JP4735356B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの制御装置に関し、詳細には、吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンにおいて、筒内と吸気通路内との間におけるガスの出入りの切換点としての意義を持つ実効上死点を的確に算出するとともに、これを反映させて、より精度の高いエンジン制御を実現するための技術に関する。
ガソリンエンジンでは、吸入空気量を制御するためのスロットル弁が設けられ、上流に設置されたエアフローメータによりこのスロットル弁を通過する空気の量(以下「スロットル弁通過空気量」という。)を測定し、測定したスロットル弁通過空気量を負荷の指標として採用するのが一般的である。
また、エンジン制御の過渡応答性向上の要求に応えるべく、負荷の指標として、スロットル弁通過空気量に代えて筒内に実際に吸入される空気の量(以下「シリンダ吸入空気量」という。)を採用し、これを直接の検出対象とする試みが行われている。すなわち、エアフローメータの出力から吸気マニホールドに流入する空気の量を算出するとともに、このマニホールド部流入空気量と、吸気マニホールドから筒内に吸入された空気の量との収支計算により、吸気マニホールド内の空気の量を算出して、シリンダ吸入空気量を算出するのである(特許文献1)。
特開2001−050091号公報(段落番号0028〜0030)
この計量技術は、吸気マニホールドにおける空気の出入りの収支計算を行うとともに、吸気マニホールド内と筒内とで空気の密度が一定であるという近似のもと、ピストンの行程容積に相当する容積の空間を吸気マニホールドにおける密度で充填した場合の空気の量をシリンダ吸入空気量とするものである。ここで、ピストンの行程容積には、筒内容積が最も小さくなる時期として幾何学的に定められる幾何上死点から、吸気弁閉時期までの実効的な行程容積が採用される。
しかしながら、この計量技術には、ピストンの行程容積の算出に幾何上死点を採用することに起因して、次のような問題がある。吸気弁と排気弁との間で弁開期間が互いに重なり合うエンジン(以下、この重なり合う期間を「オーバーラップ期間」という。)では、幾何上死点を過ぎてもなお、筒内から吸気通路内への排気の吹き返しが継続することである。このため、筒内への空気の吸入が実際に開始される時期が幾何上死点よりも遅れ、ピストンの行程容積の算出に幾何上死点の採用したのでは、空気が充填される空間の容積を的確に算出することができない。
ここで、実効上死点は、以上の通り筒内への空気の吸入が開始される時期としての意義を持つとともに、筒内から吸気通路内への排気の吹き返しが終了する時期としての意義を併せ持つ。このことから、実効上死点は、シリンダ吸入空気量の検出に限らず、吹き返しにより次のサイクルに持ち越される残留排気の量の検出、延いてはこの残留排気の量を採用した筒内温度の推定等、エンジン制御全般に適用し得る価値を持つ。
以上の実情に鑑み、本発明は、筒内における実際の物理現象に即した実効上死点の算出モデルを提供し、このモデルにより的確な実効上死点を算出し、エンジン制御に反映させることで、より精度の高いエンジン制御を実現することを目的とする。
本発明は、エンジンの制御装置を提供する。本発明に係る装置は、吸気弁と排気弁との間で弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンに適用されるものである。吸気弁及び排気弁の弁開期間が重なり合うオーバーラップ期間の後半における複数の時期、ならびにこれらの時期における、排気ポートの開口面積、ならびに排気通路内及び筒内の各圧力に基づき算出される排気弁通過ガス量に基づいて、この後半の期間における排気弁通過ガス量に関する第1の近似特性線を算出するとともに、オーバーラップ期間中の複数の時期及びこれらの時期における、筒内の容積及び圧力に基づき算出される筒内ガス量変化分に基づいて、オーバーラップ期間における筒内ガス量変化分に関する第2の近似特性線を算出する。算出した各近似特性線の交点を特定して、この交点の時期を実効上死点として算出し、算出した実効上死点に基づいて、エンジン制御に関する所定の演算を実行するものである。
本発明によれば、筒内への空気の吸入開始時期(又は吸気通路内への排気の吹返終了時期)として、実際の物理現象に即した的確な実効上死点を算出することができる。ここで、本発明が実効上死点として第1及び第2の近似特性線の交点の時期を算出するのは、実効上死点では、筒内と吸気通路内との間におけるガスの出入りが実質的に停止しており、筒内ガス量変化分の全てが筒内と排気通路内との間におけるガスの出入りによるものであるという物理的な事実に基づくものである。算出した実効上死点は、シリンダ吸入空気量の検出等、エンジン制御の基礎情報として広く適用することが可能であり、高精度なエンジン制御の実現に貢献する。
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る火花点火エンジン(以下、単に「エンジン」という。)1の構成を示している。
エンジン1の吸気通路101には、スロットル弁102が設置されている。このスロットル弁102により吸気通路101に導入される空気の量を制御し、吸入空気量を制御することも可能であるが、本実施形態では、吸入空気量の制御を主に、後述する吸気弁104の作動特性の変更によることとし、スロットル弁102は、この作動特性の変更による制御の前提となる吸気圧力Pmの制御に採用する。また、吸気通路101には、燃料供給用のインジェクタ103が設置されている。このインジェクタ103により、制御された吸入空気量のもとで所定の当量比を達成するのに必要な量の燃料が噴射される。吸気通路101のポート部101aには、ポペット型の吸気弁104が設置されている。この吸気弁104は、その上方に配置された動弁装置(以下「吸気動弁装置」という。)105により駆動され、この吸気弁104の弁開期間に、吸入空気及び燃料の混合気が筒内に導入される。本実施形態では、吸気動弁装置105により、吸気弁104の作動角(以下「吸気作動角」という。)及びリフト量、ならびに吸気作動角の中心位相(以下「作動中心角」という。)を連続的に変更することができる。
エンジン本体において、シリンダヘッドHには、燃焼室の上部略中央に臨ませて点火プラグ106が設置されている。筒内に導入された混合気に対し、この点火プラグ106により点火が行われる。
燃焼後、発生した排気は、排気通路107に送り出される。排気通路107のポート部107aには、ポペット型の排気弁108が設置されている。この排気弁108は、その上方に配置された他の動弁装置109により駆動され、この排気弁108の弁開期間に、排気の送出が行われる。なお、本実施形態では、吸気弁104とは異なり、排気弁108の作動角、リフト量及び作動角の中心位相を一定のものとしているが、吸気動弁装置105と同様な構成のもの又は他の公知の可変動弁装置を採用して、作動角等を変更可能に構成してもよい。
吸気動弁装置105及びスロットル弁102等の動作は、電子制御ユニットとして構成されるエンジンコントローラ(以下「ECU」という。)201により制御される。ECU201には、アクセルペダルの踏込量(アクセル開度APOを示す。)を検出するアクセルセンサ211の検出信号、及びクランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサ212の検出信号(ECU201は、これに基づいてエンジン回転数NEを算出する。)が入力されるとともに、吸気通路101内(ここでは、サージタンク内)の圧力(以下「吸気圧力」という。)Pmを検出する吸気圧力センサ213の検出信号、吸気通路101内の温度Tmを検出する吸気温度センサ214の検出信号、排気通路107内の圧力(以下「排気圧力」という。)Peを検出する排気圧力センサ215の検出信号、及び排気通路107内の温度Teを検出する排気温度センサ216の検出信号等が入力される。ECU201は、入力した各種の検出信号をもとに、吸気動弁装置105により吸気作動角及び作動中心角を、スロットル弁102によりスロットル開度を夫々制御する。なお、本実施形態では、ECU201がシリンダ吸入空気量を検出する機能を備えており、ECU201は、スロットル開度の制御に際し、筒内に実際に吸入された空気の量をシリンダ吸入空気量Qcylとして算出する。
図2は、本実施形態に係る吸気動弁装置105の構成を示している。
この吸気動弁装置105は、作動角変更機構Aと中心角変更機構Bとを含んで構成される。
吸気弁104の上方に駆動軸151が気筒列方向に延在させて設置されており、この駆動軸151に揺動カム152が相対回転可能に取り付けられている。この揺動カム152は、吸気弁104のリフタ141と当接し、このリフタ141を介して吸気弁104を上下に駆動する。作動角変更機構Aは、駆動軸151と揺動カム152とを繋ぐ後述するリンクの姿勢を変化させて、吸気作動角を変更するものである。他方、中心角変更機構Bは、駆動軸151のクランクシャフト(図示せず。)に対する位相を変化させることで、作動中心角を変更するものである。
ここで、前者の作動角変更機構Aの作動原理について、図3を参照して説明する。
作動角変更機構Aは、駆動軸151に固定された円形の偏心駆動カム153と、この偏心駆動カム153に相対回転可能に外嵌するリング状リンク154と、駆動軸151と平行に配置された制御軸155と、この制御軸155に固定された円形の偏心制御カム156と、この偏心制御カム156に相対回転可能に外嵌し、一端でリング状リンク154と連結するロッカーアーム157と、このロッカーアーム157を揺動カム152と連結するロッド状リンク158とを含んで構成される。制御軸155は、電磁アクチュエータ161がギア列162を駆動することにより回転する。
この作動角変更機構Aの動作は、次のようである。クランクシャフトに連動して駆動軸151が回転すると、これに伴うリング状リンク154の往復動作に併せ、ロッカーアーム157が偏心制御カム156の軸心周りで揺動し、ロッド状リンク158により揺動カム152を駆動する。また、電磁アクチュエータ161により制御軸155を回転させることで、偏心制御カム156の軸心位置が変化し、ロッカーアーム157の回転中心が変位して、吸気作動角(及びリフト量)が連続的に変化する。このため、電磁アクチュエータ161により制御軸155を操作することで、吸気作動角を連続的に変更することができる。
なお、中心角変更機構Bには、駆動軸151のカムスプロケットに対する位相を変化させ得る、公知のいかなる可変動弁装置が採用されてよい。本実施形態では、カムスプロケットと駆動軸151との間に中間ギアを介装して、これらの間にヘリカルギア列を形成し、中間ギアを前後させることにより駆動軸151の相対位相を変化させるものを採用している。
以下、本実施形態に係るECU201の構成及びこれが行う制御(主に、シリンダ吸入空気量Qcylの測定)の内容について、ブロック図により説明する。
ECU201が行う制御は、簡単には次のようである。ECU201は、アクセル操作量APO及びエンジン回転数NE等の運転条件に基づいてエンジン1が発生すべき目標トルクtTeを演算及び設定するとともに、この目標トルクtTeに基づいて吸気動弁装置105及びスロットル弁102を作動させる。すなわち、ECU201は、目標トルクtTeを達成するのに必要なシリンダ吸入空気量として目標新気量tQcylを算出するとともに、この目標新気量tQcylに基づいて目標吸気作動角tθeventを設定し、吸気動弁装置105を作動させる。また、ECU201は、実際のシリンダ吸入空気量Qcylを測定し、測定したQcylの目標新気量tQcylに対する偏差(=tQcyl−Qcyl)に応じ、これを減少させる位置にスロットル弁102を作動させ、吸気圧力Pmを調整する。本実施形態では、特に、シリンダ吸入空気量Qcylの測定のため、筒内への空気の吸入が開始される時期としての実効上死点TDCRを算出する。
ここで、本実施形態に係るシリンダ吸入空気量Qcylの測定方法について、図14を参照して説明する。図14は、吸気弁104及び排気弁108の作動特性(リフト量VLIFTi,VLIFTeにより示す。)と、この作動特性のもとで得られる筒内圧力Pcyl及び単位クランク角当たりのシリンダ吸入空気量(すなわち、流量)DQcylとの関係を示している。
シリンダ吸入空気量Qcylの測定のため、ECU201には、筒内圧力P0のもとで下式(1a)及び(1b)により与えられる基準シリンダ吸入空気量Qと、実際のシリンダ吸入空気量(以下、単に「シリンダ吸入空気量」という。)Qcyl(条件毎に実験又はシミュレーションにより決定する。)との関係を、理論最大吸入空気量QMAXにより無次元化して作成したデータとして記憶させている。すなわち、基準シリンダ吸入空気量Q及び理論最大吸入空気量QMAXの比(「第1の比」に相当する。)RQ1=Q/QMAXと、シリンダ吸入空気量Qcyl及び理論最大吸入空気量QMAXの比(「第2の比」に相当する。)RQ2=Qcyl/QMAXとの間の一義的な関係をテーブルデータ(たとえば、ブロックB103(図4)に示すテーブルデータ)として作成し、ECU201の記憶装置に格納している。本実施形態では、筒内圧力P0として、吸気行程における筒内の状態変化が断熱膨張により行われるものとした場合に、吸気弁104の作動中心角IVCNTで得られる筒内圧力Pctrを採用している。この場合の筒内圧力P0(=Pctr)は、熱力学上の理論式により算出することができる。また、(1a)及び(1b)式において、吸気弁開期間における吸気ポート101aの総開口面積をΣAiv(単位クランク角毎の開口面積Aivを積算して算出する。)とするとともに、開口面積Aivの積算間隔をΔθとし、吸入空気の比熱比、ガス定数及び温度をκ,Ra,Tmとしている。理論最大吸入空気量QMAXは、吸気の開始から終了までのピストンの行程容積を吸気弁上流における吸入空気の密度(又は圧力Pm)及び温度Tmで充填した場合に得られるシリンダ吸入空気量であり、実効上死点TDCRにおける筒内容積をVTDCRとし、吸気弁閉時期IVCにおける筒内容積をVIVCとして、下式(2)により算出される。
=ΣAiv×(Δθ/(6・NE))×(Pm/√(Ra・Tm))×X ・・・(1a)
X=√{(2κ/(κ―1))×((P0/Pm)2/κ−(P0/Pm)(κ+1)/κ)} ・・・(1b)
MAX=(Pm/(Ra・Tm))×(VIVC−VTDCR) ・・・(2)
本実施形態では、筒内圧力P0として断熱膨張下での圧力Pctrを採用した関係上、エンジン1の運転領域全体で吸入空気の流れが理論的にチョークし、吸入空気が音速で筒内に流入することとなり、(1b)式の圧力比P0/Pmは、常に臨界圧力比(=(2/(κ+1))κ/(κ―1)=const)を示すこととなる。このため、この基準シリンダ吸入空気量Qを、特に「仮想ソニック吸入空気量」と呼ぶこととする。
また、本実施形態では、理論最大吸入空気量QMAXの算出期間PRDQMAXを、実効上死点TDCRから、筒内で吸入空気の圧縮が実質的に開始される点(以下「実効閉時期」という。)IVCRまでの期間に設定している。このため、(2)式の筒内容積VIVCとして、吸気弁104の実効閉時期IVCRにおける筒内容積VIVCRを採用している。なお、実際の制御において、実効閉時期IVCRは、便宜的に設定上の吸気弁閉時期IVCからのオフセット量IVCOFSにより表すこととする。
ECU201は、エンジン1の運転時において、仮想ソニック吸入空気量Q及び理論最大吸入空気量QMAXを算出するとともに、算出したQ,QMAXにより記憶しているテーブルを検索して、基本吸入空気量Qcyl0を算出する。この基本吸入空気量Qcyl0は、吸気圧力Pm及び筒内圧力Pcylに基づいて与えられる、静的なシリンダ吸入空気量である。ECU201は、この基本吸入空気量Qcyl0対して吸気脈動に起因するシリンダ吸入空気量の変動分に応じた補正を施し、最終的なシリンダ吸入空気量Qcylを算出する。
本実施形態において、この吸気脈動に対する補正は、次のように行う。シリンダ吸入空気量Qcylは、吸気圧力Pmと筒内圧力Pcylとの比をRP(=Pcyl/Pm)として、下式(3)により与えられる。
Qcyl=ΣAiv×(Δθ/(6・NE))×(Pm/√(Ra・Tm))×√{(2κ/(κ−1))×(RP2/κ−RP(κ+1)/κ)} ・・・(3)
本実施形態では、シリンダ吸入空気量Qcylの特性を、吸入空気の流れがチョークするものとした第1の領域と、これ以外の第2の領域とに分けて定義する。第1の領域において、この特性は、下式(4)により与えられる。これは、(3)式の圧力比RPが臨界圧力比(=const)であることから明らかであり、(4)式は、シリンダ吸入空気量Qcylが吸気圧力Pmに比例し、吸気温度Tmの平方根の逆数に比例することを示している。他方、第2の領域において、この特性は、筒内の状態変化が準静的に進行するものとして、下式(5)により与えられる。これは、吸気弁閉時期IVCに筒内が吸気通路101内の密度及び温度で充填されたものとした場合の気体の状態方程式から明らかであり、(5)式は、シリンダ吸入空気量Qcylが吸気脈動分を加味した実際の吸気圧力Pm(=Pmave+ΔPmivc)に比例し、実際の吸気温度Tm(=Tmave+ΔTmivc)の逆数に比例することを示している。なお、(5)式において、Pmave,Tmaveは、平均又は代表の吸気圧力、吸気温度を示し、ΔPmivc,ΔTmivcは、吸気弁閉時期IVCにおける吸気圧力Pmivc及び吸気温度Tmivcの平均吸気圧力Pmave、平均吸気温度Tmaveに対する変化量を示している。また、本実施形態に関し、記号∝は、左辺の値が右辺の値に比例することを示すものとする。
a)DQcyl≫0:
Qcyl∝Pm×(Tm)−1/2 ・・・(4)
b)DQcyl≒0:
Qcyl∝Pcylivc×(Tcylivc)−1
=Pmivc×(Tmivc)−1
=(Pmave+ΔPmivc)×(Tmave+ΔTmivc)−1 ・・・(5)
これらの2式(4)、(5)により表される特性を内包するものとして、第1及び第2の領域を含む運転領域全体に亘る、最も確からしい1つの特性を近似により設定する。本実施形態では、流れの状態に応じて変化させ得る2つの係数をK1,K2として、この1つの特性を次式(6)により定義する。なお、係数K1,K2は、いずれも0以上、かつ1以下の値をとり、シリンダ吸入空気量Qcylと理論最大吸入空気量QMAXとの比(=Qcyl/QMAX)に応じ、これが大きいときほど大きな値に設定される(図4のブロックB104a,B105a)。
Qcyl∝(Pmave+K1・ΔPmivc)×(Tmave+K1・ΔTmivc)−1/(2−K2) ・・・(6)
吸気脈動分を加味した実際のシリンダ吸入空気量Qcylは、(6)式の特性をもとに、吸気脈動分ΔPmivc,ΔTmivcを加味した場合のものと、この吸気脈動分を0とした場合のものとの比をRpulとして、次式(7)及び(8)により与えられる。
Qcyl=Qcyl0×Rpul ・・・(7)
Rpul={(Pmave+K1・ΔPmivc)/Pmave}×{(Tmave+K1・ΔTmivc)/Tmave}−1/(2−K2) ・・・(8)
この(8)式から圧力補正項及び温度補正項を抽出し、夫々シリンダ吸入空気量の圧力補正係数PRATE、温度補正係数TRATEとして設定する。
PRATE=(Pmave+K1・ΔPmivc)/Pmave ・・・(9)
TRATE={(Tmave+K1・ΔTmivc)/Tmave}−1/(2−K2) ・・・(10)
ECU201は、テーブルの検索により算出した基本吸入空気量Qcyl0にこの圧力補正係数PRATE及び温度補正係数TRATEを乗算し、シリンダ吸入空気量Qcylを算出する。
以下、ECU201の構成及び制御について、ブロック毎に説明する。なお、本実施形態では、シリンダ吸入空気量Qcylの測定に関する演算において、吸気圧力Pm及び吸気温度Tmとして、吸気通路101内のサイクル毎の平均圧力及び平均温度を採用している。
図4は、ECU201のうちシリンダ吸入空気量Qcylの測定に関する部分の構成を示している。なお、この図4に示すシリンダ吸入空気量測定部全体により本実施形態に係る「制御手段」としての機能が実現され、シリンダ吸入空気量測定部のうち、後述する圧力補正係数算出部B104、温度補正係数算出部B105及び脈動変化量算出部により本実施形態に係る「補正手段」としての機能が実現される。
仮想ソニック吸入空気量算出部B101は、吸気弁開時期IVO及び吸気弁閉時期IVC等をもとに、(1a)及び(1b)式により仮想ソニック吸入空気量Qを算出する。この吸気弁開時期IVO等は、リフトセンサ等により直接的に検出してもよいが、本実施形態では、制御上の目標吸気作動角tθevent及び作動中心角IVCNTから割り出したものを採用する。また、本実施形態では、(1a)式にある総開口面積ΣAivの算出期間PRDQD(図14)を、実効上死点TDCRから吸気弁閉時期IVCまでの期間に設定している。実効上死点TDCRは、後述する実効上死点算出部により算出され、実際の制御に際してこの仮想ソニック吸入空気量算出部B101に読み込まれる。
仮想ソニック吸入空気量算出部B101の構成を図5に示す。臨界圧力比(=(2/(κ+1))κ/(κ―1))のもとで得られる単位開口面積当たりのシリンダ吸入空気量qsonic#に対し、吸入空気の状態に応じた変数(=Pm/√(Ra#・Tm))及び期間PRDQDに亘る総開口面積ΣAivを乗算するとともに、これを時間単位に換算して、仮想ソニック吸入空気量Qを算出する。なお、ここでの総開口面積ΣAivは、単位クランク角毎の開口面積Aiv(吸気弁104のリフト量VLIFTiに基づいて算出する。)を、実効上死点TDCRから吸気弁閉時期IVCまでの期間に亘り積分することにより算出する。既述の通り、本実施形態では、単位開口面積当たりのシリンダ吸入空気量qsonic#が臨界圧力比下で一定の値をとるため、仮想ソニック吸入空気量Qは、総開口面積ΣAivに比例することとなる。
理論最大吸入空気量算出部B102は、吸気弁閉時期IVC及びこれに対する実効閉時期IVCRのオフセット量IVCOFS、ならびに実効上死点TDCRをもとに、(2)式により理論最大吸入空気量QMAXを算出する。なお、既述の通り、理論最大吸入空気量QMAXの算出期間PRDQMAXは、実効上死点TDCRから吸気弁104の実効閉時期IVCRまでの期間に設定しているが、この実効閉時期IVCRは、設定上の吸気弁閉時期IVCからオフセット量IVCOFSだけ進角させた時期として算出され、このオフセット量IVCOFSは、図8に示す傾向のマップからの検索により推定する。この図8のマップにおいて、オフセット量IVCOFSは、エンジン回転数NEが高く、かつ吸気弁104のリフト量VLIFTi(たとえば、最大リフト量)が小さいときほど大きな値に設定される。
理論最大吸入空気量算出部B102の構成を図6に示す。実効上死点TDCRにおける筒内容積VTDCRを算出するとともに、実効閉時期IVCRにおける筒内容積VIVCRを算出し、これらの差(=VIVCR−VTDCR)として算出される筒内容積を(2)式に代入して、理論最大吸入空気量QMAXを算出する。
基本吸入空気量算出部B103は、算出した仮想ソニック吸入空気量Q及び理論最大吸入空気量QMAXに基づいて基本吸入空気量Qcyl0を算出する。すなわち、第1の比RQ1を算出するとともに、算出したRQ1によりテーブルを検索して、対応する第2の比RQ2を算出し、算出したRQ2に理論最大吸入空気量QMAXを乗算することで、基本吸入空気量Qcyl0を算出する。
圧力補正係数算出部B104は、後述する脈動変化量算出部により算出された脈動圧力変化量ΔPmivcをもとに、(9)式により圧力補正係数PRATEを算出する。係数K1は、0以上、かつ1以下の範囲内で、比Qcyl/QMAXが大きくなり、筒内の状態変化が準静的なものに近付くのに従い2次的に増大する。
温度補正係数算出部B105は、後述する脈動変化量算出部により算出された脈動温度変化量ΔTmivcをもとに、(10)式により温度補正係数TRATEを算出する。係数K2も、係数K1と同様に0以上、かつ1以下の範囲内で、比Qcyl/QMAXが大きくなるのに従い2次的に増大する。
図7は、脈動変化量算出部の構成を示している。吸気作動角θevent(=IVC−IVO)及びエンジン回転数NEに基づいて脈動圧力変化量の基本値ΔPmivc0をマップからの検索により算出し、算出したΔPmivc0に対して実際の吸気圧力Pm(=Pmave)による補正を施して、脈動圧力変化量ΔPmivcを算出する。同様にして、吸気作動角θevent及びエンジン回転数NEに基づいて脈動温度変化量の基本値ΔTmivc0をマップからの検索により算出し、算出したΔTmivc0に対して実際の吸気温度Tm(=Tmave)による補正を施して、脈動温度変化量ΔTmivcを算出する。なお、(11)及び(12)式において、大気圧をPatmとする。
ΔPmivc=ΔPmivc0×Pm/Patm ・・・(11)
ΔTmivc=ΔTmivc0×Pm/Patm ・・・(12)
ECU201は、以上のように算出した基本吸入空気量Qcyl0をもとに、下式(13)によりシリンダ吸入空気量Qcylを算出する。なお、(13)式において、オーバーラップ期間に筒内から吸気通路101内へ吹き返す排気の量(すなわち、吹返ガス量)をQIFBとする。この吹返ガス量QIFBは、後述する吹返ガス量算出部により算出され、実際の制御に際してシリンダ吸入空気量測定部に読み込まれる。
Qcyl=(Qcyl0−QIFB)×PRATE×TRATE ・・・(13)
図9は、実効上死点算出部の構成を示している。この実効上死点算出部により本実施形態に係る「第1の特性線算出手段」、「第2の特性線算出手段」、「実効上死点算出手段」及び「筒内圧力算出手段」としての機能が実現される。
本実施形態では、オーバーラップ期間の後半における排気弁通過ガス量(ここでは、単位クランク角当たりの流量として扱う。)DQexhの特性を近似的に表す第1の関数fqelを算出するとともに、オーバーラップ期間全体に亘る筒内ガス量変化分DLTMの特性を近似的に表す第2の関数fdmを算出し、算出したfqel,fdmにより表される各近似特性線の交点を特定し、この交点の時期を実効上死点TDCRとして算出する。これは、実効上死点TDCRが筒内への空気の吸入が実際に開始される時期であり、筒内と吸気通路101内との間におけるガスの出入りが停止する時期としての意義を持つことから、筒内ガス量変化分DLTMの全てが筒内と排気通路107内との間におけるガスの出入りによるものであるという物理的な事実に基づくものである。
実効上死点算出部は、ブロックB501において、吸気弁開時期IVO及び排気弁閉時期EVC等をもとに、オーバーラップ期間に亘り筒内圧力Pcylが排気圧力Peから吸気圧力Pmに直線的に変化するものと近似して、オーバーラップ期間における筒内圧力Pcylを算出する。算出したPcylのもと、次のように第1及び第2の関数fqel,fdmを算出する。
図10は、第1及び第2の関数fqel,fdmを横軸にクランク角CAを、縦軸に流量を設定した座標上に表したものである。この図10を適宜に参照して実効上死点算出部の動作について説明する。実効上死点算出部は、ブロックB502において、第1の関数fqelの算出のため、オーバーラップ期間の後半における2つの点A,Bを設定し、点A,Bにおける排気弁通過ガス量DQexha,DQexhbを算出する。本実施形態では、点A,Bとして、排気弁閉時期EVCの点Aと、オーバーラップ期間の後半における所定の時期CA1の点Bとを採用する。一方の点Aに排気弁閉時期EVCの点を採用するのは、排気弁閉時期EVCにおける排気弁通過ガス量DQexh(=DQexha)が0であり、演算を簡素化し得るからである。他方の点Bは、排気弁通過ガス量DQexhの変化にクランク角CAに対する線形性が認められる範囲で任意の点を実験又はシミュレーションにより評価して決定する。本実施形態では、点Bとして、エンジン1の運転条件によらずこの線形性が充分な確からしさで認められる点(たとえば、IVOからEVCまでの横軸上の線分を1つの辺として、この辺を3:1に内分する点)を採用する。なお、排気弁通過ガス量DQexhは、排気ポート107aの開口面積が小さい場合にこの開口面積に比例する特性を示すことから、実験等による方法に代え、排気弁通過ガス量DQexhの線形性の評価に排気弁108の作動特性を採用することができる。排気弁108のリフト量VLIFTeがクランク角CAに対して直線的に減少する領域を特定し、この領域における排気弁閉時期EVC以外の時期の点を、点Bに設定するのである。点Bにおける排気弁通過ガス量DQexhbは、この時期CA1に排気ポート107aに形成される開口面積をAevとして、下式(14)により算出する。なお、(14)式において、排気温度Teは、計算により推定することもできるが、本実施形態では、排気温度センサ216により直接的に検出している。また、排気のガス定数Re及び比熱比κeは、いずれも目標当量比に基づいて算出することができる。点A,Bを通る直線(「第1の近似特性線」に相当する。)L1の関数を、第1の関数fqelとして算出する。
DQexhb=Aev×(Δθ/(6・NE))×(Pe/√(Re・Te))×√{(2κe/(κe−1))×((Pcyl/Pe)2/κe−(Pcyl/Pe)(κe+1)/κe)} ・・・(14)
他方、実効上死点算出部は、ブロックB503において、第2の関数fdmの算出のため、オーバーラップ期間中の2つの点C,Dを設定し、下式(15)により点C,Dにおける筒内ガス量変化分DLTMc,DLTMdを算出する。この(15)式は、オーバーラップ期間に亘り筒内温度Tcylが一定であると近似して、気体の状態方程式を時間tにより微分して得られたものである。本実施形態では、点C,Dとして、幾何上死点TDC及び吸気弁開時期IVOの各点を採用するとともに、筒内温度Tcylを排気温度Teにより近似する。ガス定数には、排気のガス定数Reを採用するが、これは、幾何上死点TDC前の時期において、筒内への空気の吸入が開始されておらず、筒内が排気で占められていることによるものである。筒内圧力Pcylは、前述した筒内圧力Pcylの近似式から得ることができ、筒内容積Vcylは、エンジン1に固有のものとして幾何学的に算出することができる。また、これらの変数Pcyl,Vcylの時間当たりの変化率dPcyl,dVcylは、クランク角当たりの変化率に、エンジン回転数NEに応じた係数を乗算することにより得られる。点C,Dを通る直線(「第2の近似特性線」に相当する。)L2の関数を、第2の関数fdmとして算出する。
DLTM=(1/(Re・Te))×(Pcyl・dVcyl/dt+Vcyl・dPcyl/dt) ・・・(15)
実効上死点算出部は、ブロックB504において、以上のように算出した第1及び第2の関数fqel,fdmにより表される直線L1,L2の交点Eを特定し、この交点Eの時期を実効上死点TDCRとして算出する。
図11は、吹返ガス量算出部の構成を示している。この吹返ガス量算出部により本実施形態に係る「吹返ガス量算出手段」としての機能が実現される。
本実施形態では、オーバーラップ期間の前半における吸気弁通過ガス量DQintの特性を近似的に表す第3の関数fqiを算出するとともに、オーバーラップ期間の前半における排気弁通過ガス量DQexhの特性を近似的に表す第4の関数fqefを算出し、算出したfqefと、実効上死点算出部により算出された第1の関数fqelとにより表される各近似特性線の交点を特定し、この交点の時期に吹返ガス量QIFBの変化の正負が切り換わるものとして、第3の特性fqiに基づいて吹返ガス量QIFBを算出する。この交点は、排気弁通過ガス量DQexhが第4の特性fqefから第1の特性fqelに移行する点としての性質を持つものであり、この交点を基準として筒内と排気通路107内との間におけるガスの出入りが収束に向かい、筒内圧力Pcylが急速に減少するものと考えられるからである。
以下、図12を適宜に参照して吹返ガス量算出部の動作について説明する。なお、図12は、関数fqel,fdm,fqi,fqefを横軸にクランク角CAを、縦軸に流量を設定した座標上に表したものである。
吹返ガス量算出部は、ブロックB601において、第3の関数fqiの算出のため、オーバーラップ期間の前半における2つの点F,Gを設定し、点F,Gにおける吸気弁通過ガス量DQintf,DQintgを算出する。本実施形態では、点F,Gとして、吸気弁通過ガス量DQint(=DQintf)が0となる吸気弁開時期IVOの点Fと、オーバーラップ期間の前半における所定の時期CA2の点Gとを採用する。点Gは、吸気弁通過ガス量DQintのクランク角CAに対する線形性がエンジン1の運転条件によらず認められる範囲で任意の点を実験等により評価して決定してもよいが、本実施形態では、この線形性の評価に吸気弁104の作動特性を採用し、吸気弁通過ガス量DQintと吸気弁104の作動特性との相似的な関係から、点Gを決定する。すなわち、オーバーラップ期間の前半では、吸気ポート101aの開口面積が小さく、吸気弁通過ガス量DQintがこの前半の期間における開口面積に比例するものと近似し得ることから、吸気弁104のリフト量VLIFTiがクランク角CAに対して直線的に増加する領域を特定し、この領域における吸気弁開時期IVO以外の時期の点を、点Gに設定するのである。本実施形態では、点Gとして、吸気弁開時期IVOから排気弁閉時期EVCまでの横軸上の線分を1つの辺として、この辺を1:1に内分する点を採用する。点Gにおける吸気弁通過ガス量DQintgは、この時期に吸気ポート101aに形成される開口面積をAivとして、下式(16)により算出する。点F,Gを通る直線L3の関数を、第3の関数fqiとして算出する。
DQint=Aiv×(Δθ/(6・NE))×(Pcyl/√(Re・Te))×√{(2κe/(κe−1))×((Pm/Pcyl)2/κe−(Pm/Pcyl)(κe+1)/κe)} ・・・(16)
また、吹返ガス量算出部は、ブロックB602において、第3の関数fqiにより表される直線F3と、実効上死点算出部により算出された第2の特性fdmにより表される直線L2との交点Hを特定する。この交点Hは、筒内ガス量変化分DLTMの全てが筒内と吸気通路101内との間におけるガスの出入りによるものであることを示すことから、これを排気弁通過ガス量DQexhが0となる点Iを与えるものとして採用し、吸気弁開時期IVOの点Dと、この点Iとを通る直線L4の関数を、第4の関数fqefとして算出する。なお、吸気弁開時期IVOでは、吸気弁通過ガス量DQintが0であり、排気弁通過ガス量DQexhと筒内ガス量変化分DLTMとが等しくなる。
吹返ガス量算出部は、ブロックB603において、以上のように算出した第4の特性fqefと、実効上死点算出部により算出された第1の特性fqelとにより表される直線L4,L1の交点Jを特定する。吹返ガス量算出部は、ブロックB604において、更に交点Jの時期における直線L3上の点Kを算出し、この点Kと、実効上死点TDCRにおける横軸上の点Lとを通る直線L5の関数によりオーバーラップ期間の後半における吸気弁通過ガス量DQintを近似して、下式(17)により吹返ガス量QIFBを算出する。なお、(17)式において、点Kの時期CA3における吸気弁通過ガス量Qintkを第3の関数によりfqi(CA3)として示す。
IFB=fqi(CA3)×((TDCR−IVO)/(6・NE))/2) ・・・(17)
図13は、オーバーラップ期間における実際の吸気弁通過ガス量Qint、排気弁通過ガス量Qexh及び筒内ガス量変化分DLTMと、第1〜第4の関数fqel,fdm,fqi,fqefにより表される近似特性線L1〜L4との関係を示している。吹返ガス量QIFBは、(17)式により斜線で示す部分の面積として算出される。なお、本実施形態に関し、排気弁通過ガス量DQexhの特性が第4の特性fqefから第1の特性fqelに移行する点Jの時期CA3を基準として、これよりも前の期間PRDFがオーバーラップ期間の前半に、それ以後の期間PRDLがオーバーラップ期間の後半に相当する。
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、オーバーラップ期間の後半における排気弁通過ガス量Qexhに関する第1の近似特性線L1、及びオーバーラップ期間における筒内ガス量変化分DLTMに関する第2の近似特性線L2を算出するとともに、算出した各近似特性線L1,L2の交点Eを特定し、この交点Eの時期を実効上死点TDCRとして算出することとした。実効上死点TDCRは、筒内への空気の吸入開始時期としての意義を持ち、この時期における筒内ガス量変化分DLTMの全てが筒内と排気通路107内との間におけるガスの出入りによるものであることから、実際の物理現象に即した的確なモデルにより実効上死点TDCRを算出することができる。本実施形態では、算出したTDCRをシリンダ吸入空気量Qcylの算出に反映させたことで、シリンダ吸入空気量を正確に算出し、エンジン1の目標トルクを高い精度で実現することができる。また、実効上死点TDCRは、筒内への空気の吸入開始時期としての意義を持つばかりでなく、筒内から吸気通路101内への排気の吹返終了時期としての意義を持つ。本実施形態では、算出したTDCRに基づいて吹返ガス量QIFBを算出し、前のサイクルから持ち越された排気の量を減算したものとしてシリンダ吸入空気量Qcylを算出することとしたので、シリンダ吸入空気量Qcylを正確に算出することができる。排気の吹返終了時期としての実効上死点TDCRの意義に着目すれば、実効上死点TDCRは、他の制御情報として、たとえば、圧縮開始時における筒内温度の推定等に広く適用することが可能であることから、的確な実効上死点TDCRを算出し得ることは、エンジン制御全般の高精度化に貢献する。
また、本実施形態では、仮想ソニック吸入空気量Q及び理論最大吸入空気量QMAXを定義し、これらの量Q,QMAXとシリンダ吸入空気量Qcylとの間の一義的な関係を設定したことで、実際の運転に際し、吸気弁104等の作動特性によらずこの関係に基づいてシリンダ吸入空気量Qcylを算出することができ、演算負荷を軽減することができる。
また、本実施形態では、吸入空気の流れがチョークする第1の領域とこれ以外の第2の領域とでシリンダ吸入空気量Qcylの補正方法を異ならせたので、シリンダ吸入空気量Qcylの補正を領域毎に的確、かつ簡易に行い、吸気脈動の影響を加味した正確なシリンダ吸入空気量Qcylを簡易に算出することができる。流れの状態に応じて変化させ得る係数K1,K2を採用し、これらの係数K1,K2により第1及び第2の領域に亘り全般的に採用可能な補正係数PRATE,TRATEを設定したことで、チョークの発生如何によらず1つの式により補正を行うことができ、マップ等の多用を回避し、シリンダ吸入空気量Qcylの算出に要する演算負荷を軽減することができる。
以上では、吸気弁通過ガス量DQintに関する近似特性線L3,L5を算出し、これらの直線L3,L5と流量=0を示す直線(すなわち、図12の横軸)とにより挟まれる部分の面積として、吹返ガス量QIFBを簡易に算出する場合を例に説明した。しかしながら、吹返ガス量QIFBは、筒内圧力Pcyl及び吸気圧力Pm、ならびに吸気弁104及び排気弁108の作動特性に基づいて下式(18)により算出することもできる。(18)式の総開口面積ΣAivには、吸気ポート101aに形成される開口面積Aivを吸気弁開時期IVOから実効上死点TDCRまでの期間に亘り積算して得たものを採用する。
IFB=ΣAiv×(Δθ/(6・NE))×(Pe/√(Re・Te))×√{(2κe/(κe−1))×((Pm/Pcyl)2/κe−(Pm/Pcyl)(κe+1)/κe)} ・・・(18)
また、以上では、測定したシリンダ吸入空気量Qcylを吸入空気量の制御における吸気圧力Pmの補正に採用することとしたが、これを燃料噴射量の設定に採用することもできる。
更に、吸入空気量の制御は、運転領域全体に亘り吸気弁104の作動特性の変更によることとしてもよいが、この作動特性の変更による制御を過渡運転時のみで行い、定常運転時には、スロットル開度の制御によることとしてもよい。この場合は、スロットル弁102の上流にエアフローメータを設置し、定常運転時に検出する吸入空気量としてシリンダ吸入空気量に代え、スロットル弁通過空気量を採用する。
本発明に係るエンジンの制御装置は、直噴ガソリンエンジンに適用することもできる。
本発明の一実施形態に係るエンジンの構成 同上エンジンの吸気動弁装置の構成 同上吸気動弁装置の作動角変更機構の構成 シリンダ吸入空気量測定部の構成 仮想ソニック吸入空気量算出部の構成 理論最大吸入空気量算出部の構成 脈動変化量算出部の構成 吸気弁閉時期のオフセット量IVCOFSの算出マップ 実効上死点算出部の構成 同上実効上死点算出部の動作説明 吹返ガス量算出部の構成 同上吹返ガス量算出部の動作説明 実際の吸気弁通過ガス量、排気弁通過ガス量及び筒内ガス量変化分と各近似特性線との関係 吸気弁及び排気弁の作動特性、筒内圧力、ならびに単位クランク角当たりのシリンダ吸入空気量の関係
符号の説明
1…エンジン、101…吸気通路、102…スロットル弁、103…インジェクタ、104…吸気弁、105…吸気動弁装置、106…点火プラグ、107…排気通路、108…排気弁、151…駆動軸、152…揺動カム、153…偏心駆動カム、154…リング状リンク、155…制御軸、156…偏心制御カム、157…ロッカーアーム、158…ロッド状リンク、161…電磁アクチュエータ、162…ギア列、201…エンジンコントローラ、211…アクセルセンサ、212…クランク角センサ、213…吸気圧力センサ、214…吸気温度センサ、215…排気圧力センサ、A…吸気動弁装置の作動角変更機構、B…吸気動弁装置の中心角変更機構。

Claims (11)

  1. 吸気弁及び排気弁の弁開期間が互いに重なり合う運転条件が設定されたエンジンの制御装置であって、
    前記弁開期間が重なり合うオーバーラップ期間の後半における複数の時期、ならびにこれらの時期における、排気ポートの開口面積、ならびに排気通路内及び筒内の各圧力に基づき算出される排気弁通過ガス量に基づいて、前記後半の期間における排気弁通過ガス量に関する第1の近似特性線を算出する第1の特性線算出手段と、
    前記オーバーラップ期間中の複数の時期及びこれらの時期における、筒内の容積及び圧力に基づき算出される筒内ガス量変化分に基づいて、前記オーバーラップ期間における筒内ガス量変化分に関する第2の近似特性線を算出する第2の特性線算出手段と、
    前記第1及び第2の特性線算出手段により算出された各近似特性線の交点を特定して、この交点の時期を実効上死点として算出する実効上死点算出手段と、
    前記実効上死点算出手段により算出された実効上死点に基づいて、エンジン制御に関する所定の演算を実行する制御手段と、を含んで構成されるエンジンの制御装置。
  2. 前記第1の近似特性線の算出に関する前記複数の時期に排気弁閉時期が含まれる請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記第2の近似特性線の算出に関する前記複数の時期に、筒内容積が最も小さくなる時期である幾何上死点及び吸気弁開時期のうち、少なくとも一方が含まれる請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記オーバーラップ期間における筒内圧力の変化を直線により近似して、この期間における筒内圧力を算出する筒内圧力算出手段を更に含んで構成される請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの制御装置。
  5. エンジンの筒内に吸入される空気の量が吸気弁の作動特性を変更して制御されるエンジンに適用される請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンの制御装置。
  6. 前記制御手段は、前記実効上死点に基づいて、筒内に吸入される空気の量であるシリンダ吸入空気量を算出する請求項5に記載のエンジンの制御装置。
  7. 前記制御手段は、吸気弁の作動特性に応じた吸気ポートの開口面積でソニック流として吸入した場合に得られるシリンダ吸入空気量を仮想ソニック吸入空気量QDとし、かつ吸気の開始から終了までのピストンの行程容積を吸気弁上流における吸入空気の密度及び温度で充填した場合に得られるシリンダ吸入空気量を理論最大吸入空気量QMAXとして、実際のシリンダ吸入空気量Qcylに関して第1の比QD/QMAX、及び第2の比Qcyl/QMAXの間の一義的な関係が設定され、実際の運転時において、前記第1の比を算出するとともに、算出した第1の比に基づいて前記関係により前記実際のシリンダ吸入空気量を算出するものであり、前記仮想ソニック吸入空気量及び前記理論最大吸入空気量の算出期間の始期を前記実効上死点として、前記第1の比を算出する請求項6に記載のエンジンの制御装置。
  8. 前記制御手段は、前記仮想ソニック吸入空気量の算出期間の終期を吸気弁閉時期とする請求項7に記載のエンジンの制御装置。
  9. 前記制御手段は、前記理論最大吸入空気量の算出期間の終期を、エンジン回転数が高いほど大きく、吸気弁の最大リフト量が小さいほど大きなクランク角オフセット量だけ吸気弁閉時期から遅角した、吸気弁の実効閉時期とする請求項7又は8に記載のエンジンの制御装置。
  10. 前記制御手段は、前記関係により算出した基本吸入空気量に対し、吸気通路内における気柱振動に起因するシリンダ吸入空気量の変動分に応じた補正を施す補正手段を含んで構成され、
    前記補正手段は、筒内へ向かう吸入空気の流れがチョークする第1の領域と、この第1の領域以外の第2の領域とが定められ、前記第1及び第2の領域の間で異なる特性により前記補正を行う請求項7〜9のいずれかに記載のエンジンの制御装置。
  11. 前記補正手段は、前記第1の領域において、前記変動分に応じたシリンダ吸入空気量の補正量を実質的に0とする一方、前記第2の領域において、前記気柱振動分を加味した実際の吸気圧力に比例し、かつ前記気柱振動分を加味した実際の吸気温度の逆数に比例する特性により、前記補正を行う請求項10に記載のエンジンの制御装置。
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