JP2007283340A - 突合せ溶接金属板のプレス成型方法および成型金型 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、従来のテーラードブランク材におけるプレス成形性の欠点を解決し,優れたプレス成形性能を有するテーラードブランク材プレス用金型およびプレス方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 板厚と強度の一方または双方の異なる鋼板を突合せ溶接した板材をプレス成型する金型において、成型金型の一部に電磁石を設け、その電磁石の電圧もしくは電流を、突合せ溶接線と電磁石の位置関係に応じて制御することを特徴とする、プレス成型方法
【選択図】 図6
【解決手段】 板厚と強度の一方または双方の異なる鋼板を突合せ溶接した板材をプレス成型する金型において、成型金型の一部に電磁石を設け、その電磁石の電圧もしくは電流を、突合せ溶接線と電磁石の位置関係に応じて制御することを特徴とする、プレス成型方法
【選択図】 図6
Description
本発明は複数の金属板をつき合わせ溶接し、プレス加工に供される金属板のプレス成型方法およびプレス成型金型に関し、更に詳しくは、金属板を接合して製造される金属板のうち、プレス等の塑性加工に供されるための所謂テーラードブランク材のプレス成型方法および成型金型に関するものである。
自動車用プレス部品は、工程簡素化、金型数削減などのため、2種以上の部品を一体成形する技術が広く取り入れられている。しかし、一体成形部品を素板から生産する場合にはスクラップとなる部分が多くなることから、素板歩留まり向上のために同一材質の薄板類をレーザー溶接やマッシュシーム溶接、電子ビーム溶接、TIG溶接、アーク溶接などで連続溶接し、一体プレス成形を行う手法が開発された。さらに、最近では衝突安全性の観点から、部品の一部に必要な材料強度や板厚を変えた素板を連続溶接して用いる、所謂異材質テーラードブランク材が多く用いられるようになっている。
図11はテーラードブランク材のレーザー突合せ溶接プロセスの俯瞰図である。
テーラードブランク材は、板厚や強度の異なる鋼板同士をレーザー突合せ溶接することによって製造されている。例えば、図11に示すように、突合せた鋼板10、鋼板11同士のギャップ部分にレーザートーチ12からレーザービーム14を溶接ゾーン16に照射し、レーザートーチを突合せ線に沿って溶接進行方向15に移動もしくは、固定されたレーザートーチに対し鋼板を溶接進行方向15に移動しながら、溶接ビード13を形成してテーラードブランク材とするものである。
これら連続溶接により接合されたテーラードブランク材は、工程簡素化、金型数削減などの経済的効果を有するが、連続溶接部分の材質劣化などにより、プレス成形時の成形不良が問題となっている。プレス成形時の成型不良の原因となる破断としては、プレス成型の進行に応じて溶接ビード部と平行に素板が延ばされたとき、材質劣化した溶接ビード部が破断に至る「延性律速モード」と、溶接ビードを挟んで素板が引き延ばされたとき、低強度側の素板の母材破断に至る「応力律速モード」に分けられる。
プレス成型のこのような事態に対し、例えば、異厚・異材質テーラードブランク材のプレス成形において、強度律速に起因する低強度(もしくは低板厚)材側での破断を回避することを目的として、高引張強さ側材料の加工硬化特性値(n1)と低引張強さ側材料の加工硬化特性値(n2)の比(n1/n2)を0.75以上3.8以下とすることを特徴とする成形性に優れたプレス成型用テーラードブランク材(例えば、特許文献1参照)や、レーザービーム、電子ビーム、プラズマアークなどの高密度エネルギービームによる溶接後にプレス成形を行なう場合に良好な成形性を示す極低炭素冷延鋼板として、2.6<f(C、Si、Mn、P、B)<12.5を満足する鋼板(但し、B≦0.0005%の場合は、f(C、Si、Mn、P、B)=100[%C]+[%Si]+2[%Mn]+50[%P]+9000[%B]、そして、B>0.0005%の場合は、f(C、Si、Mn、P、B)=100[%C]+[%Si]+2[%Mn]+50[%P]+1000([%B]−0.0005)+4.5)、とする発明がなされている(例えば、特許文献2参照)。 しかし、このような材料の発明だけではプレス金型成型時の材料の破断を効果的に防止するには十分でない。例えば、極低炭素鋼板では昨今の高強度が要望される部材に必要な強度を満足できない場合があることと、溶接ビード部の特性向上により「延性律速モード」の破断に対しては効果が認められるが、「応力律速モード」の破断に対しては効果が低いことが判明した。
この点について、応力律速モードの破断時のひずみ分布については従来知見(例えば、非特許文献1参照)により素板の強度比で2種以上の素板に加わるひずみ比が初等解析で求まることが知られている。即ち、2種類の材料の応力−ひずみ関係式を添字1:高強度材、添字2:低高強度材とすると、σ1=K1ε1 n1、σ2=K2ε2 n2で表せられる。接合部では力が釣り合っているために、σ1t1=σ2t2が成り立つ。よってこれらの式を解くと、低強度材側が破断限界に達したときの高強度材側のひずみ(ε1max)は、TS1、TS2の値から求めると下記(1)で与えられる。
ε1max=n1{(t2/t1)(TS2/TS1)}1/n1・・・・(1)
ここで、σ:引張応力[MPa]、K:塑性係数[MPa]、ε:対数塑性ひずみ、n:加工硬化指数、TS:最大引張強度[MPa]を意味する。
ε1max=n1{(t2/t1)(TS2/TS1)}1/n1・・・・(1)
ここで、σ:引張応力[MPa]、K:塑性係数[MPa]、ε:対数塑性ひずみ、n:加工硬化指数、TS:最大引張強度[MPa]を意味する。
しかし、高強度材側の最大ひずみは計算できても「応力律速モード」でのプレス成型時の破断を改善する方法については記されていなかった。従ってプレス現場では、異材質テーラードブランク材での「応力律速モード」が生じた場合には、素板強度比を下げるために板厚比を低減するか、強度比を下げざるをえなかった。
本発明は、上記した従来のテーラードブランク材のプレス成形性についての欠点を解決し、テーラードブランク材に対してプレス成形性能を向上させたプレス成型方法およびプレス成型金型を提供することを目的とする。
本発明者等は、テーラードブランク材に関するプレス成形不良、とりわけ今まで有効な対策をたてることができなかった「応力律速モード」の破断に対して、材料とプレス金型との摩擦を利用して成型限界の向上を図ることができることを見出して本発明を完成した。
即ち本発明の要旨は、次の通りである。
(1)板厚と強度の一方または双方の異なる鋼板を突合せ溶接した板材をプレス成型するプレス成型方法において、成型金型の一部に少なくとも1個の電磁石を設け、その電磁石の電圧もしくは電流を、プレス中予め決められたシーケンスで制御することを特徴とする、プレス成型方法。
(2)成型金型の一部に設けた前記電磁石の電圧もしくは電流を、突合せ溶接線と電磁石の位置関係に応じて制御することを特徴とする、上記(1)記載のプレス成型方法。
(3)複数の電磁石を個別に制御することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のプレス成型方法。
(4)板厚と強度の一方または双方の異なる金属板を突合せ溶接した板材をプレス成型するプレス成型方法において、成型金型の一部に少なくとも1個のサクションパットを設け、その吸引力を、プレス中予め決められたシーケンスで制御することを特徴とする、プレス成型方法。
(5)成型金型の一部に設けた前記サクションパットの吸引力を、突合せ溶接線とサクションパットの位置関係に応じて制御することを特徴とする、上記(4)記載のプレス成型方法。
(6)複数のサクションパットを個別に制御することを特徴とする、上記(4)または(5)に記載のプレス成型方法。
(7)板厚と強度の一方または双方の異なる鋼板を突合せ溶接した板材をプレス成型する金型において、成型金型の一部に少なくとも1個の電磁石を設けたことを特徴とするプレス成型金型。
(8)板厚と強度の一方または双方の異なる金属板を突合せ溶接した板材をプレス成型する金型において、成型金型の一部に少なくとも1個のサクションパットを設けたことを特徴とするプレス成型金型。
本発明によれば、強度や板厚が異なる異材質同士を組み合わせたテーラードブランク材をプレス成型する際に、摩擦力を応用し、板厚もしくは強度の高い方の材料の変形を促すことで、テーラードブランク材の成型性を向上させることが可能となるという顕著な効果を奏する。
以下図に基づいて本発明を詳細に説明する。
テーラードブランク材をプレス金型を用いて成型する例について説明する。
テーラードブランク材をプレス金型を用いて成型する例について説明する。
図1(a)から(c)は、テーラードブランク材についてのプレス加工時の状態の断面を示す図である。図1(a)に示すように、板厚の異なる低強度側材料6と高強度側材料7とからなるテーラードブランク材1をハットプレス成型するには、パンチ2、ダイ3と板押え4とを備えたハットプレス成型装置を用いて、パンチ2上にテーラードブランク材1の溶接線5がくるように板押え4でセットし、パンチ2を矢印方向に上昇させて成型を行う。成型時には、図1(b)及び(c)に示すように、溶接ビード方向(溶接線方向)と直角方向の引っ張りによる歪が成型の律速となってしまう。このため、高加工量のハットプレス成型では、引っ張り強度の低い板厚の薄い鋼板部分が、引っ張り強度の高い板厚の厚い鋼板よりも伸びることとなり、溶接線5が引っ張り強度の高い板厚の厚い鋼板方向に移動し、溶接線5近傍の薄い鋼板(低強度側材料6)部分に亀裂発生が生じる。即ち、このような場合、溶接ビード方向と直角方向の引っ張りによる歪が成型の律速となってしまう。プレス成型の進行に従ってプレス中所謂「応力律速モード」の破断に至り、成型性を阻害するため、従来は低加工量の製品にしかテーラードブランク材を適用することが出来なかった。
例えば、板厚1.4mm、n値(加工硬化指数)0.25、最大引張強度400MPaの鋼板をプレス加工したときには、この材料は概ね25%の伸びを許容する。したがって例えば幅100mmの鋼板の両端を引っ張ったとき25mmの伸びを許容する。
次に板厚は1.0mmであるが、n値0.25、最大引張強度400MPaの鋼板を引っ張ったときには、この材料も概ね25%の伸びを許容する。したがって例えば幅100mmの鋼板の両端を引っ張ったとき同様に25mmの伸びを許容する。
しかし、このような材料を突合せ溶接し、溶接線を中心に両側に幅50mmの場所を拘束した状態で引っ張りを実施した場合には、板厚1.0mmの材料が、限界の25%まで伸びたときに板厚1.4mmの材料は6〜7%しか伸びておらず、つまり板厚1.0mmの材料は50mmの長さが12.5mm伸びるが、板厚1.4mmの材料は50mmの長さが3.5mmしか伸びないため、つまり合計100mmの長さが16mmしか伸びないことになり、各鋼板の伸びの合計値よりも低い値となる。つまり、板厚1.4mmの材料は未だ変形する余地を残すものの、すでに板厚1.0mmの材料は伸びの限界にまで達しており、これ以上引っ張ると板厚1.0mmの材料でワレが発生する。このように強度や板厚が異なる異材質同士を組み合わせたテーラードブランク材は、その母材に比して伸びが著しく減少し、したがってプレス成型時に十分な成型性を発揮することが出来なかった。
本発明はその成型限界付近でも、板厚若しくは強度の高い方の材料が未だ変形する余地を残していることに着目し、板厚若しくは強度の高い方の材料の変形を簡単な方法で促すことにより、成型性を高めるものである。具体的にはプレス成型時に金型と材料との間の摩擦力を応用し、板厚もしくは強度の高い方の高強度側材料の変形を促すことを特徴とする。
プレス成型において、材料と金型との摩擦は一般的に大きな技術課題であった。これまでプレス加工の世界においては、材料と金型との摩擦は加工歪を局所的に集中させることから有害な物として取り扱われ、深絞りプレス成型などの材料の加工性からも厳しい領域で成形性を向上させるためにはその摩擦をできるだけ小さくする手法がとられてきた。たとえば金型表面をできるだけ平滑に仕上げたり十分な潤滑油を塗布したり、場合によっては材料に特殊な焼き付け塗装を行うなどの手法がとられてきた。しかしこのような摩擦係数を単純に下げる工夫をおこなってテーラードブランク材のプレス加工時における摩擦による歪の均一化を図っても、強度・板厚の異なる異材質テーラードブランク材においては上記「応力律速モード」での破断を防ぎえることができず、その本質的な対策は何らとり得ていなかった。
図1(a)〜(c)に示すプレスにおける状況について説明する。この場合、成形性を改善するために金型表面の調整や塗油を十分におこない、材料と金型の摩擦係数を無視できるほど小さくした場合、材料トータルの伸びは前述したように母材それぞれが25%の伸び変形を許容するとしても、全体としてわずか14%しか伸びることができずそれに見合う分だけの張り出し量でしか成型することができなかった。その場合破断個所は薄手もしくは低強度側材料6の溶接線5付近で発生した。このとき、溶接線5は高強度側材料7に引っ張られる形となるので図1(a)〜(c)に示すように、金型上を高強度側材料7の方向に移動する。
本発明により、電磁石を金型に設け、その溶接ビード長手方向単位長さ辺りの吸引磁力をF、金属板と金型との摩擦係数をμとする。図2に示すように電磁石8の吸引磁力が働く範囲に高強度側(この場合は厚手側)材料7が掛かっている場合、T1=T2+μFが成り立つ。ここで、T1、T2は張力を意味する。つまりσ1t1=σ2t2+2μFの関係が成り立つ。よってこの式を(1)式と同様に解くと、低強度材側が破断限界に達したときの高強度材側のひずみ(ε1max)は、TS1、TS2の値から求めると下記(2)式で与えられる。
ε1max=n1{(t2×TS2+2μF)/(t1×TS1)}1/n1・・・・(2)
例えば、上記テーラードブランク材のプレス加工時、摩擦係数0.3、溶接ビード長さ辺りの電磁石による吸引力100N/mmのとき、板厚1.0mmの材料が25%伸びて成型限界に達したとき、板厚1.4mmの材料の延びは、従来技術の6%から9%に増加し、低強度材と高強度材を1:1の幅の比率で見た場合、テーラードブランク材のトータルの伸びは16%から、17%に増加する。
例えば、上記テーラードブランク材のプレス加工時、摩擦係数0.3、溶接ビード長さ辺りの電磁石による吸引力100N/mmのとき、板厚1.0mmの材料が25%伸びて成型限界に達したとき、板厚1.4mmの材料の延びは、従来技術の6%から9%に増加し、低強度材と高強度材を1:1の幅の比率で見た場合、テーラードブランク材のトータルの伸びは16%から、17%に増加する。
一方、電磁石近傍での力のつり合いを示す図3のように、電磁石8に低強度側(この場合は薄手側)材料6が掛かっている場合、低強度側材料の溶接部近傍の張力T2=T2+μFが成り立つ。またT2'=T1。したがってこの場合板破断が発生するのは張力T2の作用する低強度側材料6、すなわち、低強度側材料6の溶接部と電磁石8位置の間で破断が発生する。この部分が破断限界に達したときの高強度材高強度材側のひずみ(ε1max)は、TS1、TS2の値から求めると下記(3)式で与えられる。
ε1max=n1{(t2×TS2)/(t1×TS1)}1/n1・・・・(3)
そのときにT2の作用する低強度側材料のひずみ(ε2max)は、下記(4)式で与えられる。
ε2max=n2{(t2×TS2−2μF)/(t2×TS2)}1/n2…(4)
(3)式は(1)式と同一であることから明らかなように、電磁石による吸引力が低強度側材料に掛かっている場合では電磁石が成型性改善に及ぼす効果は認められない。そればかりか(4)式から明らかなように、そのとき低強度側材料のT2が作用する部分(図3で低強度側材料の電磁石から左の部分)は電磁石を作用させない場合に比して小さくなってしまう。なお電磁石を作用させない場合にはε2max=n2である。
ε1max=n1{(t2×TS2)/(t1×TS1)}1/n1・・・・(3)
そのときにT2の作用する低強度側材料のひずみ(ε2max)は、下記(4)式で与えられる。
ε2max=n2{(t2×TS2−2μF)/(t2×TS2)}1/n2…(4)
(3)式は(1)式と同一であることから明らかなように、電磁石による吸引力が低強度側材料に掛かっている場合では電磁石が成型性改善に及ぼす効果は認められない。そればかりか(4)式から明らかなように、そのとき低強度側材料のT2が作用する部分(図3で低強度側材料の電磁石から左の部分)は電磁石を作用させない場合に比して小さくなってしまう。なお電磁石を作用させない場合にはε2max=n2である。
このように、電磁石に低強度側(この場合は薄手側)材料が掛かっている場合に電磁石を作用させると、逆に成型性を悪化させることになる。例えば上記テーラードブランク材のプレス加工時、薄手側材料に電磁石を作用させると、摩擦係数0.3、溶接ビード長さ辺りの電磁石による吸引力100N/mmのとき、板厚1.0mmの材料の溶接ビード近傍が25%伸びて成型限界に達したとき、板厚1.4mmの材料は6%の伸びであり、また1.0mmの材料の図3での電磁石の左側での材料の到達ひずみは、18%になってしまう。この場合、テーラードブランク材のトータルの伸びは12%にまで低下してしまう。
このように、強度の異なる金属板によるテーラードブランク材のプレス加工用金型において、電磁石等の手段により、ブランクを金型に押し付けることにより成型性を向上させることが可能であるが、低強度側の材料に作用させた場合には、逆に成型性を損なう恐れがある。
したがって、成型金型の一部に少なくとも1個の電磁石を設け、その電磁石の電圧もしくは電流を、突合せ溶接線と電磁石の位置関係に応じて高強度側材料に吸引力磁力が及ぶように制御することによって成型性を向上させることが可能となる。
図4〜図7は、プレス中の溶接線の動きに応じて、パンチ(金型)に設けた2個の電磁石の吸引力制御を行なうことを示す図である。
図4に示すように、プレス加工中に高強度側材料7が電磁石A及び電磁石Bと接触しているときには、両方の電磁石A、BをONにする。プレス加工が進行し、図5に示すように、溶接線5が電磁石Aと接触しなくなった時に電磁石AをOFFにする。そして、図6に示すように、電磁石Bと高強度側材料とが接触している間は、電磁石BをONのままにして高強度側材料をパンチに吸引するように保持する。次いで、図7に示すように、溶接線5が電磁石Bを越えて、電磁石Bと高強度側材料とが接触しなくなった時に、電磁石BをOFFにする。
この場合、予めプレス中の溶接線の動きを予想し、それに応じ予め電磁石の吸引力もしくはON/OFFを制御してもよいし、電磁石近傍に板厚センサーを設けてそれに応じて制御をしても良い。また当該電磁石を交流電圧で励起すれば、板厚に応じて磁場が変化するため、板厚は当該電磁石の電流値を測定すれば判別可能でもある。
また電磁石の代わりに空気圧を用いたサクションパットを用いても良い。電磁石を金型に組み込んだ場合、微細な鉄粉がそこに残留する可能性があり、場合によっては鉄粉が被加工材に転写して星目キズと呼ばれる微細な凹キズが発生することがあり、サクションパットを用いた場合にはそのような問題は発生しない。またアルミ等の非磁性の材料にも適用可である。
図8は、サクションパットをパンチ(金型)に設けた例を示す図である。図8に示すように、電磁石に変えて2個のサクションパット9をパンチに設けてあり、電磁石の吸引力の作用と同様にサクションパットの吸引力を制御することによって、プレス加工中のテーラードブランク材を確保することができる。
また電磁石もしくはサクションパットを複数設け、プレス加工の進展に伴う溶接線の移動に対応して個別にこれらを制御すれば、最適な成型性向上を望める。
以下実施例及び比較例に基づいて本発明の効果を説明する。
高強度材料として、板厚1.4mm、n値(加工硬化指数)0.25、引っ張り強度400MPaの材料と、低強度側材料として板厚1.0mm、n値(加工硬化指数)0.25、引っ張り強度400MPaの材料を突き合わせ溶接した材料を用いて、球頭張り出しプレスを行った。溶接線から高強度側材料、及び低強度側材料の50mmの位置にそれぞれ印をつけておき、プレス後割れが発生した時点でその印間の距離を測定し、プレスに対する伸びを測定した。
電磁石は図9に示すように、高強度側材料(厚手側材料)7に掛かるように、電磁石A・Bを配置した。電磁石の強さは溶接ビード長1mmあたり100Nとした。
(比較例1)
先ず、電磁石を双方とも作用させない場合には低強度側材料(薄手側材料)6は12.5mm伸びて亀裂が発生した。そのとき高強度側材料7は3.3mm伸び、トータルで15.8mm伸びることができた。亀裂発生時に溶接線5は、電磁石Bの位置にあった。このとき所望のプレス後の製品形状に対してプレス成型性は不十分で、10回のうち5回割れが発生した。
先ず、電磁石を双方とも作用させない場合には低強度側材料(薄手側材料)6は12.5mm伸びて亀裂が発生した。そのとき高強度側材料7は3.3mm伸び、トータルで15.8mm伸びることができた。亀裂発生時に溶接線5は、電磁石Bの位置にあった。このとき所望のプレス後の製品形状に対してプレス成型性は不十分で、10回のうち5回割れが発生した。
(比較例2)
次に、電磁石A、Bを双方とも作用(ON)させた場合には、低強度側材料6の電磁石AとBとの間で亀裂が発生した(溶接線位置が電磁石Aから外れたときに亀裂が発生した)。このとき厚手側材料7は、4.3mm伸びたが、薄手側材料6は、9.8mmしか伸びず、トータルで14.1mmしか伸びることが出来ず、比較例1に対してプレス成型性が悪化した。そのため所望のプレス成型が出来なかった。
次に、電磁石A、Bを双方とも作用(ON)させた場合には、低強度側材料6の電磁石AとBとの間で亀裂が発生した(溶接線位置が電磁石Aから外れたときに亀裂が発生した)。このとき厚手側材料7は、4.3mm伸びたが、薄手側材料6は、9.8mmしか伸びず、トータルで14.1mmしか伸びることが出来ず、比較例1に対してプレス成型性が悪化した。そのため所望のプレス成型が出来なかった。
(発明例)
次に、プレス開始時は電磁石A・Bとも動作(ON)させ、途中電磁石Aを溶接線5が通過した時点で、図10に示すように、電磁石Aは不使用(OFF)とした場合には、低強度側材料6の電磁石AとBとの間で亀裂が発生した。このとき厚手側材料7は4.3mm伸び、そして薄手側材料は12.5mm伸び、トータルで16.8mm伸び、比較例1及び2に比して成型性は向上した。これにより所望のプレス後の製品形状に対してプレス成型性は粗十分で、10回のうち1回しか割れが発生しなかった。
次に、プレス開始時は電磁石A・Bとも動作(ON)させ、途中電磁石Aを溶接線5が通過した時点で、図10に示すように、電磁石Aは不使用(OFF)とした場合には、低強度側材料6の電磁石AとBとの間で亀裂が発生した。このとき厚手側材料7は4.3mm伸び、そして薄手側材料は12.5mm伸び、トータルで16.8mm伸び、比較例1及び2に比して成型性は向上した。これにより所望のプレス後の製品形状に対してプレス成型性は粗十分で、10回のうち1回しか割れが発生しなかった。
このことから本発明を用いれば、テーラードブランク材の成型性を向上させることが可能であることが確認できた。
下表1に実施例の結果をまとめて示す。
下表1に実施例の結果をまとめて示す。
1 テーラードブランク材
2 パンチ
3 ダイ
4 板押え
5 溶接線
6 低強度側材料
7 高強度側材料
8 電磁石
9 サクションパット
10 鋼板
11 鋼板
12 レーザートーチ
13 溶接ビード
14 レーザービーム
15 溶接進行方向
16 溶接ゾーン
A 電磁石
B 電磁石
T 張力
F 電磁石による吸引力
μ F摩擦力
2 パンチ
3 ダイ
4 板押え
5 溶接線
6 低強度側材料
7 高強度側材料
8 電磁石
9 サクションパット
10 鋼板
11 鋼板
12 レーザートーチ
13 溶接ビード
14 レーザービーム
15 溶接進行方向
16 溶接ゾーン
A 電磁石
B 電磁石
T 張力
F 電磁石による吸引力
μ F摩擦力
Claims (8)
- 板厚と強度の一方または双方の異なる鋼板を突合せ溶接した板材をプレス成型するプレス成型方法において、成型金型の一部に少なくとも1個の電磁石を設け、その電磁石の電圧もしくは電流を、プレス中予め決められたシーケンスで制御することを特徴とする、プレス成型方法。
- 成型金型の一部に設けた前記電磁石の電圧もしくは電流を、突合せ溶接線と電磁石の位置関係に応じて制御することを特徴とする、請求項1記載のプレス成型方法。
- 複数の電磁石を個別に制御することを特徴とする、請求項1または2に記載のプレス成型方法。
- 板厚と強度の一方または双方の異なる金属板を突合せ溶接した板材をプレス成型するプレス成型方法において、成型金型の一部に少なくとも1個のサクションパットを設け、その吸引力を、プレス中予め決められたシーケンスで制御することを特徴とする、プレス成型方法。
- 成型金型の一部に設けた前記サクションパットの吸引力を、突合せ溶接線とサクションパットの位置関係に応じて制御することを特徴とする、請求項4記載のプレス成型方法。
- 複数のサクションパットを個別に制御することを特徴とする、請求項4または5に記載のプレス成型方法。
- 板厚と強度の一方または双方の異なる鋼板を突合せ溶接した板材をプレス成型する金型において、成型金型の一部に少なくとも1個の電磁石を設けたことを特徴とするプレス成型金型。
- 板厚と強度の一方または双方の異なる金属板を突合せ溶接した板材をプレス成型する金型において、成型金型の一部に少なくとも1個のサクションパットを設けたことを特徴とするプレス成型金型。
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---|---|---|---|
JP2006112347A Withdrawn JP2007283340A (ja) | 2006-04-14 | 2006-04-14 | 突合せ溶接金属板のプレス成型方法および成型金型 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2007283340A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100940712B1 (ko) | 2007-12-27 | 2010-02-08 | 주식회사 포스코 | 프레스 장치 및 이를 이용한 프레스 방법 |
JP2010036222A (ja) * | 2008-08-06 | 2010-02-18 | Jfe Steel Corp | テーラードブランク材のプレス成形方法 |
-
2006
- 2006-04-14 JP JP2006112347A patent/JP2007283340A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100940712B1 (ko) | 2007-12-27 | 2010-02-08 | 주식회사 포스코 | 프레스 장치 및 이를 이용한 프레스 방법 |
JP2010036222A (ja) * | 2008-08-06 | 2010-02-18 | Jfe Steel Corp | テーラードブランク材のプレス成形方法 |
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