JP2007321058A - 水性変性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、基材上に該樹脂組成物を含む塗液を塗工し乾燥して被膜を設ける工程において塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
(1)水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、基材上に該樹脂組成物を含む塗液を塗工し乾燥して被膜を設ける工程において塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(2)原料ポリオレフィン樹脂を塩素、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーから選ばれる1種類以上の極性付与剤を用いて変性したことを特徴とする(1)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(3)融点調整剤を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(4)融点調整剤のHildebrand Parameterが22MPa1/2以下である(2)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(5)原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性した後、水性化するときに融点調整剤を添加することを特徴とする(1)〜(4)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
(6)水性変性ポリオレフィン樹脂の融点を、融点調整剤を用いて低下させることを特徴とする(1)〜(4)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂の融点の調整方法。
(7)基材上に水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を塗工し、該水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点より19℃以上26℃以下の範囲で高い乾燥温度で乾燥することを特徴とする被膜の形成方法。
発明者らは、これまでの知見で、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物が基材に濡れ、目的の乾燥温度において造膜するだけでは十分な付着性が得られず、ある程度の結晶性を持たせなければ、付着性を向上させることができないことを確認している。すなわち、より高い付着力を発現するためには、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物が基材に濡れ、かつ造膜性と結晶性のバランスをとることが重要であるということを確認している(Paint&Coatings Industry,p38,November 2005)。
本発明において、低温とは120℃よりも低い温度をいい、特に90℃以下室温以上の範囲のことをいう。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体。
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩。
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト重量%は、アルカリ滴定法或いはフーリエ変換赤外分光法により求めた。
(一般式I) CH2=CR1COOR2 ・・・(I)
(式(I)中、R1=H又はCH3、R2=CnH2n+1、n=8〜18の整数)」
極性付与剤として不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーを用いる場合は、反応助剤としてスチレン、o−、p−、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等を添加しても良い。
水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を40℃に設定した送風乾燥機で3日間乾燥後、得られた固形物を厚さ0.5〜1mmになるようにカットし、その約1〜3mgをスライドガラスとプレパラートで挟み、微量融点測定装置((株)ヤナコ機器開発研究所製 MPシリーズ)の試料台に載せる。ヒーターを25〜30℃/minの昇温速度で加熱し、固形物に変化が現れ始めたときのヒーターの温度と固形物が完全に融解したときのヒーターの温度を測定し平均化する。同様の測定を3回繰り返し、それら3点の平均値を本発明でいう融点とする。このとき、小数点第1位は四捨五入する。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、乾燥温度よりも19℃より低くならないとき、例えば乾燥温度が80℃の場合は融点が61℃より高い場合は、良好な被膜を形成することが困難となり、接着力が低下する。また、前記融点が乾燥温度よりも27℃以上低くなる場合、例えば乾燥温度が80℃の場合は融点が53℃より低い場合は、被膜は良好に形成されるが、樹脂の結晶性が低下するため、基材への接着力が低下する。すなわち、本発明においては、融点が乾燥温度より19℃以上26℃以下の範囲で低い水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いることにより、造膜性と結晶性のバランスを最適にし、低温乾燥用の接着剤用樹脂として接着力を最大限に発現するものである。
(1)原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性する。
(2)変性ポリオレフィン樹脂を水性化する際に融点調整剤を添加する。
上記(1)及び(2)のうち、(1)については、接着性の観点から本願の樹脂については必須である。(1)の変性により水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が上述する範囲にならない場合には、さらに(2)の方法を用いて水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点を下げることができる。
極性付与剤として塩素を用いた場合は、塩素化工程を経て、塩素化度を高めることにより、原料ポリオレフィン樹脂の融点を大きく下げることも可能であるので、原料ポリオレフィン樹脂の融点は、特に問われないが、塩素化度が高すぎると付着力が低下するため、好ましくは、融点が乾燥温度を基準値として、それより20℃低い〜60℃高い樹脂がよい。本発明の融点にするための塩素の含有量(塩素化度)は、一般的には、2〜35重量%が好ましいが、原料樹脂により同じ塩素化度でも融点が異なるため、塩素化工程において、樹脂の融点をサンプリングしながら塩素化度を調整する。
前記(1)の変性により水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が上述する範囲にならない場合でも、水性化する際に融点調整剤を添加することで、融点を下げることができる。具体的には、変性ポリオレフィンを水性化後に、以下の融点調整剤を添加する。
本発明において造膜助剤を用いる場合は、変性ポリオレフィン樹脂を水性化後に添加する。
(製造例1〜4)
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン含有量:96wt%、エチレン含有量4wt%、MFR=2.0g/min、融点(Tm)=125℃)をバレル温度350℃に設定した二軸押出機に供給して熱減成を行い、190℃における溶融粘度が約1500mPa・sのプロピレン系ランダム共重合体を得た。減成プロピレン系ランダム共重合体100重量部、無水マレイン酸4重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部をあらかじめ十分に混合後、二軸押出機(L/D=34、Φ=40mm、第1バレル〜第8バレル)に供給し、滞留時間が5分、回転数300rpm、バレル温度が120℃(第1、2バレル)、180℃(第3、4バレル)、100℃(第5バレル)、130℃(第6〜8バレル)の条件で反応を行い、第6〜8バレルの減圧処理にて未反応の無水マレイン酸を除去して、無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体を得た。この樹脂2kgをグラスライニングされた50L容反応釜に投入し、20Lのクロロホルムを加え、2kg/cm2の圧力下、紫外線を照射しながらガス状の塩素を反応釜底部より吹き込み塩素化した。塩素含有量を調節するため途中抜き取りを行い、塩素化含有率が15.2、19.1、20.4、21.6重量%のサンプルを得た(塩素含有率の低い順から製造例1、2、3、4とする)。次いで、溶媒であるクロロホルムをエバポレーターで留去し、それぞれを固形分30重量%に調製した。このクロロホルム溶液に、安定剤(t−ブチルフェニルグリシジルエーテル)を対樹脂1.5重量%加えた後、二軸押出機(L/D=34、Φ=40mm、第1バレル〜第7バレル)に供給し、滞留時間が10分、回転数50rpm、バレル温度が90℃(第1〜6バレル)、70℃(第7バレル)の条件で固形化を行った。第1、4〜6バレルで減圧処理を行い、塩素含有率の異なる4種類の無水マレイン酸変性塩素化プロピレン系ランダム共重合体を得た。
撹拌機、冷却管、温度計および滴下ロートを取り付けた2L容4つ口フラスコ中に、得られた無水マレイン酸変性塩素化プロピレン系ランダム共重合体を200g、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)を35g、安定剤(ステアリルグリシジルエーテル)8g、トルエン36gを添加し、120℃で30分混錬した。次に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール8gを5分かけて添加し、5分保持した後、90℃の温水970gを40分かけて添加した。減圧処理を行い、トルエンを除去した後、室温まで撹拌しながら冷却し、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
製造例1〜4で得られた水性変性ポリオレフィン樹脂組成物100gを撹拌下、融点調整剤としてエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(Hildebrand Parameter=19.4MPa1/2)5gを逐次添加した。
製造例1〜4で得られた水性変性ポリオレフィン樹脂組成物100gを撹拌下、融点調整剤としてジエチレングリコール−モノ−エチルエーテルアセテート(Hildebrand Parameter=17.4MPa1/2)5gを逐次添加した。
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン含有量:88wt%、エチレン含有量12wt%、重量平均分子量55,000、Tm=70℃)100重量部、無水マレイン酸4重量部、メタクリル酸メチル4重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部を、180℃に設定した二軸押出機を用いて反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去し、変性プロピレン系ランダム共重合体を得た。
撹拌機、冷却管、温度計および滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物200g、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)35g、トルエン36gを添加し、120℃で30分混練した。次に、ジメチルエタノールアミン7gを5分かけて添加し、5分保持した後、90℃のイオン交換水970gを40分かけて添加した。引き続き、室温まで撹拌しながら冷却し、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン含有量:92wt%、エチレン含有量8wt%、、重量平均分子量50,000、Tm=95℃)100重量部、無水マレイン酸8重量部、メタクリル酸ステアリル8重量部、ジ-t-ブチルパーオキシド4重量部を、180℃に設定した二軸押出機を用いて反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去し、変性プロピレン系ランダム共重合体を得た。得られた樹脂をジメチルエタノールアミン12gに変えた以外は製造例13と同様の操作で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
製造例14において、無水マレイン酸4重量部、メタクリル酸ステアリル3重量部、ジ-t-ブチルパーオキシド2量部に変えて同様の変性反応を行った。得られた樹脂を製造例13と同様の操作で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
製造例14において、無水マレイン酸2重量部、メタクリル酸ステアリル2重量部、ジ-t-ブチルパーオキシド1量部に変えて同様の変性反応を行った。得られた樹脂をジメチルエタノールアミン3gに変えた以外は製造例13と同様の操作で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
塩素含有率、重量平均分子量、酸・アクリルグラフト率は変性ポリオレフィン樹脂を用い、それ以外の測定は水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いて測定した。
(1)塩素含有率:JIS−K7229に準じて測定した。
(2)重量平均分子量(Mw):GPC(標準物質:ポリスチレン樹脂)によって測定した。
(3)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト率(以下、グラフト率A):アルカリ滴定法にて求めた。
(4)ラジカル重合性モノマーのグラフト率(以下、グラフト率B):アルカリ滴定法にて求めた。酸基を持たないエステル等の場合は、FT−IRにより求めた。
(5)融点:水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を40℃で3日間乾燥後、得られた固形物を厚さ0.5〜1mmになるようにカットし、その約1〜3mgをスライドガラスとプレパラートで挟み、微量融点測定装置((株)ヤナコ機器開発研究所製 MP−500D)の試料台に載せた。ヒーターを25〜30℃/minの昇温速度で加熱し、固形物に変化が現れ始めたときのヒーターの温度と固形物が完全に融解したときのヒーターの温度を測定し、平均化した。同様の測定を3回繰り返し、それら3点の平均値を融点とした。
(6)平均粒子径:粒度分布測定装置(Malvern Instruments製)にて測定した。
(1)剥離強度:本発明の付着力は、非極性基材と水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の乾燥被膜間の剥離強度を意味する。表面−界面切削法(SAICAS法、ダイプラ・ウィンテス製)にて室温で測定した。測定用の試料は以下の手順で作製した。
(試料作製)イソプロパノールで表面を脱脂した超高剛性ポリプロピレン板に、乾燥被膜厚が10以上15μm以下となるように水性変性ポリオレフィン樹脂組成物をスプレー塗装し、80℃で10分間プレヒートを行った。その後、80℃で30分あるいは90℃で20分間の焼付けを行った。5日間室温で静置後、剥離強度試験を行った。
SAICAS法で測定される剥離強度は、基材の種類、焼付け温度、添加剤の種類等にもよるが、およそ0.20〜1.00kg/cmの範囲にあり、その差が0.1kg/cm以上あるということは、剥離強度として有意差があるとみなせる。
イソプロパノールで表面を脱脂した超高剛性ポリプロピレン板の一部をマスクし、乾燥被膜厚が10以上15μm以下となるように水性変性ポリオレフィン樹脂組成物をスプレー塗装し、80℃で10分間プレヒートを行った。次に2液型上塗り白塗料を乾燥被膜厚が45以上50μm以下になるようにスプレー塗装し、15分室温に静置した後、80℃で30分間あるいは90℃で20分間の焼付けを行った。得られた試験片の無塗装と塗膜の境界に対して、高さ20cmから20℃、水圧50kgf/cm2の圧水を30秒間噴射した。噴射後の塗膜の状態を観察し、塗膜に変化のないものを○、塗膜に僅かに変化のあるものを△、塗膜が剥離したものを×として評価した。
Claims (7)
- 水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、基材上に該樹脂組成物を含む塗液を塗工し乾燥して被膜を設ける工程において塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 原料ポリオレフィン樹脂を塩素、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーから選ばれる1種類以上の極性付与剤を用いて変性したことを特徴とする請求項1に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 融点調整剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 融点調整剤のHildebrand Parameterが22MPa1/2以下である請求項2に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性した後、水性化するときに融点調整剤を添加することを特徴とする請求項1〜4に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
- 水性変性ポリオレフィン樹脂の融点を、融点調整剤を用いて低下させることを特徴とする請求項1〜4に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂の融点の調整方法。
- 基材上に水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を塗工し、該水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点より19℃以上26℃以下の範囲で高い乾燥温度で乾燥することを特徴とする被膜の形成方法。
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