JP2007253840A - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好なブレーキフィーリングを保持する。
【解決手段】制動時にスリップ制御等の車両挙動制御が実行されると、その間の目標減速度GxRefの補正においてフィードバック制御の積分処理が一時的に停止される。これにより、その車両挙動制御から通常のブレーキ制御に復帰したときに積分値の累積に起因する減速度の急変がなくなる。その結果、車両挙動制御の前後で運転者に違和感を与えることを防止または抑制でき、良好なブレーキフィーリングが保持される。
【選択図】図6
【解決手段】制動時にスリップ制御等の車両挙動制御が実行されると、その間の目標減速度GxRefの補正においてフィードバック制御の積分処理が一時的に停止される。これにより、その車両挙動制御から通常のブレーキ制御に復帰したときに積分値の累積に起因する減速度の急変がなくなる。その結果、車両挙動制御の前後で運転者に違和感を与えることを防止または抑制でき、良好なブレーキフィーリングが保持される。
【選択図】図6
Description
本発明は、車両に設けられた車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。
従来から、マスタシリンダにおける液圧(以下「マスタシリンダ圧」という)とブレーキペダルのペダルストロークとに基づいて目標減速度を算出し、その目標減速度が車両に付与されるように制動力を制御するブレーキ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなブレーキ制御装置は、ブレーキペダルの操作量に応じて加圧されたブレーキフルードを各ホイールシリンダへ向けて送出する。このブレーキ制御は、ブレーキペダルの操作量に基づく要求減速度と、Gセンサ等から取得した車両の実際の減速度(以下「実減速度」という)との偏差を逐次算出し、その偏差を解消するように制動制御量を決定するフィードバック制御により実行される。
特開昭62−18359号公報
しかしながら、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいるときに、車両の走行状態に起因して車輪の滑りを抑制するスリップ制御が行われたりすると、ブレーキペダルの操作に直接対応した制御が一時的に停止される。
すなわち、車両に搭載されるシステムにもよるが、急ブレーキ時や滑りやすい路面でブレーキをかけたときに起こるタイヤのロックを抑制するためのABS(Anti-lock Brake System)制御、車両の旋回時における車輪の横滑りを抑制するためのVSC(Vehicle Stability Control)制御、車両の発進時や加速時に駆動輪の空転を抑制するためのTRC(Traction Control)制御等のスリップ制御が、運転者の意思とは無関係に行われたりする。このとき、車両の安全を確保するために、ブレーキ制御装置がそのスリップ制御を優先して実行するために、マスタシリンダ圧とペダルストロークに基づくブレーキ制御が一時的に中断される。一方、そのスリップ制御の期間中においても、フィードバック制御に関する演算自体はブレーキペダルの踏み込み状態に基づいて継続される。このため、その間に例えばフィードバック制御の積分値が累積して大きくなると、スリップ制御から通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が急激に大きくなる。つまり、スリップ制御前後の減速度のずれにより、運転者に違和感を与えやすくなるという問題がある。
また、車両の停車や停車間際にブレーキペダルが大きく踏み込まれたりすると、実減速度がほぼゼロであるためにフィードバックによる偏差が大きくなり、その後発進しようとしたときに大きな減速度が発生する。また、その間にフィードバック制御の積分値が累積して大きくなると、再発進したときに減速度が急激に大きくなる。つまり、停車前後の減速度のずれにより、運転者に違和感を与えやすくなるという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、フィードバック制御則を用いたブレーキ制御において、良好なブレーキフィーリングを保持できるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御する。このブレーキ制御装置は、ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、目標減速度演算手段により演算された目標減速度と実減速度とに基づいてフィードバック項を演算して目標減速度を補正するとともに、ブレーキ操作部材の操作とは無関係に上記油圧を制御する車両挙動制御が実行されているときには、目標減速度の補正を一時的に制限する目標減速度補正手段と、目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、を備える。
ここでいう「車両挙動制御」は、ブレーキ操作部材の操作とは直接無関係にホイールシリンダの油圧を調整して車両の挙動を制御するものであり、車両の状態を安定または安全に保持するものを含み得る。例えば、上述したABS制御、VSC制御及びTRC制御等のスリップ制御などを含み得る。
この態様によれば、車両挙動制御が実行されているときに目標減速度の補正が一時的に制限される。このため、その車両挙動制御から復帰したときの減速度の急変がなくなるか、少なくとも緩和される。
この「目標減速度の補正の制限」は、例えば、目標減速度補正手段が車両挙動制御の実行情報を取得したときに、フィードバック項の演算における積分処理を一時停止するようにして行ってもよい。なお、ここでいう「積分処理の一時停止」とは、積分値をゼロに初期化するのではなく、積分処理の停止以前の積分値を保持することを意味する。
これにより、車両挙動制御の期間中に積分値が累積し、通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が大きく変化して運転者に違和感を与えるのを防止または抑制できる。また、積分値はそれまでの値に保持されるため、車両挙動制御の前後でブレーキの効きが大幅に変わることもない。
また、目標減速度補正手段は、車両挙動制御の実行情報を取得したときに、その実行情報の取得前に演算されたフィードバック項を用いるようにしてもよい。
これにより、車両挙動制御の期間のフィードバック項の変化そのものをなくし、通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が大きく変化するのが防止される。
ただし、このような目標減速度の補正の制限は一時的なものであるから、目標減速度補正手段は、車両挙動制御が終了した所定期間後に、フィードバック項を目標減速度と実減速度とに基づくように更新してもよい。その際、補正時の目標減速度と更新時の目標減速度との差が大き過ぎると、意図しない車両のショックが発生する可能性がある。そこで、目標減速度補正手段が、フィードバック項の更新に際して、そのフィードバック項をその更新すべき値に徐々に近づける徐変制御を行うようにしてもよい。
このようにすれば、実減速度に基づく通常のフィードバック制御に安定に復帰することができ、その後のブレーキ制御との整合性を確保することができる。
本発明の別の態様のブレーキ制御装置もまた、ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御する。このブレーキ制御装置は、ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、目標減速度演算手段により演算された目標減速度と実減速度とに基づいてフィードバック項を演算して目標減速度を補正するとともに、車速が実質的にゼロになったときには、目標減速度の補正を一時的に制限する目標減速度補正手段と、目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、を備える。
ここで、「車速が実質的にゼロ」とは、車両が完全に停止している場合や、クリープ状態など極低速で走行している場合を含み得る。
この態様によれば、車速が実質的にゼロのときに目標減速度の補正が一時的に制限されるため、車両が再発進したときの減速度の急変がなくなるか、少なくとも緩和される。
この「目標減速度の補正の制限」は、例えば、目標減速度補正手段が、車速が実質的にゼロになったことを表す停車情報を取得したときに、フィードバック項の演算における積分処理を一時停止するようにして行ってもよい。なお、ここでいう「積分処理の一時停止」とは、積分値をゼロに初期化するのではなく、積分処理の停止以前の積分値を保持することを意味する。
これにより、車速が実質的にゼロの期間中に積分値が累積し、通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が大きく変化して運転者に違和感を与えるのを防止または抑制できる。また、積分値はそれまでの値に保持されるため、車両挙動制御の前後でブレーキの効きが大幅に変わることもない。
また、目標減速度補正手段は、車速が実質的にゼロになったことを表す停車情報を取得したときに、その停車情報の取得前に演算されたフィードバック項を用いるようにしてもよい。
これにより、車速が実質的にゼロの期間のフィードバック項の変化そのものをなくし、通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が大きく変化するのが防止される。
本発明のブレーキ制御装置によれば、フィードバック制御則を用いたブレーキ制御において、良好なブレーキフィーリングを実現することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいるときにスリップ制御等の車両挙動制御が実行された場合に、その車両挙動制御前後の減速度の変化により運転者に違和感を与えないように、目標減速度の補正を一時的に制限するものである。具体的には後に詳述するように、目標減速度補正手段が車両挙動制御の実行情報を取得すると、目標減速度と実減速度との偏差に基づく積分処理を一時的に停止し、その車両挙動制御の間の積分値の累積を防止するものである。
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいるときにスリップ制御等の車両挙動制御が実行された場合に、その車両挙動制御前後の減速度の変化により運転者に違和感を与えないように、目標減速度の補正を一時的に制限するものである。具体的には後に詳述するように、目標減速度補正手段が車両挙動制御の実行情報を取得すると、目標減速度と実減速度との偏差に基づく積分処理を一時的に停止し、その車両挙動制御の間の積分値の累積を防止するものである。
図1は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作量に基づいて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に制御するものである。
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り換えられる常閉型の電磁開閉弁である。また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを貯留するためのリザーバタンク26が接続されている。
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されており、ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FRおよび48FLによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。なお、以下では適宜、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。
右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「WC圧センサ44」という。
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
ECU200には、上述の電磁開閉弁22FR,22FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等の油圧アクチュエータ80を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、WC圧センサ44FR〜44RLから、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力される。また、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が入力され、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLからマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示す信号が入力される。さらに、図示しないが、ECU200には、各車輪ごとに設置された車輪速センサから各車輪の車輪速度を示す信号が入力され、ヨーレートセンサからヨーレートを示す信号が入力され、操舵角センサからステアリングホイールの操舵角を示す信号が入力されたりしている。
このように構成されるブレーキ制御装置10では、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度が算出され、算出された目標減速度に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標油圧、つまり目標ホイールシリンダ圧が求められる。そして、ECU200により増圧弁40および減圧弁42が制御され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御される。
一方、このとき電磁開閉弁22FR及び22FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏込によりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
また、アキュムレータ圧が予め設定された制御範囲の下限値未満であるときには、ECU200によりオイルポンプ34が駆動されてアキュムレータ圧が昇圧され、アキュムレータ圧がその制御範囲に入ればオイルポンプ34の駆動が停止される。
次に、本実施の形態のブレーキ制御の概要について説明する。
まず、運転者がイグニションスイッチをオンにする前、すなわち各電磁弁に対する通電前においては、各電磁弁は内蔵しているバネの付勢力により、図1に示した状態にある。このとき、マスタシリンダ14から大気圧のブレーキオイルが右および左電磁開閉弁22FR、22FLを介して、それぞれ右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに達している。一方、右後輪と左後輪のホイールシリンダ20RR、20RLにも、油圧給排管28と常開型の減圧弁42RR、42RLを介して、リザーバタンク26内の液圧と同じ大気圧のブレーキオイルが到達している。この時点では、4つすべてのホイールシリンダ圧が大気圧であり、制動力は発生しない。ただし、非通電時であっても、運転者がブレーキペダル12を踏めば、その踏込力に応じた制動力が右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに直接作用し、これら右前輪と左前輪には制動力が生じる。
運転者がイグニションスイッチをオンすると、必要に応じてモータ32が作動し、アキュムレータ圧が制御範囲に入る。この後、通常走行に入ったときも各電磁弁は図1の状態にある。続いて、運転者がブレーキペダル12を踏むと、まずマスタシリンダ14が押し込まれ、マスタシリンダ14とリザーバタンク26の連通が遮断される。また、右および左電磁開閉弁22FR、22FLが閉じられ、シミュレータカット弁23が開かれ、マスタシリンダ14から右前輪および左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLへの大気圧のブレーキオイルの連通が遮断される。また、右後輪用、左後輪用の減圧弁42RR、42RLが閉じられ、4個の増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLが開けられる。各電磁弁の開度は、後述する各種演算を経て算出された各車輪の目標ホイールシリンダ圧をもとに制御される。
また、ブレーキ制御装置20は、車両の走行状態に応じて、各車輪の路面に対する滑りを抑制するABS制御、VSC制御、およびTRC制御等のスリップ制御を含む車両挙動制御を実行する。なお、この車両挙動制御には、スリップ制御の他にも、車両の走行状態を安全または安定に保持するために各車輪のホイールシリンダ圧を調整する制御が含まれる。これらの車両挙動制御が行われる場合には、要求制動力はブレーキ制御装置20が発生させる液圧制動力でまかなわれる。
すなわち、ECU200は、ABS制御、VSC制御およびTRC制御等の車両挙動制御を実行するために必要な演算等を行う。ECU200は、車両減速度やスリップ率等に基づいて公知の手法により算出された所定のデューティ比で増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RLを開閉する。増圧弁40FR〜40RLを開状態とすることにより、アキュムレータ50からのブレーキフルードが各ホイールシリンダ20に供給される。また、減圧弁42FR〜42RLを開状態とすることにより、各ホイールシリンダ20のブレーキフルードがリザーバ26へと排出される。これにより、各ホイールシリンダ20にブレーキフルードが給排され、車輪の滑りが抑制されるように各車輪に付与される制動力が制御される。
図2は、ブレーキ制御装置によるブレーキ制御に係る機能ブロック図である。
ECU200ではまず、目標減速度演算部61により、ストロークセンサ46を介して取得されたペダルストロークSTとマスタシリンダ圧センサ48を介して取得されたマスタシリンダ圧PMCとに基づき、既知の手法で目標減速度GxRefが演算される。
そして、目標減速度補正部62により、目標減速度GxRefに対してフィードフォワード制御則およびフィードバック制御則を用いて所定の外乱を考慮した補正が施される。すなわち、補正係数演算部63により、車両の現在の加速度を検出するGセンサ70から入力された実際の減速度(以下「実減速度」という)Gを用いて補正係数Kが演算される。この補正係数Kは、後に詳述するフィードフォワード項KFFとフィードバック項KFBとの積により算出される。そして、目標減速度補正演算部64により、補正係数Kによって補正された目標減速度GxRefhが演算される。
そして、目標油圧演算部65により、この補正後の目標減速度GxRefhに基づく各車輪のホイールシリンダ20の目標ホイールシリンダ圧Prefが既知の手法で演算される。
そして、油圧制御部66により、この目標ホイールシリンダ圧Prefが実現されるように増圧弁40および減圧弁42に制御電流Iが付与されてこれらが開閉制御され、各車輪に適正な制動力が付与される。
なお、本実施の形態において、目標減速度演算部61が目標減速度演算手段に該当し、目標減速度補正部62が目標減速度補正手段に該当し、目標油圧演算部65が目標油圧演算手段に該当し、油圧制御部66が油圧制御手段に該当する。
次に、本実施の形態のブレーキ制御処理の流れについて具体的に説明する。図3は、ブレーキ制御処理を表すフローチャートである。この処理は、制動時に所定の周期ごとにECU200により実行される。
処理が開始されると、ECU200ではまず、目標減速度演算部61が、ストロークセンサ46により検出されたペダルストロークSTを読み込み(S10)、続いて、マスタシリンダ圧センサ48により検出されたマスタシリンダ圧PMCを読み込む(S12)。なお、測定値として2つのマスタシリンダ圧センサ48のいずれかの測定値を用いてもよいし、2つの測定値の平均値を用いてもよい。また、マスタシリンダ圧を示す信号にフィルタを適宜かけて滑らかな信号としてもよい。
続いて、目標減速度演算部61は、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて目標減速度GxRefを演算する(S14)。ECU200には、ペダルストロークST、マスタシリンダ圧PMCおよび目標減速度GxRefの関係が予めマップ化されて記憶されている。
続いて、目標減速度補正部62が、この目標減速度GxRefを適正に補正し、補正後の目標減速度GxRefhを得る(S16)。なお、この補正処理については後に詳述する。
続いて、目標油圧演算部65が、この補正後の目標減速度GxRefhに基づく各車輪の目標ホイールシリンダ圧Prefを演算する(S18)。なお、ECU200には、目標減速度GxRefhと目標ホイールシリンダ圧Prefとの関係が予めマップ化されて記憶されている。
そして、油圧制御部66が、この目標ホイールシリンダ圧Prefに応じた制御電流Iを演算し、増圧弁40または減圧弁42を通電して適正な油圧制御を実行する(S20)。これにより、増圧弁40および減圧弁42が開閉制御され、各車輪に適正な制動力が付与される。
なお、以上の処理を終了したときに、イグニッションスイッチがオフにされたことが確認されると(S22のYES)、目標減速度補正部62は、次回の処理のために今回の効き補正係数Hosei(後述する)をバックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶しておく(S24)。この効き補正係数記憶処理の詳細については後述する。
図4は、目標減速度補正処理を表すフローチャートである。
上述したS16の目標減速度補正処理において、補正係数演算部63は、下記式(1)で表される補正係数Kを演算する。
K=KFF・KFB ・・・(1)
KFF:フィードフォワード項
KFB:フィードバック項
すなわち、補正係数演算部63はまず、フィードフォワード項KFFを演算する(S30)。このフィードフォワード項KFFは、各車輪のブレーキパッドの個体間のばらつきや経年変化に伴う長期的なブレーキの効きの変化に対応した補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
KFF:フィードフォワード項
KFB:フィードバック項
すなわち、補正係数演算部63はまず、フィードフォワード項KFFを演算する(S30)。このフィードフォワード項KFFは、各車輪のブレーキパッドの個体間のばらつきや経年変化に伴う長期的なブレーキの効きの変化に対応した補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
続いて、補正係数演算部63は、フィードバック項KFBを演算する(S32)。このフィードバック項KFBは、運転者によるブレーキペダルの踏み込みに基づいて演算された車両の目標減速度と実減速度との偏差を解消するために、その踏み込み操作の都度変動する補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
続いて、補正係数演算部63は、このようにして演算されたフィードフォワード項KFFおよびフィードバック項KFBを用いて、上記式(1)から補正係数Kを算出する(S34)。
そして、目標減速度補正演算部64は、下記式(2)により、補正された目標減速度GxRefhを演算する(S36)。
GxRefh=K・GxRef ・・・(2)
図5は、フィードフォワード項演算処理を表すフローチャートである。
図5は、フィードフォワード項演算処理を表すフローチャートである。
上述したS30のフィードフォワード項KFFは、下記式(3)により表される。
KFF=KFFA・KFFB・KFFC ・・・(3)
KFFA:効き計測補正項
KFFB:フェード補正項
KFFC:重量学習補正項
ここで、効き計測補正項KFFAは、各車輪のブレーキの構成要素であるブレーキパッドやその周辺部品などの個体間のばらつきや経年劣化など、ブレーキの効きに長期的にゆっくり影響を及ぼす外乱に対する補正項である。また、フェード補正項KFFBは、ブレーキパッドのフェード現象など、ブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。さらに、重量学習補正項KFFCは、車両の乗員人数や積載重量の変化など、車両走行時の慣性力によりブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。
KFFA:効き計測補正項
KFFB:フェード補正項
KFFC:重量学習補正項
ここで、効き計測補正項KFFAは、各車輪のブレーキの構成要素であるブレーキパッドやその周辺部品などの個体間のばらつきや経年劣化など、ブレーキの効きに長期的にゆっくり影響を及ぼす外乱に対する補正項である。また、フェード補正項KFFBは、ブレーキパッドのフェード現象など、ブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。さらに、重量学習補正項KFFCは、車両の乗員人数や積載重量の変化など、車両走行時の慣性力によりブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。
このフィードフォワード項演算処理において、補正係数演算部63は、まず効き計測補正項KFFAを演算するために、下記式(4)によりブレーキの効きを表す効き計測値ErrRatetempを算出する(S40)。
ErrRatetemp=(realGx−realGx0)/nominalGx−1 ・・・(4)
ここで、realGxは実減速度に対応するが、詳細には、Gセンサ70から取得した実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いたものであり、本実施の形態では下記式(5)により算出される。
ここで、realGxは実減速度に対応するが、詳細には、Gセンサ70から取得した実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いたものであり、本実施の形態では下記式(5)により算出される。
realGx=Gセンサ値−他システム減速度−坂路補正分減速度 ・・・(5)
すなわち、realGxは、Gセンサ値からエンジンブレーキによる減速度などの他システム減速度を差し引き、さらに坂路補正分の減速度を差し引いて算出される。ここで、坂路補正分の減速度とは、車両が坂道を走行しているときに作用する慣性力により発生する減速度を意味する。このrealGxには、例えば車両の減速過程において車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。なお、車両がハイブリッド車両などの場合には、他システム減速度に回生ブレーキによる減速度も含まれ得る。
すなわち、realGxは、Gセンサ値からエンジンブレーキによる減速度などの他システム減速度を差し引き、さらに坂路補正分の減速度を差し引いて算出される。ここで、坂路補正分の減速度とは、車両が坂道を走行しているときに作用する慣性力により発生する減速度を意味する。このrealGxには、例えば車両の減速過程において車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。なお、車両がハイブリッド車両などの場合には、他システム減速度に回生ブレーキによる減速度も含まれ得る。
なお、他システム減速度は、運転者によりアクセルペダルが両踏みされているときなどの加速時、図示しないパーキングブレーキがオンにされているとき、図示しないステアリングホイールの操舵角が所定値以上または操舵角変化が大きいときには適正な値が算出されないことがある。このため、このような場合には効き計測値の計測自体を行わないようにする。
また、realGx0は、運転者がブレーキペダルを踏み込む直前のrealGxである。ここでは、効き計測値ErrRatetempの精度を高めるために、Gセンサの実測値そのものではなく、その変化量を基準に計測するようにしたものである。さらに、nominalGxは、WC圧センサ44により検出されたホイールシリンダ圧から演算される減速度であり、車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。
なお、以上に説明した効き計測値ErrRatetempは、計測の精度を向上させるために所定の計測有効条件が満たされたときにその計測が実施される。すなわち、1)車速が所定値のときに所定時間の効き計測が可能であること、2)効き計測時のrealGxの変動が所定値以下であることが、計測有効条件とされ得る。条件1)は、ブレーキの効きの車速依存性が大きいために、ある速度を基準に変化量を計測するものである。条件2)は、過渡特性の影響を低減するために設定される。つまり、車速が所定値であっても、例えば運転者によるブレーキペダルの操作量が非常に速い場合には、誤差を多く含むことになる。そこで、このようにrealGxの変動が大きい場合には、効き計測を行わないか無視するようにするものである。
続いて、補正係数演算部63は、予め設定した効き計測値の上限値および下限値に基づいて、上述のようにして算出した効き計測値ErrRatetempのフィルタリング処理を行う(S42)。これは、ブレーキの効き状態としてあり得ない部分を除くものであり、その効き計測値ErrRatetempがその上限値を超えたり、下限値を下回る場合には、今回の計測値を無視する。これは、効き計測値ErrRatetempの大きなずれを無視して、制御の安定性を確保するものである。
続いて、補正係数演算部63は、計測の精度を向上させるために効き計測値の平均化処理を行い、効き計測値ErrRatetempの平均値ErrRateを算出する(S44)。例えば、過去から記憶されてきたErrRatetempの平均値を算出する。
そして、補正係数演算部63は、下記式(6)で表される効き補正係数Hoseiを演算する(S46)。
Hosei=1/(1+ErrRate) ・・・(6)
これは、ブレーキの効きが当初予定していた値に対して低下したときに、その低下分を上乗せしてブレーキの効きを補うための補正係数である。
これは、ブレーキの効きが当初予定していた値に対して低下したときに、その低下分を上乗せしてブレーキの効きを補うための補正係数である。
続いて、補正係数演算部63は、このようにして算出した効き補正係数Hoseiに対して予め設定した1トリップ変動量制限値に基づくフィルタリング処理を行う(S48)。ここで、1トリップとはイグニッションスイッチのオン−オフ間を意味するが、1トリップにおけるブレーキの効きの変化はある程度限られるものであることから、そのブレーキの効きが過大である場合には、何らかの異常が生じていると考えられる。そこで、前回のイグニッションスイッチのオフのときに記憶した効き補正係数Hoseiの平均値(後述する)と今回算出した効き補正係数Hoseiとの差、つまり効き補正係数Hoseiの変動量が、その1トリップ変動量制限値よりも大きい場合には、今回の効き補正係数Hoseiを無視する。
さらに、補正係数演算部63は、予め設定した効き補正係数の上限値および下限値に基づいて、上述のようにして算出した効き補正係数Hoseiのフィルタリング処理を行う(S50)。つまり、その効き補正係数Hoseiがその上限値を超えたり、下限値を下回る場合には、今回の計測値を無視する。これは、効き補正係数Hoseiの大きなずれを無視して、制御の安定性を確保するものである。
以上のようにして、無視されることなく算出された効き補正係数Hoseiが効き計測補正項KFFAとして設定される(S52)。
続いて、補正係数演算部63は、ブレーキパッドのフェード現象による外乱を解消するフェード補正項KFFBを演算する(S54)。このフェード補正項KFFBを組み込むことにより、例えばブレーキパッドの温度が短期的に上昇してブレーキの効きが低下したときに、そのブレーキの効きを補うことができる。
すなわち、補正係数演算部63は、ブレーキパッドの温度をその周辺に設置された図示しない温度センサ等の検出値に基づいて推定する。ECU200には、このブレーキパッドの推定温度とフェード補正項KFFBとの関係が予めマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、ブレーキパッドの推定温度に基づいてマップを参照し、フェード補正項KFFBを設定する。
続いて、補正係数演算部63は、車両の乗員人数や積載重量の変化など車両重量による慣性力に起因する外乱を解消する重量学習補正項KFFCを演算する(S56)。この重量学習補正項KFFCを組み込むことにより、例えば車両の下り坂の走行中にブレーキの効きが低下したときに、そのブレーキの効きを補うことができる。
すなわち、補正係数演算部63は、図示しないトルクセンサから取得した車両の加速トルクおよびGセンサ70から取得した加速度や、図示しない車高センサから取得した車高等から現在の車両重量を推定する。ECU200には、加速トルクおよび加速度と車両重量との関係、並びに車両重量と重量学習補正項KFFCとの関係が予めマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、前者のマップを参照して車両重量を取得し、さらに後者のマップを参照して重量学習補正項KFFCを設定する。
そして、補正係数演算部63は、以上のようにして設定した効き計測補正項KFFA、フェード補正項KFFBおよび重量学習補正項KFFCを上記式(3)に代入することによりフィードフォワード項KFFを算出する(S58)。
図6は、フィードバック項演算処理を表すフローチャートである。
本実施の形態では、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいるときにスリップ制御等の車両挙動制御が実行された場合に、その制御の切り替わりの際の要求制動力の変化により運転者に違和感を与えないように、目標減速度の補正を一時的に制限する処理を行う。すなわち、補正係数演算部63は、PID制御による下記式(7)で表されるフィードバック項KFBを演算するのであるが、車両挙動制御が行われたときには、その演算を中止して後述する補正制限処理を実行する。
KFB=1+Pgain・err+Igain・∫err+d/dt(Dgain・err) ・・・(7)
Pgain:比例ゲイン
Igain:積分ゲイン
Dgain:微分ゲイン
なお、errはフィードフォワード項KFFを加味した目標減速度と実減速度との偏差であり、下記式(8)により演算されるものである。
Pgain:比例ゲイン
Igain:積分ゲイン
Dgain:微分ゲイン
なお、errはフィードフォワード項KFFを加味した目標減速度と実減速度との偏差であり、下記式(8)により演算されるものである。
err=GxRef・KFF−G ・・・(8)
G:実減速度
すなわち、このフィードバック制御が行われている途中でスリップ制御等の車両挙動制御が実行されると、マスタシリンダ圧PMCとペダルストロークSTに基づくブレーキ制御が一時的に中断される。一方、そのスリップ制御の期間中においても上記式(7)及び(8)にしたがった演算処理が継続されると、その間に積分値∫errが大きくなり、通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が急激に大きくなる。つまり、スリップ制御の前後で減速度が大きくずれてしまい、運転者に違和感を与える。
G:実減速度
すなわち、このフィードバック制御が行われている途中でスリップ制御等の車両挙動制御が実行されると、マスタシリンダ圧PMCとペダルストロークSTに基づくブレーキ制御が一時的に中断される。一方、そのスリップ制御の期間中においても上記式(7)及び(8)にしたがった演算処理が継続されると、その間に積分値∫errが大きくなり、通常のブレーキ制御に復帰したときに減速度が急激に大きくなる。つまり、スリップ制御の前後で減速度が大きくずれてしまい、運転者に違和感を与える。
そこで、スリップ制御等の車両挙動制御が実行されると、補正係数演算部63は、積分処理を一時的に停止して積分値の変動を防止する。
すなわち、補正係数演算部63は、ABS制御、VSC制御およびTRC制御等の車両挙動制御が実行されているか否かを判断する(S60)。この車両挙動制御の実行情報については、ECU200がこれらの制御を実行している場合には、自ら制御信号を出力したか否かにより判断することができる。また、この車両挙動制御の演算処理を車両に搭載された他のECUが主体的に行っている場合には、ECU200が所定の通信ラインを介して当該他のECUから取得した情報に基づいて判断することができる。
このとき、車両挙動制御が実行されていると判断されると(S60のYES)、補正係数演算部63は、フィードバック項KFBの補正の制限を行う補正制限処理を実行する(S61)。すなわち、補正係数演算部63は、上記式(7)による演算を下記式(9)に置き換えて実行する。
KFB=1+Pgain・err+Igain・∫err(CONST)+d/dt(Dgain・err)・・・(9)
∫err(CONST):積分値の前回値
すなわち、補正係数演算部63は、積分処理を停止し、偏差の積分値として前回の処理タイミングで算出した積分値である前回値∫err(CONST)を設定し、上記式(9)により演算されたフィードバック項KFBを設定する。この積分値の前回値∫err(CONST)は固定値であるため、車両挙動制御が実行されている間に積分値が累積するのが防止される。
∫err(CONST):積分値の前回値
すなわち、補正係数演算部63は、積分処理を停止し、偏差の積分値として前回の処理タイミングで算出した積分値である前回値∫err(CONST)を設定し、上記式(9)により演算されたフィードバック項KFBを設定する。この積分値の前回値∫err(CONST)は固定値であるため、車両挙動制御が実行されている間に積分値が累積するのが防止される。
一方、S60にて車両挙動制御が実行されていないと判断されると(S60のNO)、補正係数演算部63は、続いてS61の補正制限処理が現在も継続して実行中であるか否かを判断する(S62)。このとき、この補正制限処理が実行中であれば(S62のYES)、補正係数演算部63は、上記式(9)による演算を中止して補正の制限を解除する(S63)。そして、上記式(7)による演算を再開してフィードバック項KFBを演算し、これを設定する。
一方、S62にて上記補正制限処理が実行中でなければ(S62のNO)、補正係数演算部63は、上記式(7)および(8)に基づいて本来のフィードバック項KFBを演算し、これを設定する(S64)。
図7は、補正係数記憶処理を表すフローチャートである。この処理は既述のS24の処理であり、次回のS48の処理に用いる「前回の効き補正係数Hosei」を記憶しておくものである。補正係数演算部63は、イグニッションスイッチがオフにされたことが確認されると、次回の処理の便宜のために今回の効き補正係数HoseiをバックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶しておく。
すなわち、補正係数演算部63はまず、ブレーキパッドの温度をその周辺に設置された図示しない温度センサ等の検出値に基づいて推定する(S70)。
そして、補正係数演算部63は、そのブレーキパッドの温度が予め設定した記憶許可温度以下であるか否かを判断する(S72)。このとき、ブレーキパッドの温度がその記憶許可温度を超えている場合には(S72のNO)、ブレーキパッドまたはその周辺部品に以上が生じていると考えられるため、当該補正係数記憶処理を中断する。つまり、次回のS48の処理には現在記憶されている前回の効き補正係数Hoseiを用いるようにする。
一方、ブレーキパッドの温度がその記憶許可温度以下であれば(S72のYES)、補正係数演算部63は、続いて効き補正係数記憶値平均化処理を実行する(S74)。ここでは、今回の演算処理により算出された効き補正係数Hoseiの影響が過大にならないように、下記式(10)に基づいて前回記憶された効き補正係数Hoseiとの間でなまし処理を行う。
Hosei記憶値=β・Hosei+(1−β)・Hosei前回記憶値 ・・・(10)
Hosei記憶値:今回記憶する効き補正係数Hosei
Hosei前回記憶値:前回のイグニッションスイッチのオフ時に記憶された
効き補正係数Hosei
ここで、βは重み付け係数であり、例えば0.2(つまり20%)を設定することができる。
Hosei記憶値:今回記憶する効き補正係数Hosei
Hosei前回記憶値:前回のイグニッションスイッチのオフ時に記憶された
効き補正係数Hosei
ここで、βは重み付け係数であり、例えば0.2(つまり20%)を設定することができる。
補正係数演算部63は、上記式(10)で演算されたHosei記憶値を、バックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶する(S76)。
以上に説明したように、本実施の形態においては、制動時にスリップ制御等の車両挙動制御が実行されると、その間の目標減速度GxRefの補正においてフィードバック制御の積分処理が一時的に停止される。これにより、その車両挙動制御から通常のブレーキ制御に復帰したときに積分値の累積に起因する減速度の急変がなくなる。その結果、車両挙動制御の前後で運転者に違和感を与えることを防止または抑制でき、良好なブレーキフィーリングが保持される。
また、本実施の形態においては、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて演算された目標減速度GxRefに、フィードフォワード制御則およびフィードバック制御則に基づく補正がなされ、その補正後のGxRefhを実現する目標ホイールシリンダ圧Prefが演算される。特に、フィードフォワード項KFFにブレーキパッド等の状態に基づいて学習した効き計測補正項KFFAが用いられるため、フィードバック制御におけるブレーキ装置の構成要素の経年劣化等の影響が少なくなる。したがって、制御量のハンチングを防止または抑制することができる。また、フィードフォワード項KFFを加味しながらフィードバック制御が継続的に実行されるため、制御の追従性を保持することもできる。その結果、ブレーキ装置の構成要素の経年劣化等に起因する外乱があっても、制御系の安定性を保持して良好なブレーキフィーリングを保持できる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、車両挙動制御の実行時にフィードバック項KFBそのものを車両挙動制御前の値に固定して、目標減速度の補正を一時的に制限するものである。なお、本実施の形態は、積分値のみでなくフィードバック項KFBそのものの更新を停止する点を除いては第1の実施の形態と同様であるため、同様の構成および処理内容についてはその説明を省略する。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、車両挙動制御の実行時にフィードバック項KFBそのものを車両挙動制御前の値に固定して、目標減速度の補正を一時的に制限するものである。なお、本実施の形態は、積分値のみでなくフィードバック項KFBそのものの更新を停止する点を除いては第1の実施の形態と同様であるため、同様の構成および処理内容についてはその説明を省略する。
図8は、第2の実施の形態に係るフィードバック項演算処理を表すフローチャートである。この処理は、第1の実施の形態の図6のフローチャートに示される処理に置き換えて実行される。
すなわち、補正係数演算部63は、まずABS制御、VSC制御およびTRC制御等の車両挙動制御が実行されているか否かを判断する(S80)。
このとき、車両挙動制御が実行されていると判断されると(S80のYES)、補正係数演算部63は、フィードバック項KFBの補正の制限を行う補正制限処理を実行する(S81)。すなわち、補正係数演算部63は、上記式(7)による演算は行わず、フィードバック項KFBとして前回の処理で算出した値(以下、「KFB前回値(CONST)」という)を設定する。ここで、KFB前回値(CONST)は、前回の処理ステップで演算されたフィードバック項KFBであるので、固定値である。
一方、S80にて車両挙動制御が実行されていないと判断されると(S80のNO)、補正係数演算部63は、続いてS81の補正制限処理が現在も継続して実行中であるか否かを判断する(S82)。このとき、この補正制限処理が実行中であれば(S82のYES)、補正係数演算部63は、KFB前回値(CONST)による補正の制限を解除し、次に述べるKFB更新処理を実行する(S83)。
このKFB更新処理は、車両挙動制御から通常のブレーキ制御に復帰したときに、運転者によるブレーキペダルの踏み込み動作に基づく本来の目標減速度と実減速度Gとの偏差に基づく演算処理に徐々に近づけるための中間的な処理である。すなわち、車両挙動制御の前後において、実減速度Gに応じて本来更新したいフィードバック項KFBの値(以下「KFB更新したい値」という)と上記KFB前回値(CONST)との差が大きい場合、そのKFB更新したい値を直ちに用いると、フィードバック項KFBが急変して車両にショックが発生する可能性がある。そこで、このようなショックによって運転者に違和感を与えないよう、フィードバック項KFBをKFB更新したい値に徐々に近づける徐変制御が行われる。なお、このKFB更新したい値は、車両の状態により時々刻々変化し得る。
すなわち、補正係数演算部63は、下記式(11)に基づいて、KFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分を算出し、この差分を解消するように徐々にフィードバック項KFBを更新していく。
KFBOFF=KFB更新したい値−KFB前回値(CONST)・・・(11)
KFB=更新中に前回演算されたKFB+dKFBOFF
KFBOFF<0のとき、dKFBOFF=−ΔKFB
KFBOFF≧0のとき、dKFBOFF=ΔKFB
dKFBOFF:徐変量
すなわち、補正係数演算部63は、KFB更新処理に移行したときに、まずGセンサ70から取得した実減速度Gに基づいてKFB更新したい値を演算し、そのKFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分KFBOFFを算出する。
KFB=更新中に前回演算されたKFB+dKFBOFF
KFBOFF<0のとき、dKFBOFF=−ΔKFB
KFBOFF≧0のとき、dKFBOFF=ΔKFB
dKFBOFF:徐変量
すなわち、補正係数演算部63は、KFB更新処理に移行したときに、まずGセンサ70から取得した実減速度Gに基づいてKFB更新したい値を演算し、そのKFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分KFBOFFを算出する。
そして、この差分KFBOFFが負である場合には、徐変量dKFBOFFとして予め設定した値−ΔKFBを毎秒加算する割合でフィードバック項KFBを徐々に更新していく。一方、差分KFBOFFが正である場合には、徐変量dKFBOFFとして予め設定した値ΔKFBを毎秒加算する割合でフィードバック項KFBを徐々に更新していく。これにより、フィードバック項KFBが徐々にKFB更新したい値に近づいていく。フィードバック項KFBがKFB更新したい値になると、補正係数演算部63は、この徐変制御を終了する。
一方、S82にて上記補正制限処理が実行中でなければ(S82のNO)、補正係数演算部63は、上記式(7)および(8)に基づいて本来のフィードバック項KFBを演算し、これを設定する(S84)。
以上に説明したように、本実施の形態においては、車両挙動制御が実行されたときに、Gセンサ70から取得した実減速度Gに基づく目標減速度GxRefの補正が一時的に停止され、フィードバック項KFBとして車両挙動制御の実行情報取得前のKFB前回値(CONST)が用いられる。そして、その車両挙動制御が終了すると、通常のフィードバック制御に復帰するようにした。その結果、車両挙動制御前後での減速度の急変が後のブレーキ制御に与える影響がなくなり、運転者に違和感を与えることを防止できる。その結果、良好なブレーキフィーリングが保持される。
また、本実施の形態においては、通常のフィードバック制御への復帰の際に、復帰前後の減速度の急変を防止するために、フィードバック項KFBが実減速度Gに基づく本来更新したい値になるまで徐変されるようにした。その結果、通常のフィードバック制御への復帰時に意図しない車両のショックが発生することが防止される。
なお、本実施の形態の補正制限処理では、フィードバック項KFBとして前回の処理タイミングで演算したフィードバック項KFBであるKFB前回値(CONST)を用いた例を示したが、それ以前に演算したフィードバック項KFBを固定値として設定してもよい。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、車両が停車中または停車間際のクリープ走行中にブレーキペダルが大きく踏み込まれた場合に、その停車前後の減速度の変化により運転者に違和感を与えないように、目標減速度の補正を一時的に制限するものである。すなわち、車速が実質的にゼロのときにブレーキペダルが大きく踏み込まれたりすると、実減速度がほぼゼロであるためにフィードバックによる偏差が大きくなる。その結果、車両がその後に発進しようとしたときに大きな減速度が発生し、運転者に違和感を与えるおそれがある。そこで、目標減速度補正手段が車両の停車情報を取得すると、目標減速度と実減速度との偏差に基づく積分処理を抑制するものである。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、車両が停車中または停車間際のクリープ走行中にブレーキペダルが大きく踏み込まれた場合に、その停車前後の減速度の変化により運転者に違和感を与えないように、目標減速度の補正を一時的に制限するものである。すなわち、車速が実質的にゼロのときにブレーキペダルが大きく踏み込まれたりすると、実減速度がほぼゼロであるためにフィードバックによる偏差が大きくなる。その結果、車両がその後に発進しようとしたときに大きな減速度が発生し、運転者に違和感を与えるおそれがある。そこで、目標減速度補正手段が車両の停車情報を取得すると、目標減速度と実減速度との偏差に基づく積分処理を抑制するものである。
なお、本実施の形態は、車速が実質的にゼロのときに補正制限処理を行う点を除いては、第1の実施の形態と共通する部分が多いため、第1の実施の形態と同様の構成および処理内容についてはその説明を省略する。
図9は、第3の実施の形態に係るフィードバック項演算処理を表すフローチャートである。この処理は、第1の実施の形態の図6のフローチャートに示される処理に置き換えて実行される。また、図10は、補正制限処理に用いる制御マップを表す説明図である。同図において、横軸は車速を表し、縦軸は積分補正係数を表している。また、同図において、原点の右側は車速が正、つまり車両が前進する場合を示し、原点の左側は車速が負、つまり車両が後進する場合を示している。
図9に示すように、補正係数演算部63は、まず車輪速センサから取得した各車輪の車輪速度から車速を算出するか、または図示しない車速センサから車速情報を取得し、車速が実質的にゼロであるか否かを判断する(S90)。なお、この「車速が実質的にゼロ」のときとは、車両が完全に停車している状態でブレーキペダルが踏み込まれた場合の他に、車両が停車間際でクリープ等により極低速で走行している状態でブレーキペダルが踏み込まれた場合などを含めることができる。その具体的な速度範囲については、当該補正制限処理の有効性を実験等により確認して設定することができる。
このとき、車速が実質的にゼロであると判断されると(S90のYES)、補正係数演算部63は、フィードバック項KFBの補正の制限を行う補正制限処理を実行する(S91)。すなわち、補正係数演算部63は、上記式(7)による演算を下記式(12)に置き換えて実行する。
KFB=1+Pgain・err+Igain・∫{err・f(v)}+d/dt(Dgain・err)・・(12)
f(v):積分補正係数
すなわち、補正係数演算部63は、偏差errに図10に示される積分補正係数f(v)を乗算する。図示のように、積分補正係数f(v)は、車速vの絶対値が所定値v0以下(例えば3km/h以下)のときにゼロになるように設定され、その所定値近傍から所定の変化率で1に近づき、本来の偏差の値まで補完されるように設定されている。これにより、車速vの絶対値が所定値v0以下の領域になると、積分値には前回の処理タイミングの値が保持され、当該領域で積分値が累積するのが防止される。
f(v):積分補正係数
すなわち、補正係数演算部63は、偏差errに図10に示される積分補正係数f(v)を乗算する。図示のように、積分補正係数f(v)は、車速vの絶対値が所定値v0以下(例えば3km/h以下)のときにゼロになるように設定され、その所定値近傍から所定の変化率で1に近づき、本来の偏差の値まで補完されるように設定されている。これにより、車速vの絶対値が所定値v0以下の領域になると、積分値には前回の処理タイミングの値が保持され、当該領域で積分値が累積するのが防止される。
一方、S90にて車速が実質的にゼロでないと判断されると(S90のNO)、補正係数演算部63は、続いてS91の補正制限処理が現在も継続して実行中であるか否かを判断する(S92)。このとき、この補正制限処理が実行中であれば(S92のYES)、補正係数演算部63は、上記式(12)による演算を中止して補正の制限を解除する(S93)。そして、上記式(7)による演算を再開してフィードバック項KFBを演算し、これを設定する。
一方、S92にて上記補正制限処理が実行中でなければ(S92のNO)、補正係数演算部63は、上記式(7)および(8)に基づいて本来のフィードバック項KFBを演算し、これを設定する(S94)。
以上に説明したように、本実施の形態においては、車速が実質的にゼロのときに積分処理が一時的に停止されるため、車両が再度発進したときの減速度の急変がなくなるか、少なくとも緩和される。これにより、車速が実質的にゼロの期間中に積分値が累積し、再発進したときに減速度が大きく変化して運転者に違和感を与えるのを防止または抑制できる。その結果、良好なブレーキフィーリングが保持される。
本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
例えば、第1および第2の実施の形態では、車両挙動制御としてABS制御、VSC制御およびTRC制御等のスリップ制御を例示したが、本発明は、ブレーキ操作部材の操作によらずにホイールシリンダの油圧を調整して車両の挙動を制御する車両挙動制御が実行されたときには適用することができる。
また、第3の実施の形態では、車速が実質的にゼロ付近のときに積分補正係数f(v)をかけて積分値が増加しにくいように設定した例を示したが、第1の実施の形態のように、補正係数演算部63が、その間の積分値として補正制限処理実行前の固定値を用いるようにしてもよい。
あるいは、第2の実施の形態のように、車速が実質的にゼロのときに、補正係数演算部63がフィードバック項KFBそのものを補正制限処理実行前の値に固定して、目標減速度の補正を一時的に制限するようにしてもよい。
また、上記各実施の形態では、フィードバック項KFBの演算に用いる上記式(8)にて、Gセンサ70から取得した実減速度Gを用いた例を示したが、補正係数演算部63が、実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いた実減速度加工値を用いるようにしてもよい。例えば上記式(5)に示したrealGxを用いてもよい。
さらに、上記各実施の形態では、ブレーキペダル12の踏み込み量に応じて変化するペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて目標減速度GxRefを演算し、その目標減速度GxRefにフィードフォワード制御則およびフィードバック制御則に基づく補正を行った例を示したが、その目標減速度GxRefを、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCの一方に基づいて演算するようにしてもよい。あるいは、ストロークシミュレータ24に付与されるストロークシミュレータ圧を検出する圧力センサなどを設け、そのストロークシミュレータ圧に基づいて目標減速度GxRefを演算するようにしてもよい。
10 ブレーキ制御装置、 12 ブレーキペダル、14 マスタシリンダ、20 ホイールシリンダ、24 ストロークシミュレータ、40 増圧弁、42 減圧弁、44 WC圧センサ、48 マスタシリンダ圧センサ、61 目標減速度演算部、62 目標減速度補正部、63 補正係数演算部、64 目標減速度補正演算部、65 目標油圧演算部、66 油圧制御部、70 Gセンサ、200 ECU
Claims (7)
- ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置において、
ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、
前記目標減速度演算手段により演算された目標減速度と実減速度とに基づいてフィードバック項を演算して前記目標減速度を補正するとともに、前記ブレーキ操作部材の操作とは無関係に前記油圧を制御する車両挙動制御が実行されているときには、前記目標減速度の補正を一時的に制限する目標減速度補正手段と、
前記目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、前記ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、
前記目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、前記ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記目標減速度補正手段は、前記車両挙動制御の実行情報を取得したときには、前記フィードバック項の演算における積分処理を一時停止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記車両挙動制御の実行情報を取得したときには、その実行情報の取得前に演算されたフィードバック項を用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記車両挙動制御が終了した所定期間後に、前記フィードバック項を前記目標減速度と実減速度とに基づく値に徐々に近づける徐変制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。
- ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置において、
ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、
前記目標減速度演算手段により演算された目標減速度と実減速度とに基づいてフィードバック項を演算して前記目標減速度を補正するとともに、車速が実質的にゼロになったときには、前記目標減速度の補正を一時的に制限する目標減速度補正手段と、
前記目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、前記ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、
前記目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、前記ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記目標減速度補正手段は、前記車速が実質的にゼロになったことを表す停車情報を取得したときには、前記フィードバック項の演算における積分処理を一時停止するようにしたことを特徴とする請求項5に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記車速が実質的にゼロになったことを表す停車情報を取得したときには、その停車情報の取得前に演算されたフィードバック項を用いるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のブレーキ制御装置。
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- 2006-03-24 JP JP2006082111A patent/JP2007253840A/ja active Pending
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