JP2007310066A - 像加熱装置 - Google Patents

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正武 臼井
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Abstract

【課題】通電により発熱する発熱抵抗体を有する加熱体16と、加熱体を支持する樹脂製の加熱体支持部材17と、加熱体支持部材に設けた開口部17bに配置され、加熱体の異常昇温による熱で作動して発熱抵抗体への通電を遮断する感熱素子19と、を有し、加熱体の熱により記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、感熱素子19を安定的に動作させる。
【解決手段】加熱体16の異常昇温時に、加熱体の熱で溶解した加熱体支持部材の樹脂が開口部17bに浸入することを抑制する浸入抑制手段17c・17dを備えたことを特徴とする像加熱装置。
【選択図】図5

Description

本発明は、例えば複写機・プリンタ・ファックス等の画像形成装置に搭載する加熱定着装置として用いれば好適な像加熱装置に関し、特に加熱体の暴走を抑える感熱素子を備えた像加熱装置に関する。
電子写真・静電記録・磁気記録等の画像形成手段により加熱軟化性樹脂等よりなるトナーを用いて記録材に形成したトナー画像を永久固着画像として加熱定着処理する装置としては、従来から、各種タイプの装置が知られており、また実用に供されている。
代表的な装置としては、熱ローラタイプの装置、フィルム加熱方式の装置等が挙げられ
る。
フィルム加熱方式の加熱定着装置は、例えば特許文献1に記載されており、熱伝達効率が高く、装置の立ち上がりも速い方式(オンデマンド)の装置である。
図11はフィルム加熱方式の加熱定着装置の一例におけ、要部の横断面模型図である。16は加熱体としてのヒータであり、図面に垂直方向を長手とする細長・薄板形状の低熱容量ヒータである。このヒータ16は絶縁性で熱伝導率の良い基板と、この基板に具備させた発熱抵抗体とを基本構成体とするもので、発熱抵抗体に対する通電により急速に昇温し、通電遮断により迅速に降温する。
17は加熱体支持部材としてのヒータホルダであり、剛性・断熱性を有し、該部材の下面に部材長手に沿って形成されたヒータ嵌め込み溝内に上記のヒータ16を嵌め込んで固定支持させてある。
上記のようにヒータホルダ17に支持させたヒータ16に対して可撓性部材としての耐熱性フィルム(定着フィルム)27を弾性加圧ローラ22で加圧密着させて摺動搬送させる。そして、フィルム27を挟んでヒータ16と加圧ローラ22とで形成される定着ニップ部Nのフィルム27と加圧ローラ22との間に未定着トナー画像tを形成担持させた記録材Pを導入してフィルム27と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送させる。これにより、ヒータ16の熱をフィルム27を介して記録材Pに付与して未定着画像tを加熱定着させるものである。定着ニップ部Nを通った記録材Pはフィルム27の面から分離して搬送される。
ヒータ16の異常昇温時に、ヒータ16の熱で作動してヒータ16への給電を緊急遮断させる感熱素子19をヒータ16の定着フィルム密着面側とは反対の面に対して接触させて配設してある。発熱抵抗体に対する通電に制御不能の事態を生じてヒータ16が異常昇温(ヒータの暴走、許容以上の過昇温)すると、そのヒータ16の異常昇温の熱により感熱素子19が作動して、発熱抵抗体への通電が緊急遮断される。
感熱素子19としては、主に温度ヒューズや、サーモスイッチといった、所定の温度以上を感知すると発熱抵抗体への電流を遮断する仕組みのものが用いられている。
このような感熱素子は熱容量が比較的大きいので、ヒータに直接接触させると、この接触領域のヒータ温度が下がってしまい、ヒータ長手方向の感熱素子が接触している領域と接触していない領域とでヒータ温度に差が生じて画像の加熱ムラが生じやすい。逆に、感熱素子をヒータに対して非接触に配置すると感熱素子の応答性が下がってしまう。
これらの課題を解決する手段として、特許文献2、3に記載されているような手段が提案されている。即ち、感熱素子とヒータの間にヒータとの接触面積が小さい樹脂製のスペーサを設け、ヒータが異常昇温するとスペーサが軟化して感熱素子がヒータに接触するという構成である。
特開平4−44075号公報 特開平8−305191号公報 特開2002−110313号公報
しかしながら、ヒータの異常昇温によりスペーサが軟化しても、感熱素子がヒータにしっかりと接触せず、感熱素子の応答が若干遅れる場合があることが判明した。その原因は下記のようなものであった。
例えば、図12の(a)に示すように、ヒータ16が異常昇温していない状態の通常時には、感熱素子19は樹脂製のスペーサ25によりヒータ16に対して空隙を持って保持されている。そして、ヒータ16が異常昇温した時には、(b)に示すように、スペーサ25が溶解することで、感熱素子19はバネ26により押し下げられてヒータ面に密着する。この(b)の状態がスペーサ25が溶解した時の正常の状態である。
しかし、画像形成装置の高速化、カラー化に伴い、ヒータ16に投入される電力が大きくなった装置においては、ヒータの異常昇温時には樹脂製のヒータホルダ17も溶解することがある。そして、ヒータホルダ17の溶解樹脂は圧が加わっていないところに移動しようとする。従来構成のヒータホルダ17では、感熱素子19の取付け用にヒータホルダ17に開口された部分17b近傍で圧力の加わっていない所は、その開口部17bのみであった。よって、(c)のように、その開口部17bへ、ヒータホルダ17の溶解樹脂17bが多量に浸入して、感熱素子19とヒータ面の密着を阻害する一因となっていた。また、開口部17bへ、ヒータホルダ17の軟化溶融樹脂17cが浸入することで、感熱素子位置のヒータの熱を奪う事も感熱素子19が動作することを阻害する一因となっていた。
このようなことで、感熱素子16の応答が若干遅れる、すなわち給電遮断動作が遅れると、ヒータのパターン跳びやヒータが割れる現象が顕在化する。
本発明は、この問題を解決して、感熱素子が安定して動作する像加熱装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の代表的な構成は、通電により発熱する発熱抵抗体を有する加熱体と、前記加熱体を支持する樹脂製の加熱体支持部材と、前記加熱体支持部材に設けた開口部に配置され、前記加熱体の異常昇温による熱で作動して前記発熱抵抗体への通電を遮断する感熱素子と、を有し、前記加熱体の熱により記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、前記加熱体の異常昇温時に、前記加熱体の熱で溶解した前記加熱体支持部材の樹脂が前記開口部に浸入することを抑制する浸入抑制手段を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、加熱体の異常昇温時に、加熱体支持部材の溶解樹脂が感熱素子を配設した開口部に浸入することを抑制することができて、感熱素子を安定的に動作させることが出来る。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(1)画像形成装置例
図1に、本発明の像加熱装置を搭載したカラー画像形成装置の概略構成図を示す。本例のカラー画像形成装置は、電子写真方式を用いて、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナー像を重ね合わせることでフルカラー画像を得る装置である。プロセススピードは180mm/sec、一分間の印字枚数はUSレターサイズ紙で30枚である。また、一枚目プリント(First Page Out)までの時間(FPOT)は約13秒である。
Y・C・M・Kはそれぞれイエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの色トナー像を形成する4つのプロセスカートリッジであり、下から上に順に配列してある。各カートリッジY・C・M・Kは、それぞれ、いわゆるオールインワンカートリッジを使用している。オールインワンカートリッジは、像担持体たる感光体ドラム1、帯電手段たる帯電ローラ2、静電潜像を顕像化するための現像手段3、ドラム1のクリーニング手段4等をひとつの容器にまとめたものである。
カートリッジYの現像手段3にはイエロートナーを、カートリッジCの現像手段3にはシアントナーを、カートリッジMの現像手段3にはマゼンタトナーを、カートリッジKの現像手段3にはブラックトナーを、それぞれ充填してある。
ドラム1に露光を行うことにより静電潜像を形成する光学系5が上記4色のカートリッジY・C・M・Kに対応して設けられている。光学系5としてはレーザー走査露光光学系を用いている。
各カートリッジY・C・M・Kにおいて、光学系5より、画像データに基づいた走査露光が、帯電手段2により一様に帯電されたドラム1上になされることにより、ドラム表面に走査露光画像に対応する静電潜像が形成される。不図示のバイアス電源より現像手段3の現像ローラに印加される現像バイアスを、帯電電位と潜像(露後部)電位の間の適切な値に設定することで、負または正の所定の極性に帯電されたトナーがドラム1上の静電潜像に選択的に付着して現像が行われる。
すなわち、カートリッジYのドラム1にはイエロートナー像が、カートリッジCのドラム1にはシアントナー像が、カートリッジMのドラム1にはマゼンタトナー像が、カートリッジKのドラム1にはブラックトナー像が、それぞれ形成される。
各カートリッジY・C・M・Kのドラム1上に現像形成された上記の単色トナー画像は各ドラム1の回転と同期して、略等速で回転する中間転写体6上へ所定の位置合わせ状態で順に重畳されて一次転写される。これにより、中間転写体6上に未定着のフルカラートナー画像が合成形成される。
本実施例においては、中間転写体6として、エンドレスの中間転写ベルトを用いており、駆動ローラ7、二次転写ローラ対向ローラ14、テンションローラ8の3本のローラに懸回して張架してあり、駆動ローラ7によって駆動される。
各カートリッジY・C・M・Kのドラム1上から中間転写ベルト6上へのトナー像の一次転写手段としては、一次転写ローラ9を用いている。一次転写ローラ9に対して、不図示のバイアス電源より、トナーと逆極性の一次転写バイアスを印加する。これにより、各カートリッジY・C・M・Kのドラム1上から中間転写ベルト6に対して、トナー像が一次転写される。
各カートリッジY・C・M・Kにおいてドラム1上から中間転写ベルト6への一次転写後、ドラム1上に転写残として残ったトナーは、クリーニング手段4により除去される。本実施例においては、クリーニング手段4として、ウレタンブレードによるブレードクリーニングを用いている。
上記工程を中間転写ベルト6の回転に同調して、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のカートリッジY・C・M・Kにおいて行なわせて、中間転写ベルト6上に、各色の一次転写トナー画像を順次重ねて形成していく。なお、単色のみの画像形成(単色モード)時には、上記工程は、目的の色についてのみ行われる。
一方、記録材(転写材)供給部となる記録材カセット10にセットされた記録材Pは、給送ローラ11により給送される。そして、レジストローラ12により所定の制御タイミングで、二次転写ローラ対向ローラ14に懸回されている中間転写ベルト6部分と二次転写手段としての二次転写ローラ13とのニップ部に搬送される。
中間転写ベルト6上に形成された一次転写トナー像は、二次転写手段たる二次転写ローラ13に不図示のバイアス印加手段より印加されるトナーと逆極性のバイアスにより、記録材P上に一括転写される。
二次転写後に中間転写ベルト6上に残った二次転写残トナーは中間転写ベルトクリーニング手段15により除去される。本実施例においては、感光体ドラム1のクリーニング手段4と同様、ウレタンブレードによる中間転写体クリーニングを行っている。
記録材P上に二次転写されたトナー画像は、定着手段たる定着装置Fを通過することで、記録材P上に溶融定着される。そして、排紙パス31を通って排紙トレイ32に送り出されて画像形成装置の出力画像(フルカラープリント、もしくはモノカラープリント)となる。
(2)定着装置(像加熱装置)F
図2は定着装置Fの概略構成模型図である。本例の定着装置Fは、可撓性の回転体(定着ベルト)を用いた加圧ローラ駆動方式(テンションレスタイプ)の像加熱装置である。
1)装置Fの全体的構成
20は定着ベルト(可撓性の回転体)であり、ポリイミドの基層上に弾性層を設けた円筒形状の部材である。この定着ベルト20は後記3)項で詳述する。
22は加圧ローラである。17は断面が略半円弧形状で、樋型の耐熱性ヒータホルダ(加熱体保持部材)、16は熱源としてのヒータ(加熱体)である。ヒータ16は、ヒータホルダ17の下面に該ホルダの長手に沿って形成されたヒータ嵌め込み溝17a(図6)内に嵌め込んで固定して支持させてある。定着ベルト20はこのヒータホルダ17にルーズに外嵌させてある。ヒータ16は本実施例では後記2)項で詳述するようなセラミックヒータである。
ヒータホルダ17は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂の成型品である。本実施例のヒータホルダ17は、ヒータ16を保持する機能だけでなく、定着ベルト20をガイドする役割を果たす。本実施例においては、液晶ポリマーとして、デュポン社のゼナイト7755(商品名)を使用した。ゼナイト7755の最高使用可能温度(耐熱温度)は、約270℃である。
加圧ローラ22は、ステンレス製の芯金に、射出成形により、厚み約3mmのシリコーンゴム層を形成し、その上に厚み約40μmのPFA樹脂チューブを被覆してなる。この加圧ローラ22は、芯金の両端部を装置フレーム24の不図示の奥側と手前側の側板間に回転自由に軸受保持させて配設してある。この加圧ローラ22の上側に、前記のヒータ16・ヒータホルダ17・定着ベルト20等から成る加熱アセンブリをヒータ16側を下向きにして加圧ローラ22に並行に配置する。そして、ヒータホルダ17の両端部を不図示の加圧機構により片側98N(10kgf)、総圧196N(20kgf)の力で加圧ローラ22方向に附勢してある。これにより加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。加圧機構は、圧解除機構を有し、ジャム処理時等に、加圧を解除し、記録材Pの除去が容易な構成となっている。
18は温度検知手段としてのサーミスタである。サーミスタ18はヒータホルダ17の上方において定着ベルト20の内面に弾性的に接触させてあり、定着ベルト20の内面の温度を検知する。
サーミスタ18は、ヒータホルダ17に固定支持させたステンレス製のアームの先端に取り付けられている。アームは弾性を有するので、定着ベルト20の内面の動きが不安定になった状態においても、サーミスタ素子が定着ベルト20の内面に常に接する状態に保たれる。
サーミスタ18は、制御回路部(CPU)21と電気的に接続されている。制御回路部21は、サーミスタ18の出力に基づいてヒータ駆動回路部28(図3)を制御する。本実施例の制御回路部21はサーミスタ18の検知温度が所定の制御温度を維持するようにヒータ16(正確には後述する発熱抵抗体bへの)への通電を制御している。本実施例の制御温度は195℃である。
23は装置フレーム24に組付けた入り口ガイドであり、34は定着排紙ローラである。入り口ガイド23は、二次転写ニップを抜けた記録材Pが、定着ニップ部Nに正確に進入するよう、記録材を導く役割を果たす。本実施例の入り口ガイド23は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂により形成されている。
19は感熱素子たるサーモスイッチ、25はヒータ16とサーモスイッチ19の間に配置されている樹脂製のスペーサである。スペーサ25はヒータホルダ17の一部に設けられた開口部(孔部)に挿入してある。サーモスイッチ19は、スペーサ25を介して、付勢部材たるバネ26により、ヒータ16の裏面方向に付勢されている。
サーモスイッチ19は、ヒータ16への給電線(不図示)に対して直列に接続され、所定の温度以上を感知するとヒータ16への通電を遮断する構成となっている。本実施例のサーモスイッチ19の作動温度すなわち通電を遮断する温度は約250℃である。
加圧ローラ22は駆動手段Mにより矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される。加圧ローラ22が回転すると摩擦力により円筒状の定着ベルト20が従動回転する。定着ベルト20の内面にはグリスが塗布され、ヒータ16やヒータホルダ17と定着ベルト20内面との摺動性を確保している。
トナー像が形成された記録材Pは定着ニップ部Nで挟持搬送されることにより加熱定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは定着ベルト20の曲率により自然に定着ベルトから分離され、定着排紙ローラ34で排出される。
2)ヒータ(加熱体)16
熱源としてのヒータ16は、細長い板状の窒化アルミの基板と、この基板の一方面側に形成された発熱抵抗体層と、更にその発熱抵抗体層を覆う耐熱ガラス層と、基板の他方面側に形成された摺動層を有する、裏面加熱型のセラミックヒータである。
図3はそのようなセラミックヒータの一例の構造模型図であり、(a)はヒータの表面側の一部切欠き平面模型図、(b)は裏面側の一部切欠き平面模型図、(c)は(b)の(c)−(c)線に沿う拡大横断面模型図である。ヒータ表面側が定着ベルト20の内面と接触する。
aは細長い板状の窒化アルミ製の基板である。bはこの基板aの一方面側に銀パラジウム(Ag/Pd)合金を含んだ導電ペーストをスクリーン印刷して形成された発熱抵抗体層であり、厚みは10μm程度、幅は1〜5mm程度である。c及びdは発熱抵抗体層bと同様に基板aの一方面側に銀ペーストをスクリーン印刷して形成された電極部であり、この電極部c及びdに給電用コネクタ27が繋がれる。e及びfは電極部c及びdと発熱抵抗体層bを電気的に繋ぐ電路部であり、やはり基板aの一方面側にスクリーン印刷されている。gは発熱抵抗体層bと電路部e・fの保護と絶縁性を確保するためにそれ等の上に形成した厚み10μm程度の耐熱ガラスコート層である。hは基板aの他方面側に形成された摺動層であり、厚み約6μmのポリイミド樹脂コーティング層である。この摺動層hを形成した基板面側がヒータ16の表面側であり、定着ベルト20の内面と接触する。摺動層hはヒータ16と定着ベルト20との摺動性を確保する。
上記のヒータ16は、摺動層h側である表面側を露呈させてヒータホルダ17の下面に該ホルダの長手に沿って形成されたヒータ嵌め込み溝17a(図6)内に嵌め込んで固定して支持させてある。
ヒータ駆動回路部28から上記の給電用コネクタ27を介して第1と第2の電極部c・dに給電されることで発熱抵抗体層bが発熱してヒータ16が迅速に昇温する。ヒータ駆動回路部28は制御回路部(CPU)21により制御される。
画像形成装置本体にプリント命令が入ると、ヒータへの通電が開始されると共に加圧ローラ22及び定着ベルト20が回転を開始する。ヒータ16への通電は、PID制御によりコントロールされ、定着ベルト20の内面温度、すなわちサーミスタ18の検知温度が195℃になるように、入力電力が制御される。
3)定着ベルト20
定着ベルト20は、SUSの素管を引き抜き加工により、厚さ50μmの厚みのシームレスベルト状に形成したSUSベルト上に、シリコーンゴム層を厚み250μmでリングコート法により形成し、更に、厚み30μmのPFA樹脂チューブを被覆してなる。
定着ベルト20の表面にフッ素樹脂層(本実施例ではPFAチューブ)を設けることで、表面の離型性が向上し、定着ベルト20の表面にトナーが一旦付着し、再度記録材Pにオフセットトナーが移動しやすくなりオフセット現象を防止することができる。
また、定着ベルト20の表面のフッ素樹脂層を塗布により形成するのではなく弾性層の上にチューブを被せて形成することで、より簡便に、均一なフッ素樹脂層を形成することが可能となる。
(3)異常昇温時におけるサーモスイッチ19の動作
1)サーモスイッチ(感熱素子)19
図4に、サーモスイッチ19の断面概略図を示す。サーモスイッチ・ケース50(下部が感熱面になっている)は、バイメタル51とバイメタル上に配置されたピン52を内包し、ピン52は通電プレート53を支持している。通電プレート53は、接点55において通電プレート54と接しており、ヒータ16が異常昇温を起こしていない通常時には図4の(a)のようにこの接点55を介してヒータへの通電が可能な状態になっている。一方、ヒータ16の異常昇温時には図4の(b)のように、バイメタル51が正常時とは逆側に反り、ピン52を押し上げる。これによって通電プレート53も押し上げられ、接点55が開放され、ヒータへの通電が不可能な状態になる。
以上から判るように、ヒータ16の異常昇温時に、サーモスイッチ19を素早く動作させるためには、バイメタル51の存在するサーモスイッチ・ケース50の中心部にヒータの熱を伝えることが好ましい。
図5に、本実施例におけるサーモスイッチ19の周辺の詳細断面図を示す。図6に、サーモスイッチ配設部分の要部の分解斜視図である。
サーモスイッチ19は、ヒータホルダ17の内底面の一部に設けられた開口部(孔部)17b内にスペーサ25を介して配設してあり、かつバネ26により所定の加圧力、本実施例では4.9N(500gf)の加圧力で、ヒータ16側に常時押圧付勢されている。開口部17bはヒータホルダ17に支持させたヒータ16の裏面に対応している。サーモスイッチ19は、スペーサ25のサーモスイッチ支持面で受け止められて、ヒータ16に対して所定の隙間を持って保持されている。
スペーサ25の材質として、本実施例においては、軟化温度235℃のガラス繊維入りポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。
そして、ヒータ16が異常昇温した時には、前述した従来例の図12の(b)の場合と同様に、樹脂製のスペーサ25が溶解(または軟化:以下同じ)する。これにより、感熱素子19はバネ26により押し下げられてヒータ面に密着して、あるいはサーモスイッチ19とヒータ16との距離が減少することにより、サーモスイッチ19が動作する。
2)浸入抑制手段
ヒータ16の異常昇温時に、ヒータホルダ17の溶解樹脂が開口部17bに浸入することを抑制する浸入抑制手段について説明する。
本実施例においては、図5、図7に示したヒータホルダ形状のように、ヒータホルダ17の開口部17b近傍部分に溝17cを設けて、ヒータホルダ厚みを他の部分よりも薄くした薄肉部17dを具備させて、これを浸入抑制手段としている。
このように開口部17b近傍部分にヒータホルダ薄肉部分17dを具備させることで、ヒータ16の異常昇温時に、ヒータホルダ17に溶解が生じた場合でも、開口部17b近傍部分での溶解樹脂量が低減する。これにより、結果的に、サーモスイッチ19を配設してある開口部17b側に浸入する溶解樹脂量が抑制される。従って、前述した従来例の図12の(c)の場合のような、開口部17bへヒータホルダ17の溶解樹脂17bが多量に浸入することに起因する、感熱素子16の応答遅れが防止されて、感熱素子19が安定して動作する。
3)効果の検証(定着過剰電力投入試験)
本実施例の構成の定着装置Fを用いて、定着過剰電力投入試験を実施した。
過剰電力投入試験条件としては、ヒータ16の昇温が最も急速になるモードを選択した。すなわち、故意に、最大電力が連続して入力される状態とした。電圧は、120V圏で最も電圧の高い地域の定格127Vに対し、10%増しの電圧、すなわち、約140Vを印加した。
また、定着装置Fは、回転状態でなく、停止状態とした。停止状態と比較して、回転状態においては、ヒータ16に投入されたエネルギーが、加圧ローラ22の回転に伴い奪われることから、停止状態よりも定着装置Fに対するダメージが少ないためである。
上記条件にて、過剰電力投入試験を実施したところ、ヒータのパターン跳びや、ヒータ16の割れが発生する前にサーモスイッチ19が切れた。
ヒータ16に対する過剰電力投入開始時点から、ヒータ16の異常昇温によりサーモスイッチ19が作動してヒータ16への通電が遮断されるまでの時間を計測したところ、4.0秒であった。
また、過剰電力投入試験時に、ヒータ16が割れるまでの時間を計測するため、サーモスイッチ19をショートさせ、ヒータ16が割れるまで電力投入を継続する試験を実施した。その結果、ヒータ16に対する過剰電力投入開始時点から、ヒータ16が割れるまでの時間は5.0秒であった。
このことから、本実施例のヒータ16、定着装置、画像形成装置においては、最も厳しいモードにおいても、ヒータ16のパターン跳びや、ヒータ16が割れる前に、サーモスイッチ19が動作し、十分な安全性が確保されている。
4)比較例1
比較例1で用いたヒータホルダ17の形状は、前述した従来例の図12の(a)のものであり、開口部17b付近には特別な処置、即ち、ヒータ異常昇温時に、ヒータホルダ17の溶解樹脂が開口部17bに浸入することを抑制する浸入抑制手段は施していない。
このヒータホルダ17を、実施例1と同様の定着装置および画像形成装置にセットし、実施例1と同様の過剰電力投入試験を実施した。このとき、ヒータ16に対する過剰電力投入開始時点から、ヒータ16の異常昇温によりサーモスイッチ19が作動してヒータ16への通電が遮断されるまでの時間を計測したところ、5.0秒であった。
比較例1では、ヒータ16が割れるまでの時間と同時間であり安全性に対するマージンがない。
本実施例においては、図8に示したヒータホルダ形状のように、開口部17b近傍に、ヒータホルダ表面と裏面とを貫く、1つあるいは複数個の穴(第二の開口部)17eを具備させて、これを浸入抑制手段としている。
すなわち、本実施例では、サーモスイッチ取付け用の開口部17b以外に、圧力が加わっていない領域を設ける。その領域として、異常昇温時のヒータホルダ溶解樹脂の排出先を分散させるための浸入用の開口部17eを設けておく。これにより、サーモスイッチ取付け用の開口部17bに浸入するヒータホルダ溶解樹脂量を低減させる構成をとっている。
本構成の採用により、ヒータ16の異常昇温時に、ヒータホルダ17に溶解が生じた場合でも、行き場の無くなった溶解樹脂の多くが、別途設けた浸入用の開口部17eからヒータホルダ背面に流れ出る。これにより、開口部17eに配設のサーモスイッチ19を押し上げることも無く、正常にサーモスイッチを作動させることが可能となった。
本実施例の構成についても、実施例1と同様の定着過剰電力投入試験を行った。ヒータのパターン跳びや、ヒータ16の割れが発生する前にサーモスイッチ19が切れた。ヒータ16に対する過剰電力投入開始時点から、ヒータ16の異常昇温によりサーモスイッチ19が切れてヒータ16への通電が遮断されるまでの時間を計測したところ、3.8秒であった。
また、過剰電力投入試験時に、ヒータ16が割れるまでの時間を計測するため、サーモスイッチ19をショートさせ、ヒータ16が割れるまで電力投入を継続する試験を3回実施した。その結果、ヒータ16に対する過剰電力投入開始時点から、ヒータ16が割れるまでの時間は5.0秒であった。
このことから、本実施例のヒータ16、定着装置、画像形成装置においては、最も厳しいモードにおいても、ヒータのパターン跳びや、ヒータ16が割れる前に、サーモスイッチ19が動作し、十分な安全性が確保されている。
本実施例における浸入抑制手段は、図9に示したヒータホルダ形状のように、開口部17b近傍に設けられた厚みの薄い薄肉部17fであり、この薄肉部17fはヒータ16の異常昇温時のスペーサ25の溶解よりも先に溶解して開口することを特徴とする。
本構成では、異常昇温時にヒータホルダ17が溶解することで、薄肉部17fが溶けて溶解樹脂浸入用の開口部(17e)が貫通する構成になっている。即ち、実施例2のように始めから貫通した穴17eをヒータホルダ17にあけておかなくても、異常昇温時に穴が貫通する構成でも同様の効果を得ることができる。
本実施例は実施例2の別の形態例である。本実施例の場合も、図10に示したヒータホルダ形状のように、ヒータホルダ17のサーモスイッチ取付け用の開口部17a付近に、ヒータホルダ表面と裏面とを貫く1つあるいは複数個の穴(第二の開口部)17eを具備させて、これを浸入抑制手段としている。
穴17eの形状は実施例2で用いた円柱型にこだわらなくてもよい。
ヒータホルダ裏面にあける穴の位置を変えることで、図13のように、幅の広いサーモスイッチホルダ19aを取付けた場合でも対応可能となる。ヒータホルダ17の溶解樹脂が穴から射出してきた時に、サーモスイッチホルダ19aを押し上げることがない。すなわち、サーモスイッチホルダ19aとヒータホルダ上面のクリアランスが少ない場合、溶融して穴から上面に射出してきた時に干渉しないように、図13の上図⇒下図のように、穴17eの位置をサーモスイッチホルダ19aと干渉しない位置まで遠ざける。
以上のように、ヒータホルダ17の溶解樹脂を斜めに射出させることで、幅の広いサーモスイッチホルダ19aを取付けた時でも取付け部材を押し上げることを防止することができる。
(その他)
1)上記の各実施例においては、感熱素子19としてサーモスイッチを使用したが、温度ヒューズ、サーミスタ等の他の素子を使用しても差し支えない。
2)上記の各実施例においては、ヒータホルダ17の材料としては、液晶ポリマー(LCP)であるゼナイト7755(商品名)を用いたが、他のグレードのLCP、さまざまな材料の組み合わせを用いることができる。
3)上記の各実施例においては、スペーサ25の材料としては、ポリエチレンテレフタレートを用いたが、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)など用いることができる。また、液晶ポリマー(LCP)で、ゼナイト7755と異なる耐熱グレードの材質等、さまざまな材料の組み合わせを用いることができる。
4)上記の各実施例においては、加熱体16として図3に例示したような構造の裏面加熱型のセラミックヒータを用いたが、これとはことなる構造のセラミックヒータであっても勿論よい。発熱抵抗体bを定着フィルム摺動面側に設けた所謂表面加熱型のセラミックヒータであってもよい。また,発熱抵抗体としてニクロム線等を用いた加熱体でもよい。
5)本発明の像加熱装置は、画像加熱定着装置としてばかりでなく、例えば、一度定着された画像を担持した記録材を加熱してつや等の表面性を改質する像加熱装置、仮定着する像加熱装置、乾燥処理やラミネート処理する像加熱装置等として有効に使用できる。
実施例1における画像形成装置例の概略構成模型図 実施例1における定着装置の概略構成模型図 実施例1における加熱体の構造説明図 サーモスイッチの動作説明図 実施例1におけるサーモスイッチ周辺部分の拡大断面図 実施例1におけるサーモスイッチ周辺部分の分解斜視模型図 実施例1における浸入防止手段の構造説明図 実施例2における浸入防止手段の構造説明図 実施例3における浸入防止手段の構造説明図 実施例4における浸入防止手段の構造説明図 従来例の定着装置の概略構成模型図 従来例の定着装置におけるスペーサの説明図 幅広いサーモスイッチホルダを取付けた場合の対応図
符号の説明
16・・ヒータ(加熱体)、17・・ヒータホルダ(加熱体支持部材)、19・・サーモスイッチ(感熱素子)、20・・定着ベルト、25・・スペーサ(感熱素子支持部材)、26・・付勢部材、17b・・サーモスイッチ配設用の開口部、17c・17d・・溝と薄肉部(浸入抑制手段)、17e・・第二の開口部(浸入抑制手段)、17f・・薄肉部(浸入抑制手段)

Claims (11)

  1. 通電により発熱する発熱抵抗体を有する加熱体と、前記加熱体を支持する樹脂製の加熱体支持部材と、前記加熱体支持部材に設けた開口部に配置され、前記加熱体の異常昇温による熱で作動して前記発熱抵抗体への通電を遮断する感熱素子と、を有し、前記加熱体の熱により記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、
    前記加熱体の異常昇温時に、前記加熱体の熱で溶解した前記加熱体支持部材の樹脂が前記開口部に浸入することを抑制する浸入抑制手段を備えたことを特徴とする像加熱装置。
  2. 通常状態時は前記感熱素子と前記加熱体とを非接触に支持し、前記加熱体の異常昇温時には前記加熱体の異常昇温による熱で溶解して前記温度検知素子と前記加熱体とを接触させる機能をもつ樹脂製の感熱素子支持部材を有することを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  3. 前記感熱素子を前記加熱体の方向へ付勢する付勢部材を有し、前記付勢部材は前記加熱体の異常昇温時の前記感熱素子支持部材の溶解に伴い、前記温度検知素子を前記加熱体側へ移動させる付勢力を有することを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
  4. 前記加熱体は、少なくとも、絶縁性の平板状の基板と、前記基板に具備させた発熱抵抗体と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の像加熱装置。
  5. 前記浸入抑制手段とは、前記加熱体支持部材の前記開口部近傍部分の厚みを他の部分よりも薄くした薄肉部であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の像加熱装置。
  6. 前記浸入抑制手段とは、前記加熱体支持部材の前記開口部近傍部分に設けた第二の開口部であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の像加熱装置。
  7. 前記浸入抑制手段とは、前記加熱体支持部材の前記開口部近傍部分の厚みを他の部分よりも薄くした薄肉部であり、前記薄肉部は前記加熱体の異常昇温時の前記感熱素子支持部材の溶解よりも先に溶解して開口することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の像加熱装置。
  8. 前記装置は更に、前記加熱体に接触しつつ移動する可撓性の回転体と、前記可撓性の回転体を介して前記加熱体と共にニップ部を形成する加圧ローラと、を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の像加熱装置。
  9. 前記可撓性の回転体は、樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の像加熱装置。
  10. 前記可撓性の回転体は、金属製フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の像加熱装置。
  11. 前記可撓性の回転体は、弾性層を有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の像加熱装置。
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