JP2007275871A - スパイラル型膜エレメント - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層のバリアー性を向上させ、しかもクラックの発生を効果的に防止できるスパイラル型膜エレメントを提供する。
【解決手段】分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体Rを備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型膜エレメントにおいて、前記円筒状巻回体Rの外周側には、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層26が形成されていると共に、その繊維補強樹脂層26の内部又は内側には、その繊維補強樹脂層26の略全長かつ略全周にわたってプラスチック層24が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回されており、種々の流体(液体あるいは気体)中に存在する特定成分を分離することができるスパイラル型膜エレメントに関する。
従来、逆浸透ろ過、精密ろ過などに用いられる流体分離エレメントとして、例えば、図5に示すように、分離膜1と供給側流路材2と透過側流路材3とが積層状態で有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体Rを備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部11〜13が設けられているスパイラル型膜エレメントが知られている。
このスパイラル型膜エレメントでは、供給側流体(原水)が供給側流路材2によって分離膜1表面へ導かれ、分離膜1を透過して分離された後、透過側流体(透過水)が透過側流路材3に沿って中心管5(集水管)まで導かれる。そして、このようなスパイラル型膜エレメントには、加圧運転時の耐圧性および形状保持性を付与する目的で、外装材として繊維強化樹脂(FRP)を外周に施す場合がある(図示省略)。
このようなスパイラル型膜エレメントは、図6(a)〜(b)に示すように、一般的に分離膜1を二つ折りにした間に供給側流路材2を配置したものと、透過側流路材3とを積み重ね、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐ封止部を形成するために接着剤4,6を、分離膜周辺部(3辺)に位置する透過側流路材3に塗布して分離膜ユニットUを作製し、このユニットUの単数または複数を中心管5の周囲にスパイラル状に巻きつけて、更に分離膜周辺部を封止することによって製造される。この例は、膜リーフ(封止された封筒状膜)が複数の場合であるが、膜リーフが単数の場合も存在する。
また、外装材の形成は、通常、中心管に膜リーフを巻回した後に、円筒状巻回体の外周面に、樹脂を含浸させたガラスロービング(ガラスフィラメントのストランドからなる集束体)を巻き付け、これを硬化させて繊維補強樹脂(FRP)として形成する方法が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。そして、膜エレメントの場合、一般の構造材とは異なり、端部を大きく切除できないため、ガラスロービングの巻き付け角度を大きくすることができず、当該巻き付け角度はせいぜい5°程度であった。
更に、スパイラル型膜エレメントに、社名や品番を表示した表示ラベルを設ける方法として、ガラスロービングを巻き付ける前に、円筒状巻回体に表示ラベルを貼着しておき、これにガラスロービングの巻き付けを行った後、硬化させる方法が知られている。
しかしながら、上記の方法では、表示ラベルを大型化しようとすると、円筒状巻回体の被着面の凹凸や外径の変化(膜エレメントの端部付近の外径がより大きくなる)の影響が大きくなる。このため、表示ラベルの密着性が低下し、浮きや歪み等によってガラスロービングの巻き付け時に、大型化した表示ラベルがシワになったり歪んだりするという問題があった。従って、現在まで、大型化した表示ラベルやシートを設けたスパイラル型膜エレメントは、知られていなかった。
一方、ガラスロービングを用いる場合のように、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂を外装材として形成した場合、膜エレメントの内圧による変形に対しては十分な強度を有するものの、その他の力に対しては脆い面があり、使用環境によっては繊維方向に沿ったクラックが生じる場合があった。また、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂では、繊維間に侵入した空気層が連通路を形成することで、外装材のバリアー性が低下し易く、薬品の侵入によって浸食劣化するという問題があった。
特開2001−17840号公報 特開2000−354742号公報
そこで、本発明の目的は、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層のバリアー性を向上させ、しかもクラックの発生を効果的に防止できるスパイラル型膜エレメントを提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
本発明のスパイラル型膜エレメントは、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型膜エレメントにおいて、前記円筒状巻回体の外周側には、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層が形成されていると共に、その繊維補強樹脂層の内部又は内側には、その繊維補強樹脂層の略全長かつ略全周にわたってプラスチック層が設けられていることを特徴とする。
本発明のスパイラル型膜エレメントによると、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層の略全長かつ略全周にわたってプラスチック層が設けられているため、バリアー性を向上させることができ、しかもクラックの発生を効果的に防止できる。また、プラスチック層が表面に露出していないため、キズ等の損傷が生じにくく、補強効果を長く維持することができる。
上記において、前記プラスチック層が、筒状の熱収縮フィルムであることが好ましい。筒状の熱収縮フィルムを用いることによって、外表面が凹凸を有し外径が一定でない円筒状巻回体に対しても、良好に追従して密着させることができ、上層に補強繊維を巻回する際にも、プラスチック層にシワや歪が生じにくくなる。
また、前記繊維補強樹脂層とプラスチック層との間には、繊維布を補強相とする繊維布補強樹脂層が介在していることが好ましい。繊維布補強樹脂層を設けることによって、複数の方向に対して補強効果が得られるようになり、クラックの発生をより効果的に防止できる。また、実施例の結果が示すように、同じ厚みの場合を比較すると、繊維布補強樹脂層を含む方が、外装材全体の透明性が高くなり、プラスチック層に表示等を設けた場合の視認性が向上する。その理由の詳細は明らかではないが、繊維巻回物では、平行に均一に繊維のフィラメントが配列されるため、散乱光の干渉が生じ易くなるのに対し、フィラメントの配列や密度にバラツキがある繊維布の方が、散乱光が抑えられるためと、考えられる。
更に、前記繊維布補強樹脂層を構成する繊維布は、開口度が10%以上の繊維布であることが好ましい。これにより、繊維布の裏側に樹脂が進入し易くなり、プラスチック層と繊維布補強樹脂層との密着性が向上することで、プラスチック層に表示等を設けた場合の視認性がより向上する。
また、前記プラスチック層の外周面には、前記繊維布補強樹脂層を構成する樹脂との密着性を向上させる表面処理が施されていることが好ましい。これにより、繊維布補強樹脂層とプラスチック層との密着性が向上することで、プラスチック層に表示等を設けた場合の視認性がより向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のスパイラル型膜エレメントの一例を示す断面図である。
本発明のスパイラル型膜エレメントは、外装材の形成方法および構造のみが従来のものと異なっており、他の構造は、上述の従来のスパイラル型膜エレメントの構成をいずれも適用することができる。
従って、本発明のスパイラル型膜エレメントは、図5に示すように、分離膜1、供給側流路材2、および透過側流路材3が積層状態で、有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体Rを備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられている。封止部には、例えば、両端封止部11と外周側封止部12が含まれ、また、中心管5の周囲の封止を行う高めに封止部13を形成してもよい。
本発明のスパイラル型膜エレメントは、分離膜1と供給側流路材2と透過側流路材3とを積層状態で有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体Rを形成する工程と、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部11,12を形成する工程とを含む方法で製造することができる。具体的には、例えば、図6(a)〜(b)に示す工程を実施することにより製造することができる。
図6(a)に示すように、まず、分離膜1を二つ折りにした間に供給側流路材2を配置したものと透過側流路材3とを積み重ね、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐ封止部を形成するための接着剤4,6を、透過側流路材3の軸方向両端部および巻回終端部に塗布したユニットを準備する。このとき、分離膜1の折目部分に保護テープを貼り付けても良い。
分離膜1には、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜、ガス分離膜、脱ガス膜などが使用できる。供給側流路材2には、ネット状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。透過側流路材3には、不織布、織布、編布などの繊維布、ネット状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。
有孔の中心管5は、管の周囲に開孔を有するものであれば良く、従来のものが何れも使用できる。一般的には、中心管5はABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリサルフォン(PSF)等の材質で形成され、その直径は膜エレメントの大きさに応じて異なるが、例えば20〜100mmである。
接着剤4,6としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ホットメルト接着剤等、従来公知の何れの接着剤も使用することができる。但し、加熱による硬化反応を行う上で、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などの熱硬化性樹脂を含有する接着剤が好ましい。
次に、図6(b)に示すように、この分離膜ユニットUの複数を積層し、有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回した後、接着剤を硬化させるなどして、封止部11,12,13を形成するする。その際、粘着テープをコイル状に巻き付けて、円筒状巻回体Rの形状を保持してもよい。
分離膜ユニットUを積層する際の数量は、必要とされる透過流量に応じて決まるものであり、1層以上であれば良いが、操作性を考慮すると100層程度が上限である。なお、分離膜ユニットUの長さが長いほど、積層数量は少なくなる。
本発明のスパイラル型膜エレメントは、図1に示すように、円筒状巻回体Rの外周側には、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層26が形成されていると共に、その繊維補強樹脂層26の内部又は内側には、その繊維補強樹脂層26の略全長かつ略全周にわたってプラスチック層24が設けられている。本実施形態では、プラスチック層24が筒状の熱収縮フィルムであり、繊維補強樹脂層26とプラスチック層24との間には、繊維布を補強相とする繊維布補強樹脂層25が介在している例を示す。
従って、本実施形態のスパイラル型膜エレメントは、円筒状巻回体Rの外周面に筒状の熱収縮フィルムに密着させてプラスチック層24を形成した後、繊維布補強樹脂層25および繊維補強樹脂層26を形成することによって製造することができる。
熱収縮フィルムは、延伸フィルムの分子配向に基づく内部応力等を利用して、加熱によって収縮が生じるフィルムである。従って、筒状の熱収縮フィルムを円筒状巻回体Rに被せて、適当な加熱手段で加熱を行うことによって、繊維布補強樹脂層25を形成することができる。
熱収縮フィルムとしては、架橋ポリエチレン収縮フィルム、ポリスチレン系収縮フィルム、PET収縮ファイム、塩ビ収縮フィルム、PP収縮ファイム、オレフィン系多層収縮フィルムなどが挙げられる。筒状の熱収縮フィルムは、継ぎ目があるタイプ、継ぎ目がないタイプのどちらでも使用することが可能である。
熱収縮フィルムは、円筒状巻回体Rの外周面に対し、接着せずに密着しているだけでもよいが、接着剤や粘着剤を用いて熱収縮フィルムを接着してもよい。
一方、繊維布補強樹脂層25の形成は、例えば、樹脂を含浸又は塗布した繊維布を巻き付けた後に、硬化させることにより行うことができる。繊維布を巻き付けた後に、樹脂を塗布等することも可能である。繊維布の巻き付け回数は、1〜5回が好ましい。
繊維布補強樹脂層25の補強相(支持体)である繊維布は、例えばPET、PP、PE、PSF、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の樹脂からなる繊維布の他、ガラスクロスなどのガラス繊維布、金属メッシュスクリーンなどの金属繊維布等を使用することも可能である。表示ラベルを内側に設ける場合、その視認性を高める観点から、ガラスクロスなどのガラス繊維布や透明樹脂からなる繊維布を用いるのが好ましい。
繊維布の種類としては、不織布、織布、編布などが挙げられ、補強効果と視認性の観点から、平織物、あや織物、朱子織物、模しゃ織物、からみ織物、などの織布が好ましい。また1枚の繊維布の厚みは、0.03〜0.6mmが好ましく、0.1〜0.4mmがより好ましい。
例えばデザインラベルのように、プラスチック層24に表示等を設ける場合、その外周面に繊維布補強樹脂層25が設けられると、繊維布の開口度が小さいと繊維布裏側のデザィンラベル界面まで樹脂が到達せず、空気層が生じ密着性が低くなるために、デザインラベルの視認性が低下する。このような場合、視認性を満足させるためにはデザインラベル上(繊維布下)において、樹脂層を設けることで密着性を上げることができる。また、開口度が大きいガラスクロス等を使用することで、樹脂が繊維布裏側のデザインラベル界面まで侵入して、密着性を上げることが可能となる。また、繊維布の開口度が大きい場合、樹脂の含浸性が良好になるため、繊維布に樹脂を塗布しなくても、繊維補強樹脂層26を構成する樹脂を移行させて、繊維布に樹脂を含浸させることも可能である。
従って、ガラスクロス等の繊維布の開口度は10%以上のものが好ましいが、開口度が大きくなりすぎると、エレメントの圧縮強度が低下するため、好ましくは20〜40%である。ここで、繊維布の開口度は、繊維布を静置した状態で、顕微鏡観察した際の繊維束同士の間にできる開口の面積の百分率を指す。例えば、開口上部の繊維と、開口右側の繊維と、それら両繊維の重なり部分と、開口との面積を合計した、繰り返し単位の合計面積に対し、その開口の面積の百分率を計算することで、開口度を求めることができる。
繊維布に塗布等する樹脂は、円筒状巻回体Rの形成時に使用するポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂をそのまま使用できるが、円筒状巻回体Rに使用した樹脂に対して、樹脂の種類を変更することも可能である。ガラス繊維等との組合せで、特に視認性を向上させる樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。
また、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層26の形成は、例えば、樹脂を含浸又は塗布した繊維を、繊維布補強樹脂層25の外周面にらせん状に巻き付けた後に、硬化させることにより行うことができる。繊維補強樹脂層26の厚みは例えば0.5〜4mmであるが、視認性を高める上では、0.5〜2mmが好ましい。
繊維巻回物を形成する繊維としては、マルチフィランメトやモノフィランメントに、必要に応じて撚りをかけたものや、その集束体を用いることがきるが、繊維補強樹脂用の各種ロービングが好ましく使用できる。また、繊維の種類としては、例えばPET、PP、PE、PSF、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、アラミド等の樹脂繊維の他、ガラスなどの無機系繊維、スチールワイヤなどの金属繊維等を使用することも可能である。但し、表示ラベルを内側に設ける場合、その視認性を高める観点から、ガラス繊維や透明樹脂からなる繊維を用いるのが好ましい。
繊維に塗布等する樹脂は、円筒状巻回体Rの形成時に使用するポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂をそのまま使用できるが、円筒状巻回体Rに使用した樹脂に対して、樹脂の種類を変更することも可能である。ガラス繊維との組合せで、特に視認性を向上させる樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。但し、繊維布補強樹脂層25と繊維補強樹脂層26は、同時に硬化させる方が効率良く、接着性の観点からも、両者の樹脂として、同種の樹脂を使用するのが好ましい。なお、硬化の際の条件は、使用する樹脂や接着剤の種類等に応じて適宜設定される。
分離膜ユニットU(円筒状巻回体R)の樹脂封止と、繊維補強樹脂層26等の樹脂の硬化とは、別々に行ってもよいが、本発明では、分離膜ユニットU(円筒状巻回体R)の樹脂封止と、繊維補強樹脂層26等の樹脂の硬化とを同時に行ってもよい。その場合、両者の樹脂として同種の樹脂を使用するのが好ましい。つまり、加熱による硬化反応を行う上で、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などの熱硬化性樹脂を含有する樹脂を使用することが好ましい。
本発明では、繊維補強樹脂層26の内部又は内側にプラスチック層24が設けられているため、繊維巻回物の巻き付け角度を周方向に対して小さくしても十分な強度が得られるので、当該巻き付け角度が1〜10°の場合でも、十分な強度、耐久性が得られる。
スパイラル型膜エレメントは、樹脂封止後の円筒状巻回体Rを、軸方向の長さを調整するために、両端部のトリミング等を行ってもよい。更に変形(テレスコープ等)を防止するための有孔の端部材や、シール材、補強材などを必要に応じて設けることができる。
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、プラスチック層に表示ラベルを設けない例を示したが、本発明では、図3〜4に示すように、プラスチック層24に対して表示ラベル27を別途設けたり、プラスチック層24自身を表示ラベルとして構成してもよい。
なお、図示した例では、円筒状巻回体Rに粘着テープをコイル状に巻き付けて形状保持層23を形成した後、プラスチック層24を形成している。また、膜エレメントの本体部21の両側には、端部材22a、22bが設けられている。
表示ラベル27を別途設ける場合、プラスチック層24を形成した後に、表示ラベル27を貼着するのが好ましい。例えば、熱収縮フィルムを用いてプラスチック層24を形成する場合、プラスチック層24に表示ラベルを設けておくと、表示に歪等が生じる場合があるが、後から表示ラベル27を貼着すると、歪の影響を受けずにきれいに表示ラベル27を設けることができる。
プラスチック層24自身を表示ラベルとして構成する場合、これに直接印刷することもできる。印刷は外面及び/又は内面に施される。また、プラスチック層24として、多層タイプのものを用いて中間層に印刷してもよい。更に顔料や染料を含むプラスチック層24を用いることも可能である。印刷することによって表示を大きくし、視野性、表現力を増すことも可能となる。
本発明では、模様、色彩などのデザインは、多少の変形が許されるため、熱収縮フィルム等に設けておき、変形が好ましくない表示等は、別の表示ラベル27として後から貼着するのが最も好ましい。表示ラベル27には、例えば製品会社名、品番、及び装着方向等を表示することができる。
表示ラベル27やその機能を有するプラスチック層24が、繊維布補強樹脂層25又は繊維補強樹脂層26(両者を含めてFRPという)を構成する樹脂(例えばエポキシ樹脂)と剥離すると、空気層が発生して、デザインラベルの視認性が低下する。その改善策として、前記のような繊維布の開口度を高める手法以外に、エポキシ樹脂等の樹脂と接着性の良いデザインラベルを用いる方法が挙げられる。
デザインラベルに使用されるインクは、コスト、色合い、印刷の容易さなどを勘案して選択されるが、インクの性状又は配合に関して、エポキシ樹脂等と接着性の高いものを選択する事で、ラベルとFRPが剥離することを防止し、その結果、デザインラベルの視認性低下を防ぐことができる。例えばエポキシ樹脂と接着性の高いインクとして、塩素化ポリプロピレン(PP)系インク、ウレタン系インク、またはワックスを配合していないアクリル(PA)系インクなどを使用することができる。
また、同様にデザインラベルとFRPが剥離するのを防ぐため、表示ラベル27やその機能を有するプラスチック層24に表面処理を施すことも有効な手段である。表面処理としては、表面にUV処理、コロナ処理又はプラズマ処理を施すことで、エポキシ樹脂との接着性を向上させることができる。エポキシ樹脂とデザインラベルの接着性を評価した結果を図7に示す。
デザインラベルのインクを変更した条件、UV処理をした条件では、それぞれ現行品(ポリアミド系インク、表面処理なし)よりも高い接着強度を有しており、ラベルとFRPの剥離から生じる視認性の低下を防ぐことができる。なお、接着力は、FRPとデザインラベルの界面剥離強度を島津製作所製精密万能試験機「オートグラフAG5000B」によって測定し、現行品を1として相対的に評価した。
(2)前述の実施形態では、プラスチック層が筒状の熱収縮フィルムである例を示したが、本発明では、筒状の熱収縮フィルム以外でプラスチック層を形成してもよく、樹脂シートやフィルムが好ましく使用できる。プラスチック層の厚みは、20〜500μmが好ましい。
樹脂シート等としては、円筒状巻回体Rとの密着性が良く、追随性のあるものが好ましく、例えば、PP、PE、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ゴムなどのシート、フィルムなどが挙げられる。このような樹脂シートは、約1周分が巻き込まれるが、粘着剤層を有するものが好ましい。
本発明では、プラスチック層として、光合成のための光を遮蔽するような着色、材料を用いることによって、膜エレメント内部に藻などの植物が発生するのを効果的に防止することができる。
(3)前述の実施形態では、繊維補強樹脂層とプラスチック層との間に繊維布補強樹脂層が介在する例を示したが、本発明では、繊維補強樹脂層の内部又は内側に、その略全長かつ略全周にわたってプラスチック層が設けられていればよく、図2に示すように、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層26がプラスチック層24の表面に設けられていてもよい。
また、プラスチック層24の内側に、繊維布補強樹脂層や繊維補強樹脂層が設けられていてもよい。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
実施例1
まず、日東電工製RO膜ES20と厚み0.7mmのPP製供給側流路材からなる膜リーフユニットを用意した。次いで、直径32mmのPPE製中空状中心管に厚み0.3mmのPET製透過側流路材の先端を固定し、透過側流路材上に膜リーフユニットを封止部に当たる部分でポリウレタン樹脂を塗布しながら積載した。次いで、中空状中心管を軸に回転させテンションを掛けながら積載した膜リーフユニットを巻き込んだ。
次いで、粘着テープ(幅75mm)をコイル状に隙間なく巻き付けて形状保持を行い、筒状の熱収縮フィルム(PP樹脂製、厚み50μm、コロナ処理による表面処理品)を被せて120℃で加熱して密着させ、更にその表面に製品名を印刷した表示ラベルを貼着した。
次いで、厚み0.3mmのガラスクロス(日東紡績製、平織物、開口度2%)にエポキシ樹脂を一面に含浸し拡がるように塗布して、これを約1周分を巻き込んで、両面テープで端部を固定した。
これに、エポキシ樹脂を含浸させたガラスロービング(旭ファイバーグラス製)を厚み1mmで巻き付け、樹脂を25℃で硬化させて繊維布補強樹脂層と繊維補強樹脂層とを形成して、スパイラル型膜エレメントを製作した。
得られたスパイラル型膜エレメントは、表示ラベルの製品名がはっきりと認識でき、表示ラベルの上層部分は透明樹脂に近い外観であった。また、繊維補強層は、実際の運転において充分耐え得るだけの強度を示していた。
実施例2
実施例1において、ガラスクロスを補強相とする繊維布補強層を設けずに、厚み2mmの繊維補強層を設けたこと以外は、実施例1と全く同じ条件でスパイラル型膜エレメントを製作した。その結果、熱収縮フィルムを設けない従来品に比べて、クラックは生じにくくなっていたが、実施例1に比べて視認性が低下した。
実施例3
実施例1と同様にして表示ラベルの貼着までを行った後、厚み0.15mmのガラスクロス(日東紡績製、平織物、開口度30%)をそのまま約1周分を巻き込んで、両面テープで端部を固定した。これに、エポキシ樹脂を含浸させたガラスロービング(旭ファイバーグラス製)を厚み1.5mmで巻き付け、樹脂を25℃で硬化させて繊維布補強樹脂層と繊維補強樹脂層とを形成して、スパイラル型膜エレメントを製作した。
その結果、エポキシ樹脂がガラスクロスの開口部より表示ラベル表面に浸入することで更に視認性が向上し、強度的にも問題のないレベルであった。また、ガラスクロスにエポキシ樹脂を塗布しなくても、ガラスロービングに含浸した樹脂が開口部より浸入して、この樹脂によりガラスクロスが十分含浸された。
本発明のスパイラル型膜エレメントの一例を示す断面図 本発明のスパイラル型膜エレメントの他の例を示す断面図 本発明のスパイラル型膜エレメントの他の例を示す斜視図 本発明のスパイラル型膜エレメントの他の例を示す要部断面図 従来(本発明)のスパイラル型膜エレメントの一例を示す部分破断した斜視図 従来(本発明)のスパイラル型膜エレメントの製造方法の一例を示す工程図 エポキシ樹脂とデザインラベルの接着性を評価した結果を示すグラフ
符号の説明
1 分離膜
2 供給側流路材
3 透過側流路材
4 接着剤
5 中心管
6 接着剤
24 プラスチック層
25 繊維布補強樹脂層
26 繊維補強樹脂層
27 表示ラベル
R 円筒状巻回体
U 分離膜ユニット

Claims (5)

  1. 分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型膜エレメントにおいて、
    前記円筒状巻回体の外周側には、繊維巻回物を補強相とする繊維補強樹脂層が形成されていると共に、その繊維補強樹脂層の内部又は内側には、その繊維補強樹脂層の略全長かつ略全周にわたってプラスチック層が設けられていることを特徴とするスパイラル型膜エレメント。
  2. 前記プラスチック層が、筒状の熱収縮フィルムである請求項1記載のスパイラル型膜エレメント。
  3. 前記繊維補強樹脂層と前記プラスチック層との間には、繊維布を補強相とする繊維布補強樹脂層が介在している請求項1又は2に記載のスパイラル型膜エレメント。
  4. 前記繊維布補強樹脂層を構成する繊維布は、開口度が10%以上の繊維布である請求項3に記載のスパイラル型膜エレメント。
  5. 前記プラスチック層の外周面には、前記繊維布補強樹脂層を構成する樹脂との密着性を向上させる表面処理が施されている請求項1記載のスパイラル型膜エレメント。
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