JP2007270414A - 弾性繊維用油剤およびそれが付着した弾性繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 得られる弾性繊維に安定した制電性および良好な解舒性を付与するとともに、弾性繊維の対金属摩擦を低減させることができる弾性繊維用油剤を提供することにある。
【解決手段】
弾性繊維用油剤は、シリコーン油をベース成分として含有する弾性繊維用油剤であって、前記シリコーン油の含有率が弾性繊維用油剤全体の40重量%以下であり、前記弾性繊維用油剤が付着された44dtexの弾性繊維を走行速度100m/minで走行させて測定した対金属摩擦が18g以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、弾性繊維用油剤およびそれが付着した弾性繊維に関する。
従来、弾性繊維の紡糸工程において、原料である弾性繊維本体に付着させる油剤として、常温液状のポリエーテル変性シリコーンを含有する油剤を使用し、良好な平滑性を得ることができる油剤が提案されているが、ポリエーテル変性シリコーンは高価であり、使用することで処理剤のコストが高くなってしまうという問題がある(特許文献1〜3)。また、弾性繊維用油剤の静電気防止剤として、アルキルホスフェート金属塩等のホスフェート系アニオン界面活性剤が知られている(特許文献4)。また、鉱物油またはポリオルカノシロキサンと、アミノ変性シリコーンとからなるポリウレタン弾性繊維用油剤を使用して平滑性良好なポリウレタン弾性繊維が得られると提案されているが、アミノ変性シリコーンは高価であり、使用することで処理剤のコストが高くなってしまうという問題がある(特許文献5)。
特公昭45−40719号公報 特開昭48−19893号公報 特開昭57−128276号公報 特公昭41−21956号公報 特開昭61−97471号公報
弾性繊維用油剤には、ベース成分として、シリコーン油、鉱物油、エステル油等を含有している。特に、シリコーン油は高価であるので、弾性繊維をより安価に生産するためには、弾性繊維用油剤中のシリコーン油の含有量を減らすことが望ましい。しかし、シリコーン油の含有量を減少させた場合、処理後の弾性繊維の摩擦は高くなり、物性が低下する。このため、弾性繊維用処理剤中のシリコーン油の含有量を減少させることは困難である。
また、近年、弾性繊維を生産する際の紡糸速度が高速化し、弾性繊維に対する後加工工程所要時間が短縮化している。このために、紡糸時またはその後の工程において、弾性繊維とガイドおよびローラー等との摩擦により、繊維が切断するといった問題が発生する。さらに、最近の弾性繊維の要求性能から細デニール化が進んできたため、紡糸時またはその後の工程において、ローラーおよびガイドに糸が取られて糸切れするという問題もある。さらに、弾性繊維とローラーおよびガイドとの摩擦が高いと、弾性繊維に張力斑が発生し、編織物を作成した場合に、編織物の品位が低下するといった問題がある。
本発明の目的は、得られる弾性繊維に安定した制電性および良好な解舒性を付与するとともに、弾性繊維の対金属摩擦を低減させることができる弾性繊維用油剤を提供することである。
本発明の別の目的は、安定した制電性および良好な解舒性を有するとともに、対金属摩擦が低減した弾性繊維を提供することである。
本発明にかかる第1の弾性繊維用油剤は、シリコーン油をベース成分として含有する弾性繊維用油剤であって、前記シリコーン油の含有率が弾性繊維用油剤全体の40重量%以下であり、前記弾性繊維用油剤が付着された44dtexの弾性繊維を走行速度100m/minで走行させて測定した対金属摩擦が18g以下である。
本発明にかかる第2の弾性繊維用油剤は、シリコーン油をベース成分として含有し、アミンおよび有機酸をさらに含有する弾性繊維用油剤であって、前記弾性繊維用油剤中で前記アミンおよび有機酸は塩を形成していてもよく、前記アミンの窒素原子には炭素数1〜30の有機基が少なくとも1つ置換しており、前記アミンの合計炭素数は20以上であり、前記シリコーン油の含有率が弾性繊維用油剤全体の40重量%以下であり、前記アミンおよび有機酸の合計含有率が弾性繊維用油剤全体の0.1〜10重量%である。
本発明にかかる弾性繊維は、弾性繊維本体と、これに付着した上記弾性繊維用油剤とから構成される弾性繊維であって、弾性繊維用油剤の付着割合が前記弾性繊維に対して0.1〜15重量%である。
本発明の弾性繊維用油剤は、得られる弾性繊維に安定した制電性および良好な解舒性を付与するとともに、弾性繊維の対金属摩擦を低減させることができる。
本発明の弾性繊維は、上記弾性繊維用油剤が付着しているので、安定した制電性および良好な解舒性を有するとともに、紡糸から後加工に至る全工程で、編針、ガイド、ローラー等の金属との対金属摩擦が低減される。したがって、摩擦が原因で発生する張力斑による編織物の斑を抑制できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の弾性繊維用油剤は、シリコーン油を必須のベース成分とする。ベース成分は、弾性繊維用油剤全体の60重量%以上を占める成分である。
シリコーン油は、原料である弾性繊維本体に付着することによって、摩擦を低減させる成分である。
シリコーン油としては特に限定はないが、たとえば、ポリジメチルシロキサン(30℃における粘度:5〜50mm/s)等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。これらのシリコーン油のうちでも、油剤のオイリング時に扱いやすく、粘度が高すぎると糸がローラーに取られて切れてしまう等の理由から、弾性繊維用油剤の30℃における粘度が、好ましくは2〜50mm/s、さらに好ましくは5〜20mm/sに調整することができるようなシリコーン油を選択することが好ましい。
本発明の弾性繊維用油剤全体に占めるシリコーン油の含有率は、40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下である。シリコーン油の含有率が40重量%以下であると、他のベース成分として用いられる鉱物油、エステル油と比較して高価なシリコーン油の含有量が減じられ、弾性繊維用油剤全体のコストを減じることができるという点で有利である。
ベース成分は鉱物油および/またはエステル油をさらに含有してもよい。鉱物油やエステル油は、原料である弾性繊維本体に付着することによって、摩擦を低減させる成分である。鉱物油および/またはエステル油の含有量は、弾性繊維用油剤全体の40重量%以上であり、好ましくは50重量%以上である。ベース成分が鉱物油およびエステル油を含有する場合、鉱物油とエステル油との比率については特に限定はない。
鉱物油としては特に限定はないが、たとえば、粘度が40〜100秒のスピンドル油や流動パラフィン等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。鉱物油の粘度が40秒よりも低いと、得られる弾性繊維の品質が低下することがある。一方、鉱物油の粘度が100秒超であると、弾性繊維用油剤全体の粘度が高くなり、得られる弾性繊維がローラーに取られ、糸が切れてしまうことがある。
エステル油としては特に限定はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを挙げることができる。エステル油としては、たとえば、下記から選ばれる脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを例示できるが、下記脂肪酸やアルコールを原料としないエステルであってもよい。エステル油は、1種または2種以上を併用してもよい。
脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であっても良い。前記脂肪酸としては、たとえば、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、べヘニン酸、リグノセレン酸、アジピン酸、セバチン酸、安息香酸等が挙げられる。
アルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級アルコールであっても、環状のアルコールであっても、芳香族環を含有するアルコールであっても良い。前記アルコールとしては、たとえば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。
本発明の弾性繊維用油剤は、これが付着された44dtexの弾性繊維を走行速度100m/minで走行させて測定した対金属摩擦が18g以下であり、好ましくは16g以下である。対金属摩擦が小さいほど、弾性繊維に張力斑が発生しにくく、編織物を作製した場合に、編織物品位が向上するという効果が得られる。対金属摩擦の測定方法については、以下の実施例で詳しく述べる。
本発明において対金属摩擦の測定には44dtexの弾性繊維を用いるが、後述するように、弾性繊維用油剤を付着させて得られる弾性繊維の太さについては特に制限はない。
なお、上記対金属摩擦の値は弾性繊維が太くなれば大きくなり、細くなれば小さくなる傾向がある。
上記対金属摩擦を測定するために使用される、本発明の弾性繊維用油剤が付着された弾性繊維は、油剤付着前の原料となる弾性繊維本体に対して本発明の弾性繊維用油剤を6重量%付着させることによって作製される。なお、本発明において、「弾性繊維本体に対して本発明の弾性繊維用油剤を付着させる」とは、弾性繊維本体の表面に付着させること、および/または、弾性繊維本体の表面から内部に浸透することによって、その内部に弾性繊維用油剤を含浸させることを意味する。
本発明の弾性繊維用油剤は、シリコーン油の含有率が弾性繊維用油剤全体の40重量%以下であり、前記弾性繊維用油剤が付着された44dtexの弾性繊維を走行速度100m/minで走行させて測定した対金属摩擦が18g以下であれば、シリコーン油以外に含有する成分の種類および含有率については特に限定はない。
本発明にかかる弾性繊維用油剤は、シリコーン油をベース成分として含有し、アミンおよび有機酸をさらに含有する弾性繊維用油剤であってもよい。前記アミンおよび有機酸は弾性繊維用油剤中でいわゆる酸−塩基の反応によって塩を形成していてもよい。
本発明におけるアミンおよび有機酸の塩は、弾性繊維本体に付着することによって、高速での対金属摩擦を低減する成分である。アミンは、その窒素原子に炭素数1〜30の有機基が少なくとも1つ置換し、且つ、アミン中の合計炭素数が20以上、好ましくは24以上であれば、特に限定はない。
弾性繊維用油剤において、酸やアミンは基本的には摩擦を高くする成分ある。しかしながら、本発明の弾性繊維用油剤では、意外なことに、アミンの炭素数について上記条件を付すことによって、摩擦が逆に低減するという現象が観察され、シリコーン油以外の成分で高速での対金属摩擦の低減が実現できる。また、アミンおよび有機酸は、安定した制電性および良好な解舒性を付与する成分でもある。
アミンに置換している有機基としては、たとえば、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基のヒドロキシ基にアルキレンオキサイドが0〜10個付加して得られる構造の末端ヒドロキシ(ポリエーテル)アルキル基、および、R−T−R−で表される基(Rは炭素数1〜28のアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルキレン基、Tは−COO−または−CONH−を表す。)等の炭素数1〜30の有機基を挙げることができる。なお、アミンはその窒素原子と有機基とで(複素)環を形成していてもよい。
アミンとしては、3級アミンが好ましく、その窒素原子に置換した有機基すべての炭素数が1〜30を満足し、アミン中の合計炭素数が20以上(好ましくは24以上)であれば、より好ましい。
3級アミンとしては、たとえば、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン等のトリアルキルアミンや;ポリオキシエチレンステアリルジメチルアミン、ジポリオキシエチレンラウリルメチルアミンなどのヒドロキシアルキル基のヒドロキシ基にアルキレンオキサイドが0〜10個付加して得られる構造の末端ヒドロキシ(ポリエーテル)アルキル基が置換したアミン等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。ここに挙げたアミン以外でも、アミンに置換している有機基として、たとえば、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基のヒドロキシ基にアルキレンオキサイドが0〜10個付加して得られる構造の末端ヒドロキシ(ポリエーテル)アルキル基、および、R−T−R−で表される基(Rは炭素数1〜28のアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルキレン基、Tは−COO−または−CONH−を表す。)等の炭素数1〜30の有機基で置換されたアミンであれば、特に限定なく使用できる。
有機酸は、分子内に有機基を含有したプロトン酸であり、たとえば、リン酸(HPO)中の1つまたは2つの水素原子を有機基で置換した構造を有する有機ワン酸、硫酸(HSO)中の1つの水素原子を有機基で置換した構造を有する有機硫酸、および、カルボン酸から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。有機酸は、有機リン酸、有機硫酸およびカルボン酸のいずれか1種単独であってもよく、有機リン酸と有機硫酸との混合物や、有機リン酸とカルボン酸との混合物等、これらの有機酸2種以上からなる混合物でも良い。
有機リン酸は、1分子中のプロトン数が1個である1価有機リン酸と、1分子中のプロトン数が2個である2価有機リン酸とがあるが、いずれでもよい。
有機リン酸や有機硫酸中の有機基としては、たとえば、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基のヒドロキシ基にアルキレンオキサイドが0〜10個付加して得られ、末端がヒドロキシ基である末端ヒドロキシ(ポリエーテル)アルキル基)等を挙げることができるが、その有機基の炭素数、分岐の有無等について特に制限はなく、脂肪族であってもよく、有機基の一部が環状となっていてもよく、芳香族環を含有する有機リン酸であっても良い。
有機リン酸としては、たとえば、カプリリルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、カプリルホスフェート、ラウリルホスフェート、ミリスチルホスフェート、パルミチルホスフェート、ステアリルホスフェート、イソステアリルホスフェート、オレイルホスフェート、アラキジルホスフェート、ベヘニルホスフェート、リグノセリルホスフェート等のアルキルリン酸類や;ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンステアリルホスフェート等のアルキルエーテルリン酸類等(なお、ここで例示した「ホスフェート」はすべて1価または2価の有機リン酸である)が挙げられるが、ここに挙げた化合物に限定される必要はない。有機リン酸は、1種または2種以上を併用してもよい。
有機硫酸としては、たとえば、カプリリルサルフェート、2−エチルヘキシルサルフェート、カプリルサルフェート、ラウリルサルフェート、ミリスチルサルフェート、パルミチルサルフェート、ステアリルサルフェート、イソステアリルサルフェート、オレイルサルフェート、アラキジルサルフェート、ベヘニルサルフェート、リグノセリルサルフェート等のアルキル硫酸類や;ポリオキシエチレンラウリルサルフェート、ポリオキシエチレンステアリルサルフェート等のアルキルエーテル硫酸類等(なお、ここで例示した「サルフェート」はすべて1価の有機硫酸である)が挙げられる。有機硫酸は、1種または2種以上を併用してもよい。
カルボン酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であっても良い。前記カルボン酸としては、たとえば、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、べヘニン酸、リグノセレン酸、アジピン酸、セバチン酸、安息香酸等が挙げられる。カルボン酸は、1種または2種以上を併用してもよい。
本発明の弾性繊維用油剤において、アミンおよび有機酸の合計含有率は、弾性繊維用油剤全体の0.1〜10重量%であり、好ましくは0.3〜6重量%である。アミンおよび有機酸の合計含有率が0.1重量%以下であると、効果が十分に期待できず、10重量%以上であると不経済である。
アミンおよび有機酸の重量比率については、それぞれのアミン当量および有機酸当量を計算してそれぞれが等量(中和当量)である必要は無く、アミン当量に対して有機酸当量が90〜110%の範囲にあれば好ましく、95〜105%の範囲にあればさらに好ましい。
本発明の弾性繊維用油剤には、平滑性、解舒性、制電性等の効果を高めるために、従来の公知の変性シリコーン(アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、リン酸変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン樹脂、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位、及び式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂等)や、つなぎ剤、制電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等、通常、弾性繊維の処理剤として用いられる成分を配合することができる。
本発明の弾性繊維用油剤には、平滑性、解舒性、制電性等の効果を高めるために高級脂肪酸の金属石鹸、アミノ変性シリコーンの有機リン酸エステル中和物、N,N’−置換脂肪酸ビスアミド、N,N’−置換脂肪酸ジアミド、N−置換脂肪酸アミドが、弾性繊維用油剤全体に対して0.1〜5重量%含有していてもよい。
高級脂肪酸の金属石鹸としては、従来弾性繊維に用いられている公知のものを挙げることができ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等が好ましい。
本発明の弾性繊維用油剤の粘度については、特に限定はないが、弾性繊維用油剤の揮発性と弾性繊維本体に付着させた場合の表面濡れ性とバランスを保つという観点からは、30℃における粘度が、好ましくは2〜50mm/s、さらに好ましくは5〜15mm/sである。
本発明の弾性繊維用油剤を製造する方法については、特に限定はなく、公知の方法を適用することができる。弾性繊維用油剤は、弾性繊維用油剤を構成する各成分を任意の順番で添加混合することによって製造される。
本発明の弾性繊維は、弾性繊維本体と、これに付着した上述の弾性繊維用油剤とから構成される弾性繊維である。
弾性繊維本体および弾性繊維は、いずれも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンウレアエラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー等から構成される繊維であり、その伸度は通常300%以上である。
本発明の弾性繊維の太さについては、対金属摩擦の測定の際の44dtexに限定されるものではなく、弾性繊維の太さについては特に制限はない。弾性繊維の太さは、好ましくは最小で5dtex、さらに好ましくは最小で10dtexである。また、弾性繊維の太さの上限値は特に制限はない。
なお、本発明の弾性繊維であって44dtex以下のものは、細物用途で特に問題となる制電性に優れる。また、本発明の弾性繊維であって154dtex以上のものは、平滑性とチーズの解舒性に優れる。
本発明の弾性繊維における弾性繊維用油剤の付着割合は、付着させることによって得られる効果と経済性とのバランスから、0.1〜15重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
本発明の弾性繊維本体は、たとえば、分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2〜1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロパンジアミン等のジアミンで鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20〜40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400〜800m/minで紡糸することにより製造できる。弾性繊維本体の適応繊度は特に制限はない。
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツなどのアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)および部は、特に限定しない限り、「重量%」および「重量部」を示す。実施例における、各特性の評価は次の方法に従って行った。
〔特性評価法〕
粘度:
キャノンフェンスケ粘度計を用い、30℃における試料液の動粘度を求めた。
ローラー静電気:
図1において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(1)をセットし、50m/分の周速で回転させ、チーズ上2cmのところにおいて、春日式電位差測定装置(2)で、回転を始めて1時間後の発生静電気を測定する。
編成張力(対金属摩擦):
図2において、チーズ(3)から縦取りした弾性糸(4)をコンペンセーター(5)を経てローラー(6)、編み針3本(ニッケルとクロムの合金製)(7)を介して、Uゲージ(8)に付したローラー(9)を経て速度計(10)、巻き取りローラー(11)に連結する。速度計(10)での走行速度が定速(例えば、10m/min、100m/min)になるように巻き取りローラーの回転速度を調整して、巻き取りローラーに巻き取り、そのときの編成張力をUゲージ(8)で測定し、対金属摩擦(g)を計測する。走行糸条より1cmのところで春日式電位差測定装置(12)で発生静電気を測定する。
静電気発生量:
上記で、対金属摩擦を測定する際に、走行糸条より1cmのところで春日式電位差測定装置(12)で発生静電気を測定する。
繊維間摩擦係数F/Fμs:
図3において、処理剤が付与された弾性繊維のモノフィラメントを50〜60cm程取り、一方の端に荷重T1(13)を吊り、ローラー(14)を介して、Uゲージ(15)にもう一方の端を掛けて定速(例えば、3cm/分)で引っ張り、そのときの2次張力T2をUゲージ(15)で測定し、下記に示す計算式(1)により、繊維間摩擦係数を求める。
摩擦係数F/Fμs=1/θ・ln(T2/T1) (1)
(但し、計算式(1)において、θ=2π、ln=自然対数、T1は22dtex当り1gである。)
解舒速度比:
図4において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(16)をセットし、巻き取り側に紙管(17)をセットする。巻き取り速度を一定速度にセットした後、ローラー(18)及び(19)を同時に起動させる。この状態では糸(20)に張力はほとんどかからないため、糸はチーズ上で膠着して離れないので、解舒点(21)は図4に示す状態にある。解舒速度を変えることによって、チーズからの糸(20)の解舒点(21)が変わるので、この点がチーズとローラーとの接点(22)と一致するように解舒速度を設定する。解舒速度比は計算式(2)によって求める。この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
解舒速度比(%)=(巻取速度−解舒速度)÷解舒速度×100 (2)
紡糸原液の調整:
数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1,2−ジアミノプロパンのジメチルホルムアミド溶液を用いて鎖延長し、ポリマー濃度27%のジメチルホルムアミド溶液を得た。30℃での粘度は1700mPaSであった。
(実施例1〜13および比較例1〜3)
ポリウレタン紡糸原液を230℃の窒素気流中に吐出し、乾式紡糸した。紡糸中の走行糸(弾性繊維本体)に、表1および表2に記載の弾性繊維用油剤(表中の配合量は重量部で表示)を、それぞれ弾性繊維本体に対して6重量%付着させた後、毎分600mの速度でボビンに巻き取り44dtexモノフィラメントチーズ(巻き量400g)を得た。得られたチーズを35℃、50%RHの雰囲気中に48時間放置して、上記の評価に供した。又、経時劣化促進試験として、得られたチーズを60℃、80%RHの雰囲気中に10日間放置した後、20℃、45%RHの雰囲気中に48時間放置して評価に供した。これらの結果を表1および表2に示す。
Figure 2007270414
E02モルオクチルホスフェートの化学式を以下の化1に示す。
Figure 2007270414
Figure 2007270414
表2で、E03モルパルミチルサルフェートの化学式を以下の化2に示す。
Figure 2007270414
(実施例14〜17、比較例4〜6)
ポリウレタン紡糸原液を230℃の窒素気流中に吐出し、乾式紡糸した。紡糸中の走行糸(弾性繊維本体)に、表3に記載の弾性繊維用油剤(表中の配合量は重量部で表示)を、それぞれ弾性繊維本体に対して6重量%付着させた後、毎分600mの速度でボビンに巻き取り930dtexマルチフィラメントチーズ(巻き量400g)を得た。得られたチーズを35℃、50%RHの雰囲気中に48時間放置して、上記の評価に供した。又、経時劣化促進試験として、得られたチーズを60℃、80%RHの雰囲気中に10日間放置した後、20℃、45%RHの雰囲気中に48時間放置して評価に供した。これらの結果を表3に示す。
Figure 2007270414
ローラー静電気発生量の測定方法を説明する模式図。 編成張力の測定方法及び静電気発生量の測定方法を説明する模式図。 繊維間摩擦係数の測定方法を説明する模式図。 解舒速度比の測定方法を説明する模式図。
符号の説明
1 弾性繊維のチーズ
2 春日式電位差測定装置
3 弾性繊維のチーズ
4 糸
5 コンペンセーター
6 ローラー
7 編み針
8 Uゲージ
9 ローラー
10 速度計
11 巻き取りローラー
12 春日式電位差測定装置
13 荷重
14 ローラー
15 Uゲージ
16 チーズ
17 巻き取り用紙管
18 ローラー
19 ローラー
20 走行糸条
21 解舒点
22 チーズとローラーの接点

Claims (7)

  1. シリコーン油をベース成分として含有する弾性繊維用油剤であって、
    前記シリコーン油の含有率が弾性繊維用油剤全体の40重量%以下であり、前記弾性繊維用油剤が付着された44dtexの弾性繊維を走行速度100m/minで走行させて測定した対金属摩擦が18g以下である、
    弾性繊維用油剤。
  2. 前記ベース成分が鉱物油および/またはエステル油をさらに含有する、請求項1に記載の弾性繊維用油剤。
  3. シリコーン油をベース成分として含有し、アミンおよび有機酸をさらに含有する弾性繊維用油剤であって、
    前記弾性繊維用油剤中で前記アミンおよび有機酸は塩を形成していてもよく、
    前記アミンの窒素原子には炭素数1〜30の有機基が少なくとも1つ置換しており、前記アミンの合計炭素数は20以上であり、
    前記シリコーン油の含有率が弾性繊維用油剤全体の40重量%以下であり、前記アミンおよび有機酸の合計含有率が弾性繊維用油剤全体の0.1〜10重量%である、
    弾性繊維用油剤。
  4. 前記ベース成分が鉱物油および/またはエステル油をさらに含有する、請求項3に記載の弾性繊維用油剤。
  5. 前記アミンが3級アミンであり、前記有機酸が、有機リン酸、有機硫酸およびカルボン酸から選らばれた少なくとも1種である、請求項3または4に記載の弾性繊維用油剤。
  6. 弾性繊維本体と、これに付着した弾性繊維用油剤とから構成される弾性繊維であって、
    前記弾性繊維用油剤が、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性繊維用油剤であり、その付着割合が前記弾性繊維に対して0.1〜15重量%である、弾性繊維。
  7. 太さが最小で5dtexである、請求項6に記載の弾性繊維。
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