JP2007284314A - 耐食性マグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記焼結体の製造方法 - Google Patents

耐食性マグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐食性を有し、高純度マグネシア焼結体よりも低温焼成が可能なマグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記マグネシア質焼結体の製造方法の提供。
【解決手段】(a)マグネシアとNbの合計量が98重量%以上、(b)マグネシア/Nb(重量比)が80/20〜98/2、(c)気孔率が1.0%以下、(d)平均結晶粒径が3〜60μm、であることを特徴とする耐食性マグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記焼結体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性に優れたマグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記焼結体の製造方法に関する。
最近の急速な電子部品の発展に伴い、いろいろな開発や製品化が進められている、より高機能化された電子部品材料は、精密な組成制御が必要不可欠なため、製造工程における不純物混入の抑制が図られている。そのため、焼成工程に用いる熱処理用部材には、電子部品材料の組成変動をきたすことが無く、耐食性に優れた緻密なセラミックス焼結体が採用されている。特に、PbOを含有する圧電体等の電子部品材料の熱処理工程には、PbOに対する耐食性が高い、マグネシア質焼結体の熱処理用部材が使用されてきた。
例えば、特許文献1にはマグネシア含有量99.9%以上で、気孔率が2%以下からなる、緻密で耐食性、耐スポーリング性に優れた高純度マグネシア焼結体が開示されている。しかしながら、マグネシア含有量が99.9%であっても最近の高機能な圧電体等の焼成では被焼成体との反応があり、十分満足できるものではない。しかも、高純度のマグネシアは焼結性が極めて悪いため、緻密な焼結体を得るには焼成温度を非常に高くする必要があり、省エネルギーやコストの点からみて問題がある。
一方、特許文献2には、マグネシア、アルミナ、ジルコニアが特定範囲の含有量を有する、低温で磁器化するマグネシア磁器組成物が開示され、特許文献3には超微粒子アルミナを焼結助剤とした高純度マグネシア焼結体が開示されている。しかしながら、これら焼結助剤の添加によって低温焼成が可能であるものの、これらの焼結助剤は被焼成体と反応して、マグネシア焼結体の耐食性を著しく低下させる問題があり、精密な組成制御が必要とされる高機能な電子部品材料の焼成に用いるには、耐食性の点で十分満足できない問題があった。
特開平1−188459号公報 特開平6−191926号公報 特開昭62−83358号公報
本発明の目的は、優れた耐食性を有し、高純度マグネシア焼結体よりも低温焼成が可能なマグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記マグネシア質焼結体の製造方法を提供する点にある。
本発明は前記のような現状を鑑みて鋭意研究を重ねてきた結果、Nbをある特定量マグネシアに添加し、特定の範囲内の気孔率、平均結晶粒径にすることにより、高純度マグネシアよりも耐食性に優れ、しかも、低温焼成が可能なマグネシア質焼結体、それよりなる熱処理用部材および前記焼結体の製造方法を見出し、本発明の完成に至った。なお、Nbを添加することで耐食性が向上する理由は明らかではないが、微量のNbがマグネシアに固溶し、焼結の促進と粒界の耐食性を向上すると共に、Nbとマグネシアの化合物がマグネシアの結晶粒界に生成し、被焼成体に含有される成分の浸透を防ぐものと考えられる。
即ち、本発明の第1は、(a)マグネシアとNbの合計量が98重量%以上、(b)マグネシア/Nb(重量比)が80/20〜98/2、(c)気孔率が1.0%以下、(d)平均結晶粒径が3〜60μm、であることを特徴とする耐食性マグネシア質焼結体に関する。
本発明の第2は、請求項1記載の耐食性マグネシア質焼結体からなる熱処理用部材に関する。
本発明における耐食性マグネシア質焼結体からなる熱処理用部材とは、各種材料の熱処理のときに用いる被焼成体を収納する容器あるいは各種焼成炉や溶融炉などの内部や周辺部で使用する各種部材を意味する。具体的には、例えばセラミックス粉末の仮焼合成及び成形体の焼成に用いる焼成容器、セッター、金属溶解用ルツボ、ガラス溶解用容器、スラグ溶解用容器、単結晶育成用ルツボ、蛍光体材料の熱処理用容器、管状炉用炉心管、ラジアントチューブ、ヒーターサポートチューブ、測温用保護管、ガス吹き込み管、ガス採取管、内張炉材などを示す。
本発明の第3は、純度99重量%以上のマグネシア原料粉末と、純度99重量%以上のNb原料粉末を、マグネシアとNbの合計量が98重量%以上、マグネシア/Nbの重量比が80/20〜98/2になるように配合し、平均粒子径0.4〜3μmまで粉砕・混合した粉体を用いて成形し、1300〜1700℃で焼成することを特徴とする請求項1記載の耐食性マグネシア質焼結体の製造方法に関する。
(a)マグネシアとNbの合計量が98重量%以上である点
本発明において、マグネシアとNbの合計量が98重量%以上であることが必要で、好ましくは99重量%以上である。マグネシアとニオブの合計量が98重量%未満である場合、アルカリ金属等の不純物量が増加して結晶粒界に第2相またはガラス相を多く生成し、耐食性が低下するため好ましくない。尚、上限は99.8重量%程度である。
(b)マグネシア/Nb(重量比)が80/20〜98/2である点
本発明において、マグネシア/Nbの重量比が80/20〜98/2であることが必要であり、その重量比は、好ましくは85/15〜95/5である。マグネシア/Nbの重量比が80/20を下廻る場合には、原料費が高価なNb含有量が多くなって、結果的にマグネシア質焼結体のコストアップを招き、しかもマグネシア本来の耐食性の低下をきたすため、好ましくない。マグネシア/Nbの重量比が98/2上廻る場合には、Nb含有量が低下して、Nb添加の効果が得られないため、優れた耐食性が得られず、焼結に必要な焼成温度も高くなるため好ましくない。
(c)気孔率が1.0%以下である点
本発明において、気孔率は1.0%以下であることが必要で、好ましくは0.5%以下である。気孔率が1.0%を越える場合には焼結体の気孔が増加し、この気孔が起点となって腐食(ここでいう腐食とは、耐食性マグネシア焼結体が被焼成体と反応して徐々に破壊される化学的劣化損傷現象を指す)及び反応(ここでいう反応とは、被焼成体を熱処理した際に、被焼成体と接触した耐食性マグネシア焼結体面側に別の物質が生成することを指す)が進行しやすくなって、耐食性が低下し、しかも機械的特性が下がって耐久性の低下が生じるため、好ましくない。気孔率の下限は0.04%程度である。尚、本発明における気孔率とは開気孔率を示し、測定はJIS R 1634に準拠して行う。
(d)平均結晶粒径が3〜60μmである点
本発明において、平均結晶粒径は3〜60μmであることが必要で、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。平均結晶粒径が3μm未満の場合、耐食性が低下するため、好ましくない。平均結晶粒径が60μmを越える場合には、機械的特性の低下だけでなく、耐熱衝撃抵抗性が下がって耐久性が低下し、熱処理用部材としての実用性に劣るため、好ましくない。
平均結晶粒径は、焼結体を鏡面仕上げし、熱エッチングを施し、走査型電子顕微鏡にて観察し、インターセプト法により十点平均から求めたものである。尚、以下の算出式を用いる。
Figure 2007284314
本発明における耐食性マグネシア質焼結体は種々の方法で作製できるが、その一例を下記に示す。
マグネシア原料粉末としては、マグネシア純度が99重量%以上であることが好ましい。また、マグネシア原料粉末の平均粒子径は10μm以下が好ましく、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径が10μmを越える場合には、所定の粉砕・混合処理時間が長くなり、その結果、粉砕機からの摩耗による不純物が多く混入して、耐食性が低下するため好ましくない。尚、マグネシア原料粉末の平均粒子径の下限は0.5μm程度である。
Nb原料粉末としては、Nb純度が99重量%以上であることが好ましい。また、Nb原料粉末の平均粒子径は3μm以下が好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。平均粒子径が3μmを越える場合には、Nb成分の分布が焼結体内部で不均一となりやすく、Nb添加の効果が得られず、耐食性が低下するため好ましくない。尚、Nb原料粉末の平均粒子径の下限は0.3μm程度である。
製品におけるマグネシアとNbの合計量を98重量%以上とするためには、製造工程中、とくに粉砕機中で不純物が混入しやすいので、マグネシア原料やNb原料の純度は99重量%以上が好ましいのである。
尚、本発明においてマグネシア、Nb原料粉末とも使用前に予め粉砕処理を行って、所定の平均粒子径に調整したものを使用しても良い。また、マグネシア原料粉末としては、水酸化マグネシウム等を仮焼して、所定のマグネシア純度並びに平均粒子径に調整したものを使用しても良い。
焼結体に含有するSiO、CaO、Al、ZrO、TiO、Fe、NaO及びKOなどの合計量は2重量%未満であることが好ましく、より好ましくは1重量%未満である。これらの成分の合計量が2重量%以上の場合、結晶粒界に第2相やガラス相を多く生成し、耐食性が低下するため好ましくない。尚、下限値は0.2重量%程度となるのが現状である。
以上の原料を用いて所定の組成になるように配合し、湿式でポットミル、アトリッションミル及び媒体撹拌ミル等により水または有機溶媒中で粉砕・混合する。本発明における粉砕・混合処理にて得られた粉体の平均粒子径(表1中では「処理スラリーの平均粒子径」として表示)は0.4〜3μmであることが必要であり、好ましくは0.6〜2.0μmである。平均粒子径が0.4μm未満の場合、成形性の低下によって、焼結体内部に欠陥を多く含有し、機械的特性が低下して、耐久性が低下するため好ましくない。平均粒子径が3μmを超える場合、焼結性が低下して、気孔率が高くなり、耐食性や耐久性が低下するため好ましくない。
尚、粉砕・混合後の粉体の平均粒子径は粉砕・混合時の粉体濃度、使用するボール径の選択や処理時間の調整などによりコントロールする。
成形方法としてプレス成形、ラバープレス成形等の方法を採用する場合、粉砕・混合スラリーに必要により公知の成形助剤(例えばアクリル系樹脂、PVA等)を添加し、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥させて成形用粉体を作製し、この成形用粉体を金型やゴム型などに充填して成形する。また、鋳込み成形法を採用する場合には、粉砕・混合スラリーに必要により公知のバインダー(例えばワックスエマルジョン、アクリル系樹脂等)を添加し、石膏型あるいは樹脂型を用いて排泥鋳込法、充填鋳込法、加圧鋳込法などにより成形する。さらに押出成形法を採用する場合は、得られた粉砕・混合スラリーを乾燥し、整粒して、押出成形用バインダー(カルボキシルメチルセルロース、ワックスエマルジョン等の公知のバインダーが使用できる)と水または有機溶媒を添加して、混合し、土練して成形用坏土とする。この成形用坏土を用いて、公知の押出成形機にて、所定の形状になるように押出成形する。以上のようにして得た成形体を1300〜1700℃、より好ましくは1400〜1650℃で焼成することによって耐食性マグネシア質焼結体を得る。
本発明のマグネシア質焼結体は、高純度マグネシアと同等もしくはそれ以上の耐食性及び耐久性に優れ、高純度マグネシア焼結体よりも低温焼成が可能であるため省エネルギーや低コストといった点での優位性が高いものになっている。そのため、圧電体、誘電体などの電子部品材料の熱処理用容器やセッターに好適であることは勿論のこと、蛍光体、β−アルミナ、セラミックス材料などの熱処理用道具材、各種電気炉用炉心管及び各種機器用の保護管などの用途において有用である。また、優れた耐食性を有する点を利用して、例えばバーナーノズル、ラジアントチューブ、ヒーターサポートチューブ、ガス吹き込み管、ガス採取管、内張炉材としても有効に利用できる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
実施例1〜7、比較例1〜8
純度99.5重量%、平均粒子径1〜6μmのマグネシア原料粉末と、純度99.5重量%、平均粒子径1〜3μmのNb原料粉末を用いた。尚、実施例6と比較例6は純度99.9重量%、平均粒子径0.6μmのマグネシア原料粉末を用いた。また比較例3は純度99.5重量%、平均粒子径12μmのマグネシア原料粉末を使用し、比較例7は純度99.5重量%、平均粒子径4μmのNb原料粉末を用いた。
表1に示すマグネシア/Nbの重量比になるように配合し、溶媒にアルコールを使用してアトリッションミルにて処理を行った。得られたスラリーの平均粒子径を表1に示す。このスラリーにアクリル系樹脂バインダーを3重量%添加し、スプレードライヤー乾燥を施して成形用粉体を得た。得られた成形用粉体を金型を用いて1tonf/cmの圧力によりプレス成形し、1250〜1750℃で焼成して、100mm角で厚さ3mmの板状焼結体を作製した。得られた焼結体特性を表1に示す。
耐食性の評価は市販のPbO粉末を直径10mm、厚さ1mmに成形した成形体を板状焼結体の上に載せ、850℃、5時間保持を5サイクル行い、テスト後の焼結体断面を鏡面仕上げし、EDX(Energy Dispersive X−ray spectrometer:エネルギー分散型X線分析装置であり、観察試料に電子ビームをあてることにより試料から発生する特性X線を検出して、観察試料中の元素を調べる装置である)により浸食深さを測定した。その結果を表1に示す。
本願発明の耐食性に優れたマグネシア質焼結体は、PbOに対する浸食深さが400μm以下と優れた耐食性を示したが、本願発明の要件を一つでも満足していない焼結体は、浸食深さが400μm以上と、耐食性が劣ることが明らかである。
表1中の実施例3、4及び比較例4、7について、耐久性の評価を行った。試験は、板状焼結体を耐火物の上に載せて500℃に加熱保持している電気炉中に挿入し、30分加熱保持後、耐火物に載せたまま炉外に取り出し、室温下で冷却後、蛍光探傷によりクラック発生の有無を調べる繰り返しを10回実施した。結果を表2に示す。
本発明のマグネシア質焼結体は、10回の繰り返し試験でもクラックが発生しなかったことから、本発明の要件を一つでも満足していない焼結体に比べて優れた耐久性を有することが明らかである。
Figure 2007284314
Figure 2007284314

Claims (3)

  1. (a)マグネシアとNbの合計量が98重量%以上、(b)マグネシア/Nb(重量比)が80/20〜98/2、(c)気孔率が1.0%以下、(d)平均結晶粒径が3〜60μm、であることを特徴とする耐食性マグネシア質焼結体。
  2. 請求項1記載の耐食性マグネシア質焼結体からなる熱処理用部材。
  3. 純度99重量%以上のマグネシア原料粉末と、純度99重量%以上のNb原料粉末を、マグネシアとNbの合計量が98重量%以上、マグネシア/Nbの重量比が80/20〜98/2になるように配合し、平均粒子径0.4〜3μmまで粉砕・混合した粉体を用いて成形し、1300〜1700℃で焼成することを特徴とする請求項1記載の耐食性マグネシア質焼結体の製造方法。
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