JP2007318081A - 回路基板の製造方法 - Google Patents

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▲とく▼唯 山村
Kozo Nakano
耕三 中農
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利光 小林
Hiromasa Miyoshi
宏昌 三好
Masahito Nishikawa
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Abstract

【課題】ナノ銀に較べてはるかに安価な凝集性導電性物質を用いることで素材単価の低下を図ると共に,一般に最も普及している平版印刷の手法を使うので,どこでも実施することが可能な回路基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】導電性粉末として凝集性導電性物質を用いると共に,上記パターン製造工程における樹脂による回路パターンの形成を,樹脂を平版印刷により上記基盤に対して複数回重ね塗りすることにより達成する。導電性粉末として凝集銀を使用することを特徴とする回路基板の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は,回路基板の製造方法に係り,特に,微細で高精細な印刷パターンを有する回路を安価に形成し,良好な導電性を確保しうる基板の製造方法に関するものである。
本発明のような基板上に樹脂による回路パターンを形成するパターン形成工程と,上記回路パターンに導電性粉末を付着させる工程と,上記導電性物質の付着した回路パターンを加熱して導電性物質を上記基板上に固定する加熱工程とを備えてなる回路基板の製造方法の従来例としては,例えば特許文献1が知られている。
上記特許文献1に記載された方法は,基板上に回路パターンで印刷されたインキ樹脂の表面に,平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性ナノ金属粉末を付着させ,上記導電性ナノ金属粉末に圧力を加えて上記インキ樹脂の表面に付着した導電性ナノ金属粉末同士を密着させた後に,上記導電性ナノ金属粉末及び上記インキ樹脂を加熱して,導電性ナノ金属粉末を融着し,加熱硬化させる上記インキ樹脂の表面に導電性金属被膜を形成する回路の製造方法である。
この方法は,要するに接着性のあるインキ樹脂によって基板上に電子回路のパターンを印刷し,この印刷された樹脂パターンに,例えばナノ銀と呼ばれる平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性物質を付着させて,導電性物質による回路を形成するものである。
こうして形成された回路は,使用されている導電性物質の粒度が上記のように0.1nm〜100nmときわめて微粒子であるので,インキ樹脂による回路パターンさえ細かくすることが出来れば,極めて精細な電子回路を形成することが出来る点で優れたものである。
特開2004−172283号公報
しかしながら,上記特許文献1に記載の従来の基板製造方法では,次に記載のような致命的欠陥がある。
(1)この方法では,高精細の回路を形成するために平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性物質を使用する。このような粒子径になると微粉末同士が自ら集合し固化する(ブロッキングと呼ばれる)性質があり,固化した微粉末は分離困難である。そのため,通常このようなナノ金属と呼ばれる微粉末は凝集防止剤と呼ばれる有機物で粉末をコーティングしたり,ペースト状や液状有機物に金属粉末を浸すなどして,ブロッキングを生じないようにしている。この凝集防止剤は絶縁性物質であるため,これを除去しなければ電子回路としては使えない。そのためこの方法ではコーティングしている有機物が分解する温度まで加熱する工程が必要である。しかしながら,ナノ金属粉末をコートしている有機物は200℃以上の温度を掛けなければ分解しないため基板に一定以上の耐熱性が必要とされる。
(2)また,高精細の回路を形成するために回路の幅が狭くなり,通常の印刷手法では回路パターンがかすれるという問題がある。そのため,上記特許文献では,凹版オフセット印刷を採用している。
しかしながら凹版オフセット印刷は,インキ中に大量の溶剤が含まれるために環境負荷が高いと共に,製版にコストと時間がかかるためコストをある程度以下には縮小することが出来ない。
本発明は上記した課題の解決を目的としてなされたものであり,ナノ金属粉末に較べてはるかに安価な平均粒径0.2〜30μmの金属粉末であって,有機物の付着量の少ない金属粉末を用いることで素材単価の低下を図ると共に,有機物のコーティングを取り除く必要がない分,基板の選択を広くできるものである。更に一般に最も普及している平版オフセット印刷の手法を使うので,どこでも実施することが可能である。また平版を使うことによる印刷層の薄さを平版の重ね塗りによって克服することにより,非常に細い回路パターンをも「かすれ」なく印刷することができるようにしたものである。
上記課題を解決するため,本発明は,
基板上に樹脂による回路パターンを形成するパターン形成工程と,
上記回路パターンに導電性粉末を付着させる工程と,
上記導電性物質の付着した回路パターンを上記基板上に固定する固定工程を備えてなる回路基板の製造方法において,
上記導電性粉末として平均粒径0.2〜30μmからなり,600℃における分散剤が除去されることによる重量減少率が0.01〜0.50%の範囲にある金属粉末であることを特徴とする回路基板の製造方法を提供するものである。
このように,本発明では,基板上に樹脂による回路パターンを形成するパターン形成工程備えているが,ここにおけるパターンを形成する導電性粉末は,600℃における分散剤が除去されることによる重量減少率が0.01〜0.50%である有機物の付着量が少ない金属粉末を用いるので,凝集防止剤を除去するための加熱工程などが不要で,低抵抗な導電性回路を形成することができる。また上記回路形成工程では,樹脂の印刷手法として,最も安価な平版オフセット印刷を用いることができる。従来用いられている高価な凹版オフセット印刷と異なり,平版オフセット印刷は特殊な印刷装置も要らず,且つ版も安価・迅速に製造することが出来るので,極めて安価に実施することが出来る。
ただし,平版による樹脂層の厚さは0.5μmから1μmと薄いので,1回の印刷では「かすれ」が生じる。そこで本発明では,平版オフセット印刷を複数回重ね塗りする。これにより十分な樹脂層厚を確保できるのでかすれることなく,微細な回路パターンを形成することが出来る。
また本発明では,上記導電性粉末として粒径0.2〜30μmの導電性粉末を用いるので,粉末にブロッキングを防止するためのコーティングがなく高温の加熱による有機物の分解を伴わないので,様々な材質からなる基板において回路形成することができる。
なお,単純に導電性物質を付着させただけでは導電性金属粉末同士の密着が十分でなく,導電性が不充分の場合がある。そこで,本発明では,必要に応じて上記固定工程として,上記回路パターンに導電性粉末を付着させる工程の後において上記導電性物質の付着した回路パターンを種々の方法により固定する手法を採用する。例えば,回路を形成する樹脂として,UVインキを用い,上記固定工程が,上記金属粉末の付着した上記UVインキに紫外線を照射する工程を含むようにすれば,短時間で樹脂を硬化させることができ,その分,効率の良い回路形成方法が達成される。
もちろんこれらの工程に加えて回路パターンに圧力を掛ける方法あるいは150℃以下の加熱工程を加えることも採用可能である。
これにより,導電性物質同士の密着が十分となり,適切な導電性を確保することが出来るようになる。
本発明においては,平版オフセット印刷を複数回実行することが必須であるが,このときの印刷パターンは当然のことながら完全に重ねあわされるものでなければならない。このような,パターン画像の重ね合わせは,後述するように複数の平版オフセット印刷機を
並列させ,これらの印刷機を同期して駆動することで実現可能である。詳細は追って説明する。
導電性粉末は,パターン状の樹脂の表面にのみ付着させることが好ましい。従って,粒子の飛散等によりパターン状のインキ樹脂の表面以外に付着した導電性粉末は除去し,除去後に樹脂表面の導電性物質を固定する処理を加えることが好ましい。また,導電性粉末を加圧前あるいは後に吸引除去することで,吸引した導電性粉末を再度使用することもできる。
導電性粉末は金,銀,銅,白金,パラジウム,アルミニウム,錫,及びニッケルのいずれかまたはこれらの合金あるいは半田粉などを用いることができる。特にコスト面と導電性の面から銀が好ましい。
半田粉の組成としては,Sn−Ag−Bi−Inなどが考えられる。この場合の代表組成は,Sn93−Ag3.5−Bi0.5−In3,Sn92−Ag3.5−Bi0.5−IN4が指摘される。また,Sn−Ag−Cuであってもよい。この場合の代表組成の一例は,Sn96.5−Ag3−Cu0.5
が挙げられる。
更に別の半田粉としては,Sn−Znが挙げられ,その場合の代表組成はSn91−Zn9である。
更に別の半田粉としては,Sn−Zn(‐Bi)であっても良い。代表組成としてSn89−Zn8−Bi3が挙げられる。
半田粉の平均粒径は,いずれの組成においても5μm〜30μmである。また,本発明では上記導電性粉末としてフィッシャー法による平均粒径とレーザ回折法による平均粒径の比が50%以下となる粉末を用いる。
本発明による回路基板では導電性粉末同士の接触により導電性を得るため,粉末粒子同士の接触の頻度を高くすることが重要である。
同一重量の一粒の粒子を考えた場合,真球状の場合に表面積が最小となり接触頻度が少なくなり,いびつな形状になれば表面積が増え接触頻度が多くなる。一方,粒子径を小さくしても同一重量での表面積は大きくなるが,粒子間の接触回数が多くなり抵抗値が悪くなるため,表面積と粒子径の関係が重要となる。
フィッシャー法は粉体の表面積により気体の流量が変化することを用いて粒子径を測定するもので,表面積より換算された粒子径と考えることができる。いびつな形状の粒子の場合フィッシャー法による粒径とマイクロトラックや電子顕微鏡による観察粒径から大きなずれが生じ,このずれが本発明に用いる粒子の指標となる。
いびつな形状をした粒子としてはフレーク状粉末や一次粒子が凝集し,より大きな二次粒子を形成している凝集粉末などが挙げられる。
上記パターン形成工程,上記回路パターンに金属粉末を付着させる工程,固定工程のいずれか一つあるいは複数が,他の工程と独立してなるように構成することも可能である。これによって,それぞれの工程が最も効率よく,あるいは精度よく作動する条件を選ぶことができる。
その一例としては,上記パターン形成工程,上記回路パターンに金属粉末を付着させる工程,固定工程のいずれか一つあるいは複数における基板搬送速度が,他の工程と異なる搬送速度である場合が挙げられる。
本発明に用いることの出来る基板は,PETなどの合成樹脂,シリコン,などのほか,紙などのシート類でもよい。
本発明におけるパターン状印刷による回路基板は種々の用途に適用可能である。例えばRFIDカードなどの非接触ICタグ用の基板などは好適な適用例である。このようなICタグなどでは,アンテナ回路を備えたものが一般的であり,数cm程度の近接距離で用いる場合はもちろん,数mの距離で用いるためにはより高感度のアンテナでなければならない。アンテナの感度は回路における電気抵抗の値が大きいファクタであるので,この発明に係る回路基板も低抵抗を達成する必要があるが,本発明における導電性金属粉末は,コーティングが省略されているので低抵抗性を確保するには,極めて適切である。
本発明にかかる回路基板の製造方法は,例えば電磁波シールド用の基板,あるいは種々の表示装置,ディスプレーにも適用可能であることは言うまでもない。
本発明に用いる前記金属粉末は,この金属粉末で形成された回路の抵抗が例えば一般の硬化型導電性ペーストにおける10-5 Ω・cmと同等又はそれより低い抵抗値であることが求められる。その点,フィッシャー法による粒径とマイクロトラックによる粒径の比が46.5%以下となる銀粉末を用いることで上記一般の硬化型導電性ペーストにおける10-5 Ω・cmと同等又はそれより低い抵抗値が得られることが分かった。
フィッシャー法は金属粉末の粒度を測定する方法として周知であり,その詳細については,例えば,特開平05−286716,特開平08−105582,特開平08−103724,特開平10−087325,特開2005−314715,特開2005−314714,特開2005−133198,特開2005−133197が参照される。
また,マイクロトラックによる粒径測定方法も例えば,特開平11−256208,特開2002−114968,特開2002−332501,特開2003−331649,特開2005−101398,特開2005−101398,特開2005−195960,特開2006−193795その他多くの文献に記載された周知な方法である。
以上の説明より明らかなように,本発明によれば,ナノ銀に較べてはるかに安価な金属粉末を用いることで素材単価の低下を図ると共に,有機物のコーティングを取り除く必要がない分更に安価に製造することができ,更に最も安価で且つどこでも実施することが可能なオフセット平版印刷を使いつつ,オフセット平版印刷を使うことによる印刷層の薄さを重ね刷りによって克服したものである。
本発明の回路基板の製造方法は,(1)樹脂による回路パターン形成工程,(2)形成された回路パターンに導電性物質の粉末を付着させる付着工程,(3)基板上の導電性物質の粉末を基板上に固定する固定工程からなる。以下,これらの工程別に説明する。
(1)回路パターン形成工程
回路パターン形成工程は,基板上に樹脂による回路パターンが印刷される工程である。
上記回路パターン形成工程においては,樹脂による回路パターンの形成が,樹脂を平版オフセット印刷により上記基板に対して複数回重ね塗りすることにより達成されることが極めて重要である。このように樹脂を重ね塗りすることで十分な樹脂層の厚みを得ることが出来る。
このように樹脂の重ね塗りによって樹脂の層厚を確保する理由は以下の通りである。すなわち,平版オフセット印刷による樹脂層の厚さは0.5μmから1μmと薄いので,1回の印刷では樹脂の「かすれ」が生じる。そこで本発明では,平版オフセット印刷を複数回重ね塗りする。これにより十分な樹脂層厚を確保できるのでかすれることなく,微細な回路パターンを形成することが出来る。
本発明では,基板上に樹脂による回路パターンを形成するパターン形成工程を備えているが,ここにおけるパターン形成工程では,樹脂の印刷手法として,最も安価な平版オフセット印刷が用いられる。従来用いられている高価な凹版オフセット印刷と異なり,平版オフセット印刷は特殊な印刷装置も要らず,且つ版も安価に製造することが出来るので,極めて安価に且つ特殊な装置を用いることなくどこでも実施することが出来るからである。
このように本発明においては,平版オフセット印刷を複数回実行することが必須であるが,このときの印刷パターンは当然のことながら完全に重ねあわされるものでなければならない。このような,パターン画像の重ね合わせは,後述するように複数の平版オフセット印刷機を並列させ,これらの印刷機を同期して駆動することで実現可能である。
(2)付着工程
付着工程は上記回路パターン形成工程によって形成された樹脂回路パターン上に導電性粉末を付着させる工程である。
上記導電性粉末としては金,銀,銅,白金,パラジウム,アルミニウム,錫及びニッケルのいずれか,またはこれらよりなる合金が用いられる。
本発明では,上記のようにして基板上に形成された樹脂による回路パターン上に導電性粉末を付着させる。導電性粉末の付着は,金属粉の振りかけ,噴射ノズルによる吹付け,刷毛などによるこすり付けなど種々の手法が考えられる。本発明では,上記導電性粉末として粒径0.2〜30μmで,600℃における分散剤が除去されることによる重量減少率が0.01〜0.50%の範囲にある導電性粉末を用いるので,粉末にブロッキングを防止するためのコーティングがなく,あるいは分散剤やコーティングを高温で燃焼させたり,分解させて蒸発させるなどの特別の処理を要することなくそのままで用いても導電性粉末を密着させることにより導通を確保することができる。
この分散剤としては,例えばピバリン酸,ネオヘプタン酸,ネオノナン酸,ネオデカン酸等の3 級カルボン酸,オクチル酸,カプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミ
チン酸,ステアリン酸等の飽和脂肪酸,オレイン酸,リノール酸,リノレン酸等の不飽和脂肪酸,マロン酸,コハク酸,アジピン酸,ピメリン酸,マレイン酸,アルキル置換コハク酸,水素添加フタル酸等の多価カルボン酸等の脂肪酸及びこれらの脂肪酸塩,これらの酸無水物,これらの酸から誘導される酸アミド,または,非イオン界面活性剤等の界面活性剤などが例示される。
また,分散剤が除去されるのは,上記のように600℃まで加熱した場合であり,分散剤は600℃まで昇温する過程において酸化・分解され除去される。従って,重量減少率は熱重量測定装置などを用い,乾燥した導電性粉末を空気雰囲気下で600℃まで昇温することで測定されるものである。
(3)固定工程
単純に導電性物質を付着させただけでは粉末同士の密着が十分でなく,導電性が不充分である。そこで,本発明では上記回路パターンに導電性粉末を付着させる工程の後において上記導電性物質を固定化する固定工程を有する。
固定化する方法としては加圧,加熱,またはUV照射による樹脂の硬化などが挙げられる。
このような加圧については例えば刷毛で擦るような処理によっても実現可能である。刷毛でのやわらかい加圧によって,銀粉の表面が平滑化されることは,製品としての基板がアンテナ回路として用いられる場合には,電波の吸収と反射の関係で重要である。
加熱については例えば150℃以下での加熱処理を行う。加熱することによりパターンを形成している樹脂より溶剤が揮発して収縮することにより導電性粉末同士の密着をより密とすることができる。
UV照射により樹脂を硬化させる際にはパターン形成用の樹脂としてUVインキを用いる。UVインキも硬化させる際に体積の収縮が起こるのでこれにより粒子同士の密着を密とすることができる。
これらの方法により,導電性粉末の粒子同士の密着が十分となり適切な導電性を確保することが出来るようになる。
導電性粉末は,パターン状の樹脂の表面にのみ付着させることが好ましいが,粒子の飛散等によりパターン状のインキ樹脂の表面以外に付着した導電性粉末は除去し,除去後に樹脂表面の導電性粉末に圧力を加えることが好ましい。また,導電性粉末を加圧前あるいは後に吸引除去することで,吸引した導電性粉末を再度使用することもできる。
導電性粉末は金,銀,銅,白金,パラジウム,アルミニウム,錫及びニッケルのいずれか,またはこれらよりなる合金粉末からなることが好ましい。特にコスト面と導電性の面から銀が好ましい。
本発明に用いることの出来る回路基板は,PETなどの合成樹脂,シリコン,などのほか,紙などのシート類でもよい。
本発明におけるパターン状印刷による回路基板は種々の用途に適用可能である。例えばRFIDカードなどの非接触ICタグ用の基板などは好適な適用例である。このようなICタグなどでは,アンテナ回路を備えたものが一般的であり,数cm程度の近接距離で用いる場合はもちろん,数mの距離で用いるためにはより高感度のアンテナでなければならない。アンテナの感度は回路における電気抵抗の値が大きいファクタであるので,この発明に係る回路基板も低抵抗を達成する必要があるが,本発明における導電性粉末は,コーティングが省略されているので低抵抗性を確保するには,極めて適切である。
以下,上記した工程順に本発明を具体化した実施例について,図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は,酸化重合型インキにより平版オフセット枚葉印刷機によりパターン形成を行う場合の本発明に係わる回路基板製造装置の概念図である。
ここでは,パターン形成工程とその後の銀付着および加熱乾燥固着工程の処理速度が異なるため,パターン形成工程と,銀付着および加熱乾燥固着工程とを分離させた場合を示している。
但し,銀付着と加熱乾燥固着工程とをさらに分離するようにしてもよく,このような変更も本実施例の一部に含まれる。
図1はパターン形成装置を示すもので,矢印方向にシート状の基板Aを印刷部に供給するフィーダ部1と平版オフセット枚葉印刷機によるパターン形成装置2(ここでは2−1,2−2,2−3の3台のパターン形成装置が示されているが,本発明においては3台に限らず,それ以上でもそれ以下でもよい)と,印刷パターンが形成された基板Aを排出するデリバリ装置から構成されている。5はシート基板Aの渡し胴装置を示す。
図2は上記により印刷パターンが形成された基板Aの搬送ベルトBへの供給装置6,印刷パターン上に導電性物質の一例である銀粉を付着させるための銀付着装置7および加熱乾燥による固着装置Cからなる銀付着および加熱乾燥固着装置を示すものである。固着装置Cは銀の付着した基板Aから余分な銀粉を吹き飛ばすエアーノズル8,10と銀粉を吸引する吸引装置13,基板Aを加熱して銀を基板Aに定着固定させるためのヒータなどよりなる加熱装置9から構成されている。またその後段には,加熱乾燥した基板Aの表面を加圧して基板表面の銀粉を更に固定し,銀粉同士の密着を強化する加圧装置11と,製品としての基板Aを排出してトレーにストックする排出部12を主な構成として備えている。
排出された基板Aには,複数の単体基板が印刷されており,製品としてはこれらをカットして使用する。
また,搬送ベルトBは,通気性のよい穴開きベルトや,職布であり,ベルトBの裏面に設けられた複数の負圧源である吸引装置13,13によって,ベルトB上の基板AをベルトBに吸い付けて搬送する。
全ての吸引装置13は,図示のように銀捕集フィルタ14を介して吸引装置15に接続されており,上記銀捕集フィルタ14で浮遊する銀粉を捕集する。
次にまず上記パターン形成装置2を主な構成とするパターン形成工程及びそれに用いられる装置について説明する。
(1)パターン形成工程
ここでは酸化重合型インキを用いた平版オフセット印刷の手法を用いた場合について説明する。説明には図3に示したパターン形成装置2の拡大図が用いられる。
前記パターン形成装置2−1は,搬送される基板Aを挟んで対向して配置された上側のブランケットシリンダ2aと該ブランケットシリンダ2aに基板Aを下から押し付ける圧
シリンダ2bとを備えている。上記ブランケットシリンダ2aにはパターンの印刷版が取り付けられた版シリンダ2cが接触して回転している。各シリンダの回転方向は矢印で示されている。
上記版シリンダ2cに取り付けられた版面には粘着性樹脂インキの付けローラ2dが接触して回転し,この付けローラ2dには樹脂インキ搬送ローラ2eが複数個接触して回転し,インキ呼び出しローラ2fを通じてインキタンク2gから樹脂インキを供給する。
版シリンダ2cには,パターンが形成された図示せぬ印刷版が取り付けられており,このパターンのみに付けローラを通じて粘着性樹脂インキが供給される。
このような構成により,図1に示すフィーダ部1で供給された基板Aはパターン形成装置2−1のブランケットシリンダ2aと圧シリンダ2bとの間を通過する。この時,上記したようにインキタンク2g→インキ呼び出しローラ2f→樹脂インキ搬送ローラ2e→付けローラ2dを経て供給された粘着性樹脂インキは,版シリンダ2cに取り付けられた印刷版に形成された回路パターンに転写され,更にブランケットシリンダ2aを経て基板Aの表面に転写される。
前記したようにパターン形成装置2−1の下流には更に2台のパターン形成装置2−2,2−3が設けられており,各パターン形成装置における版シリンダ2cには同一の回路パターンが形成され,更にこれらのパターン形成装置が,基板A上の同じ位置に同一パターンを転写するよう,同期をとって運転されていることによって基板上に同じパターンが形成される。すなわち,各パターン形成装置の回転位置は各パターン形成装置がその間隔分だけ遅れて回転するように調整されているので,全てのパターン形成装置によって基板に転写されるパターンは,完全に同じ場所に重ねあわされる。
(2)付着工程
次に,銀付着工程の一例として回転式銀付着装置7について説明する。
図4は,上記回転式銀付着装置7の詳細図である。
銀付着装置7は,搬送ベルトBにより搬送されてきた基板Aに対向して回転する銀付けローラ7eを備えている。銀付けローラ7eは外周全体にフェルト,スポンジなどの銀付着部材を備えたものである。この銀付けローラ7eに近接して銀搬送ローラ7dが回転可能に支持されている。この銀搬送ローラ7dは,銀粉槽7a内に貯められた銀粉7b内で回転し,その外周に設けられたフェルトやスポンジなどの銀付着部材に銀粉を付着させて,上記銀付けローラ7e外周の銀付着部材に搬送するものである。
なお,上記銀粉槽7a内には銀粉槽7a内の凝集銀を粉末状に砕くと共に固まらないように攪拌する回転可能な羽根付の攪拌ローラ7cが設けられている。
従って,上記攪拌ローラ7cによって攪拌された銀粉は,銀搬送ローラ7d外周の銀付着部材に付着して矢印方向に搬送される。搬送された銀粉は,隣接する銀付けローラ7eの外周に設けられた銀付着部材に乗り移り,銀付けローラ7eの回転によって搬送ベルトBによって矢印方向に搬送されてきた基板A表面に転写された樹脂パターンに転写される。銀付けローラには対向して圧ローラ7gが配置されている。基板Aは,次に樹脂パターンに付着した銀粉をなめらかに擦り付けるための左右に移動するバイブレーション式ローラ7fと押さえローラ7hとの間を通過する。バイブレーションローラ7fの表面はフェルト等の柔らかな素材でカバーされている。
こうして基板A上の樹脂パターンに銀粉が付着して,銀粉による回路パターンが形成されるが,上記のように銀付けローラ7eは,スポンジやフェルトなどによって機械的に基板Aの表面に銀粉を転写するものであるので,僅かであるが余分な銀粉が基板A上に乗り移ることがある。これらの余分な銀粉は,後続するエアーノズル8と吸引装置13を基板Aが通過するときに,吸引され除去される。吸引された銀粉は,前記のように銀捕集フィルタ14によって捕集される。
なお,この例ではエアーノズル8と吸引装置13によって余分な銀粉を除去するようにしているが,別の例としてフェルトなどの刷毛によって余分な銀粉を除去するようにしても良く,或いはこのような機械的な手段と上記吸引などの手段との組み合わせであってもよい。このような刷毛による銀粉の除去では,適当な圧力が形成されたパターンに与えられるので,パターン表面が平滑化され,後述の効果を奏することが出来る。
(3)固定工程
前記したように,上記エアーノズル10と8との間には基板Aを加熱して銀を基板Aに定着固定させるためのヒータなどよりなる加熱装置9が設けられている。搬送ベルトBにのって搬送される基板は,ここで加熱,加圧,及び冷却処理を受けて製品となる。
上記のような銀を加熱する工程に先立って或いは同時に,もしくは後段において,基板Aを乾燥させるための図示せぬ乾燥装置と,加熱乾燥した基板Aの表面を加圧して基板表面の銀粉を更に固定し,銀粉同士の結合力を強化する加圧装置11とが設けられる。
乾燥は乾いた空気を吹き付けることによって実行されるが,同時に冷却効果を果たすものであり,空気によらずとも他の方法であってもかまわない。また加圧は,例えばパッドを銀粉固定後のパターン上にこすり付けることにより行われる。このような加圧処理によりパターンの表面がならされ,平滑化することは例えばこの製品をRFIDカードのアンテナとして用いる場合に,電波の受信と送信の効率面で重要である。
以上述べたような(1)〜(3)の工程を経て製造された製品としての基板Aは,排出部12に排出される。
図5はインキ樹脂としてUV(紫外線)硬化型インキを用いた場合の本発明の一実施例に係わる回路基板製造装置の概念図である。
図5に示すようにこの装置は,ロール状の基板原反31を使用してパターン印刷工程,銀粉付着処理工程,乾燥固定工程を連続的に処理し完成品をロール状で巻取ることでロール ツー ロールとし生産性の大幅な向上がはかられる。印刷によりパターンを形成するパターン形成装置32(ここでは32−1,32−2,32−3の3台で示されている)は図1に示した実施例1で用いているものと同様であり,平版オフセット輪転式印刷機の一種であるが,ブランケット,各ローラはUV硬化型インキ対応のものを使用する。
但し,このようなロール ツー ロールによる一貫生産を,実施例1に示したUV硬化樹脂を用いない製造工程に適用することも,当然可能である。
銀付着および乾燥処理工程はここでは銀粉噴射ノズル装置33,印刷パターンへの銀付けローラ34,UVランプ35,基板上の余分な銀粉を取り除くエアーノズル36および基板上の残留する銀粉を拭き取る為の拭き取り装置37で構成されている。銀付けローラ34は表面をフェルト等の銀付着素材とするとともにバイブレーション式とする。また樹脂の硬化を促進するためUVランプ35は通過する基板の上下から照射する。上記の各々の装置は銀粉の飛散防止とUVランプ光のもれ防止のため各々独立密閉型の構造とすることが望ましい。最後に乾燥後の銀粉の結合力を強化する加圧装置38を経て,製品としてロール状のまま基板巻取り装置39により巻取る。
前記銀粉噴射ノズル装置33およびエアーノズル装置36には,各々飛散した銀粉を吸引する吸引装置40があり,銀粉捕集フィルタ41と吸引装置42に繋がっている。
このUV硬化型インキを用いた回路基板製造装置においても図1に示すオフセット枚葉印刷機による方法もあり,その場合の乾燥処理工程は図2の加熱装置9の替わりにUVランプ装置を使用することができる。
本発明に係る方法で作成した回路を例えばRFIDカードに用いるには,特にアンテナ部分の効率を高める必要があり,回路の抵抗が例えば一般の硬化型導電性ペーストにおける10-5 Ω・cmと同等又はそれより低い抵抗値であることが求められる。そのため種々の銀粉を用いて回路を形成し,その抵抗値を測定したところ,フィッシャー法により測定した銀粉の粒径と,マイクロトラックにおける銀粉の粒径との比が一定値以上の場合に,比抵抗が飛躍的に向上し,上記一般の硬化型導電性ペーストにおける比抵抗と同等の値を達成することが出来ることが分かった。
ここに表1は,種々の銀粉についてのフィッシャー法により測定した銀粉の粒径と,マイクロトラックにおける銀粉の粒径との比を順に記載したものである。
Figure 2007318081
この実験に用いた回路は,前記した実施例1の酸化重合型インキを用いた方法でPETフィルム上に作成したものである。重ね塗り回数は4回で,固定工程は130℃30分の加熱乾燥を行った。
回路の形状としては,1mm×50mmの直線パターンを作成し,デジタルマルチメーター(アドバンテスト製R6551)を用いて四端子法にて抵抗値を測定した。また,電子顕微鏡(日本電子製JSM−5500)を用いて断面を観察し,銀により形成された層の厚みを測定してこれらの測定値から比抵抗を算出した。
表1に示した通りフィッシャー法による粒径とマイクロトラックによる粒径の比が46.5%以下となる銀粉末においては一般の硬化型導電性ペーストと同等の10-5 Ω・cmレベルの比抵抗が達成され,上記比が46.5%を超えて,例えば60.1以上になると比抵抗の値が著しく増加(3.3×10-5以上)していることが理解される。
また,前記実施形態における上記回路パターン形成工程においては,樹脂を平版オフセット印刷により上記基板に対して複数回重ね塗りすることにより十分な樹脂層の厚みを得ることが出来ることを述べた。
このようなインキの重ね塗りによる比抵抗の変化についての実験結果が表2に示されている。
Figure 2007318081
これらの回路の形成も実施例1の方法にてPETフィルム上に作成されたものである。固定工程は130℃30分で行った。
表に示すとおり,重ね塗り回数を増やすことにより樹脂層厚が確保されて銀粉の固着量が安定し,比抵抗を半分近く低減することができることが理解される。
本発明の実施例1に係る基板の製造装置の概念を示す図。 本発明の実施例1に用いる銀付着および加熱乾燥固着装置の概念図。 図1に示した装置の用いることの出来るパターン形成装置の具体例を示す図。 図1に示した装置の用いることの出来る銀付着装置および加熱乾燥固着装置の具体例を示す図。 本発明の実施例2のインキ樹脂としてUV(紫外線)乾燥型インキを使用した場合の具体例を示す図。
符号の説明
1…フィーダ部
2…パターン形成装置
2a…ブランケットシリンダ
2b…圧シリンダ
2c…版シリンダ
2d…付けローラ
2e…樹脂インキ搬送ローラ
2f…インキ呼び出しローラ
2g…インキタンク
4…基板デリバリ装置
5…基板渡し胴装置
6…供給装置
7…銀付着装置
8…エアーノズル
9…加熱装置
10…エアーノズル
11…加圧装置
12…排出部
13…吸引装置
14…銀捕集フィルタ
15…吸引装置
7a…銀粉槽
7b…銀粉
7c…撹拌ローラ
7d…銀搬送ローラ
7e…銀付けローラ
7f…バイブレーション式ローラ
7g…圧ローラ
7h…押さえローラ
31…ロール状の基板原反
32…パターン形成装置
33…銀粉噴射ノズル装置
34…銀付けローラ
35…UVランプ
36…エアーノズル
37…拭き取り装置
38…加圧装置
39…基板巻取り装置
40…吸引装置
41…銀捕集フィルタ
42…吸引装置

Claims (12)

  1. 基板上に樹脂による回路パターンを形成するパターン形成工程と,
    上記回路パターンに導電性粉末を付着させる工程と,
    上記導電性粉末の付着した回路パターンを上記基板上に固定する固定工程を備えてなる回路基板の製造方法において,
    上記導電性粉末が平均粒径0.2〜30μmからなり,600℃における分散剤が除去されることによる重量減少率が0.01〜0.50%の範囲にある金属粉末であることを特徴とする回路基板の製造方法。
  2. 上記パターン形成工程における樹脂による回路パターンの形成が,樹脂を印刷により上記基板に対して複数回重ね塗りすることにより達成されるものである請求項1に記載の回路基板の製造方法。
  3. 上記樹脂が,UVインキであり,上記固定工程が,上記金属粉末の付着した上記UVインキに紫外線を照射する工程を含んでなる請求項1或いは2のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  4. 上記固定工程が,上記回路パターンに上記金属粉末を付着させる工程の後において上記金属粉末の付着した回路パターンに圧力をかけて固定するものである請求項1〜3のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  5. 上記固定工程が,150℃以下の加熱工程を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  6. 上記パターン形成工程,上記回路パターンに金属粉末を付着させる工程,固定工程のいずれか一つ或いは複数が,他の工程と独立してなる請求項1〜5のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  7. 上記パターン形成工程,上記回路パターンに金属粉末を付着させる工程,固定工程のいずれか一つ或いは複数における基板搬送速度が,他の工程と異なる搬送速度である請求項6に記載の回路基板の製造方法。
  8. 上記印刷が,平版印刷である請求項1〜7のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  9. 前記金属粉末が,金,銀,銅,白金,パラジウムのいずれかまたはこれらの混合物からなる請求項1〜8のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  10. 前記回路基板が,PETなどの合成樹脂,シリコン,紙シートのいずれかから構成されたものである請求項1〜9のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  11. 前記回路基板が,RFIDカードを含む非接触ICタグ用のアンテナ等基板,種々の表示装置やディスプレーにおける電磁波シールド材にも適用可能である請求項1〜10のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  12. 前記金属粉末が,フィッシャー法による粒径とマイクロトラックによる粒径の比が46.5%以下となる銀粉末である請求項1〜11のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
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