JP2007321058A - 水性変性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents

水性変性ポリオレフィン樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、低温乾燥時に非極性基材に対して優れた付着性を有する水性変性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、水性化後の樹脂組成物の融点が、該樹脂組成物を含有する塗液の乾燥温度よりも19〜26℃低い水性変性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【解決手段】 水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、基材上に該樹脂組成物を含む塗液を塗工し乾燥して被膜を設ける工程において塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低温乾燥時に非極性基材に対して優れた付着性を有する水性変性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、水性化後の水性樹脂組成物の融点が、乾燥させる温度よりも19〜26℃低い水性変性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
従来、ポリプロピレン、ポリエチレン等の難接着性ポリオレフィン基材に対して、優れた接着性を持つ塩素化ポリオレフィン樹脂や不飽和カルボン酸及び/またはその無水物等の酸を用いて変性したプロピレン系ランダム共重合体がバインダーとして用いられてきた。自動車産業においても、基材のポリオレフィンに難接着性の塗料を接着させるためのバインダー(自動車産業ではこれを特にプライマーという)として、上記塩素化ポリオレフィン樹脂や不飽和カルボン酸及び/またはその無水物等の酸を用いて変性したプロピレン系ランダム共重合体が用いられてきた。
近年、主としてコストダウンや基材の変形防止を目的に、自動車部品等の塗装ラインでは乾燥(焼付け)温度が低下する傾向にある。さらに、環境問題の観点から溶剤系プライマーから水系プライマーへと移行しており、上記塩素化ポリオレフィン樹脂や不飽和カルボン酸及び/またはその無水物等の酸を用いて変性したプロピレン系ランダム共重合体の水系化が求められている。
「特許文献1」〜「特許文献2」等では、低融点の樹脂を発底とした水性変性ポリオレフィン樹脂組成物をプライマーに含有させたり、最低造膜温度(MFT)がある温度より低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いることで、低温焼付け時の造膜性を向上させる方法が提案されている。しかし、これまでの水性変性ポリオレフィン樹脂組成物では、濡れ性および造膜性が十分であっても接着性が不十分な場合が多かった。
特開2003−327761号 特開2003−171512号 特開2004−157711号
本発明は、低温乾燥時に非極性基材に対して優れた付着性を発現する水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が該組成物を含有する塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低い水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いることによりその目的を達成の融点がし得ることを見いだし、本発明を成すに至った。なお、本明細書では、「19℃以上26度以下の範囲で低い」ということを「19℃〜26℃低い」と表現することもある。
即ち、本発明は、
(1)水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、基材上に該樹脂組成物を含む塗液を塗工し乾燥して被膜を設ける工程において塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(2)原料ポリオレフィン樹脂を塩素、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーから選ばれる1種類以上の極性付与剤を用いて変性したことを特徴とする(1)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(3)融点調整剤を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(4)融点調整剤のHildebrand Parameterが22MPa1/2以下である(2)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(5)原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性した後、水性化するときに融点調整剤を添加することを特徴とする(1)〜(4)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
(6)水性変性ポリオレフィン樹脂の融点を、融点調整剤を用いて低下させることを特徴とする(1)〜(4)に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂の融点の調整方法。
(7)基材上に水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を塗工し、該水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点より19℃以上26℃以下の範囲で高い乾燥温度で乾燥することを特徴とする被膜の形成方法。
本発明者らは、付着力向上のためには、設定された乾燥温度において、十分造膜する範囲で結晶性を高める必要があることを見出した。特に、低温乾燥の場合は、造膜性と結晶性のバランスをとることが困難であった。本発明により、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が乾燥温度よりも19〜26℃低くなるようにすることで、低温乾燥においても付着力の高い水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物は、低温乾燥用の水性バインダー樹脂として好適である。特に、低温焼き付け用プライマー樹脂として好適である。
一般的に、実用上、十分な接着性を発現させるためには、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物が基材に濡れ、さらに造膜することが必須条件である。水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を目的の温度で乾燥し被膜を得るためには、1)水の潜熱、2)被膜形成のメカニズムを考慮する必要があり、溶剤系に比べ乾燥時に熱量を必要とする。そのため、水性品は溶剤系に比べ低温焼付けへの対応が困難である。
その対応としては、1)融点の低い原料樹脂を用いる、2)変性の種類や度合いを最適化する、3)融点調整剤等の助剤を添加する等で融点や最低造膜温度(MFT)を下げる方法が有効である。また、アルコール等を添加することで、基材への濡れ性を改善し、溶媒の揮発性を高める方法も有効である。
発明者らは、これまでの知見で、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物が基材に濡れ、目的の乾燥温度において造膜するだけでは十分な付着性が得られず、ある程度の結晶性を持たせなければ、付着性を向上させることができないことを確認している。すなわち、より高い付着力を発現するためには、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物が基材に濡れ、かつ造膜性と結晶性のバランスをとることが重要であるということを確認している(Paint&Coatings Industry,p38,November 2005)。
しかしながら、特に、低温乾燥の場合は、造膜性と結晶性のバランスをとることが非常に困難である。なぜなら、造膜性を上げると結晶性が下がり、結晶性を上げると造膜性が下がるという、両者の物性は相反するものだからである。発明者らは、造膜性と結晶性のバランスが、融点調整剤等の添加剤の有無に係わらず、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物が特定の融点をもつ場合にのみ最も良好となり、低温乾燥時に非常に優れた付着力を発現することを見出した。特に、本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物は、自動車塗装用のプライマー樹脂として適している。以下に、最良の形態を述べる。
本明細書においては、乾燥とは、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を乾燥し、水分を蒸発させることをいう。また、「乾燥」を「焼き付け」ということがある。焼き付けとは、主に自動車部品等の塗装ラインで塗料を乾燥させることをいう。
本発明において、低温とは120℃よりも低い温度をいい、特に90℃以下室温以上の範囲のことをいう。
本発明の水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、極性付与剤で変性した変性ポリオレフィンを水に分散させたものをいう。また、水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物を水性変性ポリオレフィン樹脂組成物ということもある。本明細書においては、本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の発底原料であるポリオレフィン樹脂を原料ポリオレフィン樹脂ということがある。なお、本発明において、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物とは、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物単独のものに限定されるものではなく、他の樹脂や助剤を含む場合もある。後述するように、融点調整剤を含むのは好ましい形態である。
本発明の被着材となる非極性樹脂とはポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のシート、フィルム形成物、板状形成物をいう。本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物は、これらの基材がプラズマ、コロナ等による表面処理がなされていない難接着性のものであっても使用できることを特徴としているが、表面処理されている基材であっても同様に使用できる。
本発明で用いる原料ポリオレフィン樹脂は、エチレン又はα−オレフィンを共重合して得られたポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(以下、これらを併せてプロピレン系ランダム共重合体ということがある)から選ばれる樹脂である。これらの樹脂は、単独で用いても良いし、複数の樹脂を混合して用いても良い。エチレン又はα−オレフィンを共重合する際の重合触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒、或いはメタロセン触媒を用いることができるが、低温焼付けに対応するにはメタロセン触媒を用いることが好ましい。
前述のメタロセン触媒としては、公知のものが使用できる。具体的には以下に述べる成分(1)及び(2)、さらに必要に応じて(3)を組み合わせて得られる触媒が望ましい。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体。
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩。
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
メタロセン触媒を用いて合成したポリオレフィン樹脂は、分子量分布が狭い、ランダム共重合性に優れ組成分布が狭い、共重合しうるコモノマーの範囲が広い、プロピレン成分高含有でも融点が低いといった特徴があり、本発明の原料ポリオレフィン樹脂として好ましい。
本発明の原料ポリオレフィン樹脂の成分組成は、特に限定されるものではないが、プロピレン成分が90モル%以上のものを用いることが好ましい。90モル%以下のものを用いた場合、ポリプロピレン基材に対する接着性が低下する。
本発明の原料ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されない。しかし、後述する極性付与剤等で変性した変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、15,000〜200,000が好ましい。このため、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が200,000より大きい場合は、熱やラジカルの存在下で減成して、分子量を適当な範囲に調整することが好ましい。尚、本発明における重量平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
本発明では、原料ポリオレフィン樹脂に極性を付与する極性付与剤で原料ポリオレフィン樹脂を変性する。極性付与剤としては、塩素、不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上を用いる。これらは、二種或いは三種全てを組み合わせてもよい。
以下の記述においては、極性付与剤として塩素を用いた場合は、塩素化変性ポリオレフィン樹脂とし、極性付与剤として塩素を用いていない場合は、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂とする。また、極性付与剤として塩素を用いる用いないとにかかわらず、極性付与剤で変性したポリオレフィン樹脂を総じて変性ポリオレフィン樹脂とする。
塩素化変性ポリオレフィン樹脂中の塩素含有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは2〜35重量%で、特に好ましくは、4〜25重量%である。2重量%より少ないと、各種非極性基材への接着性は良くなるが、水性化が困難になる。又、35重量%より多いと、各種非極性基材への接着性が低下する。尚、塩素含有率はJIS−K7229に準じて測定した値である。
本発明における不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物とは、カルボキシル基を含有する不飽和化合物及びその無水物を意味し、誘導体とは該化合物のモノ又はジエステル、アミド、イミド等を意味する。例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、ナジック酸及びこれらの無水物、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは無水イタコン酸、無水マレイン酸である。不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物は、単独或いは2種以上を混合して使用することがでる。
変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物のグラフト重量は、0.1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜15重量%、特に好ましくは1.0〜10重量%である。なお、極性付与剤として塩素を用いていない場合には、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂中での0.5〜20重量%が好ましく、特に好ましくは、1.0〜10重量%である。
極性付与剤として、不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物を単独で用いた場合は、塩素化変性ポリオレフィン樹脂では0.1重量%、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂では0.5重量%よりもグラフト重量が少ないと接着剤組成物の極性の被着体に対する接着性が低下する。又、逆に多すぎると未反応物が多く発生し、又、非極性の非着体に対する接着性が低下するため好ましくない。
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト重量%は、アルカリ滴定法或いはフーリエ変換赤外分光法により求めた。
本発明におけるラジカル重合性モノマーとは、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物を意味する。尚、(メタ)アクリル化合物とは、分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含む化合物である。例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、n−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を混合して使用することができ、その混合割合を自由に設定することができる。
(メタ)アクリル化合物としては、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を、20重量%以上含むものが好ましい。前記(メタ)アクリル化合物を用いると、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を狭くすることができ、付着力や他樹脂との相溶性をより向上させることができる。
(一般式I) CH=CRCOOR ・・・(I)
(式(I)中、R=H又はCH、R=C2n+1、n=8〜18の整数)」
ラジカル重合性モノマーの変性ポリオレフィン樹脂中のグラフト重量は、0.1〜30重量%が好ましく、特に好ましくは1〜20重量%である。極性付与剤としてラジカル重合性モノマーを単独で用いた場合は、0.1重量%よりもグラフト重量が少ないと、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物と他樹脂との相溶性、付着力が低下する。又、30重量%より多いと、反応性が高い為に超高分子量体を形成して水系化工程が困難となったり、ポリオレフィン骨格にグラフトしない未反応のホモポリマーやコポリマーの生成量が増加するため好ましくない。
極性付与剤として、塩素を用いていない場合には、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂中での、ラジカル重合性モノマーのグラフト重量は、0.1〜30重量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜20重量%である。
極性付与剤として不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーを原料ポリオレフィン樹脂にグラフト重合し、変性ポリオレフィン樹脂を得る方法は、公知の方法で行うことが可能である。例えば、ポリオレフィン樹脂、極性付与剤の混合物をトルエン等の溶剤に加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、ポリオレフィン樹脂、極性付与剤、およびラジカル発生剤を添加し、混練する溶融混練法等により変性ポリオレフィン樹脂を得る方法が挙げられる。極性付与剤を添加する方法は、一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。
また、ポリオレフィン樹脂に対する極性付与剤のグラフト重合は、下記記載の場合を除き、順序は問わない。同時にグラフト重合しても良いし、別個にグラフト重合しても良く、またそれぞれの成分でグラフト重合したポリオレフィン樹脂を混合しても良い。
極性付与剤として不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーを用いる場合は、反応助剤としてスチレン、o−、p−、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等を添加しても良い。
極性付与剤として、塩素と不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーを併用する場合は、塩素化する工程はグラフト重合の前でも後でも構わないが、グラフト重合によって脱塩酸を起こす可能性があるため工程の最後にすることが好ましい。すなわち、前述の溶液法または溶融混練法にて、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーをグラフト重合させた後に、後述の方法で塩素化する方法が好ましい。しかしながら、必要な場合は、低温の溶液法でグラフト重合を塩素化後に行うことができる。尚、ラジカル重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル等のエステルを含有する化合物を用いる場合は、塩素化によりエステルが分解される可能性があるため、これらの化合物は塩素化の工程後にグラフト重合することが好ましい。
塩素化する方法としては、例えば、クロロホルム等の溶媒に極性付与剤をグラフト重合させたポリオレフィン樹脂を溶解した後、紫外線を照射しながら、或いは上記ラジカル発生剤の存在下、ガス状の塩素を吹き込むことにより塩素化変性ポリオレフィン樹脂を得る方法が好ましい。塩素含有量は、ポリオレフィン樹脂の種類、反応スケール、反応装置等の要素の違いにより、塩素の導入率が変わるため、塩素の吹き込み量や時間を、モニタリングしながら調節する。
極性付与剤をポリオレフィン樹脂にグラフト重合する反応に用いるラジカル発生剤は、公知のものの中より適宜選択することができるが、特に有機過酸化物系化合物が好ましい。例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。
本発明でいう水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点とは、該水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物を40℃で3日間乾燥後、微量融点測定装置((株)ヤナコ機器開発研究所製 MPシリーズ)で測定したものである。乾燥温度は、融点調整剤を添加する場合については、添加する融点調整剤が揮発しない温度であればよい。融点調整剤を添加しない場合は特に限定されない。詳細な条件を以下に述べる。
水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を40℃に設定した送風乾燥機で3日間乾燥後、得られた固形物を厚さ0.5〜1mmになるようにカットし、その約1〜3mgをスライドガラスとプレパラートで挟み、微量融点測定装置((株)ヤナコ機器開発研究所製 MPシリーズ)の試料台に載せる。ヒーターを25〜30℃/minの昇温速度で加熱し、固形物に変化が現れ始めたときのヒーターの温度と固形物が完全に融解したときのヒーターの温度を測定し平均化する。同様の測定を3回繰り返し、それら3点の平均値を本発明でいう融点とする。このとき、小数点第1位は四捨五入する。
本発明は、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点を、前記水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する塗液を乾燥する温度より19℃以上26℃以下の範囲で下げることに特徴がある。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、乾燥温度よりも19℃より低くならないとき、例えば乾燥温度が80℃の場合は融点が61℃より高い場合は、良好な被膜を形成することが困難となり、接着力が低下する。また、前記融点が乾燥温度よりも27℃以上低くなる場合、例えば乾燥温度が80℃の場合は融点が53℃より低い場合は、被膜は良好に形成されるが、樹脂の結晶性が低下するため、基材への接着力が低下する。すなわち、本発明においては、融点が乾燥温度より19℃以上26℃以下の範囲で低い水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いることにより、造膜性と結晶性のバランスを最適にし、低温乾燥用の接着剤用樹脂として接着力を最大限に発現するものである。
水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点を下げる方法は、以下に大別される。
(1)原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性する。
(2)変性ポリオレフィン樹脂を水性化する際に融点調整剤を添加する。
上記(1)及び(2)のうち、(1)については、接着性の観点から本願の樹脂については必須である。(1)の変性により水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が上述する範囲にならない場合には、さらに(2)の方法を用いて水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点を下げることができる。
(1)原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性する。
極性付与剤として塩素を用いた場合は、塩素化工程を経て、塩素化度を高めることにより、原料ポリオレフィン樹脂の融点を大きく下げることも可能であるので、原料ポリオレフィン樹脂の融点は、特に問われないが、塩素化度が高すぎると付着力が低下するため、好ましくは、融点が乾燥温度を基準値として、それより20℃低い〜60℃高い樹脂がよい。本発明の融点にするための塩素の含有量(塩素化度)は、一般的には、2〜35重量%が好ましいが、原料樹脂により同じ塩素化度でも融点が異なるため、塩素化工程において、樹脂の融点をサンプリングしながら塩素化度を調整する。
極性付与剤として塩素を用いない場合は、変性後の融点が下がりにくい、すなわち本発明の融点も下がりにくいため、原料ポリオレフィン樹脂は、乾燥温度を基準値として、それより融点が20℃低い〜10℃高い樹脂を用いることが好ましい。また、一般的には、分子量が小さい方が融点は低くなるため、原料ポリオレフィン樹脂の分子量を熱減成などの公知の方法で小さくして融点を下げ、本発明の融点をさげても良い。
本発明で用いられる原料ポリオレフィンの融点は、上記の通りの範囲を持つことが好ましいが、その範囲内の融点をもつ原料ポリオレフィンを用いたとしても、得られた水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、乾燥される温度より19℃以上26℃以下の範囲で低いという条件を満たさない場合は、本発明の効果を発揮しない。
(2)変性ポリオレフィン樹脂を水性化する際に、融点調整剤を添加する。
前記(1)の変性により水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が上述する範囲にならない場合でも、水性化する際に融点調整剤を添加することで、融点を下げることができる。具体的には、変性ポリオレフィンを水性化後に、以下の融点調整剤を添加する。
本発明における融点調整剤は、水性変性ポリオレフィン樹脂の融点を低下させるものであれば特に限定されないが、付着力の向上も可能とするものが好ましいので、一般に造膜助剤として用いられているものが好ましい。造膜助剤とは、成膜時に一時的に膜内に残留し、可塑効果で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の成膜性を向上させ、成膜後には揮発してしまうものであり、セロソルブ系、エチレングリコール系、ジエチレングリコール系などの一般的なものを用いることができるが、Hildebrand Parameterが22MPa1/2以下でなければならない。Hildebrand Parameterは極性を示すものであり、値が大きくなるほど極性が高くなる。Hildebrand Parameterが22MPa1/2より大きくなる場合は、極性が高すぎるため、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物と相溶しない。
Hildebrand Parameterが22MPa1/2以下の造膜助剤としては、エチレングリコール−モノ−n−エチルエーテル、エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−モノ−エチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテルアセテート等が挙げられる。中でも、本発明の融点を低下させるとともに付着性を向上させるためには、Hildebrand Parameterが20MPa1/2以下のものが好ましく、特にHildebrand Parameterが18MPa1/2以下のものが好ましい。
造膜助剤の添加量は、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、乾燥温度より19〜26℃低くなるように、サンプリングして調製して添加する。一般的には、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物に対して、3重量%〜7重量%が好ましい。
本発明において「水性」とは、変性ポリオレフィン樹脂が、水に分散している状態をいう。水に分散している状態とは、一定時間放置しても二層に分離しない状態、エマルジョン(乳化)状態をいう。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物は、変性ポリオレフィン樹脂を水に分散させて製造する。水に分散させる(乳化)方法は、公知の強制乳化法、転相乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法等の何れの方法でもよい。しかしながら、後述するように、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の平均粒子径は、300nm以下が好ましく、このためには、転相乳化法或いは高いシェア力を持つ複合攪拌、サンドミル、多軸押出機等を用いる方法が好ましい。
本発明において造膜助剤を用いる場合は、変性ポリオレフィン樹脂を水性化後に添加する。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂を水中に分散、乳化させるため、必要に応じて界面活性剤を用いることができ、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤の何れも使用できる。ノニオン界面活性剤の方が、乳化された水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の耐水性がより良好であるため好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
界面活性剤の添加量は、変性ポリオレフィン樹脂に対して0.1〜30重量%であり、より好ましくは5〜20重量%である。30重量%を超える場合は、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を形成する量以上の過剰な乳化剤により、付着性や耐水性を著しく低下させ、又、乾燥被膜とした際に可塑効果、ブリード現象を引き起こし、ブロッキングが発生し易いため、好ましくない。
本発明における水性変性ポリオレフィン樹脂組成物のpHは、5以上が好ましく、より好ましくはpH6〜10である。pH5未満では、中和が不十分であるために変性ポリオレフィン樹脂が水に分散しない、或いは分散しても経時的に沈殿、分離が生じ易く、貯蔵安定性が悪化するので好ましくない。又、pH10を超える場合、他成分との相溶性や作業上の安全性に問題を生じる。必要に応じて変性ポリオレフィン樹脂中の酸性成分を中和し、水に分散させることを目的として塩基性物質を添加することができる。
塩基性物質として好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等が挙げられ、より好ましくはアンモニア、トリエチルアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等が挙げられる。その使用量は、変性ポリオレフィン樹脂の酸性成分の量に応じて任意に添加できるが、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物のpHが5以上、好ましくはpH6〜10になるように添加しなくてはならない。
変性ポリオレフィン樹脂を得る際に、極性付与剤として不飽和カルボン酸誘導体及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーを高変性度でグラフトし、これらの自己乳化性を付与すると、界面活性剤を用いずに乳化することができる。その場合は、強塩基性の物質として、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物において、水中に乳化、分散した樹脂の平均粒子径は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下に調整される。300nm以上であると、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の貯蔵安定性や他樹脂との相溶性が悪化し、更に、基材への付着性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等の被膜物性が低下する。又、乳化剤の添加量を多くすることにより、粒子径は限りなく小さくすることが可能であるが、この場合、基材への付着性、耐水性、耐ガソホール性等の被膜物性が低下する傾向が現れ易くなる。尚、本発明における平均粒子径は光拡散法を用いた粒度分布測定により得られたものである。粒子径の調整は、乳化剤の添加量、種類、水中で樹脂を乳化する際の撹拌力等により行うことができる。
本発明では、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物に架橋剤を用いても構わない。架橋剤とは、変性ポリオレフィン樹脂、界面活性剤、塩基性物質等に存在する水酸基、カルボキシル基、アミノ基等と反応し、架橋構造を形成する化合物を意味し、それ自体が水溶性のものを用いることができ、又は何らかの方法で水に分散されているものを用いることができる。具体例として、ブロックイソシアネート化合物、脂肪族又は芳香族のエポキシ化合物、アミン系化合物、アミノ樹脂等が挙げられる。架橋剤の添加方法は特に限定されるものではない。例えば、水性化工程途中、或いは水性化後に添加することができる。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類等を配合できる。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物は、低温で乾燥した際の付着性等に特に優れ、非極性基材用の接着剤、プライマー、塗料用バインダー樹脂、インキ用バインダー樹脂として使用できる。また、用途などの必要性に応じて、さらに溶液、粉末、シート等の形態に変更して使用してもよい。また、その際に必要に応じて添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等を配合できる。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物は、特に低温焼き付けに用いられるプライマー用樹脂として好適である。低温で乾燥した際の、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる。本明細書において、プライマーとは、基材となる前記非極性樹脂に難接着性の塗料を接着させるためのバインダーをいい、付着成分として本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を含む。また、プライマーには、塗料成分や他の樹脂などを含んでも良い。
本発明の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する塗液を基材上に塗布し、当該水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点よりも19℃〜26℃高い乾燥温度で乾燥することにより、付着性及び各種の物性が良好な被膜を形成することができる。
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(製造例1〜4)
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン含有量:96wt%、エチレン含有量4wt%、MFR=2.0g/min、融点(Tm)=125℃)をバレル温度350℃に設定した二軸押出機に供給して熱減成を行い、190℃における溶融粘度が約1500mPa・sのプロピレン系ランダム共重合体を得た。減成プロピレン系ランダム共重合体100重量部、無水マレイン酸4重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部をあらかじめ十分に混合後、二軸押出機(L/D=34、Φ=40mm、第1バレル〜第8バレル)に供給し、滞留時間が5分、回転数300rpm、バレル温度が120℃(第1、2バレル)、180℃(第3、4バレル)、100℃(第5バレル)、130℃(第6〜8バレル)の条件で反応を行い、第6〜8バレルの減圧処理にて未反応の無水マレイン酸を除去して、無水マレイン酸変性プロピレン系共重合体を得た。この樹脂2kgをグラスライニングされた50L容反応釜に投入し、20Lのクロロホルムを加え、2kg/cmの圧力下、紫外線を照射しながらガス状の塩素を反応釜底部より吹き込み塩素化した。塩素含有量を調節するため途中抜き取りを行い、塩素化含有率が15.2、19.1、20.4、21.6重量%のサンプルを得た(塩素含有率の低い順から製造例1、2、3、4とする)。次いで、溶媒であるクロロホルムをエバポレーターで留去し、それぞれを固形分30重量%に調製した。このクロロホルム溶液に、安定剤(t−ブチルフェニルグリシジルエーテル)を対樹脂1.5重量%加えた後、二軸押出機(L/D=34、Φ=40mm、第1バレル〜第7バレル)に供給し、滞留時間が10分、回転数50rpm、バレル温度が90℃(第1〜6バレル)、70℃(第7バレル)の条件で固形化を行った。第1、4〜6バレルで減圧処理を行い、塩素含有率の異なる4種類の無水マレイン酸変性塩素化プロピレン系ランダム共重合体を得た。
撹拌機、冷却管、温度計および滴下ロートを取り付けた2L容4つ口フラスコ中に、得られた無水マレイン酸変性塩素化プロピレン系ランダム共重合体を200g、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)を35g、安定剤(ステアリルグリシジルエーテル)8g、トルエン36gを添加し、120℃で30分混錬した。次に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール8gを5分かけて添加し、5分保持した後、90℃の温水970gを40分かけて添加した。減圧処理を行い、トルエンを除去した後、室温まで撹拌しながら冷却し、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
(製造例5〜8)
製造例1〜4で得られた水性変性ポリオレフィン樹脂組成物100gを撹拌下、融点調整剤としてエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(Hildebrand Parameter=19.4MPa1/2)5gを逐次添加した。
(製造例9〜12)
製造例1〜4で得られた水性変性ポリオレフィン樹脂組成物100gを撹拌下、融点調整剤としてジエチレングリコール−モノ−エチルエーテルアセテート(Hildebrand Parameter=17.4MPa1/2)5gを逐次添加した。
(製造例13)
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン含有量:88wt%、エチレン含有量12wt%、重量平均分子量55,000、Tm=70℃)100重量部、無水マレイン酸4重量部、メタクリル酸メチル4重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部を、180℃に設定した二軸押出機を用いて反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去し、変性プロピレン系ランダム共重合体を得た。
撹拌機、冷却管、温度計および滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物200g、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)35g、トルエン36gを添加し、120℃で30分混練した。次に、ジメチルエタノールアミン7gを5分かけて添加し、5分保持した後、90℃のイオン交換水970gを40分かけて添加した。引き続き、室温まで撹拌しながら冷却し、水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
(製造例14)
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン含有量:92wt%、エチレン含有量8wt%、、重量平均分子量50,000、Tm=95℃)100重量部、無水マレイン酸8重量部、メタクリル酸ステアリル8重量部、ジ-t-ブチルパーオキシド4重量部を、180℃に設定した二軸押出機を用いて反応した。押出機内にて脱気も行い、残留する未反応物を除去し、変性プロピレン系ランダム共重合体を得た。得られた樹脂をジメチルエタノールアミン12gに変えた以外は製造例13と同様の操作で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
(製造例15)
製造例14において、無水マレイン酸4重量部、メタクリル酸ステアリル3重量部、ジ-t-ブチルパーオキシド2量部に変えて同様の変性反応を行った。得られた樹脂を製造例13と同様の操作で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
(製造例16)
製造例14において、無水マレイン酸2重量部、メタクリル酸ステアリル2重量部、ジ-t-ブチルパーオキシド1量部に変えて同様の変性反応を行った。得られた樹脂をジメチルエタノールアミン3gに変えた以外は製造例13と同様の操作で水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
製造例で得られた水性変性ポリオレフィン樹脂組成物について、下記の方法で諸物性及び性能を測定し、結果を表1〜4に示した。また、表1〜表4に製造例と実施例の対比も記載した。
<物性の測定方法>
塩素含有率、重量平均分子量、酸・アクリルグラフト率は変性ポリオレフィン樹脂を用い、それ以外の測定は水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いて測定した。
(1)塩素含有率:JIS−K7229に準じて測定した。
(2)重量平均分子量(Mw):GPC(標準物質:ポリスチレン樹脂)によって測定した。
(3)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト率(以下、グラフト率A):アルカリ滴定法にて求めた。
(4)ラジカル重合性モノマーのグラフト率(以下、グラフト率B):アルカリ滴定法にて求めた。酸基を持たないエステル等の場合は、FT−IRにより求めた。
(5)融点:水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を40℃で3日間乾燥後、得られた固形物を厚さ0.5〜1mmになるようにカットし、その約1〜3mgをスライドガラスとプレパラートで挟み、微量融点測定装置((株)ヤナコ機器開発研究所製 MP−500D)の試料台に載せた。ヒーターを25〜30℃/minの昇温速度で加熱し、固形物に変化が現れ始めたときのヒーターの温度と固形物が完全に融解したときのヒーターの温度を測定し、平均化した。同様の測定を3回繰り返し、それら3点の平均値を融点とした。
(6)平均粒子径:粒度分布測定装置(Malvern Instruments製)にて測定した。
<水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の性能評価項目と試験方法>
(1)剥離強度:本発明の付着力は、非極性基材と水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の乾燥被膜間の剥離強度を意味する。表面−界面切削法(SAICAS法、ダイプラ・ウィンテス製)にて室温で測定した。測定用の試料は以下の手順で作製した。
(試料作製)イソプロパノールで表面を脱脂した超高剛性ポリプロピレン板に、乾燥被膜厚が10以上15μm以下となるように水性変性ポリオレフィン樹脂組成物をスプレー塗装し、80℃で10分間プレヒートを行った。その後、80℃で30分あるいは90℃で20分間の焼付けを行った。5日間室温で静置後、剥離強度試験を行った。
SAICAS法で測定される剥離強度は、基材の種類、焼付け温度、添加剤の種類等にもよるが、およそ0.20〜1.00kg/cmの範囲にあり、その差が0.1kg/cm以上あるということは、剥離強度として有意差があるとみなせる。
(2)耐高圧洗車性
イソプロパノールで表面を脱脂した超高剛性ポリプロピレン板の一部をマスクし、乾燥被膜厚が10以上15μm以下となるように水性変性ポリオレフィン樹脂組成物をスプレー塗装し、80℃で10分間プレヒートを行った。次に2液型上塗り白塗料を乾燥被膜厚が45以上50μm以下になるようにスプレー塗装し、15分室温に静置した後、80℃で30分間あるいは90℃で20分間の焼付けを行った。得られた試験片の無塗装と塗膜の境界に対して、高さ20cmから20℃、水圧50kgf/cmの圧水を30秒間噴射した。噴射後の塗膜の状態を観察し、塗膜に変化のないものを○、塗膜に僅かに変化のあるものを△、塗膜が剥離したものを×として評価した。
Figure 2007321058
Figure 2007321058
表2の結果から、水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、乾燥温度より19℃〜26℃低い場合は、剥離強度が高く、高圧洗車にも適していることが分かる。
Figure 2007321058
Figure 2007321058
表4の結果から、水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、乾燥温度より19℃〜26℃低い場合は、剥離強度が高く、高圧洗車にも適していることが分かる。


Claims (7)

  1. 水性化後の変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点が、基材上に該樹脂組成物を含む塗液を塗工し乾燥して被膜を設ける工程において塗液を乾燥させる温度よりも19℃以上26℃以下の範囲で低いことを特徴とする水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
  2. 原料ポリオレフィン樹脂を塩素、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、ラジカル重合性モノマーから選ばれる1種類以上の極性付与剤を用いて変性したことを特徴とする請求項1に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
  3. 融点調整剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
  4. 融点調整剤のHildebrand Parameterが22MPa1/2以下である請求項2に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物。
  5. 原料ポリオレフィン樹脂を極性付与剤により変性した後、水性化するときに融点調整剤を添加することを特徴とする請求項1〜4に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
  6. 水性変性ポリオレフィン樹脂の融点を、融点調整剤を用いて低下させることを特徴とする請求項1〜4に記載の水性変性ポリオレフィン樹脂の融点の調整方法。
  7. 基材上に水性変性ポリオレフィン樹脂組成物を塗工し、該水性変性ポリオレフィン樹脂組成物の融点より19℃以上26℃以下の範囲で高い乾燥温度で乾燥することを特徴とする被膜の形成方法。



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