JP2007308670A - トリアセチルセルロースフィルムの選択的アルカリ鹸化処理法並びにその製造装置 - Google Patents

トリアセチルセルロースフィルムの選択的アルカリ鹸化処理法並びにその製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの鹸化処理において、表面が高機能付与加工されたもう1方の片側を苛性アルカリ浴に浸すことなく、偏光子と接着する他方のTACフィルム面側を選択的に苛性アルカリで鹸化処理する。
【解決手段】アルカリ性で安定した増粘性を有すアクリル酸を主体としたアクリル系共重合物を含有する水溶液に苛性ソーダ又は苛性カリを溶解してなる塗付液を調整し、TACフィルム表面にコートする(苛性アルカリ水溶液だけでは表面張力によりフィルム面に保持できない)。次いで加熱乾燥し、TACフィルムの表面のアセチル基を鹸化反応処理する。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
本発明はTACフィルムの片面を、アクリル系共重合体を含む苛性ソーダ(NaOH)又は苛性カリ(KOH)アルカリ性コティーグ液を塗布コートし、乾燥箱などを加熱空間を通過中に大半の水分を蒸発除去した後、乾燥残渣を水洗除去した後、必要に応じフィルムを乾燥してTACフィルムの片面だけをケン化処理する方法に関する。
TACフィルムは液晶表示などに用いられる偏光フイルムを構成する主要材料である。すなわち、TACフィルムはPVAフイルムを沃素などにより染色し延伸してなる偏光子を、主として保護する目的で片側又は両側からこの偏光子をラミネートする材料の90%以上を占めるフィルムである。ラミネートする際の接着剤としてはPVAの水溶液が用いられる。
このTACフィルムを偏光子の延伸したPVAフィルムからなる偏光子と接着するためにTACフィルムの表面を苛性アルカリにより鹸化処理によりTACフィルム表面の−OCOCH基の一部を親水基である−OHに加水分解する必要がある。
これまでのTACフィルムの鹸化処理法はNaOH又はKOH等のアルカリ温水溶液(30℃〜60℃)中にTACフィルムを数分間潜らせた後、水洗し必要に応じ乾燥するケン化処理方法が用いられている。
しかし偏光フィルムは主用途の液晶表示などの場合、偏光子と接着する面の反対側を樹脂類及びその他の薬剤をバインダーと共に塗布加工する場合が多い。具体的には、ハード(HC)コート、アンチグレア(AG)コート、アンチリフレクト(AR)コート、帯電防止(AS)コート、視野角拡大改善(WV)のためのフィルム表面加工などがそれに当る(以後、これ等を機能付与加工と総称する)。
これ等の機能付与加工はTAC表面との密着性を保つ意味から上述の苛性アルカリによる鹸化処理前に行うのが一般的である。従って機能付与加工後アルカリ鹸化を行うことになるがTACフィルムを鹸化する条件、すなわち加熱された苛性アルカリ水中に潜らせるのでは機能付与加工面がダメージを受ける場合が少なくなく、TACフィルムと偏光子との接着面だけを選択的に鹸化処理することが望まれている。
TACフィルムの未加工面を選択的にアルカリケン化処理する方法として機能付与加工面を酢酸ビニル、ポリエチレン,ポリエステル等のフィルムで保護し、アルカリ水溶液が機能付与加工面に直接触れない方法が提案されている。
しかし、本法は加工のコストアップの要因にであり、またアルカリ鹸化条件により保護フィルムと機能付与加工面の間の剥離やアルカリ液の侵食による機能付与面の局部的ダメージなど新たな品質問題発生の原因になっている。
本発明の詳細と利点
このような状況に鑑み、研究者は鋭意検討の結果TACフィルムの片面を、アクリル系共重合体を含む苛性ソーダ(NaOH)又は苛性カリ(KOH)アルカリ性コート液を塗付コートし、乾燥箱などを通過中に大半の水分を蒸発除去した後乾燥残渣を水洗除去して必要に応じて乾燥してTACフィルムの片面だけを鹸化処理する方法を見出した。即ち本発明は、
水溶性アクリル系共重合体を0.1%以上含有する苛性ソーダ又は苛性カリ性のコート液をTACフィルムの片面に塗布し加熱炉中で加熱乾操し大半の水分を加熱除去後塗付面の固形残渣を水洗除去して、TACフィルムの片面だけを選択的に鹸化が可能になり、鹸化処理必要面の反対面が強アルカリによる機能付与加工面の損傷を受けることはない。又、予め機能付与加工面を酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステルなどのフィルムで保護する方法より材料コスト分有利なだけではなく、保護フィルムによる押し傷など2次的品質問題も少なことが用意に類推できる。
本発明方法によるTACフィルムの鹸化処理装置は従来の苛性アルカリ浴中にTACフィルム全体を潜らせる方法に比べ設備の小型化が可能であり、偏光板製造装置へのインライン化がより容易であり、設備全体の投資額の削減に繋がと推察できる。
〔003〕においてNaOHまたはKOHのコート液が、乾燥後の固形残渣を水で洗浄除去時、無色透明のため洗浄除去状態が判り難い。染料又は顔料で着色することにより、アクリルポリマーインクの残渣除去を目視検査だけで用意に確認できる。
本発明の要点は本水溶性アクリル系共重合体が強アルカリに安定な増粘性を有すことを利用し、TACフィルムの表面鹸化処理に必要量の苛性アルカリをTACフィルム上に保持させることにある。次いでそのまま加熱乾燥し、TACフィルムの表面加水分解を促進させた後、乾燥残渣を水で洗い落とし必要に応じ水きり乾燥する。本法はフィルム全体を加温苛性アルカリ水中に潜らせる法より遥かに勝る処理スピードを達成でき、且つフィルムの片側だけを選択的にアルカリ鹸化処理が可能な方法である。増粘剤としてはアルカリ性に安定な水溶性アクリルポリマーで、市販されている(メタ)アクリル酸を主体とする共重合体である。
本法に用いられる苛性アルカリとしてはNaOH(苛性ソーダ)、KOH(苛性カリ)が挙げられる。苛性アルカリ濃度は苛性アルカリの種類、意図する生産スピードや加熱条件により決まってくるが、生産性、鹸化TACフィルムの品質維持、コーテングに望ましい粘度維持等から0.2N〜1Nが望ましい。
コート液をTACフィルム上にコートする方法はロールコート、グラビアコート、ダイコートなど何れも可能であるが、あり程度の厚み精度が確保されフィルム表面を傷をつけない配慮がなされればスポンジ状ゴムロールによる塗付で充分目的を達成できる。
加熱熱源の種類は問わないが、機能付与加工面への影響、フィルムのカールなどを考慮し熱源が限定される場合がある。加熱温度は50℃〜90℃が望ましい。本法により機能付与加工面に保護フィルムなどの覆いを施すことなく、TACフィルム片面だけを選択的に鹸化処理が可能になった。
又、従来の苛性アルカリ水溶液中にTACフィルムを継続的に潜らせる方法では苛性アルカリを逐次補充し濃度を一定に保ってもTACフィルムから溶出する可塑剤などが蓄積し、時間の経過と共にTACフィルムの鹸化度合いに変化が起こるため、苛性アルカリ浴を新たに調整し直す必要があった。
本法は常に一定組成の鹸化用インクが補給される方法で安定したアルカリ鹸化TACフィルムが得られ、安定したラミネート品質が保たれる。アルカリ濃度、乾燥温度、生産スピードの組合せによりTACフィルム表面から鹸化反応が進む深さをコントロールでき、目的に合った鹸化処理が可能になる。
以下、実施例により本発明の具体例を示す。
アクリル系重合体増粘剤ビニゾール1020(大同化成工業製)を7重量部秤取し、攪拌下90重量部の水に加える。次いでフレーク状苛性ソーダ3部を少量づつ加え固形分が完全に溶解するまで攪拌する。1時は全体が固化する状態になるが徐々に流動する状態になり、1時間攪拌後は流動性良好になり65cps(70rpm)の糊状アルカリコート液が得られた。このNaOH水アルカリコート液を市販のスポンジ製のペイント塗りロールでTACフィルムの片面に塗った。コート厚は平均0.9mmであった。このフィルムを温度80℃設定した乾燥箱に導き乾燥した。乾燥箱滞留距離は2m、滞留時間は2分である。乾燥箱を出て来たフィルム上のコート液は半乾き状態でフィルム表面に付着している。これを40℃イオン交換水で洗い落とし引き続いて水切りロールで表面に付着した水を搾り取った。こうして得られたTACフィルムと水滴の接触角度を測定した。(表1)尚、延伸PVAフィルムと本発明片側鹸化処理フィルムの処理側を延伸PVAの両側からラミネートした。使用した接着剤は鹸化度99%以上のPVA(クラレ社製)粉末を水に溶解して得られた3.5%水溶液を使用した。初期接着を含め何ら問題はなかった。
実施例1のビニゾール1020の替わりに1029(大同化成工業製)を使用した。
その他の薬剤、処理および操作条件は全て実施例1と同じ条件にした。
得られた糊状NaOHコート液の粘度は62cpsであった。
同様に本発明法のコートによる片面アルカリ鹸化処理法で処理したフィルムの水滴接触角度を測定した。(表1)
実施例1のNaOHの替わりにKOHを5重量部用いた。得られた糊状KOH水溶液の粘度は77cpsであった。スポンジロールによりコートしTACフィルの片面にコーとした。平均糊状インクのコート厚みは1.4mmであった。
更に、このコートしたTACフィルムを乾燥炉に導き同条件で片面鹸化処理を行い水洗乾燥後水滴接触角度を測定した結果は表1の通りである。
また、本実施例により片面鹸化処理した2枚のTACフィルムの鹸化処理面でPVA偏光子を3.5%PVA水溶液を用いてラミネートした結果は全く問題の無いTACを保護層とする偏光フィルムが得られた。
実施例1同様にして得られた糊状NaOHコート液に赤色染料、アイゼンプリムラレッド4BH(保土ヶ谷化学製)0.01重両部を入れて赤色に着色したコート液を作った。これを実施例1と同様にTACフィルムにコートし同様に加熱処理後40℃イオン交換水で乾燥残渣を洗い落とした。洗い落とした後も残渣の洗い残し部分は赤色に着色しており、容易に識別可能であった。
こうして得られてTACフィルムの表面に水滴を落としフィルムとの接触角度を測定し同じフィルムの未処理側のそれと比較した。
表1
尚、延伸偏光子との本発明の片面アルカリ鹸化TACフィルム処理側とのラミネートを試みた。使用した接着剤は3.5%PVA水溶液である。初期接着を含め何ら問題は見られなかった。
Figure 2007308670
連続式TACフィルムの選択的ケン化処理装置である。

Claims (7)

  1. アクリル系共重合体を0.1%以上含有する苛性ソーダ又は苛性カリ性の水溶液からなるコート液をトリアセチルセルローズフィルム(以後「TACフィルム」と称する)片面に塗布し加熱炉など加熱空間で加熱乾操し大半の水分を加熱除去後、塗布面の固形残渣を水洗除去してTACフィルムの片面だけを選択的にアルカリケン化処理法。
  2. 請求項1において苛性ソーダ又は苛性カリ性のコート液の苛性ソーダ又苛性カリ濃度が0.1N〜3N範囲である鹸化処理コート液。
  3. 請求項1においてアクリル共重合体が(メタ)アクリル酸を主体とする共重合体で、水あるいは温水に溶けやすく除去しやすいアクリル系重合体。
  4. 請求項1において苛性ソーダ又は苛性カリ性のコート液が後の洗浄除去の際に除去されたことが判り易くするために染料又は顔料で薄く着色されたコート液。
  5. 請求項1において乾燥残渣を水洗除去し必要に応じて希硫酸水中でアルカリ残分を中和除去する方法。
  6. 請求項1においてアクリル系共重合体を0.1%以上含有するアルカリケン化液の粘土が20cps.(70rpm.spindle:#3)以上であるコート水溶液。
  7. 請求項1において必要に応じてTACフィルムの片面だけの選択的鹸化後乾燥し巻き取るまでの連続製造装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009197161A (ja) * 2008-02-22 2009-09-03 Fujifilm Corp アルカリ鹸化ポリマーフィルムの製造方法及び装置
JP2011057985A (ja) * 2009-09-10 2011-03-24 Lg Chem Ltd 偏光板保護フィルム用改質組成物及びこれを用いた偏光板保護フィルムの改質方法
KR20240104025A (ko) 2022-12-27 2024-07-04 아티엔스 가부시키가이샤 하드코트층 형성용 활성 에너지선 경화성 조성물, 그것을 이용한 하드코트 필름 및 그의 적층체

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