以下、本発明について、添付の図面を参照して説明する。
(本発明に至った経過)
以下に、波長可変範囲を拡大することに伴う問題と、それを解決するために考えられる手法と、その手法についてのシミュレーションによる検証とを説明する。
上記した非特許文献1において、次の(2)式が開示されている。
ΔλB/λB=ΔλC/λC=Γi・Δneff/neff
=Lt/(Lt+La)・Δneff/neff (2)
この(2)式によれば、利得導波路の光軸方向の長さ(La)に対して波長制御導波路の光軸方向の長さ(Lt)を調整することで、ブラッグ波長(λB) の可変範囲(ΔλB)及び共振縦モード波長(λC)の可変範囲(ΔλC)を、即ち、レーザの発振波長の可変範囲を調整し得ることが分かる。
ところで、TDA−DFBレーザにおいて得られる反射スペクトルは、利得領域からの寄与と波長制御領域からの寄与とが合成されたものである。図2(a)、(b)にその様子を示す。非特許文献1では、利得導波路及び波長制御導波路の長さが等しく、回折格子は、利得導波路に沿う部分(以下、利得用回折格子と称する。)及び波長制御導波路に沿う部分(以下、波長制御用回折格子と称する。)で同じ周期を有し、同じデューティ比を有している。
なお、回折格子とは屈折率が周期的に変化する構成を有するものをいい、屈折率の高い凸部と屈折率の低い凹部とが周期的に形成された回折格子層にあっては、デューティ比(凸部の光軸方向の長さ/周期)が1/2ということは、凸部及び凹部の光軸方向の長さが等しいことを意味する。
このような非特許文献1のTDA−DFBレーザでは、図2(a)に示すように、利得領域から得られる反射スペクトルと、波長制御領域から得られる反射スペクトル(図2(a)中のAで示す)とは、大略同じブラッグ波長(λa=λt)、及び同じ強度分布を有する。したがって、これらを合成したものは、図2(b)のAcに示すようになる。
次に、波長制御導波路の等価屈折率(nteff)を変化させると、その等価屈折率(nteff)の変化に応じて波長制御領域のブラッグ波長(λt)が変化する。即ち、波長制御領域から得られる反射スペクトルは、図2(a)のBに示すように波長の短い方へ移動する。したがって、これらを合成したものは、図2(b)のBcに示すようになる。
そのような合成した反射スペクトルにおいて、発振波長(λB)は一般に下の式で与えられる。
λB=(La・λa+Lt・λt)/(La+Lt) (3)
ここで、λaは利得領域のブラッグ波長(2・naeff・Λa)、λtは波長制御領域のブラッグ波長(2・nteff・Λt)であり、naeffは利得導波路の等価屈折率、Λaは利得用回折格子の周期、nteffは波長制御導波路の等価屈折率、Λtは波長制御用回折格子の周期である。
したがって、利得導波路及び波長制御導波路の光軸方向の長さが等しい(La=Lt)場合、波長制御導波路の等価屈折率(nteff)を変化させないときも変化させたときも、合成した反射スペクトルにおいて発振波長(λB)は利得領域のブラッグ波長(λa)と波長制御領域のブラッグ波長(λt)の平均値((λa+λt)/2)となる。
このとき、発振モードの両側に副モードが立つが、これらの副モードは発振波長(λB)に対して対称なところに立つため、発振モードに対して対称な強度分布の反射スペクトルでは両側の副モードと発振モードの利得差を比較的大きく取れる。これにより、安定な単一発振モードを得ることができる。
次に、波長可変範囲を大きくするため、回折格子を図2(a)、(b)の場合と同じにし、波長制御導波路の長さ(Lt)を利得導波路の長さ(La)よりも長くした(La<Lt)場合、利得領域から得られる反射スペクトルと、波長制御領域から得られる反射スペクトルとは、図3(a)のようになる。図3(a)中、波長制御領域から得られる反射スペクトルにおいてAは波長を変化させない場合を示し、Bは波長を変化させた場合を示す。即ち、波長制御領域から得られる反射スペクトルのピーク強度が利得領域のそれよりも大きくなる。この理由は、利得導波路の長さ(La)よりも波長制御導波路の長さ(Lt)が長い分だけ波長制御用回折格子からのフィードバック量が利得用回折格子のそれよりも大きくなることによると考えられる。
また、利得領域から得られる反射スペクトルと波長制御領域から得られる反射スペクトルを合成したものを図3(b)に示す。図3(b)中、Acは波長を変化させない場合を示し、Bcは波長を変化させた場合を示す。図3(b)によれば、合成した反射スペクトルにおいて、発振波長(λB)は上記(3)式にしたがって波長の短い方へシフトする。そのため、La<Ltである場合には、その発振波長(λB)は利得領域のブラッグ波長(λa)と波長制御領域のブラッグ波長(λt)の平均値((λa+λt)/2)よりも波長制御領域のブラッグ波長(λt)側にずれてくる。
以上のような結果から、反射スペクトルの形は発振モード(波長λB)に対して非対称になる。これに伴い、発振モードに対して短波長側、長波長側のどちらかに立つ副モードが他の側に立つ副モードよりも大きくなる。これにより、片側の副モードの抑圧比(SMSR)が小さくなるため、安定な単一モード発振が困難になる。
このような調査結果に基づき、波長可変範囲を調整するために一対の利得領域及び波長制御領域において利得領域の光軸方向の長さ(La)に対して波長制御領域の光軸方向の長さ(Lt)を変化させた場合に、副モードの抑圧比(SMSR)を改善するためには、反射スペクトルの対称性を改善することが重要であることがわかった。そのためには、利得領域の光軸方向の長さ(La)に対する波長制御領域の長さ(Lt)の変化量に応じて、利得用回折格子のフィードバック量に対する波長制御用回折格子のフィードバック量を調整すればよいと考えた。さらに、回折格子のフィードバック量は回折格子の結合係数と密接に関係しているので、結局、反射スペクトルの対称性を改善するためには、利得領域の光軸方向の長さ(La)に対する波長制御導波路の長さ(Lt)の変化量に応じて、利得用回折格子の結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子の結合係数(κt)の変化量を調整することが必要であると考えた。
このようにすれば、反射スペクトルの対称性が改善されて発振モード(波長λB)に対してより対称に2つの副モードが立つようになり、副モードの抑圧比(SMSR)が改善され、それにより、安定な単一モード発振を得ることができると考えられる。
次に、利得領域の光軸方向の長さ(La)に対する波長制御導波路の長さ(Lt)の変化量に応じて、利得用回折格子の結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子の結合係数(κt)の変化量を調整した場合、副モードの抑圧がどのようになるか、シミュレーションを行った。そのシミュレーション結果について以下に説明する。
図4はそのシミュレーション結果を行った結果について示すグラフである。縦軸は線形目盛で表したモード間利得差を示し、横軸は線形目盛で表した発振波長(μm)を示す。
シミュレーションは、利得領域の光軸方向の長さ(La)に対する波長制御導波路の長さ(Lt)の比が2、利得用回折格子の結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子の結合係数(κt)の比が1/2の場合(図5中、符号Aで示す)について、利得領域のブラッグ波長を1.550μmとし、これに対して、波長制御領域のブラッグ波長を1.550μmから長波長側及び短波長側にずらしていったとき、各発振波長における発振モード(発振波長)と副モード間の利得差(モード間利得差)を計算することにより行った。
なお、比較のため、Lt/Laが1で、κt/κaが1の場合(図中、符号Bで示す)と、Lt/Laが2で、κt/κaが1の場合(図4中、符号Cで示す)についても同様にしてシミュレーションを行った。
図4によれば、Lt/Laを2倍にし、かつκt/κaを調整して1/2とした場合(図4中、符号Aで示す)には、発振波長をシフトさせたときに、Lt/Laを等倍にし、かつκt/κaも等倍にした場合(図4中、符号Bで示す)と同じ位の大きいモード間利得差が得られ、副モードの抑圧が有効に行われることが分った。一方、Lt/Laを2倍にしたが、κt/κaを調整せず、等倍とした場合(図4中、符号Cで示す)、発振波長が1.550μmから大きくシフトしてくるにしたがってモード間利得差が小さくなり、副モードの抑圧が有効に行われなくなることが分る。
以上より、Lt/Laを調整して発振波長をシフトさせようとする場合に、 Lt/Laに応じて結合係数を調整することで、副モードの抑圧が有効に行われ、安定な単一モードの発振を得やすくなることが分る。
また、波長制御領域の回折格子の結合係数を利得領域のそれに対して小さくする場合、以下に示す範囲で調整すると回折格子の結合係数の変調によるサテライトピークの発生の助長を十分に抑制することができ、それによりサテライトピークによる単一モード性の劣化を抑制し得ることもわかった。以下に示す範囲とは、La:Lt=1:A (A>1)の場合、κt/κaが1/Aより大きく、かつ1より小さくなるような範囲であり、La:Lt=1:A (A<1)の場合、κt/κaが1より大きく、かつ1/Aより小さくなるような範囲である。
次に、上記の結果を実際の素子に適用するため、回折格子の結合係数(κ)と、回折格子の形状パラメータや物理定数との関係を調査した。この場合、単純な構造の回折格子を基にして、回折格子の結合係数(κ)と回折格子の形状パラメータや物理定数との関係を把握しておけば、複雑な形状の回折格子については実験などにより形状等の多少の変形として相関関係を的確に把握することができる。このような観点から、ここでは、単純な回折格子、即ち矩形状の凸部及び凹部が周期的に並んだ回折格子層につき説明する。
矩形状の回折格子の結合係数(κ)は次のように与えられる。
κ=fred・π・Δneff/λB (4)
ここで、fredは回折格子のデューティ比による結合係数の減衰パラメータ、Δneffは光導波路の等価屈折率差であり、それぞれ以下のように与えられる。
fred=sin(π・Λm/Λ) (5)
ここで、Λは回折格子の周期、Λmは回折格子層の凸部の光軸方向の長さ、Λm/Λは回折格子のデュ―ティ比である。
Δneff=α・(dg1-dg2) ・ng (6)
ここで、dg1は回折格子層の凸部の厚さ、dg2は同じく凹部の厚さ、ngは回折格子層の屈折率である。なお、回折格子が導波路コア層に直接形成されている構造の場合は、dg1は導波路コア層の凸部の厚さ、dg2は導波路コア層の凹部の厚さとなる。また、αは比例係数で、回折格子層と位置などで変わる。
これと(4)式とから、以下の結合係数が得られる。
κ=fred・π・α・(dg1-dg2) ・ng/λB (7)
以上のように、結合係数(κ)は、回折格子層の凸部の厚さと凹部の厚さとの差(dg1-dg2)、及び回折格子層の屈折率(ng)に比例し、さらに回折格子のデュ―ティ比(Λm/Λ)とも関係していることが分かる。
以下に、上記した調査の結果見出した構成を具体的にTDA−DFBレーザに適用した本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図5(a)は、本発明の第1の実施形態のTDA−DFBレーザを示す断面図である。図5(b)は、回折格子の拡大断面図である。
第1の実施形態のTDA−DFBレーザは、この図5(a)に示すように、主に、光導波路101と、光導波路101に沿って設けられた回折格子102とにより構成されている。
光導波路101は、利得を発生しうる利得導波路101aと、電流注入によって発振波長を制御しうる波長制御導波路101bとを備え、これらが光軸方向に交互に配列されている構成を有する。なお、素子の両端面が光の出射面となっており、一方の端面から他方の端面に向かう方向が光軸方向である。
回折格子102は、屈折率の高い凸部2a、2c及び屈折率の低い凹部2b、2dが交互に周期的に形成された半導体層2、3からなり、利得導波路101aに沿う部分を利得用回折格子102aと称し、波長制御導波路101bに沿う部分を波長制御用回折格子102bと称する。
利得領域は、利得導波路101aと、これに沿って配置された利得用回折格子102aとを含み構成され、波長制御領域は、波長制御導波路101bと、これに沿って配置された波長制御用回折格子102bとを含み構成される。
この実施形態では、一対の利得導波路101aと波長制御導波路101bは、波長制御導波路101bの長さ(Lt)が利得導波路101aの長さ(La)よりも長く、その比率(A=Lt/La)が1より大きくなるように形成されている。
さらに、利得領域から得られる反射スペクトルと波長制御領域から得られる反射スペクトルとを合成した発振モードの反射スペクトルの対称性が改善されるように、その比率(A=Lt/La)に応じて、利得用回折格子102aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子102bの結合係数 (κt)を調整している。
この実施形態では、Lt/La比に応じて、利得用回折格子102aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子102bの結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1/Aより大きく、かつ1より小さくなるように、波長制御用回折格子102b及び利得用回折格子102aのうち何れか一の或いは両方の結合係数(κa、κt)を調整する。例えば、波長制御導波路101bの長さ(Lt)を利得導波路101aの長さ(La)の2倍とした場合、波長制御用回折格子102bの結合係数(κt)を利得用回折格子102aの結合係数(κa)の1/2倍より大きく、1倍より小さくなるようにする。言い換えれば、Lt/Laに応じて波長制御用回折格子102bからのフィードバック量を小さくするけれども、それが利得用回折格子102aからのフィードバック量よりも小さくならないような範囲に止めるものである。
そのため、第1の実施形態では、波長制御用回折格子層における凸部2cの頂上から凹部2dの底までの深さを利得用回折格子層におけるそれよりも浅くしている。即ち、利得用回折格子層の凸部2aの厚さをdg1aとし、同じく凹部2bの厚さをdg2aとし、波長制御用回折格子層102bの凸部2cの厚さをdg1tとし、同じく凹部2dの厚さをdg2tとすると、(dg1t-dg2t)<(dg1a-dg2a)となる範囲で、dg1a、dg2a、dg1t、dg2tを調整することにより、κt/κaが1/Aより大きく、かつ1より小さくなるようにする。
なお、(dg1t-dg2t)は波長制御用回折格子102bの厚さと等価であり、(dg1a-dg2a)は利得用回折格子102aの厚さと等価であり、結局、(dg1t-dg2t)<(dg1a-dg2a)は、波長制御用回折格子102bの厚さを利得用回折格子102aの厚さよりも薄くすることと等価である。
また、全体の回折格子102を通して、回折格子の周期Λa、Λtは等しく、かつ回折格子のデュ―ティ比(回折格子の凸部の光軸方向の長さ/周期(Λma/Λa、Λmt/Λt)は1/2となっている。
さらに、図5(a)に示すように、回折格子層2の光軸方向の全長の中心部にλ/4シフト部を備えている。λ/4シフト部を備えることにより、一般的なDFBレーザと同様に、回折格子による反射スペクトルの中心波長(ピーク:ブラッグ波長)と共振縦モード波長の一つとが一致し、中心波長で発振するようになる。これにより、より一層安定した単一モード発振が可能となる。ただし、λ/4シフト部を設けなくても、長波長側のモードと短波長側のモードの2つのモードのうち、何れか一方のモードで発振することになる。
以下、図5(a)、(b)及び図6を参照して第1の実施形態のTDA−DFBレーザの具体的な構成例について説明する。
利得領域では、図5(a)に示すように、n型InPからなるバッファ層(基板)1上に、n型InGaAsPからなる回折格子層2と、n型InPからなるバッファ層3と、バンドギャップ波長が1.55μm帯の歪MQW層がInGaAsPにより形成された活性層導波路4aと、p型InPからなるクラッド層5と、p型InGaAsPからなる第1のコンタクト層6と、p型InGaAsからなる第2のコンタクト層7とが下層から順に積層されている。なお、歪MQW層は、Multiple Quantum Well:多重量子井戸層)と、SCH層(Separate Confinement Heterostructure:分離閉じ込めヘテロ構造)とで構成される。
利得領域の光導波路(利得導波路)101aは、バッファ層3と活性層導波路4aとクラッド層5とで構成される。利得用回折格子102aは、利得導波路101aに沿う回折格子層2とバッファ層3とで構成され、屈折率の高い凸部2aと屈折率の低い凹部2bとが周期的に並んでいる。
一方、波長制御領域では、図5(a)に示すように、n型InPからなるバッファ層(基板)1上に、n型InGaAsPからなる回折格子層2と、n型InPからなるバッファ層3と、1.38μm組成のInGaAsPからなるコア層(位相制御導波路)4bと、p型InPからなるクラッド層5と、p型InGaAsPからなる第1のコンタクト層6と、p型InGaAsからなる第2のコンタクト層7とが下層から順に積層されている。
波長制御領域の光導波路(波長制御導波路)101bは、バッファ層3とコア層(位相制御導波路)4bとクラッド層5とで構成されている。波長制御回折格子102bは、図5(a)、(b)に示すように、波長制御導波路101bに沿う回折格子層2とバッファ層3で構成され、屈折率の高い凸部2cと屈折率の低い凹部2dとが周期的に並んでいる。
利得導波路101aと波長制御導波路101bとが交互に周期的に配置された配列の周期は凡そ90μmであり、利得導波路101aの光軸方向の長さ(La)は凡そ30μmであり、波長制御導波路101bの光軸方向の長さ(Lt)は凡そ60μmである。即ち、Lt/Laが1より大きくなるように形成されている。素子全体の光導波路101は光軸方向の全長が凡そ570μmである。この実施形態では、素子の両端面に利得導波路101aが配置されるようにして、光出力が低下しないようにしている。
回折格子102の周期Λa、Λtは凡そ240nmであり、回折格子層2の凸部2a、2cの光軸方向の長さΛma、Λmtは凡そ120nmであり、凹部2b、2dの光軸方向の長さは凡そ120nmである。これらは、利得領域及び波長制御領域を通して同じになっている。これにより、発振波長が1.55μm帯になるようにしている。
また、利得用回折格子層の凸部2aの厚さ(dg1a)は、凡そ100nmであり、同じく凹部2bの厚さ(dg2a)は、凡そ33nmである。即ち、凸部2aの頂上から凹部2bの底までの深さ(dg1a-dg2a)は凡そ66nmである。一方、波長制御用回折格子層の凸部2cの厚さ(dg1t)は、凡そ100nmであり、同じく凹部2dの厚さ(dg2t)は、凡そ33nmである。即ち、凸部2cの頂上から凹部2dの底までの深さ(dg1t-dg2t)は、凡そ66nmである。
さらに、回折格子層2の光軸方向の全長の中心部にλ/4シフト部を備えている。
また、図5(a)に示すように、基板1の裏面には共通のN側電極(共通電極)8が形成され、利得領域と波長制御領域の第2のコンタクト層7の表面にはそれぞれ、相互に分離されたP側電極9a、9bが形成されている。両P側電極9a、9bは、図6に示すように、対向して配置されたくし型電極を構成する。利得領域のP側電極(利得電極)9aは、利得領域の電極と、この利得領域の電極同士を接続する接続部とで構成され、波長制御領域のP側電極(波長制御電極)9bは、波長制御領域の電極と、この波長制御領域の電極同士を接続する接続部とで構成される。波長制御領域のP側電極9bに流す電流を調整することにより、波長制御導波路101bの等価屈折率(nteff)を変化させて、発振モードの波長(λB)を調整することができるようになっている。
次に、図5(a)、(b)及び図6を参照して上記TDA−DFBレーザの製造方法について説明する。
n型InP基板1上に、回折格子層2となる膜厚凡そ100nmのInGaAsP膜を堆積する。
次に、InGaAsP膜上にレジスト膜を形成し、干渉露光法又は電子ビーム露光法などにより、InGaAsP膜全体にわたってレジスト膜に回折格子の潜像を形成する。続いて、レジスト膜を現像し、回折格子用マスクを形成する。回折格子用マスクは光軸方向の長さ120nm、光軸方向に交差する方向の幅凡そ100μmの短冊状のレジスト膜が間隔凡そ120nmをおいて光軸方向に繰り返し配置された構成を有する。
次いで、この回折格子用マスクに基づき、InGaAsP膜全体にわたってエッチングし、深さ凡そ33nmの波長制御用回折格子層の凹部2dを形成する。
次に、波長制御領域を新たなレジストマスクで覆った後、このレジストマスク及び回折格子用マスクに基づき、InGaAsP膜をエッチングし、深さ凡そ66nmの利得用回折格子層の凹部2bを形成する。これにより、利得用回折格子層と波長制御用回折格子層とが交互に周期的に配置された回折格子層2が形成される。
次いで、レジストマスク及び回折格子用マスクを除去した後、回折格子層2の上にバッファ層3となる膜厚数百nmのn型InP膜を堆積する。これにより、回折格子層2の凹部2b、2dにバッファ層3の一部が埋め込まれて、屈折率が周期的に変化する利得用回折格子102a及び波長制御用回折格子102bが形成される。
次に、バンドギャップ波長が1.55μm帯の歪MQW層を有する活性層導波路4aをInGaAsPにより形成する。なお、歪MQW層は上記説明した構造を有する。
次いで、活性層導波路4aをパターニングし、光軸方向に延びるような帯状に残す。さらに、帯状の活性層導波路4aをパターニングして、両端面に凡そ30μmの活性層導波路4aを残すとともに、それらの間に凡そ60μmの間隔をおいて凡そ30μmの長さで光軸方向に一列に並ぶように活性層導波路4aを残す。
次に、活性層導波路4aの除去跡に波長制御導波路101bのコア層4bとなるInGaAsP膜を埋め込む。これにより、光軸方向の長さ凡そ30μmの利得領域の活性層導波路4aと、光軸方向の長さ凡そ60μmの波長制御領域のコア層4bとが光軸方向に交互に配置された構造が形成される。
次いで、活性層導波路4a及びコア層4bの上に、p型InPからなるクラッド層5と、p型InGaAsPからなる第1のコンタクト層6と、p型InGaAsからなる第2のコンタクト層7とを下層から順に堆積する。
次に、基板1裏面にAuGe/Au膜を形成し、N側電極(共通電極)8を形成する。
次いで、コンタクト層7の表面にTi/Pt/Au膜を形成した後、パターニングし、P側電極9a、9bを形成する。P側電極9a、9bは、上記した対向するくし型電極で構成される。
以上のようにして、第1実施例の波長可変レーザの主な構造が完成する。
以上のように、第1の実施形態によれば、波長制御導波路101bの光軸方向の長さ(Lt)を利得導波路101aの光軸方向の長さ(La)よりも長くしているので、波長可変範囲を大きくとることができる。
しかも、Lt/Laに応じて、波長制御用回折格子102bからのフィードバック量を、利得用回折格子102aからのフィードバック量より小さくならないような範囲内で、小さくしている。これにより、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善されて、発振モードに対して副モードがより対称に立つようになる。したがって、副モードの抑圧比(SMSR)が改善され、これにより、安定な単一モード発振を得ることができる。
(第2の実施形態)
図7(a)は、本発明の第2の実施形態のTDA−DFBレーザを示す断面図である。図7(b)は、回折格子の拡大断面図である。
第2の実施形態において、第1の実施の形態と異なるところは、一対の利得導波路103aと波長制御導波路103bにおいて、波長制御導波路103bの長さ(Lt)を利得導波路103aの長さ(La)よりも短くし、その比率(A=Lt/La)が1より小さくなるように形成されている点である。
さらに、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善されるように、比率(A=Lt/La)に応じて、利得用回折格子104aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子104bの結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1より大きく、かつ1/Aより小さくなるように、波長制御用回折格子104b及び利得用回折格子104aのうち何れか一の或いは両方の結合係数(κa、κt)を調整している点である。言い換えれば、Lt/Laに応じて、波長制御用回折格子104bからのフィードバック量が大きくなるように、かつ波長制御用回折格子104bからのフィードバック量が利得用回折格子104aからのフィードバック量よりも大きくならないような範囲で、結合係数(κa、κt)を調整している点である。
これを達成するために、この実施の形態では、第1の実施形態とは逆に、(dg1a-dg2a)<(dg1t-dg2t)となる範囲で、(dg1a-dg2a)、(dg1t-dg2t)のうち少なくとも何れか一或いは両方を調整する。
以下、図7(a)、(b)を参照して第2実施形態のTDA−DFBレーザの具体的な構成例について説明する。
第2実施形態のTDA−DFBレーザにおいて、図7(a)、(b)に示すように、一つの利得導波路103aの光軸方向の長さ(La)は凡そ60μmであり、一つの波長制御導波路103bの光軸方向の長さ(Lt)は凡そ30μmである。即ち、Lt/Laが1より小さくなるように形成されている。
なお、図7(a)中、11aは図5(a)と同じ構成の活性層導波路を示し、11bは図5(a)と同じ構成のコア層を示す。利得導波路103aは、バッファ層3と活性層導波路11aとクラッド層5とで構成され、波長制御導波路103bはバッファ層3とコア層11aとクラッド層5とで構成される。
さらに、利得用回折格子層の凸部10aの厚さ(dg1a)は、凡そ100nmであり、同じく凹部10bの厚さ(dg2a)は、凡そ33nmである。したがって、凸部10aの頂上から凹部10bの底までの深さ(dg1a-dg2a)は、凡そ66nmである。
一方、波長制御用回折格子層の凸部10cの厚さ(dg1t)は、100nmであり、同じく凹部10dの厚さ(dg2t)は、凡そ66nmである。したがって、凸部10cの頂上から凹部10dの底までの深さ(dg1t-dg2t)は、凡そ33nmである。
なお、利得用回折格子104aは、利得導波路103aに沿う回折格子層10とバッファ層3とで構成され、波長制御用回折格子層104bは、波長制御導波路103bに沿う回折格子層10とバッファ層3とで構成される。
上記の構成のTDA−DFBレーザは、第1実施例の工程を上記寸法に適合するように変更することを除き、第1実施例と同じような工程を経て作製することができる。
以上のように、第2の実施形態によれば、Lt/Laに応じて、制御用回折格子104bからのフィードバック量が利得用回折格子104aからのフィードバック量よりも大きくならないような範囲で、波長制御用回折格子104bからのフィードバック量を大きくしているため、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善される。これにより、副モードの抑圧比(SMSR)を大きくとることができるので、安定な単一モード発振を得ることができる。
なお、第2の実施形態によれば、波長制御導波路103bの光軸方向の長さを利得導波路103aの光軸方向の長さよりも短くしているので、波長可変範囲は狭くなるけれども、波長可変レーザに適切な波長可変範囲を付与することができる。
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態のTDA−DFBレーザを示す模式図である。
第3の実施形態においては、回折格子は高い屈折率を持つ半導体層12a、12cが低い屈折率を持つ半導体層12b、12dを挟んで相互に間隔を置いて周期的に配列されてなり、利得導波路の光軸方向の長さ(La)に対する波長制御導波路の光軸方向の長さ(Lt)の比(A=Lt/La)に応じて、回折格子の結合係数(κa、κt)を調整するために、波長制御用回折格子105bでの高い屈折率を持つ半導体層の厚さ(dg1t)を、利得用回折格子105aでのそれ(dg1a)と異ならせている。
その他の構成は第1の実施形態と同じになっている。
利得導波路と波長制御導波路は、第1の実施形態にしたがって、波長制御導波路の長さ(Lt)が利得導波路の長さ(La)よりも長く、即ち、その比率(A=Lt/La)が1より大きくなるように形成されている。
この場合、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善されるように、Lt/La比に応じて、利得用回折格子105aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子105bの結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1/Aより大きく、かつ1より小さくなるように、波長制御用回折格子105b及び利得用回折格子105aのうち何れか一の或いは両方の結合係数(κa、κt)を調整する。
それを達成するために、第3の実施形態においては、回折格子の厚さを調整するのであるが、高い屈折率を持つ半導体層12a、12cを、第1の実施形態でいう凸部2a、2cに対応させ、相互の間隔12b、12dを、同じく凹部2b、2dの厚さdg2a=dg2t=0としたときの凹部2b、2dに対応させると、第1の実施形態の構成と等価になる。このため、具体的には、利得用回折格子層12aの厚さ(dg1a)に対して波長制御用回折格子層12bの厚さ(dg1t)が薄くなる(dg1t<dg1a)ような範囲でdg1t或いはdg1aを調整する。
以下、図8を参照して第3の実施形態のTDA−DFBレーザの具体的な構成例について説明する。
第3の実施形態のTDA−DFBレーザにおいては、図8に示すように、利得用回折格子105aの高い屈折率を持つ半導体層12aの厚さ(dg1a)が凡そ100nmであり、波長制御用回折格子105bの高い屈折率を持つ半導体層12cの厚さ(dg1t)が凡そ50nmである。選択成長などの技術を用いて利得導波路部と波長制御導波路部の高い屈折率を持つ半導体層の厚さを変化させる。
また、高い屈折率を持つ半導体層の光軸方向の長さ(Λma、Λmt)は凡そ120nm、高い屈折率を持つ半導体層間の相互の間隔は凡そ120nmとなっている。したがって、回折格子の周期Λa、Λtは凡そ240nmであり、デューティ比Λma/Λa、Λmt/Λtは1/2である。
また、利得導波路の光軸方向の長さ(La)は凡そ30μm、波長制御導波路の光軸方向の長さ(Lt)は凡そ60μmである。したがって、その周期は凡そ90μmである。
その他の構成は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
次に、図5(a)、(b)、及び図8を参照して上記TDA−DFBレーザの製造方法、主に回折格子の作製方法について説明する。
n型InP基板1上に、回折格子層12となるInGaAsP膜を堆積する。この際、選択成長などの技術を用いて、利得導波路部の回折格子層は厚さ100nm、波長制御導波路部の回折格子層の厚さを50nmとする。
次いで、レジスト膜を形成した後、レジスト膜に対して干渉露光法又は電子ビーム露光法などにより露光し、InGaAsP膜全体にわたってレジスト膜に回折格子の潜像を形成する。続いて、レジスト膜を現像し、回折格子用マスクを形成する。この回折格子用マスクでは、上記した高い屈折率を持つ半導体層12a、12cの光軸方向の長さ(Λma、Λmt)に相当する同じ寸法の短冊状のレジスト膜が間隔をおいて光軸方向に繰り返し配置されている。
次いで、この回折格子用マスクに基づき、InGaAsP膜全体にわたってエッチングし、回折格子用マスクで覆われていない領域のInGaAsP膜を完全に除去する。
これにより、波長制御領域では膜厚凡そ50nmのInGaAsP膜が回折格子層12として形成され、利得領域では膜厚凡そ100nmのInGaAsP膜が回折格子層12として形成される。
次に、レジスト膜を除去した後、回折格子層12の上にバッファ層3となる膜厚凡そ数百nmのn型InP膜を堆積する。これにより、回折格子層12の凹部12b、12dにバッファ層3の一部が埋め込まれて、屈折率が周期的に変化する利得用回折格子105a及び波長制御用回折格子105bが形成される。
以下、第1実施例と同様にして、バッファ層3の上に、活性層導波路4a及びコア層4bと、p型InPからなるクラッド層5と、p型InGaAsPからなるコンタクト層6と、p型InGaAsからなるコンタクト層7とを堆積する。次いで、N側電極8、P側電極9a、9bとを形成する。
以上のようにして、第3実施例の波長可変レーザの主な構造が完成する。
以上のような第3の実施形態によれば、波長制御導波路の長さ(Lt)が利得導波路の長さ(La)よりも長くなるように形成された一対の利得導波路と波長制御導波路において、利得用回折格子105aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子105bの結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1/Aより大きく、かつ1より小さくなるように、回折格子の厚さdg1a,dg1tを調整している。
これにより、Lt/Laに応じて、波長制御用回折格子105bからのフィードバック量が利得用回折格子105aからのフィードバック量よりも小さくならないような範囲で、波長制御用回折格子105bからのフィードバック量を小さくすることができるため、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善され、発振モードに対して副モードがより対称に立つようになる。したがって、副モードの抑圧比(SMSR)を大きくとることができ、それにより、安定な単一モード発振を得ることができる。
なお、この実施形態において、第2の実施形態のように、一対の利得導波路と波長制御導波路が、波長制御導波路の長さ(Lt)を利得導波路の長さ(La)よりも短くし、その比率(A=Lt/La)が1より小さくなるように形成されてもよい。この場合、回折格子の結合係数の比率(B=κt/κa)が1より大きく、かつ1/Aより小さくなるように、dg1a<dg1tの範囲で、高い屈折率を持つ半導体層の厚さ(dg1a、dg1t)を調整する。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態のTDA−DFBレーザを示す模式図である。
第4の実施形態において、第1の実施形態と異なるところは、利得導波路の光軸方向の長さ(La)に対する波長制御導波路の光軸方向の長さ(Lt)の比に応じて、回折格子の結合係数(κa、κt)を調整するため、利得用回折格子106aと波長制御用回折格子106bとで、回折格子のデューティ比(凸部の光軸方向の長さΛma、Λmt/周期Λa、Λt)を異ならせている点である。他の構成は、第1の実施形態と同じである。
この場合、回折格子のデューティ比を調整するのであるが、第1の実施形態では、一対の利得導波路と波長制御導波路は、波長制御導波路の長さ(Lt)が利得導波路の長さ(La)よりも長く、その比率(A=Lt/La)が1より大きくなるように形成されている。このため、具体的には、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善されるように、Lt/La比に応じて、利得用回折格子106aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子106bの結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1/Aより大きく、かつ1より小さくなるように、回折格子のデューティ比(Λma/Λa、Λmt/Λt)を調整する。これに該当する回折格子のデューティ比の調整範囲は、利得用回折格子106aのデューティ比Λma/Λaに対して波長制御用回折格子106bのデューティ比Λmt/Λtが小さくなるような範囲である。
なお、第4の実施形態では、第1の実施形態と同じく、全体の回折格子を通して、回折格子の周期Λa、Λt、及び凸部13a、13cの頂上から凹部13b、13dの底までの深さ((dg1a-dg2a)、(dg1t-dg2t))は等しくなっている。
以下、図9を参照して第4の実施形態のTDA−DFBレーザの具体的な構成例について説明する。
第4の実施形態のTDA−DFBレーザにおいては、図9に示すように、利得用回折格子106aにおいて、凸部13aの光軸方向の長さΛmaが凡そ120nmであり、凹部13bの光軸方向の長さが凡そ120nmであり、したがって、デューティ比Λma/Λaが凡そ1/2となっている。
一方、波長制御用回折格子106bにおいて、凸部13cの光軸方向の長さΛmtが凡そ60nmであり、凹部106dの光軸方向の長さが凡そ180nmであり、したがって、デューティ比Λmt/Λtが凡そ0.25となっている。
次に、図5(a)、(b)及び図9を参照して上記TDA−DFBレーザの製造方法、主に回折格子の作製方法について説明する。
n型InP基板1上に、回折格子層13となる膜厚凡そ100nmのInGaAsP膜を堆積する。
次に、レジスト膜を形成し、電子ビーム露光法などにより、InGaAsP膜全体にわたってレジスト膜に回折格子の潜像を形成する。この潜像は、利得領域において長さ凡そ120nm、幅凡そ100μmの露光光照射領域が間隔を置いて繰り返し形成され、波長制御領域において長さ凡そ60nm、幅凡そ100μmの露光光照射領域が間隔を置いて繰り返し形成されている。以上のようなマスクパターンの太さの変化は例えば電子ビームの露光量の調整などで行う。
次いで、この回折格子用マスクに基づき、InGaAsP膜全体にわたってエッチングし、深さ凡そ50nmの凹部13b、13dを形成する。
次に、回折格子層13の上にバッファ層3となる膜厚凡そ数百nmのn型InP膜を堆積する。これにより、回折格子層13の凹部13b、13dにバッファ層3の一部が埋め込まれて、屈折率が周期的に変化する利得用回折格子106a及び波長制御用回折格子106bが形成される。
以下、第1実施例と同様にして、バッファ層3の上に、活性層導波路4a及びコア層4bと、p型InPからなるクラッド層5と、p型InGaAsPからなるコンタクト層6と、p型InGaAsからなるコンタクト層7とを堆積する。次いで、N側電極8、P側電極9a、9bとを形成する。以上のようにして、第4実施例の波長可変レーザの主な構造が完成する。
以上のように、第4の実施形態によれば、波長制御導波路の長さ(Lt)が利得導波路の長さ(La)よりも長くなるように形成された一対の利得導波路と波長制御導波路において、利得用回折格子106aの結合係数(κa)に対する波長制御用回折格子106bの結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1/Aより大きく、かつ1より小さくなるように、利得用回折格子106aのデューティ比Λma/Λaに対して波長制御用回折格子106bのデューティ比Λmt/Λtが小さくなるような範囲で回折格子のデューティ比を調整している。
これにより、Lt/Laに応じて、波長制御用回折格子106bからのフィードバック量が利得用回折格子106aからのフィードバック量より小さくならないような範囲で、波長制御用回折格子106bからのフィードバック量を小さくすることができるため、発振モードの反射スペクトルの対称性が改善されて、発振モードに対して副モードがより対称に立つようになる。したがって、副モードの抑圧比(SMSR)が改善され、それにより、安定な単一モード発振を得ることができる。
なお、この実施形態において、第2の実施形態のように、一対の利得導波路と波長制御導波路において、波長制御導波路の長さ(Lt)を利得導波路の長さ(La)よりも短くし、その比率(A=Lt/La)が1より小さくなるように形成されてもよい。
また、回折格子のデューティ比Λma/Λa、Λmt/Λtを調整する一方で、波長制御用回折格子106bと利得用回折格子106aとで、凸部13a、13cの頂上から凹部13b、13dの底までの深さ(dg1a-dg2a)、(dg1t-dg2t)を等しくしているが、回折格子のデューティ比Λma/Λa、Λmt/Λtを調整するとともに、凸部13a、13cの頂上から凹部13b、13dの底までの深さ(dg1a-dg2a)、(dg1t-dg2t)、或いは第3の実施形態にいう回折格子の厚さdg1a、dg1tを調整してもよい。
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)光軸方向に交互に配置された、利得を発生しうる利得導波路と電流注入によって発振波長を制御しうる波長制御導波路とを有する光導波路と、
前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられた回折格子とを備え、
一対の前記利得導波路及び波長制御導波路において、それらの光軸方向の長さが相互に異なり、かつ前記光軸方向の長さに応じて、対応する前記回折格子の結合係数が調整されていることを特徴とする波長可変レーザ。
(付記2)前記利得導波路の長さ(La)に対する前記波長制御導波路の長さ(Lt)の比率(A=Lt/La)が1より大きく、かつ、前記利得導波路に沿う回折格子の結合係数(κa)に対する前記波長制御領域に沿う回折格子の結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1/Aより大きく、かつ1より小さいことを特徴とする付記1に記載の波長可変レーザ。
(付記3)前記利得導波路の長さ(La)に対する前記波長制御導波路の長さ(Lt)の比率(A=Lt/La)が1より小さく、かつ、前記利得導波路に沿う回折格子の結合係数(κa)に対する前記波長制御導波路に沿う回折格子の結合係数(κt)の比率(B=κt/κa)が1より大きく、かつ1/Aより小さいことを特徴とする付記1に記載の波長可変レーザ。
(付記4)前記利得導波路に沿う部分と前記波長制御導波路に沿う部分とで、前記回折格子の深さが異なることを特徴とする請求項1又は2の何れか一に記載の波長可変レーザ。
(付記5)前記利得導波路に沿う部分と前記波長制御導波路に沿う部分とで、前記回折格子層の厚さが異なることを特徴とする請求項1又は2の何れか一に記載の波長可変レーザ。
(付記6)前記利得導波路に沿う部分と前記波長制御導波路に沿う部分とで、前記回折格子のデューティ比が異なることを特徴とする請求項1又は2の何れか一に記載の波長可変レーザ。
(付記7)前記回折格子は光軸方向の中心位置にλ/4位相シフト部を備えていることを特徴とする付記1乃至6の何れか一に記載の波長可変レーザ。