JP2007284445A - アクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い捕集率でアクリル酸を捕集し、高濃度のアクリル酸含有溶液を得る、アクリル酸の製造方法を提供する。
【解決手段】プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化反応してアクリル酸含有ガスを得る工程と、該アクリル酸含有ガスを捕集用水溶液で捕集しアクリル酸含有水溶液を得る工程と、アクリル酸含有水溶液を蒸留する工程とをを含むアクリル酸の製造方法において、捕集塔の塔頂以外から低沸点物質含有溶液を導入しつつアクリル酸を捕集する。本発明によれば、高濃度のアクリル酸含有溶液を得ることができ、共沸溶媒を使用することなく脱水処理でき、簡便な工程で高純度のアクリル酸を製造することができる。
【選択図】図1
【解決手段】プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化反応してアクリル酸含有ガスを得る工程と、該アクリル酸含有ガスを捕集用水溶液で捕集しアクリル酸含有水溶液を得る工程と、アクリル酸含有水溶液を蒸留する工程とをを含むアクリル酸の製造方法において、捕集塔の塔頂以外から低沸点物質含有溶液を導入しつつアクリル酸を捕集する。本発明によれば、高濃度のアクリル酸含有溶液を得ることができ、共沸溶媒を使用することなく脱水処理でき、簡便な工程で高純度のアクリル酸を製造することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、アクリル酸捕集工程において、捕集塔の塔頂以外から低沸点物質含有溶液を導入してアクリル酸捕集率を向上させる、アクリル酸の製造方法に関する。
工業的なアクリル酸の製造方法は、プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化するプロピレン酸化法が一般的である。このプロピレン酸化法によりアクリル酸を製造する場合、プロピレンの酸化工程で、水や、プロピオン酸、酢酸、マレイン酸などの酸類、アセトン、アクロレイン、フルフラール、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類などの不純物が副生する。これらの副生物を含んだガスは、一般的に捕集溶剤と接触させることにより、アクリル酸含有溶液として捕集後、蒸留などの方法で捕集溶剤を分離し、さらに軽沸点成分および高沸点成分を分離して精製される。蒸留で容易に分離できないアルデヒド類などの微量の不純物は、薬剤処理や晶析工程などによって精製される場合もある。しかしながら高度の精製には多くの工程が必要で装置や操作も煩雑となり、アクリル酸の収率が低下する一因となる。
例えば、接触気相酸化により得られたアクリル酸を含むガスを、高沸点溶剤で捕集し、蒸留により溶剤と粗製アクリル酸に分離した後、晶析工程によって高純度のアクリル酸を製造する方法がある(特許文献1)。しかしながら、この方法では、アクリル酸含有ガスをベンチュリーで冷却した後に捕集工程を行い、捕集工程に次いで低沸点化合物除去工程を行い、その後に蒸留塔で高沸点溶媒を除去して粗アクリル酸を得ており、工程が複雑である。
一方、アクリル酸製造工程において、高濃度のアクリル酸含有溶液を処理できればその後の精製工程の処理量を低減でき効率的である。そこで、7体積%超のプロピレン、分子状酸素、水蒸気、および残部に不活性ガスを含む反応組成物を、触媒を充填した2つの反応ゾーンを有する多数の反応管を配設する反応器に供給し、高濃度のプロピレン反応物を利用する方法がある(特許文献2)。該公報の実施例では、水捕集によって平均濃度73.8重量%のアクリル酸含有溶液を得ている。
また、アクリル酸含有ガスを捕集塔に導入し、精製工程の溶剤回収塔の塔底液から排出する酢酸を含有する回収水を捕集塔の塔頂に導入してアクリル酸を捕集し、捕集塔塔底液としてアクリル酸50〜80重量%、酢酸2〜5重量%、残部が水であるアクリル酸含有溶液を調製する方法もある(特許文献3)。なお、この方法では該アクリル酸含有溶液に2種以上の共沸溶媒混合液を用いて共沸脱水し、次いで高沸点物質除去工程などを経て精製し、精製アクリル酸を得ている。
また、接触気相酸化反応で得たアクリル酸含有ガスを水捕集する際に、共沸脱水工程から排出した回収水を捕集塔に供給し、得られたアクリル酸含有溶液を放散塔に供給して、該放散塔の塔底からアクリル酸70.9質量%、水25.6質量%、酢酸2.0質量%のアクリル酸溶液を得る方法もある(特許文献4)。この方法では該アクリル酸含有溶液を共沸脱水し、次いでこれを結晶化工程に供給して精製アクリル酸を得ている。
特開平9−227445号公報
特開2000−103761号公報
特開平5−246941号公報
特開2001−199931号公報
しかしながら、上記文献記載の方法では、有機溶媒を捕集溶剤として使用する場合にはその後に溶媒分離工程が必要となる。また、これらによっても十分に高濃度のアクリル酸含有溶液が得られたとはいい難い。更に、捕集塔の塔底液に高濃度にアクリル酸を含有するアクリル酸水溶液を得ようとすると、捕集効率が低下し、商業的に成立しないのが実情である。
そこで、本発明の目的は、高収率にアクリル酸を捕集して高濃度のアクリル酸含有溶液を調製することを提供することにある。
また、本発明の目的は、該アクリル酸含有溶液を用いて高純度かつ高収率でアクリル酸をシンプルな工程で製造する方法を提供することにある。
本発明者は、アクリル酸水捕集工程の捕集用水溶液に加えて、捕集塔の塔頂以外から低沸点物質含有溶液(但し、低沸点物質として水を除く)を供給すると高濃度のアクリル酸含有溶液が得られること、このような高濃度のアクリル酸含有溶液を用いた精製工程では、共沸溶剤を使用せずに脱水処理できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明によれば、プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化反応してアクリル酸含有ガスを得る工程、および該アクリル酸含有ガスを捕集用水溶液で捕集しアクリル酸含有溶液を得る工程とを含むアクリル酸の製造方法において、アクリル酸捕集塔の塔頂以外に低沸点物質含有溶液(但し、低沸点物質として水を除く)を導入することを特徴とする、アクリル酸の製造方法が提供される。捕集塔の塔頂以外に低沸点物質含有溶液(但し、低沸点物質として水を除く)を導入すると、塔頂部に導入するよりもアクリル酸捕集効率を向上させることができる。この結果、高濃度のアクリル酸含有溶液を捕集塔塔底液として調製することができ、共沸溶媒を使用せずに該溶液を脱水処理でき、共沸溶媒を使用しないために共沸脱水工程、溶剤回収工程、油水分離器の設置などを省略することができ、シンプルな工程でアクリル酸を製造できる。また、このような低沸点物質含有溶液(但し、低沸点物質として水を除く)として、次工程以降から排出した溶液を使用することができる。
本発明によれば、アクリル酸捕集塔に低沸点物質含有溶液を供給することでアクリル酸の捕集率を向上させることができる。
該低沸点物質含有溶液は、アクリル酸製造工程から排出される回収水を使用することができ、排出物を有効に利用できる。
本発明によれば、70〜98質量%という高濃度のアクリル酸含有溶液を得る
ことができるため、次工程以降で共沸溶媒を使用することなく含まれる水分を除去することができ、共沸脱水工程を省略でき、かつ共沸溶媒が残存することがないため、溶媒分離工程もなくして工程を簡略化することができる。
ことができるため、次工程以降で共沸溶媒を使用することなく含まれる水分を除去することができ、共沸脱水工程を省略でき、かつ共沸溶媒が残存することがないため、溶媒分離工程もなくして工程を簡略化することができる。
本発明は、プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化反応してアクリル酸含有ガスを得る工程、該アクリル酸含有ガスを捕集用水溶液で捕集しアクリル酸含有溶液を得る工程とを含むアクリル酸の製造方法において、アクリル酸捕集塔の塔頂以外に低沸点物質含有溶液(但し、低沸点物質として水を除く)を導入することを特徴とする、アクリル酸の製造方法である。
本発明において、「塔頂以外」とは塔頂を理論段数1とし、塔底を理論段数100とした場合に、理論段数2〜100段の範囲をいう。また、「精製」には、蒸留、放散、晶析、抽出、吸収、分縮等が含まれる。ここに、「蒸留」とは、溶液をその沸点まで加熱し含まれる揮発性成分を分離する方法、「放散」とは、放散ガスを供給して液相中の目的物を気相に移す方法、「晶析」とは目的物を液相および気相から結晶を析出させて分離する方法、「抽出」とは目的物を溶媒に溶解させることにより分離する方法、「吸収」とは、気相または液相中の目的物を液体または固体に接触させ分離する方法、「分縮」とは、ガスあるいは蒸気の一部を凝縮させ目的物を分離する方法をそれぞれ意味するものとする。また、本発明において低沸点物質とは、標準状態においてアクリル酸よりも沸点が低い物質をいい、高沸点物質とは、標準状態においてアクリル酸よりも沸点が高い物質をいう。また、アクリル酸捕集塔の塔頂以外に導入される「低沸点物質含有溶液(但し、低沸点物質として水を除く)」は、水以外の低沸点物質を含む溶液を意味し、以下、単に「低沸点物質含有溶液」と称する。以下、本発明の好ましい態様の一例を示す図1に基づいて説明する。
本発明では、プロピレンおよび/またはアクロレイン1、分子状酸素含有ガス3および希釈ガス5とを接触気相酸化触媒10を内蔵する反応器20に供給してアクリル酸含有ガス25を得る。このガス25を、中段に低沸点物質含有溶液31を供給する捕集塔30の塔底に供給し、該捕集塔30の塔頂からは捕集用水溶液33を供給してアクリル酸含有ガス25と捕集用水溶液33とを接触させる。低沸点物質含有溶液には、後記する第一蒸留塔40の塔頂留出液45の全量または一部を使用することができる。なお、捕集塔塔底液であるアクリル酸含有溶液35は、冷却器37で冷却したのち捕集塔30に循環させてもよい。これによって高濃度にアクリル酸を含有するアクリル酸含有溶液35が得られる。次いで、該アクリル酸含有溶液35を第一蒸留塔40に供給し、含まれる水などの低沸点物質を除去した後、粗アクリル酸41を得る。この粗アクリル酸41を晶析器50に供給すると製品アクリル酸60が得られる。なお、第一蒸留塔40の塔底液43に含まれる高沸点物質にはアクリル酸二量体が含まれるため、これを塔底に薄膜蒸発器73を併設した第二蒸留塔70に供給してアクリル酸二量体を濃縮し、次いで該二量体を熱分解槽75に滞留させてアクリル酸に熱分解する。このアクリル酸を薄膜蒸発器73に戻し、更に第二蒸留塔70を介して第一蒸留塔40および/または捕集塔30に循環させ、製品として回収することができる。該空気が水分を含んでいる場合には、反応器に供給する前に予め除湿することが好ましい。反応器に導入する水分量、ひいては捕集塔に導入される水分量を低減させることができるからである。
本発明では、アクリル酸原料ガスとしてプロピレンおよび/またはアクロレイン1を使用する。反応器20としては、接触気相酸化反応が行えれば特に制限されないが、反応効率に優れる点で多管式反応器を好ましく使用することができる。該反応器20に、公知の接触気相酸化触媒10を充填し、原料ガスと酸素、空気等の分子状酸素含有ガス3とを接触させることにより酸化させる。原料ガスとしてプロピレンを使用する場合には、プロピレン濃度は7〜15体積%、水0〜10体積%、分子状酸素はプロピレン:分子状酸素(体積比)を1:1.0〜2.0の範囲とする。分子状酸素の供給源としては空気が有利に用いられるが、必要により酸素富化空気、純酸素を用いることもできる。また、希釈ガス5には、窒素、二酸化炭素、その他の不活性ガスがある。また、場合によっては捕集塔30の塔頂より排出されたガスを使用してもよい。
プロピレンを原料とする場合の接触気相酸化反応は、通常二段階で行い、二種類の接触気相酸化触媒10を使用する。一段目の触媒はプロピレンを含む原料ガスを気相酸化して主としてアクロレインを生成し得るものであり、二段目の触媒はアクロレインを含む原料ガスを気相酸化して主としてアクリル酸を生成し得るものである。一段目の触媒としては、鉄、モリブデンおよびビスマスを含有する複合酸化物を、また二段目の触媒としてはバナジウムを必須成分とする触媒を挙げることができる。
なお、図1では、上記二段階の反応をシングルリアクターで行なう態様を示したが、異なる2つの反応器を接続したタンデムで行なってもよい。接触気相酸化反応で得られるアクリル酸含有ガス25には、アクリル酸5〜14体積%、酢酸0.1〜2.5体積%、分子状酸素0.5〜3.0体積%、水5〜36体積%の範囲で含まれ、その他は原料ガス中の未反応成分およびプロピオン酸、マレイン酸、アセトン、アクロレイン、フルフラール、ホルムアルデヒド、COxなどの反応副生物である。
アクリル酸捕集塔30において、アクリル酸含有ガスと捕集用水溶液との接触方法には公知の接触方法を使用することができ、例えば、泡鐘トレイ、ユニフラットトレイ、多孔板トレイ、ジェットトレイ、バブルトレイ、ベンチュリートレイを用いる十字流接触;ターボグリッドトレイ、デュアルフロートレイ、リップルトレイ、キッテルトレイ、ガーゼ型、シート型、グリット型の規則充填物、不規則充填物を用いる向流接触などが挙げられる。
本発明では、該アクリル酸含有ガス25を捕集用水溶液33と接触させてアクリル酸を捕集する際に、低沸点物質含有溶液31を捕集塔30の中段に供給しつつアクリル酸を捕集することを特徴とする。アクリル酸は、塔頂から降る捕集用水溶液33に吸収されるが、この際に捕集塔の塔頂以外の箇所から水以外の低沸点物質、例えば酢酸を導入すると、アクリル酸捕集率が向上するからである。その原理については明確ではないが、捕集塔30のいずれかから酢酸を投入すると酢酸供給位置近傍に占める酢酸ガスの層が増加し、親和性、圧力関係の変化が起こり、酢酸層の上部により低沸点物質ガス層が、下部により高沸点物質ガス層が形成されるように捕集塔内のガス分布が変化し、塔底側にアクリル酸が移行するためと考えられる。特に、塔頂から数えて理論段数2以上、より好ましくは塔頂から数えて{捕集塔全理論段数×0.25}段以上、特には{捕集塔全理論段数×0.5}段以上の位置から酢酸含有溶液を導入することが好ましい。塔頂ではもはや酢酸ガス層の増加によるアクリル酸捕集効率の向上効果が少なく、むしろアクリル酸捕集効率が低下する。
なお、この効果は、酢酸に限定されず、水以外の低沸点物質であればよく、特に沸点が標準状態で141℃以下、好ましくは60〜141℃、特に好ましくは100.5〜141℃の化合物を使用した場合にも同様に観察される。本発明において、アクリル酸捕集塔に、塔頂以外から導入する低沸点物質としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アクロレインなどがある。なお、これらの化合物は、アクリル酸製造工程において、他の低沸点物質と同様に、捕集塔30の塔頂や第一蒸留塔40の塔頂から系外に除去することができる。
低沸点物質含有溶液に含まれる低沸点物質濃度は、導入量によっても適宜選択できるが、2〜100質量%、より好ましくは5〜100質量%、特には10〜100質量%とすることが好ましい。2質量%を下回ると上記捕集塔内の気相分布の変動効果が低い。なお、該低沸点物質含有溶液に複数の低沸点物質が含まれる場合には、これらの合計量で換算する。
更に本発明では、上記低沸点物質濃度の低沸点物質含有溶液を使用し、かつアクリル酸含有ガスに対する該低沸点物質含有液中の低沸点物質量比は、アクリル酸含有ガスに含まれるアクリル酸の質量流量の0.005〜0.20倍、より好ましくは0.008〜0.15倍、特に好ましくは0.01〜0.10倍の質量流量とする。0.005倍を下回るとアクリル酸の捕集効率向上効果がなく、その一方、0.20倍を超えると、投入低沸点物質の一部が塔底から排出され、高濃度のアクリル酸含有溶液を得ることが困難となる。
本発明では、このような低沸点物質含有溶液31として、アクリル酸精製工程から排出する蒸留塔の留出液を使用することができ、例えば、後記する第一蒸留塔40の塔頂留出液45がある。低沸点物質である酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アクロレインは水と共に低沸点物質分離塔の留出液としてアクリル酸と分離されるため、第一蒸留塔40の蒸留条件を、低沸点物質分離条件に調整すれば、蒸留塔40の塔頂からの留出液には酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アクロレイン、水、アクリル酸が含まれ、上記低沸点物質含有溶液となっている。このため、新たに低沸点物質を系内に添加することなく、低沸点物質含有溶液を調製することができる。
本発明で使用する捕集用水溶液33としては、アクリル酸を捕集できる水溶液であれば広く使用することができる。捕集用水溶液の温度は、0〜60℃、好ましくは10〜55℃、特には20〜50℃のものを塔内に導入する。
アクリル酸含有ガスに対する該捕集用水溶液量比は、アクリル酸含有ガスに含まれるアクリル酸の質量流量の0.1倍以上、好ましくは0.15〜2.0倍、特には0.2〜1.5倍の質量流量の捕集用水溶液を向流接触させてアクリル酸を捕集することが好ましい。0.1倍を下回るとアクリル酸捕集塔の極端な効率低下を引き起こす場合がある。なお、捕集用水溶液には、アクリル酸などの重合性物質の重合を防止するために、特開2001−348360号公報、2001−348358号公報、2001−348359号公報等に記載されるN−オキシル化合物、フェノール化合物、酢酸マンガン等のマンガン塩、ジブチルチオカルバミン酸銅などのジアルキルジチオカルバミン酸銅塩、ニトロソ化合物、アミン化合物およびフェノチアジンからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有させてもよい。
アクリル酸捕集塔塔頂は、常圧以上で操作するのが一般的である。本発明では、低沸点物質含有溶液を塔頂以外に導入することでアクリル酸捕集率を向上させるものであるが、捕集条件は導入する低沸点物質含有溶液の液量、低沸点物質濃度、アクリル酸含有ガスのアクリル酸濃度、目的とするアクリル酸含有溶液のアクリル酸濃度などによっても変動する。本発明では、塔頂圧力(ゲージ圧)としては、0〜0.4MPa、好ましくは0〜0.1MPa、特には0〜0.03MPaである。0MPa(ゲージ圧)より低いと減圧装置が必要となり設備費、用役費がかかる一方、0.4MPa(ゲージ圧)より高いと塔頂から水や酢酸などの低沸点物質を排出させるために捕集塔の温度をかなり上げる必要が生じ捕集効率が低下する場合がある。また、塔頂温度としては、一般には30〜85℃、特には40〜80℃であることが好ましい。本発明では、このような捕集条件によって、アクリル酸:70〜98質量%、酢酸:0.1〜5.0質量%、水:1.9〜30質量%、およびその他の不純物(マレイン酸、プロピオン酸などの酸類およびフルフラール、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類など):0.01〜5.0質量%のアクリル酸含有溶液35が得られる。
アクリル酸含有溶液は、蒸留塔で蒸留処理をおこなってもよいが、このような蒸留工程に先立ち、アクロレインの分離処理工程を行ってもよい。
分離塔は、アクロレインの分離ができれば特に限定はされないが、充填塔、棚段塔(トレイ塔)を用いることができる。分離塔の条件は、含まれるアクリル酸濃度やアクロレイン濃度によって蒸留、放散の各方法を適宜選択することができる。蒸留の場合には、塔頂圧力(絶対圧)は20〜800hPa、好ましくは40〜600hPa、特には60〜400hPaとすることが好ましい。20hPaより低いと、塔、コンデンサ、真空装置が大型化し設備費がかかり不利である。一方、800hPa(絶対圧)より高いと分離塔内の温度が高くなり重合の危険性が増し不利である。また、塔頂温度は、一般には30〜100℃、特には40〜80℃である。また、塔底温度は、一般には40〜110℃、特には50〜90℃である。なお、放散の場合も従来公知の方法によってアクロレイン量を低減したアクリル酸溶液を得ることができるが、アクロレイン分離処理工程の塔頂部からの留出液に含まれるアクロレインは少量と推定され、アクリル酸ロスを低減する効果がなく、本発明における低沸点物質含有溶液とすることはできない。
本発明では、アクリル酸含有溶液35またはアクロレイン分離後のアクリル酸含有溶液の精製方法に制限はないが、例えば、アクリル酸含有溶液35を第一蒸留塔40に供給し、実質的に水を含まない粗アクリル酸を塔底流および/または塔側流として分離することができる。
第一蒸留塔40は、アクリル酸が分離できれば特に限定はされないが、充填塔、棚段塔(トレイ塔)等を用いることができる。
第一蒸留塔40は、水や酢酸などの低沸点物質を分離する条件で蒸留する。この際、共沸溶媒を使用する必要はない。上記したように、捕集工程で高濃度のアクリル酸含有溶液を調製できるため、共沸溶媒を使用しなくても含まれる水や酢酸などの低沸点物質を第一蒸留塔40の塔頂留出液として効率的に分離できるからである。また、共沸溶媒を使用しないために、油水分離することなく該留出液を低沸点物質含有溶液として捕集塔に循環させることができる。すなわち、蒸留条件は、第一蒸留塔40の塔頂留出液を低沸点物質含有溶液として使用し、かつアクリル酸を低沸点物質および高沸点物質と分離できる条件とする。このような蒸留条件は、導入するアクリル酸含有溶液35のアクリル酸濃度や、目的とする粗アクリル酸の純度などによって適宜選択することができ、塔頂圧力(絶対圧)は20〜400hPa、好ましくは30〜300hPa、特には30〜200hPaとすることが好ましい。20hPa(絶対圧)より低いと塔、コンデンサ、真空装置が大型化し設備がかかり不利である。一方、400hPa(絶対圧)より高いと蒸留塔40内の温度が高くなり重合の危険性が増し不利である。また、塔頂温度は、一般には30〜70℃、特には40〜60℃である。一方、塔底温度は、一般には70〜120℃、特には80〜110℃である。このような蒸留条件によって、実質的に水を含まず、酢酸の含有量が0〜1.0質量%の粗アクリル酸が、蒸留塔の塔側流として得られる。
本発明では、粗アクリル酸の精製工程として、図1の第一蒸留塔40に示す蒸留塔のほかに、特開2000−290221号公報、2001−226320号公報、2001−348360号公報、2001−348358号公報等に開示される、共沸脱水処理、該脱水工程の後に低沸点物質分離工程、高沸点物質分離工程、その他の精製工程等によって精製してもよい。しかしながら、本発明では、高濃度のアクリル酸含有溶液を調製し、これを精製することで共沸溶媒を使用せずに、水や酢酸などの低沸点物質を除去することができ、このため溶媒回収塔や溶媒と回収水とを分離するための油水分離器などの設置を回避できる点に特徴がある。なお、アクリル酸の精製工程としては蒸留精製に限られず、更に、放散、晶析、抽出、吸収、分縮を適宜組み合わせてアクリル酸を精製してもよい。
本発明では粗アクリル酸41を晶析器50に供給し、精製アクリル酸60を得る。このような態様は、特開2001−199931号公報に記載の方法に準じて行な
うことができる。
うことができる。
第二蒸留塔70の塔底液は粘度が高いため、塔底側に薄膜蒸発器73を併設した蒸留塔70を使用することが好ましい。第二蒸留塔70は、理論段数1〜5段にて、10〜150hPa(絶対圧)の減圧下で、塔底温度120℃以下で蒸留するのが好ましい。なお、第一蒸留塔40の塔底液に含まれる高沸点物質には、アクリル酸二量体、マレイン酸、重合防止剤などがある。
本発明では、第二蒸留塔70の塔頂からアクリル酸を留出させて晶析器50、第一蒸留塔40および捕集塔30のいずれかにその一部を供給してもよい。
一方、上記薄膜蒸発器73の缶液を熱分解槽75に供給する。該熱分解槽75は、アクリル酸二量体を120〜220℃の範囲の温度で分解し、滞留時間(熱分解槽容量/廃油量)は熱分解温度によって変わるが、通常20〜50時間である。また、熱分解槽にアクリル酸ナトリウムなどの触媒を入れ、分解してもよい。アクリル酸二量体がアクリル酸に分解された後、これを薄膜蒸発器73に循環し、さらに第二蒸留塔70の塔頂留出液を第一蒸留塔40に供給すると、アクリル酸を有効に利用することができる。本発明では、アクリル酸捕集塔30で高濃度のアクリル酸含有溶液を調製することができるが、高濃度のアクリル酸含有溶液の重合は、重合防止剤の添加によって回避することができる。一方、捕集工程や精製工程ではアクリル酸濃度に比例する重合防止剤が使用されており、本発明ではこの重合防止剤は、熱分解槽75の廃液として系外に除去され、高純度の製品アクリル酸60を製造することができる。
なお、晶析器50から回収した残留母液は、全量を捕集塔30、第一蒸留塔40、第二蒸留塔70、薄膜蒸発器73、熱分解槽75などのいずれかに供給してもよいが、一部を廃油として系外に排出してもよい。該残留母液の全量をアクリル酸二量体分解工程に供給した場合には、低沸点物質の濃縮を避けるために、アクリル酸二量体分解工程より回収されるアクリル酸の一部を系外に排出してもよく、アクリル酸二量体分解工程に供給する前にアルデヒド類およびマレイン酸を高沸点物化する為に化学的前処理を施してもよい。これによって、アクリル酸二量体分解工程より回収されるアクリル酸の不純物濃度を低減することができる。このような態様は、特開2001−199931号公報に記載の方法に準じて行なうことができる。
なお、図1とは相違するが、アクリル酸含有溶液または更に低沸点物質を分離除去したアクリル酸含有溶液について、第一蒸留塔で蒸留処理せず、上記した晶析処理を行ってもよい。このような晶析工程から得た晶析母液には、酢酸が2〜15質量%含まれている。本発明では、このような晶析母液を低沸点物質含有溶液として使用することができる。従って、このような晶析母液を捕集塔の塔頂以外から導入すれば、アクリル酸捕集効率を向上させ、高濃度のアクリル酸含有溶液を調製することができる。
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
実施例1
プロピレンを酸化触媒の存在下に分子状酸素ガスを接触気相酸化してアクリル酸7.1vol%、水11.0vol%、不活性ガス81.3vol%、その他0.7vol%を含む混合ガスを毎時17.2kmolで得た。
プロピレンを酸化触媒の存在下に分子状酸素ガスを接触気相酸化してアクリル酸7.1vol%、水11.0vol%、不活性ガス81.3vol%、その他0.7vol%を含む混合ガスを毎時17.2kmolで得た。
この混合ガスを168.1℃で計算上の理論段#21である捕集塔塔底に供給した。捕集塔塔頂圧力は10.8kPa、塔頂から重合禁止剤を含む純水を捕集液として毎時31.6kgで投入し、運転した。この時、捕集塔塔底よりアクリル酸90質量%となるように捕集塔塔頂温度を調節して抜き出し、蒸留塔に液移送を行った。
アクリル酸15.0質量%、酢酸34.0質量%、水51.0質量%である液を毎時10.50kgで捕集塔の塔中(計算上の理論段#14)に投入すると、捕集塔塔頂温度は63.5℃となり、この時の捕集塔塔頂から毎時17.7kmolでガスが排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は、毎時1.77kgであった。
実施例2
捕集塔塔中に投入する液を捕集塔の計算上の理論段を5段にする以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.5℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.7kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時2.25kgであった。
捕集塔塔中に投入する液を捕集塔の計算上の理論段を5段にする以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.5℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.7kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時2.25kgであった。
実施例3
捕集塔に投入する液を捕集塔塔底(計算上の理論段を21段)にする以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.5℃となり、この時の捕集塔塔頂からの排ガスは毎時17.7kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時1.88kgであった。
捕集塔に投入する液を捕集塔塔底(計算上の理論段を21段)にする以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.5℃となり、この時の捕集塔塔頂からの排ガスは毎時17.7kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時1.88kgであった。
比較例1
捕集塔に投入する液を捕集塔の塔頂(計算上の理論段を1段)にする以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.6℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.7kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時3.08kgであった。
捕集塔に投入する液を捕集塔の塔頂(計算上の理論段を1段)にする以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.6℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.7kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時3.08kgであった。
比較例2
捕集塔に投入する液を酢酸を含まず、アクリル酸15.0質量%、水85.0質量%とする以外は、実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は64.0℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.9kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時3.14kgであった。
捕集塔に投入する液を酢酸を含まず、アクリル酸15.0質量%、水85.0質量%とする以外は、実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は64.0℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.9kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時3.14kgであった。
実施例4
捕集塔に投入する液をアクリル酸15.0質量%、酢酸5.0質量%、水80.0質量%とする以外は、実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.9℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.8kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時2.87kgであった。
捕集塔に投入する液をアクリル酸15.0質量%、酢酸5.0質量%、水80.0質量%とする以外は、実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.9℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.8kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時2.87kgであった。
実施例5
捕集塔に投入する液をアクリル酸15.0質量%、酢酸15.0質量%、水70.0質量%である以外は、実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.8℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.8kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時2.42kgであった。
捕集塔に投入する液をアクリル酸15.0質量%、酢酸15.0質量%、水70.0質量%である以外は、実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は63.8℃となり、この時の捕集塔塔頂からのガスは毎時17.8kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時2.42kgであった。
実施例6
捕集塔に投入する液を蒸留塔塔頂液であるアクリル酸58.3質量%、酢酸20.0質量%、水21.7質量%、これを捕集塔の計算上の理論段19段に投入する以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は62.3℃となり、この時のガスは毎時17.5kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時1.68kgであった。
捕集塔に投入する液を蒸留塔塔頂液であるアクリル酸58.3質量%、酢酸20.0質量%、水21.7質量%、これを捕集塔の計算上の理論段19段に投入する以外は実施例1と同様にして行うと、捕集塔塔頂温度は62.3℃となり、この時のガスは毎時17.5kmolで排出され、ガス中に含まれるアクリル酸量は毎時1.68kgであった。
1・・・プロピレンおよび/またはアクロレイン、3・・・分子状酸素含有ガス、5・・・希釈ガス、10・・・接触気相酸化触媒、20・・・反応器、25・・・アクリル酸含有ガス、30・・・アクリル酸捕集塔、31・・・低沸点物質含有溶液、33・・・捕集用水溶液、35・・・アクリル酸含有溶液、37・・・冷却器、39・・・冷却器、40・・・第一蒸留塔、41・・・粗アクリル酸、43・・・高沸点物質、45・・・第一蒸留塔留出液、50・・・晶析器、60・・・製品アクリル酸、70・・・第二蒸留塔、73・・・薄膜蒸発器、75・・・熱分解槽。
Claims (5)
- プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化反応に供してアクリル酸含有ガスを得る工程と、該アクリル酸含有ガスを捕集用水溶液で捕集しアクリル酸含有水溶液を得る工程とアクリル酸含有水溶液を蒸留する工程とを含むアクリル酸の製造方法において、アクリル酸捕集塔の塔頂以外に低沸点物質含有水溶液(但し、低沸点物質として水を除く)を導入することを特徴とする、アクリル酸の製造方法。
- 該低沸点物質含有溶液の捕集塔への投入位置が、塔頂から数えた理論段数として2以上である、請求項1記載の製造方法。
- 該低沸点物質含有溶液の低沸点物質濃度は、2〜100質量%である、請求項1記載の製造方法。
- 該低沸点物質含有溶液は精製工程から得た溶液である、請求項2または3記載の製造方法。
- 該低沸点物質は酢酸である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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- 2007-06-27 JP JP2007169568A patent/JP2007284445A/ja active Pending
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