JP3692022B2 - ポリカーボネート樹脂の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は単分散な分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を製造する方法に関するものである。本発明方法によって製造されるポリカーボネート樹脂は、分子量分布が極めて狭く、特に低分子量オリゴマーが極端に少なく加熱成形時のオリゴマー由来の揮発物はほぼ皆無となる。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、周知のように、各種の成形品の製造に広く用いられている。例えば光ディスクや光磁気ディスク等の光記録媒体の基板は、主としてポリカーボネート樹脂の射出成形により製造されている。このような精密な製品を射出成形するには、スタンパーや金型に付着するポリカーボネート由来の揮発性オリゴマーが少ないことが要求される。しかしポリカーボネートオリゴマー類の揮発性は、その含有量と密接な関係があり、含有量を大幅に削減できたものは溶剤による抽出品を除いて皆無であった。
【0003】
従来から、ポリカーボネート樹脂の物性を改良する方法の一つとして、オリゴマーの含有量が少なく、かつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造する方法の検討に努力が向けられている。例えば、特開昭55−52321号公報には、ビスフェノールAとホスゲンとの反応を低温で行って分子量分布の狭いオリゴマーを生成させ、これを末端停止剤(末端封止剤と同義語であるが、本明細書では末端停止剤と呼ぶ。)の存在下に重合させて、高分子量でかつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造することが記載されている。
【0004】
特開平1−278528号公報には、末端停止剤の存在下に、ビスフェノールAとホスゲンを反応させてオリゴマーを生成させ、これにビスフェノールAを加えて2段階で重合を行うことにより、分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を製造することが記載されている。特開平3−109420号公報には、ビスフェノールAとホスゲンとを第1パイプリアクターで反応させ、反応生成液に末端停止剤を加えたのち第2パイプリアクターを経て槽型反応器に流入させて更に反応させることにより、ポリカーボネートオリゴマーを製造することが記載されている。同公報では、このポリカーボネートオリゴマーにビスフェノールAを加えて2段階で重合を行うことにより、分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂が得られたとされている。
【0005】
特開平6−336522号公報及び特開平7−165899号公報には、末端停止剤の不存在下に、ビスフェノールAとホスゲンとを反応させてプレポリマーを生成させ、次いでこれに末端停止剤を添加して界面重合させることにより、オリゴマーの含有量が少なく、かつ分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂が得られると記載されている。これらの公報には、分子量分布(Mw/Mn)が2.0前後のポリカーボネート樹脂が得られたとの記載があるが、これは上記した特開平3−109420号公報に、末端停止剤の添加時期を遅らせると分子量分布は広くなることが示されていることと矛盾するように思われる。
【0006】
また、ポリカーボネートのガラス転移点と分子量との関係について記載されているEur.Polym.J.vol.18,P563〜567(1982)に従って、これらの公報に記載されているガラス転移点からMw/Mnを算出すると、その値は2を遥かに越えて3に近い値となる。これらの点からして、これらの文献に記載のポリカーボネート樹脂の分子量分布は、精密に測定するとかなり広いのではないかと思われる。
【0007】
これら文献に記載された樹脂の目的とする所は、何れも低分子量オリゴマーを低減することにより加熱成形時に発生するオリゴマー由来の揮発物を低減する点にある。ところが、何れのポリマーも完全に低分子量オリゴマーを除去できている訳ではなく、比較的好ましい材料としては、貧溶媒を使用して再沈や抽出を行ったものがあるが(特開昭63−278929号公報、特開昭64−6020号公報、特開平4−306227号公報)、それらの材料も完全にオリゴマー除去ができている訳ではなく、依然不十分な上、使用する溶媒を分離するプロセスを組み入れる必要も生じる為、かなりコスト高になることも避けがたい状況であった。
【0008】
また、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性を改良する他の方法として、ポリカーボネート分子の末端を、長鎖アルキルフェノールや長鎖アルコールのような、長鎖アルキル基を有するもので封止する方法も検討されている(英国特許第965457号、米国特許第3240756号、特開昭51−34992号公報、特開昭60−203632号公報参照)。更に縮合触媒についても多くの報告がなされているが(米国特許第3160606号、同第3173891号、同第3184431号、同第3240756号、同第3275601号参照)、いずれも反応速度の向上を目的とするものであり、また末端停止剤が併用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、分子量分布が極めて狭く、低分子量オリゴマーの殆ど存在しない低揮発性ポリカーボネート樹脂の製造法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネートオリゴマーであって、下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)が5000以下のオリゴマーを出発原料とし、末端停止剤の不存在下、塩酸塩としてのpKaが10以下である塩基度を有するアミンを触媒として、界面重縮合を行なうことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造法に存する。
【0011】
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp)
〔η〕=1.23×10-4×Mv0.83
【0012】
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる。)
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造法において、出発原料とするポリカーボネートオリゴマーは、カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させることによって製造される。
ここでカーボネート原料とは、重縮合反応、交換反応等の重合体生成反応によってポリカーボネート主鎖中にカーボネート結合:
【0014】
【化1】
Figure 0003692022
【0015】
を生成し得る化合物であり、代表例としてホスゲンが挙げられる。
またジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられ、芳香族ジヒドロキシ化合物としては例えば、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物が挙げられる。
しかして本発明方法によるポリカーボネート樹脂は、例えば、典型的にはビスフェノールAで代表される2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとを反応させて、Mv5000以下のオリゴマーを生成させ、このオリゴマーを出発原料として、末端停止剤の不存在下、かつピリジン塩酸塩又はキノリン塩酸塩のような、塩酸塩としてのpKaが10以下であるアミン触媒の存在下に界面重縮合を行なうことにより、製造することができる。
【0016】
この製法について更に具体的に詳述すると、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、従来からポリカーボネート樹脂の原料として知られているもの、例えば米国特許第4982014号、同第3028365号、同第2999835号、同第3148172号、同第3275601号、同第2991273号、同第3271367号、同第3062781号、2970131号、若しくは同第2999846号の明細書、ドイツ特許公開第1570703号、同第2063050号、同第2063052号、若しくは同第2211956号の明細書、又はフランス特許第1561518号の明細書に記載されているものを用いることができる。
【0017】
そのいくつかを例示すると、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、及び核にアルキル又はハロゲン置換基をもったこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも好ましいものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0018】
なお、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に、3個以上の官能基を有する分岐剤を少量併用することもできる。このような分岐剤は公知であり、例えば2,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロキシインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール等が挙げられる。中でも、3個またはそれ以上のフェノール性水酸基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物に対し、0.05〜2モル%となるように使用される。なお、分岐剤を併用すると、粘度平均分子量(Mv)が増加し易いので注意を要する。
【0019】
出発原料となるオリゴマーの分子量としては、粘度平均分子量Mvが5000以下、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下である。その好ましい分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定:ポリスチレン換算)、かつ粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn′)との比(Mv/Mn′)が1.40以下である。好ましくは、(Mw/Mn)が2以下、(Mv/Mn′)が1.3以下である。
【0020】
この様な分子量分布の狭いオリゴマーを最も巧く取得できるのは、ホスゲン化を連続法で実施した場合で、反応速度の異なる複数の反応が同時に進行できる環境がそれに相当する。この場合、反応は、2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と苛性ソーダとを水に溶解して調製した水溶液と、不活性有機溶媒とを混合して乳化液を調製し、これにホスゲンを供給して反応させオリゴマーを生成させる。水溶液中における2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と苛性ソーダとのモル比は、通常は1:1.8〜3.5であり、好ましくは1:2.0〜3.2である。水溶液中にはハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加するのが好ましい。また、水相に対する有機相の比率(容積比)は0.2〜1.0が好ましい。
【0021】
不活性有機溶媒としては、反応条件下において、原料であるホスゲン、並びに反応で生成するオリゴマー及びポリカーボネート樹脂は溶解するが、水とは相互に溶解しないものを用いる。
代表的な不活性有機溶媒としては、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素などが挙げられる。中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。
その使用量は生成するオリゴマーが溶解する量であればよいが、通常は生成するオリゴマー溶液の濃度が10〜40重量%、好ましく15〜30重量%となるように用いる。これらの不活性有機溶媒は、単独又は他の溶媒との混合物として使用することができる。
【0022】
オリゴマー生成反応は80℃以下、好ましくは70℃以下で行われる。反応温度が高過ぎると、副反応が増大してホスゲン原単位が低下する。逆に反応温度が低いことは反応制御上は有利であるが、反応は大きな発熱反応なので、反応系の温度が低いほどこの温度を維持するための費用が増加する。従って、これらの点を考慮して、最も好ましくは10〜65℃で反応を行わせる。
【0023】
使用されるオリゴマーは、界面重縮合法により、水及び有機溶媒の存在下に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとを連続的に反応させて得たものである方が好ましい。バッチ方式でホスゲンと反応させた場合、反応の経過と共にアルカリ度が変化し、縮合する度合いも変化する為、その段階で既にある程度分布を持ったオリゴマーとなり、この分の分布は、ポリカーボネート重合体を得る最後の段階まで引きずることとなる。一方、連続方式であると、得られるオリゴマーが常に同一環境下に置かれ、その段階で一定の分子量となっているが、バッチ方式の様な分布はなく、以降の反応には好ましい状況ができていると言える。
【0024】
上記により生成させたオリゴマーは、次いで、末端停止剤の不存在下、特定のアミン触媒の存在下、界面重縮合させてポリカーボネート樹脂とする。本発明は、上記特定のポリカーボネートオリゴマーを特定条件下で重縮合させる組合わせに特徴を有するものであり、それにより分子量分布の極めて狭い、単分散的な分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0025】
本発明の目的とするポリカーボネート樹脂を得る上で重縮合触媒に要求される特性として、塩酸塩のpKa値として10以下、好ましくは7以下、更に好ましくは5.5以下のアミンを用いることである。即ち、塩基性度の弱いアミン触媒を使用することでクロロホーメート分子末端をイオン化させず、他方のイオン化した末端(フェニレン−ONa末端)のみから求核置換反応を優先して起こさせることができる。従来のポリカーボネート樹脂生成時の縮合重合と反応機構が異なり、単一反応のみで進行するため、結果としてポアソン分布に従った分子量分布を有するポリカーボネートが得られるのである。
【0026】
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂は、後述するように水相と有機相を存在させる界面重縮合反応により製造される。この界面重縮合反応ではイオン化した末端のみからの求核置換反応で反応が進行するため、必然的に体積当たりの界面積に見合った成長しか生じ得ない逐次反応となるため、界面積が大きい程到達分子量も大きく、縮合種が無くなった段階でクロロホーメート分子末端が水相中のNaOHにより加水分解を受け、OH末端として分子量伸長が停止する。体積当たりの界面積が小さい場合では、副反応として成長反応に対し分子末端であるクロロホーメート末端が水相にあるNaOHによる加水分解反応を受けることとなり、結果的にそれ以上の分子量に成長し得ない状態、即ち界面積支配の分子量となる。この様な反応が成立する背景には、成長反応が加水分解反応に比較し非常に速い速度で進行することが挙げられる。
【0027】
界面重縮合反応においては、有機相としてどの様な溶媒を使用するのかによっても使用するアミン触媒のpKa値の適正範囲が異なり、生成するポリマーの溶解度とのバランスを考慮することが重要になる。例えば、塩化メチレンと異なり、四塩化炭素等非極性な溶媒を使用すると、生成してくるポリカーボネートの溶解度はやや劣るが、分子末端がイオン化しにくい方向となるため、塩基度の比較的高いアミンでもイオン解離しない状態を保ち得るようになる。この場合は、pKa値ではやや高めのアミンも使用可能となる。
【0028】
従来の一般的なポリカーボネート樹脂生成の際に起きる縮合重合では、この様な反応のアンバランスはない。従来の縮重合では、pKa値の高い触媒を使用し、クロロホーメート末端もこのpKa値の高い触媒によりイオン様に活性化された状態となり、イオン化したフェニレン−ONa末端と殆ど遜色の無い反応活性を両分子末端に有することとなり、Floryの最確分布に従った一般的な分子量分布を有する縮合物が得られると同時に、一般に末端停止剤の存在しない場合には超高分子物となってしまう。
【0029】
本発明における上記条件を満たすアミン触媒として、含窒素複素環化合物の塩を用いることが好ましい。例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、ピコリン、アクリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、2,4,6−トリメチルトリアジン等の、環の炭素原子にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが置換していてもよい不飽和な含窒素六員環を有する化合物の塩が用いられる。
また、フェノチアジン、2−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール等のような不飽和な含窒素五員環を有する化合物の塩も用いられる。これらの含窒素複素環化合物のなかでも、ピリジン、キノリン、ピコリン、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類などを用いるのが好ましい。
【0030】
これらの触媒の添加量は、原料の2個の水酸基を有するジヒドロキシ化合物に対し、0.001〜1モル%が好ましい。触媒は、本来液滴界面積に見合う量しか必要ない訳で、一定界面積が与えられる状態では、0.01〜0.1モル%、好ましくは0.02〜0.05モル%程度である。これらの含窒素複素環化合物は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩などの塩型で用いられるが、反応系内においては遊離塩基型と塩型との間で解離平衡の状態にあると考えられる。
【0031】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応終了後、Mv5000以下、特にMv3000以下のオリゴマーを取得した以降のいずれかの段階で添加することが好ましい。オリゴマー化反応の前、またはオリゴマー化反応の途中での添加も可能であるが、分子量分布の狭いオリゴマーを得ることが難しい傾向となる。
【0032】
通常は上記のオリゴマー生成工程で得られた反応混合液を、水相とオリゴマーが溶解している有機相とに分離し、この有機相のオリゴマー濃度が5〜30重量%となるように、必要に応じて不活性有機溶媒を追加する。次いでこのオリゴマー溶液に新たに苛性ソーダ水溶液など苛性アルカリを加え、更に前述の触媒を添加して界面重縮合させる。
【0033】
この際の有機相に対する水相の比率は、界面重縮合反応において連続相となる油相の中に水分散相を保てる様に、水相/油相比(容積比)を、通常0.05〜2、好ましくは、0.1〜1.5、最も好ましくは、0.5〜1.2程度に調節する。水が少ない場合、水分散相を維持するには問題ないが、重縮合による発熱で温度制御が困難となり好ましくない。一方、水が多すぎる場合、重縮合の攪拌時に水分散相を維持するのが困難となり、油分散相に転移するおそれがある。一旦油分散相に転移すると、大きな界面積を保てなくなり、分子量伸長がままならない状態となり好ましくない。
【0034】
界面重縮合反応の温度は用いる有機溶媒により異なるが、塩化メチレンの場合には通常0〜35℃で行われる。分子量制御の観点からは、温度は低い方が好ましい。20℃以下、更に好ましくは10℃以下に制御されれば、分子量の調整も容易となる。温度が高くなるに従い、イオン化させない様に制御してきたクロロホーメート末端が一部イオン化し始め、単分散な分子量分布とならない現象が起こる。低すぎて問題はないが、水相(アルカリ水溶液)が凍らない程度で、制御が可能な温度であれば良く、10℃以下程度で十分と言える。
【0035】
重合終了後は、有機相をポリカーボネート樹脂のクロロホーメート基の含有量が0.1μeq/g以下になるまで苛性ソーダ水溶液で洗浄し、次いで酸水溶液で洗浄してアルカリを中和すると共に触媒を除去し、更に水洗して電解質を完全に除去する。最後に有機相から有機溶媒を蒸発させて除去し、ポリカーボネート樹脂を取得する。
【0036】
このようにして得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は通常8,000〜100,000程度である。この分子量が低過ぎるとポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が劣り、また分子量が高過ぎると溶融流動性が劣るようになる。粘度平均分子量は10,000〜70,000、特に12,000〜50,000であるのが好ましい。このポリカーボネート樹脂は、界面重縮合反応により生成したままの状態で、すなわち分別沈澱や低分子量成分の抽出除去などの分子量分布を調整する処理を行わなくても、極めて狭い分子量分布を有し低揮発性を達成できる。
【0037】
上記により得られたポリカーボネート樹脂は、オリゴマーの生成反応及びオリゴマーからポリカーボネート樹脂への重合反応のいずれの段階においても、末端停止剤を用いないで反応を行わせるので、分子末端は水酸基である。もし分子末端が長鎖アルキル基などで封止されたポリカーボネート樹脂を所望の場合には、上記で得られたポリカーボネート樹脂に、その後長鎖アルコールや長鎖カルボン酸又はこれらの反応性誘導体を反応させることにより、所望の程度に末端が封止されたポリカーボネート樹脂とすることができる。但し、この分子末端修飾反応は、必ず重合が終了し、一旦単分散なポリカーボネート樹脂が生成した以降に限定される。重合反応中に分子末端の停止された分子が存在すると、その分子の反応性のみが劣り、結果的に低分子量域に尾を引いた様な広い分子量分布の製品しか取得できない。
【0038】
上記方法により製造された本発明のポリカーボネート樹脂は、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、かつ下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn′)との比(Mv/Mn′)が1.40以下である。
【0039】
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp)
〔η〕=1.23×10-4×Mv0.83
【0040】
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる。)
【0041】
本発明方法によるポリカーボネート樹脂は、好ましくはMw/Mnが2.0以下、特に1.8以下である。またMv/Mn′は1.30以下、特に1.20以下であるのが好ましい。Mw/Mn及びMv/Mn′はいずれも分子量分布の幅を表わす指標であり、これらが小さいことは分子量分布が狭いことを意味する。前述したように、従来からも分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂の製法がいくつも提案されているが、本発明に係るポリカーボネート樹脂は、これらの従来の製法によるものとは異なり、著るしく狭い分子量分布を有している。その結果、溶融成形時に揮発してくるオリゴマーに相当する物質が存在せず、溶融成形時の低昇華性として抜群の性質を発現する。
【0042】
このポリカーボネート樹脂の製造方法において、分子量を調節するには、例えば重縮合触媒の使用量及び界面重縮合時の界面積量を調節すればよい。
界面重縮合に於ける液滴界面積を変えるべく、攪拌による負荷動力は、通常1〜100kw/m3程度の範囲から選択される。この範囲で粘度平均分子量Mvが5000〜50000のものを安定的に製造することが出来る。
【0043】
ここで、撹拌による負荷動力は、バッチ反応においては、所要動力(P)を界面重縮合反応液の体積(V)で除したもの[P/V]として定義され、また、連続反応においては、所要動力(P)と反応器内の滞留時間(θT)との積を反応液流量(q)で除したもの[P×θT/q]として定義されるものである。攪拌による負荷動力が大きすぎる場合、分子量が大きくなり過ぎ、溶液粘性が極端に高くなり攪拌困難となる。一方低すぎる場合、ポリカーボネートとして不適切な低い分子量のものしか生成せず、好ましくない。従って、負荷動力の好ましい範囲としては、5〜50kw/m3程度である。更に好ましくは、7〜20kw/m3程度である。
【0044】
なお、バッチ反応での撹拌による負荷動力P/Vは、下式で定義されるので、これに基ずき撹拌回転数nを決めることができる。反応液の体積(V)の代わりに滞留時間(θT)と反応液流量(q)を使用すれば連続反応の場合も同様である。
【0045】
P/V=(Np×n3×d5×ρ)/V
【0046】
但し、 P:所要動力(kw)
V:反応液の体積(m3
Np:機械定数
n:撹拌回転数(rps)
d:撹拌翼の翼径(m)
ρ:反応液の密度(kg/ m3
【0047】
本発明方法で製造されたポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂と同様に、射出成形、押出し成形などにより、種々の成形品に加工することができる。このような加工品としてはフィルム、糸、板などの素材をはじめ、照明器具、光学機器などの部品、光ディスクや光磁気ディスクの基板などが挙げられる。これらの成形品の製造に際しては、常法によりポリカーボネート樹脂に安定剤、型抜き剤、燃焼遅延剤、帯電防止剤、充填剤、繊維、衝撃強度変性剤などを添加してもよい。
【0048】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例においてゲルパーミエーションクロマトグラフィー、末端基の定量及び溶融流動性の評価は下記により行った。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC);
装置;東ソー株式会社製品、HLC−8020
カラム;充填剤としてそれぞれTSK 5000HLX、4000HLX、3000HLX及び2000HLX(いずれも東ソー株式会社製品)を充填した4本のカラム(直径7.8mmφ、長さ300mm)を接続して用いた。
【0049】
検出器;屈折率計
溶離液;テトラヒドロフラン
検量線;(株)ケムコ製の標準ポリスチレン(分子量;761(Mw/Mn≦ 1.14)、2000(Mw/Mn≦1.20)、4000(Mw/Mn≦1.06)、9000(Mw/Mn≦1.04)、17500(Mw/Mn≦1.03)、50000(Mw/Mn≦1.03)、233000(Mw/Mn≦1.05)、600000(Mw/Mn≦1.05)及び900000(Mw/Mn≦1.05)を用いて作成した。
【0050】
操 作;屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換算で求め、Mw/Mnを算出した。この時のベースラインは、装置が完全に安定した状態で、高分子量の立ち上り前のベースをそのまま忠実に延長し、低分子側の元のベースラインに戻った地点とをつないで計算した。なお、上記の標準ポリスチレンを測定して全て規格内におさまっていることを確認した。
【0051】
(2)末端基の定量;
末端停止剤を用いないで製造したポリカーボネート樹脂の末端及び停止剤で停止されなかった残存末端は全てOH基である。この末端OH基は、酢酸酸性下で四塩化チタンにより発色させ、480nmの波長の吸光度を測定することにより定量した。
数平均分子量(Mn′)は下記により算出した。
【0052】
Mn′=106/(末端基数(μeq/g)×1/2)
【0053】
また重合に際し末端停止剤を用いた場合には、末端停止剤は全て末端に結合しているものとして、上記の測定で得られた末端OH基数と停止剤の添加量から算出される停止末端基数との合計を末端基数とした。なお、予備実験により末端停止剤の存在下に重合したポリカーボネート樹脂をアルカリ加水分解して、結合している末端停止剤の量を定量し、使用した末端停止剤が全て分子末端に結合していることを確認した。
【0054】
(3)分解、揮発物の測定
ポリカーボネートペレット20gを、真空下(1mmHg)ガラス封管し、ペレットの部分のみ350℃で20分加熱した。しかして空冷されたガラス気相部(150℃〜50℃)に付着してきたもののみ、全量テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。
同溶液を液体クロマトグラム(LC)により測定した(条件:THF/水(1/1)溶媒からTHF100%へグラジエント、検出器;UV270nm、測定機種;島津製作所製、シマズLC−9A)。
同LCにより展開された化合物は、それぞれLC−MS法により同定した。
同定された化合物の内、ビスフェノールA(BPA)を挟んだ線状オリゴマーのうち昇華性の高い一量体(下記式のPBP)及び片末端のみ停止されたPB(下記式)及び停止剤同士が縮合したC−PTBP(下記式)につき、その量を比較した。成形温度によりそれぞれのオリゴマーの影響度は異なり、何れのオリゴマーも昇華性を有し、金型やスタンパーを汚染する。
【0055】
【化2】
Figure 0003692022
【0056】
【化3】
Figure 0003692022
【0057】
【化4】
Figure 0003692022
【0058】
一方、停止剤がフェノールである場合、ジフェニルカーボネート(DPC)及びフェニル末端のPB、PBPが対象となる。この化合物も昇華性を示し、成形時に金型やスタンパーに付着し、製品に影響を与える事が判っている。
【0059】
【化5】
Figure 0003692022
【0060】
(ただし上記各式において、PhO−:フェノール残基、tBuPhO−:t−ブチルフェノール残基、O−BPA−O:ビスフェノールA残基である)
【0061】
実施例1〜3
ハイドロサルファイトが溶解している苛性ソーダ水溶液にビスフェノールAを35℃で溶解したのち25℃まで冷却した水溶液と、5℃に冷却した塩化メチレンとを、内径6mmのステンレススチール製のパイプに連続的に供給して混合し、混合液をホモミキサー(特殊機化社製品、T.KホモミックラインフローLF−500型)に通して乳化し、乳濁液を調製した。パイプへの供給量はビスフェノールA16.31kg/時、苛性ソーダ5.93kg/時、水101.1kg/時、ハイドロサルファイト0.018kg/時、及び塩化メチレン68.0kg/時である。
【0062】
生成した乳濁液を内径6mmのパイプを経て、内径6mm、長さ34mのテフロン製パイプリアクターに流入させた。パイプリアクターには同時に0℃に冷却した液化ホスゲンを7.5kg/時で供給して反応させ、オリゴマーを生成させた。パイプリアクターの流速は1.7m/秒である。ホスゲンとしては、直径55mm、高さ500mmの円筒形容器に活性炭(太平化学社製品:商品名ヤシコールS、真密度2.1g/ml、空隙率40%、比表面積1200m2/g、細孔容積 0.86ml/g)を充填したものに、−5℃に冷却したホスゲンをSV=3で通液させて精製したものを用いた。
【0063】
なおパイプリアクターでは温度は60℃まで上昇するが、外部冷却により出口では35℃であった。反応混合物は静置分離して水相と油相とに分離した。得られたオリゴマーのクロロホーメート濃度は0.49N、OH末端濃度は0.22N、オリゴマー濃度は27%、Mvは1000であった。
得られた油相から41kgを分取して、内容積200リットルのファウドラー翼付き反応槽(撹拌翼径0.25m)に仕込んだ。次いでこれに塩化メチレン25kg、水45kgを仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら3℃迄冷却後、表−1に記載の触媒と25%苛性ソーダ水溶液5.82kgを加え60分間、表−1記載の攪拌負荷動力(回転数5.5〜6.3rps、機械定数Np=5)で撹拌しながら重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を生成させた。このとき重合の内温は11℃まで上昇した。
【0064】
反応混合液に塩化メチレン50kg及び水14kgを加え、室温で20分間撹拌したのち静置して、水相と有機相を分離した。有機相に0.1規定の塩酸40kgを加えて15分間撹拌したのち、静置して水相と有機相とを分離した。この有機相に、純水40kgを加えて15分間撹拌したのち静置して水相と油相とに分離する洗浄操作を3回反復した結果、水相中に塩素イオンが検出されなくなったので、洗浄操作を中止した。有機相からニーダーで塩化メチレンを蒸発させて除き、得られた粉末を乾燥してポリカーボネート樹脂を得た。
重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表−1に示す。
【0065】
実施例4
実施例1のオリゴマー溶液340gを分取し、内容積1リットルのホモミクサー(撹拌翼径0.029m)に仕込み、塩化メチレン180g、水360gを仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら3℃迄冷却後、表−1に記載の触媒と25%苛性ソーダ水溶液40gを加え60分間、表−1記載の攪拌負荷動力(回転数158rps、機械定数Np=0.8)で撹拌しながら重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を生成させた。このとき重合の内温は15℃まで上昇した。
以降の洗浄(使用量は容量見合いの比例)、粉化、乾燥操作は実施例1と同様の操作を実施した。
【0066】
実施例5
実施例3で使用した含窒素触媒の添加量0.02モル%を0.015モル%、に低減させた以外、実施例3と同様の操作を実施した。結果は、表−1記載の通り、平均分子量が大きくなり、分子量分布はより一層シャープになっていることが分かる。
【0067】
実施例6
実施例3のオリゴマー溶液に使用される溶媒を塩化メチレンに代えて四塩化炭素とし、重縮合時のオリゴマー濃度1%、触媒として2ーアミノエタノール(pKa=9.52)を使用した以外、実施例3と同様の操作を実施した。結果を表−1に示す。
【0068】
比較例1
ビスフェノールAとホスゲンとからオリゴマーを生成させる段階で、末端停止剤としてパラ−t−ブチルフェノールを存在させ、かつpKa=10.72のトリエチルアミンを触媒として用いた以外は、実施例2と全く同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表−1に示す。
【0069】
比較例2
実施例1で得られたオリゴマーを用い、重縮合の段階でパラ−t−ブチルフェノールの存在下、pKa=10.72のトリエチルアミンを触媒として用いた以外は、実施例2と全く同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合条件及び得られたポリカーボネート樹脂の物性を表−1に示す。
【0070】
比較例3
ビスフェノールAとホスゲンとからオリゴマーを生成させる段階で、末端停止剤を存在させず、かつpKa=10.72のトリエチルアミンを触媒として用いた以外は、実施例2と全く同様にして操作した。重合の途中段階より急激に増粘し、反応物が攪拌翼に巻き付いた状態で反応を終了した。分析可能なポリカーボネート樹脂は取得できなかった。
【0071】
比較例4(特開昭56ー112930号の追試 )
1Lセパラブルフラスコ(ジャケット付)に純水:400g、塩化メチレン600ml,ビスフェノールA150.4g,3−メチルピリダジン0.6gを仕込み、表−1記載の攪拌負荷動力(回転数19rps、機械定数Np=5)で攪拌しながら、ジャケット温度を7℃として、内温を15℃に冷却した。
その後,ホスゲンを1.8g/分の流量でフィードすると同時に,25%NaOHを添加しpH:9になるようコントロールした。この状態を保ちながら30分間継続し、その後一旦ホスゲンフィードを停止してpHを11に上げた。この際、温度は27℃迄上昇した。
再度ホスゲンを1.8g/分の流量で10分間フィードし、その間もNaOHを添加しながらpH:11を維持した。10分後ホスゲンフィードを停止し、pHを13に上げた後再びホスゲンを1.8g/分の流量でフィードしながらpHを13に保ち、7分間維持した。
その後ホスゲン及びNaOHの添加を停止し、攪拌も停止した。反応液は粘性のあるエマルジョンであり、塩化メチレンで希釈した後、酸洗ー水洗ー水洗を行い乾固品のMvを測定したところ,15400であった。又GPC測定結果はMw/Mn:3.60であった。フラスコ内面には線状2量体等種々の付着物が認められた。
【0072】
比較例5
パイプリアクター内を経由してきたオリゴマー溶液を次の内容積50リットルの撹拌機付き反応槽(オリゴマー化槽)に導き、更に1.23kg/時の苛性ソーダを添加、窒素雰囲気下30℃で攪拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のビスフェノールAのナトリウム塩(BPA−Na)を完全に消費させると同時に、水相中のアルカリを消費させ、オリゴマーの分子量を伸長させた後、水相と油相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
この時のオリゴマーのクロロホーメート濃度0.062N、OH基0.048N、オリゴマー濃度26.5%、Mv7000であった。
この油相に表−1記載の末端停止剤と触媒を添加する以外、実施例2と同様の操作を行った。Mw/Mは2.65であった。
【0073】
比較例6(米国特許第3269985号の実施例4の追試)
ピリジン50mlと水2mlの混合物を1リットルフラスコ中で攪拌下、ビスフェノールA−ビスクロロホーメートオリゴマー(Mv=2000):35.3gを溶解したクロロベンゼン200mlとピリジン50mlとの混合溶液を滴下した。
この反応はビスクロロホーメートの溶解を促進するため、僅かに加熱(40℃)し室温まで冷却した。生成物はイソプロピルアルコールで沈殿し、濾過した後乾燥した。
得られたポリカーボネートの分子量(Mv)は、9200、Mw/Mn=2.35であった。
【0074】
比較例7(米国特許第3437639号の実施例5の追試)
ビスフェノールA22.8g、乾燥ピリジン40ml、乾燥THF100mlの混合溶液を攪拌し、ウォーターバスで25〜30℃に設定した。これにホスゲン10.0gを15分間にわたって加えた。この混合物を5分間攪拌しながらさらにホスゲン0.5gを5分間かけて添加した。その後、さらにTHFで希釈し、塩酸ガスを通じた。ポリマー溶液を攪拌しながらアセトン中にゆっくり添加してポリカーボネート樹脂を沈殿させた。
得られたポリカーボネートの分子量(Mv)は10800、Mw/Mnは2.59であった。
【0075】
比較例6及び7は、何れもピリジンを溶媒とする溶液重合の例である。ピリジンを使用することのみにより、分子量分布のシャープな製品が得られる訳ではないことが分かる。この様な触媒を界面重縮合で使用し、分子末端の反応性に大きな違いを生じさせ、かつその時に末端停止剤が共存していない場合に限って生成できるのであり、比較例6及び7に示したような従来の方法では分子量分布は広いものとなった。
【0076】
【表1】
Figure 0003692022
【0077】
【表2】
Figure 0003692022
【0078】
【発明の作用】
本発明の方法により得られるポリカーボネート樹脂が、従来の製法により得られるポリカーボネート樹脂と著るしく異なっているのは、界面重縮合触媒として、ピリジン塩酸塩などのような特定pKa値のアミン化合物を用い、かつ末端停止剤を用いないことに由来するものである。古くはポリカーボネート樹脂の製造法として、ピリジンを溶媒とする溶液重合による方法もあったが(米国特許第3275601号、同3269985号、同3437639号、同3804722号及び同3428600号の各明細書)、この重合方法は、原料のビスフェノールを溶解させること及び反応により生成してくる塩酸をトラップすることを目的としてピリジン等複素環式化合物が溶媒として使用されているもので、縮合時に片末端のみ活性化させる効果はなく、何れも最確分布に近似した分子量分布のものしか得られない。
【0079】
これらの溶液法技術より以降は界面重縮合法がポリカーボネート樹脂製造法の主流となっているが、ポリカーボネート樹脂の製造に常用されている触媒はトリエチルアミンであった。トリエチルアミンだけを触媒としてオリゴマーの重合を行うと、末端停止剤を存在させない場合には重合反応が進行し過ぎて、ゲル状の超高分子量のポリカーボネート樹脂が生成する。従って従来のポリカーボネート樹脂の製造においては、末端停止剤の使用は不可欠であった。しかし末端停止剤の存在下に重合を行うと、末端封止されている分子は成長しないので、分子の成長にばらつきが生じ、この分でも分子量分布は必然的に相当な幅を有するようになる。しかるに、ピリジン塩酸塩のような含窒素複素環化合物を触媒として用いると、末端封止剤が存在しなくても反応の制御は容易であり、かつ分子末端が封止されないので分子の成長が均一に行われ、必然的に分子量分布が狭くなるものと考えられる。
【0080】
本来この様な分子量分布のシャープなポリマーは、二官能性モノマーが同一の反応性を有する限りあり得ず、全てFloryの理論に従った理想的ポリマーでMw/Mn=2.0になるに過ぎない。
この様な分子量分布のシャープなポリマーが得られる機構としては、分子片末端が、他方の末端と極端に異なった反応性を有し、一方向のみからの反応しか進行し得ないような環境が整っているためであると考えられ、実施例に示したピリジンを触媒にしたポリカーボネートの縮合反応はこの条件を満たしている。即ちピリジンの様な弱塩基性触媒では分子末端のクロロホーメート末端をイオン
化するまでは活性化できず、反応は全てイオン化したフェニレン−ONa末端からのみ進行する。従って得られたポリマーは単分散に近いものとなるが、反応相手が無くなると本来同時に進行しているクロロホーメート末端の加水分解が進行し、OH末端として停止してしまうのである。
【0081】
従って、界面重縮合の体積当たりの界面積が大きい場合、モノマーの供給が潤沢であるため高分子量化するが、一方、体積当たりの界面積が小さい場合、クロロホーメート分子末端の加水分解反応が縮合反応に優先してしまい、一定分子量までしか成長し得ない状態となる。上記表−1で分かる通り、界面重縮合反応時の攪拌回転数(乳化界面積)に応じて分子量(Mv)が高くなっている。
【0082】
【発明の効果】
本発明方法によれば、単分散に近い分子量分布を有するポリカーボネート樹脂を提供することができる。特に本発明によって得られたポリカーボネート樹脂は、極端に狭い、シャープな分子量分布を有することから、特に低分子量オリゴマーが極端に少なく、加熱成形時のオリゴマー由来の揮発物は皆無となるので、産業上優れたものである。

Claims (6)

  1. カーボネート原料とジヒドロキシ化合物とを反応させて得られたポリカーボネートオリゴマーであって、下記式で算出される粘度平均分子量(Mv)が5000以下のオリゴマーを出発原料とし、末端停止剤の不存在下、塩酸塩としてのpKaが10以下である塩基度を有するアミンを触媒として、界面重縮合を行なうことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造法。
    ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp)
    〔η〕=1.23×10-4×Mv0.83
    (式中、ηspはポリカーボネートの塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としてはポリカーボネートの濃度0.6g/dlのものを用いる。)
  2. ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定:ポリスチレン換算)との比(Mw/Mn)が2.2以下であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造法。
  3. 出発原料とするポリカーボネートオリゴマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.2以下であり、粘度平均分子量(Mv)と分子末端数から算出される数平均分子量(Mn′)との比(Mv/Mn′)が1.40以下であり、分子末端が封鎖されていないことを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂の製造法。
  4. 出発原料とするポリカーボネートオリゴマーが、水及び有機溶媒の存在下、界面重縮合法により、2価のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とホスゲンとを連続的に反応させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造法。
  5. アミン触媒の添加量が、ジヒドロキシ化合物に対して、0.001〜1モル%である請求項1〜4いずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造法。
  6. 界面重縮合における液滴界面積を変えるために、撹拌負荷動力を1〜100kw/m3として撹拌することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造法。
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