JP2007295860A - 内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター - Google Patents

内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター Download PDF

Info

Publication number
JP2007295860A
JP2007295860A JP2006127372A JP2006127372A JP2007295860A JP 2007295860 A JP2007295860 A JP 2007295860A JP 2006127372 A JP2006127372 A JP 2006127372A JP 2006127372 A JP2006127372 A JP 2006127372A JP 2007295860 A JP2007295860 A JP 2007295860A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
human
site
clones
chromosome
human artificial
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006127372A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4895100B2 (ja
Inventor
Mitsuo Oshimura
光雄 押村
Yasuhiro Katsuki
康宏 香月
Takayuki Matsuoka
隆之 松岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chromocenter
CHROMOCENTER KK
Tottori University NUC
Original Assignee
Chromocenter
CHROMOCENTER KK
Tottori University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chromocenter, CHROMOCENTER KK, Tottori University NUC filed Critical Chromocenter
Priority to JP2006127372A priority Critical patent/JP4895100B2/ja
Publication of JP2007295860A publication Critical patent/JP2007295860A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4895100B2 publication Critical patent/JP4895100B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】内在遺伝子を含まないヒト21番染色体断片からなるヒト人工染色体ベクターを提供する。
【解決手段】ヒト21番染色体の長腕遠位がAP001657において、また、短腕遠位がAL163201において削除されたヒト21番染色体断片からなり、好ましくは、該断片が1つ以上のDNA配列挿入部位とレポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子とを含むことを特徴とするヒト人工染色体ベクター。
【選択図】なし

Description

本発明は、内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクターに関する。
ヒト人工染色体ベクターの利点は、1)宿主染色体に挿入されず独立して維持されることから、宿主遺伝子を破壊しない、2)一定のコピー数で安定に保持され、宿主細胞の生理的発現制御を受けることから、挿入された遺伝子の過剰発現や発現消失が起きない、3)導入可能なDNAサイズに制約がないことから、発現調節領域を含む遺伝子や複数遺伝子/アイソフォームの導入が可能となることが挙げられる。このように、ヒト人工染色体ベクターは、従来のベクター系(ウイルス、YAC、BAC、PAC、コスミド、プラスミド)にはない利点を有していることから、新たな遺伝子の機能解析のためのベクターやヒト型モデル動物の作製系として、さらに遺伝子治療用ベクターとしても有用であると期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
このような事情に鑑み、例えば、特許文献1では、ヒト14番染色体やヒト21番染色体を改変し、そのサイズを縮小した染色体の断片からなる、細胞中で安定に保持されるヒト人工染色体ベクターが開示されている。
国際公開2004/031385号パンフレット Basu J, Willard HF, Artificial and engineered chromosomes: non-integrating vectors for gene therapy, Trends Mol. Med., 2005 May;11 (5):251-8
上記特許文献1に記載のごとく、天然の染色体断片を細胞に移入るすと、目的の遺伝子以外にも移入した染色体断片からその他の多くの遺伝子が同時に発現することになる。このような余分な遺伝子の発現は当該染色体断片を保持する宿主細胞の正常機能(増殖能や分化能など)を妨げることになることがあると考えられるため、余分な遺伝子を取り除くことが必要である。本発明の目的は、ヒト21番染色体断片からなるヒト人工染色体ベクターにおける内在遺伝子を全て除去し、このような余分な遺伝子発現の問題のない、さらに利用しやすいヒト人工染色体ベクターを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ヒト21番染色体において、長腕遠位をAP001657において、また、短腕遠位をAL163201において削除することにより、ヒト2番染色体の内在遺伝子を全て除去でき、また、DNA配列挿入部位を複数導入し、あらかじめレポーター遺伝子、ネガティブ選別遺伝子を挿入しておくことにより、余分な遺伝子の発現の問題のない、かつ、利用しやすいヒト人工染色体ベクターが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ヒト21番染色体の長腕遠位がAP001657において、また、短腕遠位がAL163201において削除されたヒト21番染色体断片からなることを特徴とするヒト人工染色体ベクター、
(2)1つ以上のDNA配列挿入部位を含む上記(1)記載のヒト人工染色体ベクター、
(3)複数のDNA配列挿入部位を含む上記(2)記載のヒト人工染色体ベクター、
(4)遺伝子挿入部位が、部位特異的組換え酵素の認識部位である上記(2)記載のヒト人工染色体ベクター、
(5)部位特異的組換え酵素がCre酵素である上記(4)記載のヒト人工染色体ベクター、
(6)部位特異的組換え酵素の認識部位がloxP配列である上記(5)記載のヒト人工染色体ベクター、
(7)部位特異的組換え酵素がFLP酵素である上記(4)記載のヒト人工染色体ベクター、
(8)部位特異的組換え酵素の認識部位がFRT配列である上記(7)記載のヒト人工染色体ベクター、
(9)部位特異的組換え酵素がφC31インテグレースである上記(4)記載のヒト人工染色体ベクター、
(10)部位特異的組換え酵素の認識部位がattBおよびattP配列である上記(7)記載のヒト人工染色体ベクター、
(11)搭載すべきDNA配列挿入部位を含み、かつ、レポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子の少なくとも1つが挿入されている上記(3)記載のヒト人工染色体ベクター、
(12)レポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子の両方が挿入されている上記(11)記載のヒト人工染色体ベクター、
(13)レポーター遺伝子がGFP遺伝子である上記(11)記載のヒト人工染色体ベクター、
(14)ネガティブ選別遺伝子がHSV−TK遺伝子である上記(11)記載のヒト人工染色体ベクター、および
(15)上記(1)〜(14)いずれか1項記載のヒト人工染色体ベクターを保持する細胞を提供するものである。
本発明のヒト人工染色体ベクターは、内在遺伝子が全て除去されているので、余分な遺伝子発現の問題が解消され、細胞中で安定に保持される。また、DNA配列挿入部位を複数設けることにより、複数の遺伝子の相互作用を解析することが可能となり、また、目的とするDNA配列や、遺伝子と共に、レポーター遺伝子や、ネガティブ選別遺伝子を挿入することができるので、あらかじめヒト人工染色体ベクターの既知領域にレポーター遺伝子を導入しておけば、ベクター導入細胞を可視化でき、同様に、あらかじめネガティブ選別遺伝子を挿入しておけば、ベクターが導入された細胞を選択的に排除することができ、遺伝子治療の際のベクター導入によるがん化の危険を避けることが期待できる(Grimes BR, Monaco ZL. Artificial and engineered chromosomes: developments and prospects for gene therapy. Chromosoma. 2005 Sep; 114(4): 230-41)。
本明細書において、「ヒト人工染色体〔HAC(human artificial chromosome)と略称する場合がある〕ベクター」とは、ヒト染色体、特に、本発明においてはヒト21番染色体から作製された人工染色体を意味し、「ヒト染色体断片」とは、独立染色体として安定に複製および分配が可能な染色体の部分断片を意味する。
「内在遺伝子」とは、天然のヒト21番染色体に本来的に存在する固有の遺伝子を意味する。
染色体の「腕」とは染色体のセントロメア両側の腕を意味し、その長さにより、長腕(q)および短腕(p)と称する。「遠位」、「近位」とは、それぞれ、セントロメアから遠い領域(テロメア側)、近い領域(セントロメア側)を意味し、長腕遠位は、長腕のAP001657よりもテロメア側、長腕近位は、長腕のAP001657よりもセントロメア側に位置する領域を意味する。短腕遠位は、短腕のAL163201よりもテロメア側、短腕近位は、短腕のAL163201よりもセントロメア側に位置する領域を意味する。
「DNA配列挿入部位」とは、目的とするDNAまたは遺伝子やDNA配列を挿入できる部位、例えば、部位特異的組換え酵素の認識部位等を意味する。
「人工テロメア配列」とは、例えば、WO00/10383に記載されるテロメアトランケーション(テロメア配列の置換)により人工的に付加させたテロメア配列を意味する。染色体の短縮に使用する。
「外来遺伝子」、「外来DNA」とは、ベクターの遺伝子挿入部位に挿入する、ベクターに搭載する目的の遺伝子、DNA配列であり、対象とする細胞内に本来的には存在しない、対象とする細胞内で発現させるべき遺伝子、DNA配列を意味する。
本発明のHACベクターは、ヒト21番染色体の長腕遠位がAP001657において、また、短腕遠位がAL163201において削除されたヒト21番染色体断片からなることを特徴とする。好ましくは、該断片は、1つ以上のDNA配列挿入部位とレポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子とを含む。長腕遠位をAP001657において、また、短腕遠位をAL163201において削除することにより、内在遺伝子が全て除去される。
ヒト21番染色体については、長腕および短腕のDNA配列が解読され、公知であり、相同組換えによって人工テロメア配列やloxP配列などを部位特異的に挿入することが可能である。また、長腕遠位および短腕遠位の削除によって内在遺伝子を含まないHACベクターが構築できる。
セントロメア領域を含むヒト21番染色体断片から作製された、内在遺伝子を含まない本発明のHACベクターは、それを保持する細胞(供与細胞)中でも、移入される細胞(受容細胞)中でも安定に保持される。
以下に本発明のHACベクターの作製、DNA配列の挿入、用途について説明する。
(1)HACベクターの作製
本発明のHACベクターは、以下の工程(a)〜(c)を含む方法により行う。
(a)ヒト21番染色体を保持する細胞を得る工程、
(b)ヒト21番染色体の長腕遠位および/または短腕遠位を削除する工程、および
(c)長腕近位および/または短腕近位に1つ以上のDNA配列挿入部位を挿入する工程。
工程(b)および(c)の順序は特に特定するものではない。
工程(a)
本発明のHACベクターを作製するには、まず、ヒト21番染色体を保持する細胞を作製する。例えば、薬剤耐性遺伝子で標識されたヒト単一染色体を保持する公知のマウスA9雑種細胞ライブラリー(例、WO00/10383号)からヒト21番染色体を保持するクローンを選択し、その染色体を相同組換え率の高い細胞に移入することにより作製することができる。ヒト21番染色体を保持するマウスA9雑種細胞は公知であり、JCRB(Japanese Collection of Research Bioresources)にJCRB2221(細胞名A9(Hygro21))の登録番号の下に登録されており、入手可能である。相同組換え率の高い細胞としては、例えば、ニワトリDT40細胞(Dieken et al., Nature Genetics, 12:174-182, 1996)を利用でき、移入は、公知の染色体移入法、例えば、ミクロセル法(Koi et al., Jpn. J. Cancer Res., 80: 413-418, 1973)によって行うことができる。
工程(b)
ヒト21番染色体を保持する細胞において、ヒト21番染色体の長腕遠位および/または短腕遠位を削除する。例えば、WO00/10383号に記載のテロメアトランケーションにより削除することができる。すなわち、ヒト21番染色体を保持する細胞において、人工テロメア配列を保持するターゲッティングベクターを構築し、相同組換えにより染色体上の所望の位置に人工テロメア配列の挿入されたクローンを取得し、テロメアトランケーションにより欠失変異体が得られる。所望の位置が削除すべき長腕遠位または短腕遠位の切断位置であり、この位置に人工テロメア配列が相同組換えにより置換、挿入されて長腕遠位または短腕遠位が削除される。この位置は、ターゲッティングベクターを構築する際の標的配列の設計により、適宜設定でき、本発明においては、長腕のAP001657(GenBank登録番号)のDNA配列、短腕のAL163201(GenBank登録番号)のDNA配列に基づいて標的配列を設計し、その標的配列よりもテロメア側でテロメトランケーションが起こるように設定する。これにより、内在遺伝子が全て除去されたヒト21番染色体断片が得られる。
工程(c)
DNA配列挿入部位として、部位特異的組換え酵素の認識部位を挿入する。すなわち、ある種の酵素が特定の認識部位を認識して特異的にその認識部位でDNAの組換えを起こす現象が知られており、本発明のHACベクターでは、このような酵素と認識部位の系を利用して、目的とする遺伝子やDNA配列を挿入、搭載できる。このような系として、例えば、バクテリオファージP1由来のCre酵素と、その認識部位であるloxP配列の系(Cre/loxP系)や、出芽酵母由来のFLP酵素と 、その認識部位であるFRT配列の系(Flp/FRT系)や、ストレプトミセスファージ由来のφC31インテグレースと、その認識部位であるattB/attP配列の系が知られており、本発明のHACベクターのDNA配列挿入部位としては、特に限定するものではないが、例えば、これらの系を利用するloxP配列やFRT配列やattB/attP配列が挙げられる。
このような部位特異的組換え酵素の認識部位の挿入は、公知の方法、例えば、相同組換え法が利用でき、挿入位置および数は、長腕近位および短腕近位内に適宜設定することができる。
本発明においては、1つの種類の認識部位または異なる種類の認識部位を1つ以上、好ましくは複数挿入する。認識部位の設定により、外来遺伝子や外来DNAの挿入位置を決定できるので、挿入位置が一定となり、位置効果(position effect)を受けることもなくなる。かくして、本発明によれば、AP001657に挿入されている部位特異的組換え酵素の認識部位loxP配列において挿入された遺伝子を組織特異的に発現させることもできる。
本発明の、複数のDNA配列挿入部位を有するHACベクターには、好ましくは、目的とする遺伝子やDNA配列についての挿入部位を残して、レポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子の少なくとも1つ、好ましくは両方を、例えば、部位特異的組換え酵素を利用して、あらかじめ挿入しておく。
レポーター遺伝子としては、特に限定するものではないが、例えば、蛍光タンパク質であるGFPの遺伝子が挙げられる。ネガティブ選別遺伝子としては、例えば、単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV−TK)遺伝子が挙げられる。
HACベクターの受容細胞への導入は、通常、HACベクターに搭載された薬剤耐性遺伝子によるポジティブ選別で行われるが、ネガティブ選別遺伝子をHACベクター上に挿入することにより、例えば、ガンシクロビル等の抗ウイルス剤を作用させてHACベクターを保持する受容細胞を排除することができる。
本発明のHACベクターにおいては、レポーター遺伝子、ネガティブ選別遺伝子、搭載すべき外来遺伝子、外来DNAは、相同組換え法によって挿入してもよい。
さらに、本発明のHACベクターには、プロモーター、薬剤耐性遺伝子など、ベクター構築において一般的に挿入される配列またはエレメントを、例えば、相同組換え法により挿入してもよい。
(2)外来遺伝子、外来DNAの導入
本発明のHACベクターには、外来遺伝子、外来DNAを導入できる。外来遺伝子や外来DNAは、対象となる細胞にとって外部から導入されるDNA配列であり、本発明においては、特に限定するものではなく、毛細管拡張性運動失調症の変異(ataxia telangiectasia mutated:ATM)遺伝子、デュシャンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子等の巨大ヒト遺伝子や、p53タンパク質遺伝子、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(HPRT)、ヒトゲノムライブラリー等も導入可能である。
外来遺伝子の導入は、上記のDNA配列挿入部位として挿入されている部位特異的組換え酵素の系を利用して行う。例えば、Cre酵素の認識部位であるloxP配列と外来遺伝子を保持するターゲッティングベクターを構築し、本発明のHACベクターを保持する細胞内でCre酵素を発現させることにより、loxP配列において該ターゲッティングベクターとの部位特異的組換えにより、外来遺伝子を導入できる。
本発明のHACベクターには、部位特異的組換え酵素の認識部位(loxP配列)を保持する環状DNAを挿入することもでき、大腸菌を宿主としたプラスミドや、酵母を宿主とした環状YAC等の既存のベクターによりクローン化されたDNAも挿入できる。好適なloxP配列はP1ファージに由来する野生の配列であり、Cre酵素によるHACベクター上のloxP配列への環状インサートの挿入反応は可逆的である。一旦環状インサートが挿入されると、HACベクター上に2つのloxP配列が残る。このため再度Cre酵素を発現させると環状インサートを切り出す逆反応が起きる可能性もあり、二次的にインサートを挿入するようなさらなるHACベクターの改変が困難となる。しかし、塩基置換を行った変異loxP配列やφC31インテグレースの認識部位であるattB/attP配列の組み合わせ等によっては、逆反応を起こさず、複数の環状インサートを逐次挿入する系も構築できる。
(3)HACベクターの細胞への移入
本発明のHACベクターまたは外来遺伝子や外来DNAを含む本発明のHACベクターを保持する細胞から、これらのHACベクターを他の細胞へ移入することができる。他の細胞は特に限定するものではなく、一般に、哺乳動物細胞、例えば、ES細胞、EG細胞、EC細胞、mGS細胞、ヒト間葉系幹細胞のような多能性幹細胞、CHO細胞、HT1080細胞、ヒト正常体細胞等が挙げられる。
HACベクターの細胞への移入は上記したミクロセル法によって行うことができる。所望の細胞へ移入は、上記したHACベクター作製の前、或いは各工程中、または作製後に行うことができる。
(4)HACベクターの用途
本発明のHACベクターは、他のHACベクターと同様な用途に利用でき、例えば、外来遺伝子の受容細胞への導入、外来遺伝子を発現する細胞の作製、タンパク質の製造、遺伝子機能の解析、ヒトの疾患の治療等に利用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
A)HACベクターにおけるヒト21番染色体の長腕近位AP001657への5’HPRT−loxP−TK配列の挿入
(1)長腕近位へのloxP配列挿入のためのコンストラクト構築
loxP配列を挿入するための基本プラスミドにはV901(Lexicon genetics)を用いた。loxP挿入部位であるヒト21番染色体近位のDNA配列はGenBankデータベースより得た(AP001657)。相同組換えの2つの標的配列の増幅に用いたプライマーオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す:
#21CEN<1>1L:acctggaatttcctaccatcccccataa(配列番号1)
#21CEN<1>1R:atctctccagagggacagcatcataccc(配列番号2)
#21CEN<2>1L:cctgcaagttatgaccactggggatttt(配列番号3)
#21CEN<2>1R:ctgcagtgagccgagatcataccactgt(配列番号4)
MC1−TK配列を、V830(Lexicon genetics)からRsrII(NEB)により切り出し、V901プラスミドの制限酵素HindIIIの認識部位にクローニングした(V901T-1)。次にヒト21番染色体を保持するDT40雑種細胞(Kazuki et al. BBRC 2004, DT40(21-2-3))から抽出したゲノムDNAを鋳型にして標的配列をPCRで増幅した。反応条件は95℃2分の後、変性95℃15秒、アニーリング68℃4分を30サイクル行った。それぞれを制限酵素EcoRI(ニッポンジーン)とBglII(ニッポンジーン)ないしXhoII(プロメガ)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V901プラスミドのEcoRIとBamHIないしBglIIサイトにクローニングした。さらにV901プラスミドのAscIとKpnIサイトにAscIとKpnIにより切り出した5’HPRT−loxP−ハイグロマイシン(hygromysin)をクローニングした。5’HPRT−loxP−ハイグロマイシンはV820(Lexicon genetics)のXbaIサイトにオリゴ合成したloxP配列とPGKハイグロマイシン(hygro)配列(Lyons I博士から分与)をクローニングすることで作製した。最終的なloxP挿入コンストラクトのサイズは13.5kbである。ターゲティングベクター、標的配列および相同組換えにより生じる染色体アレルを図1に示す。
DT40(21−2−3)細胞は、平成18年4月20日から、茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6の独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センターに受領番号FERM AP−20894の下で寄託してある。
(2)トランスフェクションおよびハイグロマイシン耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをNotI(Takara)消化により線状化し、ヒト21番染色体を保持するDT40細胞に導入した。導入条件、培養方法は押村ら(クロマチン・染色体実験プロトコール、羊土社、2005)に従った。ハイグロマイシン選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、20回のトランスフェクションで得た合計237個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kk))。
(3)相同組換え体の選別
(3−1)PCR解析
組換え体を選別するため以下のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーの位置は図1に示した。その配列を以下に示す。
#21CEN<1>2L:aaatgcatcaccattctcccagttaccc(配列番号5)
PGKr1:ggagatgaggaagaggagaaca(配列番号6)
部位特異的に組換えが起こったクローンでのみ4.5kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40およびDT40(21−2−3)ではバンドは検出されなかった。その頻度は237クローン中46個で組換え頻度は約20%であった。
(3−2)蛍光in situeハイブリダイゼーション(FISH)解析
FISH解析は松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に従い行った。上記(3−1)で組換えを確認したクローンのうち6クローンをヒトcot−1DNAおよびハイグロマイシンをプローブにしてFISH解析を行ったところ、ヒト21番染色体は全てのクローンで宿主染色体に転座することなく、長腕近位にハイグロマイシン由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。結果を図2Aおよび図2Bに示す。図2Aは組み換え前のDT40(21−2−3)を示し、図2Bは組換え後のDT40(kk139)を示す。
以上の(1)〜(3)により相同組換えによりヒト21番染色体近位AP001657に5’−HPRT−loxP−hygro−TKを挿入することが確認できた。
B)HACベクターにおけるヒト21番染色体の長腕近位AP001657での部位特異的切断
(1)部位特異的切断コンストラクト作製
長腕近位部位特異的切断用の基本ベクターにはpBS−TEL/hisDコンストラクト(Kuroiwa et al. Nature Biotech 2002)を用いた。GenBankデータベースより得たヒト21番染色体長腕近位のDNA配列(AP001657)から相同組換え標的配列を設計した。これをPCR増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す。
q1L:ggagcaacaggacctctcattccttgtt(配列番号7)
q1R:ccaatgtcaggcactcctgctctaaatg(配列番号8)
DT40(21−2−3)を鋳型にPCRにより相同組換え配列を増幅させBamHI消化ののち、pBS−TEL/hisDコンストラクトのBamHIサイトにクローニングした。最終的な長腕近位部位特異的切断用コンストラクトのサイズは14.4kbである。ターゲティングベクター、標的配列、および相同組換えにより生じる染色体アレルを図3に示した。
(2)トランスフェクションおよびヒスチジノール(hisD)耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをSrfI(TOYOBO)消化により線状化し、上記と同様な導入条件、培養方法で、A)で作製したloxP配列の導入されたヒト21番染色体を保持するDT40細胞(DT40(kk139))に導入した。ヒスチジノール選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、5回のトランスフェクションで得た合計105個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkq))。
(3)相同組換え体の選別と部位特異的切断の確認
(3−1)PCR解析
ヒスチジノール耐性株のゲノムDNAを鋳型として組換え体を選別するため一次スクリーニングとして切断部位よりテロメア側に位置する以下のプライマーを用いてPCRを行い、部位特異的切断が起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
CBR−L:gatcctcctgaatgcctg(配列番号9)
CBR−R:gtaaatgccctttggacc(配列番号10)
APP−L:ctgggcaatagagcaagacc(配列番号11)
APP−R:acccatattatctatggacaattga(配列番号12)
TTC3−L:tggacaaatataaggcatgttca(配列番号13)
TTC3−R:gtcaccttcctctgcctttg(配列番号14)
PCP4−L:gaattcactcatcgtaacttcattt(配列番号15)
PCP4−R:ccttgtaggaaggtatagacaatgg(配列番号16)
次に上記プライマーで検出されなかった105クローンのうちの10クローンについて以下のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーの位置を図3に示す。配列は以下のとおりである。
q4L:ctgcaatctttacctccctggttcaagc(配列番号17)
SK23:ggccgctctagaactagtggatc(配列番号18)
10クローンのうち部位特異的に組換えが起こった2クローンでのみ7.5kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40、DT40(21−2−3)およびDT40(kk139)ではバンドは検出されなかった。
(3−2)FISH解析
上記(3−1)で組換えを確認したクローンのうち2クローンをヒトcot−1DNAおよびヒスチジノールをプローブにして上記と同様にしてFISH解析を行ったところ、ヒト21番染色体長腕は部位特異的に切断されており、切断部位にはヒスチジノール由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体近位AP001657でヒト21番染色体が部位特異的に切断されたことが確認できた。
C)HACベクターにおけるヒト21番染色体の短腕近位AL163201での部位特異的切断
(1)部位特異的切断コンストラクト作製
短腕近位部位特異的切断用の基本ベクターにはpBS−TEL/puroコンストラクト(Kuroiwa et al. Nature Biotech 2002)を用いた。GenBankデータベースより得たヒト21番染色体短腕近位の塩基配列(AL163201)から相同組換え標的配列を設計した。これをPCR増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す。
#21p−BsrGI−BamHI:acggatcctgtacaatacacagttgactgtctcagtgtg(配列番号19)
#21p−loxP3Rb:acggatccaagcccacatattattatgctgtgcttc(配列番号20)
DT40(21−2−3)を鋳型にPCRにより相同組換え配列を増幅させBamHI消化の後、pBS−TEL/puroコンストラクトのBamHIサイトにクローニングした。最終的な短腕近位部位特異的切断用コンストラクトのサイズは10.7kbである。ターゲティングベクター、標的配列および相同組換えにより生じる染色体アレルを図4に示す。
(2)トランスフェクションおよびピュロマイシン(puromysin)耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをEcoRI(Takara)消化により線状化し、上記と同様な導入条件、培養方法で、実施例1で作製したloxP配列の導入されたヒト21番染色体を保持するDT40細胞(DT40(kk139))に導入した。ピュロマイシン(puro)選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、5回のトランスフェクションで得た合計206個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkp))。
(3)相同組換え体の選別と部位特異的切断の確認
(3−1)PCR解析
ピュロマイシン耐性株のゲノムDNAを鋳型として組換え体を選別するため一次スクリーニングとして切断部位よりテロメア側に位置する以下のプライマーを用いてPCRを行い、部位特異的切断が起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
D21S187−L:tacatgcaaatgaccaagag(配列番号21)
D21S187−R:atcagcaatgccttctaagt(配列番号22)
D21S275−L:tgggccagttatagagacagtg(配列番号23)
D21S275−R:cagtcttgctctctcgccta(配列番号24)
pCHB−L:cgaggtgactctcggtttgc (配列番号25)
pCHB−R:tttcgcaagcaggcatttg(配列番号26)
次に206クローンのうちの上記プライマーで検出されなかった8クローンについて以下のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーの位置は図4に示す。その配列は以下のとおりである。
Pcen1L:actgctgccatgcagacagttgtgcttt(配列番号27)
PuroI:gagctgcaagaactcttcctcacg(配列番号28)
8クローンのうち部位特異的に組換えが起こった3クローンでのみ5.9kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40、DT40(21−2−3)およびDT40(kk139)ではバンドは検出されなかった。
(3−2)FISH解析
上記(3−1)で組換えを確認したクローンのうち2クローンをヒトcot−1DNAおよびピュロマイシンをプローブにして上記と同様にFISH解析を行ったところ、ヒト21番染色体短腕は部位特異的に切断されており、切断部位にはピュロマイシン由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体近位AL163201でヒト21番染色体が部位特異的に切断されたことが確認できた。
D)HACベクターにおけるヒト21番染色体の短腕近位AL163201および長腕近位AP001657での部位特異的切断
(1)トランスフェクションおよびpuro/ヒスチジノール耐性クローンの単離
上記B)で作製したコンストラクト(SrfI線状化)を上記と同様な導入条件、培養方法で、C)で作製したDT40(kkp119)に、C)で作製したコンストラクト(EcoRI線状化)を上記と同様な導入条件、培養方法で、B)で作製したDT40(kkq79)にそれぞれ導入した。薬剤選択2週間後にそれぞれ、5回のトランスフェクションで得た合計95個(ヒスチジノール耐性)と362個(ピュロマイシン耐性)のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkpq))。
(2)相同組換え体の選別と部位特異的切断の確認
(2−1)PCR解析
ヒスチジノール耐性株はB)(3−1)の手法で2クローン、ピュロマイシン耐性株はC)(3−1)の手法で8クローン得られ、部位特異的切断が起こっていることを確認した。
(2−2)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)で組換えを確認したクローンのうち2クローンと8クローンをヒトcot−1DNAおよびピュロマイシンをプローブにしてFISH解析を行ったところ、ヒト21番染色体短腕は部位特異的に切断されており、切断部位にはピュロマイシン由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。結果を図5Aおよび図5Bに示す。図5AはDT40(kkq)由来のDT40(kkpq226)を、図5BはDT40(kkp)由来のDT40(kkpq320)を示す。
以上の(1)〜(2)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体短腕近位AL163201および長腕近位AP001657でヒト21番染色体が部位特異的に切断されたことが確認できた。
ヒト人工染色体ベクターのCHO細胞への導入と構造解析
(1) 微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例1で得られたヒト人工染色体(DT40(kkpq320)を用いた。染色体受容細胞としてはCHO hprt欠損細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手、登録番号JCRB0218)を用いた。微小核細胞融合および培養方法は押村ら(クロマチン・染色体実験プロトコール、羊土社、2005)に従って行った。ハイグロマイシン選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、4回の融合で得た合計38個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:CHO(kkpq))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
ハイグロマイシン耐性株のゲノムDNAを鋳型として、実施例1〜3記載のプライマー(配列番号5−6、17−18、27−28)によりヒト人工染色体ベクターがCHO細胞に導入されていることを確認した。38クローン中22クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)FISH解析
上記(2−1)のPCR解析で確認したクローンのうち14クローンをヒトcot−1DNAをプローブにして、上記と同様にしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが9クローンあることが確かめられた。
(2−3)サザンブロット解析
パルスフィールド解析、サザンブロット解析を、中村ら(ラボマニュアル ヒトゲノムマッピング、丸善株式会社、1991)に記された方法に従い行った。上記(2−1)のPCR解析で確認した22クローンについて、パルスフィールド電気泳動法を用いて分離後、alpha21−1(Ikeno M et al.1994 HMG)由来のプローブを用いてサザンブロット解析を行ったところ、17クローンについてセントロメア付近の構造異常を認めなかった。代表的な結果を図6に示す。
以上の(1)〜(3)の実験により染色体異常およびセントロメア構造異常をもたないヒト人工染色体(kkpq)を保持するCHO細胞が9クローン得られたことが確認できた。
ヒト人工染色体ベクターへのGFP遺伝子導入
図7にヒト人工染色体ベクター上のloxPサイトへGFP遺伝子をCre組換え酵素の発現により導入する方法を示した。
(1)loxPサイトへのGFP遺伝子挿入コンストラクト作製
3’HPRT−loxPをV907(Lexicon genetics)のEcoRIとAscIにクローニングし、これを基本ベクターとした(ベクター名:X3.1)。3’HPRT−loxPはV820のXbaIサイトにオリゴ合成したloxP配列をクローニングすることで作製した。X3.1のEcoRIサイトとSalIサイトにHS4−CAG−EGFP−HS4(京都大、中辻教授より分与)をクローニングし、HPRT再構築系のGFP挿入コンストラクトとした。最終的なコンストラクトのサイズは9.7kbである。GFP挿入ベクター、標的配列、およびCre酵素による組換えにより生じる染色体アレルを図7に示す。
(2)トランスフェクションおよびHAT耐性クローンの単離
遺伝子導入はリポフェクション法を用いて行い、90%コンフルエント状態になった6wellの細胞に対して、Cre1μgとGFP挿入ベクター2μgを市販(インビトロジェン)のプロトコールに従い導入した。HAT選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、2回の導入で得た合計24個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:CHO(kkpq)GFP)。
(3)GFP挿入体の確認
(3−1)蛍光顕微鏡観察
クローニングした24個のコロニーを蛍光顕微鏡下にて観察したところ、全てのクローンにてGFP陽性細胞が観察され、その陽性率はほぼ100%であった。
(3−2)PCR解析
HAT耐性株のゲノムDNAを鋳型として組換え体を選別するため以下のプライマーを用いてPCRを行い、部位特異的にGFP遺伝子の挿入が起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
TRANS L1:tggaggccataaacaagaagac(配列番号29)
TRANS R1:ccccttgacccagaaattcca(配列番号30)
GFP−L:cgtattaccgccatgcat(配列番号31)
GFP−R:cacaactagaatgcagtg(配列番号32)
12クローンにおいて上記の組み合わせのプライマーでPCR解析したところ、目的のバンドが検出された。ネガティブコントロールのCHOおよびCHO(kkpq)ではバンドは検出されなかった。配列番号29−6の組み合わせでは、CHO(kkpq)では500bpのバンドが検出され、GFP挿入体では10.2kbが検出される。解析した12クローンのうち10.2kbのバンドのみが検出されたのは8クローン、10.2kb、500bpの両方のバンドが検出されたのは4クローンであった。
(3−3)FISH解析
上記(3−2)のPCR解析で確認した12クローンをヒトcot−1DNAをプローブにして上記と同様にしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を1本保持するクローンが2クローンあることが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験によりヒト人工染色体(kkpq)上にGFP遺伝子を搭載することにより、GFP発現が観察され、染色体異常をもたないヒト人工染色体(kkpq−GFP)を保持するCHO細胞が2クローン得られたことが確認できた。
HPRT再構築用HACベクターにおけるヒト21番染色体の長腕近位AP001657への改変型GFP(EGFP)遺伝子配列の挿入
(1)長腕近位へのEGFP配列挿入のためのコンストラクト構築
EGFP配列(Clontech)を挿入するための基本プラスミドにはpCMV/Bsd(インビトロジェン)を用いた。EGFP配列挿入部位であるヒト21番染色体遠近位のDNA配列はGenBankデータベースより得た(AP001657)。相同組換えの2つの標的配列の増幅に用いたプライマーオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す:
#21cenG1L: gtgaaggcattgccagtgttttcttctg(配列番号33)
#21cenG1R: tttgccgtagtcagtgggtgaatcatct(配列番号34)
#21cenG3L: gtttgagaggacatgcaacaccctgaat(配列番号35)
#21cenG3R: tttagatgcaggggcatactgtgagcat(配列番号36)
DT40(21−2−3)から抽出したゲノムDNAを鋳型にして標的配列をPCRにより増幅した。反応条件は95℃2分の後、変性95℃15秒、アニーリング68℃4分を30サイクル行った。それぞれを制限酵素ApaI(ニッポンジーン)ないしXbaI(ニッポンジーン)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、pCMV/BsdプラスミドのApaIないしXbaIサイトにクローニングした。さらにpCMV/BsdプラスミドのNotIとXhoIサイトにHS4−CAG−EGFP−HS4(京都大、中辻教授より分与)をクローニングした。最終的なloxP挿入コンストラクトのサイズは15.5kbである。ターゲティングベクター、標的配列、および相同組換えにより生じる染色体アレルを図8に示す。
(2)トランスフェクションおよびブラストサイジン(BS)耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをSalI(ニッポンジーン)消化により線状化し、上記と同様な導入条件、培養方法で、実施例1で作製した内在遺伝子を含まないHACベクターを保持するDT40細胞(DT40(kkpq320))に導入した。BS選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、5回のトランスフェクションで得た合計47個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkpqG))。
(3)相同組換え体の選別
(3−1)PCR解析
組換え体を選別するため以下のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーの位置は図8に示す。その配列は以下のとおりである。
bsdF:caacagcatccccatctctg(配列番号37)
#21cenG6R:cccggccagattcagatttttattaggg(配列番号38)
部位特異的に組換えが起こったクローンでのみ3.6kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40、DT40(21−2−3)およびDT40(kkpq320)ではバンドは検出されなかった。その頻度は47クローン中11個で組換え頻度は23.4%であった。
(3−2)FISH解析
上記と同様にして、(3−1)で組換えを確認したクローンのうち4クローンをヒトcot−1DNAおよびBSをプローブにしてFISH解析を行ったところ、ヒト人工染色体ベクターは全てのクローンで宿主染色体に転座することなく、長腕近位にBS由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。
(4)FACS解析
(3−2)で確認されたうちの2クローンについてフローサイトメーターによるGFP陽性細胞の割合を計測したところ、2クローンとも99%以上でGFP陽性を示した。ネガティブコントロールのDT40細胞ではGFP陽性率は0%であった。また、(3−2)で得られたFISH解析の結果から得られたHACの保持率と比較したところ、ほぼ同等の値を示した。結果を表1に示す。
Figure 2007295860
以上の(1)〜(4)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体近位AP001657にHS4−CAG−EGFP−HS4を挿入することが確認できた。
GFP挿入型ヒト人工染色体ベクターのCHO細胞への導入と構造解析
(1) 微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例4で得られたヒト人工染色体(DT40(kkpqG1)を用い、染色体受容細胞としてはCHO hprt欠損細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手、登録番号JCRB0218)を用い、上記と同様に微小核細胞融合および培養を行った。BS選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、4回の融合で得た合計44個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:CHO(kkpqG))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
BS耐性株のゲノムDNAを鋳型として、実施例1〜4記載のプライマー(配列番号5−6、17−18、27−28、37−38)によりヒト人工染色体ベクターがCHO細胞に導入されていることを確認した。44クローン中32クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認したクローンのうち12クローンをヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが8クローンあることが確かめられた。
(3)サザンブロット解析
上記と同様にして、(2−2)のFISH解析を行った12クローンについて、パルスフィールド電気泳動法を用いて分離後、alpha21−1由来のプローブを用いてサザンブロット解析を行ったところ、11クローンについてセントロメア付近の構造異常を認めなかった。
(4)FACS解析
(2−2)で確認されたうちの2クローンについてフローサイトメーターによるGFP陽性細胞の割合を計測したところ、2クローンとも95%以上でGFP陽性を示した。ネガティブコントロールのCHO細胞ではGFP陽性率は0%であった。また、(2−2)で得られたFISH解析の結果から得られたヒト人工染色体の保持率と比較したところ、ほぼ同等の値を示した。結果を表2に示す。
Figure 2007295860
以上の(1)〜(4)の実験により染色体異常およびセントロメア構造異常をもたないGFP挿入型ヒト人工染色体を保持するCHO細胞が8クローン得られたことが確認できた。
GFP挿入型ヒト人工染色体ベクターのHT1080細胞への導入と長期培養後の安定性
(1)微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例5で得られたヒト人工染色体(CHO(kkpqG4)を用い、染色体受容細胞としてはHT1080欠損細胞(ATCCより入手、登録番号CCL−121)を用い、上記と同様にして微小核細胞融合および培養を行った。BS選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、4回の融合で得た合計42個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:HT1080(kkpqG))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
BS耐性株のゲノムDNAを鋳型として、実施例1〜4記載のプライマー(配列番号−6、17−18、27−28、37−38)によりヒト人工染色体ベクターがHT1080細胞に導入されていることを確認した。42クローン中35クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)蛍光顕微鏡観察
クローニングした44個のコロニーを蛍光顕微鏡下にて観察したところ、全てのクローンにてGFP陽性細胞が観察され、その陽性率は50−100%であった。
(2−3)FISH解析
上記と同様にして、(2−2)の蛍光顕微鏡観察でGFP陽性率90%以上を確認したクローンのうち11クローンをヒトalpha21−1をプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが8クローンあることが確かめられた。
(3)長期培養後のFACS解析
(2−3)で確認されたうちの3クローンについて0〜100PDL後、フローサイトメーターによるGFP陽性細胞の割合を計測した結果、100PDLにおいても90%以上の陽性率であった。ネガティブコントロールのHT1080細胞ではGFP陽性率は0%であった。
以上の(1)〜(3)の実験により染色体異常をもたないGFP挿入型ヒト人工染色体を保持するHT1080細胞が8クローン得られ、そのうちの少なくとも3クローンは長期培養後も安定に維持されていることが確認できた。
GFP挿入型ヒト人工染色体ベクターのhiMSC細胞への導入と長期培養後の安定性および分化誘導
(1)微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例5で得られたヒト人工染色体(CHO(kkpqG4)を用い、染色体受容細胞としては不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞であるhiMSC細胞(京都大、戸口田教授より入手)を用い、上記と同様にして微小核細胞融合および培養を行った。BS選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、2回の融合で得た合計10個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:hiMSC(kkpqG))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
BS耐性株のゲノムDNAを鋳型として、実施例1〜4記載のプライマー(配列番号−6、17−18、27−28、37−38)によりヒト人工染色体ベクターがhiMSC細胞に導入されていることを確認した。10クローン中4クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)蛍光顕微鏡観察
クローニングした4個のコロニーを蛍光顕微鏡下にて観察したところ、全てのクローンにてGFP陽性細胞が観察され、その陽性率は50−100%であった。
(2−3)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認した4クローンをヒトalpha21−1をプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが3クローンあることが確かめられた。
(3)長期培養後のFACS解析
(2−3)で確認されたうちの3クローンについて0〜100PDL後のフローサイトメーターによるGFP陽性細胞の割合を計測した結果、100PDLにおいても80%以上の陽性率であった。ネガティブコントロールのhiMSC細胞ではGFP陽性率は0%であった。
(4)インビトロ分化誘導
Okamotoら(BBRC, 295:354, 2002)の手法に従い、骨、軟骨、脂肪細胞へ分化誘導を行い、GFP挿入型ヒト人工染色体ベクターを導入したhiMSC細胞が分化能を維持しているかを確認したところ、調べた3つのクローン全てで親株と同等の分可能を維持していることが確認された。
以上の(1)〜(4)の実験により染色体異常をもたないGFP挿入型ヒト人工染色体を保持するhiMSC細胞が3クローン得られ、分化能を維持し、長期培養後も安定に維持されていることが確認できた。
GFP挿入型ヒト人工染色体ベクターのマウスES細胞への導入と長期培養後の安定性
(1)微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例5で得られたヒト人工染色体(CHO(kkpqG4)を用い、染色体受容細胞としてはhprt欠損型マウスES細胞であるE14tg2a細胞(丹羽仁史博士、理化学研究所より入手)を用い、上記と同様にして微小核細胞融合および培養を行った。BS選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、2回の融合で得た合計5個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:E14tg2a(kkpqG))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
BS耐性株のゲノムDNAを鋳型として、実施例1〜7記載のプライマー(配列番号5−6、17−18、27−28、37−38)によりヒト人工染色体ベクターがE14tg2a細胞に導入されていることを確認した。5クローン中3クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)蛍光顕微鏡観察
(2−1)でマーカー陽性の3個のコロニーを蛍光顕微鏡下にて観察したところ、全てのクローンにてGFP陽性細胞が観察され、その陽性率はほぼ100%であった。
(2−3)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認した3クローンをヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが3クローンあることが確かめられた。
(3)長期培養後のFACS解析
(2−2)で確認されたうちの3クローンについて0〜100PDL後のフローサイトメーターによるGFP陽性細胞の割合を計測した結果、100PDLにおいても80%以上の陽性率であった。ネガティブコントロールのE14tg2a細胞ではGFP陽性率は0%であった。
(4)キメラマウスの作製と子孫伝達個体での保持率解析
(4−1)キメラマウス作製
上記(2−2)で確認された3クローンを用いて相沢ら(ジーンターゲティング、実験医学、1995)の手法に従い、キメラマウスを作製したこところ、毛色から10〜70%のキメラマウスが出生したことが判明した。
(4−2)子孫伝達個体作製
キメラマウスからMizutaniら(Genesis,43:34-42, 2005)に従いGFP陽性部位の精管から精子を取り出し顕微受精を行ったところ、36匹中5匹でGFP陽性個体を得ることができた。
(4−3)子孫伝達個体各組織におけるFISH解析
上記と同様にして、(4−2)で得られた個体のうち2匹について、脳、胸腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、精巣において、ヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、80〜100%でGFP挿入型ヒト人工染色体を保持することが確かめられた。
以上の(1)〜(4)の実験により染色体異常をもたないGFP挿入型ヒト人工染色体を保持するE14tg2a細胞が3クローン得られ、長期培養後も安定に維持されていること、子孫伝達が可能であり個体組織においても安定に維持されることが確認できた。
マウスES細胞に保持されたGFP挿入型ヒト人工染色体ベクターへのアルブミンプロモーターエンハンサーRFP遺伝子導入
図9にヒト人工染色体ベクター上のloxPサイトへアルブミンプロモーターエンハンサーRFP遺伝子(Alb−RFP:インスレーターなし、I−Alb−RFP−I:インスレーターあり)をCre組換え酵素の発現により導入する方法を示した。
(1)loxPサイトへのAlb−RFPおよびI−Alb−RFP−I遺伝子挿入コンストラクト作製
実施例3で作製したX3.1のSacIIおよびKpnIサイトにAlb−RFP(京都大、中辻教授より分与)を、SalIおよびEcoRIサイトにI−Alb−RFP−I(京都大、中辻教授より分与)をクローニングし、HPRT再構築系のアルブミンプロモーターエンハンサーRFP遺伝子挿入用のコンストラクトとした。最終的なコンストラクトのサイズはX3.1Alb−RFPは7.5kb、X3.1I−Alb−RFP−Iは9.9kbである。Alb−RFPおよびI−Alb−RFP−I挿入ベクター、標的配列、およびCre酵素による組換えにより生じる染色体アレルを図9に示した。
(2)トランスフェクションおよびHAT耐性クローンの単離
遺伝子導入はリポフェクション法を用いて行い、90%コンフルエント状態になった6wellのE14tg2a(kkpqG)細胞に対して、Cre1μgとAlb−RFP挿入ベクター(もしくはI−Alb−RFP−I挿入ベクター)2μgを市販(インビトロジェン)のプロトコールに従い導入した。HAT選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、10回の導入で得た合計のクローン数はE14tg2a(kkpqG)+Alb−RFPでは10個、E14tg2a(kkpqG)+I−Alb−RFP−Iでは91個であり、コロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った。
(3)Alb−RFPおよびI−Alb−RFP−I遺伝子挿入体の確認
(3−1)PCR解析
HAT耐性株のゲノムDNAを鋳型として組換え体を選別するため以下のプライマーを用いてPCRを行い、部位特異的にAlb−RFPおよびI−Alb−RFP−I遺伝子の挿入が起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
RFP3L:tccgtgaacggccactactt(配列番号39)
RFP3R:tgcttcacgtaggccttgga(配列番号40)
配列番号39−40(450bp)、29−30、29−6の組み合わせの全てで目的のバンドに検出されたクローンはE14tg2a(kkpqG)+Alb−RFPでは5個、E14tg2a(kkpqG)+I−Alb−RFP−Iでは49個であった。ネガティブコントロールのE14tg2aおよびE14tg2a(kkpqG)ではバンドは検出されなかった。配列番号29−6の組み合わせでは、E14tg2a(kkpqG)では500bpのバンドが検出され、Alb−RFP挿入体では約8kb、I−Alb−RFP−I挿入体では10.4kbが検出された。
(3−2)FISH解析
上記と同様にして、(3−1)のPCR解析で確認したE14tg2a(kkpqG)+Alb−RFPでは5個、E14tg2a(kkpqG)+I−Alb−RFP−Iでは12個をヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を1本保持するクローンがE14tg2a(kkpqG)+Alb−RFPでは4個、E14tg2a(kkpqG)+I−Alb−RFP−Iでは6個あることが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験によりAlb−RFPおよびI−Alb−RFP−I遺伝子を搭載したヒト人工染色体を保持し、染色体異常をもたないE14tg2a細胞が得られたことが確認できた。
アルブミンプロモーターエンハンサーRFP遺伝子が搭載されたGFP挿入型ヒト人工染色体ベクターを保持するマウスES細胞からのキメラマウスの作製
(1)キメラマウスの作製
実施例9で確認されたE14tg2a(kkpqG)+Alb−RFPについて2クローン、E14tg2a(kkpqG)+I−Alb−RFP−Iについて2クローンを用いて相沢ら(ジーンターゲティング、実験医学、1995)の手法に従い、キメラマウスを作製したこところ、毛色から10〜70%のキメラマウスが出生したことが判明した。
(2)キメラマウスにおける発現解析
(2−1)ゲノムPCR解析
上記(1)で得られたキメラマウスの脳、胸腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、精巣からのゲノムを鋳型として、上記配列番号5−6、17−18、27−28、37−38のプライマーにより全ての臓器でHACベクターを検出した。また、配列番号39−40、29−30、29−6のプライマーによりAlb−RFP−HAC、I−Alb−RFP−I−HACを全ての臓器で検出した。
(2−2)蛍光顕微鏡観察
上記(1)で得られたキメラマウスの脳、胸腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、精巣を取り出し蛍光顕微鏡下で観察したところ、全ての臓器で緑色の蛍光が50%〜70%程度で観察され、Alb−RFP−HACを保持するマウスとI−Alb−RFP−I−HACを保持するマウスの双方で肝臓でのみ上記の緑色蛍光部位と一致して赤色の蛍光を観察することが出来た。
(2−3)RT−PCR解析
上記(1)で得られたキメラマウスの脳、胸腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、精巣からのトータルRNAを市販のプロトコール(QIAGEN)に従い抽出後、中山広樹(バイオ実験イラストレイテッド、秀潤社、1996)に従い、cDNA合成を行い、それを鋳型としてPCRを行い、RFPの発現を検出した。そのプライマー配列を以下に示す。
RFP4L:ggccccgtaatgcagaagaa(配列番号41)
RFP4R:acgggcttcttggccttgta(配列番号42)
その結果Alb−RFP−HACを保持するマウスとI−Alb−RFP−I−HACを保持するマウスの双方で肝臓でのみ発現を検出できた。
(3)キメラマウスにおけるFISH解析
上記(1)で得られたキメラマウスの脳、胸腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、精巣において、ヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、50%〜70%でどの組織においてもAlb−RFP−HACまたはI−Alb−RFP−I−HACを保持することが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験によりヒト人工染色体ベクター上の長腕近位loxPサイトに遺伝子を挿入したとき、インスレーターあり・なしに関わらず、導入遺伝子が組織特異的に発現することが個体レベルで確認できた。
HACベクター保持細胞の選択的除去
(1)ガンシクロビルによる選択培養
実施例6で得られたHT1080(kkpqG)11および実施例8で得られたE14tg2a(kkpqG)1を用いて、6ug/mlでガンシクロビル添加を行って培養したところ、1週間後にはHT1080(kkpqG)11では全ての細胞が死滅し、E14tg2a(kkpqG)1では6wellにつき65個の耐性コロニーが出現した。このうちの6クローンについてコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った。
(2)蛍光顕微鏡観察
クローニングした6個のコロニーを蛍光顕微鏡下にて観察したところ、全てのクローンにてGFP陽性細胞は観察されなかった。
(3)FISH解析
上記と同様にして、(1)で増殖させた6クローンについてヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、コントロールのE14tg2a(kkpqG)1ではヒト人工染色体が検出されたのに対し、6クローン全てでヒト人工染色体は検出されなかった。また、全てのクローンで染色体異常は観察されず、核型は正常であった。
以上の(1)〜(3)の結果よりガンシクロビル添加によりHAC導入細胞を選択的に死滅させることが可能であり、ガンシクロビル投与によって染色体異常は引き起こさないことが確かめられた。
HACベクターにおけるヒト21番染色体の長腕近位AP001657への3’neo−loxP-BS−TK配列の挿入
(1)長腕近位への3’neo−loxP配列挿入のためのコンストラクト構築
3’neo−loxP配列を挿入するための基本プラスミドには実施例1で作製したV901T−1を用いた。V901T−1プラスミドのAscIとKpnIサイトに3’neo−loxP−BSをクローニングした。3’neo−loxP−BSはpSF1プラスミド(ライフテック)のXhoIサイトにpCMV/Bsd(インビトロジェン)からSalIとXhoIで切り出したBS配列をクローニングすることで作製した。最終的な3’neo−loxP-TK配列挿入コンストラクトのサイズは13.5kbである。ターゲティングベクター、標的配列、および相同組換えにより生じる染色体アレルを図10に示した。
(2)トランスフェクションおよびBS耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをNotI(Takara) 消化により線状化し、DT40(kkpq320)細胞に、上記と同様な導入条件、培養方法で導入した。BS選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、5回のトランスフェクションで得た合計58個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkpqN))。
(3)相同組換え体の選別
(3−1)PCR解析
組換え体を選別するため以下のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーの位置は図10に示した。その配列を以下に示す:
KJneo:catcgccttctatcgccttcttgacg(配列番号43)
配列番号5−43の組み合わせのPCRにより、部位特異的に組換えが起こったクローンでのみ4.5kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40、DT40(21−2−3)およびDT40(kkpq320)ではバンドは検出されなかった。その頻度は58クローン中18個で組換え頻度は約31%であった。
(3−2)FISH解析
上記と同様にして、(3−1)で組換えを確認したクローンのうち6クローンをヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、ヒト21番染色体は全てのクローンで宿主染色体に転座することなく、部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体近位AP001657に3’neo−loxP−BS−TK配列を挿入することが確認できた。
3’neo−loxP配列挿入型ヒト人工染色体ベクターのCHO細胞への導入および構造解析
(1)微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例12で得られたヒト人工染色体(DT40(kkpqN17および22)を用い、染色体受容細胞としてはCHO−K1(ATCCより入手、登録番号JCRB9018)を用いて、上記と同様にして微小核細胞融合および培養を行った。BS選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、4回の融合で得た合計20個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:CHO(kkpqN))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
BS耐性株のゲノムDNAを鋳型として、実施例1〜12記載のプライマー(配列番号5−43、17−18、27−28)によりヒト人工染色体ベクターがCHO細胞に導入されていることを確認した。20クローン中15クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認したクローンのうち10クローンをヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが8クローンあることが確かめられた。
(3)サザンブロット解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認した15クローンをについて、パルスフィールド電気泳動法を用いて分離後、alpha21−1由来のプローブを用いてサザンブロット解析を行ったところ、5クローンについてセントロメア付近の構造異常を認めなかった。
以上の(1)〜(3)の実験により染色体異常およびセントロメア構造異常をもたない3’neo−loxP−BS−TK配列挿入型ヒト人工染色体を保持するCHO細胞が5クローン得られたことが確認できた。
neo再構築型HACベクターにおけるヒト21番染色体の長腕近位AP001657へのEGFP遺伝子配列の挿入
(1)長腕近位へのEGFP配列挿入のためのコンストラクト構築
EGFP配列を挿入するための基本プラスミドにはpCMV/Bsd(インビトロジェン)を用いた。EGFP配列挿入部位であるヒト21番染色体近位の塩基配列はGenBankデータベースより得た(AP001657)。相同組換えの2つの標的配列の増幅に用いたプライマーオリゴヌクレオチドは(配列番号33−34)および(配列番号35−36)を用いた。DT40(21−2−3)から抽出したゲノムDNAを鋳型にして標的配列をPCRにより増幅した。反応条件は95℃2分の後、変性95℃15秒、アニーリング68℃4分を30サイクル行った。それぞれを制限酵素ApaI(ニッポンジーン)ないしXbaI(ニッポンジーン)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、pCMV/BsdプラスミドのApaIないしXbaIサイトにクローニングした。さらにpCMV/BsdプラスミドのEcoRIとXhoIサイトにPGKハイグロマイシン(hyg)配列をクローニングしてBSとhygを入れ換えた。さらにそのプラスミドのNotIとXhoIサイトにHS4−CAG−EGFP−HS4(京都大、中辻教授より分与)をクローニングした。最終的なEGFP挿入コンストラクトのサイズは16kbである。ターゲティングベクター、標的配列、および相同組換えにより生じる染色体アレルを図11に示した。
(2)トランスフェクションおよびhyg耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをSalI(ニッポンジーン)消化により線状化し、実施例12で作製した内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクターを保持するDT40細胞(DT40(kkpqN))に、上記と同様な導入条件、培養方法で導入した。hygro選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、5回のトランスフェクションで得た合計47個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkpqNG))。
(3)相同組換え体の選別
(3−1)PCR解析
組換え体を選別するため配列番号6−38のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーはで、その位置は図11に示した。
部位特異的に組換えが起こったクローンでのみ3.6kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40、DT40(21−2−3)およびDT40(kkpqN)ではバンドは検出されなかった。その頻度は30クローン中8個で組換え頻度は26.6%であった。
(3−2)FISH解析
上記と同様に、(3−1)で組換えを確認したクローンのうち4クローンをヒトcot−1DNAおよびhygをプローブにしてFISH解析を行ったところ、ヒト人工染色体ベクターは全てのクローンで宿主染色体に転座することなく、長腕近位にhyg由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体近位AP001657にHS4−CAG−EGFP−hyg−HS4を挿入することが確認できた。
3’neo−loxP配列およびGFP配列挿入型ヒト人工染色体ベクターのCHO細胞への導入と構造解析
(1)微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例14で得られたヒト人工染色体(DT40(kkpqNG57)を用い、染色体受容細胞としてはCHO−K1(ATCCより入手、登録番号JCRB9018)を用いて微小核細胞融合および培養を行った。ハイグロマイシン選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、2回の融合で得た合計32個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:CHO(kkpqNG))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
ハイグロマイシン耐性株のゲノムDNAを鋳型として、上記配列番号6−38、17−18、27−28のプライマーによりヒト人工染色体ベクターがCHO細胞に導入されていることを確認した。32クローン中20クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認したクローンのうち12クローンをヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが9クローンあることが確かめられた。
(2−3)サザンブロット解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認したうちの12クローンについて、パルスフィールド電気泳動法を用いて分離後、alpha21−1由来のプローブを用いてサザンブロット解析を行ったところ、7クローンについてセントロメア付近の構造異常を認めなかった。
以上の(1)〜(2)の実験により染色体異常およびセントロメア構造異常をもたない3’neo−loxP−BS−TK配列およびGFP配列挿入型ヒト人工染色体を保持するCHO細胞が7クローン得られたことが確認できた。
複数挿入部位をもつヒト人工染色体ベクターの作製
(1)短腕近位へのFRT配列挿入のためのコンストラクト構築
FRT配列を挿入するための基本プラスミドにはV901を用いた。FRT挿入部位であるヒト21番染色体短腕近位の塩基配列はGenBankデータベースより得た(AL163201)。相同組換えの2つの標的配列の増幅に用いたプライマーオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す。
#21p−FRT1L:cgcgaattcatacacagttgactgtctcagtgtg(配列番号44)
#21p−FRT2Re:gcggaattctgatgtgagccctctgtcagttctgtgt(配列番号45)
#21p−FRT3Lb:ataggatccaccaagtgttggagagaatctggagcaa(配列番号46)
#21p−FRT3Rb:acggatccaagcccacatattattatgctgtgcttc(配列番号47)
DT40(21−2−3)から抽出したゲノムDNAを鋳型にして標的配列をPCRにより増幅した。反応条件は95℃2分の後、変性95℃15秒、アニーリング68℃4分を30サイクル行った。それぞれを制限酵素EcoRI(ニッポンジーン)ないしBamHI(ニッポンジーン)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V901プラスミドのEcoRIないしBglIIサイトにクローニングした。さらにV901プラスミドのHindIIIとKpnIサイトにHindIIIとKpnIにより切り出したFRT−3’Zeoをクローニングし、XhoIサイトにXhoIにより切り出したpGKneo配列(多田高志博士より分与)をクローニングした。FRT−3’ZeoはCAGGS−EGFPプラスミド(大阪大学、岡部勝教授より分与)のXbaIサイトにオリゴ合成したFRT配列を、EcoRIサイトにZeocin配列(インビトロジェン)をクローニングすることにより作製した。最終的なFRT挿入コンストラクトのサイズは9kbである。ターゲティングベクター、標的配列、および相同組換えにより生じる染色体アレルを図12に示した。
(2)トランスフェクションおよびneo耐性クローンの単離
上記(1)で作製したコンストラクトをNotI(Takara) 消化により線状化し、実施例4で作製したDT40(kkpqG)1細胞に、上記と同様の導入条件、培養方法で導入した。ネオマイシン選択培養下で2週間培養すると、耐性コロニーが出現し、10回のトランスフェクションで得た合計53個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(kkpqGF))。
(3)相同組換え体の選別
(3−1)PCR解析
組換え体を選別するため配列番号648のプライマーを用いて部位特異的相同組換えが起こっているかを確認した。そのプライマーの位置は図12に示す。その配列を以下に示す。
#21FRT4L:ggctccctgcactattatgcctaattt(配列番号48)
部位特異的に組換えが起こったクローンでのみ3.0kbのバンドが検出された。ネガティブコントロールのDT40、DT40(21−2−3)およびDT40(kkpqG)ではバンドは検出されなかった。その頻度は53クローン中20個で組換え頻度は約37.7%であった。
(3−2)FISH解析
上記と同様にして、(3−1)で組換えを確認したクローンのうち6クローンをヒトcot−1DNAおよびネオマイシンをプローブにしてFISH解析を行ったところ、ヒト21番染色体は全てのクローンで宿主染色体に転座することなく、短腕近位にネオマイシン由来のシグナルが検出されたことから部位特異的に組換えが起こったことが確かめられた。
以上の(1)〜(3)の実験により相同組換えによりヒト21番染色体短腕近位AL163201にneo−FRT−3’Zeoを挿入することが確認できた。
複数挿入部位をもつヒト人工染色体ベクターのCHO細胞への移入
(1)微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
染色体供与細胞として実施例16で得られたヒト人工染色体(DT40(kkpqGF5)を用い、染色体受容細胞としてはCHO hprt欠損細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手、登録番号JCRB0218)を用いて、上記と同様に、微小核細胞融合および培養を行った。BS選択培養下で1週間培養すると、耐性コロニーが出現し、4回の融合で得た合計34個のコロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:CHO(kkpqGF))。
(2)移入染色体の確認
(2−1)PCR解析
BS耐性株のゲノムDNAを鋳型として、上記配列番号5−6、17−18、27−28、37−38、6−48のプライマーによりヒト人工染色体ベクターがCHO細胞に導入されていることを確認した。34クローン中22クローンで全てのマーカーを保持していることが確認できた。
(2−2)FISH解析
上記と同様にして、(2−1)のPCR解析で確認したクローンのうち12クローンをヒトcot−1DNAをプローブにしてFISH解析を行ったところ、核型異常を起こさず、ヒト人工染色体を保持するクローンが7クローンあることが確かめられた。
(3)サザンブロット解析
上記と同様に、(2−2)のFISH解析を行った12クローンをについて、パルスフィールド電気泳動法を用いて分離後、alpha21−1由来のプローブを用いてサザンブロット解析を行ったところ、11クローンについてセントロメア付近の構造異常を認めなかった。
以上の(1)〜(3)の実験により染色体異常およびセントロメア構造異常をもたない複数挿入部位をもつHACを保持するCHO細胞が7クローン得られたことが確認できた。
以上記載したごとく、本発明によれば、内在遺伝子を全て除去した、利用しやすい改良されたHACが提供できる。
ヒト21番染色体上の長腕AP001657においてloxP配列を挿入する方法の概略を示した図である。 図2Aは、FISH解析の結果を示す写真で、DT40細胞に保持されている完全長ヒト21番染色体を示す。また、図2Bは、ヒト21番染色体上の長腕AP001657においてloxP配列が導入されたことを示すFISH解析の結果を示す写真で、loxP配列を挿入したヒト21番染色体を示す。 ヒト21番染色体上の長腕AP001657において部位特異的切断を行う方法の概略を示した図である。 ヒト21番染色体上の短腕AL163201において部位特異的切断を行う方法の概略を示した図である。 図5Aは、ヒト21番染色体の長腕AP001657および短腕AL163201において部位特異的切断が行われたことを示すFISH解析の結果を示す写真で、長腕AP001657で切断されたヒト21番染色体が短腕AL163201において切断された写真である。また、図5Bは、ヒト21番染色体の長腕AP001657および短腕AL163201において部位特異的切断が行われたことを示すFISH解析の結果を示す写真で、短腕AL163201において切断されたヒト21番染色体が長腕AP001657で切断された写真である。 内在遺伝子の存在しないヒト人工染色体ベクター(kkpq)がDT40細胞、CHO HPRT欠損細胞においてセントロメア領域の構造が正常であることを示すサザンブロット解析の結果を示す図である。 CHOHPRT欠損株においてヒト人工染色体ベクター(kkpq)上にGFP遺伝子を導入する方法の概略を示した図である HPRT再構築型のヒト人工染色体ベクターにおいて、ヒト21番染色体上の長腕AP001657においてGFP配列を挿入する方法の概略を示した図である。 マウスES細胞においてGFPを挿入したヒト人工染色体ベクター(kkpqG)上にインスレーターあり・なしのアルブミンエンハンサー・プロモーターRFPコンストラクトを導入する方法の概略を示した図である。 ヒト21番染色体上の長腕AP001657においてネオマイシン再構築のためのloxP配列を挿入する方法の概略を示した図である。 ネオマイシン再構築型のヒト人工染色体ベクターにおいてヒト21番染色体上の長腕AP001657においてGFP配列を挿入する方法の概略を示した図である。 ヒト人工染色体ベクター上のヒト21番染色体短腕AL163201においてFRT配列を挿入する方法の概略を示した図である。

Claims (15)

  1. ヒト21番染色体の長腕遠位がAP001657において、また、短腕遠位がAL163201において削除されたヒト21番染色体断片からなることを特徴とするヒト人工染色体ベクター。
  2. 1つ以上のDNA配列挿入部位を含む請求項1記載のヒト人工染色体ベクター。
  3. 複数のDNA配列挿入部位を含む請求項2記載のヒト人工染色体ベクター。
  4. DNA配列挿入部位が、部位特異的組換え酵素の認識部位である請求項2記載のヒト人工染色体ベクター。
  5. 部位特異的組換え酵素がCre酵素である請求項4記載のヒト人工染色体ベクター。
  6. 部位特異的組換え酵素の認識部位がloxP配列である請求項5記載のヒト人工染色体ベクター。
  7. 部位特異的組換え酵素がFLP酵素である請求項4記載のヒト人工染色体ベクター。
  8. 部位特異的組換え酵素の認識部位がFRT配列である請求項7記載のヒト人工染色体ベクター。
  9. 部位特異的組換え酵素がφC31インテグレースである請求項4記載のヒト人工染色体ベクター。
  10. 部位特異的組換え酵素の認識部位がattBおよびattP配列である請求項9記載のヒト人工染色体ベクター。
  11. 搭載すべきDNA配列挿入部位を含み、かつ、レポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子の少なくとも1つが挿入されている請求項3記載のヒト人工染色体ベクター。
  12. レポーター遺伝子およびネガティブ選別遺伝子の両方が挿入されている請求項11記載のヒト人工染色体ベクター。
  13. レポーター遺伝子がGFP遺伝子である請求項11記載のヒト人工染色体ベクター。
  14. ネガティブ選別遺伝子がHSV−TK遺伝子である請求項11記載のヒト人工染色体ベクター。
  15. 請求項1〜14いずれか1項記載のヒト人工染色体ベクターを保持する細胞。
JP2006127372A 2006-05-01 2006-05-01 内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター Active JP4895100B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006127372A JP4895100B2 (ja) 2006-05-01 2006-05-01 内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006127372A JP4895100B2 (ja) 2006-05-01 2006-05-01 内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007295860A true JP2007295860A (ja) 2007-11-15
JP4895100B2 JP4895100B2 (ja) 2012-03-14

Family

ID=38765909

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006127372A Active JP4895100B2 (ja) 2006-05-01 2006-05-01 内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4895100B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010038756A1 (ja) 2008-09-30 2010-04-08 協和発酵キリン株式会社 Frizzled1、Frizzled2又はFrizzled7細胞外システインリッチドメインを含む蛋白質を含有する骨疾患治療用医薬組成物
WO2011083870A1 (ja) 2010-01-06 2011-07-14 国立大学法人鳥取大学 マウス人工染色体ベクター
WO2012176853A1 (ja) 2011-06-21 2012-12-27 協和発酵キリン株式会社 Frizzled2の細胞外領域蛋白質のトランケート体を含む蛋白質、および該蛋白質を含有する骨疾患治療用医薬組成物
WO2019088257A1 (ja) 2017-11-02 2019-05-09 国立大学法人鳥取大学 哺乳類人工染色体ベクターを利用するタンパク質の高生産方法
WO2019177163A1 (ja) 2018-03-16 2019-09-19 国立大学法人鳥取大学 マウス人工染色体ベクター及びその使用
WO2023085433A1 (ja) 2021-11-15 2023-05-19 国立大学法人鳥取大学 ヒト細胞内でヒト人工染色体ベクターを作製する方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3800250A4 (en) 2018-10-10 2022-03-30 National University Corporation Tottori University PROCEDURE FOR GENERATING ANIMAL CELLS WITH DNA OF INTEREST USING MICRONUCLEAR CELL FUSION METHOD
JP7079946B2 (ja) 2018-10-10 2022-06-03 国立大学法人鳥取大学 外来染色体を含むヒト人工多能性幹細胞の製造方法
WO2023090372A1 (ja) 2021-11-16 2023-05-25 学校法人東京薬科大学 プロモーター活性化配列、そのプロモーター活性化配列を含む発現ベクター、及びその発現ベクターを含む哺乳動物細胞

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002092812A1 (en) * 2001-05-11 2002-11-21 Kirin Beer Kabushiki Kaisha ARTIFICIAL HUMAN CHROMOSOME CONTAINING HUMAN ANTIBODY μ LIGHT CHAIN GENE
WO2004031385A1 (ja) * 2002-10-04 2004-04-15 Kirin Beer Kabushiki Kaisha ヒト人工染色体(hac)ベクター
JP2005503778A (ja) * 2001-05-30 2005-02-10 クロモス・モレキユラー・システムズ・インコーポレーテツド 染色体に基くプラットホーム

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002092812A1 (en) * 2001-05-11 2002-11-21 Kirin Beer Kabushiki Kaisha ARTIFICIAL HUMAN CHROMOSOME CONTAINING HUMAN ANTIBODY μ LIGHT CHAIN GENE
JP2005503778A (ja) * 2001-05-30 2005-02-10 クロモス・モレキユラー・システムズ・インコーポレーテツド 染色体に基くプラットホーム
WO2004031385A1 (ja) * 2002-10-04 2004-04-15 Kirin Beer Kabushiki Kaisha ヒト人工染色体(hac)ベクター

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010038756A1 (ja) 2008-09-30 2010-04-08 協和発酵キリン株式会社 Frizzled1、Frizzled2又はFrizzled7細胞外システインリッチドメインを含む蛋白質を含有する骨疾患治療用医薬組成物
JP5557217B2 (ja) * 2010-01-06 2014-07-23 国立大学法人鳥取大学 マウス人工染色体ベクター
KR101485840B1 (ko) * 2010-01-06 2015-01-23 도쿠리츠 다이가쿠 호우진 돗토리 다이가쿠 마우스 인공염색체 벡터
CN102791857A (zh) * 2010-01-06 2012-11-21 国立大学法人鸟取大学 小鼠人工染色体载体
US9775331B2 (en) 2010-01-06 2017-10-03 National University Corporation Tottori University Rodent comprising mouse artificial chromosome vector
JPWO2011083870A1 (ja) * 2010-01-06 2013-05-16 国立大学法人鳥取大学 マウス人工染色体ベクター
WO2011083870A1 (ja) 2010-01-06 2011-07-14 国立大学法人鳥取大学 マウス人工染色体ベクター
AU2011204143B2 (en) * 2010-01-06 2014-09-18 National University Corporation Tottori University Mouse artificial chromosome vector
US20120272342A1 (en) * 2010-01-06 2012-10-25 Chromocenter Inc. Mouse artificial chromosome vector
US8940533B2 (en) 2010-01-06 2015-01-27 National University Corporation Tottori University Mouse artificial chromosome vector
CN102791857B (zh) * 2010-01-06 2017-03-15 国立大学法人鸟取大学 小鼠人工染色体载体
WO2012176853A1 (ja) 2011-06-21 2012-12-27 協和発酵キリン株式会社 Frizzled2の細胞外領域蛋白質のトランケート体を含む蛋白質、および該蛋白質を含有する骨疾患治療用医薬組成物
WO2019088257A1 (ja) 2017-11-02 2019-05-09 国立大学法人鳥取大学 哺乳類人工染色体ベクターを利用するタンパク質の高生産方法
WO2019177163A1 (ja) 2018-03-16 2019-09-19 国立大学法人鳥取大学 マウス人工染色体ベクター及びその使用
WO2023085433A1 (ja) 2021-11-15 2023-05-19 国立大学法人鳥取大学 ヒト細胞内でヒト人工染色体ベクターを作製する方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4895100B2 (ja) 2012-03-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4895100B2 (ja) 内在遺伝子を含まないヒト人工染色体ベクター
EP2401367B1 (en) Hyperactive piggybac transposases
JP5175814B2 (ja) ヒト人工染色体(hac)ベクター
US5721118A (en) Mammalian artificial chromosomes and methods of using same
US6027722A (en) Vectors for gene transfer
JP5345391B2 (ja) ヒト人工染色体(hac)ベクター及びヒト人工染色体(hac)ベクターを有するヒト細胞医薬
Chen et al. A new positive/negative selectable marker, puΔtk, for use in embryonic stem cells
US20080026459A1 (en) Isolation, selection and propagation of animal transgenic stem cells
WO2016080399A1 (ja) 哺乳動物の標的ゲノム領域にdnaをノックインする方法及び細胞
HU227639B1 (en) Methods of modifying eukaryotic cells
US20080235817A1 (en) Artificial mammalian chromosome
US20030064509A1 (en) Novel chromosomal vectors and uses thereof
US20140295501A1 (en) Novel method to load a mammalian artificial chromosome with multiple genes
KR102471751B1 (ko) 유전자 편집된 형질전환 동물 및 형질전환 배아
US6143566A (en) Methods of performing homologous recombination based modification of nucleic acids in recombination deficient cells and use of the modified nucleic acid products thereof
WO1999021415A1 (en) Nuclear transfer for production of transgenic animal embryo
US7083971B1 (en) Hybrid yeast-bacteria cloning system and uses thereof
Converse et al. Counterselection and co-delivery of transposon and transposase functions for Sleeping Beauty-mediated transposition in cultured mammalian cells
EP2363470A1 (en) Method for introducing mutated gene, gene having mutation introduced therein, cassette for introducing mutation, vector for introducing mutation, and knock-in non-human mammal
CA2294619A1 (en) Methods of preforming homologous recombination based modification of nucleic acids in recombination deficient cells and use of the modified nucleic acid products thereof
JP2008054501A (ja) 線状哺乳類人工染色体及びその構築方法
Nickl et al. Multistep allelic conversion in mouse pre-implantation embryos by AAV vectors
Thomas-Gordon Artificial Intron Technology To Generate Conditional Knock-Out Mice
Allan et al. 43. The Use of P1 Bacteriophage Clones to Generate Transgenic Animals
USH2056H1 (en) Model for von Hippel-Lindau disease

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071004

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100817

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110712

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110909

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20110909

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111206

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20111214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4895100

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150106

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150106

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150106

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150106

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250