JP2007305878A - 永久磁石及び永久磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 Coの添加または付加的な保護膜なしに高い耐食性、耐候性を有し、その上、高い保持力を有し、高磁気特性の永久磁石及びその永久磁石を高い生産性でかつ低コストで作製できる永久磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】 Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を用い、この焼結磁石の表面の少なくとも一部に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜する成膜工程と、所定温度下で熱処理を施して焼結磁石の表面に成膜したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させる拡散工程とを実施する。
【選択図】 図1
【解決手段】 Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を用い、この焼結磁石の表面の少なくとも一部に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜する成膜工程と、所定温度下で熱処理を施して焼結磁石の表面に成膜したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させる拡散工程とを実施する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、永久磁石及び永久磁石の製造方法に関し、特に、Coを含有しない鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石の表面に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜し、所定温度下で熱処理を施してDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させてなる永久磁石及び永久磁石の製造方法に関する。
Nd−Fe−B系の焼結磁石(所謂、ネオジム磁石)は、鉄と、安価であって資源的に豊富で安定供給が可能なNd、Bの元素の組み合わせからなることで安価に製造できると共に、高磁気特性(最大エネルギー積はフェライト系磁石の10倍程度)を有することから、電子機器など種々の製品に利用され、近年では、ハイブリッドカー用のモーターや発電機への採用も進んでいる。
他方、Nd−Fe−B系の焼結磁石は、酸化され易い希土類元素及び鉄を主成分とするため防錆対策が必要になる。このことから、Nd−Fe−B系の焼結磁石では、熱安定性や、温度特性、耐食性などを改善するためにCoを添加したり(特許文献1)、また、Niメッキ膜や樹脂膜等の保護膜を焼結磁石の表面に形成することが知られている(特許文献2)。
特開平5−234733号公報(例えば、従来技術の記載参照)
特開平6−46008号公報(例えば、従来技術の記載参照)
しかしながら、上記のようにCoを添加すると、保磁力が著しく減少すると共に、焼結磁石の結晶粒界相にCoを含む金属化合物が存在することで最適熱処理条件の範囲が著しく狭くなって生産性が悪くなる。他方、焼結磁石の表面にNiメッキ膜や樹脂膜等の保護膜を磁石表面に形成する場合、実用的な強度を得るには、保護膜の膜厚を相当に厚くしなければならず、磁気特性が低下してしまうと共に、付加的な表面処理工程が必要になって、生産性が悪く、その上、コスト高を招く。
そこで、上記点に鑑み、本発明の第一の目的は、Coの添加または付加的な保護膜なしに高い耐食性、耐候性を有し、その上、高い保持力を有し、高磁気特性の永久磁石を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、Coの添加または付加的な保護膜なしに、高い耐食性、耐候性及び高い保持力を有し、高磁気特性な永久磁石を、高い生産性でかつ低コストで作製できる永久磁石の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1記載の永久磁石の製造方法は、Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を用い、この焼結磁石の表面の少なくとも一部に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜する成膜工程と、所定温度下で熱処理を施して焼結磁石の表面に成膜したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させる拡散工程とを含むことを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、焼結磁石の表面に形成したDy、Tbの少なくとも一方を拡散させる際に、焼結磁石の結晶粒界にCoを含む金属層化合物がないためその拡散速度が速くなり、その結果、拡散工程を短時間で実施できる。また、Ndと比較して極めて高い耐食性、耐候性のあるDy、Tbの少なくとも一方が少なくとも焼結磁石の表面に存在することで、Dy、Tbの少なくとも一方が保護膜としての役割も果たし、Coを含まず、その上、付加的な保護膜なしに強い耐食性、耐候性を有する永久磁石となる。この場合、付加的な表面処理工程を省けることで、拡散工程を短時間で実施できることと相俟って、生産性がさらに向上する。また、高価なCoを用いないことで低コスト化が図れる。
前記成膜工程は、処理室を加熱し、この処理室内に予め配置したDy、Tbの少なくとも一方を蒸発させて金属蒸気雰囲気を処理室内に形成する第一工程と、処理室内の温度より低く保持した前記焼結磁石をこの処理室に搬入し、処理室内と焼結磁石との間の温度差によって焼結磁石の表面にDy、Tbの少なくとも一方を選択的に付着堆積させる第二工程とを含むものとすれば、焼結磁石の表面にDyやTbを所定膜厚で高速に成膜できることで生産性がさらに向上し、資源的に乏しく、安定供給が望めないDyやTbの収率を高くできることから、さらなる低コスト化が図れる。
また、請求項3記載の発明は、Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を有し、この焼結磁石の表面の少なくとも一部に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜した後、熱処理を施して、焼結磁石の表面に成膜したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させてなることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、Ndと比較して極めて高い耐食性、耐候性を有するDyやTbが少なくとも焼結磁石の表面に存在することで、Dyが保護膜としての役割も果たし、付加的な保護膜なしに強い耐食性、耐候性を有する永久磁石となり、その上、結晶粒界相に拡散したDyやTbが各結晶粒表面の結晶磁気異方性を高めることで、ニュークリエーション型の保磁力発生機構を強化し、その結果、保磁力が飛躍的に向上する。
この場合、前記表面、結晶粒界に、Dy、Tbの少なくとも一方を含有するリッチ相を有することが好ましい。これによれば、従来のネオジム磁石は、主相、Ndリッチ相、Bリッチ相の3相から構成されるが、耐食性、耐候性が弱い結晶粒界のNdリッチ相に、Dy、Tbの少なくとも一方を含有するリッチ相が存在することで、磁石表面にリッチ相が存在することと相俟って、極めて強い耐食性、耐候性を有する永久磁石となる。
より好ましくは、前記表面が前記リッチ相で覆われ、結晶粒界に、前記リッチ相を1〜50%の範囲で含むものがよい。尚、結晶粒界に、前記リッチ相が50%の範囲を超えて含まれていると、磁気特性を示す最大エネルギー積、残留磁束密度及び保磁力が著しく低下する。
以上説明したように、本発明の永久磁石は、Coの添加または付加的な保護膜なしに高い耐食性、耐候性を有し、その上、高い保持力を有し、高磁気特性なものとなるという効果を奏する。また、本発明の永久磁石の製造方法は、Coの添加または付加的な保護膜なしに高い耐食性、耐候性を有し、その上、高い保持力を有し、高磁気特性な永久磁石を、高い生産性でかつ低コストで作製できるという効果を奏する。
図1及び図2を参照して説明すれば、本発明の永久磁石Mは、Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石Sの表面の表面に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜する成膜工程と、所定温度下で熱処理を施して表面に形成したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石Sの結晶粒界相に拡散させる拡散工程とを実施して作製される(図1参照)。
Coを含有しない鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石Sは、次のように作製されている。即ち、Fe、B、Ndを所定の組成比で配合して、公知のストリップキャスト法により0.05mm〜0.5mmの合金を先ず作製する。配合の際、Cu、Zr、DyやGaを少量添加してもよい。次いで、作製した合金を、公知の水素粉砕工程により一旦粉砕し、引き続き、ジェットミル微粉砕工程により微粉砕する。
次いで、公知の方法で、磁界配向して金型で直方体など所定形状に成形した後、所定の条件過下で焼結させて上記焼結磁石を得る(図1(a)参照)。焼結磁石の作製の各工程において条件をそれぞれ最適化し、焼結磁石の平均結晶粒径が1μm〜5μmの範囲、または7μm〜20μmの範囲となるようにした。
平均結晶粒径を7μm以上とすると、磁界形成時の回転力が大きくなり、配向度が良く、その上、拡散工程を実施する場合に、結晶粒界相の表面積が小さくなることで、Dy、Tbの少なくとも一方を短時間で効率よく拡散できる。その結果、非常に高い保持力を有する永久磁石が得られると共に、拡散工程の処理時間が短くなって生産性を向上できる。尚、平均結晶粒径が25μmを超えると、結晶粒界に異なる結晶方位を含んだ粒子の割合が極端に多くなって配向度が悪くなり、その結果、永久磁石の最大エネルギー積、残留磁束密度、保持力がそれぞれ低下する。
他方、平均結晶粒径を5μm未満とすると、単磁区結晶粒の割合が多くなり、その結果、非常に高い保持力を有する永久磁石が得られる。平均結晶粒径が1μmより小さくなると、結晶粒界が細かく複雑になることから拡散工程を実施するのに必要な時間が極端に長くなり、生産性が悪い。
図2に示すように、成膜工程を実施する成膜装置1は、公知の構造を有し、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段11を介して所定の真空度に保持できる円筒形状の真空チャンバ12内を有する。真空チャンバ12の下側略中央部には蒸発源13が設けられている。蒸発源13は、公知の構造を有する抵抗加熱式のものであり、顆粒状のDy、Tbの収納を可能とするるつぼ13aを有する。そして、るつぼ13aに電流を流すことで抵抗熱を発生させ、その熱でDy、Tbを加熱して蒸発させる。
他方、図示しない電子銃をるつぼの近傍に配置し、加速・集束した電子線をあて、電子線の持つエネルギーを用いてDy、Tbを加熱して蒸発させるようにしてもよい。るつぼ13aに設置するDy、Tbの粒径は、10〜1000μmの範囲することが望ましい。10μm以下では、発火性を有するDy、Tbの粒の取扱いが困難であり、他方で、1000μmを超えると、蒸発に時間を要する。
蒸発源13に対向させて真空チャンバ11の上部には基板ホルダ14が設けられ、基板ホルダ14によって、焼結磁石Sのうち表面積の大きな面が蒸発源13と対向するように複数個の焼結磁石Sが保持できるようになっている。るつぼ13a及び基板ホルダ14は、成膜すべき金属蒸発材料Vと反応しない材料、例えば、Mo、W、V、Taまたはこれらの合金やCaO、Y2O3、或いは希土類酸化物から、またはこれらの材料を他の断熱材の表面に内張膜として成膜したものから構成されている。
尚、真空チャンバ12内にArまたはHeプラズマを発生させる公知構造のプラズマ発生装置(図示せず)を設け、真空チャンバ12内での成膜に先だってプラズマによる焼結磁石S表面のクリーニングを行うようにしてもよい。
上記成膜装置1によって焼結磁石S表面にDyやTbを成膜する場合、基板ホルダ14に上記のように作製した焼結磁石Sをセットすると共に、るつぼ13aにDyやTbを配置する。次いで、真空チャンバ12を所定の圧力(例えば、10×10−6Pa)まで真空排気した後、蒸発源13を作動させてDy、Tbを蒸発させ、焼結磁石S表面に付着、堆積させる(図1(b)参照)。
成膜工程におけるDyやTbの膜厚は、後述する拡散工程における熱処理時間や焼結磁石Sの体積などを考慮して膜厚が決定される(例えば、2〜20μm)。この場合、焼結磁石Sの全面に亘ってDyやTbを成膜する必要はなく、表面の少なくとも一部にDyやTbを成膜させておけば、焼結磁石の平均結晶粒径を1μm〜5μmの範囲または7μm〜20μmの範囲としたため、次の拡散工程において結晶粒界相にDyやTbを拡散させると、高性能な永久磁石Mが得られる。但し、焼結磁石の体積に対し、DyやTbを成膜した表面積が少ない場合、拡散工程での熱処理時間が長くなるため、生産性を考慮すると、焼結磁石の全表面積の少なくとも80%にDy、Tbを成膜することが好ましい。
他方、拡散工程を実施する熱処理装置は、表面にDy、Tbが成膜された焼結磁石Sを所定温度下で加熱できるものであればよく、例えば、真空排気手段が接続された真空チャンバを有し、真空チャンバ内には、焼結磁石Sをその全体に亘って所定温度まで均一に昇温させて保持できるように複数本の電気加熱ヒータを設けられている。
上記熱処理装置によって、表面にDyやTbが成膜された焼結磁石Sを拡散処理する場合、真空排気手段を介して処理室の圧力が所定値(例えば、10×10−5Pa)に到達するまで真空排気し、所定温度(例えば、850℃〜950℃)下で所定時間だけDyが成膜された焼結磁石Sに対し熱処理が施される(拡散工程)。この熱処理に引き続き、その熱処理より低い所定温度(例えば、500℃〜600℃)下で所定時間(例えば、30分)だけ永久磁石の歪を除去する熱処理を施すようにしてもよい。
これにより、焼結磁石Sの表面の少なくとも一部にDyやTbを成膜し、熱処理を施して、表面に成膜されたDyやTbを磁石の結晶粒界相に拡散させた永久磁石が得られる(図1(c)参照)この場合、焼結磁石の表面に形成したDy、Tbの少なくとも一方を拡散させる際に、焼結磁石の結晶粒界にCoを含む金属層化合物がないためその拡散速度が速くなり、その結果、拡散工程としての熱処理を短時間で実施できる。
また、Ndと比較して極めて高い耐食性、耐候性を有するDyやTbが少なくとも焼結磁石Sの表面に存在することで、DyやTbが保護膜としての役割も果たし、Coを含まずかつ付加的な保護膜なしに強い耐食性の有する永久磁石Mとなる。この場合、付加的な表面処理工程を省けることと、短時間で拡散工程を実施できることとが相俟って、生産性がさらに向上する。また、高価なCoを用いないことで低コスト化が図れる。
永久磁石Mの表面、結晶粒界には、Dyリッチ相(Dyを5〜80%の範囲で含む相)を有することが好ましい。これによれば、従来のネオジム磁石は、主相、Ndリッチ相、Bリッチ相の3相から構成されるが、耐食性、耐候性が弱い結晶粒界のNdリッチ相に、Dyリッチ相が存在することで、焼結磁石Sの表面にDyリッチ相が存在することと相俟って、極めて強い耐食性、耐候性を有する永久磁石となる。
より好ましくは、永久磁石Mの表面がDyリッチ相で覆われ、結晶粒界に、Dyリッチ相を1〜50%の範囲で含むものがよい。尚、結晶粒界に、Dyリッチ相が50%の範囲を超えて含まれていると、磁気特性を示す最大エネルギー積、残留磁束密度及び保磁力が著しく低下する。
尚、本実施の形態では、成膜工程として、蒸着法による成膜装置1を用いるものについて説明したが、資源的に乏しく、安定供給が望めないDyやTbの収率を高めると共に、成膜時間を短縮して生産性を向上させるように、成膜工程として、次の成膜装置10を利用してもよい。
図3及び図4を参照して説明すれば、成膜装置10は、Coを含有しない鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石Sの表面に選択的にDyやTbを高速で成膜させるのに適したものであり、処理室2と準備室3とを上下方向で連結して構成される。上側に位置する処理室2は、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段10aを介して所定の真空度(例えば、10×10−6Pa)に保持できる円筒形状の真空チャンバ10b内に配置されている。
処理室2は、下面が開口するように円筒形状に加工した均熱板21で画成され、下面の開口を介して準備室3に連通している。真空チャンバ10bには、均熱板21の開口した下面を除くその周囲を囲うように、カーボンから構成される断熱材22が設けられている。均熱板21と断熱材22との間の空間には、例えばWを用いた複数本の電気加熱ヒータ23が設けられ、加熱手段を構成する。これにより、真空中で断熱材22によって囲われた均熱板21を加熱手段23で加熱し、この均熱板21を介して間接的に処理室2内を加熱することで、処理室2内を略均等に加熱できる。
処理室2内には、金属蒸発材料である顆粒状のDyやTbが配置される断面凹状の受け皿24が設けられている。受け皿24は、後述する搬送手段によって処理室2内に移動されてくる焼結磁石Sの周囲を囲ってDyやTbが配置できるように環状に形成され、均熱板21の内側の壁面に取付けられている。尚、受け皿24は、環状に形成される必要はなく、周方向に等間隔で配置されていればよい。
処理室2の下側には、第1空間4が形成され、この第1空間4には、遮蔽手段5が設けられる。遮蔽手段5は、弁本体51とこの弁本体51を駆動させるエアーシリンダなどの駆動手段52とから構成され、駆動手段52によって、弁本体51が処理室2と準備室3とを連通した開位置と(図1に示す状態)、弁本体51が第1空間4を画成する天板41に形成した開口の周縁部に当接して処理室2を密閉する閉位置との間で移動自在となる。弁本体51には、図示していない第2の加熱手段が設けられている。
第1空間4の下側には第2空間3aが設けられ、この第2空間3aを画成する側壁30にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、このゲートバルブを開閉して焼結磁石Sの搬入、搬出が行われる。焼結磁石Sは保持手段6で保持される。保持手段6は、同一円周上に所定の間隔を置いて垂直方向に設けた三本の支柱61と、この支柱61の下端から上方にそれぞれ所定の間隔を置いてかつ各支柱61で支持させて水平に設けた2個の載置台62とから構成される。各支柱61は、熱伝導が小さくなるように支柱61の径を小さく構成している。これは後述する押圧部材74からの熱が支柱61を通って焼結磁石に伝達し難くするためである。
尚、載置台62上に載置される焼結磁石Sの載置台62側の面にも成膜できるように、載置台62は、φ0.1〜10mmの線材を格子状に配置して形成するのがよい。また、載置台62相互間の間隔は、焼結磁石Sの高さなどを考慮して設定される。保持手段6は、第2空間3aに設けられ、中央に後述する支持台の挿通が可能な開口63aを形成した円板63上に設置され、この円板63は、処理室2内に設けたリング状の支持部材64上に載置されている。
尚、上記同様、一般の真空装置でよく用いられるAl2O3を用いると、蒸気雰囲気中のDyとAl2O3が反応してその表面に反応生成物を形成すると共に、Al原子がDy蒸気雰囲気中に侵入する虞があるため、処理室2を画成する均熱板21、焼結磁石Sが保持する保持手段6及び搬送手段7の支持台73を、成膜すべき金属蒸発材料と反応しない材料、例えば、Mo、W、V、Taまたはこれらの合金やCaO、Y2O3、或いは希土類酸化物から製作するか、またはこれらの材料を他の断熱材の表面に内張膜として成膜したものから構成している。
第2空間3aの下側には、第3空間3bが形成され、第2空間3a及び3bが準備室3
を構成する。準備室3には、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段31が接続され、この真空排気手段31によって、準備室3と、第1空間4を介して連通した処理室2内を所定の真空度に保持できる。準備室3の底部には、エアーシリンダなどの駆動手段71が設けられ、準備室3内に突出させた軸部72の先端には円形の支持台73が取付けられ、駆動手段71と支持台73とが搬送手段7を構成し、支持台73が、準備室3内の所定位置(下降位置)と処理室2内の所定位置(上昇位置)と間で昇降自在となる。
を構成する。準備室3には、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段31が接続され、この真空排気手段31によって、準備室3と、第1空間4を介して連通した処理室2内を所定の真空度に保持できる。準備室3の底部には、エアーシリンダなどの駆動手段71が設けられ、準備室3内に突出させた軸部72の先端には円形の支持台73が取付けられ、駆動手段71と支持台73とが搬送手段7を構成し、支持台73が、準備室3内の所定位置(下降位置)と処理室2内の所定位置(上昇位置)と間で昇降自在となる。
軸部72には、支持台73の下側に位置して断面逆T字形状の押圧部材74が取付けられ、押圧部材74は、搬送手段7を上昇位置に移動させたときに、円板63を上方に向かって持ち上げ、円板63の外周縁部に設けたメタルシールなどのシール材(図示せず)を天板41に形成した開口の周縁部に押圧して処理室2を密閉する役割を果たす。押圧部材74には、図示していない第3の加熱手段が設けられている。
準備室3を構成する第2空間3aには、高周波電源に接続されたコイル(図示せず)と、不活性ガスを導入するガス導入手段32とを有するプラズマ発生手段が設けられている。不活性ガスとしては、He、Arなどの希ガスである。そして、準備室3内でプラズマを発生させて、処理室2内での成膜に先だってプラズマによる焼結磁石S表面のクリーニングの前処理が行われる。この場合、準備室3に、例えばWを用いた電気加熱ヒータ(図示せず)を設け、熱処理による焼結磁石S表面のクリーニングの前処理と共に、成膜が終了した焼結磁石Sに対し、真空雰囲気中で熱処理を施することができるように構成してもよい。
次に、上記成膜装置10を用いた永久磁石Mの製造について説明する。先ず、上記同様に、Coを含有しない鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石Sを得る。次いで、焼結磁石Sを保持手段6の載置台61上に設置する。この場合、その磁化容易方向が、載置台73に平行となるように載置するとよい。次いで、処理室3内の受け皿24に、粒径が10〜1000μmの範囲であるDyを設置する。Dyの収率を高めるべく、受け皿24に設置するDyの総量は、焼結磁石Sが所定温度(焼結磁石の結晶粒のみならず結晶粒界相にもDy、Tbが拡散する温度)に達するまで処理室2内でDy蒸気雰囲気を継続させるのに必要なものとする。
次いで、側壁30に設けたゲートバルブを開けて、焼結磁石が設置された保持手段6を第2空間3aに搬入して円板63a上に設置した後、ゲートバルブを閉めて各真空排気手段10a、31をそれぞれ作動させ、真空チャンバ10b内を真空排気すると共に、準備室3及び第1空間4を介して処理室2とが所定圧力(例えば、10×10−6Pa)に到達するまで真空排気する。この場合、遮蔽手段5は開位置にある。
次いで、処理室2及び準備室3の圧力が所定値に達すると、駆動手段52によって遮蔽手段5を閉位置に移動して、弁本体51によって処理室2を密閉し、加熱手段23及び遮蔽手段5における弁本体51の第2の加熱手段を作動させて処理室2内の温度が所定温度に達するまで加熱する。この場合、処理室内の温度を1000℃〜1700℃の範囲に設定するのがよい。1000℃より低い温度では、焼結磁石S表面に高速でDyを成膜できる蒸気圧まで達しない。他方、1700℃を超えた温度では、焼結磁石Sの成膜時間が短くなりすぎ均一に成膜できない虞がある。処理室2の温度は、1200℃〜1500℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1200℃〜1400℃の範囲である。これらの温度範囲では所望の膜厚を高速で形成することができる。
そして、例えば1300℃で10Paの蒸気圧を持つDy蒸気雰囲気を処理室2内に形成する。尚、10Paでは、処理室2内に対流が生じることから、後述するように、常温の焼結磁石Sを処理室内に搬入したときその全表面に亘って成膜される。
他方で、Dy蒸気雰囲気を処理室2内に形成する間、準備室3では、例えば焼結磁石S表面の酸化膜を除去するため、表面クリーニングの前処理が行われる。この場合、準備室3の圧力が所定値(例えば、10×10−1Pa)に達するまでガス導入手段32を介して、不活性ガス、例えばArを準備室3に導入し、高周波電源を作動させて準備室3内でプラズマを発生させてプラズマによる焼結磁石表面のクリーニングを行えばよい。クリーニングの前処理が終了したとき、焼結磁石は、室温〜200℃の温度となる。
次いで、処理室2内でのDy蒸気雰囲気の形成及び準備室3内での焼結磁石S表面のクリーニングが終了すると、一旦、処理室2との間で2桁以上の圧力差が生じるように、準備室3の圧力が所定値(例えば、1000Pa)に達するまでガス導入手段32を介して不活性ガス、例えばArを準備室3に導入する。準備室3の圧力が所定値に達すると、遮蔽手段5を開位置に移動させて処理室2及び準備室3を連通させる。この場合、処理室2と準備室3とに圧力差をつけているので、準備室3から処理室2にArが入り込んで処理室2の圧力が高くなることで、一旦蒸発が停止するが(加熱手段23の作動は停止しない)、処理室2内で蒸発させたDyが準備室3側に入り込むことが防止される。
次いで、真空排気手段31を介して処理室2及び準備室3の圧力が再度所定値(例えば、10×10−2Pa)に達するまで真空排気すると、Dyが再蒸発する。そして、搬送手段7の駆動手段71を作動させて焼結磁石Sを保持した保持手段6を処理室2内に搬送する。この場合、処理室2は、円板63の外周縁部に設けたメタルシールなどのシール材が天板41に形成した開口の周縁部に当接することで密閉される。
次いで、加熱されている処理室2が再度密閉されると、例えば1300℃で10PaのDy飽和蒸気雰囲気が処理室2内に形成され、この状態で所定時間保持する。この場合、処理室3内の温度より低い焼結磁石Sを高温の処理室2内に搬入しているため、処理室2内と焼結磁石Sとの間の温度差によって焼結磁石S表面に蒸気中のDyが選択的に付着して堆積する(成膜工程)。これにより、焼結磁石S表面にのみDyが高速で成膜される(図3(b)参照)。この際、支持台73の押圧部材74は、図示していない第3の加熱手段によって均熱板21と略同温に加熱されているので、押圧部材74に蒸気中のDyが付着することはない。
常温の焼結磁石Sを高温に加熱された処理室2内に搬入したとき、焼結磁石S自体も輻射熱により加熱されることから、飽和蒸気雰囲気が形成された処理室2内での保持時間は、焼結磁石Sが900℃になるまでの時間であって、焼結磁石Sの表面に必要量(「必要量」とは、結晶粒界相のみにDyが拡散して焼結磁石の磁気特性が向上する量である。)のDyが成膜されるまでの時間とする。焼結磁石Sが900℃を超える温度に達すると、Dyが焼結磁石Sのグレイン(主相である結晶粒)内に進入し、結局、永久磁石を得る際にDyを添加したものと同じなり、磁界強度、ひいては、磁気特性を示す最大エネルギー積:が大きく低下する虞がある。
ところで、焼結磁石Sが加熱されて熱膨張した場合、焼結磁石Sの熱膨張がキュリー温度(約300℃)以下でインバー合金的な異常を示し、焼結磁石Sの表面に付着堆積した膜の剥離が起こり易くなる。このため、保持時間は、焼結磁石Sの最高温度が250℃以下、または450℃以上になるまでの時間とすることが好ましい。250℃以下の温度では、熱膨張異常による歪が少なくなることで、焼結磁石Sの表面に成膜したDyの剥離が起こり難くなる。他方、450℃以上の温度では、焼結磁石Sの一部が溶けることで、焼結磁石Sと焼結磁石Sの表面に付着堆積したDyとの間の密着性が向上し、磁焼結石Sの表面に成膜したしたDyの剥離が起こり難くなる。
他方で、準備室3には、この準備室3の圧力が所定値(例えば、1000Pa)に達するまでガス導入手段32を介してArなどの不活性ガスが導入される。焼結磁石Sが処理室2内に搬送されてから所定時間が経過すると、駆動手段71によって、支持台73を処理室2内の上昇位置から準備室3内の下降位置に移動させ、遮蔽手段5を開位置から閉位置に移動させる。この際、遮蔽手段5の弁本体51は図示していない第2の加熱手段によって均熱板21と略同温に加熱されているので、弁本体51に蒸気中のDyが付着することはない。また、準備室3から処理室2にArが入り込むことで蒸発が停止する。そして、このAr雰囲気中でDyが成膜された焼結磁石を冷却する。
次いで、真空排気手段31を介して処理室2と隔絶された準備室3の圧力が所定値(10×10−3Pa)に到達するまで真空排気し、準備室3に設けた加熱手段を作動して、所定温度(例えば、850℃〜950℃)下で所定時間だけDyが成膜された焼結磁石Sに対し熱処理を施す(拡散工程)。この場合、準備室3内での熱処理に引き続き、その熱処理より低い所定温度(例えば、500℃〜600℃)下で所定時間(例えば、30分)だけ永久磁石の歪を除去する熱処理を施すことが好ましい(アニール工程)。最後に、所定時間冷却した後、側壁30のゲートバルブを開けて保持手段6を取り出す。
これにより、焼結磁石Sの表面全体に亘ってDyを成膜し、熱処理を施して、表面に成膜されたDyを磁石の結晶粒界相に拡散させて均一に行き渡らせた永久磁石Mが得られる。この場合、磁石の表面にDyを所定膜厚で高速に成膜できることで生産性がさらに向上し、DyやTbの収率が高くできることからさらなる低コスト化が可能になる。
Coを含有しない鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石として、組成が27Nd−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Feのものを用いた。この場合、Fe、B、Nd、Gu、Ga、Zrを上記組成比で配合して、公知のストリップキャスト法により0.05mm〜0.5mmの合金を作製し、公知の水素粉砕工程により一旦粉砕し、引き続き、ジェットミル微粉砕工程により微粉砕する。次いで、磁界配向して金型で所定形状に成形した後、所定の条件過下で焼結させ、3×20×40mmの直方体形状に加工した。そして、焼成磁石Sの表面を20μm以下の表面荒さを有するように仕上加工した後、アセトンを用いて洗浄した。
次に、上記成膜装置1を用いて焼成磁石S表面にDyを成膜した。純度99.9%のDyを用い、Dyをるつぼ13aに配置すると共に、基板ホルダ14に、100個の焼結磁石Sを、表面積が最も大きい一面がるつぼ13aに対向するように配置した。
次いで、真空チャンバ12内の圧力を一旦10×10−6Paまで真空排気した後、蒸発源13を作動させて1100〜1500℃の温度で加熱し、10×10−4の圧力下で10分間蒸着処理し、焼結磁石表面に平均5μmの膜厚のDy膜を得た。成膜後の焼結磁石Sの温度は約500℃であった。次いで、一旦、真空チャンバ12を大気開放して焼結磁石を取出し、再度、表面積が最も大きい他面がるつぼ13aに対向するように配置し、上記と同条件で成膜し、焼結磁石の全表面積の少なくとも80%にDyの薄膜を形成した。
次いで、表面積が最も大きい二面にDyが成膜された焼結磁石を熱処理装置に配置し、拡散工程を実施した。拡散工程の条件として、真空チャンバ内の圧力を1×10−3Paに設定し、900℃の温度で、高い磁気特性が得られるように最適拡散処理時間熱処理し、引き続き、アニール処理として、675℃の温度で2時間熱処理し、永久磁石を得た。
(比較例)
(比較例)
比較例2a乃至比較例2cでは、Co含有の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石として、組成が27Nd−1Co−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Fe(比較例1a)、27Nd−4Co−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Fe(比較例1b)、27Nd−8Co−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Fe(比較例1c)の各焼結磁石を用いた。この場合、Fe、B、Nd、Co、Gu、Ga、Zrを上記組成比で配合して、公知のストリップキャスト法により0.05mm〜0.5mmの合金を作製し、公知の水素粉砕工程により一旦粉砕し、引き続き、ジェットミル微粉砕工程により微粉砕する。次いで、磁界配向して金型で所定形状に成形した後、所定の条件過下で焼結させ、3×20×40mmの直方体形状に加工した。そして、焼成磁石Sの表面を20μm以下の表面荒さを有するように仕上加工した後、アセトンを用いて洗浄した。
次いで、実施例1と同条件でDyを成膜した後、実施例1と同条件で熱処理し、その際、最適拡散処理時間として、6時間、12時間、24時間に設定して比較例1a乃至1cの永久磁石を得た。
図5は、実施例1及び比較例1a乃至比較例1cで得た永久磁石の磁気特性の平均値及び耐食性の評価を示す表である。尚、比較例1dは、実施例1において得た焼結磁石の磁気特性の平均値及び耐食性の評価であり、また、耐食性を示す試験として、100時間の飽和蒸気加圧試験(PCT:プレッシャークッカーテスト)を行った。
これによれば、比較例1a乃至比較例1cの永久磁石では、Coを含有することから、上記試験を行っても錆びの発生が視認できず、高い耐食性を有するものの、拡散工程として短時間の熱処理では、高い保磁力を有する永久磁石が得られず、24時間に亘って拡散工程としての熱処理を行っても、保磁力が平均27KOeであった。尚、Coを含有しない焼結磁石は、上記試験を2時間行っただけで錆びの発生が視認された。
それに対し、実施例1の永久磁石では、Coを含有しないにも関わらず、上記試験を行っても錆びの発生が視認できず、高い耐食性を有し、その上、0.5時間という短時間だけ拡散工程としての熱処理を行っただけで、平均30KOeの高い保磁力を有する永久磁石が得られ、これにより、拡散工程としての熱処理を短時間で実施できたことが判る。
Coを含有しない鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石として、組成が27Nd−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Feのものを用い、上記実施例1と同様の方法で、1×20×40mmの直方体形状のものを得た。そして、焼成磁石Sの表面を20μm以下の表面荒さを有するように仕上加工した後、アセトンを用いて洗浄した。
次に、上記成膜装置10を用いて焼成磁石S表面に金属蒸発材料を成膜した。金属蒸発材料をとして、組成が99.9のDyを用い、受け皿24に配置すると共に、上記焼結磁石を100個準備し、各載置台62上に、各焼結磁石Sを半径方向線に沿って相互に対向させて配置した。
また、Dyの成膜に先立って、準備室3にArを導入して、圧力を10×10−1Pa、高周波電圧を800Vに設定して、60秒間プラズマ処理による焼結磁石表面のクリーニングを行った。この場合、クリーニング後の焼成磁石の温度は60℃であった。
他方、遮蔽手段5の閉位置で処理室2を密閉し、処理室2内を1300℃に加熱し、Dy蒸発材料を蒸発させて処理室2をDy蒸気で満たすこととした。また、Dy蒸気雰囲気内に焼成磁石Sを搬入する際の処理室2及び準備室3の圧力を10×10−2Paに設定し、また、焼成磁石Sを処理室2に搬送した後の保持時間を5分に設定し、平均50μmの膜厚のDy膜が蒸着されるようにした(成膜工程)。さらに、準備室3内での熱処理の条件として、準備室3の圧力を10×10−3Paに設定し、700℃の温度で、所定の磁気特性が得られるように最適拡散時間で熱処理し(拡散工程)、引き続き、675℃の温度で2時間、歪除去のためアニール処理を実施した。
(比較例)
(比較例)
比較例2a乃至比較例2cでは、実施例1と同様、Co含有の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石として、組成が27Nd−1Co−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Fe(比較例2a)、27Nd−4Co−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Fe(比較例2b)、27Nd−8Co−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.1Zr−bal.Fe(比較例2c)の各焼結磁石を用い、上記実施例1と同条件で、Dyを成膜し、それぞれの最適拡散時間で熱拡散処理して永久磁石を得た。
図6は、実施例2及び比較例2a乃至比較例2cで得た永久磁石の磁気特性の平均値及び耐食性の評価を示す表である。尚、比較例2dは、実施例2において得た焼結磁石の磁気特性の平均値及び耐食性の評価であり、また、耐食性を示す試験として、100時間の飽和蒸気加圧試験(PCT:プレッシャークッカーテスト)を行った。
これによれば、比較例2a乃至比較例2cの永久磁石では、Coを含有することから、上記試験を行っても錆びの発生が視認できず、高い耐食性を有するものの、最高値の保磁力を得るのに、拡散工程として最低6時間の熱処理が必要であり、保磁力の平均値も28KOeであった。
それに対し、実施例2の永久磁石では、Coを含有しないにも関わらず、上記試験を行っても錆びの発生が視認できず、高い耐食性を有し、その上、0.5時間という短時間拡散処理を行っただけで、平均30KOeの高い保磁力を有する永久磁石が得られ、これにより、拡散工程としての熱処理を短時間で実施できたことが判る。
1 成膜装置
12 真空チャンバ
13 蒸発源
14 ホルダ
S 焼結磁石
M 永久磁石
12 真空チャンバ
13 蒸発源
14 ホルダ
S 焼結磁石
M 永久磁石
Claims (5)
- Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を用い、この焼結磁石の表面の少なくとも一部に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜する成膜工程と、所定温度下で熱処理を施して焼結磁石の表面に成膜したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させる拡散工程とを含むことを特徴とする永久磁石の製造方法。
- 前記成膜工程は、処理室を加熱し、この処理室内に予め配置したDy、Tbの少なくとも一方を蒸発させて金属蒸気雰囲気を処理室内に形成する第一工程と、処理室内の温度より低く保持した前記焼結磁石をこの処理室に搬入し、処理室内と焼結磁石との間の温度差によって焼結磁石の表面にDy、Tbの少なくとも一方を選択的に付着堆積させる第二工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の永久磁石の製造方法。
- Coを含有しない所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を有し、この焼結磁石の表面の少なくとも一部に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜した後、熱処理を施して、焼結磁石の表面に成膜したDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させてなることを特徴とする永久磁石。
- 前記表面、結晶粒界に、Dy、Tbの少なくとも一方を含有するリッチ相を有することを特徴とする請求項3記載の永久磁石。
- 前記表面が前記リッチ相で覆われ、結晶粒界に、前記リッチ相を1〜50%の範囲で含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載の永久磁石。
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