JP2007309366A - 等速ジョイント - Google Patents

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千佳也 榛葉
Masashi Funabashi
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Abstract

【課題】トラック接触率を大きくすることなくボールがトラック溝肩部へ乗り上げるのを防止するとともに、ジョイントが作動角をとる時のボールの各位相におけるトラック荷重のアンバランスを抑制する。
【解決手段】外輪1と内輪2の各トラック溝1b、2bをジョイント中心Oを通る軸直角平面Ox−Oxを境として外輪1の入力側に位置する入力側トラック溝1b1、2b1と出力側に位置する出力側トラック溝1b2、2b2に二分するとともに、前記入力側と出力側の各トラック溝1b1、2b1および1b2、2b2を、ジョイント中心Oから軸直角平面Ox−Oxを境としてジョイント軸線Xに沿って各トラック溝と同じ側に等距離離間したトラック溝中心A、Bを中心とする円弧状としたことを特徴とする等速ジョイント。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や各種産業機械などに使用される等速ジョイントに関する。
図9に示すように、従来の固定式等速ジョイント(単に「BJ」と略称されることがある)は、外輪1と、内輪2と、トルク伝達ボール3と、ケージ4とを主要な構成要素とする。外輪1はカップ部と軸部とからなり、軸部にて連結すべき二軸の一方と結合する。カップ部は部分球面状の内球面1aを有し、その内球面1aに、軸方向に延びる複数のトラック溝1bが形成してある。なお、外輪の別の形態としては、フランジ状で外輪の両端が開口している形状もある。
内輪2は、部分球面状の外球面2aを有し、その外球面2aに、軸方向に延びる複数のトラック溝2bが形成してある。内輪2は、連結すべき二軸のもう一方、たとえばドライブシャフトの中間軸5のセレーション軸部と結合するためのセレーション孔部2cを有する。
外輪1のトラック溝1bと内輪2のトラック溝2bとは対をなし、各対のトラック溝1b、2bに1個のトルク伝達ボール3が組み込んである。トルク伝達ボール3はケージ4のポケット孔4cに収容される。
ケージ4は外輪1の内球面1aと内輪2の外球面2aとの間に介在しており、符号4a、4bはそれぞれケージ4の外球面と内球面を指している。
トラック溝1b、2bはジョイントの縦断面(図9)において円弧状である。そして、外輪1のトラック溝1bの中心O1は内球面1aの球面中心に対して、また、内輪2のトラック溝2bの中心O2は外球面2aの球面中心に対して、それぞれ、軸方向に等距離Fだけ反対側に、つまり図9に示す例では中心O1はジョイントの入力側、中心O2はジョイントの出力側に、オフセットさせてある。そのため、外輪1のトラック溝1bと内輪2のトラック溝2bとが協働して形成されるボールトラックは、軸方向の一方、図9に示す例ではジョイントの入力側に向かって開いた楔形状を呈している。本発明では、トルクがドライブシャフトの中間軸5の側より入力され、内輪2とトルク伝達ボール3と外輪1を介して、外輪1の軸部へと出力される場合に、図9の外輪右側を『入力側』、外輪左側を『出力側』と定義する。なお、前記定義とはトルクの入出力方向が逆である、トルクが外輪の軸部の側より入力されドライブシャフトの中間軸へと出力される、実施形態をとってもよい。
ケージ4の外球面4aの球面中心、および、ケージ4の外球面4aの案内面となる外輪1の内球面1aの球面中心は、いずれも、トルク伝達ボール3の中心O3を含むジョイント中心面O−O内にある。また、ケージ4の内球面4bの球面中心、および、ケージ4の内球面4bの案内面となる内輪2の外球面2aの球面中心は、いずれも、ジョイント中心面O−O内にある。したがって、外輪1のトラック溝1bの中心O1のオフセット量Fは、中心O1とジョイント中心面O−Oとの間の軸方向距離、内輪2のトラック溝2bの中心O2のオフセット量Fは、中心O2とジョイント中心面O−Oとの間の軸方向距離になり、両者は相等しい。
ところで、固定式等速ジョイントでは、外輪1のトラック溝1b深さが出力側に向かって次第に浅くなっている。このため、大きな作動角をとった時に大きな負荷トルクがかかると、トラック溝1bとボール3との間に生ずる接触楕円がトラック溝1bからはみ出して、接触楕円の応力集中によりトラック溝1b肩部が損傷する場合がある。
特許文献1(実公昭64−6412号公報)では、トラック溝の浅い部分でトラック接触率を大きくすることにより、トラック溝とボールとの間に生ずる接触楕円がトラック溝からはみ出し難いようにして、トラック溝肩部での損傷を防止するようにしている。ここで「トラック接触率」とは、ボールの半径R1に対するトラック溝の曲率半径R2の比(R2/R1)を意味する。
また、作動角をとると各位相におけるボール中心から二等分軸線への垂線長さが変動する。図10Aと図10Bは8個ボールの等速ジョイントでこの状況を示したものである。すなわち、ジョイントが作動角をとった時、図10Aで上側のボール3がジョイント出力側に移動し、下側のボールがジョイント入力側に移動する。8個のボールの配置状況をジョイント軸方向から透視すると、図10Bのようになる。位相角270°の上側のボールがジョイント中心に最も接近する(垂線長さD2)。位相角0°と180°の両側のボール3は垂線長さD1のまま変化しない。位相角90°の下側のボール3がジョイント中心から最も離れる(垂線長さD3)。このように、ボール3の中心O3を結ぶ曲線は変形楕円となる(D2<D1<D3)。
前記垂線長さの変動幅は作動角に依存するため、作動角の増大につれて変動幅も増加する。それにより、各位相におけるトラック荷重のアンバランスが生じる。このような荷重アンバランスは特定のトラック溝に大きな荷重が負荷することになるため、ジョイントの強度や耐久性にとって好ましくない。
実公昭64−6412号公報
しかし、トラック接触率を大きくすると、トラック溝とボールとの間に生ずる接触楕円の面積が低減して接触面圧が増大するため、耐久性などの点で不利になるという不都合がある。また、作動角をとる時の各位相における前記トラック荷重のアンバランスは未解決のままである。
本発明は、斯かる実情に鑑み、トラック接触率を大きくすることなくボールがトラック溝肩部へ乗り上げるのを防止するとともに、ジョイントが作動角をとる時のボールの各位相におけるトラック荷重のアンバランスを抑制した等速ジョイントを提供しようとするものである。
前記課題を解決するため請求項1の発明は、内周面に複数のトラック溝が軸方向に沿って形成された外輪と、外周面に前記外輪のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が軸方向に沿って形成された内輪と、前記外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外輪の内周面と内輪の外周面との間に介在してボールをポケット孔内に保持するケージとを備えた等速ジョイントにおいて、前記外輪と内輪の各トラック溝をジョイント中心を通る軸直角平面を境として外輪の入力側に位置する入力側トラック溝と出力側に位置する出力側トラック溝に二分するとともに、前記入力側と出力側の各トラック溝をジョイント中心から軸直角平面を境としてジョイント軸線に沿って各トラック溝と同じ側に等距離離間したトラック溝中心を中心とする円弧状としたことを特徴とする。
従来の等速ジョイントは、ボールのトラック溝肩部への乗り上げを、トラック溝の浅い部分でトラック接触率を大きくすることで防止していたが、トラック接触率を大きくすると接触圧力の増大により耐久性が不利になることがあった。本発明は、トラック溝を二分することにより外輪のトラック溝が出力側に向かって次第に浅くならずに済む。よって、トラック溝の全域に渡って充分なトラック溝深さを確保でき、ボールのトラック溝肩部への乗り上げを防止することができ、ジョイントの耐久性の向上を図ることができる。
また、従来の等速ジョイントは、ジョイントが作動角をとると当該作動角に応じてボールがケージポケット内で径方向に大きく移動していた。本発明はトラック溝を二分する構造によりボールの径方向の移動量を少なくすることができる。
このようにボールの径方向移動量を少なくすることができる結果、ケージ肉厚を減少させることが可能となる。すなわち、ケージ肉厚は、等速ジョイントに負荷トルクがかかった時に、ケージとボールとの間に生ずる接触楕円がケージからはみ出さないように適切な肉厚に設定されるため、ボールの径方向移動量を少なくすることはケージ肉厚を減少させることにつながり、その分だけ等速ジョイントの軽量コンパクト化を図ることができる。
また、従来の等速ジョイントが作動角をとる場合、各位相におけるボール中心から二等分軸線に対する垂線長さが変動する。これに対して本発明の等速ジョイントでは、各位相におけるボール中心から二等分軸線までの距離が一定またはほぼ一定となり、これによりトラック荷重のアンバランスの抑制を実現することができる。また、これにより特定のトラック溝に大きな荷重が負荷されることを防止し、ジョイントの強度や耐久性を向上させることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記外輪と内輪の入力側トラック溝と出力側トラック溝を互いに滑らかな曲線で接続したことを特徴とする。
これにより、入力側トラック溝と出力側トラック溝の境目部分でのボールの転動をよりスムーズにすることができる。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記外輪と内輪の入力側トラック溝と出力側トラック溝を互いに直線で接続したことを特徴とする。
これにより、入力側トラック溝と出力側トラック溝の境目部分でのボールの転動をよりスムーズにすることができる。
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記ケージの内外周面を外輪の内周面および内輪の外周面と摺接させ、ケージの外球面中心と内球面中心とがボール中心を含むジョイント中心に対して、軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされていることを特徴とする。
このケージはいわゆるオフセットケージと呼ばれるものである。トラック溝を二分したことに伴い、ジョイントの設計条件や寸法誤差などによっては、外輪トラック溝に対するボールの接点での接線と、内輪トラック溝に対するボールの接点での接線とで形成されるくさび角が小さな角度を成す場合、ジョイントの二等分面上にボールが制御され難いために、ジョイントがロックするおそれがある。オフセットケージを使用することによりそのようなロック現象を未然に防止することができる。
請求項5の発明は、外輪の入力側トラック溝と内輪の出力側トラック溝はジョイント中心を通る軸直角平面に対し互いに反対側に等距離離間したトラック溝中心を中心とする円弧状であり、外輪の出力側トラック溝と内輪の入力側トラック溝はジョイント中心を通る軸直角平面に対し反対側に等距離離間したトラック溝中心を中心とする円弧状であり、外輪の入力側トラック溝中心と内輪の入力側トラック溝中心、および外輪の出力側トラック溝中心と内輪の出力側トラック溝中心は、それぞれ等距離離間していることを特徴とする(図6参照)。
これもボールのロック現象を防止する構造の変形例である。
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記各トラック溝中心を、ジョイント軸線から径方向にそれぞれ等距離オフセットさせたことを特徴とする(図7参照)。
前記オフセット方向をトラック溝の曲率半径が長くなる方向とすると、外輪の入力側および出力側のトラック溝の深さをより確保することができる。一方、前記オフセット方向をトラック溝の曲率半径が短くなる方向とすると、外輪のカップ部の軸方向長さを短縮することができる傾向にある。前記各トラック溝中心は、ジョイントの設計条件により設定する。
本発明の等速ジョイントによれば、トラック溝を二分することにより外輪のトラック溝が出力側に向かって次第に浅くならずに済む。よって、トラック溝の全域に渡って充分なトラック溝深さを確保でき、ボールのトラック溝肩部への乗り上げを防止することができ、ジョイントの強度や耐久性の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8を参照して説明する。図1が第一実施形態、図6が第二実施形態、図7が第三実施形態である。
まず図1の第一実施形態から説明する。この図に示す固定式等速ジョイント(BJ)は、基本的構成要素は図9の従来の等速ジョイントと変わらない。図9と異なる点は、外輪1のトラック溝1bと内輪2のトラック溝2bを、ジョイント中心Oを通る軸直角平面Ox−Oxを境として、外輪1の入力側に位置する入力側トラック溝1b1、2b1と、出力側に位置する出力側トラック溝1b2、2b2に二分したことである。入力側と出力側の各トラック溝1b1、2b1、1b2、2b2は、ジョイント中心Oから軸直角平面Ox−Oxを境としてジョイント軸線Xに沿って各トラック溝と同じ側に等距離離間(オフセットF)したトラック溝中心A、Bを中心とする円弧状である。オフセットFの量はジョイントの設計条件により決める。
その他の構成は図9と同じである。すなわち、固定式等速ジョイント(BJ)は、外輪1と、内輪2と、トルク伝達ボール3と、ケージ4とを主要な構成要素とする。外輪1はカップ部と軸部とからなり、軸部にて連結すべき二軸の一方と結合する。カップ部は部分球面状の内球面1aを有し、その内球面1aに、軸方向に延びる複数のトラック溝1bが形成してある。このトラック溝1bは前述したようにトラック溝1b1と1b2に二分される。
内輪2は、部分球面状の外球面2aを有し、その外球面2aに、軸方向に延びる複数のトラック溝2bが形成してある。このトラック溝2bは前述したようにトラック溝2b1と2b2に二分される。内輪2は、連結すべき二軸のもう一方、たとえばドライブシャフトの中間軸5のセレーション軸部と結合するためのセレーション孔部2cを有する。
外輪1のトラック溝1bと内輪2のトラック溝2bとは対をなし、各対のトラック溝1b、2bに1個のトルク伝達ボール3が組み込んである。トルク伝達ボール3はケージ4のポケット孔4cに収容される。
ケージ4は外輪1の内球面1aと内輪2の外球面2aとの間に介在しており、符号4a、4bはそれぞれケージ4の外球面と内球面を指している。
ケージ4の外球面4aの球面中心、および、ケージ4の外球面4aの案内面となる外輪1の内球面1aの球面中心は、いずれも、トルク伝達ボール3の中心O3を含むジョイント中心面O−O内にある。また、ケージ4の内球面4bの球面中心、および、ケージ4の内球面4bの案内面となる内輪2の外球面2aの球面中心は、いずれも、ジョイント中心面O−O内にある。
外輪1と内輪2のトラック溝1b1、2b1の中心Aのオフセット量Fは、中心Aとジョイント中心面O−Oとの間の軸方向距離である。また外輪1と内輪2のトラック溝1b2、2b2の中心Bのオフセット量Fは、中心Bとジョイント中心面O−Oとの間の軸方向距離である。左右のオフセット量Fは相等しい。
等速ジョイントは以上のように構成され、この等速ジョイントが図2のように作動角を取った時、外輪1と内輪2の両軸線の2等分面上にボール3が位置することによりジョイントの等速性が確保される。
入力側トラック溝1b1、2b1と出力側トラック溝1b2、2b2の境目部分は、図1では円弧同士の接合のままにしている。このため、外輪1のトラック溝1b1、1b2相互間では稜線Rが立つし、内輪2のトラック溝2b1、2b2相互間では谷線Vが出る。この稜線Rと谷線Vはボール径に対して非常に小さいので、ボール3のスムーズな転動性に影響を与えるものではない。しかし、ボール3のよりスムーズな転動性を実現するために、トラック溝1b1、1b2相互間、トラック溝2b1、2b2相互間を、図3のように滑らかな曲線1b3か、または図4のような直線1b4で繋いでもよい。図3の滑らかな曲線1b3の両端の接線傾斜角は、この曲線に接続するトラック溝の端部の接線傾斜角と同じにする。図4の直線1b4は内輪2の中心軸と平行にする。
ジョイントの設計条件ないし寸法精度によっては、ジョイント作動角が0°付近においてジョイントがロックしやすくなる場合が発生し得る。すなわち、外輪トラック溝1b1または1b2に対するボール3の接点での接線と、内輪トラック溝2b1または2b2に対するボール3の接点での接線とで形成されるくさび角が小さな角度を成す場合である。この場合は、ジョイントの二等分面上にボールが制御され難いために、ジョイントがロックする恐れがある(図11)。すなわち、図11(B)に示すように従来品では前記くさび角がある程度形成されるが、図11(A)に示すように本発明品では前記くさび角が非常に小さくなる。
このような場合には、図5のように、ケージ4の外球面4aの中心と内径面4bの中心E、Fを、ポケット孔4c中心線Lに対して互いに等距離離間(オフセットFc)させたいわゆるオフセットケージを用いるとよい。オフセットケージを用いることによって前記くさび角が増加し、ジョイントの二等分面上にボールが制御されやすくなり、ジョイントのロック現象を防止する。
ジョイントのロック現象の防止対策はオフセットケージに限られない。例えば、図6のように、外輪1の入力側トラック溝1b1と内輪2の出力側トラック溝2b2をジョイント中心Oを通る軸直角平面Ox−Oxに対し互いに反対側に等距離(Fb)離間したトラック溝中心A、B’を中心とする円弧状(半径R、R’)とする。また、外輪1の出力側トラック溝1b2と内輪2の入力側トラック溝2b1はジョイント中心Oを通る軸直角平面Ox−Oxに対し反対側に等距離(Fa)離間したトラック溝中心B、A’を中心とする円弧状(半径R、R’)とする。外輪1の入力側トラック溝中心Aと内輪2の入力側トラック溝中心A’、および外輪1の出力側トラック溝中心Bと内輪2の出力側トラック溝中心B’を、それぞれ等距離離間させることでも、ジョイントのロック現象を防止することができる。この場合、図3または図4のように、トラック溝1b1(2b1)、1b2(2b2)相互間を滑らかな曲線1b3(2b3)または直線1b4(2b4)で接続する。
前述の第一実施形態ではトラック溝中心A、Bが中心軸線X上にある場合の実施形態を示したが、図7のように、トラック溝中心を径方向に曲率半径が長くなる方向に、それぞれ等距離離間(オフセット)させた線上に移動させてもよい。すなわち、外輪1の入力側トラック溝1b1と内輪2の入力側トラック溝2b1の中心Cを、ジョイント軸線に沿ってジョイント中心OからF1だけオフセットさせ、かつ、ジョイント軸線から径方向にかつ曲率半径が長くなる方向にF2だけオフセットさせた点Cとする。外輪1の出力側トラック溝1b2と内輪2の出力側トラック溝2b2の中心を、ジョイント軸線に沿ってジョイント中心Oから反対方向にF1だけオフセットさせ、かつ、ジョイント軸線から径方向にかつ曲率半径が長くなる方向にF2だけオフセットさせた点Dとする。なお、トラック溝中心は径方向に曲率半径が短くなる方向に、それぞれ等距離離間させた線上に移動させてもよい。
次に、以上のように構成した等速ジョイントが作動角をとる時の作動について説明する。図8Aのように、等速ジョイントの作動角0°から作動角αに変化すると、位相0°と180°の2つのボール3を除いて、ボール3がトラック溝相互間からいずれか一方のトラック溝上に移動する。図示例では、位相90°のボール3が外輪1側でトラック溝1b1に移動するとともに内輪2側でトラック溝2b2に移動した状態と、位相270°のボール3が外輪1側でトラック溝1b2に移動するとともに内輪2側でトラック溝2b1に移動した状態を示す。この時、二等分軸線Xを基準にすると、位相90°と270°のいずれにおいても、ボール3が内輪2側のトラック溝2b1、2b2に押し上げられ、外輪1側のトラック溝1b1、1b2に受け入れられる動きをする。すなわち、ジョイント軸線を基準にするとボール3が径方向に遠ざかる方向にシフトする。一方、位相0°と180°の2つのボール3はその径方向位置が作動角を取る前と変わらない。従って、ボールが軸方向に初期位置からトラック曲率中心位置まで移動する間では、図8Bのように、外輪開口側(入力側)から透視したボール3の配置形状がほぼ真円状態となり(厳密には図8Bで縦軸が長軸となる楕円)、従来の等速ジョイントのように楕円状態になって各位相におけるトラック荷重のアンバランスが生じるようなことがない。
また、別の効果として、本発明はボールの径方向の移動量を少なくすることができ、このことがケージ肉厚を減少させることにつながり、その分だけ等速ジョイントの軽量コンパクト化を図ることができる。すなわち、従来の等速ジョイントは、ジョイントが作動角をとると当該作動角に応じてボールがケージポケット内で径方向に大きく移動していた。本発明はトラック溝を二分する構造によりボールの径方向の移動量を少なくすることができる。図8Cは従来の等速ジョイントと本発明の等速ジョイントをボールの径方向変動量について比較した結果を概念的に示すものである。従来のジョイントが作動角0°を中心としてプラスとマイナスの両側でボールの径方向変動量が単調増加するのに対し、本発明のジョイントでは作動角0°を境として変動量が逆行するため径方向移動量が少なくなることが分かる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の第一実施形態に係る等速ジョイントの縦断面図。 大きな作動角をとった状態の図1等速ジョイントの縦断面図。 入力側トラック溝と出力側トラック溝を曲線で繋いだ図1等速ジョイントの変形例に係る縦断面図。 入力側トラック溝と出力側トラック溝を直線で繋いだ図1等速ジョイントの変形例に係る縦断面図。 オフセット型ケージの縦断面図。 本発明の第二実施形態に係る等速ジョイントの縦断面図。 本発明の第三実施形態に係る等速ジョイントの縦断面図。 小さな作動角をとった状態の図1等速ジョイントの縦断面図。 作動角をとったジョイントの入力側からボールの配置を透視した図。 作動角とボールの径方向変動量との相関関係を本発明ジョイントと従来ジョイントで比較した図。 従来の等速ジョイントの縦断面図。 作動角をとった従来の等速ジョイントの縦断面図。 作動角をとった従来のジョイントの入力側からボールの配置を透視した図。 (A)は本発明品での作動角0°時でのくさび角の状態図、(B)は従来品での作動角0°時でのくさび角の状態図。
符号の説明
1 外輪
1a 内球面
1b トラック溝
1b1 入力側トラック溝
1b2 出力側トラック溝
1b3 曲線
1b4 直線
2 内輪
2a 外球面
2b トラック溝
2b1 入力側トラック溝
2b2 出力側トラック溝
2c セレーション孔部
3 トルク伝達ボール
4 ケージ
4a 外球面
4b 内球面
4c ポケット孔
5 中間軸
A〜D トラック溝の円弧中心
F オフセット
R 稜線
V 谷線
X ジョイント軸線


Claims (6)

  1. 内周面に複数のトラック溝が軸方向に沿って形成された外輪と、外周面に前記外輪のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が軸方向に沿って形成された内輪と、前記外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外輪の内周面と内輪の外周面との間に介在してボールをポケット孔内に保持するケージとを備えた等速ジョイントにおいて、
    前記外輪と内輪の各トラック溝をジョイント中心を通る軸直角平面を境として外輪の入力側に位置する入力側トラック溝と出力側に位置する出力側トラック溝に二分するとともに、前記入力側と出力側の各トラック溝をジョイント中心から軸直角平面を境としてジョイント軸線に沿って各トラック溝と同じ側に等距離離間したトラック溝中心を中心とする円弧状としたことを特徴とする等速ジョイント。
  2. 前記外輪と内輪の入力側トラック溝と出力側トラック溝を互いに滑らかな曲線で接続したことを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイント。
  3. 前記外輪と内輪の入力側トラック溝と出力側トラック溝を互いに直線で接続したことを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイント。
  4. 前記ケージの内外周面を外輪の内周面および内輪の外周面と摺接させ、ケージの外球面中心と内球面中心とが、ボール中心を含むジョイント中心に対して軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイント。
  5. 外輪の入力側トラック溝と内輪の出力側トラック溝はジョイント中心を通る軸直角平面に対して互いに反対側に等距離離間したトラック溝中心を中心とする円弧状であり、外輪の出力側トラック溝と内輪の入力側トラック溝はジョイント中心を通る軸直角平面に対し反対側に等距離離間したトラック溝中心を中心とする円弧状であり、外輪の入力側トラック溝中心と内輪の入力側トラック溝中心、および外輪の出力側トラック溝中心と内輪の出力側トラック溝中心は、それぞれ等距離離間したことを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイント。
  6. 前記各トラック溝中心を、ジョイント軸線から径方向にそれぞれ等距離オフセットさせたことを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイント。
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