しかしながら、セラミックグリーンシートに押圧により形成される凹みは、セラミックグリーンシートを部分的に変形させることにより形成されるので、凹みの周縁部には、セラミックグリーンシートの盛り上がりによる歪みを生じやすかった。このような歪みが生じた2枚のセラミックグリーンシートを、凹み同士を向かい合わせて積層すると、積層した際の圧力により、凹みの周囲に位置するセラミックグリーンシートの歪みが凹みに向かって移動する変形が生じて、凹みが閉じてしまい、セラミックグリーンシート積層体を焼成した際に母基板の内部に形成される空隙部が狭小となったり、消失したりするという問題点を有していた。このため、母基板を分割する際に、空隙部としての効果が低下してしまうことがあった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、分割溝に沿って良好に分割するための補助領域となる空隙部を所定の形状に良好に形成することができるセラミックグリーンシート積層体の製造方法およびセラミック基板の製造方法、セラミックグリーンシート積層体およびセラミック基板ならびに積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、信頼性の高い電子部品収納用パッケージおよび電子装置を提供することにある。
本発明のセラミックグリーンシート積層体の製造方法は、最上層となる第1のセラミックグリーンシート、及び前記第1のセラミックグリーンシートの下層となる第2のセラミックグリーンシートを積層してなり、且つ平面視で、配線基板領域、及び該配線基板領域の外縁に沿って分割溝が形成される分割溝形成領域を有してなるセラミックグリーンシート積層体の製造方法において、上下に貫通する第1の貫通溝を備える第2のセラミックグリーンシート上に、前記第1のセラミックグリーンシートを、平面視で前記分割溝形成領域と前記第1の貫通溝との重畳領域が、前記配線基板領域の外縁に沿って延在するように積層する第1の工程と、前記積層した第1及び第2のセラミックグリーンシートを押圧する第2の工程と、を経ることを特徴とするものである。
また、好ましくは、本発明のセラミックグリーンシート積層体の製造方法は、前記分割溝形成領域は、第1の分割溝形成領域と、該第1の分割溝形成領域と交差する第2の分割溝形成領域とからなるとともに、平面視で前記第1の分割溝形成領域と前記第1の貫通溝との重畳領域が、前記配線基板領域の外縁に沿って延在するとともに、前記第1のセラミックグリーンシートの下側に配置された第3のセラミックグリーンシートには第2の貫通溝が設けられ、且つ平面視で前記第2の分割溝形成領域と前記第2の貫通溝との重畳領域が、前記配線基板領域の外縁に沿って延在することを特徴とするものである。
また、好ましくは、本発明のセラミックグリーンシート積層体の製造方法は、前記第2の工程後、前記セラミックグリーンシート積層体の一方主面または他方主面の少なくとも一方に、前記分割溝を形成する第3の工程を経ることを特徴とするものである。
本発明のセラミック基板の製造方法は、本発明の前記セラミックグリーンシート積層体を焼成することを特徴とするものである。
本発明のセラミックグリーンシート積層体は、最上層となる第1のセラミックグリーンシート、及び該第1のセラミックグリーンシートの下層となる第2のセラミックグリーンシートを積層してなり、且つ平面視で配線基板領域、及び該配線基板領域の外縁に沿って分割溝が形成される分割溝形成領域を有してなるセラミックグリーンシート積層体であって、前記第1のセラミックグリーンシートには、前記配線基板領域の外縁に沿った分割溝が形成されており、前記第1のセラミックグリーンシートの下層である第2のセラミックグリーンシートには、平面視で前記分割溝に重畳する領域に、上下に貫通するとともに、前記分割溝に沿って延在された第1の貫通溝を備えていることを特徴とするものである。
また、好ましくは、本発明のセラミックグリーンシート積層体は、前記第2のセラミックグリーンシートには、前記第1の貫通溝の側壁部の両側、或いは側壁部に連なる前記第1のセラミックグリーンシートの下面部に、一対の金属層が被着されているとともに、該一対の金属層は、互いに離間する離間部を有していることを特徴とするものである。
また、好ましくは、本発明のセラミックグリーンシート積層体は、前記分割溝は、第1の分割溝と、該第1の分割溝と交差する第2の分割溝とからなるとともに、前記第1の貫通溝は、平面視で前記第1の分割溝に重畳する領域に、該第1の分割溝に沿って延在して設けられており、前記第1のセラミックグリーンシートの下側に配置された第3のセラミックグリーンシートには、平面視で前記第2の分割溝に重畳する領域に、該第2の分割溝に沿って延在してなる第2の貫通溝が設けられていることを特徴とするものである。
本発明のセラミック基板は、本発明の前記セラミックグリーンシート積層体を焼成してなることを特徴とするものである。
本発明の積層体は、複数の絶縁層を積層し、該積層された絶縁層のうち、最上となる絶縁層の上面に、配線基板領域と該配線基板領域の外縁に沿った分割溝とを備えた積層体であって、前記積層体の内部で、前記分割溝の直下に、前記絶縁層の少なくとも1層を貫通する貫通溝を前記分割溝に沿って設けたことを特徴とするものである。
本発明の電子部品収納用パッケージは、本発明のセラミック基板を前記分割溝に沿って分割してなることを特徴とするものである。
本発明の電子部品収納用パッケージは、本発明の積層体を、前記分割溝に沿って分割してなることを特徴とするものである。
本発明の電子装置は、本発明の電子部品収納用パッケージと、該電子部品収納用パッケージに搭載された電子部品とを備えていることを特徴とするものである。
本発明のセラミックグリーンシート積層体の製造方法は、上下に貫通する第1の貫通溝を備える第2のセラミックグリーンシート上に、第1のセラミックグリーンシートを、平面視で分割溝形成領域と第1の貫通溝との重畳領域が、配線基板領域の外縁に沿って延在するように積層する第1の工程と、積層した第1及び第2のセラミックグリーンシートを押圧する第2の工程とを経ることから、第1の貫通溝は、第2のセラミックグリーンシートを上下に貫いており、第2のセラミックグリーンシートの第1の貫通溝の周縁部には、押圧により凹みを形成した場合に生じる歪みの発生が抑制され、或いは生じた歪みを小さくなすことができ、従って第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層した際、第1の貫通溝の周縁部における第2のセラミックグリーンシートの変形を低減して、第1の貫通溝からなる空隙部を閉じにくくすることができる。従って、セラミックグリーンシート積層体を焼成した際、空隙部が融着して狭小となることが抑制され、セラミック基板を所定の形状に良好に形成することができる。
また、好ましくは、分割溝形成領域は、第1の分割溝形成領域と、第1の分割溝形成領域と交差する第2の分割溝形成領域とからなり、平面視で第1の分割溝形成領域と第1の貫通溝との重畳領域が、配線基板領域の外縁に沿って延在するとともに、第1のセラミックグリーンシートの下側に配置された第3のセラミックグリーンシートには第2の貫通溝が設けられ、且つ平面視で第2の分割溝形成領域と第2の貫通溝との重畳領域が、配線基板領域の外縁に沿って延在することから、第1および第2の貫通溝は、第2および第3のセラミックグリーンシートをそれぞれ上下に貫いており、第1および第2の貫通溝の周縁部には、押圧により凹みを形成した場合に生じる歪みの発生が抑制され、或いは生じた歪みを小さくなすことができ、従って第1、第2、第3のセラミックグリーンシートを積層した際、第1および第2の貫通溝の周縁部における第2および第3のセラミックグリーンシートの変形を低減して、第1および第2の貫通溝からなる空隙部を閉じにくくすることができる。従って、セラミックグリーンシート積層体を焼成した際、配線基板領域の第1の分割溝領域の方向および第2の分割溝領域の方向において、空隙部は、有着して狭小となることが抑制され、セラミック基板に所定の形状に良好に形成することができる。
さらに第1および第2の貫通溝を互いに交差させていることから、第1および第2の貫通溝が形成されても、これら貫通溝が上下に重畳して配置された場合のように、セラミックグリーンシート積層体自体の強度を極端に弱めることがない。
また、好ましくは、第2の工程後、セラミックグリーンシート積層体の一方主面または他方主面の少なくとも一方に、分割溝を形成する第3の工程を経ることから、分割溝を所定の位置および形状に良好に形成でき、従って分割溝領域と貫通溝とを良好に重畳させることができるとともに、押圧後に分割溝を形成することから、分割溝が押圧されて潰されてしまうことが抑制できる。
本発明のセラミック基板の製造方法は、本発明のセラミックグリーンシート積層体を焼成することから、焼成後も貫通溝が消失することなく、これにより配線基板の外縁に沿って良好に分割することができ、配線基板にバリや欠けが発生することを低減することができる。
本発明のセラミックグリーンシート積層体の第1のセラミックグリーンシートには、配線基板領域の外縁に沿った分割溝が形成されており、第1のセラミックグリーンシートの下層である第2のセラミックグリーンシートには、平面視で前記分割溝に重畳する領域に、上下に貫通するとともに、分割溝に沿って延在された第1の貫通溝を備えていることから、第1の貫通溝の周縁部において、押圧により凹みを形成した場合に生じる歪みの発生が抑制され、或いは生じた歪みを小さくなすことができ、従って第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層した際、第1の貫通溝の周縁部における第2のセラミックグリーンシートの変形を低減して、第1の貫通溝である空隙部を閉じにくくすることができる。従って、セラミックグリーンシート積層体を焼成した際、空隙部が融着して狭小となることが抑制され、セラミック基板を所定の形状に良好に形成することができる。
また、好ましくは、本発明のセラミックグリーンシート積層体は、第2のセラミックグリーンシートには、第1の貫通溝の側壁部の両側、或いは側壁部に連なる第1のセラミックグリーンシートの下面部に、一対の金属層が被着されているとともに、一対の金属層は、互いに離間する離間部を有していることから、セラミックグリーンシート積層体を焼結した際、金属層が被着されている部分は補強されており、金属層が被着されていない離間部は相対的に機械的強度が低くなるので、分割する際、空隙部においては金属層により補強されていない離間部に向けて分割を進行させることができ、これにより配線基板の外縁に沿ってより良好に分割することができ、配線基板にバリや欠けが発生することを低減することができる。
また、好ましくは、分割溝は、第1の分割溝と、第1の分割溝に交差する第2の分割溝とからなるとともに、第1の貫通溝は、平面視で第1の分割溝に重畳する領域に、第1の分割溝に沿って延在して設けられており、第1のセラミックグリーンシートの下側に配置された第3のセラミックグリーンシートには、平面視で前記第2の分割溝に重畳する領域に、第2の分割溝に沿って延在してなる第2の貫通溝が設けられていることから、第1および第2の貫通溝の周縁部には、押圧により凹みを形成した場合に生じる歪みの発生が抑制され、或いは生じた歪みを小さくなすことができる。従ってセラミックグリーンシートを積層した際、第1および第2の貫通溝の周縁部における第2および第3のセラミックグリーンシートの変形を低減して、第1或いは第2の貫通溝からなる空隙部を閉じにくくすることができる。このため、セラミックグリーンシート積層体を焼成した際、配線基板領域の第1の分割溝領域の方向および第2の分割溝領域の方向において、空隙部が、融着して狭小となることが抑制され、空隙部を所定の形状にセラミック基板に良好に形成することができる。
本発明のセラミック基板は、本発明のセラミックグリーンシート積層体を焼成してなることから、空隙部がセラミックグリーンシート積層体に良好に形成されているので、セラミックグリーンシート積層体を焼成してなるセラミック基板において、空隙部を所定の形状に良好に形成することができるようになる。
本発明の積層体は、複数の絶縁層を積層し、積層された絶縁層のうち、最上となる絶縁層の上面に、配線基板領域と配線基板領域の外縁に沿った分割溝とを備えた積層体であって、積層体の内部で、分割溝の直下に、絶縁層の少なくとも1層を貫通する貫通溝を分割溝に沿って設けたことを特徴とすることから、積層体に貫通溝からなる空隙部が良好に形成されているので、分割の際に、空隙部を介して配線基板領域の外縁に沿って良好に分割することができ、配線基板領域の外縁にバリや欠けが発生することを低減させることができる。
本発明の電子部品収納用パッケージは、所定の位置に貫通溝からなる空隙部が良好に形成されたセラミック基板を、分割溝に沿って分割してなることから、分割の際に、電子部品収納用パッケージの外縁となる領域にバリや欠けが発生するのを抑制することができ、外形寸法の精度が高いものとすることができるとともに、信頼性に優れたものとすることができる。
本発明の電子装置は、本発明の電子部品収納用パッケージと、電子部品収納用パッケージに搭載された電子部品とを備えていることから、電子装置の外縁にバリや欠けが発生することを抑制できるので、外形寸法の精度が高い電子装置とすることができるとともに、信頼性に優れたものとすることができる。
本発明のセラミックグリーンシート積層体の製造方法について説明する。図1は本発明のセラミックグリーンシート積層体の製造方法の実施の形態の一例を示す各工程の断面図である。図1において、1は第1のセラミックグリーンシート、2は第2のセラミックグリーンシート、3は第4のセラミックグリーンシート、4は第1の貫通溝、5はセラミックグリーンシート積層体、6は空隙部、7は分割溝、8は配線パターンである。
まず、図1(a)に示すように、第1のセラミックグリーンシート1と、第2のセラミックグリーンシート2と、第4のセラミックグリーンシート3とを準備する。
第1のセラミックグリーンシート1と、第2のセラミックグリーンシート2と、第4のセラミックグリーンシート3とは、セラミック粉末に有機バインダおよび溶剤、必要に応じて所定量の可塑剤や分散剤を加えてスラリーを得て、これをPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂や紙製の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等の成形方法により塗布してシート状に成形し、温風乾燥,真空乾燥または遠赤外線乾燥等の乾燥方法により乾燥することによって作製する。
セラミック粉末としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)粉末,窒化アルミニウム(AlN)粉末,ガラスセラミック粉末等が挙げられ、電子部品搭載用基板に要求される特性に合わせて適宜選択される。
酸化アルミニウム粉末や窒化アルミニウム粉末の場合は、酸化珪素(SiO2)や酸化マグネシウム(MgO)等の焼結助剤となる成分の粉末が加えられ、また、着色剤として酸化マンガン(MnO)等の粉末を加えてもよい。
ガラスセラミック粉末はガラス粉末とフィラー粉末とを10:90乃至99:1、好ましくは40:60乃至80:20の質量比で混合したものである。
ガラスセラミック粉末のガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す。),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す。),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである。),SiO2−B2O3−M3 2O系(ただし、M3はLi、NaまたはKを示す。),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(ただし、M3は上記と同じである。),Pb系,Bi系等のガラスの粉末が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3とSiO2とZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2(クリストバライト,クオーツ)の少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
有機バインダとしては、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独集合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独共重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダがより好ましい。また、有機バインダの添加量はセラミック粉末により異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつセラミック粉末が分散され、グリーンシートのハンドリング性や加工性が良好な量であればよく、セラミック粉末に対して10乃至20質量%程度が望ましい。
スラリーに含まれる溶剤は、セラミック粉末および有機バインダを分散させ、グリーンシート成形に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば炭化水素類,エーテル類,エステル類,ケトン類,アルコール類等の有機溶剤や水が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤は、スラリー塗布後の乾燥工程が短時間で終了できるので好ましい。溶剤の量は、セラミック粉末に対して30乃至100質量%加えることにより、スラリーを良好に支持体上に塗布することができるような粘度、具体的には3cps乃至100cps程度となるようにすることが望ましい。
次に、図1(b)に示すように、第2のセラミックグリーンシート2の所定の位置に第1の貫通溝4を形成する。図2は、図1(b)における第2のセラミックグリーンシート2の平面図を示すものである。第1の貫通溝4は、第2のセラミックグリーンシート2を一方主面から他方主面にかけて貫通した溝状をなす孔であり、後述するセラミックグリーンシート積層体5を形成する工程により、セラミックグリーンシート積層体5の配線基板領域の外縁に沿って形成されることとなる。そして、第1の貫通溝4は、第2のセラミックグリーンシート2を上下に刳り貫いているので、第1の貫通溝4の周縁部には、押圧により凹みを形成した場合に生じる歪みの発生が小さいものとして形成される。
このような第1の貫通溝4は、金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法により第2のセラミックグリーンシート2に形成される。
なお、第1の貫通溝4は、その開口幅(平面視において溝の延在方向に直交する方向の幅)が大きすぎると、分割溝4に沿って分割した際、分割後の配線基板の外形寸法のばらつきが大きくなりやすくなる。また、第1の貫通溝4の開口幅が狭すぎると、十分な開口幅を良好に形成することが困難となる。一例として第1の貫通溝4の開口幅は、0.05〜0.5mm程度の幅に形成されるのがよい。
また、配線基板が一方の主面に凹部を有する形状とする場合には、第1の貫通溝4の製造方法と同様にして、第1、第2、第4セラミックグリーンシート1,2,3のうち凹部の深さに応じた複数枚のセラミックグリーンシートの所定の位置に凹部用の貫通孔を形成しておくことにより、後の積層する工程によりセラミックグリーンシート積層体5の配線基板領域に凹部が形成される。例えば、第1のセラミックグリーンシート1に凹部用の貫通孔を形成しておくことで、後述するセラミックグリーンシート積層体5を形成する工程において、セラミックグリーンシート積層体5の配線基板領域には、第1のセラミックグリーンシート1側に凹部が形成される。
なお、図3,4に示すように、第2のセラミックグリーンシート2の一方主面側または他方主面側のいずれか一方側に、第2の貫通溝10が形成された第3のセラミックグリーンシート9を設けておいても構わない。第3のセラミックグリーンシート9は、第1、第2、第4のセラミックグリーンシート1、2、3と同じ材料を用いて、作製する配線基板に応じた厚みのものを用いればよい。第2の貫通溝10は、第3のセラミックグリーンシート9を一方主面から他方主面にかけて貫通した溝状をなす孔であり、後述するセラミックグリーンシート積層体5を形成する工程により、セラミックグリーンシート積層体5の配線基板領域の外縁に沿って形成され、第1の貫通溝4に交差して配設される。そして、第2の貫通溝10は、第3のセラミックグリーンシート9を上下に貫いているので、第2の貫通溝10の周縁部には、押圧により凹みを形成した場合に生じる歪みの発生が小さいものとして形成される。
これにより各セラミックグリーンシートを積層した際、第1および第2の貫通溝4,10の周縁部における第2および第3のセラミックグリーンシート2,9の変形を低減して、第1或いは第2の貫通溝4,10からなる空隙部を閉じにくくすることができる。従って、セラミックグリーンシート積層体を焼成した際、配線基板領域の第1の分割溝領域の方向および第2の分割溝領域の方向において、空隙部が、融着して狭小となることが抑制され、セラミック基板に所定の形状に良好に形成することができる。
また、第2の貫通溝10は、第1の貫通溝4と同様に形成され、金型やパンチングによる打ち抜き加工またはレーザ加工等の加工方法により第3のセラミックグリーンシート9に形成される。
また、第2の貫通溝10は、第1の貫通溝4と同様にして形成され、第2の貫通溝10の開口幅が大きすぎると、第2の分割溝10に沿って分割した際、分割後の配線基板の外形寸法のばらつきが大きくなりやすくなる。また、第2の貫通溝10の開口幅が狭すぎると、十分な開口幅をもつ貫通溝を良好に形成することが困難となる。一例として第2の貫通溝10の開口幅は、0.05〜0.5mm程度の幅に形成されるのがよい。
そして、図1(c)に示すように、第1のセラミックグリーンシート1、第2のセラミックグリーンシート2、第4のセラミックグリーンシート3に配線導体等となる配線パターン8を所定のパターンに形成する。この配線導体には、配線基板上に搭載される電子部品の各電極が半田バンプ等の電気的接続手段を介して接続される電極パッド、外部回路基板への接続パッド、それらを接続する配線等が含まれる。
配線パターン8の形成は、例えば貫通導体が接続された電極パッドや接続パッドとなるものであれば、第1の貫通溝4の形成と同様の方法で第1、第2、第4のセラミックグリーンシート1、2,3に貫通導体用の貫通孔を形成し、この貫通孔に貫通導体用の導体ペーストをスクリーン印刷法やプレス充填により埋め込み、貫通導体用の導体ペーストが埋め込まれた貫通孔上に電極パッドや接続パッド用の導体ペーストをスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法により所定パターン形状で印刷することにより行なわれる。
電極パッドや接続パッド用または貫通導体用の導体ペーストは、金属粉末に適当な有機バインダと溶剤、また必要に応じて分散剤を加えて混合したものをボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により均質に分散させて混練した後、溶剤を必要量添加することにより粘度を調整することによって作製される。
この金属粉末としては、後の焼成工程において第1、第2、第4のセラミックグリーンシート1、2,3と同時焼成することにより焼結することが可能な金属材料からなる粉末であり、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),金(Au),銀(Ag),銅(Cu),パラジウム(Pd),白金(Pt)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合,合金,コーティング等のいずれの形態であっても構わない。
導体ペーストの有機バインダとしては、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系,アルキド系の有機バインダがより好ましい。また、有機バインダの添加量としては、金属粉末により異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつ金属粉末粒子を分散できる量であればよく、金属粉末に対して外添加で5乃至20質量%程度が望ましい。
導体ペーストに用いる溶剤としては、金属粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートなどが挙げられる。印刷後の形成性,乾燥性を考慮し、低沸点溶剤を用いることが好ましい。溶剤は金属粉末に対して4乃至15質量%の量で加えられ、配線パターン8を良好に形成できる程度の粘度となるように、具体的には電極パッドや接続パッド用の導体ペーストでは3000乃至40000cps程度、貫通導体用では15000乃至40000cps程度となるように調整される。
導体ペーストには、焼成時の第1のセラミックグリーンシート1の焼成収縮挙動や収縮率と合わせるため、または焼成後の配線導体の接合強度を確保するために、ガラスやセラミックスの粉末を添加してもよい。
そして、図1(d)に示すように、第1のセラミックグリーンシート1と、第2のセラミックグリーンシート2と、第4のセラミックグリーンシート3とを積層し、押圧により各層同士を密着させてセラミックグリーンシート積層体5を形成する。セラミックグリーンシート積層体5は、第1、第2、第4のセラミックグリーンシート1,2,3をそれぞれ積層するごとに押圧しても良いし、すべてのグリーンシートを積層してから押圧しても構わない。
そして、第1の貫通溝4の周縁部には、押圧により発生する第2のセラミックグリーンシート2の盛り上がりによる歪みが小さいので、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とを積層した際、第1の貫通溝4の周縁部における第2のセラミックグリーンシート2の変形を低減し、空隙部6が閉じにくくすることができる。
なお、第1の貫通溝4は、セラミックグリーンシート積層体5の配線基板領域の外縁に沿って空隙部6として形成される。なお、空隙部6は、後述する分割工程において、分割する際の補助となる領域として用いられる。また、第2のセラミックグリーンシート2の下面に第4のセラミックグリーンシート3を積層すると、空隙部6は、セラミックグリーンシート積層体5の内部に形成され、後述する分割工程においてセラミックグリーンシート積層体5の厚みが厚いものであっても配線基板領域の外縁に沿って良好に分割することができるようになる。
なお、第1の貫通溝4は、貫通溝の開口幅の広い面を後述する分割溝4を形成する側に積層させておくことが好ましい。これにより、後述する分割工程において、空隙部6での分割開始面を狭くしておき、分割した配線基板のばらつきを低減させることができる。例えば、打抜き金型により第1の貫通溝4が形成される場合は、打抜き終了側の面(打抜き金型の打抜きピンが挿入される面との反対側の面)を分割溝側としておけば良く、レーザにより第1の貫通溝4が形成される場合は、レーザの入射側の面を分割溝側としておけば良い。
なお、図1に示す例においては、第1のセラミックグリーンシートの下方に、第2のセラミックグリーンシート2および第4のセラミックグリーンシート3をそれぞれ1枚ずつ、積層することにより形成されているが、各層を複数枚としてセラミックグリーンシート積層体5を積層して形成しても良い。また、第2のセラミックグリーンシート2と第4のセラミックグリーンシート3とを交互に積層し、セラミックグリーンシート積層体5の厚み方向に複数の空隙部6を形成しても構わない。複数の空隙部6を介して分割することで、配線基板領域の外縁に沿って良好に分割させやすくすることができる。
更に、第1および第2のセラミックグリーンシート1,2とともに、第3のセラミックグリーンシート9を積層してセラミックグリーンシート積層体5を形成する場合、第2の貫通溝10は、図4に示すように、第2の空隙部11として形成される。なお、図4(a)は、第1乃至第4のセラミックグリーンシート1,2,3,9を積層して形成したセラミックグリーンシート積層体5の一例を示す平面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるA−A’線における断面図であり、図4(c)は、図4(a)におけるB−B’線における断面図である。
第1の貫通溝4と第2の貫通溝10とは、セラミックグリーンシート積層体5にて平面視で交差し、配線基板が平面視で正方形や長方形として形成される場合、第1の貫通溝4と第2の貫通溝10とは直交するように形成される。この場合、図5に、図4におけるセラミックグリーンシート積層体5の内部平面図で示すように、第2のセラミックグリーンシート2と第3のセラミックグリーンシート9にそれぞれ形成される。
第2の貫通溝10の周縁部には、押圧により発生する第3のセラミックグリーンシート9の盛り上がりによる歪みが小さくなるので、第1乃至第3のセラミックグリーンシート1,2,9を積層した際、第1乃至第3のセラミックグリーンシート1,2,9の変形を抑制し、第2の空隙部11が閉じてしまうことを抑制することができる。
このような第3のセラミックグリーンシート9においても、第2のセラミックグリーンシート2と同様に、第3のセラミックグリーンシートを複数枚のセラミックグリーンシートから構成しても良い。また、第2のセラミックグリーンシート2と第3のセラミックグリーンシート9との間に、第1の貫通溝4および第2の貫通溝10が形成されていないセラミックグリーンシートを介在させていても構わない。
そして、図1(e)に示すように、セラミックグリーンシート積層体5の一方主面または他方主面のうち少なくとも一方側に配線基板領域の外縁となる分割溝7形成領域に沿って分割溝7を形成する。セラミックグリーンシート積層体5に分割溝4を形成する工程は、配線基板領域の外縁に沿ってV字状の刃先を有するカッター刃や金型等の切込み刃をセラミックグリーンシート積層体5に押圧することにより形成することができる。すなわち、分割溝7形成領域と貫通溝形成領域とは重畳するものとなり、セラミックグリーンシート積層体5に第1の貫通溝4からなる空隙部6と第2の貫通溝10からなる第2の空隙部11とが形成されている場合、図6に示すように、分割溝7は、第1の貫通溝4および第2の貫通溝10と重畳する領域にそれぞれ第1の分割溝7aと第2の貫通溝7bとして形成することとなる。
また、セラミックグリーンシート積層体5を形成した後、配線基板領域の外縁に沿って分割溝4を形成することが好ましい。これにより、積層する工程の後に分割溝7を形成するので、積層する工程の前に分割溝を形成した場合のように、積層の際の押圧等による分割溝7の変形を抑制し、分割溝7を所定の位置に、所定の形状に良好に形成しやすくなり、分割溝7形成領域と第1の貫通溝4および第2の貫通溝10とを平面視で良好に重畳させることができるようになる。
セラミックグリーンシート積層体に形成される分割溝7は、所望する配線基板の形状に対応した大きさの領域に区分するとともに後述するセラミック基板を撓折して配線基板となす際、その撓折を容易かつ正確とする作用を為し、セラミックグリーンシート積層体5の表面に現れる開口部分の幅は一例として0.05〜1mm程度であり、その深さは0.05〜2mm程度である。
なお、図6において、セラミックグリーンシート積層体5には、縦横にそれぞれ2列の配線基板領域が配列されているが、配線基板領域の配列数は、配線基板の形状やセラミックグリーンシート積層体5の形状に合わせて適宜選択すれば良い。例えば、小型の配線基板領域を多数配列させたいわゆる多数個取り基板の状態であっても良く、これにより、効率良く多数の配線基板を形成することができるようになる。
また、必要に応じて配線基板領域の周囲領域にダミー領域を形成していても構わない。外周部に形成されるダミー領域は、後述するセラミック基板の製造や搬送等を容易とするための領域であり、このダミー領域を用いてセラミック基板の加工時や搬送時の位置決め、固定等を行うことができる。配線基板領域間に形成されるダミー領域は、後述するセラミック基板の配線基板領域の配線導体にめっき層を被着するための配線等形成するための領域であり、この配線等を用いて配線導体にめっき層を効率良く被着させることができる。ダミー領域が形成されている場合、分割溝7と、第1,第2の貫通溝4,10とは、配線基板領域の外縁に沿ってダミー領域にも延出させても構わない。
また、配線基板領域の少なくとも一方主面に、電子部品等を搭載するための凹部が形成されている場合、図7に示すように、分割溝7は、凹部の形成されている面に形成することが好ましい。これにより亀裂の進行の方向性を定めやすくできるので、セラミック基板を分割する際、凹部の壁部に欠けやクラックが発生するのを低減させることができる。より好ましくは、分割溝7から空隙部6までの間隔d1が、分割溝7から凹部の内壁d2までの間隔や空隙部6から凹部の内壁までの間隔d3よりも狭くなるようにしておくことが好ましい。これにより、分割溝7と空隙部6との間の機械的強度が相対的に小さくなるので、後述する分割する工程において、分割溝7から空隙部6の方向に亀裂を進行させやすくして、配線基板領域の外縁に沿って良好に分割することができるようになる。
セラミック基板は、セラミックグリーンシート積層体5を焼結してなる。これにより、セラミックグリーンシート積層体5の空隙部6は所定の形状に良好に形成されているので、焼成時に空隙部6が融着してしまうことを抑制することができ、セラミック基板は、分割溝4形成領域に重畳する領域に第1の貫通溝4からなる空隙部6を良好に形成することができる。焼成する工程は、有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は、約100〜1200℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体5を加熱することにより有機成分を分解・揮発させ、約800〜1800℃で焼結を行う。例えば、第1乃至第4のセラミックグリーンシート1,2,3,9のセラミック粉末が酸化アルミニウム粉末と焼結助剤とからなり、導体ペーストの粉末がWを主成分とする場合は、窒素と水素とからなる還元雰囲気中で約100〜1200℃で有機成分の除去が行なわれ、約1500〜1600℃で焼結が行われる。第1乃至第4のセラミックグリーンシート1,2,3,9のセラミック粉末がガラスセラミック粉末からなる場合は、約100〜800℃で有機成分の除去が行なわれ、約800〜1100℃の温度で焼結が行なわれるが、雰囲気は導体ペーストの金属粉末により異なり、Cu系のような酸化しやすい材料の場合は窒素等の非酸化性雰囲気中で行なわれ、Ag系等の酸化し難い材料の場合は大気中で行なわれる。なお、還元雰囲気や非酸化性雰囲気の場合は、有機成分の除去を効果的に行なうために雰囲気に水蒸気等を含ませるとよい。
第1、第2、第4のセラミックグリーンシート1,2,3のセラミック粉末がガラスセラミック粉末からなる場合は、セラミックグリーンシート積層体5の上下面に、拘束グリーンシートを積層して焼成すれば、より高寸法精度のガラスセラミック製電子部品搭載用基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、ガラスセラミックスが焼結収縮する温度よりも高い温度によってのみ焼結する難焼結性の無機材料(例えば、Al2O3やSiO2)を主成分とするグリーンシートであり、セラミックグリーンシート積層体5の焼成温度では収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層されたセラミックグリーンシート積層体5は、収縮しにくい拘束グリーンシートにより積層平面方向(いわゆるx−y平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(いわゆるz方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えば第1、第2、第4のセラミックグリーンシート1,2,3中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化して第1および第2のセラミックグリーンシート1,2と結合することにより、第1および第4のセラミックグリーンシート1,3と拘束グリーンシートとの結合が強固となり、より確実な拘束力が得られる。このときのガラス量は、難焼結性無機成分とガラス成分とを合わせた無機成分に対して外添加で、0.5乃至15質量%とするとよく、これによって拘束グリーンシートによる拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
焼成後の拘束グリーンシートを除去する場合には、その方法としては、例えば研磨,ウォータージェット,ケミカルブラスト,サンドブラスト,ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
また、焼成後の電子部品搭載用基板の表面に露出した配線導体の表面には、配線導体の腐食防止のため、電子部品と配線導体との接続のため、あるいは配線基板と外部回路基板との接合を強固なものとするために、NiやAu等のめっきを施しておくことが好ましい。
また、図8(a),(b)に示すように、第1の貫通溝4の側壁部の両側、或いは側壁部に連なる第1のセラミックグリーンシートの下面部に、一対の金属層12が被着されるとともに、一対の金属層12は、互いに離間する離間部12aを有していることが好ましい。なお、ここでいう側壁部とは、平面視において第1の貫通溝4の延在方向における側壁を示すものである。
この場合、セラミックグリーンシート積層体5を焼成することにより形成されるセラミック基板において、金属層が被着されている部分は補強されており、金属層12が被着されていない離間部12aは相対的に機械的強度が低くなるので、分割する際、空隙部においては金属層12により補強されていない離間部12aに向けて分割を進行させることができる。これにより配線基板の外縁に沿ってより良好に分割することができ、配線基板にバリや欠けが発生することを低減することができる。
なお、このような離間部12aは、分割溝7の底部の直下に位置する領域に形成しておくことが好ましく、分割する際、配線基板の外縁に沿ってより良好に分割することができるようになる。
このような金属層12は、配線パターン8と同様な材料を用いることができる。そして、金属層12用の導体ペーストを第2のセラミックグリーンシート2の第1の貫通溝4の側壁部と、第1のセラミックグリーンシート1の下面部の所定の位置にそれぞれスクリーン印刷法等の印刷法により印刷した後、積層することにより金属層12は所定の位置に形成される。
なお、図8に示すように、第2のセラミックグリーンシート2の下面に第4のセラミックグリーンシート3を積層する場合、第1の貫通溝4の側壁部に連なる第4のセラミックグリーンシートの上面側にも互いに離間する離間部12aを有する一対の金属層12を形成しておいても構わない。これにより、金属層12により補強されていない離間部12aは相対的に機械的強度が低くなるので、分割する際、空隙部6においては金属層12により補強されていない離間部12aを起点する分割溝7の延長線上に沿って、分割を進行させることができ、配線基板の外縁に沿ってより良好に分割することができ、配線基板にバリや欠けが発生することを低減することができる。
また、第3のセラミックグリーンシート9によりセラミックグリーンシート積層体5に第2の空隙部11が形成される場合、第2の空隙部11にも空隙部6と同様に金属層12を被着させておくことが好ましい。すなわち、第3のセラミックグリーンシート9の第2の貫通溝10の側壁部の両側、或いは側壁部に連なる第1のセラミックグリーンシート1または第2のセラミックグリーンシート2の下面部に、一対の金属層12が被着されているとともに、一対の金属層12は、互いに離間する離間部を有しているようにしておけば良い。また、第3のセラミックグリーンシート9の下面に第2のセラミックグリーンシート2または第4のセラミックグリーンシート3を積層する場合、第2の貫通溝10の側壁部に連なる第2のセラミックグリーンシート2または第4のセラミックグリーンシート3の上面側にも互いに離間する離間部12aを有する一対の金属層12を形成しておいても構わない。
そして、本発明の電子部品収納用パッケージは、上述のセラミック基板を分割溝4に沿って分割することにより個片化されたものである。この構成により、セラミック基板には分割する際の補助領域となる空隙部6や第2の空隙部11が所定の位置に、所定の形状に形成されているので、分割する際、外縁にバリや欠け等の発生のない良好な電子部品収納用パッケージとすることができる。
本発明の電子装置は、上述の電子部品収納用パッケージと、電子部品収納用パッケージに搭載された電子部品とを備えている。この構成により、電子部品が良好に収容された電子装置とすることができる。
電子部品は、ICチップやLSIチップ等の半導体素子、水晶振動子や圧電振動子等の圧電素子、各種センサ等であり、多数個取り配線基板を分割溝に沿って分割した電子部品収納用パッケージに搭載してもよいし、多数個取り配線基板に複数の電子部品を搭載した後に分割しても構わない。
電子部品の搭載は、電子部品がフリップチップ型の半導体素子である場合には、はんだバンプや金バンプ、または導電性樹脂(異方性導電樹脂等)を介して、半導体素子の電極と配線導体とを電気的に接続することにより行なわれ、また、電子部品がワイヤボンディング型の半導体素子である場合には、ガラス、樹脂、ろう材等の接合材により固定した後、ボンディングワイヤを介して半導体素子の電極と配線導体とを電気的に接続することにより行なわれる。また、電子部品が水晶振動子等の圧電素子である場合には、導電性樹脂により圧電素子の固定と圧電素子の電極と配線導体との電気的な接続を行なう。
そして、電子部品は、必要に応じて封止される。封止はエポキシ樹脂等の封止樹脂により電子部品を覆うことにより行なったり、電子部品を覆うようにして載置した樹脂や金属、セラミックス等からなる蓋体をガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤により電子部品収納用パッケージに取着することにより行なったりすればよい。
本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、図9に示すように、一方主面および他方主面の両面に凹部を備えるセラミックグリーンシート積層体5およびセラミックグリーンシート積層体5を形成する際の製造方法としても構わない。このような場合、一方主面側と他方主面側とに分割溝7を形成しておくことが好ましい。これにより、亀裂の進行の方向性を定めやすくするので、セラミック基板を分割する際、凹部の壁部に欠けやクラックが発生するのを低減させることができる。
また、本発明の効果は、複数の絶縁層を積層し、積層された絶縁層のうち、最上の絶縁層の上面に、配線基板領域と該配線基板領域の外縁に沿った分割溝とを備えた積層体であって、積層体の内部で、分割溝の直下に、絶縁層の少なくとも1層を貫通する貫通溝を分割溝に沿って設けられた積層体であれば、絶縁層がセラミックを原料とするものに限定されないことは言うまでもない。