JP2007255206A - エンジンの残留ガス量測定装置 - Google Patents

エンジンの残留ガス量測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】演算負荷の少ない比較的に簡易、かつ実用的な方法により残留ガス量を測定する。
【解決手段】吸気弁及び排気弁のオーバーラップ期間を前半と後半とに分け、各期間PRDFST,PRDLTRについて排気弁通過ガス量dMexの近似特性線L1,L2を算出する。好ましい形態において、残留ガス量Megrは、算出した近似特性線L1,L2を基礎とする幾何学的な計算により排気の吹出ガス量Mex1及び吹返ガス量Mex2を算出し、算出したMex1,Mex2をIVO時筒内ガス量Mcivoに加算して算出する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、エンジンの残留ガス量測定装置に関し、詳細には、吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンにおいて、排気行程後の筒内に残留する排気の量を正確、かつ簡易に測定して、より精度の高いエンジン制御を実現するための技術に関する。
ガソリンエンジンでは、吸気通路の導入部にスロットル弁が設けられ、このスロットル弁を操作して吸入空気量を制御するのが一般的である。
これに対し、加速時等における過渡応答性を向上させるための技術として、スロットル弁の操作による方法に代え、吸気弁の作動特性の変更により吸入空気量を制御するものが知られている。このものでは、吸気弁の作動角を拡大させたり、あるいは作動角の中心位相を進角させることで、吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合うオーバーラップ期間が形成される。このオーバーラップ期間において、吸気弁の開弁に伴い筒内から吸気通路に向けて排気の吹き出しが生じる一方、この吸気通路に向けた排気の吹き出しにより筒内圧力が低下すると、ピストンの下降による筒内容積拡大の影響も相俟って、排気通路に一旦吹き出した排気の筒内への吹き返しが生じる。この吹き出し(吸気通路へ吹き出した排気は、吸気行程中に筒内に吸い戻される。)及び吹き返しにより筒内に還流され、次のサイクルに持ち越される排気の量(以下「残留ガス量」という。)は、筒内に新たに吸入される空気の量に対して制御上無視することができないほどのものであり、高精度なエンジン制御を実現するうえでは、これを正確に評価することが必要とされる。
残留ガス量を考慮したエンジン制御として、新気割合を採用した次のような技術が知られている。すなわち、オーバーラップ期間の長さを算出するとともに、算出した長さに基づいて新気割合を算出し、この新気割合により吸入空気量を補正するものである(特許文献1)。
特開2001−050091号公報(段落番号0029)
しかしながら、新気割合を採用する上記の技術には、次のような問題がある。すなわち、この技術は、オーバーラップ期間の長さと残留ガス量との関係を新気割合により全体的な傾向として把握し、エンジン制御に反映させるものに過ぎない。このため、より精度の高いエンジン制御を実現するうえで、残留ガス量が充分な精度で反映されるとは言い難いことである。
これに対し、吸気弁又は排気弁を通過するガスの流量を夫々クランク角毎に算出するとともに、算出した流量をオーバーラップ期間全体に亘り積算する方法も考えられるが、この方法では、残留ガス量の算出に要する演算負荷が大きく、電子制御ユニットの処理能力等の制約のもとでこれを実現するのは、実用上困難である。
以上の実情に鑑み、本発明は、より精度の高いエンジン制御の実現のため、演算負荷の少ない比較的に簡易、かつ実用的な方法により残留ガス量を所要の精度で測定することを目的とする。
本発明は、エンジンの残留ガス量測定装置を提供するものである。
本発明に係る装置は、吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンに適用されるものであり、排気弁通過ガス量の特性を近似的に表す複数の特性線(すなわち、近似特性線)を算出し、算出した近似特性線を基礎とした計算により残留ガス量を測定する。
本発明に係る装置は、好ましい形態において、各弁の弁開期間が重なり合う期間(すなわち、オーバーラップ期間)の前半における複数の時期、及びこれらの時期における排気弁通過ガス量に基づいて、この前半の期間に排気弁を通過するガスの流量に関する第1の近似特性線を算出するとともに、オーバーラップ期間の後半における複数の時期、及びこれらの時期における排気弁通過ガス量に基づいて、この後半の期間に排気弁を通過するガスの流量に関する第2の近似特性線を算出し、算出した第1の近似特性線及び第2の近似特性線に基づいて残留ガス量を算出する。
本発明は、筒内ガス量の単位時間当たりの変化量が吸気弁又は排気弁を通過するガスの流量の合計に等しいこと、ならびに筒内から吸気通路に吹き出した排気が吸気行程中に筒内に吸い戻される(このため、サイクル全体として考えれば、筒内と吸気通路との間における排気の出入りは、実質的にはないとみなし得る。)という、ガスの出入りの実際の物理現象に即したものである。
本発明によれば、オーバーラップ期間を前半及び後半の期間に分け、排気弁を通過するガスの流量を、前半の期間については第1の近似特性線により、後半の期間については第2の近似特性線により夫々近似したことで、これらの近似特性線に基づいて残留ガス量(又は内部還流ガス量)を幾何学的に算出することが可能となる。このため、本発明によれば、近似特性線の算出及び算出した近似特性線を基礎とする幾何学的な計算により残留ガス量を測定することができ、残留ガス量の算出手順を簡易なものとして、少ない演算負荷で高精度なエンジン制御を実現することが可能となる。
本発明がオーバーラップ期間を前半及び後半に分け、それぞれの期間について排気弁通過ガス量を近似するのは、次のような理由による。すなわち、排気ポートの開口面積が小さくなるオーバーラップ期間の後半において、排気弁通過ガス量の特性がオーバーラップ期間の前半におけるもの(クランク角に対して増加する関数により表される。)から切り換わり、オーバーラップ期間の中間の時期を境に筒内と排気通路との間におけるガスの出入りが収束に向かうからである。測定した残留ガス量は、吸入空気量の調整又は点火時期の設定等、エンジン制御の基礎情報として広く適用することが可能であり、高精度なエンジン制御の実現に貢献する。
なお、本発明において、前半及び後半の期間は、オーバーラップ中の時期を区別するための概念的なものであり、オーバーラップ期間を必ずしも等分するものではない。
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る火花点火エンジン(以下、単に「エンジン」という。)1の構成を示している。
エンジン1の吸気通路101には、スロットル弁102が設置されている。このスロットル弁102により吸気通路101に導入される空気の量を制御し、吸入空気量を制御することも可能であるが、本実施形態では、吸入空気量の制御を主に、後述する吸気弁104の作動特性の変更によることとし、スロットル弁102は、この作動特性の変更による制御の前提となる吸気圧力の制御に採用する。また、吸気通路101には、燃料供給用のインジェクタ103が設置されており、このインジェクタ103により、制御された吸入空気量のもとで所定の目標当量比を達成するのに必要な量の燃料が噴射される。吸気通路101のポート部101aには、ポペット型の吸気弁104が設置されている。この吸気弁104は、その上方に配設された動弁装置(以下「吸気動弁装置」という。)105により駆動され、この吸気弁104の弁開期間に吸入空気及び燃料の混合気が筒内に導入される。本実施形態では、吸気動弁装置105により、吸気弁104の作動角(以下「吸気作動角」という。)及びリフト量、ならびに吸気作動角の中心位相(以下「作動中心角」という。)を連続的に変更することができる。
エンジン本体において、シリンダヘッドHには、燃焼室の上部略中央に臨ませて点火プラグ106が設置されている。筒内に導入された混合気に対し、この点火プラグ106により点火が行われる。
燃焼後、発生した排気は、排気通路107に送り出される。排気通路107のポート部107aには、ポペット型の排気弁108が設置されている。この排気弁108は、その上方に配設された他の動弁装置109により駆動され、この排気弁108の弁開期間に排気の送出が行われる。なお、本実施形態では、吸気弁104とは異なり、排気弁108の作動角、リフト量及び作動角の中心位相を一定のものとしているが、吸気動弁装置105と同様な構成のもの又は他の公知の可変動弁装置を採用して、作動角等を変更可能に構成してもよい。
吸気動弁装置105及びスロットル弁102、インジェクタ103、ならびに点火プラグ106の動作は、電子制御ユニットとして構成されるエンジンコントローラ(以下「ECU」という。)201により制御される。ECU201には、アクセルペダルの踏込量(アクセル開度APOを示し、以下「アクセル操作量」という。)を検出するアクセルセンサ211の検出信号、及びクランク角センサ212からの単位クランク角毎及び基準クランク角毎の信号(ECU201は、これに基づいてエンジン回転数NEを算出する。)が入力されるとともに、吸気マニホールド内の圧力(以下「吸気圧力」という。)Pinを検出する吸気圧力センサ213の検出信号、排気圧力Pexを検出する排気圧力センサ214の検出信号、排気温度Texを検出する排気温度センサ215の検出信号、及びエンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ216の検出信号等が入力される。本実施形態において、排気圧力センサ214及び排気温度センサ215は、図示しない触媒の上流(たとえば、その入口付近)に設置される。ECU201は、入力した各種の信号をもとに、吸気動弁装置105により吸気作動角及び作動中心角を、スロットル弁102によりスロットル開度を夫々制御するとともに、インジェクタ103の燃料噴射量及び点火プラグ106の点火時期を制御する。なお、本実施形態では、後述するように、筒内から吸気通路101への吹き出し及び排気通路107から筒内への吹き返しにより次のサイクルに持ち越される排気の量(すなわち、残留ガス量)を測定する機能を、ECU201に持たせている。ECU201は、吸気動弁装置105により制御された作動特性のもと、実際の残留ガス量Megrを測定するとともに、測定したMegrをエンジン制御に反映させる。
図2は、本実施形態に係る吸気動弁装置105の構成を示している。
この吸気動弁装置105は、作動角変更機構Aと中心角変更機構Bとを含んで構成される。
吸気弁104の上方に駆動軸151が気筒列方向に延在させて設置されており、この駆動軸151に揺動カム152が相対回転可能に取り付けられている。この揺動カム152は、吸気弁104のリフタ141と当接し、このリフタ141を介して吸気弁104を上下に駆動する。作動角変更機構Aは、駆動軸151と揺動カム152とを繋ぐ後述するリンクの姿勢を変化させて、吸気作動角を変更するものである。他方、中心角変更機構Bは、駆動軸151のクランクシャフト(図示せず。)に対する位相を変化させることで、作動中心角を変更するものである。
ここで、前者の作動角変更機構Aの作動原理について、図3を参照して説明する。
作動角変更機構Aは、駆動軸151に固定された円形の偏心駆動カム153と、この偏心駆動カム153に相対回転可能に外嵌するリング状リンク154と、駆動軸151と平行に配設された制御軸155と、この制御軸155に固定された円形の偏心制御カム156と、この偏心制御カム156に相対回転可能に外嵌し、一端でリング状リンク154と連結するロッカーアーム157と、このロッカーアーム157を揺動カム152と連結するロッド状リンク158とを含んで構成される。制御軸155は、電磁アクチュエータ161がギア列162を駆動することにより回転する。
この作動角変更機構Aの動作は、次のようである。クランクシャフトに連動して駆動軸151が回転すると、これに伴うリング状リンク154の往復動作に併せ、ロッカーアーム157が偏心制御カム156の軸心周りで揺動し、ロッド状リンク158により揺動カム152を駆動する。また、電磁アクチュエータ161により制御軸155を回転させることで、偏心制御カム156の軸心位置が変化し、ロッカーアーム157の回転中心が変位して、吸気作動角(及びリフト量)が連続的に変化する。このため、電磁アクチュエータ161により制御軸155を操作することで、吸気作動角を連続的に変更することができる。
なお、中心角変更機構Bには、駆動軸151のカムスプロケットに対する位相を変化させ得る、公知のいかなる可変動弁装置が採用されてもよい。本実施形態では、カムスプロケットと駆動軸151との間に中間ギアを介装して、これらの間にヘリカルギア列を形成し、中間ギアを前後させることにより駆動軸151の相対位相を変化させるものを採用している。
以下、本実施形態に係るECU201の構成及びこれが行う制御(主に、残留ガス量Megrの測定)の内容について説明する。
ECU201が行う制御は、簡単には次のようである。ECU201は、アクセル操作量APO及びエンジン回転数NE等の運転条件に基づいてエンジン1が発生すべき目標トルクtTeを演算及び設定するとともに、設定したtTeに基づいて吸気動弁装置105及びスロットル弁102を作動させる。すなわち、ECU201は、目標トルクtTeを達成するのに必要な吸入空気量として目標新気量tQcylを算出するとともに、算出したtQcylに基づいて吸気作動角及び作動中心角の各目標値を設定し、吸気動弁装置105を作動させる。目標新気量tQcylと実際の吸入空気量との間に生じた乖離は、スロットル弁102の操作により吸気圧力を増減させて解消する。また、ECU201は、吸入空気量の制御に併せて残留ガス量Megrを測定し、これをエンジン制御に反映させる。
次に、ECU201のうち残留ガス量Megrの測定に関する部分の構成及びその動作について説明する。
図4は、オーバーラップ期間PRDOL前後に亘る吸気弁104及び排気弁108のリフト量VLIFTi,VLIFTe、筒内圧力Pcyl、ならびに吸気弁104又は排気弁108を通過するガスの流量(すなわち、吸気弁通過ガス量dMin、排気弁通過ガス量dMex)の変化を、クランク角θとの関係で示している。
図4を参照して、筒内におけるガスの出入りについて説明する。本実施形態では、吸入空気量の制御を主に吸気弁104の作動特性の変更によることとしており、加速時等の高負荷域での運転において、吸気作動角が拡大されるとともに、作動中心角が進角される。これにより吸気弁104及び排気弁108の弁開期間が互いに重なり合うオーバーラップ期間PRDOLが形成され、このオーバーラップ期間PRDOLにおいて、筒内から吸気通路101への排気の吹き出し、及び排気通路107から筒内への排気の吹き返しが生じる。すなわち、本実施形態では、吸気弁開時期IVOにおいて、吸気弁104の開弁に伴い筒内から吸気通路101に向けて排気の吹き出しが生じる。この吸気通路101への排気の吹き出しは、筒内圧力Pcylが低下して、これが吸気圧力Pinに一致するまで継続される。他方、吸気弁開時期IVOの直後は、ピストンが上昇過程にあるため、筒内から排気通路107への排気の送出が継続される。吸気通路101への排気の吹き出しにより筒内圧力Pcylが低下するため、吸気弁開後の排気弁通過ガス量dMex(排気通路107へ向けた吹き出しのため、マイナスの値を示す。)は、次第に減少する。筒内圧力Pcylが排気圧力Pexにまで低下し、更にこれを下回ると、上死点後におけるピストンの下降による影響も相俟って、排気通路107に一旦送り出された排気の筒内への吹き返しが生じる。このような排気の吹き出し(吸気通路101へ吹き出した排気は、吸気行程中に筒内に吸い戻される。)及び吹き返しにより、排気の一部が次のサイクルに持ち越されることとなる。持ち越される排気の量、すなわち、残留ガス量の正確な評価が高精度なエンジン制御を実現するうえで必要とされることは、既に説明した通りである。
図5は、本実施形態に係る残留ガス量Megrの測定方法を示しており、図6は、残留ガス量測定部の構成を機能ブロックにより示している。
図5を参照して、残留ガス量Megrの算出手順について説明する。本実施形態では、オーバーラップ期間PRDOL中の排気弁通過ガス量dMexの特性を複数の近似特性線(本実施形態では、直線)L1,L2により近似し、得られた近似特性線L1,L2に基づいて、幾何学的な計算により残留ガス量Megrを測定する。すなわち、オーバーラップ期間PRDOLを前半と後半とに分け、前半の期間PRDFSTにおける排気弁通過ガス量dMexの特性を近似的に表す第1の関数fqefを算出するとともに、後半の期間PRDLTRにおける排気弁通過ガス量dMexの特性を近似的に表す第2の関数fqelを算出する。第1の関数fqef及び第2の関数fqelにより表される各近似特性線L1,L2、ならびに流量=0に相当する図5の横軸(「時間座標軸」に相当する。)が座標上に画成する部分EBDの面積を、オーバーラップ期間PRDOL中に排気通路107から筒内に吹き返す排気の量(すなわち、吹返ガス量)Mex2として算出する。他方、ECU201は、吸気弁開時期IVOの筒内に残存する既燃ガス量Mcivoを算出するとともに、近似特性線L1、図5の横軸及び吸気弁開時期IVOを示す直線が座標上に画成する部分ABFの面積を、オーバーラップ期間PRDOL中に筒内から排気通路107に吹き出す排気の量(すなわち、吹出ガス量)Mex1として算出する。ECU201は、算出した既燃ガス量Mcivo、吹出ガス量Mex1及び吹返ガス量Mex2に基づいて、次式により残留ガス量Megrを算出する。なお、同式において、筒内と吸気通路101との間におけるガスの出入りを考慮していないのは、筒内から吸気通路101へ吹き出した排気が吸気行程中に筒内に吸い戻されることから、実質的にこれを考慮する必要がないことによるものである。
Megr=Mcivo−Mex1+Mex2 ・・・(1)
以下、図6を参照して、残留ガス量測定部の構成及び動作について説明する。
ブロックB501では、吸気弁開時期IVOにおける筒内圧力(以下「IVO時筒内圧力」という。)Pcivoを算出する。IVO時筒内圧力Pcivoは、この残留ガス量測定部において、第1の関数fqefの算出に用いられるほか、吸気弁開時期IVOにおける既燃ガス量Mcivoの算出に用いられる。本実施形態において、IVO時筒内圧力Pcivoは、平均排気圧力Peaveに筒内における圧力脈動に対するトリミング値PCTRMを加算して算出する。なお、平均排気圧力Peave及びトリミング値PCTRMの算出については、後述する。算出したPcivoは、第1の関数fqefを算出するブロックB502へ出力される。
Pcivo=Peave+PCTRM ・・・(2)
ブロックB502では、第1の関数fqefの算出のため、オーバーラップ期間の前半PRDFSTにおける点として予め定められた2つの点A,Bの時期θ1,θ2、及びこれらの時期における排気弁通過ガス量dMexθ1,dMexθ2を算出する。本実施形態では、点A,Bとして、吸気弁開時期IVO(=θ1)の点Aと、排気弁通過ガス量dMexが0となる時期θ2の点Bとを採用する。一方の点Aを吸気弁開時期IVOの点とするのは、吸気弁開時期IVOにおける吸気弁通過ガス量dMinθ1が0であり、筒内ガス量の単位時間当たりの変化量(すなわち、筒内ガス量変化分)dMcylの全てが筒内と排気通路107との間におけるガスの出入りによるものと考えることで、この点Aの時期θ1における排気弁通過ガス量dMexθ1を気体の状態方程式に基づいて容易に算出することができるからである。また、他方の点Bを排気弁通過ガス量dMexが0となる時期θ2の点とするのは、筒内と排気通路107との間におけるガスの出入りがなく、吸気弁通過ガス量dMinと筒内ガス量変化分dMcylとが等しいものとすることで、この時期θ2を容易に特定することができるからである。以下、第1の関数fqefの算出について項目毎に説明する。
(点Aの特定)
点Aは、時期θ1が吸気弁開時期IVOとして予め定められているため、この時期θ1における排気弁通過ガス量dMexθ1を算出することで特定される。dMexθ1の算出は、この時期θ1における吸気弁通過ガス量dMinθ1が0であることから、筒内ガス量変化分dMcylを算出することによる。
筒内に関する状態量について、気体の状態方程式により次の関係が成立する。なお、筒内における既燃ガスの質量をM(=Mcyl)と、筒内圧力をP(=Pcyl)と、筒内容積をV(=Vcyl)と、既燃ガスのガス定数をR(=Rex)と、筒内温度をT(=Tcyl)とする。
M=PV/(RT) ・・・(3)
式(3)の両辺を微分することで、更に次の関係が得られる。
dM/dt=d(PV/RT)/dt
=(V/RT)dP/dt+(P/RT)dV/dt−(VP/TR)dR/dt−(VP/TR)dT/dt ・・・(4)
吸気弁開時期IVOにおいて、筒内温度Tの変化が無視し得るほどであり(dT/dt=0)、かつガス定数Rが一定である(dR/dt=0)と近似することで、式(4)を次のように整理することができる。
dM/dt=(V/RT)Cpa×6Ne+(P/RT)(dV/dθ)dθ/dt
=(V/RT)Cpa×6Ne+(P/RT)(dV/dθ)×6Ne ・・・(5)
dP/dt=(Pcevc−Pcivo)/{(EVC−IVO)×60/360Ne}
=(Pcevc−Pcivo)×6Ne/(EVC−IVO)
=Cpa×6Ne ・・・(6)
Cpa=(Piave−Pcivo)/(EVC−IVO) ・・・(7)
dθ/dt=360Ne/60=6Ne ・・・(8)
式(7)は、筒内圧力Pがオーバーラップ期間PRDOL全体に亘り吸気弁開時期IVOにおける圧力Pcivoから排気弁閉時期EVCにおける圧力Pcevcにまで直線的に低下するとの近似(図4に二点鎖線Pcylaprにより示す。)によるものである。なお、本実施形態では、排気弁閉時期EVCにおける筒内圧力として平均吸気圧力Piaveを採用する。平均吸気圧力Piaveは、吸気圧力センサ213により検出される吸気マニホールド内圧力を1サイクルに亘り平均して得られるものである。
また、筒内容積Vは、クランク角θの関数として式(9)のように表すことができるので、式(5)を次のように変形する。
dV/dθ=Cva×θ+Cvb ・・・(9)
dM/dt=(6Ne/RT){V×Cpa+P(Cva×θ+Cvb)} ・・・(10)
以上から、点A(θ1,dMexθ1)における排気弁通過ガス量dMexθ1は、次式により求められる。なお、吸気弁開時期IVOにおける筒内温度(以下「IVO時筒内温度」という。)Tcivoの算出については、後述する。
(dMex/dt)θ1=(dMcyl/dt)θ1=IVO
=(6Ne/(Rex×Tcivo)){Vcivo×Cpa+Pcivo(Cva×IVO+Cvb)} ・・・(11)
(点Bの特定)
点Bは、時期θ2における排気弁通過ガス量dMexθ2が0であることから、吸気弁通過ガス量dMinと筒内ガス量変化分dMcylとが等しくなる時期θ2を算出することで特定される。
排気弁通過ガス量dMexθ2が0であり、筒内と排気通路107との間におけるガスの出入りがないことから、時期θ2では、筒内圧力Pcylと排気圧力Pexとが等しいものと考えられる(図4)。このため、時期θ2における吸気弁通過ガス量dMinθ2は、次式により求められる。なお、AREAinを吸気ポート101aの開口面積と、既燃ガスの比熱比をγとする。また、RMFは、実際の流量の音速時における流量に対する比である(式(13))。
(dMin/dt)θ2=(AREAin×Pex/√(Rex×Tex))γ1/2(2/(γ+1))(γ+1)/(2(γ−1))×RMF ・・・(12)
RMF=(Pin/Pex)1/γ{(2γ/(γ−1))(1−(Pin/Pex)(γ−1)/γ)}1/2/(γ1/2(2/(γ+1))(γ+1)/(2(γ−1))) ・・・(13)
流量比RMFは、式(13)から明らかなように吸気圧力Pinと排気圧力Pexとの比により定められるものであるので、本実施形態では、エンジン1の運転条件に対応させたRMFのマップ(図8)を予め作成しておき、実際の運転に際してこのマップからの検索によりRMFを算出する。
また、排気圧力Pex、排気温度Tex及び比熱比γが運転条件毎に一定とみなし得ることから、式(12)を次のように整理することができる。
(dMin/dt)θ2=Cai(θ2−IVO)×β ・・・(14)
β=(Pex/√(Rex×Tex))γ1/2(2/(γ+1))(γ+1)/(2(γ−1))×RMF ・・・(15)
AREAin=Cai(θ−IVO) ・・・(16)
なお、式(16)は、吸気弁開時期IVOの直後において、吸気弁104の弁プロフィールをクランク角θの二次関数とみなし得ることによるものである。
筒内ガス量変化分dMcylを表す式(10)と、吸気弁通過ガス量dMinを表す式(14)とにより、(dMcyl/dt)θ2=(dMin/dt)θ2とすることで、点Bの時期θ2を次式により求めることができる。
(6Ne/(Rex×Tex)){Vcylθ2×Cpa+Pex(Cva×θ2+Cvb)}=Cai(θ2−IVO)×β ・・・(17)
式(17)は、(Vcylθ2/(Rex×Tex))×6Ne=χ、(Pex/(Rex×Tex))×6Ne=αとおくことで、次のように整理することができる。
χ×Cpa+α(Cva×θ2+Cvb)=Cai(θ2−IVO)×β ・・・(18)
式(18)がクランク角θに関する二次方程式であることから、これを解くことにより点Bの時期θ2が求められる。なお、θ2の算出において、Texを平均排気温度Teaveと、Pexを平均排気圧力Peave及びIVO時筒内圧力Pcivoの平均圧力(=(Peave+Pcivo)/2)と、Pinを平均吸気圧力Piaveとする。本実施形態では、平均排気温度Teaveとして、排気温度センサ215により検出される排気温度を採用する。
(近似特性線L1の算出)
以上から、近似特性線L1を表す第1の関数fqefは、2つの点A(θ1,dMexθ1)及びB(θ2,0)を通る直線の関数として、式(8)を考慮して次式により求められる。
fqef=dMex/dθ
=((0−dMexIVO)/(θ2−IVO))(θ−θ2)
=−A×θ+A×θ2 ・・・(19)
A=dMexIVO/(θ2−IVO) ・・・(20)
ブロックB503では、第2の関数fqelの算出のため、オーバーラップ期間の後半における点として予め定められた2つの点C,Dの時期θ3,θ4、及びこれらの時期における排気弁通過ガス量dMexθ3,dMexθ4を算出する。本実施形態では、点C,Dとして、この後半の期間PRDLTRにおける所定の時期θ3の点Cと、排気弁閉時期EVCの点Dとを採用する。一方の点Dを排気弁閉時期EVCの点とするのは、排気弁閉時期EVCにおける排気弁通過ガス量dMexθ4が0であり、演算を簡素化し得るからである。他方の点Cは、排気弁通過ガス量dMexの変化にクランク角θに対する線形性が認められる範囲で任意の点を実験又はシミュレーションにより評価して決定する。本実施形態では、点Cとして、エンジン1の運転条件によらずこの線形性が充分な確からしさで認められる点(たとえば、IVOからEVCまでの横軸上の線分を1つの辺として、この辺を3:1に内分する点)を実験により特定し、採用する。なお、排気弁通過ガス量dMexは、排気ポート107aの開口面積が小さい場合にこの開口面積に比例する特性を示すことから、実験等による方法に代え、排気弁通過ガス量dMexの線形性の評価に排気弁108の作動特性を採用することができる。排気弁108の弁プロフィールがクランク角θに対して直線的に減少する領域を特定し、この領域における排気弁閉時期EVC以外の時期の点を、点Cに設定するのである。以下、第2の関数fqelの算出について項目毎に説明する。
(点Cの特定)
点Cは、時期θ3が予め定められているため、この時期θ3における排気弁通過ガス量dMexθ3を算出することで特定される。
本実施形態において、時期θ3は、線分IVO‐EVCを3:1に内分する点として、下式により与えられる。
θ3=EVC−(EVC−IVO)/4 ・・・(21)
時期θ3では、排気ポート107aの開口面積が充分に小さく、排気ポート107aを介する排気の吹き返しが収束に向かうことから、吸気通路101への排気の吹き出しにより筒内圧力Pcylが急速に低下するものと考えられる。このため、時期θ3における筒内圧力Pcylを吸気圧力Pinに等しいものとみなすことができ、この近似のもと、排気弁通過ガス量dMexθ3を次式により求めることができる。なお、AREAexを排気ポート107aの開口面積とする。
(dMex/dt)θ3=(AREAex×Pex/√(Rex×Tex))γ1/2(2/(γ+1))(γ+1)/(2(γ−1))×RMF ・・・(22)
RMF=(Pin/Pex)1/γ{(2γ/(γ−1))(1−(Pin/Pex)(γ−1)/γ)}1/2/(γ1/2(2/(γ+1))(γ+1)/(2(γ−1))) ・・・(23)
本実施形態において、流量比RMFは、予め作成されたマップからの検索により算出する。
また、式(22)は、次のように整理することができる。
(dMex/dt)θ3=Cae(EVC−θ3)×β ・・・(24)
β=(Pex/√(Rex×Tex))γ1/2(2/(γ+1))(γ+1)/(2(γ−1))×RMF ・・・(25)
AREAex=Cae(EVC−θ) ・・・(26)
なお、式(26)は、排気弁閉時期EVCの直前において、排気弁108の弁プロフィールをクランク角θの二次関数とみなし得ることによるものである。
(点Dの特定)
点Dの時期θ4(=EVC)では、排気弁108が閉弁するため、排気弁通過ガス量dMexθ4は、0である。
(近似特性線L2の算出)
以上から、近似特性線L2を表す第2の関数fqelは、2つの点C(θ3,dMexθ3)及びD(EVC,0)を通る直線の関数として、次式により求められる。
fqel=dMex/dt
=((0−dMexθ3)/(EVC−θ3))(θ−EVC)
=−B×θ+B×EVC ・・・(27)
B=dMexθ3/(EVC−θ3)
=dMexθ3/{EVC−(EVC−(EVC−IVO)/4)}
=4dMexθ3/(EVC−IVO) ・・・(28)
ブロックB504では、以上のように算出した第1及び第2の関数fqef,fqelに基づいて、オーバーラップ期間PRDOL中に筒内から排気通路107に吹き出す排気の量(すなわち、吹出ガス量)Mex1、及び排気通路107から筒内に吹き返す排気の量(すなわち、吹返ガス量)Mex2を算出するとともに、算出したMex1,Mex2に吸気弁開時期IVOの筒内に残存する既燃ガス量(以下「IVO時筒内ガス量」という。)Mcivoを減算又は加算して、残留ガス量Megrを算出する(式(1))。なお、IVO時筒内ガス量Mcivoの算出については、後述する。
吹出ガス量Mex1は、第1の関数fqefにより表される近似特性線L1が、流量=0に相当する横軸及び吸気弁開時期IVOを示す直線との間に画成する三角形ABFの面積として、次式により算出される。なお、点Fの座標を(IVO,0)とする。
Mex1={((θ2−IVO)/6Ne)×dMexIVO}/2
={(θ2−IVO)×(Vcivo×Cpa+Pcivo(Cva×IVO+Cvb))/(Rex×Tcivo)}/2 ・・・(29)
他方、吹返ガス量Mex2は、第1及び第2の関数fqef,fqelにより表される近似特性線L1,L2が横軸との間に画成する三角形EBDの面積として、次式により算出される。なお、近似特性線L1,L2の交点を点Eとし、この点Eの座標を(θ5,dMexθ5)とする。
θ5=(A×θ2−B×EVC)/(A−B) ・・・(30)
dMexθ5=fqel(θ=θ5)
={A×B×(EVC−θ2)}/(A−B) ・・・(31)
Mex2=((EVC−θ2)/6Ne)×dMexθ5/2 ・・・(32)
本実施形態では、ECU201により「エンジンの残留ガス量測定装置」が構成される。残留ガス量測定部のうち、図6に示すブロックB502により「第1の特性線算出手段」としての機能が、同ブロックB503により「第2の特性線算出手段」としての機能が、同ブロックB504により「残留ガス量算出手段」としての機能が実現される。また、残留ガス量算出手段に関し、クランク角‐流量座標系(図6のブロックB504)における三角形ABFの面積の算出が「吹出ガス量算出手段」としての機能に、同座標系における三角形EBDの面積の算出が「吹返ガス量算出手段」としての機能に相当する。また、本実施形態では、排気弁通過ガス量dMexの特性が第1の関数fqefにより表される特性から第2の関数fqelにより表される特性に移行する点Eの時期θ5を基準として、これよりも前半の期間PRDFSTが「オーバーラップ期間の前半」に、それ以後の期間PRDLTRが「オーバーラップ期間の後半」に相当する。
以上に説明したように、本実施形態によれば、オーバーラップ期間PRDOLを前半及び後半の期間PRDFST,PRDLTRに分け、オーバーラップ期間中に排気弁108を通過するガスの流量を第1及び第2の関数fqef,fqelにより表される2つの近似特性線L1,L2により近似したことで、これらの近似特性線L1,L2に基づいて、残留ガス量Megrを幾何学的な計算により測定することができる。このため、演算負荷を軽減し得る簡素な算出手順により、比較的に高い精度で残留ガス量Megrを測定し、これをエンジン制御に反映させることができる。また、本実施形態によれば、前半及び後半の期間PRDFST,PRDLTRにおける排気弁通過ガス量dMexをいずれも直線により近似したことで、演算をより簡易なものとして、演算負荷を実用的な範囲に抑えることができる。
(IVO時筒内圧力Pcivoの算出)
IVO時筒内圧力Pcivoは、平均排気圧力Peaveに筒内における圧力脈動に対するトリミング値PCTRMを加算して算出する。
Pcivo=Peave+PCTRM ・・・(33)
本実施形態では、平均排気圧力Peaveとして、排気圧力センサ214の出力として得られる瞬時排気圧力を1サイクルに亘り平均することにより算出する。なお、平均排気圧力Peaveは、排気ポート107aにおける排気圧力を簡易に把握し得るものとして採用するものであるが、排気圧力センサ214の上流に熱容量が比較的に小さい、いわゆるプレ触媒が設置されたエンジンでは、排気がこのプレ触媒を通過する際の圧損分を考慮する。たとえば、触媒の入口部における流れを乱流と、触媒内における流れを層流と仮定して、プレ触媒を通過する際の圧損分を乱流圧力損失項及び層流圧力損失項との合計として算出し、基準となる排気圧力(本実施形態では、排気圧力センサ214により検出される排気圧力)にこの圧損分を加算する。
(筒内圧力のトリミング値PCTRMの算出)
本実施形態において、筒内圧力のトリミング値(以下「圧力トリミング値」という。)PCTRMは、エンジン回転数NE及びクランク角θに対応させて予め作成した脈動値マップを検索することにより算出する。ECU201には、この脈動値マップとして、低負荷時に対応させて作成した低負荷時脈動値マップ(図7(a))と、高負荷時に対応させて作成した高負荷時脈動値マップ(図7(b))とが記憶されており、各マップには、脈動値として、平均排気圧力に対する筒内の相対圧力が記憶されている。ECU201は、実際のエンジン回転数NE及び吸気弁開時期IVOにより各マップを検索して低負荷時脈動値PCTRML及び高負荷時脈動値PCTRMHを算出し、得られたPCTRML,PCTRMHに基づいて、実際の充填効率ITAC(すなわち、負荷)による補間計算(たとえば、一次補間)をして圧力トリミング値PCTRMを算出する。
(IVO時筒内ガス量Mcivoの算出)
本実施形態において、IVO時筒内ガス量Mcivoは、筒内に関する気体の状態方程式により算出する。(34)式において、Tcivoは、IVO時筒内温度であり、次の(35)式により算出されるものである。
Mcivo=Pcivo×Vcivo/(Rex×Tcivo)・・・(34)
(IVO時筒内温度Tcivoの算出)
本実施形態において、IVO時筒内温度Tcivoは、筒内から排気通路107に至る過程における排気の状態変化が断熱的に行われるものとして、次式により算出する。同式において、Tex及びPexは、平均排気温度Teave,平均排気圧力Peaveとする。
Tcivo=Tex(Pcivo/Pex)(κ−1)/κ ・・・(35)
以上では、本発明を、いわゆるポート噴射式の内燃機関に適用した場合について説明したが、本発明は、これに限らず、直噴式の内燃機関(たとえば、直噴ガソリンエンジン)に適用することもできる。
本発明の一実施形態に係るエンジンの構成 同上エンジンの吸気動弁装置の構成 同上吸気動弁装置の作動角変更機構の構成 オーバーラップ期間前後に亘る吸気弁通過ガス量及び排気弁通過ガス量の変化 本発明の一実施形態に係る残留ガス量の算出方法 同上実施形態に係るエンジンコントローラの残留ガス量測定部の構成 圧力トリミング値算出のための脈動値マップ 運転状態毎に設けられる流量比テーブルの一例
符号の説明
1…エンジン、101…吸気通路、102…スロットル弁、103…インジェクタ、104…吸気弁、105…吸気動弁装置、106…点火プラグ、107…排気通路、108…排気弁、151…駆動軸、152…揺動カム、153…偏心駆動カム、154…リング状リンク、155…制御軸、156…偏心制御カム、157…ロッカーアーム、158…ロッド状リンク、161…電磁アクチュエータ、162…ギア列、201…エンジンコントローラ、211…アクセルセンサ、212…クランク角センサ、A…吸気動弁装置105の作動角変更機構、B…吸気動弁装置105の中心角変更機構。

Claims (16)

  1. 吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンの残留ガス量測定装置であって、
    前記弁開期間が重なり合うオーバーラップ期間の前半における複数の時期、及びこれらの時期における排気弁通過ガス量に基づいて、この前半の期間に前記排気弁を通過するガスの流量に関する第1の近似特性線を算出する第1の特性線算出手段と、
    前記オーバーラップ期間の後半における複数の時期、及びこれらの時期における排気弁通過ガス量に基づいて、この後半の期間に前記排気弁を通過するガスの流量に関する第2の近似特性線を算出する第2の特性線算出手段と、
    前記第1の特性線算出手段により算出された第1の近似特性線、及び前記第2の特性線算出手段により算出された第2の近似特性線に基づいて、次のサイクルに持ち越される排気の量である残留ガス量を算出する残留ガス量算出手段と、を含んで構成されるエンジンの残留ガス量測定装置。
  2. 前記残留ガス量算出手段は、
    吸気弁開時期の筒内に残存する既燃ガス量を算出する既燃ガス量算出手段と、
    前記第1の近似特性線に基づいて、前記オーバーラップ期間中に排気ポートを介して筒内から吹き出す排気の量である吹出ガス量を算出する吹出ガス量算出手段と、
    前記第1及び第2の近似特性線に基づいて、前記オーバーラップ期間中に排気ポートを介して筒内に吹き返す排気の量である吹返ガス量を算出する吹返ガス量算出手段と、を含んで構成され、
    前記既燃ガス量算出手段により算出された既燃ガス量に、前記吹出ガス量算出手段により算出された吹出ガス量、及び前記吹返ガス量算出手段により算出された吹返ガス量を減算又は加算して、前記残留ガス量を算出する請求項1に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  3. 前記吹返ガス量算出手段は、前記吹返ガス量として、前記第1及び第2の近似特性線が流量=0に相当する時間座標軸との間に画成する面積を算出する請求項2に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  4. 前記吹出ガス量算出手段は、前記吹出ガス量として、前記第1の近似特性線が、流量=0に相当する時間座標軸、及び吸気弁開時期を示す直線との間に画成する面積を算出する請求項2又は3に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  5. 前記第1の近似特性線の算出に関する前記複数の時期に吸気弁開時期が含まれる請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  6. 前記第1の特性線算出手段は、吸気弁開時期における排気弁通過ガス量として、吸気弁開時期における、筒内ガス量の単位時間当たりの変化量である筒内ガス量変化分を算出する請求項5に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  7. 前記第1の近似特性線の算出に関する前記複数の時期に、前記第1の近似特性線が流量=0に相当する時間座標軸と交差する点の時期が含まれる請求項1〜6のいずれかに記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  8. 前記第1の特性線算出手段は、前記交差する点の時期として、吸気ポートを介して筒内から吹き出す排気の量が筒内ガス量変化分と一致する時期を算出する請求項7に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  9. 前記第1の特性線算出手段は、前記交差する点の時期の算出において、筒内圧力を吸気弁開時期における筒内圧力により近似する請求項8に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  10. 前記第1の特性線算出手段は、前記交差する点の時期の算出において、前記オーバーラップ期間の前半における吸気ポートの開口面積をクランク角に対する二次関数により近似する請求項8又は9に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  11. 前記第2の近似特性線の算出に関する前記複数の時期に、吸気弁開時期及び排気弁閉時期により両端が定められる時間座標軸上の線分を3:1に内分する点の時期が含まれる請求項1〜10のいずれかに記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  12. 前記第2の特性線算出手段は、筒内圧力、排気圧力及び前記排気弁の作動特性に応じた排気ポートの開口面積に基づいて、前記内分する点における排気弁通過ガス量を算出する請求項11に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  13. 前記第2の特性線算出手段は、前記内分する点における排気弁通過ガス量の算出において、筒内圧力を平均吸気圧力により近似する請求項12に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  14. 前記第2の特性線算出手段は、前記内分する点における排気弁通過ガス量の算出において、前記オーバーラップ期間の後半における排気ポートの開口面積をクランク角に対する二次関数により近似する請求項12又は13に記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  15. 前記第2の近似特性線の算出に関する前記複数の時期に排気弁閉時期が含まれる請求項1〜14のいずれかに記載のエンジンの残留ガス量測定装置。
  16. 吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンの残留ガス量測定装置であって、
    前記弁開期間が重なり合うオーバーラップ期間の前半における排気弁通過ガス量の特性をクランク角に対して増加する特性の関数により近似して、この前半の期間における排気弁通過ガス量に関する第1の近似特性線を算出する第1の特性線算出手段と、
    前記オーバーラップ期間の後半における排気弁通過ガス量の特性をクランク角に対して減少する特性の関数により近似して、この後半の期間における排気弁通過ガス量に関する第2の近似特性線を算出する第2の特性線算出手段と、
    前記第1の特性線算出手段により算出された第1の近似特性線、及び前記第2の特性線算出手段により算出された第2の近似特性線に基づいて、次のサイクルに持ち越される排気の量である残留ガス量を算出する残留ガス量算出手段と、を含んで構成されるエンジンの残留ガス量測定装置。
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