JP2007297731A - 難燃性モノフィラメントおよびケーブル保護スリーブ - Google Patents
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Abstract
【課題】これまでにない優れた難燃特性を発揮するとともに、ケーブル保護スリーブ用途として十分な物理特性を兼ね備えた難燃性モノフィラメントおよびこの難燃性モノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブの提供。
【解決手段】シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含有する熱可塑性樹脂組成物を紡糸してなるモノフィラメントであり、前記シリコーン系化合物は、R3SiO0.5、R2SiO1.0、RSiO1.5およびSiO2.0で示される単位(Rは有機基)のうち少なくともRSiO1.5で示される単位が含まれた構造を有することを特徴とする難燃性モノフィラメント。
【選択図】なし
【解決手段】シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含有する熱可塑性樹脂組成物を紡糸してなるモノフィラメントであり、前記シリコーン系化合物は、R3SiO0.5、R2SiO1.0、RSiO1.5およびSiO2.0で示される単位(Rは有機基)のうち少なくともRSiO1.5で示される単位が含まれた構造を有することを特徴とする難燃性モノフィラメント。
【選択図】なし
Description
本発明は、新規な難燃特性を有する難燃性モノフィラメントおよびこの難燃性モノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブに関するものである。さらに詳しくは、高い難燃性を有し、且つケーブル保護スリーブとして十分な物理特性を兼ね備えた難燃性モノフィラメントおよびケーブル保護スリーブに関するものである。
ポリエステル、ポリアミドおよびポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントは、力学特性、加工性および価格等が汎用的であるため、工業用織物や電材用途などに多く使用されている。また、近年では、ポリ乳酸が非石油系ポリエステル樹脂として上市され始めており、これらの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントの有用性は益々高まっている。
また、モノフィラメントは様々な用途分野に利用されるようになり、それに伴ってそれぞれの用途分野に適した特性が求められるようになった。
このようなモノフィラメントの用途分野の一つとして、例えば、モノフィラメントを使用してチューブ状に製紐し、電源ケーブルや信号伝達ケーブルなどを外部からの衝撃や応力等から保護するためのケーブル保護スリーブが知られている。
このケーブル保護スリーブは、主に車両、家電製品、航空機等に使用されており、従来からポリエステル樹脂製モノフィラメント、ポリアミド樹脂製モノフィラメント、およびポリオレフィン樹脂製モノフィラメントなどが素材として使われてきた。
しかし、最近のケーブル保護スリーブは、高電圧、高温環境下で使用されることが多く、例えば自動車部品等に使用する場合には、エンジンルーム内などの高温環境下に曝されやすく、さらに最近大幅に普及が進んでいるハイブリッドカーの部品等に使用する場合には、従来の自動車よりも高電圧環境下で使用されるため、使用するケーブル保護スリーブを構成するモノフィラメントには、火災予防の点から高い難燃性が必要不可欠となってきている。
これに対して、耐熱性や耐薬品性に優れるポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと称す)モノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブが知られているが、このケーブル保護スリーブは耐久性に優れてはいるものの、柔軟性に欠けるため、ケーブルの配線作業性やケーブル保護スリーブを装着する際のケーブルの通線性が悪いといった問題があった。
また、ケーブル保護スリーブの柔軟性改善策として、PPSマルチフィラメントを使用したケーブル保護スリーブがあるが、この場合には逆に単糸直径が細いことに起因して、擦過による摩擦や摩耗に対する耐久性が低下するという問題があり、耐久性改善のために接着剤やゴムなどの表面処理剤を施したとても、今度は大幅なコストアップに繋がるといった問題をさらに引き起こしていた。
さらに、熱可塑性樹脂からなる易燃焼性繊維を難燃化する手法としては、含塩素系難燃剤、含臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤、またはハロゲン系難燃剤とアンチモン系難燃剤を含有した繊維および繊維構造物が数多く提案されている。
しかし、これらの繊維および繊維構造物は、難燃性に優れてはいるものの、ハロゲン系難燃剤が燃焼するとハロゲン化ガスを発生するため、安全性に問題を抱えていた。
さらにまた、リン系難燃剤を含有する繊維または繊維構造物が数多く提案されている。このリン系難燃剤は、ハロゲン元素やアンチモン元素を含まないため、燃焼時にハロゲン化ガスの発生がないなどの利点があるが、その場合に得られる難燃性は、ハロゲン系、アンチモン系難燃剤よりも低く、十分な難燃性能が期待できなかった。
こうした問題を解決するさらなる手法として、シリコーンオイルまたはシリコーン系化合物を使用した繊維または繊維構造物が知られており、例えば、シリコーンオイルを4重量%以下含有し、燃焼時に溶融滴下しないようにしたポリエステル樹脂繊維(例えば、特許文献1参照)、官能基をポリエステル樹脂組成物中に0.3〜50モル/t有するシリコーンオイルとある特定の有機リン化合物をリン含量として0.1〜3.0重量%含有するポリエステル樹脂組成物を使用することにより、ドリップ性および難燃性を改善した繊維(例えば、特許文献2参照)、シリコーン系化合物を含有し、シリコーン系化合物の平均分散径が0.1〜100nmとすることにより、ドリップ性および難燃性を改善したポリエステル系繊維構造物(例えば、特許文献3参照)が具体的に挙げられる。
しかし、シリコーンオイルまたはシリコーン系化合物を使用したこれらの繊維および繊維構造体は、いずれも難燃性能が期待するほどには発揮せず、また得られる繊維も十分な物理特性を兼ね備えていないため、ケーブル保護スリーブのような難燃性と強度や摩耗性などの高い物理特性とが要求される用途には、十分適応できるものではなかった。
特開平8−209446号公報(請求項1)
特開平9−268423号公報(請求項1)
特開2005−97819号公報(請求項1)
本発明の目的は、これまでにない優れた難燃特性を発揮するとともに、ケーブル保護スリーブ用途として十分な物理特性を兼ね備えた難燃性モノフィラメントおよびこの難燃性モノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含有する熱可塑性樹脂組成物を紡糸してなるモノフィラメントであり、前記シリコーン系化合物は、R3SiO0.5、R2SiO1.0、RSiO1.5およびSiO2.0(Rは有機基)のうち少なくともRSiO1.5で示される単位が含まれた構造を有することを特徴とする難燃性モノフィラメントが提供される。
なお、本発明の難燃性モノフィラメントにおいては、
前記シリコーン系化合物の有機基がフェニル基を含み、且つフェニル基の含有量がシリコーン系化合物を構成する全有機基に対してモル比で30%以上であること、
前記イミド構造を有する化合物のガラス転移温度が130〜300℃であること、
前記イミド構造を有する化合物がポリエーテルイミドであること、
前記シリコーン系化合物中のシラノール基が、シリコーン系化合物に対して重量比で2〜10重量%含有されていること、および
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリオレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種であり、且つこの熱可塑性樹脂が前記熱可塑性樹脂組成物中に50重量%以上含有されていること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
前記シリコーン系化合物の有機基がフェニル基を含み、且つフェニル基の含有量がシリコーン系化合物を構成する全有機基に対してモル比で30%以上であること、
前記イミド構造を有する化合物のガラス転移温度が130〜300℃であること、
前記イミド構造を有する化合物がポリエーテルイミドであること、
前記シリコーン系化合物中のシラノール基が、シリコーン系化合物に対して重量比で2〜10重量%含有されていること、および
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリオレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種であり、且つこの熱可塑性樹脂が前記熱可塑性樹脂組成物中に50重量%以上含有されていること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明のケーブル保護スリーブは、上記難燃性モノフィラメントを少なくとも一部に使用したことを特徴とし、さらにそのケーブル保護スリーブは、複数本の繊維を引き揃えて製紐してなり、前記複数本の繊維の中の少なくとも一部に上記難燃性モノフィラメントを使用したことを特徴とする。
本発明によれば、従来の難燃性繊維に比べて高い難燃性を有し、且つ強度や耐摩耗性などの物理特性に優れた難燃性モノフィラメントを取得することができるため、この難燃性モノフィラメントをケーブル保護スリーブに使用した場合には、難燃性と耐久性の高いケーブル保護スリーブが得られる。
以下、本発明の難燃性モノフィラメント(以下、単にモノフィラメントと称す)およびケーブル保護スリーブを具体的に説明する。
本発明のモノフィラメントは、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含有する熱可塑性樹脂組成物を紡糸してなり、前記シリコーン系化合物は、R3SiO0.5、R2SiO1.0、RSiO1.5およびSiO2.0で示される単位(Rは有機基)のうち少なくともRSiO1.5で示される単位が含まれた構造を有することを特徴とするものである。
ここで、シリコーン系化合物は、一般に1官能性のR3SiO0.5(M単位とも言う)、2官能性のR2SiO1.0(D単位とも言う)、3官能性のRSiO1.5(T単位とも言う)、4官能性のSiO2.0(Q単位とも言う)で示される単位のうち少なくとも一種から構成された構造を有しているが、本発明のモノフィラメントに使用するシリコーン系化合物は、これら各単位のうち少なくともRSiO1.5(T単位)で示される単位が含まれた構造を有することが必要である。
これは、RSiO1.5(T単位)で示される単位を含む構造のシリコーン系化合物を使用することにより難燃性の高いモノフィラメントが得られるからであり、RSiO1.5(T単位)で示される単位が含まれず、他の単位からのみ構成された構造を有するシリコーン系化合物を使用した場合は、難燃性に欠けたモノフィラメントが得られやすくからである。
そして、本発明のモノフィラメントに使用するシリコーン系化合物は、上述の通り、RSiO1.5(T単位)で示される単位を含んでいれば、その他の単位を適宜含んでいても問題はないが、より優れた難燃性を取得することができるとの理由から、シリコーン系化合物中のRSiO1.5(T単位)で示される単位の含有量は、シリコーン系化合物全体に対して、モル比で20%以上が好ましく、さらには50%以上がより好ましい。
また、得られるモノフィラメントの強度や耐摩耗性などの物理特性を低下させることなく難燃性を付与できるとの理由から、本発明のモノフィラメントの使用するシリコーン系化合物には有機基にフェニル基を含み、且つフェニル基の含有量がシリコーン系化合物を構成する全有機基に対してモル比で30%以上、さらには60%以上であることが好ましい。
さらに、本発明のモノフィラメントの使用するシリコーン系化合物は、シリコーン系化合物中のシラノール基が、シリコーン系化合物に対して重量比で2〜10重量%含有されていることが好ましく、さらには3〜8重量%含有されていることがより好ましい。
この理由は、シラノール基の含有量が上記範囲を満たしていると、モノフィラメントの分子構造上、架橋構造を形成しやすくなり、さらに難燃性の高いモノフィラメントが得られやすくなるからである。
さらにまた、本発明のモノフィラメントに使用するシリコーン系化合物は、モノフィラメントを溶融紡糸する際の操作性に優れるとともに、他の構成成分と混ざりやすく、モノフィラメント中に分散しやすいことから、その重量平均分子量は500〜300000であることが好ましく、さらには1000〜100000、より好ましくは3000〜50000である。
一方、本発明のモノフィラメントを構成するイミド構造を有する化合物とは、分子構造中に−CO−NR’−CO−(R’は有機基)の構造を有する化合物のことである。
イミド構造を有する化合物としては、熱可塑性を有するものフィラメントに加工する点から好ましい。ガラス転移温度が130℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上250℃以下であることがより好ましい。
イミド構造を有する化合物として、具体的にはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
このイミド構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
上記式中のArは6〜42個の炭素原子を有する芳香族基であり、R’は6〜30個の炭素原子を有する芳香族基、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族基、および4〜30個の炭素原子を有する脂環族基からなる群より選択された2価の有機基である。
上記一般式において、Arとしては、例えば、
を挙げることができる。R’としては、例えば、
(式中、nは2〜30である)
を挙げることができる。
を挙げることができる。
これらは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、1種あるいは2種以上一緒にポリマー鎖中に存在してもよい。
イミド構造を有する化合物は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂との溶融成形性や取り扱い性などの点から、好ましい例として、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドを挙げることができる。
ただし、上記式中R1は、2〜30個の炭素原子を有する芳香族基、脂肪族基、および脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、R2は、前記R’と同様の2価の有機基である。
上記R1、R2の好ましい例としては、下記式群に示される芳香族基
を挙げることができる。
熱可塑性樹脂(A)との相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
この構造単位を有するポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。例えば、m−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(前者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム(登録商標)1010”および“ウルテム(登録商標)1040”が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(後者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム(登録商標)CRS5000”が挙げられる。
また、イミド構造を有する化合物の他の好ましい例として、熱可塑性樹脂との溶融成形性や取り扱い性などの点から、前記一般式中のArが、
から選ばれたものであり、R’が、
から選ばれたものであるポリマーを挙げることができる。
このポリイミドは、公知の方法によって製造することができる。例えば、上記Arを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸および/またはその酸無水物と、上記R’を誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミンおよび/または芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物とを脱水縮合することにより得られる。具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミドなどの化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記R’を誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法なども例示することができる。
イミド構造を有する化合物とシリコーン系化合物とを併用することにより、燃焼時にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物と母材である熱可塑性樹脂とが効率よく炭化層を形成することが可能であり、シリコーン系化合物またはイミド構造を有する化合物をそれぞれ単独で添加した場合に比べてきわめて高いドリップ抑制の効果や難燃性を有するモノフィラメントを得ることができる。なお、ここで本発明のモノフィラメントに使用するシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物との組成比は、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物との併用効果が得られやすいとの理由から、シリコーン系化合物が5〜95重量%に対してイミド構造を有する化合物は95〜5重量%であることが好ましく、さらにはシリコーン系化合物が10〜90重量%に対してイミド構造を有する化合物は90〜10重量%であることがより好ましい。
次に、本発明のモノフィラメントを構成する熱可塑性樹脂は、溶融紡糸してモノフィラメントに加工できるものであれば特に限定はされず、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸などのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどの弗素系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイドなどの各種熱可塑性樹脂を使用することができるが、ケーブル保護スリーブ用途としては、特にポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリオレフィン樹脂の使用が好適であり、これらの熱可塑性樹脂を2種類以上適宜組み合わせて使用することも可能である。
そして、本発明のモノフィラメントの各構成成分の比率は、難燃性の観点から、熱可塑性樹脂40〜94重量%に対して、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物との合計が60〜4重量%であることが好ましく、さらには熱可塑性樹脂70〜90重量%に対して、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物との合計が30〜10重量%であることがより好ましい。
この理由は、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物の含有量が少ない場合は、難燃性に欠けたモノフィラメントが得られやすく、逆にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物の含有量が多い場合は、ケーブル保護スリーブ用途として、十分な強度を持ったモノフィラメントが得られにくくなるからである。
次に、本発明のモノフィラメントの製造方法について説明する。
本発明のモノフィラメントに使用するシリコーン系化合物の製造方法は、何ら特殊な方法を必要とせず、一般的な重縮合方法によって製造することができる。
例えば、R3SiOCl(トリオルガノクロロシラン)、R2SiOCl2(ジオルガノジクロロシラン)、RSiOCl3(モノオルガノトリクロロシラン)、SiOCl4(テトラクロロシラン)をモノマーとして使用する場合には、これら各種モノマーを酸もしくはアルカリの触媒下で重縮合することによりシリコーン系化合物を製造することができる。
例えば、R3SiOCl(トリオルガノクロロシラン)、R2SiOCl2(ジオルガノジクロロシラン)、RSiOCl3(モノオルガノトリクロロシラン)、SiOCl4(テトラクロロシラン)をモノマーとして使用する場合には、これら各種モノマーを酸もしくはアルカリの触媒下で重縮合することによりシリコーン系化合物を製造することができる。
また、有機基Rにフェニル基を含むシリコーン系化合物は、有機基Rをフェニル基に置換することにより容易に製造することができる。
さらに、シラノール基の含有量は製造時の反応時間によって制御することが可能であり、
さらに、シラノール基の含有量は製造時の反応時間によって制御することが可能であり、
この他にもR3SiOClやR3SiOHを封鎖剤として使用し、シラノール基と反応させることによってシラノール基の含有量を制御することも可能である。
さらにまた、シリコーン系化合物の重量平均分子量についても製造時の反応時間によって制御することが可能である。
なお、シラノール基の含有量は29Si−NMRにおいてシラノール基を含有しない構造由来のSiO2.0、RSiO1.5、R2SiO1.0、R3SiO0.5のピークの面積(積分値)とシラノール基を含有する構造由来のSi(OH)4、SiO0.5(OH)3、SiO1.0(OH)2、SiO1.5(OH)、RSi(OH)3、RSiO0.5(OH)2、RSiO1.0(OH)、R2Si(OH)2、R2SiO0.5(OH)、R3Si(OH)のピークの面積(積分値)の比からシラノール基量を算出することが可能である。
また、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリスチレン換算でもとめることが可能である。
一方、本発明のモノフィラメントに使用するイミド構造を有する化合物の製造方法についても、何ら特殊な方法を必要とせず、一般に知られている2官能カルボン酸無水物と第一級ジアミンとの重縮合反応により製造することができ、例えば、ポリエーテルイミドについては、ビスフェノールとジニトロビスイミドとを重縮合することにより容易に製造することができる。
本発明のモノフィラメントを製造するに際しては、何ら特殊な方法を必要とせず、公知の溶融紡糸方法で製造することができる。
例えば、エクストルーダー型溶融紡糸機を使用して製造する場合は、まず溶融紡糸機に熱可塑性樹脂、シリコーン化合物およびイミド構造を有する化合物を上述の配合比で供給し、溶融紡糸機内でこれらを溶融混練せしめた樹脂組成物をノズルから押出し、冷却固化して未延伸糸を得る。
ここで、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物の添加方法としては、上述のように熱可塑性樹脂、シリコーン系化合物およびイミド構造を有する化合物をそれぞれブレンドし、この混合物を溶融紡糸機に供給してモノフィラメントに形成する方法の他に、熱可塑性樹脂の重合時にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を添加し、得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化したものを溶融紡糸機に供給してモノフィラメントに形成する方法が挙げられる。
そして、得られた未延伸糸を所望の温度と倍率で延伸し、さらに必要に応じて熱セットすることにより本発明のモノフィラメントが得られる。
なお、本発明のモノフィラメントは、1本の単糸からなる連続糸であり、その断面形状については、丸、三角、四角、多角形および中空形などのいかなるものであってもよい。
また、本発明のモノフィラメントの直径は、その用途に応じて適宜選択できるが、ケーブル保護用スリーブ用途としては、通常0.05mm〜1.00mmの範囲のものが最もよく使用される。
さらに、本発明のモノフィラメントの構成成分である熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であり、且つこのモノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブが自動車用部品などの高温多湿に曝されやすい環境下で使用される場合は、ポリエステル系樹脂の加水分解を抑制する目的で、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物などを、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することもでき、特に未反応のカルボジイミド化合物を添加すると、極めて高い耐加水分解性が得られる。
さらにまた、本発明のモノフィラメントには、撥水性、親水性、制電性、消臭性、抗菌性、深色性などの機能を付与することを目的に、浴中加工、吸尽加工、コーティング加工、Pad−dry加工、Pad−steam加工などの後加工を施すことも可能である。
こうして得られたモノフィラメントは、ケーブル保護スリーブの少なくとも一部に使用されるが、特にケーブル保護スリーブの全てに本発明のモノフィラメントを使用した場合は、極めて優れた難燃性と耐久性を兼ね備えたケーブル保護スリーブが得られる。
また、本発明のケーブル保護スリーブは、公知の方法により製造することができるが、本発明のモノフィラメントを少なくとも一部に使用し、製紐してなるケーブル保護スリーブは耐久性に優れた構造となるため、特に好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明のモノフィラメントおよびケーブル保護スリーブを具体的に説明する。
まず、実施例および比較例におけるシリコーン系化合物の調製を下記の通り行い、15種類のシリコーン系化合物を調整した。その15種類の内容を表1に示す。
<M、D、T、Q単位の割合の調製>
R3SiOCl(M単位に相当)、R2SiOCl2(D単位に相当)、RSiOCl3(T単位に相当)、SiOCl4(Q単位に相当)を表1に示すモル比で重縮合し、各種シリコーン系化合物を製造した。
R3SiOCl(M単位に相当)、R2SiOCl2(D単位に相当)、RSiOCl3(T単位に相当)、SiOCl4(Q単位に相当)を表1に示すモル比で重縮合し、各種シリコーン系化合物を製造した。
<フェニル基、メチル基の割合>
シリコーン系化合物の有機基Rをフェニル基またはメチル基で置換し、表1に示すようなシリコーン系化合物を調製した。
シリコーン系化合物の有機基Rをフェニル基またはメチル基で置換し、表1に示すようなシリコーン系化合物を調製した。
<シラノール基の含有量>
シリコーン系化合物を重縮合する際の反応時間をそれぞれ調整し、シラノール基の含有量が異なるシリコーン系化合物を表1に示すように製造した。
シリコーン系化合物を重縮合する際の反応時間をそれぞれ調整し、シラノール基の含有量が異なるシリコーン系化合物を表1に示すように製造した。
なお、シラノール基の含有量が0重量%となるシリコーン系化合物は、シラノール基の封鎖剤としてR3SiOClを過剰に添加して製造した。
<シラノール基の含有量>
赤外分光分析法により測定した。
赤外分光分析法により測定した。
<分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定した。
一方、実施例および比較例で使用したイミド構造を有する化合物は、ポリエーテルイミド(GE Plastics社製、ULTEM1010、ガラス転移温度(Tg):210℃)を使用した。
また、各実施例における燃焼評価および各物性測定については以下の通り行った。
<酸素指数(LOI)の測定>
10cmにカットしたモノフィラメントを質量が1gになるように引き揃えて、この束を試験片とした。そしてこの試験片を使用して、JIS K7201に準じて酸素指数を求めた。この酸素指数が高いほど、難燃性が高いことを示す。
10cmにカットしたモノフィラメントを質量が1gになるように引き揃えて、この束を試験片とした。そしてこの試験片を使用して、JIS K7201に準じて酸素指数を求めた。この酸素指数が高いほど、難燃性が高いことを示す。
<直径(mm)>
10本のモノフィラメントを用意し、MITUTOYO製デジタルマイクロメーターを使用して各モノフィラメントの長径と短径を1点ずつ測定し、その平均値を直径とした。
10本のモノフィラメントを用意し、MITUTOYO製デジタルマイクロメーターを使用して各モノフィラメントの長径と短径を1点ずつ測定し、その平均値を直径とした。
<引張強伸度>
JIS L1013−1999の8.5および8.7に準じて引張強力および伸度を測定した。そして、測定した引張強力(cN)をモノフィラメントの繊度(dtex)で割り返し、その値を引張強度(cN/dtex)とした。
JIS L1013−1999の8.5および8.7に準じて引張強力および伸度を測定した。そして、測定した引張強力(cN)をモノフィラメントの繊度(dtex)で割り返し、その値を引張強度(cN/dtex)とした。
[実施例1〜13、比較例1〜4]
固有粘度(IV)が0.70のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)と製造した各種シリコーン系化合物およびポリエーテルイミド(以下、PEIと称す)を表2に示すような割合でエクストルーダー型の溶融紡糸機に供給し、280℃の温度で溶融混練した後、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を紡糸口金から押し出し、直ちに70℃の温水浴中に導いて冷却固化し、未延伸糸を得た。
固有粘度(IV)が0.70のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)と製造した各種シリコーン系化合物およびポリエーテルイミド(以下、PEIと称す)を表2に示すような割合でエクストルーダー型の溶融紡糸機に供給し、280℃の温度で溶融混練した後、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を紡糸口金から押し出し、直ちに70℃の温水浴中に導いて冷却固化し、未延伸糸を得た。
引き続き、この未延伸糸を93℃の温水中で3.6倍に延伸し、さらに120℃の熱風雰囲気下で1.39倍に延伸してトータル5.0倍の延伸行った。
その後、230℃の熱風雰囲気下で0.90倍にて熱セットを行い、直径0.25mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
得られたポリエステルモノフィラメントの各物性およびケーブル保護スリーブの評価結果を表2に併せて記載する。
表2の結果から明らかなように、本発明の条件を満たしたモノフィラメントは、難燃性を有し、且つ引張強度が高いため、このモノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブは、難燃性に優れ、耐久性が高いなど優れた効果を有することができる。
これに対して、本発明の条件を満たさないモノフィラメントは、実施例で得られたモノフィラメントに比べて、難燃性および引張強度に欠けているため、このモノフィラメントを使用したケーブル保護スリーブは、難燃性および耐久性が低く、実用性に欠けたものとなる。
特に、シリコーン系化合物およびPEIの両方を含有しているものの、シリコーン系化合物内にRSiO1.5で示される単位が含まれていないと(比較例4)、難燃性効果が向上しないことが表2の結果から分かる。
従来の難燃性繊維に比べて高い難燃性を有し、且つ強度や耐摩耗性などの物理特性に優れたモノフィラメントを取得することができるため、このモノフィラメントを、信号伝達用ケーブル保護スリーブや各種車両用ケーブル保護スリーブなどのケーブル保護スリーブに使用した場合には、難燃性と耐久性の高いケーブル保護スリーブが得られる。
Claims (8)
- シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含有する熱可塑性樹脂組成物を紡糸してなるモノフィラメントであり、前記シリコーン系化合物は、R3SiO0.5、R2SiO1.0、RSiO1.5およびSiO2.0(Rは有機基)のうち少なくともRSiO1.5で示される単位が含まれた構造を有することを特徴とする難燃性モノフィラメント。
- 前記シリコーン系化合物の有機基がフェニル基を含み、且つフェニル基の含有量がシリコーン系化合物を構成する全有機基に対してモル比で30%以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性モノフィラメント。
- 前記イミド構造を有する化合物のガラス転移温度が130〜300℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性モノフィラメント。
- 前記イミド構造を有する化合物がポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性モノフィラメント。
- 前記シリコーン系化合物中のシラノール基が、シリコーン系化合物に対して重量比で2〜10重量%含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性モノフィラメント。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリオレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種であり、且つこの熱可塑性樹脂が前記熱可塑性樹脂組成物中に50重量%以上含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性モノフィラメント。
- 請求項1〜6項のいずれか1項に記載の難燃性モノフィラメントを少なくとも一部に使用したことを特徴とするケーブル保護スリーブ
- 複数本の繊維を引き揃えて製紐したケーブル保護スリーブであって、前記複数本の繊維の中の少なくとも一部に請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性モノフィラメントを使用したことを特徴とする請求項7に記載のケーブル保護スリーブ。
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