JP2008054501A - 線状哺乳類人工染色体及びその構築方法 - Google Patents

線状哺乳類人工染色体及びその構築方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 次世代へと安定して受け継がれていく人工染色体を提供する。
【解決手段】 (1)挿入部位を有する環状哺乳類人工染色体を構築した後、(2)テロメア配列を含むDNAコンストラクトを挿入部位に挿入することによって線状哺乳類人工染色体を構築する。
【選択図】 図2

Description

本発明は哺乳類人工染色体に関する。詳しくは、線状の哺乳類人工染色体、その構築方法、及びその利用に関する。
ヒト染色体セントロメア由来のアルフォイドDNAをYAC(線状)或いはBAC (環状)の前駆体構築物としてヒト培養細胞株HT1080に導入すると、これら前駆体が連なり数メガ塩基対となったヒト人工染色体(Human Artificial Chromosome: HAC)が形成される。HACはヒトやマウスの細胞株中で、細胞染色体と同調して複製・分配され、細胞あたり1コピーを保つことから新規哺乳類ベクターとして期待されている。また、HAC保有マウスの作製に成功しており、マウス体細胞内でもHACは安定に維持され、次世代への継承も確認された(特許文献1を参照)。
HACの汎用的な使用を目的に挿入部位を持つHACの構築法を確立し、HT1080細胞内で構築した挿入部位保有HACを、微小核融合法により様々な細胞種(CHO、トリDT40、マウス胚性幹細胞)にHACを移入した。どの細胞種でも希望するDNA配列をHACに簡便に挿入することができ、HAC内に挿入された遺伝子はプロモーター依存的な発現量を示した。
インタクトな前駆体の調製にBAC-DNAが適していることや、構築後のHACの構造内にテロメア配列が介在するなどの複雑さが生じないことから、挿入部位を保有するHACの構築にはBAC-DNAを前駆体として用いるのが有利である。BAC-DNAを前駆体として構築されたHACはテロメア配列を持たない環状の構造となる。
国際公開第2004/022741 A1号パンフレット
テロメアを有さない環状のHACは培養細胞内(ヒトHT1080、CHO、トリDT40、マウス胚性幹細胞)では安定に維持される。一方、動物の生殖系列の減数分裂においてテロメアは必須である。従って環状HACは、例えば動物個体で完全に次世代に受け継がれることを目的とする場合には適さない(或いは使うことが事実上できない)。次世代に受け継がれていくHACを構築できれば、生殖系列での減数分裂を正常に通過することにより、HACを介して安定に遺伝形質を次世代に受け継がせることやHAC同士の相同組み換え等に利用でき、その有用性は非常に高い。
このように、HACの構築技術が成熟し、実用化が近づきつつある現在、次なる発展として、減数分裂の際にも宿主細胞の染色体と同様に娘細胞へと受け継がれていくHACを提供することが切望されている。
HACが次世代に完全に受け継がれるためにはテロメア配列を持つ線状のHACが有効と考えられる。線状HACは動物細胞(宿主細胞)の染色体と類似の構造であることから、宿主細胞内で環状HACよりも安定に維持される可能性も高い。このように、線状のHACは環状のHACに比較して多くの利点を有する。そこで本発明者らは線状HACを構築する新たな方法を模索した。その結果、BAC前駆体から構築した環状HACにテロメア配列を挿入することにより簡便に環状HACを線状HACに変換するという、全く新しい発想に基づいた線状HACの構築方法を見出すに至り、実際に線状HACの構築にも成功した。この方法では(1)BAC前駆体を用いた環状MACの構築、(2)環状MACにテロメアを挿入することによる線状化、という二段階の操作によって、テロメア配列を有する線状MACが構築される。従来、線状HACを構築する方法としてYAC前駆体を用いるものが利用されているが、この従来の方法に比較して上記の構築方法は特に以下の利点を有する。
1.操作性に優れる。
2.好ましい部位にテロメア配列を挿入することが容易となり、高い効率で適切な形態の線状HACを構築可能である(YAC前駆体を用いた方法ではテロメアを適切な状態で有する線状MACが得られる確率が低い)。
3.HACに導入される外来遺伝子(目的遺伝子)などに悪影響を及ぼすことなくテロメア配列を挿入することが容易である(YAC前駆体を用いた方法では、前駆体間の組み換えの際、意図しない部位にテロメア配列が組み込まれ、導入される外来遺伝子の発現が影響を受けることが多い。また、不適切な部位に組み込まれたテロメア配列がHACの安定性に影響することもある。)
本発明は以上の知見及び成果に少なくとも一部は基づくものであり、以下のステップを含む、線状哺乳類人工染色体を構築する方法を提供する。
(1)挿入部位を有する環状哺乳類人工染色体を構築するステップ、及び(2)テロメア配列を含むDNAコンストラクトを前記挿入部位に挿入するステップである。
本発明の一態様では、挿入部位としてloxPサイト若しくはFRPサイト又はこれらいずれかの配列の一部を改変した配列が使用される。
一方、向かい合った二個のテロメア配列を含むDNAコンストラクトを使用することが好ましい。更に、二個のテロメア配列の間に選択マーカー遺伝子が介在していることが好ましい。
また、ステップ1において、挿入部位の近傍に配置されたインスレーター配列を有する環状哺乳類人工染色体を使用することが好ましい。挿入部位を挟むように配置された二つのインスレーター配列を有する環状哺乳類人工染色体を使用することがさらに好ましい。
本発明の一態様では、ステップ1における環状哺乳類人工染色体が、挿入部位に加えて、外来遺伝子を挿入するための第2挿入部位を有する。これによって、挿入部位を有する線状哺乳類人工染色体を構築することができる。
本発明の他の一態様では、ステップ1における環状哺乳類人工染色体が外来遺伝子を保持している。これによって、外来遺伝子を保持する線状哺乳類人工染色体を構築することができる。
本発明は更に新規な構成の線状哺乳類人工染色体を提供する。本発明の線状哺乳類人工染色体は以下の特徴を有する。即ち、BAC由来の骨格、哺乳類複製起点、哺乳類セントロメア配列、哺乳類テロメア配列を有し、線状であって、哺乳類細胞中で複製され、宿主細胞の染色体外に維持され、及び細胞分裂の際に娘細胞に伝達される。
哺乳類セントロメア配列は例えば、5'-NTTCGNNNNANNCGGGN-3':配列番号1(但し、NはA,T,C,及びGのいずれかである)の配列が規則的間隔で複数個配列される領域を含む。
哺乳類セントロメア配列がヒト染色体アルファサテライト領域由来の配列を含むことが好ましい。特に、哺乳類セントロメア配列がヒト21番染色体由来の11量体繰返しユニットを含むことが好ましい。
本発明の一態様の線状哺乳類人工染色体は、テロメア配列の近傍に配置されたインスレーター配列をさらに含む。一方、目的遺伝子の配列又は所望の配列を挿入するための挿入用配列をさらに有していてもよい。挿入用配列としてはloxPサイト若しくはFRTサイト又はこれらいずれかの配列の一部を改変した配列を使用することができる。
本発明は更に、本発明の線状哺乳類人工染色体を自己の染色体外に保有する哺乳類細胞を提供する。
本発明の第1の局面は線状哺乳類人工染色体(mammalian artificial chromosome)の作製方法に関する。尚、以下の説明において哺乳類人工染色体をMACともよび、これにはヒト人工染色体(human artificial chromosome;以下、「HAC」ともいう)が含まれる。
本発明の線状哺乳類人工染色体(以下、「線状MAC」ともいう)の作製方法は、(1)挿入部位を有する環状哺乳類人工染色体(以下、「環状MAC」ともいう)を構築するステップと、(2)テロメア配列を含むDNAコンストラクトを前記挿入部位に挿入するステップとを含む。このように本発明の方法は、環状MACの構築と、環状MACにテロメアを挿入することによる線状化という二段階の操作によって、テロメア配列を有する線状MACを構築する点に特徴を有する。
(環状MACの構築方法)
環状MACは、(1)哺乳類セントロメア配列を含む第1環状ベクターと、挿入部位を含む第2環状ベクターとを哺乳類宿主細胞に導入する第1工程、(2)形質転換細胞を選択する第2工程、及び(3)選択された形質転換細胞の中からMACを保有する細胞を選択する第3工程を含む方法によって構築することができる。
第1工程における第1環状ベクターと第2環状ベクターの導入方法は特に限定されるものではないが、これら二つのベクターを同時に哺乳類宿主細胞に導入することが好ましい。哺乳類宿主細胞内でのベクター間の組換えを効率的に行うためである。また、導入操作が簡便化されるからである。二つのベクターを同時に導入するためには、例えば導入操作に先立って両ベクターを混合しておき、そして宿主細胞への導入を行えばよい。
導入に供する第1環状ベクターと第2環状ベクターの量比は、挿入部位を保持したMACが適切に形成されるように、例えば第1環状ベクター:第2環状ベクターをモル比で約10:1〜約1:10とする。好ましくは第1環状ベクター:第2環状ベクターを約1:1とする。ここで、第1環状ベクターが少な過ぎる場合には活性のあるセントロメアを含むMACが形成されないおそれがあり、他方第2環状ベクターが少な過ぎる場合にはMACに挿入部位が取り込まれないおそれがある。一方で、第2環状ベクターの量を多くすることで効率的に挿入部位の取り込みを行わせることも可能である。
宿主細胞への各ベクターの導入方法は特に限定されず、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1984))、リン酸カルシウムを利用したトランスフェクション、マイクロインジェクション(Graessmann,M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366-370(1976))、エレクトロポーレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))等の方法を採用することができる。
宿主細胞内では第1環状ベクターと第2環状ベクターとの間で組換えが生じ、その結果として第1環状ベクター由来のセントロメア配列と第2ベクター由来の挿入部位とを備えたMACが形成される。
第1ベクター及び第2ベクターを導入する宿主細胞としては、その中で両ベクター間の組換えが行われるものが使用される。例えばヒト線維芽肉腫細胞株であるHT1080細胞、HeLa細胞、CHO細胞、K-562細胞等を宿主細胞として使用することができる。
第1環状ベクターと第2環状ベクターを導入した後に形質転換細胞(形質転換体)が選択される(第2工程)。形質転換細胞の選択は、第1環状ベクター又は第2環状ベクターに予め挿入しておいた選択マーカー遺伝子を利用してベクター導入後の細胞を選択的に培養することにより行うことができる。尚、両ベクターを導入後の細胞群から任意に細胞を分離した結果、分離した細胞が形質転換細胞である場合における当該分離する操作も本発明にいう「形質転換細胞の選択」に含まれる。
形質転換細胞を選択した後にMACを保有する細胞が選択される(第3工程)。かかる選択操作はMACに特異的なプローブや抗体などを用いた検出法によって行うことができる。具体的には、例えば第1環状ベクターが含む哺乳類セントロメア配列の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズするプローブを用いたin situハイブリダイゼーション法によって行うことができる。この工程において第2環状ベクターが適切に組込まれてMACが形成されていることを確認するために、第2環状ベクターに特異的な配列(例えば挿入部位の配列)の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズするプローブを用いて同様のハイブリダイゼーション分析を併せて行うことが好ましい。以上において使用される各プローブの検出には蛍光物質、放射性物質などを利用できる。プローブの標識に蛍光物質を用いる方法はFISH(Fluorescence in situ hybridization)法と呼ばれ、安全かつ簡便にMACを検出できる(Lawrence, J. B. et al. Cell 52:51-61,1998; Takahashi, E. et al. Jpn. J. Hum. Genet. 34:307-311,1989)。
第3工程に加えて、挿入部位が適切に組込まれたMACが形成されていることを確認する工程を行うことが好ましい。
以上の作製方法で得られる環状哺乳類人工染色体(MAC)は非選択条件下においても極めて安定的に維持され得る。尚、ここでの「非選択条件」とは、MACが存在する細胞のみの生存を可能にするような選択操作を行わない条件をいう。
使用する前駆体ベクター及び宿主細胞の種類等によっても異なるものと予想されるが、本発明の作製方法によれば宿主細胞へのDNAコンストラクト(第1環状ベクター及び第2環状ベクター)の導入操作後、非選択条件下、約30日経過後(約30継代後)に細胞(集団)の約95%以上にMACを保有させることが可能であり、しかもMACが1コピーのみ存在する状態を維持できる(WO 2004/022741を参照)。
最終的に得られる形質転換細胞(哺乳類細胞)が保有するMACの数は少ないほど好ましく、核あたり一つのMACを保有していることが特に好ましい。以上の作製方法によれば、効率的に核あたり一つの環状MACを保有する形質転換細胞を得ることが可能である。
(環状MACの前駆体としてのベクター)
以上の環状MACの構築方法では環状MAC前駆体として第1環状ベクターと第2環状ベクターが用いられる。第1環状ベクターは哺乳類セントロメア配列を含み、MACの複製及び安定的な維持に必要なセントロメアを供給し、他方、第2環状ベクターは挿入部位を含み、MACに組込まれる挿入部位の供給源となる。第1環状ベクターとして、特定の遺伝子(以下、「目的遺伝子」ともいう)をコードする配列(尚、当該遺伝子本来の制御領域の配列を含むことが好ましい)をさらに含むものを用いることができる。同様に、第2環状ベクターとして、目的遺伝子の配列をさらに含むものを用いることができる。かかる第1環状ベクター及び/又は第2環状ベクターを用いれば、特定の遺伝子をコードする配列を有する環状MACを構築できる。従って、この環状MACをもとにして構築される線状MACが目的遺伝子を保持することになり、それが導入された細胞内で目的遺伝子を発現させることができる。つまり、線状MACを特定の遺伝子の発現ベクターとして利用することができる。尚、環状MACへの組み込み効率などを考慮すれば、目的遺伝子をコードする配列は第2環状ベクターによって供給されることが好ましい。
本発明ではクローニング許容サイズの大きなベクターを使用することから、構造遺伝子に加えてその制御領域を含む大きなサイズのDNA断片を「目的遺伝子をコードする配列」として用いることができる。ここでの制御領域は、原則的には目的遺伝子自身の制御配列(染色体で目的遺伝子の制御に直接関与している領域の配列)を意味するが、その機能が維持される限度においてこれに一部の改変を施した配列であってもよい。ここでの「一部の改変」とは、対象となる配列において1若しくは複数の塩基を置換、欠失、挿入、及び/又は付加することをいう。このような改変は複数の領域になされていてもよい。
「目的遺伝子」としては種々の遺伝子を採用することができ、ヒトグアノシン三リン酸シクロヒドロラーゼI(GCH1)遺伝子、ヒトβグロビン遺伝子群、RBやp53などの癌抑制遺伝子、c-mycやp53などのアポトーシス誘導遺伝子、サイトカイン、各種増殖因子、抗体、腫瘍抗原等をコードする遺伝子等をその例として挙げることができる。目的遺伝子をコードする配列はゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。
目的遺伝子の配列は例えば公知のライブラリーから調製することができる。特定の遺伝子(及びその制御領域)の配列を含むベクタークローンからなるライブラリーを利用可能な場合には、これから調製される遺伝子(及びその制御領域)の配列を含むベクターを本発明の環状ベクター(又はその作製材料)として用いることもできる。例えば、CITB (California Institute of Technology) Human BAC Libraries、RPCI-11 (Roswell Park Cancer Institute) Human BAC Library(Keio Univercity)、CITB Mouse BAC Library、 RPCI-22 Mouse BAC LibraryなどのBACライブラリーや、RPCI Human PAC Libraries、RPCI-21 Mouse PAC LibraryなどのPACライブラリー、又はCEPH Human YAC Library、Washington University Human YAC library、WI/MIT 820 YAC Library、 Whitehead I Mouse YAC LibraryなどのYACライブラリー(以上、Reseach Genetics 社、2130 Memorial Parkway SW, Huntsville, AL 35801, US)を利用することができる。
複数種類の目的遺伝子をコードする配列を有する第1環状ベクター又は第2環状ベクターを使用することもできる。かかる態様では最終的に、複数種類の目的遺伝子が発現可能に保持された線状MACを構築することが可能となる。このことは例えば、協同的に作用する複数の遺伝子などを同時に導入するためのツールとして本発明の線状MACを利用できることを意味する。
「複数種類の目的遺伝子をコードする配列」として、複数のタンパク質が相互作用して特定の効果が得られる場合において当該複数のタンパク質に対応する塩基配列を含むものや、一連の反応系に必要な複数の酵素に対応する塩基配列を含むものを例示することができる。このような場合には、各発現産物に対応する配列ごとにその発現を制御する配列を使用することも可能であるが、全ての発現産物或は一部(二つ以上)の発現産物の発現を一括して制御することが可能な配列を使用してもよい。例えば、複数の発現産物に対応する配列を一つのプロモーター配列の制御下に配置して構成したコンストラクトを使用することができる。
特定遺伝子配列に代えて、それが発現することによって特定の遺伝子発現の抑制や特定のRNAの働きを抑制する等の機能を有する配列、例えばいわゆるアンチセンスRNAやリボザイムRNA等をコードする配列を用いることもできる。
第1環状ベクター及び第2ベクター環状として細菌(大腸菌など)において自律複製できるBAC(bacterial artificial chromosome)又はPAC(P1 artificial chromosome)を用いることができる。BAC又はPACを使用することは、導入操作、増幅、維持などの取り扱いが容易であり、また様々な種類のものを入手可能であるといった利点を有する。
本発明で使用される環状ベクターは公知のBAC又はPACに必要な改変を施すことにより構築され得る。例えば、Belo-BAC(New England Biolabs inc., Beverly, MA 01915-5599)を出発材料として、これに制限酵素処理等によって哺乳類セントロメア配列の挿入部位を作製し、この挿入部位に別途用意した哺乳類セントロメア配列を挿入することにより、哺乳類セントロメア配列を含む環状ベクター(第1環状ベクター)を構築することができる。一方、挿入部位を含むベクター(第2環状ベクター)も、第1環状ベクターと同様に、公知のベクターに遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。
第1ベクター環状及び/又は第2環状ベクターが選択マーカー遺伝子を含んでいることが好ましい。これらのベクターを用いてトランスフォーメーション(トランスフェクション)を行った際に、選択マーカー遺伝子を利用して形質転換細胞を容易に選択することが可能となるからである。いずれかのベクターのみが選択マーカー遺伝子を含んでいることがさらに好ましい。選択マーカーの使用数を削減することにより、環状MACの作製あるいはその利用の過程において必要な各選択操作がより簡便化されるからである。
さらに、第1環状ベクターのみが選択マーカー遺伝子を含んでいることが特に好ましい。かかる構成によれば、選択マーカー遺伝子を利用して哺乳類セントロメア配列が適切に導入された形質転換細胞を選択することができ、即ち染色体として機能するDNAコンストラクトを保有する可能性の高い形質転換細胞を効率的に選択することが可能となる。その一方で、挿入部位を含むベクター(第2環状ベクター)に選択マーカーを挿入する必要がなくなることから、選択マーカー遺伝子を含まないクローンの集合からなる市販のライブラリーから調製したベクターをそのままの状態で(即ち、選択マーカー遺伝子を挿入する操作を経ることなく)第2環状ベクターとして使用できるという利点も有する。加えて、第2環状ベクターが選択マーカー遺伝子を含む必要がないことは、その分だけ第2環状ベクターに挿入できるインサートDNAのサイズに余裕ができ、特に、挿入部位に加えて目的遺伝子をコードする配列などを組み入れる際に有利となる。
(哺乳類セントロメア配列)
本発明において「哺乳類セントロメア配列」とは、哺乳類細胞内においてセントロメアとして機能する配列をいう。哺乳類セントロメア配列としては、例えばヒト染色体のアルファサテライト領域由来の配列を用いることができる。ここでの「アルファサテライト領域由来の配列」とはアルファサテライト領域の一部又は全部の配列、又はこれらいずれかの配列の一部に改変を施した配列を意味する。ここでの「一部に改変」とは、対象となる配列において1若しくは複数の塩基を置換、欠失、挿入、及び/又は付加することをいう。このような改変は複数の領域になされていてもよい。
ヒト染色体のアルファサテライト領域には一般に、5'-NTTCGNNNNANNCGGGN-3'(配列番号1)からなるCENP-B boxと呼ばれる配列が規則的間隔で複数個配置されている(Masumoto et al. NATO ASI Series. vol. H72, Springer-Verlag. pp31-43, 1993; Yoda et al. Mol. Cell. Biol., 16, 5169-5177, 1996)。本発明における哺乳類セントロメア配列は、好ましくはこのCENP-B boxを高頻度に有する領域を含んでいる。
ヒト21番染色体のアルファサテライト領域由来の配列を用いることが好ましい。ヒト21番染色体のアルファサテライト領域については詳細な検討がされておりα21-Iと呼ばれる領域が存在する。α21-I領域はアルフォイド11量体繰り返しユニットと呼ばれる配列を備え、この繰り返しユニットでは5'-NTTCGTTGGAAACGGGA-3'(配列番号2)なるCENP-B boxが規則的間隔で複数個配置されている(Ikeno et al. Human Mol. Genet., 3, 1245-1247, 1994)。
好ましくは、本発明における哺乳類セントロメア配列はこのようなアルフォイド11量体繰り返しユニットを複数有する。ヒト21番染色体のアルフォイド領域から分離され、同定された配列を配列番号3(約25kbのアルフォイド断片)に示す。
セントロメア配列は、構築された哺乳類人工染色体において適切な機能を有するセントロメアが形成されるのに十分な長さを有する。例えば約25kb〜約150kbのサイズ(例えば約50kb、約80kb、約100kb)のセントロメア配列を用いる。好ましくは約80kb以下、さらに好ましくは約50kb以下のセントロメア配列を用いる。サイズの小さなセントロメア配列を用いることは、これを含む第1環状ベクターの分離、精製などの操作を容易とし、またクローニング及び/又は増殖時に生じ得る脱落、改変などの確率を低下させる。尚、環状ベクター(BAC)を用いた例において約50kbのアルフォイドDNAをセントロメア配列として用いた場合においてもセントロメア/キネトコア構造を適切に形成可能な人工染色体が構築されることが確認されている(WO 2004/022741を参照)。
哺乳類セントロメア配列は、適当なヒト細胞や、WAV17等のヒト染色体を保有する融合細胞、又はヒト以外の哺乳類細胞から調製され得る。例えば、これらの中のいずれかの細胞をアガロースプラグとして固定した後、制限酵素処理、パルスフィードゲル電気泳動(以下、「PEGE」ともいう)等によって目的のセントロメア配列を含むDNA断片を精製、濃縮する。その後、適当なベクターにクローニングし、使用に供する。
一方、哺乳類セントロメア配列を保有するクローンを含むライブラリーを利用できる場合には、これから適宜制限酵素処理等を用いて哺乳類セントロメア配列を取得することができる。たとえば、LL21NC02ライブラリー(Lawrence Livermore Laboratory)を利用してα21-Iアルフォイド断片を取得し、この断片を哺乳類セントロメア配列として使用することができる。この場合、取得したα21-Iアルフォイド断片を複数用いて哺乳類セントロメア配列を構築してもよい。さらには、互いに大きさの異なるα21-Iアルフォイド断片を複数取得し、これらを組合わせて哺乳類セントロメア配列を構築してもよい。
(哺乳類複製起点)
一般に哺乳類セントロメア配列内には一つ以上の複製起点が存在する。従って、通常、哺乳類セントロメア配列を含む第1環状ベクターには哺乳類複製起点が含まれる。使用する哺乳類セントロメア配列が哺乳類複製起点を含んでいない場合には、別途、哺乳類複製起点を第1環状ベクター又は第2環状ベクターに含有させる。
(挿入部位)
第2環状ベクターに組み込む挿入部位(挿入用配列)の種類は特に限定されるものではないが、loxPサイト又はFRT(Flp Recombination Target)サイト等を好適に用いることができる。例えばloxPサイトを用いればloxPサイトを有する環状MACが構築され、これにCreリコンビナーゼを作用させることによって部位特異的にテロメア配列を挿入することができ、環状MACから線状MACへの変換を効率的に行うことができる。同様に、FRTサイトを用いた場合にはFlpリコンビナーゼを利用して効率的な線状化を実施できる。尚、loxPサイト又はFRTサイト等の一部を改変した配列(例えばlox66、lox71)であっても所望の配列を挿入する機能を有する限りにおいて挿入用配列として使用することができる。改変の例としては、その一部を削除、追加、或は置換などして導入効率を高めたり又は導入反応のみが特異的に行われるようにすることが挙げられる。
哺乳類セントロメア配列を含む第1環状ベクターと、挿入部位(挿入用配列)を含む第2環状ベクターとの共導入によって環状MACを構築すれば、環状MACにおいてそのセントロメアから離れた位置(即ちセントロメアに挟まれない位置)に挿入部位を組込むことが可能であり、適切に機能する挿入部位を保持した環状MACが構築される。
2種類以上の挿入部位を組み込んだ第2環状ベクターを用いることが好ましい。かかる第2環状ベクターを前駆体として用いれば、種類の異なる複数の挿入部位を有する環状MACが構築される。そして、挿入部位の中のいずれかを利用してテロメア配列を挿入し、線状化すれば、テロメアの挿入に利用されなかった挿入部位を有する線状MACが最終的に構築される。挿入部位を有するこのような線状MACは、所望の遺伝子を運搬(細胞等への導入)することに利用できる。このように、2種類以上の挿入部位を組み込んだ第2環状ベクターを用いれば、汎用性の高いベクターとして利用可能な、挿入部位を有する線状MACを構築することができる。
具体的には例えばloxPサイト(又はその変異配列)とFRPサイトを含む第2環状ベクターを用い、テロメア配列の挿入にloxPサイト(又はその変異配列)を利用することにすれば、最終的に構築される線状MACはFRPサイトを有することになる。従って、FRPサイトを利用して所望の遺伝子(目的遺伝子)を線状MACに導入することが可能となる。
(インスレーター配列)
本発明で使用される第2環状ベクターがインスレーター配列を有していることが好ましい。ここにインスレーター配列とは、エンハンサーブロッキング効果(隣会う遺伝子の発現が互いに影響を受けない)又は染色体バウンダリー効果(遺伝子発現を保証する領域と遺伝子発現が抑制される領域を隔て区別する)を発揮することによって特徴付けられた塩基配列のことをいう。第2環状ベクターにおいて、挿入部位の近傍にインスレーター配列を配置すれば、(1)環状MACの線状化の際、挿入部位での組換え効率が向上し(挿入部位の機能が良好に発揮される)、高効率で線状MACが構築される、(2)挿入部位を利用して組み込まれたテロメア配列の機能が良好に発揮される、といった効果を期待できる。また、インスレーター配列の近傍に挿入部位と選択マーカーが配置されるように第2ベクターを構築すれば、挿入部位に対する上記効果に加えて、選択マーカー遺伝子の機能が良好に発揮され、選択の際の操作性や感度などが向上するという効果も期待できる。
使用できるインスレーター配列は特に限定されず、既にインスレーターとして同定されている配列は勿論のこと、期待される効果(目的遺伝子の発現促進又は遺伝子導入効率の上昇)を減殺しない限度でそれらの配列に改変を加えた配列などを本発明におけるインスレーター配列として用いることができる。複数のインスレーター配列を併用してもよい。複数のインスレーター配列を併用する場合には、一種類のインスレーター配列のみを使用しても、複数種類のインスレーター配列を組み合わせて使用してもよい。尚、これまでにインスレーター配列として、ヒトβグロビンHS1〜5、ニワトリβグロビンHS4(chicken β-globin HS4)、ショウジョウバエ・ジプシーレトロトランスポゾン(Drosophila gypsy retrotransposon)、ウニ・アリールスルファターゼ5’フランキング領域(sea urchin 5’flanking region of arylsulfatase)、ヒトT細胞受容体α/δの阻害因子α/δ(blocking element α/δ of human T-cell receptor α/δ)、アフリカツメガエル・40SリボソームRNA遺伝子リピートオーガナイザー(repeat organizer of Xenopus 40S ribosomal RNA gene)等が知られている。
インスレーター配列を使用する場合に用いられる第2環状ベクターの具体例としては、loxP等の挿入用配列を有し、当該挿入用配列の5’側にインスレーター配列を有するものを挙げることができる。
挿入用配列の5’側ではなく3’側にインスレーター配列を配置した第2環状ベクターとしてもよく、或いは、挿入用配列を挟むように両側にインスレーター配列を配置した第2環状ベクターとしてもよい。さらに、いずれの位置に配置する場合においても、複数のインスレーター配列を連続的に又は他の配列を介在させて配置することとしてもよい。
挿入部位及び選択マーカー遺伝子をインスレーター配列で挟んだ構造を有する第2環状ベクターを使用することが特に好ましい。かかる第2環状ベクターを使用すれば、インスレーター配列による上記の各効果が一層良好に発揮されることを期待できる。
(テロメア配列を含むDNAコンストラクト及びその導入方法)
本発明の方法では、挿入部位を有する環状MACを構築した後、当該挿入部位へテロメア配列を含むDNAコンストラクトが挿入される。具体的には例えば、(1)挿入部位を有する環状MACを、微小核形成能を有する細胞内に構築し、(2)微小核融合法で環状MACを適当な哺乳類細胞(ターゲット細胞)に移入することで、挿入部位を有する環状MACを保有する哺乳類細胞を得て、(3)当該哺乳類細胞内において、テロメア配列を含むDNAコンストラクトを環状MACの挿入部位へ挿入する。
微小核形成能を有する哺乳類細胞としては、例えばマウスA9細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA 20110-2209)、マウスES細胞、CHO細胞等を用いることができる。細胞融合はPEG(Polyethlene Glycol)を用いて行うことができる。
微小核融合法は一般に、コルセミド処理等による微小核多核細胞の形成、続いてサイトカラシンB処理及び遠心処理等による微小核体の形成及び回収、回収した微小核体とターゲット細胞との融合からなる。ここでのターゲット細胞としては例えばCHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞(組織幹細胞)などを用いることができる。
テロメア配列を含むDNAコンストラクトの環状MACの挿入部位への挿入は、挿入部位の種類(性質)に応じた適当な方法で実施される。例えば環状MACに組み込まれる挿入部位としてlox71(loxPの変異配列)を用い、Creリコンビナーゼの作用による部位特異的組み換えを利用する場合には、環状MACを保有する細胞に対して、テロメア配列及びlox66(loxPの変異配列)を含むDNAコンストラクトを保持したベクター(挿入ベクター)とCre遺伝子を保持したベクター(Cre発現ベクター)とを共導入すればよい。これによってCreリコンビナーゼによる部位特異的組み換えが起き、テロメア配列を含むDNAコンストラクトを環状MACに挿入することができる。以上のような、Cre/loxシステムに代表される部位特異的組み換え反応を利用した挿入操作によれば、テロメア配列を含むDNAコンストラクトの挿入を高効率で行える。
「テロメア配列」とは、真核生物の染色体の末端に共通して認められる繰り返し配列であり、ヒトなどの染色体ではTTAGGGの繰り返し配列からなる。
例えば500 b長以上(例えば約1kb長)のテロメア配列を用いて、本発明におけるテロメア配列を含むDNAコンストラクトを構築することができる。尚、使用するテロメア配列は長い方が好ましいと考えられる。
テロメア配列を含むDNAコンストラクトは好ましくは、向かい合った二個のテロメア配列を含む。この場合の各テロメア配列の長さは例えば500 b長以上(例えば約1kb長)とすることができる。かかるDNAコンストラクトを用いれば、環状MACの挿入部位への挿入後にテロメア配列間で切断が生ずることによって環状MACが線状化し、そして両末端に適切な方向でテロメア配列が配置された線状MACが得られる。このようにして構築された線状MACは宿主細胞内で安定して維持されることが予想される。また娘細胞への伝達も良好に行われると考えられる。
二個のテロメア配列の間には他の配列が介在していても、介在していなくてもよい。好ましくは、これらのテロメア配列間に選択マーカー遺伝子が介在するDNAコンストラクトを使用する。これによって、DNAコンストラクトの挿入後、二個のテロメア配列の間で適切な切断が生じて環状MACが線状化されたことを、選択マーカー遺伝子の発現の有無を指標に判定できる。つまり、線状化した哺乳類人工染色体を容易に選別可能となる。
ここでのDNAコンストラクトには通常、テロメア配列に加えて、環状MAC上の挿入部位へのDNAコンストラクトの挿入を可能にするための挿入用配列(例えばlox71に対するlox66)が組み込まれている。この挿入用配列に加えて更に、当該挿入用配列と種類の異なる挿入用配列(説明の便宜上、第2挿入用配列と呼ぶ)を含むDNAコンストラクトを用いることもできる。かかるDNAコンストラクトを用いれば、環状MACの線状化と同時に当該挿入用配列(第2挿入用配列)を組み込むこむことでき、線状化したMACが第2挿入用配列を保持することになる。従って、所望の遺伝子を挿入可能な線状MACを構築することができる。例えば、環状MACへのDNAコンストラクトの挿入を、Cre-loxシステムを利用して実施する場合には、FRTサイトをここでの第2挿入用配列として好適に用いることができる。
また、テロメア配列を含むDNAコンストラクトがさらにインスレーター配列を有することが好ましい。インスレーター配列を用いることによって、環状MACへのDNAコンストラクトの挿入に利用される挿入用配列の機能が一層良好に発揮されることを期待できる。また、インスレーター配列を上記第2挿入配列と併用すれば(インスレーター配列を第2挿入配列の近傍に配置することが好ましい)、最終的に構築される線状MACが保持することとなる第2挿入用配列に対して当該インスレーター配列が作用し、第2挿入用配列の機能(即ち目的遺伝子の挿入)が一層良好に発揮されることを期待できる。また、選択マーカーの近傍にインスレーター配列を配置しておけば、選択マーカーの発現も良好となり、選択操作の面でも有利となる。
(哺乳類人工染色体の性質)
本発明において構築される哺乳類人工染色体(MAC)は以下の性質を備える。即ち、(1)BAC由来の骨格を有する、(2)哺乳類複製起点、哺乳類セントロメア配列、両端に配置される哺乳類テロメア配列を有し、線状である、(3)任意の要素として、目的遺伝子の配列(好ましくはその制御領域をコードする配列も含む)又は所望の配列を挿入するための挿入用配列を有する、(4)哺乳類細胞中で複製される、(5)宿主細胞の染色体外に維持される、及び(5)細胞分裂の際に娘細胞に伝達される。尚、哺乳類複製起点は哺乳類セントロメア配列内に存在していてもよい。
以上の諸性質を備えることにより、本発明の線状MACはそれが導入される哺乳類細胞内で染色体として機能しつつ、細胞分裂の際に実質的な構造変化を伴うことなく娘細胞へと適切に分配されて維持される。
哺乳類セントロメア配列はCENP-B box配列を含んでいることが好ましい。CENP-B boxを高頻度に有する領域を含んでいることが特に好ましい。さらには、哺乳類セントロメア配列がヒト21番染色体のアルファサテライト領域由来の配列、特にα21-Iアルフォイド領域の配列を含んでいることが好ましい。
本発明の線状MACは、哺乳類細胞以外の細胞(例えば酵母細胞、大腸菌などの細菌)で自律的に複製し分配されることを可能にするDNA配列を更に有していてもよい。このようなDNA配列を有することにより、本発明の線状MACは哺乳類細胞以外の細胞においても染色体として機能する。従って、本発明の線状MACをシャトルベクターとして利用し得る。
本発明の線状MACは、好ましくはテロメア配列の近傍にインスレーター配列を有する。特に好ましくは、両端のテロメア配列の近傍にそれぞれインスレーター配列を有する。
本発明の一態様では、線状MACが挿入部位(挿入用配列)を有する。かかる線状MACでは、挿入部位を利用して所望の遺伝子(目的遺伝子)などを組み込むことができ、汎用性の高いベクターとして利用可能となる。挿入用配列としてはloxPサイト又はFRT(Flp Recombination Target)サイト、或いはこれらの変異配列などを好適に用いることができる。
(線状MACを保有する宿主細胞)
本発明の他の局面は、以上の方法によって作製される哺乳類人工染色体(線状MAC)を保有する形質転換細胞(形質転換体)を提供する。かかる形質転換細胞は線状MACを他の細胞に移入する際の供給源として利用することができる。また、それ自身を生体に導入するなど、哺乳類人工染色体を生体内に導入するための運搬体として利用することもできる。
(哺乳類人工染色体の移入)
本発明の線状MACを、それを保有する細胞から他の哺乳類細胞へと移動(移入、導入)させることができる。線状MACの哺乳類細胞への移入は例えば次の方法で行うことができる。
まず、線状MACを保有する宿主細胞から線状MACを分離し、分離された線状MACを哺乳類細胞(ターゲット細胞)に導入する。線状MACの分離は、例えば次の方法によって行うことができる。まず線状MACを保有する宿主細胞の懸濁液を調製し、そして核酸成分を抽出する。その後フィコールなどを用いた密度勾配遠心法によって染色体が含まれる画分を取得する。続いて、フィルター等を用いて分子量の小さい人工染色体を分離する。
分離された線状MACを哺乳類細胞へ導入する方法としてはリポフェクション、リン酸カルシウムを利用したトランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポーレーションなどから適宜好適な方法を選択することができる。
細胞融合を利用した以下の方法で線状MACを哺乳類細胞へ導入することもできる。まず、線状MACを保有する宿主細胞と微小核形成能を有する哺乳類細胞とを融合させ、続いて融合細胞の中から微小核形成能を有し且つMACを保有するハイブリッド細胞(雑種細胞)を選択する。ここで、微小核形成能を有する哺乳類細胞としては、例えばマウスA9細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA 20110-2209)、マウスES細胞、CHO細胞等を用いることができる。細胞融合はPEG(Polyethlene Glycol)を用いて行うことができる。目的のハイブリッド細胞の選択は、マウスA9を使用した場合を例に採れば、融合に使用した宿主細胞に特異的な選択マーカーとウワバインとを利用した選択培養によって行うことができる。
次に、選択されたハイブリッド細胞から微小核を形成させる。一般的にはコルセミド処理をして微小核多核細胞を形成させ、続いてサイトカラシンB処理及び遠心処理をして微小核体を得る。
微小核体は、PEGを利用した融合法等によって哺乳類細胞(ターゲット細胞)と融合される。以上の工程によって哺乳類細胞へのMACの移入(導入)が行われ、線状MACを保有する哺乳類細胞が得られる。
ここでのターゲット細胞としては、ヒト又は非ヒト哺乳動物(マウス、ラットなど)の特定組織を形成する細胞(線維芽細胞、内皮細胞、心筋細胞)、生殖細胞(受精卵を含む)、胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell:EG細胞)、組織幹細胞(造血系幹細胞、間葉系幹細胞、神経系幹細胞、骨系幹細胞、軟骨系幹細胞、上皮系幹細胞、肝幹細胞など)などが用いられる。これらの幹細胞に対して特定の組織の細胞へと分化するように誘導処理を施した細胞をターゲット細胞として用いることもできる。このようなターゲット細胞としては、例えば神経系幹細胞に血小板由来増殖因子(PDGF)、毛様体由来神経栄養因子(DNTF)及びトリヨードサイロニン(T3)を用いてそれぞれニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトへと分化誘導した細胞、間葉系幹細胞にデキサメタゾン及びアスコルビン酸をなどを用いて骨芽細胞へと分化誘導した細胞、間葉系幹細胞をTGF−βの存在下で培養して軟骨細胞へと分化誘導した細胞が挙げられる。
本発明の線状MACを導入する細胞として、魚類(メダカ、ゼブラフィッシュなど)、両生類(アフリカツメガエルなど)、鳥類(ニワトリ、ウズラなど)など、哺乳類以外の脊椎動物の細胞を用いることもできる。
ターゲット細胞への線状MACの移入はin vitro、in vivo又はex vivoで行われる。例えば生体内の細胞に対して直接、哺乳類人工染色体(MAC)の移入を行うことにより、又は生体外でMACを移入した細胞を生体に導入することにより、生体を構成する所望の部位(例えば、心臓、肺等の特定の組織)に線状MACを導入できる。その結果、導入部位においてMACに保持された機能配列からの発現が行われる。このように線状MACを、外来遺伝子を生体内へと導入するためのベクターとして利用できる。線状MACはクローニング許容サイズが大きいことから、特に制御領域を含む大きな外来遺伝子を導入するためのベクターとして好適に利用することができる。
より具体的には、本発明の線状MACは例えば遺伝子治療用のベクターとして利用され得る。即ち、欠損遺伝子の機能補填を目的として外来遺伝子を導入することや、異常遺伝子の発現を抑制又はその発現産物の作用を抑制する目的で外来遺伝子を導入すること等に本発明の線状MACを利用することができる。本発明の線状MACはそれを導入した細胞内で安定して維持されることから、導入遺伝子が安定的、かつ長期的に発現され、優れた治療効果が期待される。また、本発明の線状MACを利用すれば制御領域を含んだ、サイズの大きな外来遺伝子を導入可能であるから、それを導入した細胞内で本来の制御領域に支配された遺伝子発現を行うことができる。この観点からも優れた治療効果が期待される。
また、本発明の線状MACは所望の遺伝子の機能又はその作用メカニズムを解明するための手段をも提供する。特に、サイズが大きいがために従来のベクターでは遺伝子導入を行うことができなかった遺伝子の機能又は作用メカニズムを解明するための手段を提供する点で有用である。即ち、機能が未知の又は作用メカニズムが未知の遺伝子の研究手段も提供する。特に本発明のMACは、外来遺伝子をその本来の制御領域に支配された発現が可能なように保持できることから、組織特異的発現機構の解析や、マウスなどモデル動物個体に導入したヒト遺伝子の発現解析、阻害剤や促進剤の開発などに威力を発揮すると考えられる。
特に記載のない限り、本明細書における遺伝子工学的操作は例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)或いはCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参考にして行うことができる。
<BAC前駆体を用いた線状ヒト人工染色体(線状HAC)の構築>
1.挿入部位を有する環状哺乳類人工染色体の構築
(1)アルフォイド前駆体の調製
Belo-BACのXhoIサイトにMluI-SfiI-SacIIリンカーを挿入してpBAC-TANを作製した。LL21NC02ライブラリー(Lawrence Livermore Laboratory)から得られたコスミドクローンであるQ25F12をSfiI消化及びpBAC-TANのSfiIサイトへクローニングすることによって約25kbのα21-Iアルフォイド断片(α25:配列番号3)を単離した。その結果得られた、アルフォイド配列がタンデム状に配列されてなる50kbアルフォイドインサートを含んだコンストラクトをMluI及びSacIIで消化し、続いてアルフォイド断片をpBAC-TANのMluI-SacIIサイトに挿入することにより、50kbのアルフォイド断片を含むアルフォイド-BACを構築した。続いて、アルフォイド-BACのSalI-SalI(Cos, loxP配列)を取り除いた前駆体(アルフォイド前駆体)を得た。
(2)ヒトβグロビンHS部位の調製
ヒトβグロビン遺伝子領域をカバーするYACクローン(A201F4.3, Dr. Douglas Engel, Northwestern Univ.より供与)からβグロビン遺伝子の5’上流の5’HS5(GenBank data base NG000007の4818から8173)と3’下流の3’HS1(GenBank data base AC104389の8255から13891)をpTWV229ベクター(タカラバイオ株式会社)のマルチクローニング部位にそれぞれクローン化した(TWV-5’HS5とTWV-3’HS1)。
(3)アクセプター前駆体の調製
pAc-lox71-bsr-pA(Dr.Yamamura, Kumamoto Univ.より供与、Kimi Araki, Masatake Araki and Ken-ichi Yamamura(1997))からHindII断片(bsr遺伝子)を取り除きpPGK-neo-bpA(Cell,64, 693-702, 1991)のPstI-XbaI(neo遺伝子)を挿入し、CAG-lox71-neoを構築した。
3断片(TWV-5’HS5、CAG-lox71-neo、TWV-3’HS1)を順にBelo-BACのHpaI、NotI、SalI部位に挿入し、BAC-HS(CAG-lox71-neo)を構築した(図1を参照)。尚、この前駆体BAC-HS(CAG-lox71-neo)の特徴は、lox71部位の5’側にCAGプロモーター(各種哺乳類培養細胞、マウス個体において安定した遺伝子発現が期待できる)が配置され、組み換えの際に、プロモーターを持たない(プロモーターレス)選択マーカー遺伝子と期待通りに組み換えが生じた時のみ、CAG-選択マーカー遺伝子が構築され、遺伝子の発現が起こるようになっている。
(4)前駆体BACのHT1080細胞への導入
(1)で調製したアルフォイド前駆体とアクセプター前駆体(BAC-HS(CAG-lox71-neo))をリポフェクション(リポフェクタミン(ギブコ BRL)を使用)でHT1080細胞に共導入し、薬剤(neo)耐性細胞からFISHにより人工染色体を保有する細胞株を選び出した。尚、この操作は製品使用説明書に従って行った。
2.環状ヒト人工染色体(環状HAC)の線状化
(1)微小核融合法による環状HACのCHO細胞への移入
以上の操作によってHT1080細胞内に構築された環状HAC(インスレーター配列(HS5、3’HS1)で両脇を挟んだ挿入部位(Cre/lox組換え部位:CAG/lox71/neo)を持つ環状ヒト人工染色体)を、微小核融合法によりCHO細胞に移入した。
微小核体介在性染色体導入(MMCT)(Fournier et al. 1997)を可能とするためにHAC保有細胞株とマウスA9細胞株をPEGを用いて融合した。即ち、HAC保有細胞株(5x105)及びマウスA9細胞(5x105)を共培養し、そしてPEG/DMSO溶液(シグマ)内で融合させた。続いてジェネティシン(geneticin)及びウワバイン(Ouabain)耐性細胞をそれぞれジェネティシン(600μg/ml)及びウワバイン(3μM)で選択し、ジェネティシン及びウワバイン耐性細胞株をFISHで分析した。HAC及びヒト染色体を同定するためにそれぞれBACベクタープローブ及びアルフォイド反復配列プローブをメタフェイズ・スプレッドにハイブリダイズさせた。HACを保有することが確認された融合細胞株に終濃度0.05μg/mlとなるようにコルセミドを加えた後、37℃、5%CO2の条件で72hr培養した。トリプシン処理により細胞を回収し、血清を含まないD-MEM培地に懸濁した。サイトカラシンBを20μg/mlになるように加えて37℃、5min.放置した後、予め37℃に保温しておいたPercolを等量加えた。続いて遠心処理(15,000rpm、90min.)を行い、微小核を回収した。回収した微小核を、血清を含まないD-MEM培地に懸濁した後、再び遠心処理(2,000rpm、5min.)を行い、得られた沈殿(微小核)を再度、血清を含まないD-MEM培地に懸濁した。この操作を2回繰り返した後、微小核を含む沈殿にCHO細胞を加えて1,500rpm、5min.の遠心処理を行い、細胞と微小核を沈殿させた。上清を捨てた後、1mlのF12Ham培地を加えて懸濁させた。この状態で10分間静置(室温)した。続いて、1,500rpm、5min.の遠心処理によって細胞と微小核を沈殿させ、上清を捨てた後に1mlのPEG1500(ロッシュ)を加えて懸濁させた。室温で90秒間静置した後にF12Ham培地を5ml加え、遠心処理(1,000rpm、5min.)し、細胞を回収した。
回収した細胞にF12Ham培地を10ml加えた後、1,000rpm、5min.の遠心処理による洗浄を2回行った。洗浄後の沈殿をF12Ham培地に懸濁し、得られた細胞懸濁液を培養に供した。培養開始から24時間経過した時点で、ジェネティシンを終濃度400μg/mlで含むF12Ham培地に交換して培養を継続した。この選択操作を開始後5日目にF12Ham培地(ジェネティシンを終濃度400μg/mlで含む)に交換し、更に5日間培養を継続した。以上の操作によって、環状HACを保有するCHO細胞を得た。
(2)HAC挿入部位へのテロメア配列の挿入
単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(TK)を中心に向かい合った1kb長のテロメア配列(TTAGGG)を持つ挿入ベクターとCre発現ベクター(pCAG-Cre)とを、環状HACを保有するCHO細胞に共導入し、HACの挿入部位にテロメア配列の挿入を進めた(図2を参照)。TKは基質特異性が低いためにガンシクロビル(Ganciclovir)を取り込むことが可能であるためにネガティブ選択に用いる遺伝子である。尚、ここで用いた挿入ベクターは、lox71サイトとの組換え用のlox66サイトに加えてFRTサイトを有する。これによって、最終的に構築される線状HACは挿入サイト(FRTサイト)を有するものになる。また、挿入ベクターのFRTサイトとテロメア配列の間にはインスレーター配列3’HS1が配置されている。このインスレーター配列は、テロメア配列及びFRTサイト、更には選択マーカー遺伝子(ピューロマイシン)を十分に機能させること目的として使用される。
(3)形質転換細胞の選択
Cre組換えが成功した細胞をピューロマイシン(Puromycin)で選択し、その後ガンシクロビルによりPGK-TK遺伝子が切断された細胞株を選択した。
(4)テロメア配列の検出1
ピューロマイシン耐性かつガンシクロビル耐性の細胞株に対してテロメア配列をプローブに用いた蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)を行った結果、テロメア配列を挿入したHACの末端部に4点のテロメアシグナルが観察された(図3上欄)。尚、CHO細胞の染色体はテロメア以外にセントロメアに大量のTTAGGG配列を含んでいるために、セントロメアにより強いシグナルが観察された。
(5)テロメア配列の検出2
HACが線状化したことをさらに確かめるために、テロメア配列に結合する蛋白TRF2を抗体により検出した。CHO細胞の染色体と同様にHAC(矢印)に4点のTRF2シグナルが観察された(図3下欄)。以上により環状HACに向かい合ったテロメア配列を挿入することにより、線状化したHACを得る方法を確立した。
本発明によれば、テロメア配列を有し、線状の哺乳類人工染色体が提供される。宿主哺乳類細胞の染色体と同じ線状形態をとることによって、本発明の哺乳類人工染色体は次世代へと効率的に受け継がれていくことができる。従って、生殖細胞系列に外来遺伝子を組み込むためのベクターとして特に適し、例えば形質転換動物やクローン動物の作出などに利用される極めて有用なツールとなる。また、線状であることによって、それが導入された宿主細胞内において一層安定して維持されることも期待される。
本発明の線状哺乳類人工染色体は例えば、組織特異的遺伝子発現、経時的遺伝子発現の研究やモデル動物を使用したヒト型遺伝子の研究、薬剤(阻害剤、促進剤など)の開発などにおける遺伝子運搬体として、或いは遺伝子治療用のベクターとして有効に利用され得る。
一方、本発明の構築方法ではBAC前駆体を用いて環状哺乳類人工染色体を一旦構築した後、これを線状へと変換する。かかる手順によれば、従来のYAC前駆体から線状哺乳類人工染色体を構築する方法に比較して、全体としての操作が簡便となり、また高効率で目的の線状哺乳類人工染色体を構築可能となる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
哺乳類人工染色体の構築に使用したアクセプター前駆体BAC-HS(CAG-lox71-neo)を示す図である。 環状ヒト人工染色体(環状HAC)から線状ヒト人工染色体(線状HAC)への変換方法を模式的に示す図である。環状HACのlox71サイトと、テロメア配列を持つ挿入ベクターのlox66サイトとの間で部位特異的組換えが生じ、テロメア配列が挿入される。二つのテロメア配列の間が切断されることによって線状化する。線状HACは両端にテロメア配列を備える。各テロメア配列の近傍にはインスレーター配列が存在する。また、線状HACは挿入部位としてFRTサイトを有する。 環状HACの線状化によって構築された線状HACを対象としたFISH解析の結果(上欄の4枚)、及び蛍光染色解析の結果(下欄の2枚)である。上欄の左(1枚)の結果では、線状HACが矢印で示される。テロメア配列のシグナルは緑色、BACのシグナルは赤色である。上欄の右(3枚)は線状HAC部分を拡大したものである(左:テロメア配列プローブで検出、中央:BACプローブで検出、右:両プローブの検出結果の合併)。4箇所のテロメア配列が認められる(矢印)。図3の下欄では線状HACが矢印で示される。TRF2のシグナルはピンク色である。下欄の右は線状HAC部分を拡大したものである。4箇所にTRF2のシグナル(テロメア配列)が認められる。尚、図3の下欄ではBACプローブによるFISH結果を重ねている(BACのシグナルは緑色)。

Claims (16)

  1. 以下のステップを含む、線状哺乳類人工染色体を構築する方法、
    (1)挿入部位を有する環状哺乳類人工染色体を構築するステップ、
    (2)テロメア配列を含むDNAコンストラクトを前記挿入部位に挿入するステップ。
  2. 前記挿入部位がloxPサイト若しくはFRPサイト又はこれらいずれかの配列の一部を改変した配列である、請求項1に記載の構築方法。
  3. 前記DNAコンストラクトが、向かい合った二個のテロメア配列を含む、請求項1又は2に記載の構築方法。
  4. 前記二個のテロメア配列の間に選択マーカー遺伝子が介在している、請求項3に記載の構築方法。
  5. 前記環状哺乳類人工染色体が、前記挿入部位の近傍に配置されたインスレーター配列を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の構築方法。
  6. 前記環状哺乳類人工染色体が、前記挿入部位を挟むように配置された二つのインスレーター配列を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の構築方法。
  7. 前記環状哺乳類人工染色体が、前記挿入部位に加えて、外来遺伝子を挿入するための第2挿入部位を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の構築方法。
  8. 前記環状哺乳類人工染色体が、外来遺伝子を保持している、請求項1〜7のいずれかに記載の構築方法。
  9. BAC由来の骨格、哺乳類複製起点、哺乳類セントロメア配列、哺乳類テロメア配列有し、
    線状であって、哺乳類細胞中で複製され、宿主細胞の染色体外に維持され、及び細胞分裂の際に娘細胞に伝達される線状哺乳類人工染色体。
  10. 前記哺乳類セントロメア配列は、以下の配列が規則的間隔で複数個配列される領域を含む、請求項9に記載の線状哺乳類人工染色体、
    5'-NTTCGNNNNANNCGGGN-3':配列番号1(但し、NはA,T,C,及びGのいずれかである)。
  11. 前記哺乳類セントロメア配列はヒト染色体アルファサテライト領域由来の配列を含む、請求項9に記載の線状哺乳類人工染色体。
  12. 前記哺乳類セントロメア配列はヒト21番染色体由来の11量体繰返しユニットを含む、請求項11に記載の線状哺乳類人工染色体。
  13. 前記テロメア配列の近傍に配置されたインスレーター配列をさらに含む、請求項9〜12のいずれかに記載の哺乳類人工染色体。
  14. 目的遺伝子の配列又は所望の配列を挿入するための挿入用配列をさらに有する、請求項9〜13のいずれかに記載の線状哺乳類人工染色体。
  15. 前記挿入用配列がloxPサイト若しくはFRTサイト又はこれらいずれかの配列の一部を改変した配列である、請求項14に記載の線状哺乳類人工染色体。
  16. 請求項9〜15のいずれかに記載の線状哺乳類人工染色体を自己の染色体外に保有する哺乳類細胞。
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