JP2007296411A - アスベストの処理方法、アスベスト由来のリサイクル材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アスベストを緩和な条件で無害化するアスベストの処理方法を提供する。
【解決手段】アスベスト含有材料に含まれるアスベストとアルカリ金属以外の金属を水熱反応系に供給可能な金属源とを接触させて水熱反応を実施する水熱反応工程を実施することにより、アスベスト含有材料を処理する。
【選択図】なし

Description

本発明は、アスベストの処理方法、アスベスト由来のリサイクル材料及びその製造方法に関する。
アスベストは、繊維状のケイ酸塩鉱物を解繊したものであって、柔軟性、耐熱性であるとともに化学的に不活性であるため、保温や耐火材料として多用されていたが、吸引によりある種のガンなどを引き起こすことがあるため、建築物において使用が禁止されている。また、近年、生活環境等に飛散可能に露出された状態で存在するアスベストの除去・回収が促進されている。回収されたアスベストはその飛散を防止するために、袋詰めの後、埋立てないし溶融固化が行われているが、埋立て処分は用地的に制限があり、溶融固化は1000℃以上の高温が必要なためコスト的に困難であった。
そこで、アスベストの処理方法が検討されている。例えば、アスベスト廃棄物をセメント中に混合して繊維強化セメントとして使用する方法(特許文献1)や、アーク溶融や熱プラズマで溶融固化するかガラス成分を添加して溶融固化してガラス化する方法(特許文献2,3)が検討されている。さらに、フロン分解物と混合して低温で加熱することで無害化することも試みられている(特許文献4)。
特開2000−271561号 特開平8−84969号 特開2005−279589号 特開2005−168632号
しかしながら、上記特許文献1はアスベストの処理を先送りしたに過ぎず、特許文献2〜4の方法は、アスベストを無害化することができるものの、特許文献2及び3では、1000℃程度必要であり、特許文献4の方法でも600℃程度の高温が必要であった。したがって、現在までのところ、より低温で、例えば400℃以下の低温でアスベストを無害化する方法は見出されていない。また、同時に再利用できる方法も見出されていない。
そこで、本発明は、400℃以下程度の低温でもアスベストを無害化できるアスベストの処理方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、400℃以下の温度の処理でアスベストを無害化できるとともに再利用可能な材料に変換するアスベストの処理方法、リサイクル材料及びその製造方法を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、鉱石化合物であるアスベストの組成に着目するとともに、水熱反応の利用に着目した。そして、アスベストに対して適当な金属源の存在下に水熱反応によりアスベストを変成させることで、緩和な条件でアスベスト特有の針状構造を別の構造に変換して無害化できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明によれば、アスベスト含有材料の処理方法であって、前記アスベスト含有材料に含まれるアスベストとアルカリ金属以外の金属を水熱反応系に供給可能な金属源とを接触させて水熱反応を実施する水熱反応工程を備える、処理方法が提供される。
本処理方法においては、前記金属源の金属は、(a)前記アスベストに含まれる金属及び/又は(b)前記(a)の金属以外の金属であって前記アスベストに含まれる前記金属と水熱反応生成物を形成可能な金属とすることができる。また、前記金属源は、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物及びシリコン化合物からなる群から選択される1種又は2種以上としてもよい。さらに、前記アスベスト含有材料は前記金属源を含んでいてもよい。
本処理方法においては、前記水熱反応工程は、前記水熱反応をX線回折によるアスベスト由来のピークが観察されなくなるまで実施する工程とすることができる。さらに、前記水熱反応工程は、さらに前記アスベストの溶解促進剤を用いる工程としてもよい。前記溶解促進剤は、アルカリ金属化合物又はアンモニウム化合物から選択される1種又は2種以上としてもよい。また、前記水熱反応工程は、100℃以上250℃以下、1気圧以上30気圧以下で水熱反応を実施する工程としてもよい。さらに、前記水熱反応工程は、鋳型剤を用いて水熱反応を実施する工程としてもよい。
また、本発明によれば、リサイクル材料の製造方法であって、上記いずれかに記載のアスベスト含有材料の処理方法における前記水熱反応工程を備える、製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記リサイクル材料の製造方法によって製造され得るリサイクル材料が提供される。
本発明のアスベスト含有材料の処理方法は、前記アスベスト含有材料に含まれるアスベストとアルカリ金属以外の金属を水熱反応系に供給可能な金属源とを接触させて水熱反応を実施する水熱反応工程を備えることができる。本処理方法によれば、アスベスト含有材料に含まれるアスベストを新たな金属源を用いて水熱合成して変成(組成変化及び/又は結晶構造変化)させることでその有害な針状構造を消失させることができ、無害化することができる。また、本処理方法によれば、アスベストの組成をそのまま利用してしかも新たな金属源を用いてアスベストを変成させるため、緩和な条件でアスベストを無害化できる。また、こうした変成工程を利用することで、変成後の組成の調整が可能であるほか適当な細孔径調節剤(鋳型剤)を利用することで細孔径調整も可能となる。したがって、本処理方法によれば、アスベストを簡易にかつ有効に再利用することができる。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(アスベスト含有材料の処理方法)
(アスベスト含有材料)
本発明の出発原料であるアスベスト含有材料は、アスベストのみから構成されていてもよいし、アスベスト以外の成分を含有していてもよい。アスベストとしては、蛇紋岩から産出される繊維状含水ケイ酸塩鉱物であるクリソタイルのほか、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの各種鉱物が挙げられる。また、アスベスト以外の成分としては、蛇紋石鉱物のクリソタイル以外の主要構成鉱物であるリザルダイト、アンチゴライトなどのほか、ブルーサイト、フォルステライト、エンスタタイト、カルサイト、クロマイトなどの不純物としての鉱物が挙げられる。さらに、アスベストと同時に使用されあるいは同時に回収された他の成分であって、例えば、セメントなど、アスベストを利用した各種の建築材料のアスベスト以外の成分が挙げられる。
本発明のアスベスト含有材料としては、鉱石を利用することもできるが、アスベストを用いたスレート板、瓦、耐火被覆材、保温材などの建築材料又はこれらの産業廃棄物も用いることができる。こうした出発原料を用いることにより、アスベストの生活環境等への露出を抑制できるとともに効率的なリサイクルが可能となる。
(金属源)
本発明では、アルカリ金属以外の金属を水熱反応系に供給可能な金属源を用いる。供給する金属としては、具体的には、アスベスト含有材料中に含まれる各種アスベスト鉱物の構成金属と水熱反応により新たな水熱反応組成物を生成可能な成分であればよい。したがって、供給される金属は、アスベスト鉱石構成金属以外の金属であってもよいし、アスベスト鉱石構成金属であってもよい。こうした金属種としては、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びシリコンが挙げられ、これら各種の金属種を単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、得ようとする鉱物の組成に合わせて、使用する金属種を選択するとともにその配合も適宜調整することができる。例えば、ゼオライトを得ようとする場合には、典型的には、アルミニウムと鋳型剤としてテトラプロピルアンモニウムなどを用いることができる。
こうした各種の金属種を水熱反応系に供給する金属源としては、特に限定しないで水熱反応系において溶解可能な金属化合物を用いればよい。例えば、各種金属の水酸化物、各種金属酸化物の水和物、金属アルコキシドなどの各種加水分解性有機あるいはハロゲン化金属化合物、アルミニウム源としては、無定形水酸化アルミニウムゲルなどの水酸化アルミニウム、ベーマイトのようなアルミナ1水和物、バイアライト、ギブサイトなどのアルミナ3水和物などの各種アルミナ水和物、アルミン酸ナトリウム、各種のアルミニウムアルコキシドが挙げられる。また、シリコン源としては、ケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、各種のアルコキシド等が挙げられる。また、各種の金属種のケイ酸塩は、当該金属種の金属源としてだけでなく、当該金属種とシリコンとの金属源として用いることができる。さらに、金属源としては、こうした化合物だけでなく、2種類以上の金属種を含む各種の粘土鉱物を含む粘土などを用いてもよい。例えば、パイロフィライト、カオリナイト、モンモリナイトなどが挙げられる。
こうした各種の金属源は、本発明の出発原料であるアスベスト含有材料に含まれている場合もある。例えば、人工スレートや耐火材料のマトリックスに用いられるセメント中の鉱物やケイ酸塩等が上記金属源に該当する場合があるからである。したがって、本発明の処理方法によれば、アスベストの処理にあたって、アスベストとともに混在する廃棄物由来材料も処理に利用できる。また、こうしたセメント等も水熱処理により変成させることもできる。
(その他の成分)
本発明の処理方法においては、アスベスト含有材料と金属源の他にアスベスト含有材料中のアスベストの溶解促進剤を用いてもよい。本発明においては、溶解促進剤は、原料の溶解度を増加させるほか、結晶の生成温度を低下させることができる場合もある。水熱反応時において溶解促進剤を用いることで一層緩和な条件でアスベストを変成することが可能となる。こうした溶解促進剤としては、アルカリ金属の水酸化物あるいはフッ化物、アンモニウム化合物等が挙げられる。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物やフッ化物や各種第4級アンモニウム化合物などを用いることができる。本発明においては、反応速度の観点から好ましくはアルカリ金属の水酸化物を用いる。例えば、水ガラスなどに代表されるようにシリカ成分はアルカリ金属水酸化物に溶融することが知られており、この傾向は水熱反応下でも同様であるからである。また、アルカリ金属水酸化物は中和によって簡易に排出が可能となるため好ましい。なお、溶解促進剤としてアルカリ金属を含む場合には、水熱反応生成物に当該アルカリ金属が含有される場合もある。第4級アンモニウム化合物などのアンモニウム化合物は、反応処理後において肥料成分にも使用可能であることから好ましく用いることができる。
また、本発明の処理方法においては、界面活性剤などの鋳型剤を用いることができる。本発明の処理方法では、アスベスト由来の成分と金属源により供給される金属との間での新たな水熱反応生成物が生成される。この際、鋳型剤を供給することで、たとえば、孔径が2〜50nm程度のメソポア材料を合成することもできる。こうした鋳型剤としては、従来メソポア材料の合成に用いられてきたのと同様の各種の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は細孔径の大きさや反応種の種類に応じて適宜選択すればよい。
(水熱反応)
水熱反応とは、高温高圧水の存在下で物質合成又は結晶形成する反応である。本発明はこうした水熱反応を利用するものであって、アスベスト含有材料を湿式でかつ密閉容器内で反応させるものであるため、処理時の飛散の影響を効果的に回避又は抑制できる。また、本発明の処理方法によれば、溶解促進剤を用いない場合でも、250℃以下の温度、30気圧以下で、アスベストの変成・無毒化が可能である。このため、600℃程度以上を要していた従来のアスベストの処理方法に比較して、本発明の処理方法は安全でかつ低コストにアスベストを処理することができる。さらに、溶解促進剤を用いる場合には、より低い温度及び/又はより低い圧力下で、例えば、200℃以下で15気圧以下で水熱反応を実施することができる。こうした緩和な条件であれば、低コストかつ簡易にアスベストを処理できるほか、アスベスト含有材料の回収現場において容易に処理が可能である。このため、回収時の作業時の飛散による二次的被害を効果的に回避又は抑制できる。
水熱反応時におけるアスベストの濃度は特に限定しないが、3kg/L以下とすることができる。好ましくは1kg/L以下である。また、金属源の濃度も特に限定しないが、1.6kg/L以下とすることができる。金属源の濃度は、また、アスベスト濃度を考慮して決定される。さらに、溶解促進剤や鋳型剤の濃度は、意図する効果が得られるように適宜設定すればよい。
また、水熱反応に供されるアスベスト含有材料においてアスベスト自体は、解繊状態となっているため、アスベスト自体の無毒化のためには特にさらに細分化する必要はない。セメントなどが同時に回収されている場合には、セメント等の分離や変成を考慮して適宜セメント等の他の材料は細分してもよい。
こうした水熱反応は、アスベストが無毒化ないし毒性が低下する範囲で実施することができる。例えば、反応処理物においてX線回折によるアスベスト由来のピークが観察されなくなるまで実施することが好ましい。こうした反応条件、反応時間の設定は予め行うことができる。
こうした水熱反応は、水熱反応装置を用いることにより容易に実施することができる。例えば、各種工業的に用いられる高温高圧装置のほか、一般的なオートクレーブによっても可能である。水熱反応の終了後には、適当な固液分離処理を行って、固形物としてのアスベスト処理物(水熱反応生成物)を得る。そして、必要に応じて、洗浄、乾燥、粉砕、成形等のいずれかあるいは2種以上の処理を行うことができる。
(処理物の特徴)
こうして得られたアスベスト処理物は、アスベスト特有の針状構造を有さず、また、アスベストの主たる鉱石結晶を含有しないものとなっている。このため、本処理方法で得られるアスベスト処理物は無毒化されているといえる。さらに、本発明によるアスベスト処理物は、新たな金属種を供給して水熱反応により従来にない組成および構造の結晶を有するようにすることができるため、再利用に適したものとなっている。また、水熱反応により多孔材料となっている場合には、各種の触媒や土壌改良剤などにも用いることができる。さらに、鋳型剤などを含有する場合には、メソポアを有する細孔材料を得られ、大きな成分の吸脱着や各種の用途に用いることができる。
(リサイクル材料の製造方法)
本発明によれば、上記した処理方法の水熱反応工程を備える、リサイクル材料の製造方法も提供される。この製造方法によれば、水熱反応とアスベストの組成を利用して緩和かつ安全、しかも簡易にアスベストを無毒化できるため、低コストかつ安全にアスベスト由来のリサイクル材料を提供できる。
以下、発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。
本実施例では、水熱処理装置として内容積150mlのテフロン(登録商標)内筒容器つき圧力容器を用いた。クリソタイル粉末0.5g、塩化アルミニウム1gと5NNaOH水溶液50mlを内筒容器中にいれ、圧力容器中に封じた。この容器を恒温層中に静置し、200℃、15気圧下、24時間の処理を行った。処理後、内筒容器中の反応物をろ過、洗浄、乾燥して反応生成物を得た。得られた反応生成物につきX線回折スペクトルを測定するとともに、電子顕微鏡にて確認した。図1にX回折スペクトルを示す。
図1に示すように、本実施例の処理物では、アスベストのクリソタイルの結晶ピークは観察されず、リザーダイトやクリノクロアの結晶ピークが観察された。また、電子顕微鏡による観察結果から、アスベスト特有の針状構造が消失していることも観察された。以上の結果から、緩和な温度条件で、簡易にアスベストを変成し無害化できることがわかった。
実施例の水熱反応後の反応性生物のX線回折スペクトルを示す図。

Claims (11)

  1. アスベスト含有材料の処理方法であって、
    前記アスベスト含有材料に含まれるアスベストとアルカリ金属以外の金属を水熱反応系に供給可能な金属源とを接触させて水熱反応を実施する水熱反応工程を備える、処理方法。
  2. 前記金属源の金属は、(a)前記アスベストに含まれる金属及び/又は(b)前記(a)の金属以外の金属であって前記アスベストに含まれる前記金属と水熱反応生成物を形成可能な金属である、請求項1に記載の処理方法。
  3. 前記金属源は、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物及びシリコン化合物からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の処理方法。
  4. 前記アスベスト含有材料は前記金属源を含んでいる、請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法。
  5. 前記水熱反応工程は、前記水熱反応をX線回折によるアスベスト由来のピークが観察されなくなるまで実施する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の処理方法。
  6. 前記水熱反応工程は、さらに前記アスベストの溶解促進剤を用いる工程である、請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。
  7. 前記溶解促進剤は、アルカリ金属化合物又はアンモニウム化合物から選択される1種又は2種以上である、請求項6に記載の処理方法。
  8. 前記水熱反応工程は、100℃以上250℃以下、1気圧以上30気圧以下で水熱反応を実施する工程である、請求項1〜7のいずれかに記載の処理方法。
  9. 前記水熱反応工程は、鋳型剤を用いて水熱反応を実施する工程である、請求項1〜8のいずれかに記載の処理方法。
  10. リサイクル材料の製造方法であって、
    請求項1〜9のいずれかに記載のアスベスト含有材料の処理方法における前記水熱反応工程を備える、製造方法。
  11. 請求項10に記載の方法によって製造され得る、リサイクル材料。
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