JP2007267635A - 細胞分離具及びそれを用いた細胞分離方法 - Google Patents

細胞分離具及びそれを用いた細胞分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な構造で確実かつ容易に液体中の細胞を分離することができ、分離した細胞の観察を簡便に行うことができ、量産性、作業性に優れ、容易に洗浄して繰り返し使用することができ、メンテナンス性、省資源性に優れる細胞分離具の提供。
【解決手段】入口液溜部と、出口液溜部と、入口液溜部と出口液溜部の間に形成され入口液溜部に供給された液体を出口液溜部に移液する流路と、を備え、流路の底面部が疎水性を有し、流路の少なくとも上面部が親水性を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、血液、リンパ液、唾液、鼻汁などの各種液体から細胞を分離する細胞分離具及びそれを用いた細胞分離方法に関するものである。
従来、例えば血液の成分分離を行うためには、抗凝血剤の入った試験管に血液を入れて遠心分離を行っていたが、わずかな白血球を分離するために多量の血液を採血する必要があるばかりでなく、遠心分離後の操作が煩雑で作業性に欠けるという問題点があった。
この問題点を解決するために、近年、マイクロ流路を利用して、微量な血液から血液の固形成分と液体成分を分離する電気泳動チップ、血液成分測定用チップ等が検討されている。
例えば(特許文献1)には、「血液の血球成分を溶血がない凝集剤等によって凝集させ、流路に設けた減速堤、沈降段差、斜め上方流路、断面積が徐々に小さくなる流路等の構造によって、血液の固形成分と液体成分を簡易に、高速で、安価に分離する血球分離構造物」が開示されている。
特開2005−292092号公報
しかしながら、上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)の血球分離構造物は、入口、出口を設けた流路内にて、血液の血球成分を溶血しない凝集剤等を用いて血液の固形成分と液体成分を分離するものであるが、凝集の速度に比べて流路内を液体が移動する速度のほうが大きいという問題があり、流路に設けた減速堤、沈降段差、斜め上方流路、断面積が徐々に小さくなる流路等の複雑な構造によって、その速度差を解消しようと試みている。そのため、流路の構造が複雑で量産性に欠けると共に、洗浄が困難で再使用することができず、省資源性に欠けるという課題を有していた。
(2)また、(特許文献1)では、血液の血球成分を溶血がない凝集剤等によって凝集させる前処理が必要で作業性に欠けるという課題を有していた。
本発明は上記課題を解決するもので、簡単な構造で確実かつ容易に液体中の細胞を分離することができ、分離した細胞の観察を簡便に行うことができ、量産性、作業性に優れ、容易に洗浄して繰り返し使用することができ、メンテナンス性、省資源性に優れる細胞分離具の提供、及び液体に対する前処理が不要で、微量の液体から短時間で確実に細胞を分離することができる作業性に優れる細胞分離具を用いた細胞分離方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明の細胞分離具及びそれを用いた細胞分離方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の細胞分離具は、入口液溜部と、出口液溜部と、前記入口液溜部と前記出口液溜部の間に形成され前記入口液溜部に供給された液体を前記出口液溜部に移液する流路と、を備え、前記流路の底面部が疎水性を有し、前記流路の少なくとも上面部が親水性を有して構成されている。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)流路の少なくとも上面部が親水性を有することにより、入口液溜部に滴下した液体が、親水性を有する流路の上面部に引っ張られ、流路の内部に浸入し易く、流路の底面部が疎水性を有することにより、液体が流路の底面部に広がることを防止でき、液体の表面張力とそれによって生じる毛細管現象によってスムーズに流路の内部を流れて移動し易く、移液作業の信頼性、作業性に優れる。
(2)流路の底面部が疎水性を有し、流路の少なくとも上面部が親水性を有するので、液体の表面張力により液体が流路の上面部に引っ張られるようにして流路の内部を移動する際に、液体内の成分の粘度差によって固形成分である細胞が流路の内部に取り残され、その粘着性によって底面部に捕捉されるので、簡便に細胞と液体を分離することができる。
ここで、流路の形成方法は様々な方法が考えられるが、2枚或いは3枚の基板を積層することにより、容易に形成することができる。
例えば、2枚の基板を積層して流路を形成する場合は、流路の底面部及び側面部となる凹条溝を形成した下部基板の上に、流路の上面部となる平板状の上部基板を覆設してもよいし、流路の底面部となる平板状の下部基板の上に、流路の側面部及び上面部となる凹条溝を形成した上部基板を覆設してもよい。このとき撥水性を有する材質で下部基板を形成し、親水性を有する材質で上部基板を形成すれば、それらを積層するだけで流路を形成できる。また、下部基板や上部基板が撥水性や親水性を有さない場合でも、流路となる部分にそれぞれ撥水処理や親水処理を施して使用することができる。
流路の撥水性及び親水性は、流路の寸法形状や液体の表面張力にもよるが、撥水面における接触角は80度〜100度が好ましく、親水面における接触角は20度〜40度が好ましい。流路の撥水面における接触角が80度より小さくなるか、流路の親水面における接触角が40度より大きくなるにつれ、液体が流路の底面部(撥水面)に広がり易くなり、流路の内部にスムーズに浸入し難くなる傾向があり、流路の撥水面における接触角が100度より大きくなるか、流路の上面部(親水面)における接触角が20度より小さくなるにつれ、液体が流路の上面部側に瞬時に拡散し易くなり、液体に含まれる細胞を分離することができず、測定が困難になる傾向があり、いずれも好ましくない。
血液、リンパ液、鼻汁などの液体の主成分は血漿であるため、同一の細胞分離具によって液体成分と固形成分である細胞を分離できる。尚、常温における標準的な血液の粘度は3.5mNs/m程度であり、血漿のみの粘度は1.8mNs/m程度である。
撥水性を有する下部基板の材質としては、フッ素樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、ABS等の高分子材料が好適に用いられる。
親水性を有する上部基板の材質としては、Si,Si34,Al23,TiO2,陶器等のセラミックス、Cu,Ag,Au,Ni,Fe,Cr,Zn,Al,ステンレス,真鍮等の金属或いはカーボン、木材、紙等の濡れ性の高い素材が好適に用いられる。
特に、下部基板としてメタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、ABS等の撥水性の高い透明な材料を使用し、上部基板としてガラス、サファイア、SiO2、ダイアモンド等の濡れ性の高い透明な材料を使用した場合、顕微鏡による白血球等の観察を容易に行うことができ取り扱い性に優れる。
また、撥水処理剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、油脂類、ろう、ワックス等が好適に用いられ、親水処理剤としては、パーヒドロポリシラザン,メチルシロキサン,Al23ゲル,TiO2ゲル,ZrO2ゲル等のセラミックス薄膜前駆体、ZnSiO3,CaSiO3等のアルコキシ金属塩前駆体等が好適に用いられる。
また、3枚の基板を積層して流路を形成する場合は、流路の底面部となる平板状の下部基板の上面に、流路の側面部となる二つのスペーサを流路の幅だけ離間して配設し、二つのスペーサの上面に流路の上面部となる平板状の上部基板を渡設すればよい。このとき、下部基板とスペーサをアクリル系やエポキシ系の粘着剤等で接合することにより、液体が下部基板とスペーサの界面に浸入するのを防止する。また、下部基板と上部基板の材質や表面処理については、2枚の基板を積層する場合と同様である。
尚、側面部に関しては、撥水性、親水性のいずれでも構わない。流路の底面部が疎水性を有し、流路の少なくとも上面部が親水性を有していれば、液体をスムーズに移動させることができるためである。
流路の断面形状は扁平な略矩形状などに形成することが好ましいが、流路の断面の寸法は毛細管現象を利用して液体を移動させることができるように設定する必要がある。
2枚の基板を積層して流路を形成する場合は、凹条溝の深さが流路の高さとなり、3枚の基板を積層して流路を形成する場合は、スペーサの厚さが流路の高さとなる。
液体の表面張力によって生じる毛細管現象を利用して液体をスムーズに流路の内部に導入させるために最適な流路の高さ(凹条溝の深さ又はスペーサの厚さ)は、流路の幅によっても変わるが、流路の幅が300μmの場合、流路の高さは流路の幅の0.04倍〜0.4倍の範囲に形成することが好ましい。流路の高さが流路の幅の0.04倍より低くなるにつれ、流路内への液体の導入が困難になる傾向があり、0.4倍より高くなるにつれ、上部基板(流路の上面部)へ微量な液体を確実に接触させることができず、液体の導入が困難になる傾向があり、いずれも好ましくない。
入口液溜部及び出口液溜部は流路を形成する下部基板に凹部を形成することにより流路と一体化することができ、入口液溜部及び出口液溜部からの液体の漏れを確実に防止することができる。尚、出口液溜部は入口液溜部の容積と同等あるいはそれ以上の容積に形成することが好ましい。入口液溜部から供給された全ての液体を出口液溜部に確実に移動させて回収することができ信頼性に優れるためである。
入口液溜部及び出口液溜部の平面形状は円形状、楕円形状、三角形状や四角形状等の多角形状などの様々な形状に形成することができる。また、入口液溜部及び出口液溜部の底面部や周壁には、液体の流れ易さを考慮して傾斜を設けてもよい。
例えば、血液の中から白血球を分離する場合には、入口液溜部に血液を滴下し、滴下した血液が流路の内部に浸入した後、さらに入口液溜部に置換液を滴下することにより置換液で血液を出口液溜部に押し流す。このとき、粘性を有する白血球のみが、流路の底面部に張り付いて分離され、流路の内部は置換液で満たされる。
歯茎が炎症や歯周病等で侵されている場合、毛細血管壁から白血球細胞の遊走が認められる。同様な現象は鼻腔内の炎症時に鼻腔粘膜上でも認められる。そのため、血液から白血球を分離する以外に、唾液、鼻汁中から極微量の遊走白血球を採取することができる。
尚、置換液としては液体またはその成分と反応しないものを選択して用いることができるが、生理食塩水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、培地溶液、各種緩衝液(PBS、カコジル酸、HEPES、酢酸ベロナール等)等の低粘性の液体が好適に用いられる。
本発明の請求項2に記載の細胞分離具は、入口液溜部と、出口液溜部と、前記入口液溜部と前記出口液溜部の間に形成され前記入口液溜部に供給された液体を前記出口液溜部に移液する流路と、を備え、前記流路の底面部が疎水性を有し、前記流路の少なくとも一側面部が親水性を有して構成されている。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)流路の少なくとも一側面部が親水性を有することにより、入口液溜部に滴下した液体が、親水性を有する流路の側面部に引っ張られ、流路の内部に浸入し易く、流路の底面部が疎水性を有することにより、液体が流路の底面部に広がることを防止でき、液体が毛細管現象によってスムーズに流路の内部を流れて移動し易く、移液作業の信頼性、作業性に優れる。
(2)流路の底面部が疎水性を有し、流路の少なくとも一側面部が親水性を有することにより、液体が流路の側面部に引っ張られるようにして流路の内部を移動する際に、液体内の固形成分である細胞が流路の内部に取り残されて底面部に捕捉されるので、簡便に細胞と液体を分離することができる。
ここで、流路の形成方法は様々な方法が考えられるが、2枚或いは3枚の基板を積層することにより、容易に形成することができる。
例えば、2枚の基板を積層して流路を形成する場合は、前述の透明なメタクリル樹脂等の撥水性を有する下部基板に、流路の底面部及び側面部となる凹条溝を形成し、凹条溝の少なくとも一方の側面部に前述の親水処理を施した上に、流路の上面部となる平板状の上部基板を覆設するか、前述の透明なガラス基板等の親水性を有する下部基板に、流路の底面部及び側面部となる凹条溝を形成し、凹条溝の底面部に前述の撥水処理を施した上に、流路の上面部となる平板状の上部基板を覆設すればよい。このとき、上部基板は撥水性でも親水性でも構わない。特に上部基板を親水性にした場合、大きなドライビングフォースを得ることができ、液体を速やかに移動させることができ移液作業性に優れる。
また、流路の底面部となる撥水性を有する平板状の下部基板の上に、流路の側面部及び上面部となる凹条溝を形成した上部基板を覆設して流路を形成する場合は、上部基板を親水性を有する材質で形成するか、凹条溝の少なくとも一方の側面部に親水処理を施せばよい。尚、流路の幅と凹条溝の深さとの関係は請求項1で説明したものと同様である。
3枚の基板を積層して流路を形成する場合は、撥水性を有する平板状の下部基板の上面に、流路の側面部となる二つのスペーサを流路の幅だけ離間して配設し、二つのスペーサの上面に流路の上面部となる平板状の上部基板を渡設すればよい。このとき、下部基板とスペーサをアクリル系やエポキシ系の粘着剤等で接合することにより、液体が下部基板とスペーサの界面に浸入するのを防止する。二つのスペーサの少なくとも一方を親水性を有する材質で形成するか、流路の側面部にあたる部分に親水処理を施す必要があるが、上部基板は撥水性でも親水性でも構わない。尚、流路の幅とスペーサの厚さとの関係は請求項1で説明したものと同様である。
その他の入口液溜部及び出口液溜部の形状などについては、請求項1で説明したものと同様なので説明を省略する。また、液体との置換に用いる置換液も請求項1で説明したものと同様なので説明を省略する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の細胞分離具であって、前記流路が、凹条溝を有する下部基板と、前記下部基板の少なくとも凹条溝に覆設された上部基板と、で形成された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)流路が、凹条溝を有する下部基板と、下部基板の少なくとも凹条溝に覆設された上部基板によって形成されるので、下部基板の材質として撥水性を有する材質を選択し、上部基板の材質として親水性を有する材質を選択することにより、下部基板と上部基板を積層するだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路を形成することができる。
ここで、下部基板を形成する材質としては撥水性を有し、加工及び観察が容易なメタクリル樹脂が好適に用いられる。尚、撥水性が不十分な場合は、さらに撥水処理を施すなどして、凹条溝の底面部に撥水層を形成してもよい。
上部基板を形成する材質としては親水性を有し、観察及び取り扱いが容易なガラス基板が好適に用いられる。尚、親水性が不十分な場合は、さらに親水処理を施してもよい。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の細胞分離具であって、前記流路が、平板状の下部基板と、前記下部基板の上面に離間して配設された二つのスペーサと、前記二つのスペーサの上面に渡設された上部基板と、で形成された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)流路が、平板状の下部基板と、下部基板の上面に離間して配設された二つのスペーサと、二つのスペーサの上面に渡設された上部基板によって形成されるので、下部基板に特別な加工を施す必要がなく、スペーサの厚さを選択するだけで流路の高さを調整することができ生産性に優れる。
(2)流路が、下部基板,スペーサ,上部基板の三層構造なので、下部基板の材質として撥水性を有する材質を選択し、上部基板又はスペーサの材質として親水性を有する材質を選択することにより、それらを積層するだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路を形成することができる。
ここで、下部基板については請求項3で説明したものと同様なので説明を省略する。また、上部基板及びスペーサについては、前述の親水性又は撥水性を有する材質のいずれかを選択して用いることができる。
下部基板とスペーサの接合には、前述のアクリル系やエポキシ系の粘着剤等が好適に用いられる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の細胞分離具であって、前記流路の両側部に、前記流路の深さよりも深く形成された周辺溝部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)流路の両側部に、流路の深さよりも深く形成された周辺溝部を有するので、液体が流路内を移動する際に、側壁部の影響を受けることがなく、上面部と底面部の間をスムーズに移動することができ、移液の作業性に優れる。
(2)流路の両側部に流路の深さよりも深い周辺溝部が形成されていることにより、流路内へ浸入した液体が流路の幅以上に広がることがなく、上部基板と下部基板との間或いは上部基板及び下部基板とスペーサとの間に隙間があっても、その隙間に液体が浸入することがないので、流路を形成する部材同士を接着などにより密着させる必要がなく、積み重ねるだけでよいので、組み立て作業性に優れると共に、簡便に分解して洗浄することができ、メンテナンス性、取り扱い性に優れる。
ここで、周辺溝部の深さは、流路の幅や深さにもよるが、流路の幅が300μmで流路の深さが40μm〜120μmの場合、流路の深さの1倍〜5倍の深さに形成することが好ましい。周辺溝部の深さが流路の深さの1倍よりも浅くなるにつれ、液体が周辺溝部まで広がり易くなり、周辺溝部の効果が不十分となる傾向があり、5倍より深くなるにつれ、周辺溝部側面の面積が増加するため表面張力の影響が顕著となり、入口液溜部から流路への液体の浸入が困難となる傾向があり、いずれも好ましくない。
尚、周辺溝部の底面が流路の底面部よりも優れた撥水性を有する場合は、周辺溝部を浅く形成しても液体が周辺溝部まで広がることはなく、スムーズに流路内を移動させることができ移液作業の信頼性に優れる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の細胞分離具であって、前記周辺溝部の底部に、前記流路の前記底面部よりも撥水性の高い撥水層が形成された構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)周辺溝部の底部に流路の底面部よりも撥水性の高い撥水層が形成されているので、流路内へ浸入した液体が周辺溝部に広がることを確実に防止でき、移液の信頼性に優れる。
ここで、撥水層は、周辺溝部の底部にポリテトラフルオロエチレン、油脂類、ろう、ワックス等の撥水剤を塗布するか、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性を有する材質で形成されたシートを貼着するなどして形成することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の細胞分離具であって、前記入口液溜部及び前記出口液溜部が、前記流路の側部に近接して前記周辺溝部より低い凹状に形成された構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)入口液溜部が流路の側部に近接して周辺溝部より低い凹状に形成されていることにより、入口液溜部に滴下させた液体が盛り上がり、親水性を有する流路の上面部と接触した際に、毛細管現象によって速やかに流路の内部に浸入し易く、流路の内部を液体で満たすことができ作業性に優れる。
(2)出口液溜部が流路の側部に近接して周辺溝部より低い凹状に形成されていることにより、流路の内部を満たした液体を、入口液溜部に滴下した置換液などにより押し流した際に、流路の底面部から出口液溜部に移動させることができ、速やかに出口液溜部の内部に回収することができ信頼性に優れる。
ここで、入口液溜部の内面は撥水性を有することが好ましい。これにより、入口液溜部に滴下した液体が一箇所にまとまって盛り上がり易く、毛細管現象を利用して速やかに流路内へ導くことができる。撥水性を有する下部基板で流路の底面部や側面部を形成する際に、入口液溜部を一体に形成すれば、特別な表面処理などを行うことなく、内面に撥水性を有する入口液溜部を得ることができ、量産性に優れる。
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の細胞分離具であって、前記周辺溝部の底部に配設された通電用電極を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)周辺溝部の底部に配設された通電用電極を有するので、流路内の細胞に直流電流を通電することにより、負極から生成する水酸化イオン等で電極間を高アルカリ状態に変化させて細胞を破壊する(死滅させる)ことができる。また、交流電流を通電することにより、細胞に電荷を持たせ、電極間を泳動させることもできる。
請求項9に記載の発明は、請求項3乃至8の内いずれか1項に記載の細胞分離具であって、前記上部基板の上面に敷設された帯電フィルムを備えた構成を有している。
この構成により、請求項3乃至8の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)上部基板の上面に敷設された帯電フィルムを有するので、帯電フィルムを帯電させることにより、流路内部の細胞を流路の上面部側へ移動させることができる。この上面部へ移動した細胞に顕微鏡などで焦点を合わせることによって細胞の選択的な画像観察を簡便に行うことができる。
ここで、帯電フィルムの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、PET等の高分子フィルムが好適に用いられる。帯電フィルムはウレタンフォーム、発砲スチロール、ナイロン、絹、羊毛、フエルト等で擦ることにより帯電させることができる。また上部基板をプラズマ等の電気的な方法で帯電させてもよい。特に、上部基板が着脱自在に配設されている場合は、必要に応じて上部基板を取り外してから簡便に帯電フィルムを帯電させることができ作業性に優れる。
請求項10に記載の細胞分離具を用いた細胞分離方法は、請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の細胞分離具を用いた細胞分離方法であって、前記入口液溜部に前記液体を滴下する液体滴下工程と、前記液体滴下工程で滴下された前記液体が前記流路の内部に浸入した後に前記入口液溜部に置換液を滴下する置換液滴下工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)入口液溜部に液体を滴下する液体滴下工程と、液体滴下工程で滴下された液体が流路の内部に浸入した後に入口液溜部に置換液を滴下する置換液滴下工程と、を有するので、流路内部の液体成分を置換液で置換することができ、少量の液体から容易に固形成分である細胞を分離して観察や測定などを行うことができる。
ここで、置換液については請求項1で説明したものと同様なので説明を省略する。入口液溜部に滴下する液体とほぼ同体積の置換液を滴下することにより、液体と置換液をほぼ完全に置換することができると共に、置換された液体を出口液溜部で確実に回収することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の細胞分離具を用いた細胞分離方法であって、前記液体滴下工程で滴下する液体が、磁性粉を添加した血液である構成を有している。
この構成により、請求項10の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)液体滴下工程で滴下する液体が、磁性粉を添加した血液であることにより、白血球をその貧食作用により予め磁性粉の周囲に集めることができるので、通常の血液よりも多量の白血球を分離することができると共に、外部から磁石などの磁力により白血球を任意の位置に移動させることができ、短時間で効率的に観察や測定などを行うことができ作業性に優れる。
ここで、磁性粉としては、着磁性を有するものであればよく、鉄、ニッケル、コバルト等の微粒子が好適に用いられる。また、磁性粉を含むセラミックス、プラスチック(Fe微粒子含有ガラス粒子、Ni微粒子含有ポリスチレン粒子等)でもよい。これら磁性粒子表面には化学官能基や抗原分子を修飾させてもよい。この場合は、細胞膜表面の抗体分子が特定物質を認識する抗原―抗体反応作用を発現し、選択的な細胞分別を行なうことも可能である。
以上のように、本発明の細胞分離具及びそれを用いた細胞分離方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)流路の少なくとも上面部が親水性を有し、底面部が疎水性を有することにより、入口液溜部に滴下した液体が底面部に広がることを防止でき、親水性を有する流路の上面部に引っ張られて速やかに流路の内部に浸入した液体が、表面張力によって生じる毛細管現象によってスムーズに流路の内部を流れて移動し易く、移液作業の信頼性、作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
(2)流路の底面部が疎水性を有し、流路の少なくとも上面部が親水性を有するので、液体が親水性を有する流路の上面部に引っ張られるようにして流路の内部を移動する際に、液体内の成分の粘度差によって固形成分である細胞を流路の底面部に捕捉することができる細胞と液体の分離が容易な作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)流路の少なくとも一側面部が親水性を有し、底面部が疎水性を有することにより、入口液溜部に滴下した液体が底面部に広がることを防止でき、親水性を有する流路の側面部に引っ張られて速やかに流路の内部に浸入した液体が、毛細管現象によってスムーズに流路の内部を流れて移動し易く、移液作業の信頼性、作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
(2)流路の底面部が疎水性を有し、流路の少なくとも一側面部が親水性を有することにより、液体が親水性を有する流路の側面部に引っ張られるようにして流路の内部を移動する際に、液体内の固形成分である細胞を流路の底面部に捕捉することができる細胞と液体の分離が容易な作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)撥水性を有する下部基板に凹条溝を形成し、親水性を有する上部基板を覆設するだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路を形成することができる量産性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)下部基板の材質として撥水性を有する材質を選択し、上部基板又はスペーサの材質として親水性を有する材質を選択することにより、それらを積層するだけで、特別な加工や表面処理などを行うことなく簡便に三層構造の流路を形成することができる量産性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)流路の両側部に流路の深さよりも深い周辺溝部が形成されていることにより、流路内へ浸入した液体が流路の幅以上に広がることがなく、側壁部の影響を受けずに上面部と底面部の間をスムーズに移動することができ移液の作業性に優れると共に、上部基板と下部基板との間或いは上部基板及び下部基板とスペーサとの間に隙間があっても、その隙間に液体が浸入することがないので、流路を形成する部材同士を接着などにより密着させる必要がなく組み立てが容易で、簡便に分解して洗浄することができるメンテナンス性、取り扱い性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)周辺溝部の底部に流路の底面部よりも撥水性の高い撥水層が形成されていることにより、流路内へ浸入した液体が周辺溝部に広がることを確実に防止できる移液の信頼性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)入口液溜部及び出口液溜部が流路の側部に近接して周辺溝部より低い凹状に形成されていることにより、入口液溜部と流路の間、流路と出口液溜部の間でスムーズに液体を移動させることができ、液体の置換及び回収作業を簡便かつ確実に行うことができる信頼性、作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)周辺溝部の底部に配設された通電用電極により、流路内の細胞に直流電流を通電し、負極から生成する水酸化イオン等で電極間を高アルカリ状態に変化させて細胞を破壊(死滅)させたり、また、交流電流を通電し、細胞に電荷を持たせ、電極間を泳動させたりして細胞の観察や測定を行うことができる観察作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項3乃至8の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)上部基板の上面に敷設された帯電フィルムを帯電させるだけで、流路内部の細胞を流路の上面部側へ移動させることができる。上面部に捕集した細胞に顕微鏡などにより焦点を合わせることにより、選択的な細胞の画像観察を簡便に行うことができる観察作業性に優れた細胞分離具を提供することができる。
請求項10に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)液体滴下工程で入口液溜部に滴下された液体が流路の内部に浸入した後に、置換液滴下工程で入口液溜部に置換液を滴下するだけで、流路内部の液体成分を置換液で置換して少量の液体から固形成分である細胞を容易に分離することができ、短時間で細胞の観察や測定などを行うことができる作業性に優れた細胞分離具を用いた細胞分離方法を提供することができる。
請求項11に記載の発明によれば、請求項10の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)血液から白血球を分離する際に、液体滴下工程において磁性粉を添加した血液を滴下することにより、白血球をその貧食作用により予め磁性粉の周囲に集めることができるので、通常の血液よりも多量の白血球を分離することができると共に、外部から磁石などの磁力により白血球を任意の位置に移動させることができ、短時間で効率的に観察や測定などを行うことができる作業性に優れた細胞分離具を用いた細胞分離方法を提供することができる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における細胞分離具及びそれを用いた細胞分離方法並びに観察方法について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1における細胞分離具を示す斜視図である。
図1中、1は本発明の実施の形態1における細胞分離具、2は撥水性を有するメタクリル樹脂等で形成された細胞分離具1の下部基板、3はセルロースフィルムで形成され下部基板2の上面2aの左右に離間して配設された細胞分離具1の二つのスペーサ、4は親水性を有するガラス基板等で形成され二つのスペーサ3の上面に渡設された細胞分離具1の上部基板、5は下部基板2,スペーサ3,上部基板4で囲まれることにより形成された細胞分離具1の流路、5aは下部基板2の上面2aで形成された流路5の底面部、6は流路5の両側部に流路5の長手方向と平行で流路5の深さよりも深く形成された周辺溝部、7は流路5の上流側の側部に近接して周辺溝部6よりさらに低い凹状に形成された細胞分離具1の入口液溜部、8は流路5の下流側の側部に近接して周辺溝部6よりさらに低い凹状に形成された細胞分離具1の出口液溜部である。
次に、実施の形態1における細胞分離具の流路の詳細について説明する。
図2は図1のA−A線矢視断面模式図であり、図3は図1のB−B線矢視断面模式図である。
図2中、5bは上部基板4の裏面4aで形成された流路5の上面部、6aは周辺溝部6の底部に流路5の底面部5aよりも撥水性の高いポリテトラフルオロエチレン等で形成されたシートを貼着して形成された撥水層、9は帯電性の高いポリテトラフルオロエチレン等の高分子フィルムで形成され上部基板4の上面に敷設された帯電フィルム、10は上部基板4の上面で帯電フィルム9が敷設されていない観察用窓部、50は流路5に浸入した液体である。
尚、説明の都合上、図2及び図3においては、図1とは縦横の縮尺が異なる。
下部基板2の上面2aで形成された流路5の底面部5a(撥水面)における接触角の測定値は100度、上部基板4の裏面4aで形成された流路5の上面部5b(親水面)における接触角の測定値は20度であった。このとき、流路5の上面部5bに接触した液体50が流路5の内部にスムーズに浸入し、流路5に沿って速やかに移動することが顕微鏡による観察で確認された。流路5の底面部5aの撥水性や流路5の上面部5bの親水性のばらつきと、流路5内での液体50の移動の様子から判断すると、流路5の底面部5a(撥水面)における接触角が80度〜100度、流路5の上面部5b(親水面)における接触角が20度〜40度の範囲であれば、液体50を流路5の内部に導入し流路5に沿ってスムーズに移動させることができるものと思われる。
下部基板2をNC旋盤加工することにより周辺溝部6,入口液溜部7,出口液溜部8を一体に形成した。このとき、流路5の底面部5aの幅300μmに対し、流路5の底面部5aと上面部5bの隙間(スペーサ3の厚さ)は40μm〜120μm、周辺溝部6の深さは120μm〜200μmに形成し、周辺溝部6の深さが流路5の隙間の1倍〜5倍となるようにした。周辺溝部6の深さが流路5の隙間の1倍よりも浅くなるにつれ、液体50が周辺溝部6まで広がり易くなり、周辺溝部6の効果が不十分となる傾向があり、5倍より深くなるにつれ、周辺溝部6の側面の面積が増加して表面張力の影響が顕著となり、入口液溜部7から流路5への液体の浸入が困難となる傾向があることがわかったためである。
尚、入口液溜部7と出口液溜部8の容積はほぼ同等になるように形成した。これにより、入口液溜部7から供給された全ての液体50を流路5内に残すことなく、出口液溜部8で回収することができ信頼性に優れる。
図2に示すように、周辺溝部6を形成することにより、液体50が周辺溝部6の内部まで広がることがないので、下部基板2とスペーサ3及びスペーサ3と上部基板4は必ずしも密着している必要はない。これにより、下部基板2に対してスペーサ3や上部基板4を着脱自在とすることができるので、液体50の物性などに応じて、高さの異なるスペーサ3を使用して流路5の高さを容易に調整することができ、液体50の流れを円滑に保つことができ汎用性に優れる。また、上部基板4が破損した場合には簡便に交換することができ、メンテナンス性、省資源性に優れる。
本実施の形態では、周辺溝部6の表面に撥水層6aを形成することにより、液体50の広がりを効果的に防いでいるが、下部基板2が十分な撥水性を有する場合は、撥水層6aは設けなくてもよい。また、撥水層6aを形成する場合は、撥水性のシートを貼着する以外に、ポリテトラフルオロエチレン、油脂類、ろう、ワックス等の撥水剤を塗布してもよい。
下部基板2が撥水性を有することにより、入口液溜部7の内面も撥水性を有するので、図3に示すように、入口液溜部7に滴下した液体50が一箇所にまとまって盛り上がり易く、下部基板2と上部基板4で挟まれた流路5内へ毛細管現象を利用して液体50を速やかに導くことができる。
また、上部基板4で出口液溜部8を覆った場合、上部基板4の親水性によって引っ張られる液体50を上部基板4で覆われた出口液溜部8まで確実に送液することができ移液作業の信頼性に優れる。
入口液溜部7は三角形状に形成し、その斜辺部分で流路5に接するようにした。上部基板4に覆われていない入口液溜部7付近では、液体50はただちに上部基板4の親水性に引っ張られるが、このとき、液体50を流路5の上流側から下流側に引っ張る表面張力が大きく作用するため、流路5に沿って毛細管現象が生じ、液体50を確実に送液する作用がある。
出口液溜部8も三角形状に形成し、その斜辺部分で流路5に接するようにした。この場合も、前述と同様な効果が得られ、液体50を確実に送液して出口液溜部8で回収する作用がある。
尚、入口液溜部7及び出口液溜部8の平面形状は、本実施の形態に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、多角形状などの様々な形状に形成することができる。また、入口液溜部7及び出口液溜部8の底面部には、液体50の流れ易さを考慮して傾斜を設けてもよい。
帯電フィルム9はウレタンフォーム,発砲スチロール、ナイロン、絹、羊毛、フエルト等で擦ることにより帯電させることができ、液体50内に含まれる細胞を流路5の上面部5b側に移動させることができる。このとき、左右の帯電フィルム9が離間し観察用窓部10が形成されているので、顕微鏡などを用いて容易に液体50内の細胞を観察することができる。
尚、帯電フィルム9の材質は、本実施の形態に限定されるものではなく、摩擦などにより帯電するものであればよい。特に、上部基板4が着脱自在に配設されている場合は、必要に応じて上部基板4を取り外してから簡便に帯電フィルム9を帯電させることができ作業性に優れる。
以上のように形成された細胞分離具を用いた細胞分離方法並びに観察方法について、血液から白血球を分離する場合を例にとって説明する。
図4(a)は実施の形態1における細胞分離具を用いた細胞分離方法の液体滴下工程を示す要部断面模式図であり、図4(b)は液体滴下工程で滴下された血液が流路の内部に浸入する様子を示す要部断面模式図、図4(c)は実施の形態1における細胞分離具を用いた細胞分離方法の置換液滴下工程を示す要部断面模式図である。
図4中、50aは液体としての血液、51は血液50aの内部に含まれる細胞としての白血球、60は生理食塩水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、培地溶液、各種緩衝液(PBS、カコジル酸、HEPES、酢酸ベロナール等)等の低粘性の置換液である。
まず、図4(a)に示すように、液体滴下工程において、血液50aを入口液溜部7(図1参照)に滴下する。このときの入口液溜部7(撥水面)における血液50aの接触角は100度であり、盛り上がった血液50aは、親水性を有する流路5の上面部5bに接触することにより、流路5の内部に浸入し、血液50aの表面張力によって生じた毛細管力により図4(b)に示すように流路5の内部を上流側から下流側へと移動する。
次に、図4(c)に示すように置換液滴下工程において、置換液60を入口液溜部7に滴下すると、置換液60が流路5の内部に浸入し、血液50aを出口液溜部8(図1参照)に押し流す。このとき、血液50aに含まれる白血球51は粘性により流路5の底面部5aに張り付くようにして捕捉され血液50aと分離される。
図1に示したように、出口液溜部8は流路5に接し、かつ液体の排出方向に対して絞られたテーパー形状をしているため、テーパー先端に近づくほど表面張力が増加する。そのため毛細管現象が生じ、出口付近に送液された液体は確実に出口液溜部8内に排出される。
この状態で細胞分離具1を顕微鏡などにセットすることにより、白血球51の観察を行うことができる。このとき、前述のように帯電フィルム9を帯電させることにより、白血球51を流路5の上面部5b側に移動させることができ、観察を容易に行うことができる。顕微鏡が十分な焦点深度を有する場合には、帯電フィルム9を省略することができる。
尚、磁性粉を添加した血液50aを使用した場合、白血球51をその貧食作用により予め磁性粉の周囲に集めることができるので、通常の血液50aよりも多量の白血球51を分離することができると共に、外部から磁石などの磁力により白血球51を任意の位置に移動させることができ、短時間で効率的に観察や測定などを行うことができ作業性に優れる。
実施の形態1の細胞分離具は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)流路5の少なくとも上面部5bが親水性を有することにより、入口液溜部7に滴下した液体50(血液50a)が、親水性を有する流路5の上面部5bに引っ張られ、流路5の内部に浸入し易く、流路5の底面部5aが疎水性を有することにより、液体50(血液50a)が流路5の底面部5aに広がることを防止でき、液体50(血液50a)が毛細管現象によってスムーズに流路5の内部を流れて移動し易く、移液作業の信頼性、作業性に優れる。
(2)流路5の底面部5aが疎水性を有し、流路5の少なくとも上面部5bが親水性を有することにより、液体50(血液50a)が流路5の上面部5bに引っ張られるようにして流路5の内部を移動する際に、液体50(血液50a)内の固形成分である細胞(白血球51)が流路5の内部に取り残されて底面部5aに捕捉されるので、簡便に細胞(白血球51)と液体50(血液50a)を分離することができる。
(3)流路5が、平板状の下部基板2と、下部基板2の上面2aに離間して配設された二つのスペーサ3と、二つのスペーサ3の上面に渡設された上部基板4によって形成されるので、下部基板2に特別な加工を施す必要がなく、スペーサ3の厚さを選択するだけで流路5の高さを調整することができ生産性に優れる。
(4)流路5が、下部基板2,スペーサ3,上部基板4の三層構造なので、下部基板2の材質として撥水性を有する材質を選択し、上部基板4又はスペーサ3の材質として親水性を有する材質を選択することにより、それらを積層するだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路5を形成することができる。
(5)流路5の両側部に、流路5の上下の隙間(深さ)よりも深く形成された周辺溝部6を有するので、液体50(血液50a)が流路5内を移動する際に、側壁部の影響を受けることがなく、上面部5bと底面部5aの間をスムーズに移動することができ、移液の作業性に優れる。
(6)流路5の両側部に流路5の上下の隙間(深さ)よりも深い周辺溝部6が形成されていることにより、流路5内へ浸入した液体50(血液50a)が流路5の幅以上に広がることがなく、上部基板4及び下部基板2とスペーサ3との間に隙間があっても、その隙間に液体50(血液50a)が浸入することがないので、流路5を形成する部材同士を接着などにより密着させる必要がなく、積み重ねるだけでよいので、組み立て作業性に優れると共に、簡便に分解して洗浄することができ、メンテナンス性、取り扱い性に優れる。
(7)周辺溝部6の底部に流路5の底面部5aよりも撥水性の高い撥水層6aが形成されているので、流路5内へ浸入した液体50(血液50a)が周辺溝部6に広がることを確実に防止でき、移液の信頼性に優れる。
(8)入口液溜部7が流路5の側部に近接して周辺溝部6より低い凹状に形成されていることにより、入口液溜部7に滴下させた液体50(血液50a)が盛り上がり、親水性を有する流路5の上面部5bと接触した際に、表面張力と毛細管現象によって速やかに流路5の内部に浸入して移動し易く、流路5の内部を液体50(血液50a)で満たすことができ作業性に優れる。
(9)出口液溜部8が流路5の側部に近接して周辺溝部6より低い凹状に形成されていることにより、流路5の内部を満たした液体50(血液50a)を、入口液溜部7に滴下した置換液60などにより押し流した際に、流路5の底面部5aから出口液溜部8に移動させることができ、速やかに出口液溜部8の内部に回収することができ信頼性に優れる。
(10)上部基板4の上面に敷設された帯電フィルム9を有するので、帯電フィルム9を帯電させることにより、流路5内部の細胞(白血球51)を流路5の上面部5b側へ移動させることができ、顕微鏡などによる細胞(白血球51)の観察を簡便に行うことができる。
実施の形態1の細胞分離具を用いた細胞分離方法は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)入口液溜部7に液体50(血液50a)を滴下する液体滴下工程と、液体滴下工程で滴下された液体50(血液50a)が流路5の内部に浸入した後に入口液溜部7に置換液60を滴下する置換液滴下工程と、を有するので、流路5内部の液体成分を置換液60で置換することができ、少量の液体50(血液50a)から容易に固形成分である細胞(白血球51)を分離して観察や測定などを行うことができる。
(実施の形態2)
図5は実施の形態2における細胞分離具の要部断面模式図である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図5において、実施の形態2における細胞分離具11が実施の形態1と異なるのは、周辺溝部6に通電用電極6bが配設されている点である。
実施の形態2における細胞分離具を用いた細胞分離方法は実施の形態1と同様なので説明を省略する。
実施の形態2の細胞分離具によれば、実施の形態1の(1)乃至(9)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)周辺溝部6の底部に配設された通電用電極6bを有するので、流路5内の細胞に直流電流を通電することにより、負極から生成する水酸化イオン等で電極間を高アルカリ状態に変化させて細胞を破壊する(死滅させる)ことができる。また、交流電流を通電することにより、細胞に電荷を持たせ、電極間を泳動させることもできる。
実施の形態2の細胞分離具を用いた細胞分離方法によれば、実施の形態1で得られる作用と同様の作用を有する。
(実施の形態3)
図6は実施の形態3における細胞分離具を示す斜視図であり、図7(a)は図6のC−C線矢視断面模式図であり、図7(b)は図6のD−D線矢視断面模式図である。
図6及び図7において、実施の形態3における細胞分離具21が実施の形態1と異なるのは、流路25の底面部25a及び側面部25bとなる凹条溝23を形成した下部基板22の上に、流路25の上面部25cとなる平板状の上部基板24が覆設されて流路25が形成されている点と、帯電フィルム9を備えていない点である。
尚、27,28はそれぞれ下部基板22の流路25の上流側と下流側に一体に凹状に形成された入口液溜部及び出口液溜部である。
下部基板22は実施の形態1の下部基板2と同様の撥水性を有するメタクリル樹脂等で形成し、上部基板24は実施の形態1の上部基板4と同様の親水性を有するガラス基板等で形成した。
また、流路25の幅300μmに対し、流路25の高さは12μm〜120μmに形成した。流路25の高さが12μmより低くなるにつれ、流路25内への液体50の導入が困難になる傾向があり、120μmより高くなるにつれ、流路25の上面部25cへ微量な液体50を確実に接触させることができず、液体50の導入が困難になる傾向があることがわかったためである。
実施の形態3における細胞分離具21の流路25,入口液溜部27,出口液溜部28の形状は、実施の形態1における細胞分離具1の流路5,入口液溜部7,出口液溜部8の形状とそれぞれ異なっているが、実施の形態3における細胞分離具21を用いた細胞分離方法は実施の形態1と同様なので説明を省略する。
尚、図7(b)に示すように、入口液溜部27の底部を流路25の底面部25aと面一に形成し、出口液溜部28の底部を流路25の底面部25aより低くなるように形成した。これにより、入口液溜部27に滴下した液体50(血液50a)が、流路25の内部を通った後、確実に出口液溜部28に回収され移液作業性に優れる。
実施の形態3における細胞分離具21は、実施の形態1と同様に顕微鏡などを用いて観察を行うことができる。本実施の形態では帯電フィルム9を備えていないが、必要に応じて実施の形態1と同様の帯電フィルム9を用いた観察を行うことができる。
実施の形態3の細胞分離具は以上のように構成されているので、実施の形態1の(1),(2)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)流路25が、凹条溝23を有する下部基板22と、下部基板22の少なくとも凹条溝23に覆設された上部基板24によって形成されるので、下部基板22の材質として撥水性を有する材質を選択し、上部基板24の材質として親水性を有する材質を選択することにより、下部基板22に上部基板24を載せるだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路を形成することができる。
実施の形態3の細胞分離具を用いた細胞分離方法によれば、実施の形態1で得られる作用と同様の作用を有する。
(実施の形態4)
図8は実施の形態4における細胞分離具を示す要部断面図である。
図8において、実施の形態4における細胞分離具31が実施の形態3と異なるのは、流路35の底面部35aとなる平板状の下部基板32の上面に、流路35の側面部35bとなる二つのスペーサ33が離間して配設され、二つのスペーサ33の上面に流路35の上面部35cとなる平板状の上部基板34が渡設されて流路35が形成されている点である。
下部基板32及びスペーサ33は実施の形態1の下部基板2と同様の撥水性を有するメタクリル樹脂等で形成し、上部基板34は実施の形態1の上部基板4と同様の親水性を有するガラス基板等で形成した。尚、下部基板32とスペーサ33はアクリル系粘着材等で接合した。
実施の形態4における細胞分離具31を用いた細胞分離方法は実施の形態3と同様なので説明を省略する。
実施の形態4の細胞分離具は以上のように構成されているので、実施の形態1の(1),(2)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)流路35が、平板状の下部基板32と、下部基板32の上面に離間して配設された二つのスペーサ33と、二つのスペーサ33の上面に渡設された上部基板34によって形成されるので、下部基板32に特別な加工を施す必要がなく、スペーサ33の厚さを選択するだけで流路35の高さを調整することができ生産性に優れる。
(2)流路35が、下部基板32,スペーサ33,上部基板34の三層構造なので、下部基板32の材質として撥水性を有する材質を選択し、上部基板34の材質として親水性を有する材質を選択することにより、それらを積層するだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路35を形成することができる。
実施の形態4の細胞分離具を用いた細胞分離方法によれば、実施の形態3で得られる作用と同様の作用を有する。
(実施の形態5)
図9は実施の形態5における細胞分離具を示す要部断面図である。
図9において、実施の形態5における細胞分離具41が実施の形態4と異なるのは、流路45の一方の側面部45bとなるスペーサ43が親水性を有するガラス基板等で形成され、流路45の上面部45cとなる平板状の上部基板44が撥水性を有するメタクリル樹脂等で形成されている点である。
本実施の形態では一方のスペーサ43のみを親水性を有するガラス基板等で形成したが、他方のスペーサ33もスペーサ43と同様の親水性を有するガラス基板等で形成してもよい。尚、下部基板32とスペーサ33,43は実施の形態4と同様にアクリル系粘着材等で接合した。
実施の形態5における細胞分離具41を用いた細胞分離方法は実施の形態4と同様なので説明を省略する。
実施の形態5の細胞分離具は以上のように構成されているので、実施の形態1の(1),(2)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)流路45が、平板状の下部基板32と、下部基板32の上面に離間して配設された二つのスペーサ33,43と、二つのスペーサ33,43の上面に渡設された上部基板44によって形成されるので、下部基板32に特別な加工を施す必要がなく、スペーサ33,43の厚さを選択するだけで流路45の高さを調整することができ生産性に優れる。
(2)流路45が、下部基板32,スペーサ33,43,上部基板44の三層構造なので、下部基板32及び上部基板44の材質として撥水性を有する材質を選択し、少なくとも一方のスペーサ43の材質として親水性を有する材質を選択することにより、それらを積層するだけで、特別な表面処理などを行うことなく簡便に流路45を形成することができる。
実施の形態5の細胞分離具を用いた細胞分離方法によれば、実施の形態4で得られる作用と同様の作用を有する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施の形態1で説明した細胞分離具1について、下部基板2及び上部基板5の表面状態(撥水性、親水性)の違いが細胞の分離に与える影響について確認を行った。
下部基板及び上部基板の撥水性・親水性の違いと赤血球除去率の関係を(表1)に示す。
Figure 2007267635
(実施例1)
細胞分離具1の外形は30mm×50mm、下部基板2は厚さ1mmのメタクリル樹脂(撥水性)で形成し、上部基板4は厚さ150μmのガラス(親水性)で形成した。流路5の底面部5aの幅は300μm、流路5の底面部5aと上面部5bの隙間(スペーサ3の厚さ)は40μm、流路5の長さは20mm、周辺溝部6の深さは200μmとした。
下部基板2における血液50aの接触角は100度、上部基板4における血液50aの接触角は20度であった。
実施の形態1で説明した細胞分離具1を用いた細胞分離方法により、血液50aから白血球51を分離した。
まず、液体滴下工程において、1μLの血液50aを入口液溜部7に滴下する。血液50aが流路5の内部に浸入した後、置換液滴下工程において、置換液60として1μLの
生理食塩水を入口液溜部7に滴下し、置換液60で血液50aを出口液溜部8に押し流した。
これにより、流路5の底面部5aが撥水性を有し、上面部5bが親水性を有する場合は、流路5内部を液体50aや置換液60がスムーズに流れ、白血球51を確実に分離できることが顕微鏡による観察で確認された。
このとき、顕微鏡で置換液滴下工程の前後における赤血球の数を計数したところ、91±9%という高い赤血球除去率が得られた。
(比較例1)
流路5の上面部5bを形成するガラス製の上部基板4の裏面4aをポリテトラフルオロエチレン(膜厚0.2〜0.8μm)で撥水処理した以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程を行った。その結果、流路5の内部に血液50aが浸入しなかった。
これにより、流路5の底面部5a及び上面部5bがいずれも撥水性を有する場合は、毛細管力が働かず、流路5内部への血液50aの導入が困難であることが顕微鏡による観察で確認された。
(比較例2)
流路5の底面部5aを形成するメタクリル樹脂製の下部基板2の上面2aをシリカ(膜厚0.2〜0.8μm)で親水処理した以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程を行った。その結果、流路5の内部に液体50aを導入することはできたが、下部基板2上に血液50aが広がってしまい、置換液滴下工程による置換液60との置換を行うことができなかった。
これにより、流路5の底面部5a及び上面部5bがいずれも親水性を有する場合は、流路5内部を液体50aや置換液60がスムーズに流れず、白血球51を分離することは困難であることが顕微鏡による観察で確認された。
(比較例3)
流路5の底面部5aを形成するメタクリル樹脂製の下部基板2の上面2aをシリカ(膜厚0.2〜0.8μm)で親水処理し、流路5の上面部5bを形成するガラス製の上部基板4の裏面4aをポリテトラフルオロエチレン(膜厚0.2〜0.8μm)で撥水処理した以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程を行った。その結果、流路5の内部に液体50aを導入することはできたが、下部基板2上に血液50aが広がってしまい、置換液滴下工程による置換液60との置換を行うことができなかった。
これにより、流路5の底面部5aが親水性を有し、上面部5bが撥水性を有する場合は、流路5内部を液体50aや置換液60がスムーズに流れず、白血球51を分離することは困難であることが顕微鏡による観察で確認された。
(実施例2)
実施例1と同様の細胞分離具1とそれを用いた細胞分離方法により、血液50aから白血球51を分離する場合の再現性を確認した。
8回の実験を行い、それぞれの置換液滴下工程の前後における全血球数と全白血球数を計数し、赤血球除去率を求めた。
赤血球の除去率Sは(数1)によって定義し、これに実験値を代入し算出した。
S[%]=(1−((B−L)/(B−L))×100・・・(数1)
尚、B:分離前の全血球数、B:分離後の全血球数、L:分離前の白血球数、L:分離後の白血球数である。
赤血球除去率の再現性確認結果を(表2)に示す。
Figure 2007267635
(表2)に示すように、73%〜99%という高い赤血球除去率が得られ、細胞分離具1を用いた細胞分離方法の再現性が確認された。
次に、実施の形態1で説明した細胞分離具1について、流路5の底面部5aと上面部5bの隙間(スペーサ3の厚さ)と周辺溝部6の深さが細胞の分離に与える影響について確認を行った。
流路5の上下の隙間(深さ)及び周辺溝部6の深さの違いと赤血球除去率の関係を(表3)に示す。
Figure 2007267635
(実施例3)
流路5の底面部5aと上面部5bの隙間(スペーサ3の厚さ)を120μmとした以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程及び置換液滴下工程を行った。
顕微鏡で置換液滴下工程の前後における赤血球の数を計数したところ、実施例1と同様の91±9%という高い赤血球除去率が得られた。
(実施例4)
周辺溝部6の深さを120μmとした以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程及び置換液滴下工程を行った。
顕微鏡で置換液滴下工程の前後における赤血球の数を計数したところ、実施例1と同様の91±9%という高い赤血球除去率が得られた。
(実施例5)
周辺溝部6の深さを80μmとした以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程を行った。その結果、流路5の内部に液体50aを導入することはできたが、周辺溝部6にまで血液50aが広がってしまい、置換液滴下工程による置換液60との置換を行うことができなかった。
(実施例6)
周辺溝部6の深さを40μmとした以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程を行った。その結果、流路5の内部に液体50aを導入することはできたが、周辺溝部6にまで血液50aが広がってしまい、置換液滴下工程による置換液60との置換を行うことができなかった。
(実施例7)
周辺溝部6を形成しない以外は、実施例1と同様にして液体滴下工程を行った。その結果、流路5の内部に血液50aが浸入しなかった。
本発明は、簡単な構造で確実かつ容易に液体中の細胞を分離することができ、分離した細胞の観察を簡便に行うことができ、量産性、作業性に優れ、容易に洗浄して繰り返し使用することができ、メンテナンス性、省資源性に優れる細胞分離具の提供、及び液体に対する前処理が不要で、微量の液体から短時間で確実に細胞を分離することができる作業性に優れる細胞分離具を用いた細胞分離方法の提供を行って、血液、リンパ液、唾液、鼻汁等の各種液体の取り扱い性を向上させることができる。
実施の形態1における細胞分離具を示す斜視図 図1のA−A線矢視断面模式図 図1のB−B線矢視断面模式図 (a)実施の形態1における細胞分離具を用いた細胞分離方法の液体滴下工程を示す要部断面模式図(b)液体滴下工程で滴下された血液が流路の内部に浸入する様子を示す要部断面模式図(c)実施の形態1における細胞分離具を用いた細胞分離方法の置換液滴下工程を示す要部断面模式図 実施の形態2における細胞分離具の要部断面模式図 実施の形態3における細胞分離具を示す斜視図 (a)図6のC−C線矢視断面模式図(b)図6のD−D線矢視断面模式図 実施の形態4における細胞分離具を示す要部断面図 実施の形態5における細胞分離具を示す要部断面図
符号の説明
1,11,21,31,41 細胞分離具
2,22,32 下部基板
2a 上面
3,33,43 スペーサ
4,24,34,44 上部基板
5,25,35,45 流路
5a,25a,35a 底面部
5b,25c,35c,45c 上面部
6 周辺溝部
6a 撥水層
6b 通電用電極
7,27 入口液溜部
8,28 出口液溜部
9 帯電フィルム
10 観察用窓部
23 凹条溝
25b,35b,45b 側面部
50 液体
50a 血液
51 白血球
60 置換液

Claims (11)

  1. 入口液溜部と、出口液溜部と、前記入口液溜部と前記出口液溜部の間に形成され前記入口液溜部に供給された液体を前記出口液溜部に移液する流路と、を備え、前記流路の底面部が疎水性を有し、前記流路の少なくとも上面部が親水性を有することを特徴とする細胞分離具。
  2. 入口液溜部と、出口液溜部と、前記入口液溜部と前記出口液溜部の間に形成され前記入口液溜部に供給された液体を前記出口液溜部に移液する流路と、を備え、前記流路の底面部が疎水性を有し、前記流路の少なくとも一側面部が親水性を有することを特徴とする細胞分離具。
  3. 前記流路が、凹条溝を有する下部基板と、前記下部基板の少なくとも凹条溝に覆設された上部基板と、で形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞分離具。
  4. 前記流路が、平板状の下部基板と、前記下部基板の上面に離間して配設された二つのスペーサと、前記二つのスペーサの上面に渡設された上部基板と、で形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞分離具。
  5. 前記流路の両側部に、前記流路の深さよりも深く形成された周辺溝部を有することを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の細胞分離具。
  6. 前記周辺溝部の底部に、前記流路の前記底面部よりも撥水性の高い撥水層が形成されたことを特徴とする請求項5に記載の細胞分離具。
  7. 前記入口液溜部及び前記出口液溜部が、前記流路の側部に近接して前記周辺溝部より低い凹状に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の細胞分離具。
  8. 前記周辺溝部の底部に配設された通電用電極を有することを特徴とする請求項5に記載の細胞分離具。
  9. 前記上部基板の上面に敷設された帯電フィルムを有することを特徴とする請求項3乃至8の内いずれか1項に記載の細胞分離具。
  10. 請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の細胞分離具を用いた細胞分離方法であって、前記入口液溜部に前記液体を滴下する液体滴下工程と、前記液体滴下工程で滴下された前記液体が前記流路の内部に浸入した後に前記入口液溜部に置換液を滴下する置換液滴下工程と、を有することを特徴とする細胞分離方法。
  11. 前記液体滴下工程で滴下する液体が、磁性粉を添加した血液であることを特徴とする請求項10に記載の細胞分離方法。
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