場合、タイミング信号発生部50は、放電指令パルスOCPP、OCPM、OCNP、OCNMおよび遮断指令パルスPNchOFFのいずれも出力しない。このため、ゲート信号制御部60では、ORゲート621および623の各出力信号はLレベル、NORゲート622および624の各出力信号はHレベルとなる。従って、この状態では、PWM変調部20から出力されるパルスPWMPPは、ローアクティブNORゲート601およびローアクティブNANDゲート631を介してプリドライバ641に供給され、パルスPWMNPは、ORゲート602およびANDゲート632を介してプリドライバ642に供給される。また、パルスPWMPMは、ローアクティブNORゲート603およびローアクティブNANDゲート633を介してプリドライバ643に供給され、パルスPWMNMは、ORゲート604およびANDゲート634を介してプリドライバ644に供給される。これらのパルスは、各プリドライバ641〜644からゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMとして出力バッファ回路10のトランジスタPP、NP、PMおよびNMに各々供給される。
次に、具体例を挙げ、本実施形態における過電流保護の動作について説明する。まず、例えば出力バッファ回路10におけるPチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNPのドレイン同士の接続点に地絡が発生したとする。この場合、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がON状態となるときに、PチャネルトランジシタPPに許容範囲を越える過電流が流れる可能性が高い。図12はその場合における各部の波形を例示するものである。
図12に示す例において、ゲート信号CNTPP、CNTPM、CNTNPおよびCNTNMが各々Hレベル、Lレベル、HレベルおよびLレベルとなっている期間は、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPの組がON状態、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がOFF状態となっている。図示の例では、この状態から、まず、ゲート信号CNTPMがHレベル、ゲート信号CNTNPがLレベルとなり、出力バッファ回路10の全てのトランジスタがOFF状態となる。次に、ゲート信号CNTPPがLレベル、ゲート信号CNTNMがHレベルとなり、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がON状態となる。
このとき、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNPのドレイン同士の接続点に地絡が発生していると、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNMのドレイン同士の接続点の信号OUTMは電源電圧VDDのレベルから0Vまで立ち下がるが、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNPのドレイン同士の接続点の信号OUTPは、地絡の影響により電源電圧VDDのレベルまで到達せず、PチャネルトランジスタPPには大きな電流が流れる。そして、低抵抗での地絡が発生しており、PチャネルトランジスタPPに許容範囲を越える過電流が流れる場合には、図示のように信号OUTPは基準レベルREFPよりも低いレベルとなる。図示の例の場合、OUTP<REFP、OUTM<REFP、OUTP>REFN、OUTM<REFNであることから、過電流検出部40(図3参照)のコンパレータ41、43、45および47の各出力信号CPP、CPM、CNPおよびCNMは、各々、Lレベル、Lレベル、HレベルおよびLレベルとなる。
そして、過電流検出部40では、コンパレータ41の出力信号CPPがLレベルであり、かつ、ゲート信号CNTPPがLレベルであることから、ローアクティブANDゲート42は、過電流検出信号IN−PCHPをアクティブレベルであるHレベルとする。この過電流検出信号IN−PCHPが時間T1だけHレベルを維持すると、タイミング信号発生部50(図6参照)では、タイマ501がパルスOCPP1を出力する。
なお、コンパレータ43の出力信号CPMがLレベルになるとき、ゲート信号CNTPMは既にHレベルとなっているので、ローアクティブANDゲート44が出力する過電流検出信号IN−PCHMはLレベルを維持する。また、コンパレータ45の出力信号CNPがHレベルになるとき、ゲート信号CNTNPは既にLレベルとなっているので、ANDゲート46が出力する過電流検出信号IN−NCHPはLレベルを維持する。コンパレータ47の出力信号CNMは、ゲート信号CNTNMの立ち上がりから遅れて立ち下がる。このため、信号CNMおよびCNTNMの両方が同時にHレベルとなる期間が生じ、幅の狭いパルス状の過電流検出信号IN−NCHMがANDゲート48から出力される。しかし、この過電流検出信号IN−NCHMのパルス幅は時間T1よりも短いため、タイマ504はパルスOCNM1を出力しない。従って、図示の例ではパルスOCPP1のみが発生することとなる。
パルスOCPP1が発生すると、タイマ511は、このパルスOCPP1をトリガとし、パルス幅T2の放電指令パルスOCPP2を出力するとともに、この放電指令パルスOCPP2の立ち下がり時にパルスOCPP2Tを出力する。ここで、放電指令パルスOCPP2は、優先度回路520を介し、放電指令パルスOCPPとしてゲート信号制御部60に供給される。また、パルスOCPP2Tは、ORゲート541を介し、パルスOCTとしてタイマ542に供給される。タイマ542は、このパルスOCTをトリガとし、パルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFをゲート信号制御部60に出力する。
以上のように、PチャネルトランジスタPPの過電流が検出された場合には、PチャネルトランジスタPPに対応付けられた放電指令パルスOCPPおよびこれに続く遮断指令パルスPNchOFFが発生され、ゲート信号制御部60に供給される。そして、ゲート信号制御部60(図11参照)では、次のような動作が行われる。
まず、放電指令パルスOCPPは、PチャネルトランジスタPPとの関係において放電用スイッチング素子でないPチャネルトランジスタPP、NチャネルトランジスタNPおよびNMの各駆動系内のORゲート621、NORゲート622およびNORゲート624に入力される。このため、放電指令パルスOCPP(=OCPP2)がアクティブレベルであるHレベルを維持する期間、ORゲート621の出力信号がHレベル、NORゲート622の出力信号がLレベル、NORゲート624の出力信号がLレベルとなることから、ゲート信号CNTPPがHレベル、ゲート信号CNTNPがLレベル、ゲート信号CNTNMがLレベルとなり、PチャネルトランジスタPP、NチャネルトランジスタNPおよびNMがOFF状態となる。
また、放電指令パルスOCPPは、インバータ612により反転され、PチャネルトランジスタPPとの関係において放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPMの駆動系内のローアクティブNORゲート603の一方の入力端子に入力される。このローアクティブNORゲート603の他方の入力端子には、ゲート信号CNTPMの元となるパルスPWMPMが入力されるが、この時点においてパルスPWMPMはHレベルとなっている。従って、インバータ612によって放電指令パルスOCPPを反転したパルス(負のパルス)は、ローアクティブNORゲート603を通過し、ローアクティブNANDゲート633の一方の入力端子に入力される。ここで、ローアクティブNANDゲート633の他方の入力端子にはORゲート623の出力信号が与えられるが、このORゲート623には放電指令パルスOCPPが与えられないため、ORゲート623の出力信号はLレベルである。このため、インバータ612によって放電指令パルスOCPPを反転したパルス(負のパルス)は、ローアクティブNANDゲート633を通過し、プリドライバ643からゲート信号CNTPMとして出力される。従って、放電指令パルスOCPPがHレベルである期間、ゲート信号CNTPMがLレベルとなり、PチャネルトランジスタPMがON状態となる。
このように、PチャネルトランジスタPPにおいて過電流が検出され、放電指令パルスOCPPが出力された場合には、放電指令パルスOCPPがアクティブレベルを維持する間、PチャネルトランジスタPPとの関係において放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPMがON状態とされ、放電用スイッチング素子でない他のトランジスタPP、NPおよびNMはOFF状態とされる。
ここで、放電指令パルスOCPPの発生により、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMがOFF状態になるとき、負荷Lのインダクタンスがそれまでに負荷Lに流れていた電流を維持しようとするため、負荷Lの両端に大きな電圧が発生する。このため、図4(b)に例示したように、負荷Lのインダクタンスに蓄積された電気エネルギーが、NチャネルトランジスタNPのドレインと基板との間の寄生ダイオードD、負荷LおよびPチャネルトランジスタPMという放電経路を介して高レベル電源線1側に放電される。このとき、図12に示すように、PチャネルトランジスタPMのドレインに現れる信号OUTMが電源電圧VDDのレベルを越えて持ち上げられる。しかし、本実施形態では、このときPチャネルトランジスタPMがON状態となり、これを介して放電が行われるため、この持ち上げ量を小さく抑えることができる。
その後、放電指令パルスOCPPが非アクティブレベルに立ち下がり、遮断指令パルスPNchOFFがアクティブレベルに立ち上がると、ORゲート621の出力信号がHレベル、NORゲート622の出力信号がLレベル、ORゲート623の出力信号がHレベル、NORゲート624の出力信号がLレベルとなることから、ゲート信号CNTPPがHレベル、ゲート信号CNTNPがLレベル、ゲート信号CNTPMがHレベル、ゲート信号CNTNMがLレベルとなる。このため、出力バッファ回路10の全てのトランジスタPP、NP、PMおよびNMがOFF状態となる。この状態は、遮断指令パルスPNchOFFがHレベルを維持する時間T3の期間に亙って維持される。
以上のように、PチャネルトランジスタPPの過電流が検出された場合には、負荷から見てこのトランジスタと同じく高レベル電源線1側にあるPチャネルトランジスタPMが放電用スイッチング素子とされ、放電用スイッチング素子でないトランジスタPP、NPおよびNMは直ちにOFF状態とされ、放電用スイッチング素子であるトランジスタPMについては時間T2の期間だけON状態とされた後、OFF状態とされる。
図示は省略したが、出力バッファ回路10における他のトタンジスタの過電流が検出される場合の動作も同様である。まず、PチャネルトランジスタPMの過電流が検出された場合には、PチャネルトランジスタPPが放電用スイッチング素子となる。この場合、PチャネルトランジスタPMの過電流検出により、PチャネルトランジスタPMに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCPMとこれに続くパルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFが発生される。ここで、放電指令パルスOCPMは、過電流の検出されたPチャネルトランジスタPMとの関係において放電用スイッチング素子でないトランジスタNP、PMおよびNMの各駆動系内のNORゲート622、ORゲート623およびNORゲート624に各々与えられる。一方、放電指令パルスOCPMは、インバータ611により反転され、過電流の検出されたPチャネルトランジスタPMとの関係において放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPPの駆動系内のローアクティブNORゲート601に与えられる。このため、放電指令パルスOCPMがHレベルである間、放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPPはON状態とされ、放電用スイッチング素子でない他のトランジスタNP、PMおよびNMはOFF状態とされ、その後は、パルスPNchOFFが立ち上がりにより全てのトランジスタPP、NP、PMおよびNMがOFF状態とされる。
NチャネルトランジスタNPの過電流が検出された場合には、NチャネルトランジスタNMが放電用スイッチング素子となる。この場合、NチャネルトランジスタNPの過電流検出により、パルス幅T2の放電指令パルスOCNPとこれに続くパルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFが発生される。ここで、パルスOCNPは、NチャネルトランジスタNPとの関係において放電用スイッチング素子でないトランジスタPP、NPおよびPMの各駆動系内のORゲート621、NORゲート622およびORゲート623に各々与えられる。一方、放電指令パルスOCNPは、NチャネルトランジスタNPとの関係において放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNMの駆動系内のORゲート604に与えられる。このため、放電指令パルスOCNPがHレベルである間、放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNMはON状態とされ、放電用スイッチング素子でない他のトランジスタPP、NPおよびPMはOFF状態とされ、その後は、遮断指令パルスPNchOFFが立ち上がりにより全てのトランジスタPP、NP、PMおよびNMがOFF状態とされる。
NチャネルトランジスタNMの過電流が検出された場合には、NチャネルトランジスタNPが放電用スイッチング素子となる。この場合、NチャネルトランジスタNMの過電流検出により、パルス幅T2の放電指令パルスOCNMとこれに続くパルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFが発生される。ここで、放電指令パルスOCNMは、NチャネルトランジスタNMとの関係において放電用スイッチング素子でないトランジスタPP、PMおよびNMの各駆動系内にあるORゲート621、ORゲート623およびNORゲート624に各々与えられる。一方、放電指令パルスOCNMは、NチャネルトランジスタNMとの関係において放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNPの駆動系内のORゲート602に与えられる。このため、放電指令パルスOCNMがHレベルである間、放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNPはON状態とされ、放電用スイッチング素子でない他のトランジスタPP、PMおよびNMはOFF状態とされ、その後は、パルスPNchOFFが立ち上がりにより全てのトランジスタPP、NP、PMおよびNMがOFF状態とされる。そして、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの両方の過電流が検出された場合またはPチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPの両方の過電流が検出された場合には、Pチャネルトランジスタの過電流検出が優先され、PチャネルトランジスタPPまたはPMの過電流が検出された場合と同様な動作が行われる。
以上のように、本実施形態によれば、出力バッファ回路10において、負荷Lの一端と高レベル電源線1との間に介挿されたPチャネルトランジスタにおいて過電流が検出された場合には、負荷Lの他端と高レベル電源線1との間に介挿された他のPチャネルトランジスタが放電用スイッチング素子とされ、負荷Lの一端と低レベル電源線2との間に介挿されたNチャネルトランジスタにおいて過電流が検出された場合には、負荷Lの他端と低レベル電源線2との間に介挿された他のNチャネルトランジスタが放電用スイッチング素子とされ、放電用スイッチング素子でないトランジスタは直ちにOFF状態とされ、放電用スイッチング素子であるトランジスタは所定時間T2だけON状態とされた後にOFF状態とされる。従って、負荷Lのインダクタンスに蓄積された電気エネルギーを放電用スイッチング素子を介して放電させることができ、出力バッファ回路10の各トランジスタをOFF状態に遷移させる際に、各トランジスタのドレインに過大な電圧が加わるのを防止し、各トランジスタおよび負荷Lに対するダメージを低減することができる。
<第2実施形態>
本実施形態におけるD級増幅器は、上記第1実施形態におけるD級増幅器100のタイミング信号発生部50およびゲート信号制御部60を図13に示すタイミング信号発生部50Aおよびゲート信号制御部60Aに置き換えた構成となっている。出力バッファ回路10、PWM変調部20、基準レベル発生部30および過電流検出部40の構成は上記第1実施形態と同様である。
図13におけるタイミング信号発生部50Aにおいて、ORゲート551は、過電流検出部40から出力される過電流検出信号IN−PCHPおよびIN−PCHMの論理和をとり、これらの信号のいずれかがHレベルである場合にHレベルの信号を出力する。また、ORゲート552は、過電流検出部40から出力される過電流検出信号IN−NCHPおよびIN−NCHMの論理和をとり、これらの信号のいずれかがHレベルである場合にHレベルの信号を出力する。
タイマ561は、ORゲート551の出力信号が時間T1以上に亙ってHレベルを維持したときにパルスOCP1を出力する。また、タイマ562は、ORゲート552の出力信号が時間T1以上に亙ってHレベルを維持したときにパルスOCN1を出力する。タイマ571は、パルスOCP1をトリガとして、PチャネルトランジスタPPまたはPMに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCP2を出力するとともに、この放電指令パルスOCP2の立ち下がり時にパルスOCP2Tを出力する。また、タイマ572は、パルスOCN1をトリガとして、NチャネルトランジスタNPまたはNMに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCN2を出力するとともに、この放電指令パルスOCN2の立ち下がり時にパルスOCN2Tを出力する。
放電指令パルスOCP2が発生した場合、これはそのまま放電指令パルスOCPchとして、ゲート信号制御部60Aに供給される。ANDゲート582には、放電指令パルスOCP2をインバータ581により反転した信号と放電指令パルスOCN2が入力される。従って、放電指令パルスOCN2は、放電指令パルスOCP2が発生していない場合に限り、ANDゲート582を通過し、放電指令パルスOCNchとしてゲート信号制御部60Aに供給される。ORゲート583は、放電指令パルスOCP2およびOCN2の論理和であるパルスOCを出力する。上記第1実施形態と同様、このパルスOCは、警報の出力、電源の切断などのシステム制御に用いられる。
パルスOCP2TおよびOCN2Tは、ORゲート591を介してタイマ592に与えられる。タイマ592は、ORゲート591を介して与えられるパルスOCP2TまたはOCN2Tをトリガとし、パルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFを出力し、ゲート信号制御部60Aに供給する。なお、タイマ592は、前掲図10のようなセット−リセットフリップフロップに置き換えてもよい。
ゲート信号制御部60Aにおいて、プリドライバ641〜644と、それらの前段のローアクティブNANDゲート631、ANDゲート632、ローアクティブNANDゲート633およびANDゲート634の構成は上記第1実施形態におけるゲート信号制御部60と同様である。
ローアクティブNANDゲート631、ANDゲート632、ローアクティブNANDゲート633およびANDゲート634の各々の一方の入力端子には、ローアクティブNORゲート651、ORゲート652、ローアクティブNORゲート653およびORゲート654の各出力端子が各々接続されている。また、ローアクティブNANDゲート631、ANDゲート632、ローアクティブNANDゲート633およびANDゲート634の各々の他方の入力端子には、ORゲート671、NORゲート672、ORゲート673およびNORゲート674の各出力端子が各々接続されている。
ローアクティブNORゲート651、ORゲート652、ローアクティブNORゲート653およびORゲート654の各々の一方の入力端子には、PWM変調部20から出力されるパルスPWMPP、PWMNP、PWMPMおよびPWMNMが各々入力される。また、ローアクティブNORゲート651、ORゲート652、ローアクティブNORゲート653およびORゲート654の各々の他方の入力端子には、放電指令パルスOCNchをインバータ661により反転した信号、放電指令パルスOCPch、放電指令パルスOCNchをインバータ662により反転した信号および放電指令パルスOCPchが入力される。
そして、ORゲート671には、放電指令パルスOCPchおよび遮断指令パルスPNchOFFが、NORゲート672には、放電指令パルスOCNchおよび遮断指令パルスPNchOFFが、ORゲート673には、放電指令パルスOCPchおよび遮断指令パルスPNchOFFが、NORゲート674には、放電指令パルスOCNchおよび遮断指令PNchOFFが各々入力される。
以上が本実施形態によるD級増幅器の構成の詳細である。
次に本実施形態の動作について説明する。
まず、出力バッファ回路10の出力端子の天絡、地絡等がなく、出力バッファ回路10の各トランジスタに流れる電流が許容範囲内に収まっている場合、過電流検出部40は、過電流検出信号IN−PCHP、IN−PCHM、IN−NCHPおよびIN−NCHMを全てLレベルとする。この場合、タイミング信号発生部50Aは、放電指令パルスOCPch、OCNchおよび遮断指令パルスPNchOFFのいずれも出力しない。このため、ゲート信号制御部60Aでは、ORゲート671および673の各出力信号はLレベル、NORゲート672および674の各出力信号はHレベルとなる。従って、この状態では、PWM変調部20から出力されるパルスPWMPPは、ローアクティブNORゲート651およびローアクティブNANDゲート631を介してプリドライバ641に供給され、パルスPWMNPは、ORゲート652およびANDゲート632を介してプリドライバ642に供給される。また、パルスPWMPMは、ローアクティブNORゲート653およびローアクティブNANDゲート633を介してプリドライバ643に供給され、パルスPWMNMは、ORゲート654およびANDゲート634を介してプリドライバ644に供給される。これらのパルスは、各プリドライバ641〜644からゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMとして出力バッファ回路10のトランジスタPP、NP、PMおよびNMに各々供給される。
さて、図14(a)に示すように、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの組がON状態となったとき、PチャネルトランジスタPPに過電流が流れたとする。この場合、過電流検出部40は過電流検出信号IN−PCHPをHレベルとする。この過電流検出信号IN−PCHPが時間T1以上に亙ってHレベルを維持すると、タイミング信号発生部50A(図13参照)では、PチャネルトランジスタPPに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCPchが出力され、その後、パルスOCPchの立ち下がりによりパルス幅T3のパルスPNchOFFが出力される。
ゲート信号制御部60A(図13参照)において、放電指令パルスOCPchは、PチャネルトランジスタPPとの関係において放電用スイッチング素子でないPチャネルトランジスタPPおよびPMの各駆動系内のORゲート671および673に各々供給される。このため、放電指令パルスOCPchがHレベルである間、ORゲート671および673の各出力信号がHレベルとなることから、ゲート信号CNTPPおよびCNTPMがHレベルとなり、PチャネルトランジスタPPおよびPMがOFF状態となる。
一方、放電指令パルスOCPchは、PチャネルトランジスタPPとの関係において放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNPおよびNMの各駆動系内のORゲート652および654に供給される。このため、放電指令パルスOCPchがHレベルである間、ORゲート652および654の各出力信号がHレベルとなる。また、放電指令パルスOCPchは、NORゲート672および674には供給されないので、NORゲート672および674の各出力信号はHレベルとなる。従って、放電指令パルスOCPchがHレベルである間、ゲート信号CNTNPおよびCNTNMがHレベルとなり、図14(b)に示すように、NチャネルトランジスタNPおよびNMはON状態となる。
その後、放電指令パルスOCPchが立ち下って遮断指令パルスPCchOFFが立ち上がると、ORゲート671および672の各出力信号がHレベル、NORゲート672および674の各出力信号がLレベルとなる。このため、ゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMが各々Hレベル、Lレベル、HレベルおよびLレベルとなり、図14(c)に示すように、出力バッファ回路10の全てのトランジスタPP、NP、PMおよびNMがOFF状態となる。
以上のように、本実施形態では、負荷Lから見て高レベル電源線1側にあるPチャネルトランジスタPPにおいて過電流が検出された場合、低レベル電源線2側にあるNチャネルトランジスタNPおよびNMが放電用スイッチング素子とされる。そして、本実施形態におけるタイミング信号発生部50Aおよびゲート信号制御部60Aは、図14(b)および(c)に示すように、放電用スイッチング素子以外のトランジスタは直ちにOFF状態とし、放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNPおよびNMについては一時的にON状態とした後、OFF状態に遷移させる。
このように各トランジスタの状態を遷移させると、過電流の流れていたPチャネルトランジスタPPをOFF状態にしたときに、NチャネルトランジスタNPおよびNMがON状態となるため、負荷Lのインダクタンスに蓄積された電気エネルギーが、NチャネルトランジスタNP、負荷LおよびNチャネルトランジスタNMという電源を含まない閉ループの放電経路を介して放電される。従って、出力バッファ回路10の各トランジスタのドレインに過大な電圧が発生するのを効果的に抑えることができる。
他のトランジスタにおいて過電流が検出された場合も同様である。図15は、過電流が検出された場合に行われる各トランジスタの状態遷移の態様を過電流の検出箇所別に示したものである。図15に示すように、PチャネルトランジスタPPにおいて過電流が検出された場合の各トランジスタの状態遷移は図14(a)〜(c)を参照して説明した通りである。
PチャネルトランジスタPMにおいて過電流が検出された場合においても、タイミング信号発生部50Aでは、PチャネルトランジスタPPにおいて過電流が検出された場合と同様、パルス幅T2の放電指令パルスOCPchが出力され、その後、放電指令パルスOCPchの立ち下がりによりパルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFが出力される。従って、NチャネルトランジスタNPおよびNMが各々放電用スイッチング素子とされる。そして、放電用スイッチング素子でないPチャネルトランジスタPPおよびPMは直ちにOFF状態とされ、放電用スイッチング素子であるNチャネルトランジスタNPおよびNMは、時間T2だけON状態とされた後、OFF状態とされる。
NチャネルトランジスタNPにおいて過電流が検出された場合には、タイミング信号発生部50Aでは、NチャネルトランジスタNPに対応付けられたパルス幅T2の放電指令パルスOCNchが出力され、その後、放電指令パルスOCNchの立ち下がりによりパルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFが出力される。
ゲート信号制御部60Aにおいて、放電指令パルスOCNchは、NチャネルトランジスタNPとの関係において放電用スイッチング素子でないNチャネルトランジスタNPおよびNMの各駆動系内のNORゲート672および674に各々供給される。このため、放電指令パルスOCNchがHレベルである間、NORゲート672および674の各出力信号がLレベルとなることから、ゲート信号CNTNPおよびCNTNMがLレベルとなり、NチャネルトランジスタNPおよびNMがOFF状態となる。
一方、放電指令パルスOCNchは、インバータ661および662に与えられ、これらのインバータの各出力信号が、NチャネルトランジスタNPとの関係において放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPPおよびPMの各駆動系内のローアクティブNORゲート651および653に各々供給される。このため、放電指令パルスOCNchがHレベルである間、ローアクティブNORゲート651および653の各出力信号がLレベルとなる。また、放電指令パルスOCNchは、ORゲート671および673には供給されないので、ORゲート671および673の各出力信号はLレベルとなる。従って、放電指令パルスOCNchがHレベルである間、ゲート信号CNTPPおよびCNTPMがLレベルとなり、PチャネルトランジスタPPおよびPMはON状態となる。
その後、放電指令パルスOCNchが立ち下って遮断指令パルスPCchOFFが立ち上がると、ORゲート671および672の各出力信号がHレベル、NORゲート672および674の各出力信号がLレベルとなる。このため、ゲート信号CNTPP、CNTNP、CNTPMおよびCNTNMが各々Hレベル、Lレベル、HレベルおよびLレベルとなり、出力バッファ回路10の全てのトランジスタPP、NP、PMおよびNMがOFF状態となる。
以上のように負荷Lから見て低レベル電源線2側のNチャネルトランジスタNPにおいて過電流が検出された場合には、負荷Lから見て高レベル電源線1側のPチャネルトランジスタPPおよびPMが放電用スイッチング素子とされる。
NチャネルトランジスタNMにおいて過電流が検出された場合においても、タイミング信号発生部50Aでは、NチャネルトランジスタNPにおいて過電流が検出された場合と同様、パルス幅T2の放電指令パルスOCNchが出力され、その後、放電指令パルスOCNchの立ち下がりによりパルス幅T3の遮断指令パルスPNchOFFが出力される。従って、PチャネルトランジスタPPおよびPMが各々放電用スイッチング素子とされる。そして、放電用スイッチング素子でないNチャネルトランジスタNPおよびNMは直ちにOFF状態とされ、放電用スイッチング素子であるPチャネルトランジスタPPおよびPMは、時間T2だけON状態とされた後、OFF状態とされる。
また、PチャネルトランジスタPPおよびNチャネルトランジスタNMの両方において過電流が検出された場合には、PチャネルトランジスタPPについての過電流検出を優先してNチャネルトランジスタNPおよびNMが放電用スイッチング素子とされ、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPの両方において過電流が検出された場合には、PチャネルトランジスタPMについての過電流検出を優先してNチャネルトランジスタNPおよびNMが放電用スイッチング素子とされる。
以上説明したように、本実施形態によれば、出力バッファ回路10において高レベル電源線1側のPチャネルトランジスタにおいて過電流が検出された場合には、低レベル電源線2側の2個のNチャネルトランジスタが放電用スイッチング素子とされ、低レベル電源線2側のNチャネルトランジスタにおいて過電流が検出された場合には、高レベル電源線1側の2個のPチャネルトランジスタが放電用スイッチング素子とされる。そして、放電用スイッチング素子でないトランジスタはOFF状態とされ、放電用スイッチング素子である2個のトランジスタは一時的にON状態とされた後、OFF状態とされる。従って、負荷Lのインダクタンスに蓄積された電気エネルギーを、負荷と放電用スイッチング素子である2個のトランジスタを含む閉ループを介して放電させ、出力バッファ回路10の各トランジスタのドレインに過大な電圧が加わるのを効果的に抑えることができる。
<第3実施形態>
本実施形態は、上記第1実施形態に変形を加えたものである。図16は、本実施形態においてPチャネルトランジスタPPの過電流が検出された場合に行われる各トランジスタの状態遷移を示している。また、図17は、本実施形態において過電流が検出された場合に行われる各トランジスタの状態遷移の態様を過電流の検出箇所別に示したものである。なお、このような状態遷移を得るためには、上記第1実施形態におけるゲート信号制御部60の回路構成を変更する必要があるが、そのような変更は当業者であれば容易になし得る事項なので説明を省略する。
図16(a)に示すように、PチャネルトランジスタPPにおいて過電流が検出された場合、本実施形態では、PチャネルトランジスタPMおよびNチャネルトランジスタNPを放電用スイッチング素子とする。そして、図16(b)および(c)に示すように、放電用スイッチング素子でないトランジスタPPおよびNMは直ちにOFF状態とし、放電用スイッチング素子であるトランジスタPMおよびNPは、一時的にON状態とした後、OFF状態とする。このように各トランジスタの状態を遷移させると、負荷Lに蓄積された電気エネルギーをトランジスタNP、負荷LおよびトランジスタPMという経路を介して放電させることができ、出力バッファ回路10の各トランジスタに加わる電圧が過大になるのを防止することができる。
他の箇所において過電流が検出された場合も同様であり、本実施形態では、図17に示すように、負荷Lの一端と高レベル電源線1との間に介挿されたPチャネルトランジスタ(例えばトランジスタPM)において過電流が検出された場合には、負荷Lの一端と低レベル電源線2との間に介挿されたNチャネルトランジスタ(例えばトランジスタNM)と負荷Lの他端と高レベル電源線1との間に介挿されたPチャネルトランジスタ(例えばトランジスタPP)とを放電用スイッチング素子とする。また、負荷Lの一端と低レベル電源線2との間に介挿されたNチャネルトランジスタ(例えばトランジスタNP)において過電流が検出された場合には、負荷Lの一端と高レベル電源線1との間に介挿されたPチャネルトランジスタ(例えばトランジスタPP)と負荷Lの他端と低レベル電源線2との間に介挿されたNチャネルトランジスタ(例えばトランジスタNM)とを放電用スイッチング素子とする。また、同時にON状態となるPチャネルトランジスタおよびNチャネルトランジスタの両方において過電流が検出された場合は、Pチャネルトランジスタについての過電流検出を優先する。そして、放電用スイッチング素子でないトランジスタは直ちにOFF状態とし、放電用スイッチング素子であるトランジスタは、一時的にON状態とした後、OFF状態とする。
本実施形態によれば、過電流検出により出力バッファ回路10の各トランジスタをOFF状態に遷移させる際、過電流の検出されたトランジスタを除く各トランジスタのうち高レベル電源線1および低レベル電源線2間において負荷Lを間に挟んで直列接続されたPチャネルトランジスタおよびNチャネルトランジスタが放電用スイッチング素子とされ、負荷Lに蓄積された電気エネルギーがこの放電用スイッチング素子を介して放電される。従って、本実施形態においても、出力バッファ回路10の各トランジスタに過大な電圧が加えられるのを抑制することができる。
<他の実施形態>
以上、この発明の第1〜第3実施形態について説明したが、この発明にはこれ以外にも他の実施形態があり得る。例えば次の通りである。
(1)上記各実施形態では、同時にON状態となるPチャネルトランジスタおよびNチャネルトランジスタの両方において過電流が検出された場合は、Pチャネルトランジスタについての過電流検出を優先したが、Nチャネルトランジスタについての過電流検出を優先してもよい。
(2)上記各実施形態では、出力バッファ回路の各スイッチング素子を電界効果トランジスタにより構成したが、各スイッチング素子をバイポーラトランジスタにより構成してもよい。
(3)上記各実施形態において、PWM変調部20、過電流検出部40、タイミング信号発生部50(50A)、ゲート信号制御部60(60A)が行う処理をプロセッサに実行させ、このプロセッサによる制御の下で、出力バッファ回路10の駆動および過電流保護を行うようにしてもよい。
100……D級増幅器、1……高レベル電源線、2……低レベル電源線、10……出力バッファ回路、PP,PM……Pチャネルトランジスタ、NP,NM……Nチャネルトランジスタ、20……PWM変調部、40……過電流検出部、50,50A……タイミング信号発生部、60,60A……ゲート信号制御部。