以下、本発明の一実施の形態について、図1から図13を用いて説明する。図1において、1は円錐形ペン先であり、複数の櫛歯状片2と、基部3と、収束部材4とを備える。
複数の櫛歯状片2は5本乃至8本で構成され、先端が略半球形に、かつ全体が先端方向に向けて漸次円錐形に収束可能に、各櫛歯状片2が櫛歯状片2の数によってその1/5〜1/8の分割形状に形成される。この櫛歯状片2は、図2に示すような焼き付け処理後のセラミックスの丸棒材(円柱形の棒材)20から、切削加工により形成される。
この切削加工は、図3に示すように、丸棒材20に初期外形21を形成する工程から、外面22、そして内面23を形成する工程が行われる。まず、図3(1)に示すように、丸棒材20の基端202に基部3に対する係合部240を作る。この場合、基端面203の(図3(1)中、上側の)片側半面よりも少し小さい面を軸方向に向けて所定の長さだけ切除し、係合部240を略半円柱形状に突出形成する。続いて、図3(2)に示すように、丸棒材20の先端201側の所定の長さ範囲を、当該先端201に向けて徐々に丸棒材20の軸芯に近接する方向に2段階の所定の角度で傾斜させつつ、略円錐形に切削して、当該先端201を略半球形に切削する。これにより、先端201に略半球部210、これに続いて軸芯に対して小さい所定の傾斜角度のテーパ部220、これに続いて軸芯に対して大きい所定の傾斜角度のテーパ部230を形成する。このようにして丸棒材20に初期外形200を形成する。続いて、図3(3)に示すように、初期外形200の、当該先端201頂部(先端中心)から、櫛歯状片2の数により決定される所定の角度に断面略扇形に切削して、当該先端201側に外面22を断面略円弧状に残し、内面23を断面略V字形の2面に形成するとともに、当該先端201頂部に略半球形の分割形状部21(以下、半球分割部21という。)を形成する。そして、図3(4)に示すように、内面23の2面接合部24を、頂部側の端部をペン先の軸芯と略一致する方向に、その他の部分を丸棒材20の軸芯と略平行(この場合、丸棒材20の軸芯と一致する方向)に段差状に切削して、各櫛歯状片2を収束するときの先端合わせ部と中空部を形成する。なお、この切削加工後、図4に示すように、半球分割部21の外面角部21C、すなわち半球分割部21の外面とその側面との間に形成された角21Cをブラスト掛け、バレル研磨、バフ磨き等により研磨して、各半球分割部21に丸み(R面)を付ける。この場合、ペン先1の先端内面に設けるインキ誘導芯より先端外面にインキを導き易くするために積極的に衝合部(隣合せた先端部衝合面間)に隙間を作ることが必要で、衝合部の断面形状を内面端では隣同士を当接し、外面端では隣同士隙間が生ずるような構成とすることが好ましい。
このようにして、各櫛歯状片2はセラミックスの丸棒材20から切削加工されて、図5(a)、(b)、(c)に示すように、基端202に基部3に対する係合部240が半円柱形状に形成され、先端201側に、外面22が先端に向けて略V字形の先細に、かつ徐々に丸棒材20の軸芯に近接する方向に2段に傾斜しつつ、丸棒材20の外周方向に略円弧状に形成されるとともに、先端201頂部に半球分割部21が形成される。また、この外面22の反対側で内面23が断面略V字形の2面に形成され、その2面接合部24が頂部側の端部をペン先1の軸芯と略一致する方向に、その他の部分を丸棒材20の軸芯と略平行に段差状に形成される。また、各半球分割部21は紙面に接した時に角が引っ掛らないような丸み(R面)が付けられる。
基部3は、全体が略筒形構造に構成され、図6に示すように、ペン軸体の胴部に挿通される筒部31と、筒部31の一端に筒部31と略平行に突設され、複数の櫛歯状片2を保持するための保持部32、及び収束部材4を取り付けるための取付部33とを有する。この基部3は、弾力性を有する合成樹脂材を用いて射出成型により一体成形され、筒部31は円筒形に形成され、保持部32及び取付部33は筒部31の一端外周上に複数の突状部321、331により形成される。この場合、複数の突状部321、331は筒部31(の軸方向の長さ)よりも長い突状部321と筒部31と略同じ長さの短い突状部331が交互に等間隔に形成される(なお、各突状部321、331の間はスリット状の溝34となる。)。長い突状部321はそれぞれ、基端側が短い突状部331と同一の断面略円弧状に形成され、先端側が当該先端に向けて外周方向の肉厚を徐々に拡大されて断面略扇形に形成され、その先端面から基端方向に向けて、各櫛歯状片2の係合部240の長さ及び断面形状に対応する略半円筒形の穴320が形成されて、櫛歯状片の保持部32をなす。これら櫛歯状片の保持部32は、全体が略円筒形の分割形状で、各保持部32が一定の(断面)湾曲形状を保ちつつ筒部31に連続される。この形態により、各保持部32は筒部31との境界部分を固定端とする片持板、言い換えれば一端固定の片持梁と同じ構造となる。したがってこの5本乃至8本の保持部32と筒部31の一体構造は常態において各保持部32間が開いた状態になっていて、これらの保持部32が外周方向から軸芯に向けて押圧されることにより内方へ窄められ、全体が略円錐形を形成して収束される。また、この長い突状部321の場合、先端側の外面35全体が断面略円弧状で、かつ当該先端に向けて徐々に外周方向に突出する所定の角度の傾斜状に、すなわち、所定の角度のテーパ面の分割形状に形成され、これらの外面35で、各保持部32を軸芯に向けて押圧すると、保持部32全体が略円錐形に収束され、これらの外面35全体は(軸方向に平行な)略円柱状に収束される。これらの外面35で、収束部材4による被押圧面をなす。短い突状部331はそれぞれ、外面33全体が断面略円弧状に、すなわち、軸方向に平行な円筒面の分割形状に形成され、これらの外面33で、収束部材4が嵌合可能な取付部をなす。
収束部材4は全体が略筒形形状に形成され、図1に示すように、ペン先1をペン軸体5の胴部51に装着するマウスピースとして構成される。この収束部材4の場合、合成樹脂材料又は金属材料により一体成形され、先端側の内周に基部3の各保持部32(特に、被押圧面35)を加圧して各保持部32を略円錐形に収束可能な内径を設定された絞り部41と、中間の内周に基部3上の取付部33に対応する内径を設定された固定部42と、基端側にペン軸体5の胴部51の内周に対応する外径及び内径を設定された挿着部43とを有する。
ペン先1は、このような複数の櫛歯状片2と、基部3と、収束部材4とを構成部品として備え、各櫛歯状片2が基部3の各保持部32に保持され、収束部材4により収束されて組み立てられる。この場合、各櫛歯状片2の基端係合部240が基部3の各保持部32に先端面の穴320に合わせ、押し込みながら挿入されて嵌合(係合)され、各櫛歯状片2が各保持部32の先端延長上に連続的に結合される。なお、この結合作業は主として組合わせ機械で行われるが、手作業も可能である。このようにして5本乃至8本の櫛歯状片2は合成樹脂製の各保持部32に保持され、各櫛歯状片2間に一定の隙間を介して軸芯の周囲に配列され、常態として各櫛歯状片2間が開いた形を呈する。セラミックス製の櫛歯状片2は硬く、曲がることはないが、この櫛歯状片2が弾力性を有する合成樹脂製の保持部32に保持されたことで、櫛歯状片2の軸芯方向の押圧または引き上げ操作により櫛歯状片2に保持部32の曲げや撓みに追従した動きが可能となる。そして、この櫛歯状片2の組立体の先端から収束部材4が通されて、基部3の周囲に嵌め込まれる。収束部材4中間部の固定部42が基部3の取付部33上にスライドされて取り付けられ、この収束部材4の先端側の絞り部41により、複数の櫛歯状片2の保持部32の先端側外面、すなわち被押圧面35が外側から軸芯に向けて押圧され、平均した圧力により保持部32全体が略円錐形に収束される。これにより各保持部32に保持された各櫛歯状片2が先端にいくに従って内方に加圧収束され、各櫛歯状片2の基端から先端まで漸次縮径する歪みのない略円錐形状に収束される。このようにして、図7に示すように、相互に隣接する櫛歯状片2同士が弾性的に接触され、櫛歯状片2の両サイドの合わせ部、すなわち隣合う櫛歯状片2の間が先端にいくに従って狭められて毛細管的隙間をなし、インキ導出部12が構成される。さらにその先端の隣り合う半球分割部21が隙間なく当接して集合され、そこに凹凸のない滑らかな半球形状の筆端部11が構成される。この筆端部11は、図8に示すように、櫛歯状片2の先端が複数個円形にまとめられ、断面花びら状に形成されて、その外周部が筆記時において紙面に押接されて文字を書くための筆記部分となる。なお、複数の櫛歯状片2の内側、中空内にその先端まで内面に接してインキ誘導芯が挿入配置される。インキがこのインキ誘導芯を通って供給され、ペン先1の内面まで到達し、これが毛細管状の隙間、すなわちインキ導出部12を通じて内面からその外面、すなわち先端半球状の頂部の表面まで伝達される。半球状の筆端部11が紙面に接することにより、インキが紙面に移り、筆記が可能となる。
次に、上記ペン先1を利用した筆記具による筆記動作について図9から図13を用いて説明する。なお、図9はペン先1の筆端部11が紙面に接した状態を示す。図10(a)、(b)、図11は6本の櫛歯状片2を備え、先端の半球状の筆端部11を6個の半球分割部21で構成した場合の動作例を示し、図12(a)、(b)、図13は5本の櫛歯状片2を備え、先端の半球状の筆端部11を5個の半球分割部21で構成した場合の動作例を示す。このペン先1においては、各櫛歯状片2が略円錐形を構成する分割片であり、それぞれ先端が独立した形になっている。すなわち、複数の櫛歯状片2の一片は先端に半球状の形状を複数に均等に分割されたうちの1つの成形形状をもち、また櫛歯状片2として略筒形構造の基部3に接続するまでの途中の断面形状が、円錐形に分割され、湾曲した形状をもちつつ基部3に連続し、基部3との境界部分を固定端とする片持板、言い換えれば一端固定の片持梁と同じ構成になっている。すなわち、先端の半球状の筆端部11は複数の半球分割部21が集合し、隣り合う半球分割部21の当接面でずれ合い、変形可能となる。したがって、筆記具によって書記する場合等において、ペン先1に筆圧がかかることにより櫛歯状片2の先端に押し上げ力(撓み力)が働けば、櫛歯状片2が収束部材4で固定された部位を支点に撓み変形(弾性変形)し、半球分割部21がずれ合い、筆端部11の外径が拡大される。このずれ方は筆圧に応じて変わる。また、この押し上げ力(筆圧)がなくなれば櫛歯状片2は元の形状に復帰し、半球分割部21が元に戻される。また、このペン先1は、櫛歯状片2が硬質のセラミックス材で作られていて、これ自体は弾力が無いが、この櫛歯状片2を固定する保持部32が弾力性のある合成樹脂材によって成形されているため、櫛歯状片2として撓み、曲がることが可能になっている。この弾力が筆記時のペン先1の紙面への接触を柔らげ、セラミックスのような硬質の材料を使いながら筆記具を握る手にタッチの柔かい感触を付与する。
この筆記具による筆記を行なうために、図9に示すようにペン先1を紙に対し通常45°〜60°程度の実用範囲で当てると、(この筆記の圧力で)紙面との当接面側に対応するペン先1の筆端部11の接合隙間、すなわちインキ導出部12の先端部分内側まで達しているインキは紙面と筆端部11の接触面に生じる毛細管現象によって吸い出され、紙面にインキが伝えられて線を書くことができる。このときの筆圧による半球形状の筆端部11の弾性変形作用が図10乃至図13に示されている。
図10、図11は円錐形の部分が6本の櫛歯状片21で構成されたペン先1の筆端部11の、筆記動作にともなう形状変化を表し、図12、図13は円錐形の部分が5本の櫛歯状片21で構成されたペン先1の筆端部11の、筆記動作にともなう形状変化を表す。図10において、(a)はペン先1の先端において櫛歯状片2の1つが真下にくるようにペンが紙面に向けられている状態の下で、ペン先1の筆端部11がまだ紙面に接していないか、或いは軽く接していて圧力が加わっていないときの、当該筆端部11の状態を示す。この場合は、櫛歯状片2のいずれにも撓み力が加わらないため、各櫛歯状片2は互いに弾性的に接触している。次に、筆記者が文字等を書くために力を加えると、この筆記を行なうときの圧力により、筆端部11は基部3上のマウスピースに固定された部位を支点に櫛歯状片2の先端として撓み、上側に移動するが、櫛歯状片2の材料の剛性により抵抗力が生じ、通常の筆記をするときの圧力では先端部は所定の寸法の移動、すなわち変位に止どまる。この変位は例えば0.1〜0.5ミリメートル(mm)である。このとき、半球状の筆端部11を正面からみると、図10(b)に示すように、この筆端部11を構成している複数の櫛歯状片2のうちペンの下側に位置する1つの櫛歯状片2の先端が押し上げられ、対向位置にある(上側の)櫛歯状片2を押し上げるとともに(左右)両側位置にある櫛歯状片2を左右に押し広げることによって半球形状が変形し、全体として筆端部11がずれる。
これにより、総体的にみて、半球部分の外径および紙面に接する面積が大きくなり、図10(b)中、斜線で表わされたペン先が紙面に接触する領域Aは図10(a)に斜線で表わされた領域Aよりも拡大する。この拡大の度合はペン先1を紙面に押しつける圧力、すなわち筆圧が大きいほど高くなる。半球状の筆端部11は半球分割部21が横にずれた分だけその外径が拡大するため、この接触面に毛細管現象で伝達されるインキの広がる範囲は大きくなり、その結果筆跡の幅が大きくなる。反対に筆圧が小さくなれば、筆跡幅は小さくなる。すなわち、筆記されるときの線の太さは、筆端部の外径に依存し、その半球形状が拡大する程度に応じて拡大するから、筆圧の大小により線の幅が太い、または細いものとして筆記される。筆圧を種々に変化させれば、毛筆のような線の幅が変化する種々の態様の文字も筆記できる。さらに、図10(b)、図11に示すように、紙面に当たる部分が異なるような中心軸の周囲のどの位置に回転しても先端半球部に斜めに紙面が接した場合には、先端半球部が微拡大され、上記と同様の作用効果を奏することになる。しかも、筆記圧の強弱に応じて、櫛歯状片2全体が撓み、筆圧が大きくてもその力を櫛歯状片2全体が吸収するクッション作用を生ずる。
図11は、図10(a)、(b)の場合と異なり、ペン先1の先端において2つの櫛歯状片2の境界に当たる部位のインキ導出部12の1つが真下にくるようにペンが紙面に向けられている状態の下で、ペン先1の筆端部11に圧力が加わったときの、当該筆端部11の変形状態を示す。この場合は、半球状の筆端部11を正面からみると、筆記を行なうときの圧力により、筆端部11を構成している複数の櫛歯状片2のうちペンの下側に位置している2つの櫛歯状片2の先端が押し上げられ、他の櫛歯状片2を押し広げることによって半球形状の筆端部11が弾性変形する。その他の作用或いは挙動については図10(a)、(b)の場合と同じである。なお、図10(a)、(b)、あるいは図11以外の筆記状態、すなわちペン軸を中心としてどのような回転角度位置をとっても、ペン先1の筆端部11が紙面に対して斜めに接した場合には、筆端部11が弾性変形によって微拡大し、前記の場合と同様な作用或いは挙動を行う。
図12においても、図10を参照して説明したのと同様の筆記動作時の変形が生じる。すなわち、図12において、(a)はペン先1の先端において櫛歯状片2の1つが真下にくるようにペンが紙面に向けられている状態の下で、ペン先1の筆端部11がまだ紙面に接していないか、或いは接していても圧力が加わっていないときの、当該筆端部11の状態を示す。この場合は、櫛歯状片2のいずれにも撓み力が加わらないため、各櫛歯状片2は互いに弾性的に接触している。次に、筆記者が文字等を書くために力を加えると、この筆記を行なうときの圧力により、筆端部11は基部3に固定された櫛歯状片2の先端として撓み、上側に移動する。この場合において、通常の筆記をするときの圧力では先端部は、図10に関連して前述したのと同様、例えば0.1〜0.5ミリメートル(mm)の変位を生じる。このとき、半球状の筆端部11を正面からみると、この場合はペン先1の円錐形の部分が5枚の櫛歯状片22で構成されているから、図12(b)に示すように、この筆端部11を構成している複数の櫛歯状片2のうちペンの下側に位置する1つの櫛歯状片2は先端が押し上げられ、両側位置にある他の櫛歯状片2を左右に押し広げることによって半球形状が変形する。
図13は、図12(a)、(b)の場合と異なり、ペン先1の先端において2つの櫛歯状片2の境界に当たる部位のインキ導出部12の1つが真下にくるようにペンが紙面に向けられている状態の下で、ペン先1の筆端部11に圧力が加わったときの、筆端部11の変形状態を示す。この場合、半球状の筆端部11を正面からみると、筆記を行なうときの圧力により、筆端部11を構成している複数の櫛歯状片2のうちペンの下側に位置している2つの櫛歯状片2の先端が押し上げられ、この2つの櫛歯状片2が協働して対向位置にある1つの櫛歯状片2を押し上げるとともに、両側位置にある櫛歯状片2を左右に押し広げることによって半球形状が変形する。その他の作用或いは挙動についてはすでに述べたのと同じである。なお、図12においては、図10中斜線で表わされたペン先が紙面に接触する領域Aは示してないが、図12の場合も図10の場合と同様筆記に際しての接触領域が現れる。
以上説明したように、複数の櫛歯状片2を備え、先端を略半球形に、かつ全体を先端方向に向けて漸次略円錐形に収束し、先端に筆端部11、各櫛歯状片2間にインキ導出部12を構成する円錐形ペン先1において、各櫛歯状片2を、焼き付け処理後のセラミックスの丸棒材20から切削加工により成形し、少なくとも先端側に、外面22を当該先端に向けて略V字形の先細に、かつ徐々に丸棒材20の軸芯に近接する方向に傾斜しつつ、丸棒材20の外周方向に略円弧状に形成するとともに、当該先端頂部に半球分割部21を形成し、この外面22の反対側で内面23を断面略V字形の2面に形成し、当該2面接合部24を頂部側の端部をペン先1の軸芯と略一致する方向に、その他の部分を丸棒材20の軸芯と略平行に段差状に形成するので、セラミックスの櫛歯状片2の寸法精度を高め、各櫛歯状片2の先端を確実に揃えることができる。しかも、この櫛歯状片2の加工を、丸棒材20の少なくとも先端側を、当該先端に向けて徐々に丸棒材20の軸芯に近接する方向に傾斜させつつ、略円錐形に切削し、当該先端を略半球形に切削する初期外形を形成する工程と、初期外形の、当該先端頂部から断面略扇形に切削して、当該先端側に外面22を断面略円弧状に、内面23を断面略V字形の2面に形成するとともに、当該先端頂部に半球分割部21を形成する工程と、内面23の2面接合部24を、頂部側の端部をペン先の軸芯と略一致する方向に、その他の部分を丸棒材20の軸芯と略平行に段差状に切削する工程とより行うので、各櫛歯状片2の所期の寸法及び形状を確実に出すことができ、従来のように櫛歯状片を金型で形成した場合に、櫛歯状片の寸法にばらつきが発生すると修正加工を取らなければならないことに比べて、櫛歯状片2の製造を効率良く、容易に行うことができる。そして、この独立した形の櫛歯状片2により、先端の半球分割部21の表面をバフ、バレル、ブラスト等の方法により効率よく研磨することができ、滑りのよい筆端部11を容易に作ることができる。このようにしてペン先1をセラミックス材により形成したことで、ペン先1先端部の耐摩耗性が高く、ペン先1の耐久性を著しく高めることができるとともに、筆記時に滑らかな筆感と長時間に亘って均一の滑らかな筆跡を得ることができるなど、筆記性能の一層の向上を図ることができる。
また、このペン先1の場合、5本乃至8本の櫛歯状片2と基部3とを結合し、基部3の周囲に樹脂製又は金属製の収束部材(マウスピース)4を嵌め込むだけで簡単に組み立てることができ、特に、各櫛歯状片2を収束部材4により平均した圧力(押圧力)で円錐状に収束するので、片寄りのない円錐形ペン先を簡易に形成することができる。そして、この構造により、5本乃至8本の櫛歯状片2を歪むことのない円錐形に収束し、各櫛歯状片2間に一定のインキ導出部12を構成するとともに、その先端に片ずれのない半球形の筆端部11を構成して、半球形状の筆端部11を軸芯に対し斜めに紙面に押し当てたときに、各櫛歯状片2先端の半球分割部21が互いにずれ合って弾性変形し、先端半球部の外径を拡大する動作を行い、紙面に押し当てる動作を除いたときに先端部が弾性により元の半球形状に復するようにしているので、紙面に対してどの方向へも書記することができ、ペン軸を中心に回動してもどの位置からでもどの角度からでも書けるのに加え、筆圧を強弱加減することにより線の幅を太くあるいは細く変えることができ、毛筆のような線の幅が変化する種々の態様の文字を筆記することもできる。その際、筆圧の強弱に応じて櫛歯状片2が撓んで筆圧を吸収し、このクッション性によりペンタッチの柔らかい感触を筆記者の手指に与え、長時間筆記をしても疲れにくいという利点もある。またこのクッション性は、筆圧の大きい場合のペン先端の変形、磨耗を軽減し、筆記部分の耐久性を一層向上することができる。さらに、筆記先端についたインキが乾いてかすが付着していても筆記動作を行えば、筆端部11の微動により、すなわち筆端部11の各半球分割部21のずれ合い、弾性変形により、筆端部11の全部又は一部を微変形して筆圧に応じた先端幅を生ぜしめ、インキの乾涸膜を破り、インキを流出し易くするばかりでなく、筆端部11に紙面よりの微細なゴミが巻き込まれてもこのゴミをインキの流出と共に直ちに排出することができる。
なお、上記実施の形態では、基部3が合成樹脂材料により一体成形されているが、基部3は金属材料を用いてプレス成形により一体に形成されてもよい。この場合、基部が円筒形に形成されるとともに、その一端側軸芯の円周上に沿って等間隔に5本乃至8本の保持部が相互の間にスリット状の溝を設けて形成される。この保持部はその基部側の一部を弾力部として先端側を内方に屈曲された片持ち梁構造をなす。また、各保持部の先端側にセラミックス製の櫛歯状片を結合するための係合溝が設けられる。この係合溝は櫛歯状片の先端面から軸方向に全長の3分の1程度の長さに予め具備された両側片を溝形に巻き込んで作られる。このようにして基部の外周上に金属製の円筒状の外筒を圧嵌されて全体の形状が固定される。
また、上記実施の形態において、ペン先1の円錐形部分を5〜8本の櫛歯状片2に代えて、例えば4本以下の櫛歯状片2で構成し、先端半球状の筆端部11の分割数を少なくした場合、インキ導出の溝となる各櫛歯状片2の合わせ部分の各間隔が先端の外径に比して大きくなり、ペン先1を紙面に接した時に、その角度によって紙面と溝との間隔が広がる場合(ペン先の紙面との角度を直角にする程紙面とインキ導出溝との間隔は少なくなるが、間隔を45°近くに寝かせた場合には紙面と前記溝との間隔は拡大する。)が生じ、インキを毛細管的に導出する部分が紙面から離れ、インキ出が円滑にならないことが考えられる。本件のペン先の狙いの一つとして、軸芯上どの方向でも、また紙面との角度でもできるだけ限定することなく、幅広い筆記角度、例えば90°から45°などの範囲で円滑に自由な筆記感をもつことであるが、これを若干制限したペン先とすれば、円錐形の分割数を4本以下、3本以下、あるいは2本以下に設定しても、同様な構造を取り、先端半球部がずれ合い、筆圧の大小によって半球部が微拡大する限り、先端の耐久性大、タッチの良さ、抑揚のある筆跡、インキ書き出し良好等の効果を求めるには充分であり、本発明の範囲内のものと見ることができる。