JP2007308687A - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】分子量分布が極めて狭く、溶融時の流動性が良好で、特に剪断速度に依存しない著しく良好な溶融時流動性を有するポリカーボネート樹脂を提供する。
【解決手段】ダイス径1mmφ、有効長さ30mmLのキャピラリーレオメーターにより、剪断速度9.12sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV9.12と、剪断速度1824sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV1824との差を、下式で算出される粘度平均分子量Mvで徐した値が、2.0×10−5以下であるポリカーボネート樹脂。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
【選択図】図1

Description

本発明は、単分散に近い分子量分布を有し、溶融時の流動性が極めて良好なポリカーボネート樹脂に関する。
ポリカーボネート樹脂は、周知のように、各種成形品の成形原料として広く用いられている。例えば、光ディスクや光磁気ディスク等の光記録媒体の基板は、主としてポリカーボネート樹脂の射出成形により製造されている。このような精密な製品を射出成形するには、金型内において樹脂が円滑に流動するための超高流動性が要求され、この流動性は、製品が薄肉になればなるほどその要求度が高くなる。
従来、ポリカーボネート樹脂の物性を改良する方法の一つとして、オリゴマーの含有量が少なく、かつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造する方法が検討されており、本出願人は、先に、このようなポリカーボネート樹脂として、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、ゲルパーメーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが2.2以下であり、かつ粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下であるポリカーボネート樹脂を提案した(特許第3720687号公報、特許第3726618号公報)。
これらの公報に記載されるポリカーボネート樹脂は、分子量分布が極めて狭く、低分子オリゴマーの殆ど存在しない低揮発性ポリカーボネート樹脂であり、その流動性も優れたものであるが、薄肉で精密な射出成形品の成形において要求される超高流動性、特に剪断速度に依存しない流動性においては十分であるとは言えず、その改善が望まれていた。
特許第3720687号公報 特許第3726618号公報
本発明は、分子量分布が極めて狭く、溶融時の流動性が良好で、特に剪断速度に依存しない著しく良好な溶融時流動性を有するポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、粘度平均分子量に対して、溶融粘度(Pa・s)の対数値の剪断速度依存性が小さいポリカーボネート樹脂、ないしは分子末端に所定の置換基を導入してなり、かつ分子量分布が著しく狭いポリカーボネート樹脂が、剪断速度に依存しない良好な溶融時流動性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] ダイス径1mmφ、有効長さ30mmLのキャピラリーレオメーターにより、剪断速度9.12sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV9.12と、剪断速度1824sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV1824との差を、下式で算出される粘度平均分子量Mvで徐した値(以下「粘度差/分子量比」と称す。):(logMV9.12−logMV1824)/Mvが、2.0×10−5以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。なお、本発明における溶融粘度の測定温度は該ポリカーボネート樹脂が溶融する温度であれば、特に制限はない。しかし、上記特定の剪断速度における溶融粘度は同じ温度で測定した値でなければならない。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
[2] [1]において、粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvが1.6×10−5以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[3] [2]において、粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvが1.0×10−5以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[4] カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、次の1)〜4)条件を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
1)分子末端にR−CO−基又はR′−O−CO−基(R、R′は共に有機基を示す)を有し、OH末端が全末端基の50%未満である。
2)末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が20ppm以下である。
3)ゲルパーメーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが1.45以下である。
4)下記式で算出される粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下である。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
[5] [1]〜[3]のいずれかにおいて、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、次の1)〜4)条件を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
1)分子末端にR−CO−基又はR′−O−CO−基(R、R′は共に有機基を示す)を有し、OH末端が全末端基の50%未満である。
2)末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が20ppm以下である。
3)ゲルパーメーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが1.45以下である。
4)下記式で算出される粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下である。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
[6] [4]又は[5]において、Mv/Mn′が1.30以下で、OH基が全末端基の40%未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[7] [6]において、Mv/Mn′が1.20以下で、OH基が全末端基の30%未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[8] [1]〜[7]のいずれかにおいて、粘度平均分子量Mvが8,000〜100,000であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
本発明のポリカーボネート樹脂は、分子量分布が極めて狭く、溶融時の流動性が良好で、特に剪断速度に依存しない著しく良好な溶融時流動性を有するポリカーボネート樹脂であるため、薄肉、かつ高精度な製品の射出成形をはじめとして、各種用途に工業的に極めて有用である。
以下に本発明のポリカーボネート樹脂の実施の形態を詳細に説明する。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記[I]及び/又は下記[II]の条件を備える。本発明のポリカーボネート樹脂は、好ましくは、下記[I]の条件と下記[II]の条件を共に備えるものである。
[I] ダイス径1mmφ、有効長さ30mmLのキャピラリーレオメーターにより、剪断速度9.12sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV9.12と、剪断速度1824sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV1824との差を、下式で算出される粘度平均分子量Mvで徐した値(以下「粘度差/分子量比」と称す。):(logMV9.12−logMV1824)/Mvが、2.0×10−5以下
なお、本発明における溶融粘度の測定温度は該ポリカーボネート樹脂が溶融する温度であれば、特に制限はない。しかし、上記特定の剪断速度における溶融粘度は同じ温度で測定した値でなければならない。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
[II] カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られ、次の1)〜4)条件を満足する。
1)分子末端にR−CO−基又はR′−O−CO−基(R、R′は共に有機基を示す)を有し、OH末端が全末端基の50%未満である。
2)末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が20ppm以下である。
3)ゲルパーメーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが1.45以下である。
4)下記式で算出される粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下である。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
<粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mv>
ここで、剪断速度9.12sec−1で測定した溶融粘度は低剪断速度を示し、剪断速度1824sec−1で測定した溶融粘度は高剪断速度を示し、これらの差が粘度平均分子量Mvに対して小さいことはNewtonian Flow性に優れた樹脂であることを示す。
粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvが2.0×10−5よりも大きいと、本発明で目的とする分子量分布が極めて狭く、溶融時の流動性が良好で、特に剪断速度に依存しない著しく良好な溶融時流動性を有するポリカーボネート樹脂を実現し得ない。粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvは小さいほど好ましく、好ましくは1.6×10−5以下、より好ましくは1.0×10−5以下である。粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvの下限については特に制限はないが、通常0.5×10−5以上である。なお、上記特定の剪断速度における溶融粘度は同じ温度で測定した値でなければならない。
<重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mn>
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnは、分子量分布の幅を表す指標であり、この値が小さいことは、分子量分布が狭いことを意味する。
従って、本発明のポリカーボネート樹脂は重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが1.45以下、好ましくは1.40以下である。Mw/Mnが1.45を超えると、本発明で目的とする、分子量分布が極めて狭く、溶融時の流動性が良好で、特に剪断速度に依存しない著しく良好な溶融時流動性を有するポリカーボネート樹脂を実現し得ない。Mw/Mnは小さいほど好ましく、その下限については特に制限はないが、通常1.10以上である。
<粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′>
粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′もまた、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnと同様、分子量分布の幅を表す指標であり、この値が小さいことは、分子量分布が狭いことを意味する。
従って、本発明のポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量Mvと数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.20以下、更に好ましくは1.15以下である。Mv/Mn′が1.40を超えると、本発明で目的とする、分子量分布が極めて狭く、溶融時の流動性が良好で、特に剪断速度に依存しない著しく良好な溶融時流動性を有するポリカーボネート樹脂を実現し得ない。Mv/Mn′は小さいほど好ましく、その下限については特に制限はないが、通常1.05以上である。
<分子末端のOH基の割合>
本発明のポリカーボネート樹脂は、OH基が全末端基の50%未満、好ましくは40%未満であり、より好ましくは30%未満である。
OH基以外の分子末端に導入される基としては、R−CO−基又はR′−O−CO−基(R、R′は共に有機基を示す)が好ましい。
R−CO−基に変換するための末端修飾剤としては、炭素数1〜30のカルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物、カルボン酸エステルを挙げることができる。このうちカルボン酸ハライド、カルボン酸無水物が好ましく、特にはカルボン酸ハライドが好ましい。例えば、カプリン酸、ラウリル酸、無水酢酸、無水酪酸、ステアリン酸クロリド、パルミチン酸ブロミド、ミリスチン酸クロリド、安息香酸クロリド(ベンゾイルクロリド)、トルイル酸クロリド、安息香酸ブロミド、p−t−ブチル安息香酸クロリド、オクチル安息香酸クロリド、無水安息香酸、安息香酸エチル、1−ナフチル酸クロリド、2−ナフチル酸ブロミドなど脂肪族及び芳香族のカルボン酸、及びそれらの反応性誘導体が挙げられる。
R′−O−CO−基に変換するための末端修飾剤としては、炭素数1〜30のハロ炭酸エステルを挙げることができる。例えば、クロル炭酸エチル、クロル炭酸ブチル、クロル炭酸ステアリル、クロル炭酸フェニル(フェニルクロロホーメート)、クロル炭酸トリル、クロル炭酸ナフチル、ブロモ炭酸エチル、ブロモ炭酸フェニル、ブロモ炭酸ナフチルを挙げることができる。
これらの末端修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これら末端修飾剤は、オリゴマーからポリカーボネート樹脂への重合反応が終了した後に添加することが肝要である。即ち、所定の反応時間が経過して、分子量が所望値に達した後の末端水酸基を有するポリカーボネート樹脂に添加する。重合反応中に末端修飾剤を添加すると、その末端修飾剤は末端停止剤と同様に作用し、結果的に低分子量域に尾を引いたような広い分子量分布を有する製品しか得られない。オリゴマーからポリカーボネート樹脂への重合反応が終了した後に添加すれば、ポリカーボネート樹脂の分子量や分子量分布を変更することなく、末端修飾ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
末端修飾剤の添加量は、理論的には重合体のOH末端基数に対応する量であれば足りるが、例えば末端修飾剤としてカルボン酸ハライド等を使用した場合、添加量が多くなるとカルボン酸ハライドあるいはポリマー末端のカルボン酸ハライドがアルカリ水溶液により加水分解してカルボキシル基又はそのイオンを生成する副反応が起こり、さらにこのカルボキシルイオンが未反応のカルボン酸ハライドと反応して酸無水物結合が生成する。酸無水物結合を含むポリカーボネートは射出成形のような溶融加工時の熱による分解が、酸無水物結合を持たないものと比較して起こりやすいため、成形品のポリマーの分子量が低くなり機械的強度も低下するため好ましくない。このため、末端修飾剤の添加量は、用いる末端修飾剤の種類、反応性なども考慮して、原料としたジヒドロキシ化合物に対して、通常0.5〜10モル%、好ましくは1〜6モル%の範囲から選択される。
分子末端のOH基が全末端基の50%以上では、上述のMw/Mn比やMv/Mn′比を満たしていても、溶融時のOH末端同士の反応による増粘のために流動性が損なわれ、剪断速度に依存しない流れ性を確保し得ない。
従って、OH基は全末端基の50%未満、好ましくは40%未満であり、より好ましくは30%未満であり、特に好ましくは10%未満である。
<末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計の割合>
本発明のポリカーボネート樹脂は、末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が20ppm以下、好ましくは10ppm以下であり、より好ましくは5ppm以下である。
末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が多いと、成形時にポリカーボネート樹脂が分解し、その結果、分子量低下を来たす可能性があるため好ましくない。
OH基以外の置換基導入のための反応は、例えば、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させることによって製造した全末端がOH基であるポリカーボネート樹脂(以下、「末端OH型PC」と称す場合がある。)に、上述の反応性の末端修飾剤と苛性ソーダ等のアルカリ水溶液と共に触媒を混合して反応させることが肝要である。
即ち、触媒を混合して反応させることにより、置換基導入のための反応速度が上昇するという効果が奏されると共に末端修飾剤の添加量も低減でき、その結果、該末端修飾剤の酸無水物結合を抑制する効果があること、更に重合後の洗浄分離、即ち残存する末端修飾剤の分離除去にも効果があり、触媒の使用により、末端修飾剤の残存量を低減することができることを見出した。
ここで、使用する触媒としては、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン、トリエチルアミン、N−エチルピペリジン等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。
触媒の添加量は、原料のジヒドロキシ化合物に対して0.0005〜1モル%が好ましい。触媒の添加量が0.0005モル%未満では置換基導入ために長時間反応させる必要があるため、アルカリ水溶液との接触時間が長くなり、末端修飾剤の酸無水物が多く生成したり、また重合反応後の末端修飾剤の洗浄分離が不十分となるため、その結果、末端修飾剤の残存量が多くなる傾向にある。末端修飾剤の酸無水物が多く生成したり、末端修飾剤の残存量の多いポリカーボネート樹脂を押出成形すると、ポリカーボネート樹脂が分解し、分子量低下を招くため好ましくない。一方、触媒の添加量が原料のジヒドロキシ化合物に対して1モル%を超えると、置換基導入のための反応は短くできるものの、触媒を除去するための洗浄操作が煩雑となり、経済的ではない。
<粘度平均分子量Mv>
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量Mvは8,000〜100,000程度であることが好ましい。この分子量が低過ぎるとポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が劣り、また分子量が高過ぎると溶融流動性が劣るようになる。粘度平均分子量は10,000〜70,000、特に12,000〜60,000であるのがより好ましい。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
本発明のポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂と同様に、射出成形、押出成形などにより、種々の成形品に加工することができる。このような加工品としてはフィルム、糸、板などの素材をはじめ、照明器具、光学機器などの部品、光ディスクや光磁気ディスクの基板などが挙げられる。これらの成形品の製造に際しては、常法により本発明のポリカーボネート樹脂に安定剤、型抜き剤、燃焼遅延剤、帯電防止剤、充填剤、繊維、衝撃強度変性剤などを添加してもよい。
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
以下に、前記[1]及び/又は[II]の条件を満たす本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法について詳細に説明する。
前記[1]及び/又は[II]の条件を満たす本発明のポリカーボネート樹脂を製造するには、以下に詳述するポリカーボネート樹脂の製造方法において、反応操作や反応条件を適宜調節すれば良く、例えば、以下のポリカーボネート樹脂の製造方法において、Mw/Mn及びMv/Mn′を調節するには、得られるポリカーボネート樹脂の分子量に大きく影響する触媒のピリジン塩酸塩などの使用量及び界面重縮合時の界面積量などを調節すればよい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法には特に制限はないが、例えば、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させることによって製造した全末端がOH基であるポリカーボネート樹脂(末端OH型PC)の分子末端のOH基に所定の置換基を導入することにより製造される。
ここで、カーボネート原料とは、縮合反応、交換反応等の重合体生成反応によってポリカーボネート主鎖中にカーボネート結合:
Figure 2007308687
を生成し得る化合物であり、ホスゲン、炭酸ジエステル等が挙げられる。
炭酸ジエステルとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。
一方、ジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられ、芳香族ジヒドロキシ化合物としては例えば、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物が挙げられる。
本発明に係る末端OH型PCは、例えば、典型的にはビスフェノールAで代表される2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとを反応させてオリゴマーを生成させ、このオリゴマーを末端封止剤の不存在下、かつピリジン塩酸塩又はキノリン塩酸塩のような触媒の存在下に重合させることにより、製造することができる。
この製法について更に具体的に詳述すると、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、従来からポリカーボネート樹脂の原料として知られているもの、例えば米国特許第4,982,014号、同第3,028,365号、同第2,999,835号、同第3,148,172号、同第3,275,601号、同第2,991,273号、同第3,271,367号、同第3,062,781号、2,970,131号、若しくは同第2,999,846号の明細書、ドイツ特許公開第1,570,703号、同第2,063,050号、同第2,063,052号、若しくは同第2,211,956号の明細書、又はフランス特許第1,561,518号の明細書に記載されているものを用いることができる。
そのいくつかを例示すると、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、及び核にアルキル又はハロゲン置換基をもったこれらの誘導体が挙げられる。
これらのなかでも好ましいものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
なお、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に、3個以上の官能基を有する分岐剤を少量併用することもできる。このような分岐剤は公知であり、例えば2,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロキシインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール等が挙げられる。中でも、3個又はそれ以上のフェノール性水酸基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、0.05〜1モル%となるように使用される。なお、分岐剤を併用すると、粘度平均分子量Mvが増加し易いので注意を要する。
前述の単分散に近い分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を得る上で触媒に要求される特性として、塩酸塩のpKa値として7以下、好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下であることが挙げられる。即ち、塩基性度の弱い触媒を使用することで、クロロフォーメート分子末端をイオン化させず、他方のイオン化した末端(フェニレン−ONa末端)のみから求核置換反応を優先して起こさせることができる。これにより、単一反応のみで進行する従来のポリカーボネート樹脂生成時の縮合重合と反応機構が異なるため、結果としてポアソン分布に従った分子量分布を有するポリカーボネートが得られる。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂の製造は、後述するように水相と有機相を存在させる界面重合反応によるものであることが好ましい。この界面重合反応ではイオン化した末端のみからの求核置換反応で反応が進行するため、必然的に体積当たりの界面積に見合った成長しか生じ得ない逐次反応となることから、界面積が大きい程到達分子量も大きく、縮合種が無くなった段階でクロロフォーメート分子末端が水相中のNaOHにより加水分解を受け、OH末端として分子量伸長が停止する。体積当たりの界面積が小さい場合では、副反応として成長反応に対し分子末端であるクロロフォーメート末端が水相にあるNaOHによる加水分解反応を受けることとなり、結果的にそれ以上の分子量に成長し得ない状態、即ち界面積支配の分子量となる。この様な反応が成立する背景には、成長反応が加水分解反応に比較し非常に速い速度で進行することが挙げられる。
これに対して、従来の一般的なポリカーボネート樹脂生成の際に起きる縮合重合では、この様な反応のアンバランスはない。従来の縮合重合では、pKa値の高い触媒を使用し、クロロフォーメート末端もこのpKa値の高い触媒によりイオン様に活性化された状態となり、イオン化したフェニレン−ONa末端と殆ど遜色の無い反応活性を両分子末端に有することとなり、Floryの最確分布に従った一般的な分子量分布を有する縮合物が得られると同時に、一般に末端停止剤の存在しない場合には超高分子物となってしまう。
前述の条件を満たす触媒として、含窒素複素環化合物の塩が用いられる。例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、ピコリン、アクリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、2,4,6−トリメチルトリアジン等の、環の炭素原子にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが置換していてもよい不飽和な含窒素六員環を有する化合物の塩が用いられる。また、フェノチアジン、2−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール等のような不飽和な含窒素五員環を有する化合物の塩も用いられる。これらの含窒素複素環化合物のなかでも、ピリジン、キノリン、ピコリン、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類などを用いるのが好ましい。これらの触媒は、原料の2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、通常0.01〜1モル%となるように用いられる。好ましくは0.05〜0.5モル%、特に0.05〜0.2モル%となるように用いられる。これらの含窒素複素環化合物は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩などの塩型で用いられるが、反応系内においては遊離塩基型と塩型との間で解離平衡の状態にあると考えられる。
これらの触媒は、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物等のジヒドロキシ化合物とホスゲン等のカーボネート原料との反応の当初から反応系に存在させてもよく、またこの反応の後で反応系に添加してもよい。しかし、この触媒の添加が遅れると、生成するポリカーボネート樹脂の分子量の制御が困難となる。従って、触媒は、ジヒドロキシ化合物とカーボネート原料との反応の当初から分子量の増大が始まるまでの間、粘度平均分子量Mvでいえば、Mvが2000〜3000に達するまでの間に反応系に添加するのが好ましい。
なお、縮合触媒としては、二相界面重合法に用いられている公知のものを併用しても構わない。この場合、併用する触媒としては通常はトリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、又はN−イソプロピルモルホリンなどが用いられる。なかでもトリエチルアミン又はN−エチルピペリジンを用いるのが好ましい。縮合触媒はホスゲン等のカーボネート原料を供給した後に反応系に供給するのが好ましい。
反応には、まず、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物等のジヒドロキシ化合物と苛性ソーダ等のアルカリとを水に溶解して調製した水溶液と、不活性有機溶媒とを混合して乳化液を調製し、これにホスゲン等のカーボネート原料を供給して反応させオリゴマーを生成させる。水溶液中における2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物等のジヒドロキシ化合物と苛性ソーダ等のアルカリとのモル比は通常は1:1.8〜3.5であり、好ましくは1:2.0〜3.2である。水溶液中にはハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加するのが好ましい。また、水相に対する有機相の比率は0.2〜1.0(容積比)が好ましい。
不活性有機溶媒としては、反応条件下において、ホスゲン等のカーボネート原料、並びに反応で生成するオリゴマー及びポリカーボネート樹脂は溶解するが、水とは相互に溶解しないものを用いる。その使用量は生成するオリゴマーが溶解する量であればよいが、通常は生成するオリゴマー溶液の濃度が10〜40重量%となるように用いる。
代表的な不活性有機溶媒としては、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素などが挙げられる。中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレン又はクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独又は他の溶媒との混合物として、使用することができる。
オリゴマー生成反応は80℃以下、好ましくは70℃以下で行われる。反応温度が高過ぎると、副反応が増大してホスゲン原単位が悪化する。逆に反応温度が低いことは反応制御上は有利であるが、反応は大きな発熱反応なので、反応系の温度が低いほどこの温度を維持するための費用が増加する。従って、これらの点を考慮して通常は10〜65℃で反応を行わせる。
上記により生成させたオリゴマーは、次いで重合させてポリカーボネート樹脂とする。通常は上記のオリゴマー生成工程で得られた反応混合液を、水相とオリゴマーが溶解している有機相とに分離し、この有機相のオリゴマー濃度が5〜30重量%となるように、必要に応じて不活性有機溶媒を追加する。次いでこのオリゴマー溶液に新たに苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を加え、更に前述の触媒を添加して界面重合させる。この際の有機相に対する水相の比率は0.2〜2.0(容積比)であるのが好ましい。界面重合反応の温度は用いる有機溶媒により異なるが、塩化メチレンの場合には通常10〜35℃で行われる。
重合終了後は、有機相をポリカーボネート樹脂のクロロホーメート基の含有量が0.1μeq/g以下になるまで苛性ソーダ等のアルカリ水溶液で洗浄し、次いで酸水溶液で洗浄してアルカリを中和すると共に触媒を除去し、更に水洗して電解質を完全に除去する。最後に有機相から有機溶媒を蒸発させて除去し、ポリカーボネート樹脂を取得する。
このようにして得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量Mvは通常8,000〜100,000程度である。前述の如く、この分子量が低過ぎるとポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が劣り、また分子量が高過ぎると溶融流動性が劣るようになる。粘度平均分子量は10,000〜70,000、特に12,000〜60,000であるのが好ましい。
このポリカーボネート樹脂は、界面重縮合反応により生成したままの状態で、すなわち分別沈澱や低分子量成分の抽出除去などの分子量分布を調整する処理を行わなくても、極めて狭い分子量分布を有する全OH末端のポリカーボネート樹脂がある。
しかし、この全末端がOH基の末端OH型PCでは、溶融成形時のOH末端同士の反応が避け難く、その時に増粘してしまい剪断速度に依存しない流れ性、即ち従来のポリカーボネート樹脂に比し極めて良流動なポリカーボネート樹脂は得られない。そこで、本発明においては、この末端OH型PCの分子末端のOH基の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90〜100%をOCOR基及びCOR基(R;アルキル又はアリール等の有機基)なる群から選ばれる1種又は2種以上の置換基で置換するために、前述の末端修飾剤である、ベンゾイルクロライド、フェニルクロロフォーメイト、アセチルクロライド、プロパノイルクロライド、ブタノイルクロライドなどよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の反応性化合物を末端OH型PCと反応させる。
この置換基導入のための反応は、前述の重合反応で得られた末端OH型PC(末端OH型PCは重合反応生成液のまま置換基導入反応に供しても良い。)に、前述の如く、上記反応性化合物と苛性ソーダ等のアルカリ水溶液と、触媒としてのトリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン、トリエチルアミン、N−エチルピペリジン等の1種又は2種以上とを混合して反応させれば良い。
前述の如く、上記触媒の使用量は、原料としたジヒドロキシ化合物に対して0.001〜1モル%が好ましい。触媒の添加量が0.001モル%未満では置換基導入ために長時間反応させる必要があり、また重合反応後の末端修飾剤の洗浄分離が不十分となり、その結果、末端修飾剤の残存量が多くなる傾向にある。一方、触媒の添加量が原料としたジヒドロキシ化合物に対して1モル%を超えると、置換基導入のための反応は短くできるものの、触媒を除去するための洗浄操作が煩雑となり、経済的ではない。
前述の如く、この末端OH型PCと末端修飾剤との反応において、触媒を用いることにより、得られるポリカーボネート樹脂の末端修飾剤の残存量を低減することができるが、末端修飾剤の残存量を添加するために、前述の如く、末端OH型PCと末端修飾剤との反応終了後にアルカリ洗浄を十分に行うことも好ましい。具体的は、反応終了後のポリカーボネートを含む有機相を苛性ソーダ等のアルカリ水溶液で繰り返し洗浄を行って末端修飾剤を除去し、次いで酸水溶液で洗浄してアルカリを中和すると共に触媒を除去し、更に水洗して電解質を完全に除去して本発明のポリカーボネート樹脂を得る。
このようにして本発明のポリカーボネート樹脂を製造するに当たり、従来の製法により得られるポリカーボネート樹脂と著しく異なっているのは、その製造に際し(界面重縮合)触媒としてピリジン塩酸塩などのような含窒素複素環化合物を用い、かつ末端封止剤を用いないことに由来するものである。古くはポリカーボネート樹脂の製造法として、ピリジンを溶媒とする溶液重合による方法もあったが(米国特許第3275601号、同3269985号、同3437639号、同3804722号及び同3428600号の各明細書)、この重合方法は、原料のビスフェノールを溶解させること及び反応により生成してくる塩酸をトラップすることを目的としてピリジン等複素環式化合物が溶媒として使用されているもので、縮合時に片末端のみ活性化させる効果はなく、何れも最確分布以上の分子量分布のものしか得られない。これらの溶液法技術より以降は界面重縮合法がポリカーボネート樹脂製造法の主流となっているが、ポリカーボネート樹脂の製造に常用されている触媒はトリエチルアミンで、トリエチルアミンだけを触媒としてオリゴマーの重合を行うと、末端封止剤を存在させない場合には重合反応が進行し過ぎて、ゲル状の超高分子量のポリカーボネート樹脂が生成する。従って従来のポリカーボネート樹脂の製造においては、末端封止剤の使用は不可欠であった。しかし末端封止剤の存在下に重合を行うと、末端封止されている分子は成長しないので、分子の成長にばらつきが生じ、この分でも分子量分布は必然的に相当な幅を有するようになる(Floryの最確分布+ばらつき)。しかるに、前述したピリジン塩酸塩のような含窒素複素環化合物を触媒として用いると、末端封止剤が存在しなくても反応の制御は容易であり、かつ分子末端が封止されないので分子の成長が均一に行われ、必然的に分子量分布が狭くなるものと考えられる。
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例においてゲルパーメーションクロマトグラフィー、末端基の定量、末端修飾剤,末端封止剤の残存量及び溶融流動性の評価は次のようにして行った。
(1)ゲルパーメーションクロマトグラフィー:
装置;東ソー株式会社製品、HLC−8020
カラム;充填剤としてそれぞれTSK 5000HLX、4000HLX、3000
HLX及び2000HLX(いずれも東ソー株式会社製品)を充填した4本のカラム
(直径7.8mmφ、長さ300mm)を接続して用いた。
検出器;屈折率計
溶離液;テトラヒドロフラン
検量線;(株)ケムコ製の標準ポリスチレン(分子量;761(Mw/Mn≦1.14)、
2000(Mw/Mn≦1.20)、4000(Mw/Mn≦1.06)、9000
(Mw/Mn≦1.04)、17500(Mw/Mn≦1.03)、50000
(Mw/Mn≦1.03)、233000(Mw/Mn≦1.05)、600000
(Mw/Mn≦1.05)及び900000(Mw/Mn≦1.05)を用いて作成し
た。
操作;屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換
算で求め、Mw/Mnを算出した。この時のベースラインは、装置が完全に安定した状
態で、高分子量の立ち上り前のベースをそのまま忠実に延長し、低分子側の元のベース
ラインに戻った地点とをつないで計算した。なお、上記の標準ポリスチレンを測定して
全て規格内におさまっていることを確認した。
(2)末端基の定量:末端OH基量と末端修飾剤量又は末端封止剤量との合計を末端基数とし数平均分子量(Mn′)は下記により算出した。
Mn′=10/(末端基数(μeq/g)×1/2)
末端OH基量はポリカーボネート樹脂0.1gを塩化メチレン10mlに溶解し、これに酢酸(和光純薬、試薬特級)の5重量%塩化メチレン溶液5mlと四塩化チタン(和光純薬、試薬特級)の2.5重量%塩化メチレン溶液10mlを加えて発色させ、分光光度計(日立(株)製、UV160型)を用い、波長480nmでの吸光度を測定することにより定量した。
別に、製造時に使用した二価フェノールの塩化メチレン溶液を用い、吸光係数を求め、サンプル中のOH基濃度を定量した。
また、末端修飾剤量や末端封止剤量はポリカーボネート樹脂0.2gを塩化メチレン2mlに溶解し、これに1規定の水酸化ナトリウムのメチルアルコール溶液を入れ、75℃で30分間、加熱還流下、アルカリ加水分解し、冷却後6規定の塩酸水溶液でpH2〜3に調整し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:MCI−GEL 1HU ODS 内径4.5mm、長さ15cm、溶離液:メタノール/水=50/50、検出器:UV280nm)にて結合している末端修飾剤量や末端封止剤量を測定した。
別に、予め使用した末端修飾剤や末端封止剤を用いて面積補正係数を求め、サンプル中の濃度を定量した。
(3)末端修飾剤及びその酸無水物、末端封止剤の残存量:
ポリカーボネート樹脂1.0gをテトラヒドロフラン100mlに溶解し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:MCI−GEL 1HU ODS 内径4.5mm、長さ15cm、溶離液:テトラヒドロフラン/水=50/50→テトラヒドロフラン100% 60分グラジェント溶離、検出器:UV254nm)にて、残存末端修飾剤量、末端修飾剤の酸無水物量や残存末端封止剤量を測定した。別に、予め使用した末端修飾剤(塩化ベンゾイル)、該末端修飾剤の酸無水物(ベンゾイックアンハイドライド)や末端封止剤(p−tert−ブチルフェノール)を用いて面積補正係数を求め、サンプル中の濃度を定量した。
(4)溶融粘度(Pa・s):130℃で、5hr乾燥した試料を、ダイス径1mmφ×30mmLを具備したキャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製)を用いて、一定温度に加熱して剪断速度γ=9.12〜1824(sec−1)間で測定した。
(5)スパイラルフロー長(SFL):射出圧力300kg/cm、金型温度90℃、シリンダー温度250〜340℃で、厚さ2mmのスパイラルフロー長(SFL)を測定した。
この値は流動性の目安となるものであり、この数値が大きい程、流動性が良いことを意味する。
実施例1
ハイドロサルファイトが溶解している苛性ソーダ水溶液にビスフェノールAを35℃で溶解したのち25℃まで冷却した水溶液と、5℃に冷却した塩化メチレンとを、内径6mmのステンレススチール製のパイプに連続的に供給して混合し、混合液をホモミキサー(特殊機化社製品、T.KホモミックラインフローLF−500型)に通して乳化し、乳濁液を調製した。パイプへの供給量はビスフェノールA16.31kg/hr、苛性ソーダ5.93kg/hr、水101.1kg/hr、ハイドロサルファイト0.018kg/hr、及び塩化メチレン68.0kg/hrである。
生成した乳濁液を内径6mmのパイプを経て、内径6mm、長さ34mのテフロン(登録商標)製パイプリアクターに流入させた。パイプリアクターには同時に0℃に冷却した液化ホスゲンを7.5kg/hrで供給して反応させ、オリゴマーを生成させた。パイプリアクターの流速は1.7m/秒である。ホスゲンとしては、直径55mm、高さ500mmの円筒形容器に下記の活性炭を充填したものに、−5℃に冷却したホスゲンをSV=3hr−1で通液させて精製したものを用いた。
<活性炭>
商品名 ヤシコールS(太平化学社製品)
真密度 2.1g/ml
空隙率 40%
比表面積 1200m/g
細孔容積 0.86ml/g
なお、パイプリアクターでは温度は60℃まで上昇するが、外部冷却により出口では35℃であった。反応混合物は静置分離して水相と油相とに分離した。得られたオリゴマーのクロロホーメート濃度は0.47N、OH末端濃度は0.23N、オリゴマー濃度は27.7%であった。得られた油相から40kgを分取して、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込んだ。次いでこれに塩化メチレン25kg、25%苛性ソーダ水溶液5.75kg、水41kg及びピリジン塩酸塩0.87g(0.020mol%対ビスフェノール)の触媒を加え、窒素雰囲気下、10℃で60分間360rpmで撹拌して重合反応を行い、全OH末端(OH末端基濃度:60μeq/g)ポリカーボネート樹脂を生成させた。
次いでこの反応混合液にベンゾイルクロライド90g(1.55モル%対ビスフェノール)、25重量%苛性ソーダ水溶液105g、2重量%トリエチルアミン水溶液218g(0.10モル%対ビスフェノール)を添加し、更に1時間、360rpmの撹拌下に反応し続けた。その後、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、室温で20分間撹拌した後静置して、水相と有機相を分離した。この有機相に0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液20kgを加えて15分間攪拌した後、静置して水相と有機相とに分離する洗浄操作を3回反復した。アルカリ洗浄後の有機相に0.1規定の塩酸20kgを加えて15分間撹拌した後、静置して水相と有機相とを分離した。この有機相に、純水20kgを加えて15分間撹拌した後、静置して水相と油相とに分離する洗浄操作を3回反復した結果、水相中に塩素イオンが検出されなくなったので、洗浄操作を中止した。有機相からニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥して本発明のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の物性を表1及び図1に示す。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は300℃で測定した。
実施例2
実施例1において、ピリジン塩酸塩の添加量を0.72g(0.015mol%対ビスフェノール)とし、ベンゾイルクロライドの添加量を171g(2.95モル%対ビスフェノール)、25重量%苛性ソーダ水溶液を200gとしたこと以外は同様にして本発明のポリカーボネート樹脂を製造し、その物性を表1及び図2に示した。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は280℃で測定した。
実施例3
実施例2において、10℃で60分間320rpmで撹拌して重合反応を行って全OH末端ポリカーボネート樹脂を得、この反応混合液にベンゾイルクロライド283g(4.87モル%対ビスフェノール)、25重量%苛性ソーダ水溶液を343g加えて重合反応したこと以外は同様にして本発明のポリカーボネート樹脂を製造し、その物性を表1及び図3に示した。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は250℃で測定した。
実施例4
ハイドロサルファイトが溶解している苛性ソーダ水溶液にビスフェノールZ(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下BPZと略す)と4,4’―ビフェノール(以下Bpと略す)を45℃で溶解したのち40℃まで冷却した水溶液と、5℃に冷却した塩化メチレンとを、内径6mmのステンレススチール製のパイプに連続的に供給して混合し、混合液をホモミキサー(特殊機化社製品、T.KホモミックラインフローLF−500型)に通して乳化し、乳濁液を調製した。パイプへの供給量はBPZ7.49kg/hr、Bp0.81kg/hr、苛性ソーダ3.87kg/hr、水106.4kg/hr、ハイドロサルファイト0.018kg/hr、及び塩化メチレン44.5kg/hrである。
生成した乳濁液を内径6mmのパイプを経て、内径6mm、長さ34mのテフロン(登録商標)製パイプリアクターに流入させた。パイプリアクターには同時に0℃に冷却した液化ホスゲンを7.5kg/hrで供給して反応させ、オリゴマーを生成させた。パイプリアクターの流速は1.7m/秒である。ホスゲンとしては、直径55mm、高さ500mmの円筒形容器に下記の活性炭を充填したものに、−5℃に冷却したホスゲンをSV=3hr−1で通液させて精製したものを用いた。
<活性炭>
商品名 ヤシコールS(太平化学社製品)
真密度 2.1g/ml
空隙率 40%
比表面積 1200m/g
細孔容積 0.86ml/g
なお、パイプリアクターでは温度は60℃まで上昇するが、外部冷却により出口では35℃であった。反応混合物は静置分離して水相と油相とに分離した。得られたオリゴマーのクロロホーメート濃度は0.47N、OH末端濃度は0.005N、オリゴマー濃度は19.5%であった。得られた油相から40kgを分取して、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込んだ。次いでこれに塩化メチレン5.5kg、25%苛性ソーダ水溶液6.37kg、水30kg及びピリジン塩酸塩8.89g(0.30mol%対BPZ+Bp)の触媒を加え、窒素雰囲気下、10℃で60分間220rpmで撹拌して重合反応を行い、全OH末端(OH末端基濃度:103μeq/g)ポリカーボネート樹脂を生成させた。
次いでこの反応混合液にベンゾイルクロライド110g(3.07モル%対BPZ+Bp)、25重量%苛性ソーダ水溶液120g、2重量%トリエチルアミン水溶液130g(0.10モル%対ビスフェノール)を添加し、更に1時間、220rpmの撹拌下に反応し続けた。その後、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、室温で20分間撹拌した後静置して、水相と有機相を分離した。この有機相に0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液20kgを加えて15分間攪拌した後、静置して水相と有機相とに分離する洗浄操作を3回反復した。アルカリ洗浄後の有機相に0.1規定の塩酸20kgを加えて15分間撹拌した後、静置して水相と有機相とを分離した。この有機相に、純水20kgを加えて15分間撹拌した後、静置して水相と油相とに分離する洗浄操作を3回反復した結果、水相中に塩素イオンが検出されなくなったので、洗浄操作を中止した。有機相からニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥して本発明のポリカーボネート樹脂を得、下記構造をH-NMRで確認した。
Figure 2007308687
得られたポリカーボネート樹脂の物性を表1及び図4に示す。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は340℃で測定した。
比較例1
実施例1のパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの攪拌機付き反応槽に導き、窒素雰囲気下、30℃で撹拌し、触媒としてトリエチルアミン0.005kg/時及び分子量調節剤(末端封止剤)のp−t−ブチルフェノール0.31kg/時(2.90モル%対ビスフェノール)を各々、オリゴマー化槽に導入した。オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のビスフェノールAのナトリウム塩(BPA−Na)を完全に消費させた後、水相と油相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマーのクロロホーメート濃度は0.29N、OH末端濃度は0.17N、オリゴマー濃度は26.5%であった。
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち63kgを、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン38kgを追加し、さらに25重量%NaOH水溶液4.0kg、水20kg及びトリエチルアミン6.4gを加え、窒素雰囲気下、30℃で撹拌し、60分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。更に、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート樹脂溶液から、ニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥してポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2及び図1に示す。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は300℃で測定した。
比較例2
比較例1において、分子量調節剤のp−t−ブチルフェノールのフィード量を0.42kg/時(3.92モル%対ビスフェノール)に変更した以外は比較例1と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造し、その物性を表2及び図2に示した。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は280℃で測定した。
比較例3
比較例1において、分子量調節剤のp−t−ブチルフェノールのフィード量を0.65kg/時(6.05モル%対ビスフェノール)に変更した以外は比較例1と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造し、その物性を表2及び図3に示した。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は250℃で測定した。
比較例4
特許第3720687号公報の実施例1に従って重合反応を行った。
即ち、全末端OH型PCへの置換基導入に際し、触媒(トリエチルアミン)は添加せずに、末端修飾剤および同末端修飾剤と当量の苛性ソーダを添加して重合反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2に示した。スパイラルフロー長(SFL)は280℃で測定した。
比較例5
実施例4のパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの攪拌機付き反応槽に導き、窒素雰囲気下、30℃で撹拌し、分子量調節剤(末端封止剤)のp−t−ブチルフェノール0.13kghr(3.51モル%対ビスフェノール)をオリゴマー化槽に導入した。オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のビスフェノールAのナトリウム塩(BPA−Na)を完全に消費させた後、水相と油相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマーのクロロホーメート濃度は0.45N、OH末端濃度は0.002N、オリゴマー濃度は19.6%であった。
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち40kgを、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン5.5kgを追加し、さらに25重量%NaOH水溶液6.4kg、水30kg及びトリエチルアミン1.8gを加え、窒素雰囲気下、30℃で撹拌し、60分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。更に、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート樹脂溶液から、ニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥してポリカーボネート樹脂を得、下記構造をH-NMRで確認した。
Figure 2007308687
得られたポリカーボネート樹脂の物性を表2及び図4に示す。なお、溶融粘度、スパイラルフロー長(SFL)は340℃で測定した。
Figure 2007308687
Figure 2007308687
実施例1及び比較例1で製造したポリカーボネート樹脂の溶融曲線を示すグラフである。 実施例2及び比較例2で製造したポリカーボネート樹脂の溶融曲線を示すグラフである。 実施例3及び比較例3で製造したポリカーボネート樹脂の溶融曲線を示すグラフである。 実施例4及び比較例5で製造したポリカーボネート樹脂の溶融曲線を示すグラフである。

Claims (8)

  1. ダイス径1mmφ、有効長さ30mmLのキャピラリーレオメーターにより、剪断速度9.12sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV9.12と、剪断速度1824sec−1で測定した溶融粘度(Pa・s)の対数値logMV1824との差を、下式で算出される粘度平均分子量Mvで徐した値(以下「粘度差/分子量比」と称す。):(logMV9.12−logMV1824)/Mvが、2.0×10−5以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
    〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
    (上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
  2. 請求項1において、粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvが1.6×10−5以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  3. 請求項2において、粘度差/分子量比:(logMV9.12−logMV1824)/Mvが1.0×10−5以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  4. カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、次の1)〜4)条件を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    1)分子末端にR−CO−基又はR′−O−CO−基(R、R′は共に有機基を示す)を有し、OH末端が全末端基の50%未満である。
    2)末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が20ppm以下である。
    3)ゲルパーメーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが1.45以下である。
    4)下記式で算出される粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下である。
    ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
    〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
    (上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項において、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂であって、次の1)〜4)条件を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    1)分子末端にR−CO−基又はR′−O−CO−基(R、R′は共に有機基を示す)を有し、OH末端が全末端基の50%未満である。
    2)末端修飾剤及び該末端修飾剤の酸無水物の残存量合計が20ppm以下である。
    3)ゲルパーメーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnが1.45以下である。
    4)下記式で算出される粘度平均分子量Mvと分子末端数から算出される数平均分子量Mn′との比:Mv/Mn′が1.40以下である。
    ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp
    〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
    (上記式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液のポリカーボネート樹脂濃度であり、C=0.6g/dlである。)
  6. 請求項4又は5において、Mv/Mn′が1.30以下で、OH基が全末端基の40%未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  7. 請求項6において、Mv/Mn′が1.20以下で、OH基が全末端基の30%未満であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、粘度平均分子量Mvが8,000〜100,000であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
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