JP2008138658A - エンジンの残留ガス量推定方法及び残留ガス量推定装置 - Google Patents

エンジンの残留ガス量推定方法及び残留ガス量推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】排気バルブ開閉時期可変機構の作動時においても、燃焼室内残留ガス量の推定精度を悪化させない推定方法を提供する。
【解決手段】第1の状態時と第2の状態時とで排気バルブ開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を有し、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度に基づいて第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量を算出する処理手順(59)と、第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量を算出する処理手順(60)と、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量と、このオーバラップ中の吹き返しガス量とに基づいて第2の状態時の燃焼室内残留ガス量を算出する処理手順(61)とを含む。
【選択図】図19

Description

本発明は、エンジン(内燃機関)の残留ガス量推定方法及び残留ガス量推定装置に関する。
排気バルブ閉時期での燃焼室内温度を算出する手段と、排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力を算出する手段と、燃焼空燃比に応じた排気組成のガス定数を算出する手段と、これら燃焼室内温度、燃焼室内圧力、ガス定数に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を算出する手段と、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間とのオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出する手段と、前記燃焼室内ガス量とこのオーバーラップ中の吹き返しガス量とに基づいて燃焼室内残留ガス量を算出する手段とを備えるものがある(特許文献1参照)。
特開2004−108262号公報
ところで、燃焼室内残留ガス量は点火時期や空燃比に影響を与えるため、燃焼室内残留ガス量を推定し、その推定した燃焼室内残留ガス量で点火時期や空燃比等を補正することが望ましい。
その一方で、第1の状態時(例えば非作動時)と第2の状態時(例えば作動時)とで排気バルブ開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備えることへの要求が高まっている。例えば、排気バルブ開閉時期可変機構を第2の状態時とし、排気バルブ開時期を第1の状態時より早めてやると、排気温度が高くなり、排気通路に設けてある触媒の暖機を促進できる。また、排気バルブ開時期を第1の状態時より早めて吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップを増やしてやると、燃焼室内残留ガス量が増加し、ポンピングロスを低減できる。また、高回転速度時に第1の状態時より吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップを大きくしてやると吸気の慣性力を大きくできる。このような各種の目的のため排気バルブ開閉時期可変機構を備えさせ、排気バルブ開閉時期可変機構を第1の状態時より第2の状態時に切換えた場合に、排気圧力、燃焼室内圧力が第1の状態時の値と相違することとなり、その影響を受けて燃焼室内残留ガス量も第1の状態時の値から大きく変化してしまう。
しかしながら、上記特許文献1の技術では排気バルブ開閉時期可変機構の第1の状態時から第2の状態時への切換に伴う排気圧力や燃焼室内圧力の変化を考慮していないため、排気バルブ開閉時期可変機構を第1の状態時より第2の状態時に切換えた場合に燃焼室内残留ガス量の推定精度が大幅に悪化してしまう。
そこで本発明は、排気バルブ開閉時期可変機構を第1の状態時より第2の状態時に切換えた場合においても、燃焼室内残留ガス量の推定精度が悪化することのないようにした残留ガス量推定方法及び残留ガス量推定装置を提供することを目的とする。
本発明は、開時期に吸気ポートと燃焼室と連通し、閉時期に吸気ポートと燃焼室とを遮断する吸気バルブと、開時期に排気ポートと燃焼室と連通し、閉時期に排気ポートと燃焼室とを遮断する排気バルブとを備えるエンジンにおいて、第1の状態時と第2の状態時とで排気バルブ開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を有し、前記第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)を算出し、この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度(TIVO)を算出し、これら吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度(TIVO)に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)を算出し、前記第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量(M2)を算出し、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)と、このオーバラップ中の吹き返しガス量(M2)とに基づいて、前記第2の状態時の燃焼室内残留ガス量を算出するように構成する。
排気バルブ開閉時期可変機構が第1の状態時から第2の状態時へと切換わった場合に、第2の状態時の排気バルブ開時期での排気圧力、燃焼室内圧力が第1の状態時の排気バルブ開時期での排気圧力、燃焼室内圧力と相違することとなるため、その相違する圧力分だけ、燃焼室内残留ガス量も、第1の状態時の値から大きく変化してしまう。
この場合に、本発明によれば、第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)を算出し、この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)に基づいて、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度(TIVO)を算出し、これら吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度(TIVO)に基づいて、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)を算出し、第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量(M2)を算出し、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)と、このオーバラップ中の吹き返しガス量(M2)とに基づいて、第2の状態時の燃焼室内残留ガス量を算出する。すなわち、第2の状態時に切換わったときには、その第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と、第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度とを改めて算出し、その算出した値に基づいて第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量を算出すると共に、第2の状態時の吸気バルブ閉時期に基づいて、第2の状態時のオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出するので、排気バルブ開閉時期可変機構が第2の状態時に切換わったときにも燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、エンジンの残留ガス量推定方法の実施に直接使用するエンジンの残留ガス量推定装置を有するエンジンの制御装置の概略構成を示している。
空気は吸気コレクタ2に蓄えられた後、吸気マニホールド4を介して各気筒の燃焼室5に導入される。燃料は各気筒の吸気ポート4に配置された燃料インジェクタ21より噴射供給される。空気中に噴射された燃料は気化しつつ空気と混合してガス(混合気)を作り、燃焼室5に流入する。この混合気は吸気バルブ15が閉じることで燃焼室5内に閉じこめられ、ピストン6の上昇によって圧縮される。
圧縮上死点より少し手前で点火プラグ14により火花が飛ばされ圧縮混合気に着火されると、火炎が広がりやがて爆発的に燃焼し、この燃焼によるガス圧がピストン6を押し下げる仕事を行う。この仕事はクランクシャフト7の回転力として取り出される。燃焼後のガス(排気)は排気バルブ16が開いたとき排気通路8へと排出される。
排気通路8には三元触媒9を備える。三元触媒9は排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲(ウインドウ)にあるとき、排気に含まれるHC、CO、NOxといった有害三成分を同時に効率よく除去できる。空燃比は吸入空気量と燃料量の比であるので、エンジンの1サイクル(4サイクルエンジンではクランク角で720°区間)当たりに燃焼室5に導入される吸入空気量と、燃料インジェクタ21からの燃料噴射量との比が理論空燃比となるように、エンジンコントローラ31ではエアフローセンサ32からの吸入空気流量の信号とクランク角センサ(33、34)からの信号に基づいて燃料インジェクタ21からの燃料噴射量を定めると共に、三元触媒9の上流に設けたO2センサ35からの信号に基づいて空燃比をフィードバック制御している。
吸気バルブ用カムシャフト25、排気バルブ用カムシャフト26及びクランクシャフト7の各前部にはそれぞれカムスプロケット、クランクスプロケットが取り付けられ、これらスプロケットにタイミングチェーン(図示しない)を掛け回すことで、カムシャフト25、26がエンジンのクランクシャフト7により駆動されるのであるが、このカムスプロケットと吸気バルブ用カムシャフト25との間に介在して、作動角一定のまま吸気バルブ用カムの位相を連続的に制御し得る可変吸気バルブタイミングコントロール機構(以下、「吸気バルブ用VTC機構」という。)27と、カムスプロケットと排気バルブ用カムシャフト26との間に介在して、作動角一定のまま排気バルブ用カムの位相を連続的に制御し得る可変排気バルブタイミングコントロール機構(以下、「排気バルブ用VTC機構」という。)28とを備える。吸気バルブ15の開閉時期や排気バルブ16の開閉時期を変えると燃焼室5に残留する不活性ガスの量(燃焼室内残留ガス量)が変化する。燃焼室内残留ガス量が増えるほどポンピングロスが減って燃費がよくなるので、運転条件によりどのくらいの燃焼室内残留ガス量があったらよいかを目標吸気バルブ閉時期や目標排気バルブ閉時期にして予め定めており、エンジンコントローラ31ではそのときの運転条件(エンジンの負荷と回転速度)より目標吸気バルブ閉時期と目標排気バルブ閉時期を定め、それら目標値が得られるように吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28の各アクチュエータを介して吸気バルブ閉時期と排気バルブ閉時期を制御する。
大気圧力センサ36からの大気圧力の信号、吸気圧力センサ44からの吸気圧力の信号が入力されるエンジンコントローラ31では、これらの信号と吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値とに基づいて燃焼室内残留ガス量を推定し、この推定した燃焼室内残留ガス量に基づいて目標吸気バルブ閉時期や目標排気バルブ閉時期をフィードバック制御する。
次に、燃焼室内残留ガス量の算出方法を詳述する。本発明では特に排気バルブ用VTC機構を備える場合を対象としており、話を複雑化しないため以下では吸気バルブ用VTC機構27は非作動状態にあるものとして、つまり吸気バルブ開時期IVOは一定値であるとして説明する。なお、本発明は、吸気バルブ用VTC機構27を備えるものを除外するものではない。吸気バルブ用VTC機構27をも備える場合には、吸気バルブ開時期IVOを可変値で考えればよいだけである。また、本実施形態では排気バルブ用VTC機構を備える場合で説明するが、作動角を連続的に制御し得る可変排気バルブリフト量コントロール機構(排気バルブ用VEL機構)を備える場合や排気バルブ用VTC機構と排気バルブ用VEL機構の両方を備える場合にも本発明を適用することができる。
図2に示したように、吸気バルブ開時期(図では「IVO時」)、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中(図では「O/L中」)、排気バルブ閉時期(図では「EVC時」)、吸気行程の4段階に分けて燃焼室内残留ガス量を考える。
まず、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量をMR1[kg]とする。吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中に、燃焼室5内から吸気ポート4に流出するガス量をM1[kg]、排気ポート11から燃焼室5内に流入するガス量をM2[kg]とすると、排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内ガス量はMR1−M1+M2となる。吸気行程では、吸気ポート4に流出していた既燃ガスM1[kg]が燃焼室5内に再流入してくるため、吸気バルブ閉時期での最終的な燃焼室内残留ガス量は、MR1+M2となる。よって、本発明では、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1及び吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の排気ポートからの吹き返しガス量M2を算出し、それらの和を燃焼室内残留ガス量として算出する。つまり、次式により燃焼室内残留ガス量を算出する。
燃焼室内残留ガス量=MR1+M2 …(補1)
以下では、(補1)式右辺第1項の吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1の算出原理について先に説明し、その後に(補1)式右辺第2項の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出原理について説明する。
1.吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1の算出原理
吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1は次の状態方程式に基づいて算出する。
MR1=PIVO・VIVO/REX・TIVO …(1)
ただし、PIVO:吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力[kPa]、
VIVO:吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内容積[m^3]、
TIVO:吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内温度[K]、
REX :排気のガス定数[kJ/kg/K]、
以下、(1)式の排気のガス定数REX、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOの各算出方法をこの順に説明する。
〈1〉排気ガス定数REXの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内ガスのモル数EGR molは、次式により与えられる。
EGR mol=(吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス質量)/(排気分子量)
={RESTR/(1−RESTR)}
×(空気燃料混合気質量)/(排気分子量)
={RESTR/(1−RESTR)}
×{(12×n+m)
+(n+m/4)/TFBYA×(32+0.79/0.21×28)}
/(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)×SUM
…(2)
ただし、RESTR:残ガス率、
TFBYA:目標当量比、
n :燃料中の炭素原子数、ガソリンの平均組成Cnm=C818
を用いる
m :燃料中の水素原子数、ガソリンの平均組成Cnm=C818
を用いる
A :CO2のモル数、
B :H2Oのモル数、
C :N2のモル数、
D :O2のモル数(ただし、φ>1の場合、D=0)、
E :COのモル数(ただし、φ≦1の場合、E=0)、
SUM :排気の総モル数、
44 :CO2の分子量[kg/kmol]、
18 :H2Oの分子量[kg/kmol]、
28 :N2の分子量[kg/kmol]、
32 :O2の分子量[kg/kmol]、
28 :COの分子量[kg/kmol]、
ここで、(2)式右辺のRESTR/(1−RESTR)は吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス質量と空気燃料混合気質量との比で、この比を空気燃料混合気質量に乗算することで、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス質量を求めることができる。(2)式右辺の12×n+mは燃料(Cnm)の質量、(n+m/4)/TFBYA×(32+0.79/0.21×28)は空気の質量で、これらの合計が空気燃料混合気質量である。
上記の残ガス率RESTRは次式により定義される値で、実際にはシミュレーションによる適合値を用いる。
RESTR=既燃ガス量/総ガス量
=(燃焼室内残留ガス量+外部EGR量)
/(吸入空気量+燃料量+燃焼室内残留ガス量)
…(補2)
(2)式右辺の目標当量比TFBYAは、図3のようにエンジンの負荷と回転速度Neによるマップ(適合値)とする。(2)式右辺のA〜Bのモル数を図4に示す。図4においてφは目標当量比のことである。
よって、化学反応式は次のようになる。
nm+(n+m/4)/TFBYA×(O2+0.79/0.21×N2
+RESTR/(1−RESTR)×{(12×n+m)+(n+m/4)
/TFBYA×(32+0.79/0.21×28)}
/(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)×SUM
×(A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO)/SUM
→A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO
…(3)
質量保存則より、
44×A+18×B+28×C+32×D+28×E
=1/(1−RESTR)×((12×n+m)+(n+m/4)/TFBYA
×(32+0.79/0.21×28) …(4)
となるので、(4)式を(3)式に代入することにより次式を得る。
nm+(n+m/4)/TFBYA×(02+0.79/0.21×N2
+RESTR×(A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO)
→A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO
…(5)
(5)式より、排気のガス定数REXは、
REX=R0/Mex …(6)
ただし、R0 :一般ガス定数(=8314.3J/kgK)、
Mex:排気分子量[kg/kmol]、
の式により求められる。(6)式右辺の排気分子量Mexは次式により算出する。
Mex=(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)×SUM
…(補3)
ただし、A〜B:各分子のモル数、(2)式参照。
SUM:排気総モル数、(2)式参照。
〈2〉吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOは次式により算出する。
VIVO=π×D^2×H/4+Vc …(7)
ただし、D :ボア径[m]、
H :TDCからの変位量[m]、
Vc:隙間容積[m^3]、
(7)式右辺のTDCからの変位量Hは次式により算出する。
H=((CND+ST/2)^2−(CR off−PIS off^2)^(1/2)
−(ST/2×cos(EVC+θoff)+(CND^2−X^2)^(1/2))
…(8)
ただし、CND :コンロッド長[m]、
CR off :クランクピンオフセット[m]、
PIN off:ピストンオフセット[m]、
ST :ストローク[m]、
EVC :排気バルブ閉時期[°ATDC]
θoff :クランク垂直位置からTDCまでの角度[°]、
X :コンロッド大端部からピストンピン中心までの距離[m]、
ここで、(8)式右辺の排気バルブ閉時期EVCは、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値により既知である。なお、排気バルブ閉時期EVCの単位としては、適当なクランク角位置(例えば圧縮上死点)を基準として遅角側に計測したクランク角とすればよい。
(8)式右辺のX、θoff、(7)式右辺の隙間容積Vcは次式により算出する。
X=ST/2×sin(EVC−θoff)−CR off+PIN off
…(9)
θoff=arcsin((CR evc−PIS off/CND+ST/2)
…(10)
π×D^2×ST/(ε−1) …(11)
ただし、ε:圧縮比、エンジン毎に決まる定数
〈3〉吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO[kPa]は、排気バルブ開度が十分大きいため、排気圧力に等しいと仮定する。平均排気圧力PEX[kPa]を基準としたときの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分)をマップとして記憶しておき、この記憶させているマップを参照して吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM[kPa]を求め、この求めた吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとの和を吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOとして、つまり次式により吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する。
PIVO=PEX+PCTRM …(12)
ここで、(12)式のように吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを導入した理由は次の通りである。すなわち、排気流量が分かればPV=nRTより平均排気圧力が分かる。しかしながら、実際の燃焼室内圧力や排気圧力は図14に示したように脈動の影響でクランク角に対して時々刻々に変化しているので、図15に示したように排気圧力の平均値をPEXとし、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力の差分値(つまり吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)をPCTRMで表すこととしたものである。
ただし、制御上は、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値を負の値で表したくないため、図15の右端に示したように、平均排気圧力PEXを差分値の下端までとし、差分値の下端をゼロとして吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを表している。従って、以下では平均排気圧力PEX、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力の差分値についても)は図15の右端に示した値である。
この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMの算出方法を次に説明する。
吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは、図5より排気バルブ開時期EVOと回転速度Neが一定の場合、充填効率に比例するとみなせる。そこでクランク角に対して時々刻々の、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値及び充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値を各マップに記憶させる。充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値または充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ内容を図6に示す。図6においては、横軸にクランク角を、縦軸に回転速度Neを採っており、格子で分割した25の各小区画に小、中、大の圧力値(いずれも正の値)を入れている。このため、5つに区分けした各回転速度域1〜5では、各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値の特性が右外に示したようになっており、回転域が定まれば、その回転域に対応する各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値が定まる。従って、エンジンの仕様により吸気バルブ開時期IVOがわかっているので、その吸気バルブ開時期IVOと一致するクランク角とそのときの回転速度Neから図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照することにより、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=後述するPmin)または充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=後述するPmax)を求めることができる。図6は一例であり、充填効率最小時と充填効率最大時とで各小区画に格納されている値は異なっている。充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値をそれぞれ適合して求めておき、2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップとして記憶させておく。
エンジン運転中の実際の充填効率は充填効率最小値と充填効率最大値の間にあるから、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップと、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップの2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを用いて補間計算により求めればよい。すなわち、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値をPmin、同じく充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値をPmax、充填効率最小値と実際の充填効率の差をa、充填効率最大値と実際の充填効率の差をbとすると、実際の充填効率のときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを次の補間計算式により求めることができる。
PCTRM=Pmin+(Pmax−Pmin)×a/(a+b)
…(13)
a=ITAC−ITACMN …(補4)
b=ITACMX−ITAC …(補5)
ただし、Pmin :充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と 平均排気圧力との差分値[kPa]、
Pmax :充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と 平均排気圧力との差分値[kPa]、
ITAC :実際の充填効率[%]、後に算出方法を説明する
ITACMN:充填効率最小値[%]、
ITACMX:充填効率最大値[%]、
ここで、(補4)式右辺の充填効率最小値ITACMN、(補5)式右辺の充填効率最大値ITACMXはエンジンの負荷と回転速度Neをパラメータとして予め求めておく。
さて、排気バルブ用VTC機構28が備えられる場合に、排気バルブ用VTC機構28を非作動状態から作動状態に切換えたとき、排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが排気バルブ用VTC機構非作動状態での最遅角位置から進角側へと移動し、この排気バルブ開閉時期の移動により排気圧力の圧力脈動にずれが生じる。このため、排気バルブ用VTC機構28の非作動時(つまり排気バルブ用VTC機構を備えない場合)に図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを適合している場合に、排気バルブ用VTC機構28の作動時にも、その排気バルブ用VTC機構非作動時に対して適合している図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップをそのまま用いて、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを求めたのでは、排気バルブ用VTC機構28の作動に伴う排気圧力の圧力脈動のずれ分だけ吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMの算出に誤差が生じ、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO(燃焼室内残留ガス量)の算出に誤差が生じる。従って、排気バルブ用VTC機構28の作動時には排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを新たに算出する必要がある。
そこで、これについて検討したところを次に述べると、まず、排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるとき、つまり排気バルブ開時期EVOが初期位置の最遅角位置にあるときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形(図では「EVO遅」で示す。)と、排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角しているときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形(図では「EVO早」で示す。)とを重ねて示したのが図7である。図7によれば、排気バルブ開時期EVOが例えば10°進角したとき、その同じ10°だけ基準の圧力脈動波形を左側(進角側)に平行移動すればぴったり重なる、つまり燃焼室内圧力の圧力脈動波形の波長は変化しないことを表している。ここで、基準の圧力脈動波形とは、基準排気温度の条件で排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるときの燃焼室圧力の圧力脈動波形である。基準排気温度としては最も低い排気温度を設定しておく。
従って、この場合には次のようにして排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出することができる。すなわち、図16にモデル波形を示すと、図16は排気圧力の圧力脈動波形のうち脈動分だけを取り出して示している。排気バルブ用VTC機構28の非作動時に脈動分の波形が実線であるとして、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したときには脈動分の波形が実線より1点鎖線へと左側に平行移動することとなる。図示の位置に吸気バルブ開時期IVOがあるとすると、排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは●印位置の値であったのが、いま求めたい吸排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは〇印位置の値へと移る。この○印位置の値は、同図より吸気バルブ開時期IVOから所定値ADVだけ遅らせたクランク角(IVO+ADV)での実線上の値、つまり△印位置の値と同じである。ということは、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ開時期が所定値ADVだけ進角した場合に吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを求めるには、吸気バルブ開時期IVOに代えて、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算した値を用いて実線の特性、つまり排気バルブ用VTC機構非作動時に適合している図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照すればよいことを意味する。言い換えると、排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるときに基準排気温度において充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップと、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップとの2つの差分値のマップを適合しておけば、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したとき、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算したクランク角と、そのときの回転速度Neとからこれら2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照して、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値と、充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値とを求めることで、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角しているときにおいても、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(Pmin)及び充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(Pmax)を精度良く求めることができるのである。
図7、図16は排気温度が基準排気温度にある場合、つまり排気バルブ用VTC機構28の非作動時と作動時とで排気温度が変わらない場合であったが、次には排気温度が基準排気温度より高温側に外れる場合を考える。すなわち、排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるときの燃焼室内圧力の脈動波形(図では「IVO遅」で示す。)と、排気温度が基準排気温度よりも高温側の条件において排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角しているときの燃焼室内圧力の脈動波形(図では「IVO早」で示す。)とを重ねて示したのが図8である。図8によれば、排気バルブ開時期EVOが例えば10°進角したとき、その同じ10°だけ基準の圧力脈動波形が左側(進角側)に移動するほか、図7と相違して燃焼室内圧力の圧力脈動波形の波長が短くなっていることを表している。
従って、この場合には次のようにして排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出することができる。すなわち、図17にモデル波形を示すと、図17も図16と同じに排気圧力の脈動波形のうち脈動分だけを取り出して示している。排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28の非作動時に脈動分の波形が実線であるとして、排気バルブ用VTC機構28の非作動時でも排気温度が基準排気温度よりも高温側の条件になると、脈動分波形の波長が短くなるため、脈動分の波形が実線より破線へと変化する。つまり、排気温度が基準排気温度よりも高温側の条件では脈動分の波長が短くなる分だけ脈動分波形が、排気バルブ開時期を基準として、排気温度が基準排気温度にある条件にあるときよりも左側に移動する。
このように、排気バルブ用VTC機構の非作動時でも排気温度が基準排気温度より高温側に外れることによって脈動分波形の波長が短くなる(排気温度が基準排気温度より低温側に外れるときには脈動分波形の波長が長くなる)ときには、基準の脈動分波形に対して排気の速度による補正を加えることで、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時の脈動分波形を新たに算出する。ここで、基準の脈動分波形とは、排気温度が基準排気温度にある条件での脈動分波形である。この基準の脈動分波形は、例えば、図6に合わせて5つの各回転域毎に、クランク角をパラメータとして記憶させておく。そして、その新たに算出した、図6に合わせた5つの各回転域毎の脈動分波形を参照して、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを作成する。つまり、図6は排気温度が基準排気温度にある条件での排気バルブ非作動時に適合させて予め作成している各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップであるが、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件になると、その都度、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ非作動時に適合する各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを新たに作成するのである。
次に、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したときには脈動分波形が、図17に重ねて示したように破線より1点鎖線へとさらに左側に平行移動することとなる。
さて、いま図示の位置に吸気バルブ開時期IVOがあるとすると、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは◎印位置の値であったのが、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構作動時の、求めたい吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは、〇印位置の値へと移る。この○印位置の値は、同図より吸気バルブ開時期IVOから所定値ADVだけ遅らせたクランク角(IVO+ADV)での破線上の値、つまり△印位置の値と同じである。ということは、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ開時期が所定値ADVだけ進角した場合に吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを求めるには、吸気バルブ開時期IVOに代えて、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算した値を用いて破線の特性、つまり排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時に適合するように新たに作成した上記の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照すればよいことを意味する。言い換えると、充填効率最小時と充填効率最大時に排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構非作動時の脈動分波形(つまり基準の脈動分波形)を、図6に示す5つの各回転域毎にクランク角をパラメータとしてそれぞれマップに記憶させておき、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れた条件になると、この基準の脈動分波形に対して排気の速度(排気圧力伝播速度)による補正を加えることで、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時の脈動分波形を算出し、その算出した図6に示す5つの各回転域毎の脈動分波形に基づいて、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時かつ充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップと、同じく排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時かつ充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップとの2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを、図6と同様にして新たに作成する。そして、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件で排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したとき、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算したクランク角と、そのときの回転速度Neとから上記新たに作成した2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照して、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構作動時かつ充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmin)と、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構作動時かつ充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmax)を求めることで、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件で排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOを所定値ADVだけ進角しているときにおいても、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmin)及び充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmax)を精度良く求めることができるのである。
図8、図17では排気温度が基準排気温度より高温側に外れる場合で説明した。ここでは、基準排気温度として最低の排気温度を設定しているため、運転条件の相違で排気温度が基準排気温度より高温側に外れる場合を考えたが、後述するように基準排気温度として最高の排気温度を設定したときには、運転条件の相違で排気温度が基準排気温度より低温側に外れる場合を考えなければならない。この場合には、排気バルブ用VTC機構28の非作動時でも排気温度が基準排気温度より低温側の条件になると、脈動分波形の波長が長くなるため、その脈動分の波長が長くなる分だけ脈動分波形が、排気バルブ開時期を基準として、排気温度が基準排気温度にある条件にあるときよりも右側に移動することとなるので、後は、本実施形態と同様に考えればよい。
上記排気の速度c[m/s]は、次のように音速の式を用いて算出する。
c=(κ×PIVO/ρ) …(14)
ただし、κ :排気の比熱比、後に算出法を説明する
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、
ρ :排気の密度、
(14)式右辺の排気の密度ρの算出には次の式を用いる。
ρ=REX×TEX/PIVO …(15)
ただし、REX :排気ガス定数[kJ/kg/K]、(6)式にて算出済
TEX :平均排気温度[K]、後に算出法を説明する
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、
(14)、(15)式より、排気の速度cは排気の密度ρを消去した次式により算出することができる。
c=(κ×REX×TEX)^(1/2) …(16)
ただし、REX:排気ガス定数[kJ/kg/K]、(6)式にて算出済
TEX:平均排気温度[K]、後に算出法を説明する
燃焼室内から触媒9までの距離Lは既知であるので、次式により排気温度が基準排気温度より高温側に外れたときの脈動分波形の波長λ[m]を算出する。
λ=L/c …(17)
ただし、L:燃焼室内から触媒9までの距離[m]
ここで、基準の脈動分波形の波長λ0は予め定まっているので、補正項はλ/λ0となる。従って、排気温度が基準排気温度より高温側に外れたときの脈動分波形は次のようにして求めることができる。
基準排気温度から高温側に外れたときの脈動分波形
=基準の脈動分波形×(λ/λ0) …(補6)
上記(16)式右辺の比熱比κの算出方法を示す。排気の定圧比熱Cpは、単純化した次の反応式で考える。
Cp=(Cp_CO2(TEX)×A+Cp_H2O(TEX)×B
+Cp_N2(TEX)×C+Cp_O2(TEX)×D
+Cp_CO(TEX)×E)
/(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)
…(18)
ただし、Cp_CO2(TEX):CO2の平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_H2O(TEX):H2Oの平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_N2(TEX):N2の平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_O2(TEX):O2の平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_CO(TEX):COの平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
(18)式右辺の各定圧比熱は、それぞれ平均排気温度TEXの関数として次式により算出する。(補7−1)式〜(補7−5)においてTEX^4までは一般的に使われているが、本発明ではTEX^5、TEX^6を追加している。
Cp_CO2(TEX)=5.0×10^(−20)×TEX^6
+1.0×10^(−16)×TEX^5
−5.0×10^(−12)×TEX^4
+2.0×10^(−08)×TEX^3
−6.0×10^(−05)×TEX^2
+0.0727×TEX+20.075
…(補7−1)
Cp_H2O(TEX)=7.0×10^(−21)×TEX^6
−4.0×10^(−16)×TEX^5
+4.0×10^(−12)×TEX^4
−2.0×10^(−08)×TEX^3
+3.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0057×TEX+33.393
…(補7−2)
Cp_N2(TEX)=4.0×10^(−19)×TEX^6
−4.0×10^(−15)×TEX^5
+2.0×10^(−11)×TEX^4
−4.0×10^(−08)×TEX^3
+5.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0207×TEX+31.894
…(補7−3)
Cp_O2(TEX)=5.0×10^(−19)×TEX^6
−5.0×10^(−15)×TEX^5
+2.0×10^(−11)×TEX^4
−4.0×10^(−08)×TEX^3
+3.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0014×TEX+27.941
…(補7−4)
Cp_CO(TEX)=3.0×10^(−19)×TEX^6
−4.0×10^(−15)×TEX^5
+2.0×10^(−11)×TEX^4
−4.0×10^(−08)×TEX^3
+5.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0173×TEX+31.175
…(補7−5)
(18)式により求めた排気の定圧比熱CPから排気の比熱比κを次式により算出する。
κ=Cp/(Cp−REX) …(19)
上記(補4)式右辺、(補5)式右辺の充填効率ITACの算出方法を説明すると、この実際の充填効率ITACは次式により算出する。
ITAC=MA/MAMX …(補8)
ただし、MA :吸入空気量[kg/s]
MAMX:充填効率最大時の吸入空気量[kg/s]、
ここで、吸入空気量MAはエアフローセンサ32により検出する。充填効率最大時の吸入空気量MAMXは実機による計測値とする。
次に、上記(12)式右辺第1項の平均排気圧力PEXの算出方法を説明する。
平均排気圧力PEXは次式で算出する。
PEX=((KTBF×MFEXG^2+KLMF×MFEXG)×REX
×TEX/1000000+PPAMB^2)^(1/2)
…(20)
ただし、MFEXG:排気流量[kg/s]、
PPAMB:大気圧力[kPa]、
KTBF :乱流係数、実験による適合値
KLMF :層流係数、実験による適合値
REX :排気ガス定数、(6)式にて算出済
TEX :平均排気温度、後に算出法を説明する
(20)式は、排気管内各部(触媒)の圧力損失及び大気圧PPAMBから平均排気圧力PEXを算出するものである。排気管内圧力損失は、触媒9入口(乱流)、触媒9(層流)にて生じるため、それぞれを分けて、つまり排気流量MFEXGと乱流係数KTBF及び層流係数KLMFから算出している。乱流係数、層流係数は、機種毎(排気マニホールド及び触媒システム)によって決まる適合項である。大気圧力PPAMBは大気圧力センサ36により検出する。1000000で除しているのは、ガス流量[kg/s]を圧力[kPa]へと換算するためである。
(20)式右辺の排気流量MFEXGは次式により算出する。
MFEXG=MA×(1+TFBYA/14.7) …(21)
ただし、MA :吸入空気量[kg/s]、
TFBYA:目標当量比、
ここで、吸入空気量MAはエアフローセンサ32により検出する。目標当量比TFBYAはエンジンの負荷と回転速度をパラメータとするマップ(図3参照)を参照することにより求める。
〈4〉吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOは、平均排気温度TEX、平均排気圧力PEXで代表される状態から吸気バルブ開時期IVOへの状態変化を断熱変化であると仮定して、次の式により算出する。
TIVO=TEX・(PIVO/PEX)^((κ−1)/κ)
…(22)
ただし、PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、(12)式に て算出済
PEX :平均排気圧力[kPa]、(20)式にて算出済
κ :排気の比熱比、(19)式により算出済
上記(20)式、(22)式右辺の平均排気温度TEXの算出方法を説明する。
平均排気温度TEX[K]を、横軸に廃熱量比(そのときの廃熱量を最大廃熱量で除算した値)、縦軸に排気温度をとった図9の特性から得られる次の実験式から算出する。
TEX=TEXMX−(TEXMX−TEXMN)×exp(−KTEX×Q’)
…(23)
ただし、Q’ :廃熱量[kW]、
TEXMX:廃熱量最大時の排気平衡温度[K]、実験値
TEXMN:廃熱量ゼロ時の排気平衡温度[K]、実験値
KTEX :排気温度への廃熱量の感度(任意定数)、
(23)式右辺の廃熱量Q’は、供給熱量から軸仕事を引くことにより算出できると考え、次式により算出する。
Q’=MA×TFBYA/14.7×(HL−HV)×NCYL/2
−2π×TENG×Ne/60 …(24)
ただし、MA :吸入空気量、式(21)参照
TFBYA:目標当量比、式(21)参照
HL :低発熱量[kw]、シミュレーションによる適合値
HV :気化潜熱[kw]、シミュレーションによる適合値
NCYL :総シリンダ数、
TENG :実トルク推定値[Nm]、
Ne :エンジン回転速度[rpm]、
(24)式においては、軸仕事は実トルク推定値TENGに2πをかけることでエンジン一回転当りの軸仕事として算出している。実トルク推定値TENGは充填効率ITACとエンジン回転速度Neとをパラメータとする図10に示すようなマップを参照することにより求める。エンジン回転速度Neはクランク角センサ(33、34)により検出する。
2.吹き返しガス量M2の算出方法
吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップには、図11のようにマイナスオーバーラップとプラスオーバーラップとがある。
〈1〉マイナスオーバーラップの場合
図11上段に示すマイナスオーバーラップでは、吸気バルブ開時期での燃焼室内残留ガス量は排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内残留ガス量に等しい。吸気バルブ開時期IVOに、燃焼室内ガスが吸気ポート側に吹き返すが、吸気行程で再流入されるため、最終的な燃焼室内残留ガス量は、吸気バルブ開時期での燃焼室内残留ガス量と等しくなる。つまり、マイナスオーバーラップの場合、吹き返しガス量M2=0である。
〈2〉プラスオーバーラップの場合
図11下段に示すプラスオーバーラップの場合には、先に説明したように、吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を考慮する必要がある。
図12は、プラスオーバーラップの場合において、燃焼室内圧力(Pcyl)、排気圧力(Pex)、吸気圧力(Ain)、排気バルブ周りガス流量、吸気バルブ、排気バルブの各開口面積が、吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中に、つまり吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ閉時期EVCまでのクランク角区間においてどのように変化するのかをモデルで表している。
オーバーラップ中に排気ポート11から燃焼室内へ吹き返される吹き返しガス量は、図12の排気バルブ周りガス流量をクランク角について吸気バルブ開時期IVOより排気バルブ閉時期EVCまでを積分する(あるいは時間で積分する)ことで算出できる。しかしながら、オンボードでの計算を考慮した場合、クランク角に対し時々刻々と変化する排気バルブ周りガス流量を算出するのは現実的でない。そのため図13のように排気バルブ周りガス流量の波形を右上がりの直線1(第1の直線)と右下がりの直線2(第2の直線)との2本の直線で近似し、その2本の直線と、吸気バルブ開時期IVOの直線(図13でIVOを通る垂直線)と、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積を求めることで、吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を推定する。すなわち、図13において点aから点bまでは排気バルブ周りガス流量が負、つまり排気ポート11からのガスが吸気ポート4に吹き返し、点b以降は排気バルブ周りガス流量が正、つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するため、吹き返しガス量M2[kg]を次式により算出する。
M2=|IVO−θ0|×(dm/dθ)ivo/2
+|EVC−θ0|×(dm/dθ)c/2 …(25)
ただし、IVO :吸気バルブ開時期[°]、
(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg]、
θ0 :排気バルブ周りガス流量がゼロとなる点bのクラン ク角[°]、
θ1 :直線1と直線2の交点cのクランク角[°]、
(dm/dθ)c :交点cでの排気バルブ周りガス流量[kg]、
排気バルブ周りガス流量(以下単に「ガス流量」という。)は燃焼室内より排気ポート11に流れる向きを正に採っているので、(25)式右辺第1項は負の値、右辺第2項は正の値となり、(25)式右辺全体としては図13より判断して負の値となると思われるので、そのときには(25)式右辺の値を上記(補1)式に代入するときにM2の絶対値を採って加算する。(25)式のクランク角θは適当なクランク角位置(例えば圧縮上死点)を起点として遅角側に計測したクランク角を用いる。
排気バルブ用VTC機構28を備えないエンジンでは、排気バルブ閉時期EVCは固定であるため(ここでは吸気バルブ開時期IVOも固定とする)、図13に示す2直線とも固定となり、従って、(25)式右辺の吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、ガス流量がゼロとなる点bのクランク角θ0、交点cでのガス流量(dm/dθ)cを予め適合しておけば(25)式により吹き返しガス量M2を算出できる。
しかしながら、本実施形態のように排気バルブ用VTC機構28を備える場合に、排気バルブ用VTC機構28の非作動時に排気バルブ閉時期EVCが図13に示す図示の位置にあったとして、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ閉時期EVCが、排気バルブ用VTC機構非作動時の初期位置である最遅角位置から進角すると、図13に示す直線2が左方に動くこととなり(直線1は変化しない)、直線1と直線2の交点cのクランク角θ1、従って交点cでのガス流量(dm/dθ)cが小さくなる、つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量(図13右側の三角形の面積)が減る。ということは、排気バルブ用VTC機構28を備える場合に、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ閉時期が、排気バルブ用VTC機構非作動時の初期位置から進角したときにも、排気バルブ用VTC機構非作動時に予め適合している値を用いて吹き返しガス量M2を算出したのでは、吹き返しガス量M2の算出に直線2が移動した分の誤差(つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量が減った分の誤差)が生じることを意味する。従って、排気バルブ用VTC機構28を作動させるときには、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCに合わせて、その都度、直線2を決定し、その決定した直線2に基づいて吹き返しガス量M2を算出する必要があるのである。
以下、直線1、直線2の算出方法を説明する。
〔1〕直線1の算出方法
(ア)吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoの算出方法
吸気バルブ開時期IVOに吸気バルブ通過ガス流量=0であるので、吸気バルブ開時期IVOに、
燃焼室内質量変化=排気バルブ通過ガス流量 …(26)
であるとして算出する。状態方程式(M=P×V/R/T)の両辺を微分すると次式を得る。
dM/dt=d(P×V/R/T)/dt
=V/R/T×dP/dt十P/R/T×dV/dt
−V×P/T/R^2×dR/dt
−V×P/T^2/R×dT/dt
…(27)
ただし、M:燃焼室内ガス質量[kg]
P:燃焼室内圧力[kPa]、吸気バルブ開時期にはPIVOとする
V:燃焼室内容積[m^3]、吸気バルブ開時期にはVIVOとする
T:燃焼室内ガス温度[K]、吸気バルブ開時期にはTIVOとする
R:ガス定数[kg/mol・K]、吸気バルブ開時期にはREXとする
吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス温度、ガス定数の各変化は微小なので、
dR/dt=0、dT/dt=0 …(補9)
であると仮定する。吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の燃焼室内圧力変化率を一定とし、また排気バルブ閉時期に燃焼室内圧力が平均マニホールド圧力と等しくなるとすると、次式が成り立つ。
dP/dt=Cpa …(28)
Cpa=(PEVC−PIVO)/((EVC−IVO)/360×Ne/60)
…(補10)
ただし、Cpa :燃焼室内圧力の時間微分値、
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、上記〈3〉に て算出済
PEVC:排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力[kPa]、平均吸気圧力 と等しいとする
Ne :エンジン回転速度[rpm]、
ここで、PEVC−PIVOを360×Ne/60で除算することにより、[/°]の単位を[/sec]の単位へと変換している。平均吸気圧力は吸気圧力センサ44により検出する。エンジン回転速度Neはクランク角センサ(33、34)により検出する。
さらに、
dθ/dt=360×Ne/60=6×Ne …(29)
ただし、θ:クランク角度、クランク角センサ(33、34)にて検出
であるため、(29)式、(28)式を(26)式に代入すると、(26)式は次のようになる。
dM/dθ=V/R/T×Cpa/6/Ne+P/R/T×dV/dθ
…(30)
一方、吸気上死点付近では、燃焼室内容積の変化率は直線的に変化するので、次式で近似する。
dV/dθ=Cva・θ+Cvb …(31)
ただし、Cva:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の傾き[m^3/deg^2]
Cvb:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の切片[m^3]
(31)式を(30)式に代入すると、(30)式は次のようになる。
dM/dθ=V/6/Ne/R/T×Cpa+P/R/T×(Cva・θ+Cvb)
…(32)
ここで、(26)式、(32)式より、吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoは次式で与えられることとなる。
(dm/dθ)ivo=VIVO×Cpa/6/Ne/REX/TIVO
+PIVO/REX/TIVO×(Cva×IVO+Cvb)
…(33)
ただし、VIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内容積[m^3]、算出済
TIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内温度[K]、算出済
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、算出済
IVO :吸気バルブ開時期[°]、算出済
REX :排気ガス定数[kJ/mol/K]、算出済
Ne :エンジン回転速度[rpm]
(イ)点bのクランク角θ0の算出方法
点bでは排気バルブ通過ガス流量=0より、(26)式と同様に
吸気バルブ通過ガス流量=燃焼室内質量変化 …(34)
とする。状態方程式から燃焼室内質量変化は次式となる。
dM/dt=d(P×V/R/T)/dt
=V/R/T×dP/dt+P/R/T×dV/dt
−V×P/T/R^2×dR/dt
−V×P/T^2/R×dT/dt …(35)
ただし、M:燃焼室内ガス質量[kg]
P:燃焼室内圧力[kPa]、排気バルブ通過ガス流量=0時は排気圧力 に等しく排気圧力=(PEX+PIVO)/2とする
V:燃焼室内容積[m^3]、排気バルブ通過ガス流量=0時は吸気上死 点付近であり、かつ燃焼室内容積の変化量は微々たるものなので、吸 気上死点での燃焼室内容積=隙間容積Vc(算出済)を用いる
T:燃焼室内ガス温度[K]、排気バルブ通過ガス流量=0時はTEXと する
R:ガス定数[kg/mol・K]、排気バルブ通過ガス流量=0時はR EXとする
排気バルブ通過ガス流量=0時は吸気上死点付近であり、この吸気上死点付近での燃焼室内ガス温度、ガス定数の変化は微小なので、
dR/dt=0、dT/dt=0 …(補11)
と仮定する。次に、吸気バルブ通過ガス量(dm/dt)inは次式で表せる。
(dm/dt)in=Ain×Pex/(REX×TEX)×κ^(1/2)
×(2/(κ+1))^(κ+1)
/(2/(κ−1))×RMF1 …(36)
ただし、Ain :吸気バルブ開口面積、後に算出方法を説明する
TEX :平均排気温度、算出済
Pex :排気圧力、ここでは(PEX+PIVO)/2とする
REX :排気ガス定数、算出済
κ :排気の比熱比、算出済
RMF1:流量比、
(36)式右辺の流量比RMF1とは、音速時のガス流量と、通常時のガス流量の比(排気バルブ通過ガス流量=0時のクランク角を算出するときに用いる流量比)であり、次式で表せる。
RMF1=(Pin/Pex)^(1/κ)×(2×κ/(κ−1))
×(1−(Pin/Pex)^((κ−1)/κ))^(1/2)
/κ^(1/2)/(2/(κ+1))^((κ+1)/2/(κ−1))
…(37)
ただし、Pin:平均吸気圧力、実験による適合値とする
Pex:排気圧力、ここでは(PEX+PIVO)/2とする
ここで、(37)式において排気圧力Pexとして(PEX+PIVO)/2としているのは、排気バルブ通過ガス流量=0時はオーバーラップ前半にあり燃焼室内での脈動が大きいためである。
また、
β=Pex/(REX×TEX)×κ^(1/2)
×(2/(κ+1))^(κ+1)/(2/(κ−1))×RMF1 …(38)
とすると、(36)式は次式となる。
(dm/dt)in=Ain×β …(補12)
排気バルブ通過ガス流量はゼロであるため、dM/dt=(dm/dt)inとなる。また、吸気バルブ開時期直後のバルブプロファイル(マップ値)を2次関数で近似すると、吸気バルブ開口面積Ainは次式で表される。
Ain=Cai×(θ−IVO)^2 …(補13)
ただし、Cai:係数、
IVO:吸気バルブ開時期[°]、
よって、(35)式は次式となる。
V/R/T×dP/dt+P/R/T×dV/dt
=Cai×(θ−IVO)^2×β …(39)

点aで説明した上記(27)式、(28)式、(30)式を用いて、さらに
V/REX/TEX×6×Ne=X …(補14)
P/REX/TEX×6×Ne=α …(補15)
とおくと、(39)式は次の式となる。
βCaiθ^2−θ×(2×β×Cai×IVO+α×Cva)
−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa=0
…(補16)
(補16)式はクランク角θについての2次方程式であるので、クランク角θについて解くと、解は次式で得られる。
θ=2×β×Cai×IVO+α×Cva
±((2×β×Cai×IVO+α×Cva)^2−4×β×Cai
×(−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa))
^(1/2)/2/β/Cai …(補17)
この2つの解のうち正の値となるほうをガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0とおけば、θ0は次式となる。
θ0=2×β×Cai×IVO+α×Cva
−((2×β×Cai×IVO+α×Cva)^2−4×β×Cai
×(−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa))
^(1/2)/2/β/Cai …(補18)
従って、点a、点bを通る直線1を関数y1とおくと、関数y1はこのようにして得られたガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気バルブ開時期IVO、吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoを用いて次式により与えられる。
y1=−(dm/dθ)ivo/(θ0−IVO)×θ
+(dm/dθ)ivo/(θ0−IVO)×θ0
…(補19)
ただし、(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期でのガス流量、
θ0 :ガス流量がゼロとなるときのクランク角[°]、
〔2〕直線2の算出方法
吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ後半(交点cのクランク角θ1以降)の吹き返しガス量を点d、eを通る直線2で近似する。基本的に点dのクランク角θ2は交点cのクランク角θ1以降でかつ排気バブル閉時期EVCより手前であればどこでも良いが、ここではクランク角が吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)とする。すなわち、点dのクランク角θ2を次式により与える。
θ2=EVC−(EVC−IVO)/4 …(補20)
ただし、EVC:排気バルブ閉時期[°]、
IVO:吸気バルブ開時期「°]、
ここで、吸気バルブ開時期IVOは固定で考えているので一定値である。また、排気バルブ閉時期EVCは、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値より知り得る。
クランク角θ2では吸気バルブ16が十分に開いており、燃焼室内圧力が吸気圧力とほぼ等しいと仮定する。点dのガス流量(dm/dθ)dは次式で算出する。
(dm/dθ)d=Aex×PEX/(REX×TEX)^(1/2)
×κ^(1/2)×(2/(κ+1))^((κ+1)
/(2×(κ−1)))×RMF2/6/Ne
…(40)
ただし、Aex :θ2での排気バルブ開口面積、後に算出方法を説明する
PEX :平均排気圧力、算出済
REX :排気ガス定数、算出済
TEX :排気温度、算出済
κ :排気の比熱比、算出済
RMF2:流量比、
(40)式右辺の流量比RMF2は、オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置で排気バルブ通過ガス流量を算出するときに用いる流量比であり、次式で表せる。
RMF2=(Pin/PEX)^(1/κ)×(2×κ/(κ−1))
×(1−(Pin/PEX)^((κ−1)/κ))^(1/2)
/κ^(1/2)/(2/(κ+1))^((κ+1)/2/(κ−1))
…(補21)
ただし、Pin:平均吸気圧力、実験による適合値とする
PEX:平気排気圧力、算出済
ここで、(補21)式において平均排気圧力PEXを用いているのは、オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点はオーバーラップ後半にあり燃焼室内での脈動が小さくなるためである。
(40)式右辺の点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexは次のようにして算出する。図18において排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ開口面積の波形が実線であるとして、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角したときには排気バルブ開口面積の波形が実線より1点鎖線へと左側に平行移動する。図示の位置に点dでのクランク角θ2があるとすると、点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexは排気バルブ用VTC機構非作動時に●印位置の値であったのが、いま求めたい吸排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開口面積Aexは〇印位置の値へと小さくなる側に移る。この小さくなった○印位置の値は、同図より点dでのクランク角θ2から所定値ADVだけ遅らせたクランク角(θ2+ADV)での実線上の値、つまり△印位置の値と同じである。ということは、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角した場合に点dでのクランク角θ2での排気バルブ開口面積Aexを求めるには、点dでのクランク角θ2に代えて、点dでのクランク角θ2に所定値ADVを加算した値を用いて実線の特性、つまり排気バルブ用VTC機構非作動時に適合している排気バルブ開口面積の特性を参照すればよいことを意味する。言い換えると、排気バルブ用VTC機構非作動時に適合している排気バルブ開口面積の特性(図18に示す実線の特性)をクランク角をパラメータとする排気バルブ面積のテーブルとして記憶させておき、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角したとき、点dでのクランク角θ2に所定値ADVを加算したクランク角からこの排気バルブ面積のテーブルを参照させることで、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角しているときにおいても、点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexを精度良く求めることができる。
点eでは排気バルブ16が閉じるためガス流量はゼロとなる。したがって、点d、点eを通る直線2を関数y2とおくと、関数y2は、このようにして求めた点dのガス流量(dm/dθ)dと、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVC(排気バルブ用VTC機構非作動時には排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ閉時期EVC)とを用いて次式により与えられる。
y2=−4×(dm/dθ)d/(EVC−IVO)×(θ−EVC)
…(41)
この(41)式と上記の(補7)式とを連立させて解くと、その解であるクランク角θが点cのクランク角θ1として算出される。
また、点cのガス流量(dm/dθ)cは、(41)式のクランク角θに点cのクランク角θ1を代入することにより得られる。
このようにして求めた吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0、点cのガス流量(dm/dθ)cの3つの値を上記(25)式に代入して吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出する。
これで、排気バルブ用VTC機構28を備える場合に燃焼室内残留ガスを算出するについて検討したところの説明を終える。
次に、図19はエンジンコントローラ31内で行われる燃焼室内残留ガス量推定装置のブロック図で、当該装置は吸気バルブ開時期燃焼室内容積算出部51、排気ガス定数算出部52、平均排気温度算出部53、平均排気圧力算出部54、比熱比算出部55、充填効率算出部56、吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57、吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58、吸気バルブ開時期燃焼室内ガス量算出部59、オーバーラップ中吹き返しガス量算出部60、残留ガス量算出部61からなる。
まず、吸気バルブ開時期燃焼室内容積算出部51では、排気バルブ閉時期EVCと、上記(7)式〜(11)式を用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOを算出する。ここで、排気バルブ閉時期EVCは排気バルブ用VTC機構28に与える指令値よりわかっている。
排気ガス定数算出部52では、目標当量比TFBYAと、上記(6)式、(補3)式とを用いて排気ガス定数REXを算出する。目標当量比は、図3で示したように、エンジンの負荷と回転速度Neに応じた値である。
平均排気温度算出部53では、実トルク推定値TENG、エアフローセンサ32により検出される吸入空気量MA、目標当量比TFBYA、エンジン回転速度Neから上記(23)式、(24)式を用いて平均排気温度TEXを算出する。
平均排気圧力算出部54では、エアフローセンサ32により検出される吸入空気量MA、目標当量比TFBYA、エンジン回転速度Ne、排気ガス定数REX、大気圧力センサ36により検出される大気圧力PPAMBと、上記(20)式、(21)式とを用いて平均排気圧力PEXを算出する。
比熱比算出部55では、平均排気温度TEX、排気ガス定数REXと上記(18)式、(補7−1)式〜(補7−5)式、(19)式とを用いて排気の比熱比κを算出する。
充填効率算出部56では、エアフローセンサ32により検出される吸入空気量MAと上記(補8)式とを用いて実際の充填効率ITACを算出する。
吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57では、平均排気温度TEX、エンジン回転速度Ne、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVC、平均排気圧力PEX、実際の充填効率ITAC、排気の比熱比κと、上記(12)式、(13)式、(16)式、(17)式、(補6)式とを用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する。
吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58では、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、平均排気圧力PEX、平均排気温度TEXと、上記(22)式、(23)式、(24)式とを用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOを算出する。
吸気バルブ開時期燃焼室内ガス量算出部59では、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気ガス定数EX、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOと、上記(1)式とを用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出する。
オーバーラップ中吹き返しガス量算出部60では、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVC、平均排気圧力PEX、排気の比熱比κ、エンジン回転速度Ne、吸気圧力センサ44により検出される吸気圧力、排気ガス定数REX、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOと、上記(25)式、(33)式、(補18)式、(補19)式、(補20)式、(40)式、(41)式等とを用いて吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2算出する。
燃焼室内残留ガス量算出部61ではこの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2と、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を加算して燃焼室内残留ガス量を算出する。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
排気バルブ用VTC機構28が非作動時(第1の状態時)から作動時(第2の状態時)へと切換わった場合に、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開時期での排気圧力、燃焼室内圧力が排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ開時期での排気圧力、燃焼室内圧力と相違することとなるため、その相違する圧力分だけ、燃焼室内残留ガス量も、排気バルブ用VTC機構非作動時の値から大きく変化してしまう。
この場合に、本実施形態(請求項1、15に記載の発明)によれば、図19に示したように排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCに基づいて、吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出し、この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOに基づいて、吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOを算出し、これら吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOに基づいて、吸気バルブ開時期燃焼室内ガス量算出部59が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出し、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期に基づいて、オーバーラップ中吹き返しガス量算出部60が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量M2を算出し、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1と、このオーバラップ中の吹き返しガス量M2とに基づいて、燃焼室内残留ガス量算出部61が排気バルブ用VTC機構作動時の燃焼室内残留ガス量を算出している。すなわち、排気バルブ用VTC機構28が非作動時より作動時に切換わったときには、その排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOと、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOとを改めて算出し、その算出した値に基づいて排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出すると共に、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ閉時期に基づいて、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出するので、排気バルブ用VTC機構28が非作動時より作動時に切換わったときにも、燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
基準排気温度時に排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時へと切換わった場合に、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力は、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と相違することとなる。
この場合に、本実施形態(請求項2、16に記載の発明)によれば、平均排気圧力PEXを算出し(上記の(20)式、(21)式を参照)、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分)とに基づいて、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出し(図16を用いて説明したところを参照)、この算出された基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとに基づいて、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する(上記の(12)式を参照)ので、基準排気温度時に排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時に切換わったときにも、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを精度良く推定することができる。
排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)を実現する方法として、排気バルブ用VTC機構作動時の、相違する排気バルブ開時期ごとに排気バルブ用VTC機構作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを作成して記憶させておくことが考えられるが、その手法では莫大な記憶容量が必要になってしまう。
これに対して、本実施形態(請求項3、17に記載の発明)によれば、記憶させる必要があるのは、図6に示したように、排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値についてだけであるので、記憶容量の大幅な削減を行い得る。
排気バルブ用VTC機構非作動時の運転状態の変化により基準排気温度時から基準排気温度より高温側の排気温度時に切換わった場合に、基準排気温度より高温側の排気温度時の排気の速度c(排気圧力伝播速度)が基準排気温度時よりも大きくなり、排気圧力脈動分の波長λが基準排気温度時の波長λ0よりも短くなる。そのため、基準排気温度より高温側の排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力が、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と相違することとなる。さらに、基準排気温度より高温側の排気温度時に排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時へと切換わると、基準排気温度より高温側の排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力は、基準排気温度より高温側の排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と相違することとなる。
この場合に、本実施形態(請求項4、18に記載の発明)によれば、平均排気圧力PEXを算出し(上記の(20)式、(21)式を参照)、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時の排気の速度c(排気圧力伝播速度)を算出し(上記の(16)式を参照)、この算出された排気の速度cと、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)とに基づいて、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)を算出し(図17を用いて説明したところを参照)、この算出された基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとに基づいて、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する(上記の(12)式を参照)ので、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時から基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時に切換わったときにも、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを精度良く推定することができる。
排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時に切換わり、例えば、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCが排気バルブ用VTC機構非作動時よりも所定値ADVだけ進角側に移ったとすれば、吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量が小さくなる分だけ、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2が、この排気バルブ閉時期の進角分に対応して排気バルブ用VTC機構非作動時より大きくなる。このため、排気バルブ用VTC機構作動時に排気バルブ閉時期が排気バルブ用VTC機構非作動時より所定値ADVだけ進角側に移ったときにも、排気バルブ用VTC機構非作動時のままの吹き返しガス量を算出したのでは、吹き返しガス量の算出に、排気バルブ閉時期の進角分に対応する誤差(つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量が小さくなる分の誤差)が生じる。
これに対して、本実施形態(請求項5、19に記載の発明)によれば、吸気バルブ開時期から排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期までのガス流量(dm/dθ)(各クランク角での排気バルブ周りガス流量)を算出し、この吸気バルブ開時期から排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期までのガス流量(dm/dθ)に基づいて、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出するので、排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時に切換わったときにも、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く推定することができる。
本実施形態(請求項6、20に記載の発明)によれば、図13に示したように、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCまでのガス流量((dm/dθ)各クランク角での排気バルブ周りガス流量)の波形を直線1(第1の直線)と直線2(第2の直線)との2本の直線で近似し、その2本の直線と、吸気バルブ開時期IVOの直線と、ガス流量ゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積を求めることで(上記(25)式を参照)、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出するので、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出が容易となる。
排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積と、排気バルブ用VTC機構作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積とを別々にテーブル値として記憶させておき、排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ閉時期から一方のテーブルを参照して、排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間の3/4が経過した点d1(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)での排気バルブ開口面積を求め、その求めた排気バルブ開口面積に基づいて点d1でのガス流量を算出し、また、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期から他方のテーブルを参照して、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間の3/4が経過した点d2(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)での排気バルブ開口面積を求め、その求めた排気バルブ開口面積に基づいて点d2でのガス流量を算出するのでは、テーブルの記憶容量が倍必要になる。
これに対して、本実施形態(請求項8、22に記載の発明)によれば、排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積をテーブル値として記憶しておき、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期とこのテーブル値とに基づいて、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間の3/4が経過した点d(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)でのガス流量(dm/dθ)dを算出する。すなわち、本実施形態(請求項8、22に記載の発明)によれば、記憶させる必要があるのは、排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積についてだけであるので、記憶容量の削減を行い得る。
さて、排気バルブ用VTC機構作動時に(あるいは排気バルブ用VTC機構非作動時についても)吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間(以下単に「オーバーラップ期間」という。)が短い場合には、点dでのクランク角θ2を一定値(オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置)で設定しても、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く算出することができる。曲線で形成される、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中のガス流量dm/dθの波形を2本の斜めの直線で近似するが、例えば図20(A)に示したように、オーバーラップ期間が所定値より短かければ、オーバーラップ中にガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾きは小さく、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2が少ないため、オーバーラップ期間により決まるクランク角位置である点dでのクランク角θ2が最適値ではなくても、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出精度はそれほど悪化しない。
しかしながら、エンジンや排気バルブ用VTC機構の仕様によっては、オーバーラップ期間が所定値より長い場合がある。このようなエンジンでは、排気バルブ用VTC機構作動時にオーバーラップ期間が所定値より小さい場合に、点dでのクランク角θ2を一定値で設定して、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間中の吹き返しガス量M2を精度良く算出し得ていたとしても、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなると、オーバーラップ中にガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾きが大きくなりかつ吸気バルブ開時期から排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期までの各クランク角でのガス流量dm/dθの波形は曲線で構成される部分が多くなるため、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなった場合にも、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値未満の場合に設定している、点dでのクランク角θ2をそのまま用いたのでは、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出誤差が大きくなる。すなわち、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が長くなるにつれ、図20(B)に示したようにガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾きが大きくかつ曲線で構成される部分が多くなり2本の斜めの直線1,2とガス流量dm/dθの波形とのずれが大きくなるため、オーバーラップ期間により決まるクランク角位置である点dでのクランク角θ2を最適な位置に設定しない場合、2本の斜めの直線と、吸気バルブ開時期IVOの直線と、ガス流量dm/dθがゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積として算出している、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の推定精度が悪化してしまうのである。なお、図20(A)、図20(B)では吸気バルブ開時期IVOを一致させたタイミングで示しているが、必ずしも一致するものでない。オーバーラップ期間が長くなるにつれて吸気ポート圧と排気ポート圧の差圧が小さくなって吹き抜けるガス流速がそれ以上大きくならずに一定になるが、オーバーラップ期間が長い場合の後半区間で吸気ポート圧と排気ポート圧の差圧が小さくガス流速が一定となっている。
そこで、第2実施形態は、排気バルブ用VTC機構28の作動で、排気バルブ閉時期EVCが排気バルブ用VTC機構非作動時の初期位置である最進角位置から遅角側に移動してバルブオーバーラップ期間が長くなる場合を扱う。すなわち、第2実施形態では、排気バルブ用VTC機構作動時にオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、点dでのクランク角θ2(第1の直線と第2の直線の2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)を、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中のガス流量dm/dθ(排気バルブ周りガス流量)がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾きに基づいて算出する。
なお、第2実施形態の対象は、吸気バルブ開時期IVOは一定のまま排気バルブ用VTC機構28の作動でバルブオーバーラップ期間が長くなる場合に限られるものでない。例えば、上記の第1実施形態では、吸気バルブ用VTC機構27は非作動状態にあるものとして説明したが、吸気バルブ用VTC機構27を作動させると、排気バルブ閉時期EVCは変わらないのに吸気バルブ開時期IVOが進角側に移動してバルブオーバーラップ期間が長くなることがあり、この場合にも第2実施形態を適用できる。また、吸気バルブ用VTC機構27と排気バルブ用VTC機構28とが共に作動して、バルブオーバーラップ期間が長くなる場合にも第2実施形態を適用できる。要は、吸気バルブ用VTC機構27と排気バルブ用VTC機構28の作動、非作動の組合せによりバルブオーバーラップ期間が長くなる場合に第2実施形態を適用できる。
次に、排気バルブ用VTC機構の作動でオーバーラップ期間が所定値より長くなった場合の点dでのクランク角θ2の設定方法を図21を参照して具体的に説明する。
図21に示したように、排気バルブ用VTC機構作動時にオーバーラップ期間が所定値より長い場合のガス流量の波形が、実測またはシミュレーションによって得られたとする。この場合に、点eより左側に向かって、一定のクランク角毎にθ21,θ22,…,θ2n-1,θ2n(nは正数)を取り、それら各クランク角のときの曲線上の点を順番にd1,d2,…,dn-1,dnとする。nの数を多くするほど吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出精度は向上するが、その反面で算出時間が増えるので、算出精度と算出時間のバランスを考えてnの数を決める。
まず、e点と1番目のd1点を結んだ直線を仮の直線2(図21参照)としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を上記〔2〕で前述したところに従って計算する。すなわち、点d1でのクランク角θ21から上記(40)式を用いて点d1でのガス流量(dm/dθ)d1を算出し、この点d1でのガス流量(dm/dθ)d1を上記(41)式に代入して関数y2を決定し、この関数y2と上記の(補7)式とを連立させて、点cのクランク角θ1を算出する。また、点cのガス流量(dm/dθ)cを上記(41)式のクランク角θに点cのクランク角θ1を代入して得る。一方、図21より吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0を算出する。このようにして求めた吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0、点cのガス流量(dm/dθ)cの3つの値を上記(25)式に代入して、e点とd1点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を計算し、その計算値をM2theo1とする。図21より当然のことながら、e点と1番目のd1点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量計算値M2theo1は、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量より小さい。
次に、e点と2番目のd2点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を上記〔2〕で前述したところに従って計算し、その計算値をM2theo2とする。図21よりe点と2番目のd2点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量計算値M2theo2も、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量より小さい。
後は同様にして、e点とd3,…,dn点を結んだ直線をそれぞれ仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量計算値M2theo3,…,dM2theonを上記〔2〕で前述したところに従って次々と求める。このようにして合計n個の吹き返しガス量計算値M2theo1,…,dM2theonを求めたとき、これらn個の計算値の中には、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量に近い値が含まれていると考えられる。
一方、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量M2realを、図21の波形図から図上計算で、あるいは実測やシミュレーションにより求める。
次に、この求めた実際の吹き返しガス量M2realと、n個の吹き返しガス量計算値M2theo1,…,dM2theonとを比較し、実際の吹き返しガス量M2realに最も近い吹き返しガス量計算値を1つ選択する。例えば、吹き返しガス量計算値M2theo10が実際の吹き返しガス量M2realに最も近い値であったとすれば、図21の波形に対しては点eと10番目の点d10とを結んだ線(一点鎖線参照)を直線2としたとき、実際の吹き返しガス量M2realを最も良く近似する直線となるので、点d10でのクランク角θ210を点dでのクランク角θ2として決定する。
次に、ガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0を、図21の波形図から図上計算で、あるいは実測やシミュレーションにより求め、このガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と、実際の吹き返しガス量M2realとn個の吹き返しガス量計算値との比較により得ている点dでのクランク角θ2とをカップルとする1のデータ((dm2/d2θ)0,θ2)を得る。これで、図21の波形図に対して行うべき1のカップルデータの収集操作を終了する。
オーバーラップ期間が図21と異なれば、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中のガス流量の波形も図21の波形とは相違するものとなる。従って、オーバーラップ期間が長くなることによって吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出誤差が問題となり始めるときのオーバーラップ期間を所定値Aとし、最大のオーバーラップ期間を最大値Bとすれば、所定値Aと最大値Bを含めて所定値Aと最大値Bの間でオーバーラップ期間の異なるk(kは正数)個のガス流量の特性を、図21と同様にして、実測やシミュレーションにより求めることができる。kの数を多くするほど吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出精度は向上するが、その反面で実測やシミュレーションの工数が増えるため、算出精度と工数のバランスを考えてkの数を決める。kが例えば32であれば、そのうちの1つが図21であるので、オーバーラップ期間の異なる残り31のガス流量の各波形について、上記の操作を繰り返し、31の各波形に対して実際の吹き返しガス量M2realを最も良く近似する直線2を決定する。このようにして、オーバーラップ期間の異なる32のガス流量の各波形について、実際の吹き返しガス量M2realを最も良く近似する直線2、つまり当該直線2を決定する点dでのクランク角θ2がそれぞれ得られる。
一方、上記オーバーラップ期間の異なる32のガス流量の各波形から、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0を、波形図から図上計算で、あるいは実測やシミュレーションにより順次求めてゆくと、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と、点dでのクランク角θ2とをカップルとする32のカップルデータが得られる。これで、カップルデータの収集を全て終了する。
次に、横軸をガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0とし、縦軸を(EVC−θ2)/(EVC−IVO)とするグラフに上記収集した32のカップルデータをプロットすると、図22に示したように、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と(EVC−θ2)/(EVC−IVO)との間に強い相関がある、つまり両者の間に比例関係(直線参照)があることを初めて見出した。ここで、図22縦軸の(EVC−θ2)/(EVC−IVO)の値は、オーバーラップ期間(EVC−IVO)に対するEVC−θ2の割合を表している。図22縦軸を点dでのクランク角θ2そのものでなく、(EVC−θ2)/(EVC−IVO)としたのは、オーバーラップ期間に対するEVC−θ2の割合とするほうが一般性をもつ、つまりエンジン排気量の相違や排気バルブ用VTC機構のサイズの相違等を排除できるためである。
図22より、相関を示している直線の傾きとy切片とを適合値として求めることができるので(原点とy軸とをどの位置に置くかは適当に定める)、得られた直線の傾きを所定値ROLM1、得られたy切片を所定値ROLA1とおくと、次式が成立する。
(EVC−θ2)/(EVC−IVO)=ROLM1×(dm2/d2θ)0
+ROLA1
…(42)
この(42)式を点dでのクランク角θ2について整理すると次式が得られる。
θ2=EVC−(EVC−IVO)×((dm2/d2θ)0×ROLM1
+ROLA1)
…(43)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[°]、
IVO :吸気バルブ開時期[°]、
(dm2/d2m)0:ガス流量がゼロとなるときのガス流量の傾き、
ROLM1 :所定値(適合値)、
ROLA1 :所定値(適合値)、
この(43)式が、オーバーラップ期間が所定値より長い場合に、点dでのクランク角θ2を与える式である。ここで、(43)式右辺の、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0は、上記(補19)式をθについて微分してd(y1)/dθを求め、この関数に上記(補18)式により得られるガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を代入することで求めることができる。
ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と直線1の傾きとはそれほど違わないので(図20(B)参照)、(43)式右辺の、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0として、直線1の傾きを用いる、つまり次式により点dでのクランク角θ2を算出することができる(第3実施形態)。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dy1/dθ)×ROLM1+ROLA1)
…(44)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[°]、
IVO :吸気バルブ開時期[°]、
:直線1の傾き、
ROLM1 :所定値(適合値)、
ROLA1 :所定値(適合値)、
ここで、(44)式右辺の直線1の傾き(dy1/dθ)は、上記(補19)式より、次式で与えられる。
dy1/dθ=−(dm/dθ))ivo/(θ0−IVO) …(45)
第1実施形態で点dでのクランク角θ2を与える上記(補20)式と比較してみると、(43)式右辺の(dm2/d2θ)0×ROLM1+ROLA1の部分を定数である1/4と置いたのが第1実施形態であることがわかる。これに対して、第2、第3の実施形態は、第1実施形態で定数と置いていたところを変数で与えるものとなる。言い替えると、第1実施形態は点dでのクランク角θ2を定数で置いていたのに対して、第2、第3の実施形態はオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、定数に代えて点dでのクランク角θ2を、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0や直線1の傾き(dy1/dθ)の関数で与えるものである。
このように、第2、第3の実施形態はオーバーラップ期間が所定値より長い場合を主に扱うものであるが、同じ考え方をオーバーラップ期間が所定値未満の場合にまで拡張し、オーバーラップ期間が所定値未満の場合についても、点dでのクランク角θ2を、上記(43)式や上記(44)式、(45)式により算出する(つまりガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0の関数や直線1の傾き(dy1/dθ)の関数で与える)ようにする。
ただし、第2、第3の実施形態は、この場合に限定されるものでない。例えば、オーバーラップ期間が所定値未満の場合と、オーバーラップ期間が所定値より長い場合とで、点dでのクランク角θ2の設定方法を異ならせるようにしてもかまわない。この場合にはオーバーラップ期間が所定値より大きいか否かを判定する必要があるが、この所定値としては、上記の所定値Aを当てればよい。すなわち、エンジン仕様と排気バルブ用VTC機構の仕様とが定まれば、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間がどの範囲に収まるかが定まるので、オーバーラップ期間が所定値より長いか否かを判定するための所定値を適合により定めることができる。
次に、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中にガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0として、第3実施形態では直線1の傾き(dy1/dθ)で近似したことからわかるように、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0は、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中のガス流量のうち前半部の値に関係する値である。そこで、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0の他にも代用し得る値がないかと検討してみたところ、吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角θでのガス流量(dm/dθ)randや吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoでもよいことが判明した。つまり、図22の横軸に、吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角θでのガス流量(dm/dθ)randや吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoを採用したときにも、横軸と縦軸の2つの値の間に強い相関がある、つまり両者の間に比例関係があることを見出した。第2、第3の実施形態の場合も含めてまとめると、図22において横軸となり得る値は次の4つである。
《1》ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2m)0
《2》直線1の傾き(dy1/dθ)
《3》吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間 の任意のクランク角でのガス流量(dm/dθ)rand
《4》吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo
上記《1》、《2》の場合の点dでのクランク角θ2の算出式は上記(43)式、(44)式に示したので、上記《3》の場合の点dでのクランク角θ2の算出式を次に示す(第4実施形態)。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dm/dθ)rand×ROLM2+ROLA2)
…(46)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[°]、
IVO :吸気バルブ開時期[°]、
(dm/dθ)rand:吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなる クランク角θ0までの間の任意のクランク角θでの ガス流量、
ROLM2 :所定値(適合値)、
ROLA2 :所定値(適合値)、
ここで、(46)式右辺の、吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角でのガス流量(dm/dθ)randは、直線1から求める。つまり、吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間で予め定めているクランク角を上記(補19)式に代入して得られる関数y1の値を、吸気バルブ開時期IVOからガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角でのガス流量(dm/dθ)randとすればよい。
同様にして、上記《4》の場合の点dでのクランク角θ2の算出式を次に示す(第5実施形態)。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dm/dθ)ivo×ROLM3+ROLA3)
…(47)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[°]、
IVO :吸気バルブ開時期[°]、
(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期でのガス流量、
ROLM3 :所定値(適合値)、
ROLA3 :所定値(適合値)、
ここで、(47)式右辺の吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoは上記(33)式により算出済みである。
次に、エンジンコントローラ31ではどのようにして点dでのクランク角θ2が算出され、その算出した点dでのクランク角θ2を用いどのようにして吹き返しガス量M2が求められるのかを説明する。ここでは、第3実施形態の場合で代表させて述べると、図23は第3実施形態のオーバーラップ中吹き返しガス量算出部60(図19参照)のブロック図である。
まず、吸気バルブ開時期ガス流量算出部71では、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、吸気バルブ開時期IVO、排気ガス定数REX、エンジン回転速度Neから上記(33)式を用いて吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivoを算出する。
ガス流量ゼロ時クランク角算出部72では、排気圧力Pex(=(PEX+PIVO)/2)、排気ガス定数REX、平均排気温度TEX、排気の比熱比κ、流量比RMF1、吸気弁開時期IVOから上記(38)式、(補18)式を用いてガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を算出する。
直線1設定部73では、これら吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気バルブ開時期IVOから上記(補19)式を用いて関数y1を設定する。直線1の傾き算出部74では、吸気バルブ開時期ガス流量算出部71で算出している吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、同じくガス流量ゼロ時クランク角算出部72算出しているガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気弁開時期IVOから上記(45)式を用いて直線1の傾き(dy1/dθ)を算出する。
点dのクランク角算出部75では、この直線1の傾き(dy1/dθ)、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVO、所定値ROLM1、ROLA1から上記(44)式を用いて点dでのクランク角θ2を算出する。このように、第3実施形態では、点dでのクランク角θ2は、直線1の傾き(dy1/dθ)に基づいて算出されるものである。
排気バルブ開口面積算出部76では、この点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexを、図18で前述したところに従って算出する。
点dのガス流量算出部77では、この点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aex、排気圧力Pex(=(PEX+PIVO)/2)、排気ガス定数REX、排気温度TEX、排気の比熱比κ、流量比RMF2から上記(40)式を用いて点dのガス流量(dm/dθ)dを算出する。
直線2設定部78では、この点dのガス流量(dm/dθ)d、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVOから上記(41)式を用いて関数y2を設定する。
点cのクランク角算出部79では、上記設定された2つの関数y1、y2を連立させて解くことにより、交点cのクランク角θ1を算出する。
点cのガス流量算出部80ではこの点cのクランク角θ1を上記の関数y1に代入することによって点cのガス流量(dm/dθ)cを算出する。
吹き返しガス量算出部81では、このようにして求めた吸気バルブ開時期でのガス流量(dm/dθ)ivo、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、点cのクランク角θ1、点cのガス流量(dm/dθ)c、吸気バルブ開時期IVOから上記(25)式を用いて吹き返しガス量M2を算出する。
ここで、第2、第3、第4、第5の実施形態の作用効果を説明する。
排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値未満の場合に、直線1と直線2の2本の直線が交わるときのクランク角位置(θ1)より遅角側のクランク角位置(θ2)を一定値(オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置)で設定して、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く算出していたとしても、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなると、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCまでの各クランク角でのガス流量の波形は曲線で構成される部分が多くなるため、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなった場合にも、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値未満の場合に設定している、点dでのクランク角位置θ2をそのまま用いたのでは、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出誤差が大きくなってしまうのであるが、排気バルブ用VTC機構作動時(第2の状態時)にオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、点dでのクランク角θ2(第1の直線と第2の直線の2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)を、第2実施形態(請求項10、24に記載の発明)によれば排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中のガス流量(排気バルブ周りガス流量)がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0に基づいて(上記(43)式参照)、第3実施形態(請求項11、25に記載の発明)によれば直線1(第1の直線)の傾き(dy1/dθ)に基づいて(上記(45)式、(44)式参照)、第4実施形態(請求項12、26に記載の発明)によれば吸気バルブ開時期IVOでのクランク角から排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中のガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角でのガス流量(dm/dθ)randに基づいて(上記(46)式参照)、第5実施形態(請求項13、27に記載の発明)によれば吸気バルブ開時期IVOでのガス流量(dm/dθ)ivoに基づいて(上記(47)式参照)それぞれ算出するので、オーバーラップ期間が所定値より長くなった場合にも、その長くなった、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く算出できる。
実施形態では、基準排気温度を最低の排気温度に設定した場合で説明したが、この場合に限定されるものでなく、例えば、基準排気温度を最高の排気温度に設定したり、最低の排気温度と最高の排気温度との中間の温度に設定する場合にも本発明の適用がある。
実施形態では、排気バルブ用VTC機構28の非作動時に排気バルブ開閉時期が初期位置としての最遅角位置にあり、作動時になると、排気バルブ開閉時期をこの初期位置より進角側に変化させる場合で説明したが、この場合に限定されるものでない。例えば、排気バルブ用VTC機構28の非作動時に排気バルブ開閉時期が初期位置としての最進角位置にあり、作動時になると、排気バルブ開閉時期をこの初期位置より遅角側に変化させる場合にも本発明の適用がある。
請求項1に記載の発明において、吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出処理手順は図9の吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57により、吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出処理手順は図9の吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58により、燃焼室内ガス量算出処理手順は図9の燃焼室内ガス量算出部59により、吹き返しガス量算出処理手順は図9の吹き返しガス量算出部60により、燃焼室内残留ガス量算出処理手順は図9の燃焼室内残留ガス量算出部61によりそれぞれ果たされている。
請求項15に記載の発明において、吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出手段は図9の吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57により、吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出手段は図9の吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58により、燃焼室内ガス量算出手段は図9の燃焼室内ガス量算出部59により、吹き返しガス量算出手段は図9の吹き返しガス量算出部60により、燃焼室内残留ガス量算出手段は図9の燃焼室内残留ガス量算出部61によりそれぞれ果たされている。
本発明の第1実施形態のエンジンの残留ガス量推定装置の概略構成図。 吸気バルブ開時期での燃焼室内残留ガス量の算出方法を説明するための行程図。 目標当量比のマップ特性図。 反応後の生成分子のモル数をまとめた表図。 充填効率、回転速度、吸気バルブ開時期での差分値の関係を示す特性図。 充填効率最小時または充填効率最大時の燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ特性図。 排気温度が基準排気温度にある条件で排気バルブ開時期を最遅角位置から所定値進角させたときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形のずれを表す波形図。 排気温度が基準排気温度より高温側の条件へと変化しかつ排気バルブ開時期を最遅角位置から所定値進角させたときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形のずれを表す波形図。 排気温度と廃熱量比の関係を表す特性図。 実トルク推定値のマップ特性図。 マイナスオーバラップとプラスオーバーラップの違いを表す行程図。 オーバーラップ中の燃焼室内圧力、排気圧力、排気バルブ周りガス流量、吸気バルブ及び排気バルブの各開口面積の変化波形図。 2直線による吹き返しガス量の算出を説明するための図。 排気バルブ開時期から吸気バルブ閉時期までのクランク角区間における燃焼室内圧力、排気圧力、吸気圧力の関係を示す波形図。 燃焼室内圧力の脈動を表す波形図。 排気温度が基準排気温度にある条件で排気弁用VTC機構を作動させたときの脈動分のずれを表す波形図。 排気温度が基準排気温度より高温側の条件へと変化したときの脈動分のずれ及びこの状態でさらに排気バルブ開時期を最遅角位置から所定値進角させたときの脈動分のずれを表す波形図。 排気弁用VTC機構を作動させたときの排気バルブ開口面積のずれを表す波形図。 エンジンコントローラで実行される燃焼室内残留ガス量の算出のためのブロック図。 オーバーラップ期間が所定値未満の場合と、オーバーラップ期間が所定値より長い場合の、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中のガス流量の各変化波形図。 第2実施形態のオーバーラップ期間が所定値より長い場合の、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中のガス流量の変化波形図。 第2実施形態の、ガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0でのガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と(EVC−θ2)/(EVC−IVO)との関係を示す特性図。 第3実施形態のオーバーラップ中吹き返しガス量算出部のブロック図。
符号の説明
1 エンジン
5 燃焼室
15 吸気バルブ
16 排気バルブ
28 排気バルブ用VTC機構(排気バルブ開閉時期可変機構)
31 エンジンコントローラ
32 エアフローセンサ
33、34 クランク角センサ
36 大気圧力センサ
44 吸気圧力センサ

Claims (28)

  1. 開時期に吸気ポートと燃焼室と連通し、閉時期に吸気ポートと燃焼室とを遮断する吸気バルブと、
    開時期に排気ポートと燃焼室と連通し、閉時期に排気ポートと燃焼室とを遮断する排気バルブと
    を備えるエンジンにおいて、
    第1の状態時と第2の状態時とで排気バルブ開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構
    を有し、
    前記第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出処理手順と、
    この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度を算出する吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出処理手順と、
    これら吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量を算出する燃焼室内ガス量算出処理手順と、
    前記第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量を算出する吹き返しガス量算出処理手順と、
    前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量と、このオーバラップ中の吹き返しガス量とに基づいて、前記第2の状態時の燃焼室内残留ガス量を算出する燃焼室内残留ガス量算出処理手順と
    を含むことを特徴とするエンジンの残留ガス量推定方法。
  2. 平均排気圧力を算出する平均排気圧力算出処理手順と、
    前記第2の状態時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分とに基づいて、基準排気温度時かつ前記第2の状態時の排気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分を算出する第2の状態時排気バルブ開時期圧力脈動分算出処理手順と
    を含み、
    この算出された基準排気温度時かつ第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分と前記平均排気圧力とに基づいて、基準排気温度時かつ前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  3. 前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分をマップ値として記憶しておき、
    前記第2の状態時の排気バルブ開時期とこのマップ値とに基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分を算出する
    ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  4. 平均排気圧力を算出する平均排気圧力算出処理手順と、
    基準排気温度より外れた排気温度時の排気圧力伝播速度を算出する排気圧力伝播速度算出処理手順と、
    この算出された排気圧力伝播速度と、前記第2の状態時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分とに基づいて、基準排気温度より外れた排気温度時かつ前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分を算出する第2の状態時吸気バルブ開時期圧力脈動分算出処理手順と
    を含み、
    この算出された基準排気温度より外れた排気温度時かつ第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分と前記平均排気圧力とに基づいて、基準排気温度より外れた排気温度時かつ前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  5. 吸気バルブ開時期から前記第2の状態時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量を算出する排気バルブ周りガス流量算出処理手順
    を含み、
    この吸気バルブ開時期から前記第2の状態時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出する
    ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  6. 前記吸気バルブ開時期から前記第2の状態時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量の波形を第1の直線と第2の直線との2本の直線で近似し、その2本の直線と、吸気バルブ開時期の直線と、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積を求めることで、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出する
    ことを特徴とする請求項5に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  7. 前記第1の直線は前記吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量の点とその後に排気バルブ周りガス流量がゼロとなる点とを結んだ直線であり、
    前記第2の直線は前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置での排気バルブ周りガス流量の点と前記第2の状態時の排気バルブ閉時期での排気バルブ周りガス流量の点とを結んだ直線である
    ことを特徴とする請求項6に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  8. 前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ開口面積をテーブル値として記憶しておき、前記第2の状態時の排気バルブ閉時期とこのテーブル値とに基づいて、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置での排気バルブ周りガス流量を算出する
    ことを特徴とする請求項7に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  9. 前記第1の状態時に排気バルブ開閉時期を初期位置に保ち、前記第2の状態になると排気バルブ開閉時期をこの初期位置より進角側または遅角側に変化させる
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  10. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角での排気バルブ周りガス流量の傾きに基づいて算出することを特徴とする請求項7に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  11. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記第1の直線の傾きに基づいて算出することを特徴とする請求項7に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  12. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記吸気バルブ開時期でのクランク角から前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角までの間の任意のクランク角での排気バルブ周りガス流量に基づいて算出することを特徴とする請求項7に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  13. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量に基づいて算出することを特徴とする請求項7に記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  14. 前記第1の状態は前記排気バルブ開閉時期可変機構の非作動状態であり、前記第2の状態は前記排気バルブ開閉時期可変機構の作動状態であることを特徴とする請求項1から13までのいずれか一つに記載のエンジンの残留ガス量推定方法。
  15. 開時期に吸気ポートと燃焼室と連通し、閉時期に吸気ポートと燃焼室とを遮断する吸気バルブと、
    開時期に排気ポートと燃焼室と連通し、閉時期に排気ポートと燃焼室とを遮断する排気バルブと
    を備えるエンジンにおいて、
    第1の状態時と第2の状態時とで排気バルブ開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構
    を有し、
    前記第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出手段と、
    この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度を算出する吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出手段と、
    これら吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量を算出する燃焼室内ガス量算出手段と、
    前記第2の状態時の排気バルブ閉時期に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量を算出する吹き返しガス量算出手段と、
    前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量と、このオーバラップ中の吹き返しガス量とに基づいて、前記第2の状態時の燃焼室内残留ガス量を算出する燃焼室内残留ガス量算出手段と
    を含むことを特徴とするエンジンの残留ガス量推定装置。
  16. 平均排気圧力を算出する平均排気圧力算出手段と、
    前記第2の状態時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分とに基づいて、基準排気温度時かつ前記第2の状態時の排気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分を算出する第2の状態時排気バルブ開時期圧力脈動分算出手段と
    を含み、
    この算出された基準排気温度時かつ第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分と前記平均排気圧力とに基づいて、基準排気温度時かつ前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する
    ことを特徴とする請求項15に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  17. 前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分をマップ値として記憶しておき、
    前記第2の状態時の排気バルブ開時期とこのマップ値とに基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分を算出する
    ことを特徴とする請求項16に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  18. 平均排気圧力を算出する平均排気圧力算出手段と、
    基準排気温度より外れた排気温度時の排気圧力伝播速度を算出する排気圧力伝播速度算出手段と、
    この算出された排気圧力伝播速度と、前記第2の状態時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分とに基づいて、基準排気温度より外れた排気温度時かつ前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分を算出する第2の状態時吸気バルブ開時期圧力脈動分算出手段と
    を含み、
    この算出された基準排気温度より外れた排気温度時かつ第2の状態時の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分と前記平均排気圧力とに基づいて、基準排気温度より外れた排気温度時かつ前記第2の状態時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する
    ことを特徴とする請求項15に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  19. 吸気バルブ開時期から前記第2の状態時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量を算出する排気バルブ周りガス流量算出手段
    を含み、
    この吸気バルブ開時期から前記第2の状態時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量に基づいて、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出する
    ことを特徴とする請求項15から18までのいずれか一つに記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  20. 前記吸気バルブ開時期から前記第2の状態時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量の波形を第1の直線と第2の直線との2本の直線で近似し、その2本の直線と、吸気バルブ開時期の直線と、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積を求めることで、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出する
    ことを特徴とする請求項19に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  21. 前記第1の直線は前記吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量の点とその後に排気バルブ周りガス流量がゼロとなる点とを結んだ直線であり、
    前記第2の直線は前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置での排気バルブ周りガス流量の点と前記第2の状態時の排気バルブ閉時期での排気バルブ周りガス流量の点とを結んだ直線である
    ことを特徴とする請求項20に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  22. 前記第1の状態時の各クランク角での排気バルブ開口面積をテーブル値として記憶しておき、前記第2の状態時の排気バルブ閉時期とこのテーブル値とに基づいて、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置での排気バルブ周りガス流量を算出する
    ことを特徴とする請求項21に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  23. 前記第1の状態時に排気バルブ開閉時期を初期位置に保ち、前記第2の状態になると排気バルブ開閉時期をこの初期位置より進角側または遅角側に変化させる
    ことを特徴とする請求項15に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  24. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角での排気バルブ周りガス流量の傾きに基づいて算出することを特徴とする請求項21に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  25. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記第1の直線の傾きに基づいて算出することを特徴とする請求項21に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  26. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記吸気バルブ開時期でのクランク角から前記第2の状態時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角までの間の任意のクランク角での排気バルブ周りガス流量に基づいて算出することを特徴とする請求項21に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  27. 前記第2の状態時に吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、前記2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置を、前記吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量に基づいて算出することを特徴とする請求項21に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  28. 前記第1の状態は前記排気バルブ開閉時期可変機構の非作動状態であり、前記第2の状態は前記排気バルブ開閉時期可変機構の作動状態であることを特徴とする請求項15から27までのいずれか一つに記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
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