JP2007245871A - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好なブレーキフィーリングを実現する。
【解決手段】ブレーキ制御におけるフィードバック項KFBの演算処理(S32)において、Gセンサによって検出された実減速度そのものではなく、その実減速度をトルクのG換算値で加工した実減速度加工値Gがフィードバックされるようにした。その結果、エンジンブレーキによる制動トルクやクリープトルクによる加減速度が内包した値がフィードバックされ、ブレーキ操作部材の操作に基づく油圧制御が行われる。その結果、高速走行においてエンジンブレーキがかかったり、極低速でクリープ走行していたとしても、車両の減速度が運転者が意図した減速度に収束しやすくなり、そのブレーキフィーリングを保持することができる。
【選択図】図4
【解決手段】ブレーキ制御におけるフィードバック項KFBの演算処理(S32)において、Gセンサによって検出された実減速度そのものではなく、その実減速度をトルクのG換算値で加工した実減速度加工値Gがフィードバックされるようにした。その結果、エンジンブレーキによる制動トルクやクリープトルクによる加減速度が内包した値がフィードバックされ、ブレーキ操作部材の操作に基づく油圧制御が行われる。その結果、高速走行においてエンジンブレーキがかかったり、極低速でクリープ走行していたとしても、車両の減速度が運転者が意図した減速度に収束しやすくなり、そのブレーキフィーリングを保持することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、車両に設けられた車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。
従来から、マスタシリンダにおける液圧とブレーキペダルのペダルストロークとに基づいて目標減速度を算出し、その目標減速度が車両に付与されるように制動力を制御するブレーキ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなブレーキ制御装置は、ブレーキペダルの操作量に応じて加圧されたブレーキフルードを各ホイールシリンダへ向けて送出する。このブレーキ制御は、ブレーキペダルの操作量に基づく要求減速度と、Gセンサ等から取得した車両の実際の減速度(以下「実減速度」という)との偏差を逐次算出し、その偏差を解消するように制動制御量を決定するフィードバック制御により実行される。
特開昭62−18359号公報
しかしながら、車両の制動力はブレーキペダルの踏み込みに応じた油圧制御のみならず、エンジンブレーキの作動などによる他システムによる走行負荷や、カーブ走行時の走行抵抗などからも生起される。ハイブリッド車両においては、その制動力は回生ブレーキによる走行負荷からも生起される。このため、例えばGセンサにより検出された実減速度をそのままフィードバックするのみでは、運転者が意図したブレーキフィーリングが得られなくなる場合がある。
例えば、車両が高速走行している場合には、制動時にエンジンブレーキが付加される。運転者は、そのエンジンブレーキによる制動力を期待するため、概してブレーキペダルを通常走行時よりも緩やかに踏み込む。すると、目標減速度が小さくなる一方、Gセンサが検出する実減速度はエンジンブレーキの作用により大きなままであるため、ブレーキ制御装置は、ブレーキの効きを下げるように制御することになる。しかし、運転者は依然としてブレーキペダルを踏み増しているため、意図した減速感が得られずに違和感を覚えてしまう可能性がある。
また、車両が極低速でクリープ走行している場合には、運転者は、そのクリープに打ち勝つようにブレーキペダルの操作をしようとする。すると、目標減速度が大きくなる一方、Gセンサが検出する実減速度はクリープによりマイナスの値をとるため、ブレーキ制御装置は、ブレーキの効きを余分に上げるように制御することになる。このため、運転者は、予想以上の制動力に違和感を覚えてしまう可能性がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、フィードバック制御則を用いたブレーキ制御において良好なブレーキフィーリングを保持できるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御する。このブレーキ制御装置は、ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、目標減速度演算手段により演算された目標減速度と、実減速度から車両走行中の所定の減速度変動要因による減速度分を差し引いた実減速度加工値との偏差に基づいてフィードバック項を演算して目標減速度を補正する目標減速度補正手段と、目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、を備える。
ここで、「所定の減速度変動要因」は、ブレーキ操作部材の操作に基づく油圧制御に直接関係しないが、減速度を変動させる要因を意味する。その具体例については後述する。
この態様によれば、実減速度そのものではなく、その実減速度から車両走行中の所定の減速度変動要因による減速度分が差し引れて加工された実減速度加工値がフィードバックされる。つまり、減速度変動要因により変動が予想される減速度分が実減速度から予め差し引かれるので、純粋にブレーキ操作部材の操作に起因した値、または少なくともそれに近い値がフィードバックされることになる。このため、その減速度変動要因がフィードバック制御の際に外乱となって減速度を変動させることを抑制でき、車両の減速度が運転者が意図した減速度に収束しやすくなる。その結果、良好なブレーキフィーリングを保持することができる。
具体的には、目標減速度補正手段は、減速度変動要因による減速度分として、トルクの減速度換算値を設定するようにしてもよい。ここでいう「トルクの減速度換算値」とは、エンジンに負荷をかけるトルクにより発生する減速度を意味する。例えば、エンジンブレーキによる制動トルクにより発生する減速度が含まれ得る。また特にハイブリッド車両の場合には、回生ブレーキによる制動トルクにより発生する減速度が含まれ得る。逆に、車両のクリープ走行時のように、制動力とは反対側に作用する駆動トルクが含まれ得る。この駆動トルクの場合には、トルクの減速度換算値としてはマイナスとして算出されることになる。
また、車両の走行時には、タイヤと路面との間に常に走行抵抗となる動摩擦力が発生する。つまり、車輪の転がり抵抗が車両の減速度に寄与することになるが、この転がり抵抗は、低車速ほど大きくなり、高車速ほど小さくなる。このため、このように転がり抵抗が変化すると、減速度が変動して運転者に違和感を与えやすくなると考えられる。
そこで、目標減速度補正手段は、減速度変動要因による減速度分として、車速の変化に伴う転がり抵抗による減速度換算値を設定してもよい。
また、車両がカーブを走行するようなときには、そのコーナリングフォースにより走行抵抗を受けて減速度を発生させることもある。
そこで、目標減速度補正手段は、減速度変動要因による減速度分として、車両の操舵に伴う走行抵抗による減速度換算値を設定してもよい。
本発明のブレーキ制御装置によれば、制御系の安定性を保持して良好なブレーキフィーリングを実現することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作量に基づいて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に制御するものである。
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り換えられる常閉型の電磁開閉弁である。また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを貯留するためのリザーバタンク26が接続されている。
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されており、ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FRおよび48FLによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。なお、以下では適宜、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。
右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「WC圧センサ44」という。
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ等を備えるものである。
ECU200には、上述の電磁開閉弁22FR,22FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等の油圧アクチュエータ80を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、WC圧センサ44FR〜44RLから、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力される。更に、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が入力され、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLからマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示す信号が入力される。
このように構成されるブレーキ制御装置10では、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度が算出され、算出された目標減速度に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標油圧、つまり目標ホイールシリンダ圧が求められる。そして、ECU200により増圧弁40および減圧弁42が制御され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御される。
一方、このとき電磁開閉弁22FR及び22FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏込によりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
また、アキュムレータ圧が予め設定された制御範囲の下限値未満であるときには、ECU200によりオイルポンプ34が駆動されてアキュムレータ圧が昇圧され、アキュムレータ圧がその制御範囲に入ればオイルポンプ34の駆動が停止される。
次に、本実施の形態のブレーキ制御の概要について説明する。
まず、運転者がイグニションスイッチをオンにする前、すなわち各電磁弁に対する通電前においては、各電磁弁は内蔵しているバネの付勢力により、図1に示した状態にある。このとき、マスタシリンダ14から大気圧のブレーキオイルが右および左電磁開閉弁22FR、22FLを介して、それぞれ右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに達している。一方、右後輪と左後輪のホイールシリンダ20RR、20RLにも、油圧給排管28と常開型の減圧弁42RR、42RLを介して、リザーバタンク26内の液圧と同じ大気圧のブレーキオイルが到達している。この時点では、4つすべてのホイールシリンダ圧が大気圧であり、制動力は発生しない。ただし、非通電時であっても、運転者がブレーキペダル12を踏めば、その踏込力に応じた制動力が右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに直接作用し、これら右前輪と左前輪には制動力が生じる。
運転者がイグニションスイッチをオンすると、必要に応じてモータ32が作動し、アキュムレータ圧が制御範囲に入る。この後、通常走行に入ったときも各電磁弁は図1の状態にある。続いて、運転者がブレーキペダル12を踏むと、まずマスタシリンダ14が押し込まれ、マスタシリンダ14とリザーバタンク26の連通が遮断される。また、右および左電磁開閉弁22FR、22FLが閉じられ、シミュレータカット弁23が開かれ、マスタシリンダ14から右前輪および左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLへの大気圧のブレーキオイルの連通が遮断される。また、右後輪用、左後輪用の減圧弁42RR、42RLが閉じられ、4個の増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLが開けられる。各電磁弁の開度は、後述する各種演算を経て算出された各車輪の目標ホイールシリンダ圧をもとに制御される。
図2は、ブレーキ制御装置によるブレーキ制御に係る機能ブロック図である。
ECU200ではまず、目標減速度演算部61により、ストロークセンサ46を介して取得されたペダルストロークSTとマスタシリンダ圧センサ48を介して取得されたマスタシリンダ圧PMCとに基づき、既知の手法で目標減速度GxRefが演算される。
そして、目標減速度補正部62により、目標減速度GxRefに対してフィードフォワード制御則およびフィードバック制御則を用いて所定の外乱を考慮した補正が施される。すなわち、補正係数演算部63により、車両の現在の加速度を検出するGセンサ70から入力された実際の減速度(以下「実減速度」という)G0を用いて補正係数Kが演算される。この補正係数Kは、後に詳述するフィードフォワード項KFFとフィードバック項KFBとの積により算出される。そして、目標減速度補正演算部64により、補正係数Kによって補正された目標減速度GxRefhが演算される。
そして、目標油圧演算部65により、この補正後の目標減速度GxRefhに基づく各車輪のホイールシリンダ20の目標ホイールシリンダ圧Prefが既知の手法で演算される。
そして、油圧制御部66により、この目標ホイールシリンダ圧Prefが実現されるように増圧弁40および減圧弁42に制御電流Iが付与されてこれらが開閉制御され、各車輪に適正な制動力が付与される。
なお、本実施の形態において、目標減速度演算部61が目標減速度演算手段に該当し、目標減速度補正部62が目標減速度補正手段に該当し、目標油圧演算部65が目標油圧演算手段に該当し、油圧制御部66が油圧制御手段に該当する。
次に、本実施の形態のブレーキ制御処理の流れについて具体的に説明する。図3は、ブレーキ制御処理を表すフローチャートである。この処理は、制動時に所定の周期ごとにECU200により実行される。
処理が開始されると、ECU200ではまず、目標減速度演算部61が、ストロークセンサ46により検出されたペダルストロークSTを読み込み(S10)、続いて、マスタシリンダ圧センサ48により検出されたマスタシリンダ圧PMCを読み込む(S12)。なお、測定値として2つのマスタシリンダ圧センサ48のいずれかの測定値を用いてもよいし、2つの測定値の平均値を用いてもよい。また、マスタシリンダ圧を示す信号にフィルタを適宜かけて滑らかな信号としてもよい。
続いて、目標減速度演算部61は、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて目標減速度GxRefを演算する(S14)。ECU200には、ペダルストロークST、マスタシリンダ圧PMCおよび目標減速度GxRefの関係が予めマップ化されて記憶されている。
続いて、目標減速度補正部62が、この目標減速度GxRefを適正に補正し、補正後の目標減速度GxRefhを得る(S16)。なお、この補正処理については後に詳述する。
続いて、目標油圧演算部65が、この補正後の目標減速度GxRefhに基づく各車輪の目標ホイールシリンダ圧Prefを演算する(S18)。なお、ECU200には、目標減速度GxRefhと目標ホイールシリンダ圧Prefとの関係が予めマップ化されて記憶されている。
そして、油圧制御部66が、この目標ホイールシリンダ圧Prefに応じた制御電流Iを演算し、増圧弁40または減圧弁42を通電して適正な油圧制御を実行する(S20)。これにより、増圧弁40および減圧弁42が開閉制御され、各車輪に適正な制動力が付与される。
なお、以上の処理を終了したときに、イグニッションスイッチがオフにされたことが確認されると(S22のYES)、目標減速度補正部62は、次回の処理のために今回の効き補正係数Hosei(後述する)をバックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶しておく(S24)。この効き補正係数記憶処理の詳細については後述する。
図4は、目標減速度補正処理を表すフローチャートである。
上述したS16の目標減速度補正処理において、補正係数演算部63は、下記式(1)で表される補正係数Kを演算する。
K=KFF・KFB ・・・(1)
KFF:フィードフォワード項
KFB:フィードバック項
すなわち、補正係数演算部63はまず、フィードフォワード項KFFを演算する(S30)。このフィードフォワード項KFFは、各車輪のブレーキパッドの個体間のばらつきや経年変化に伴う長期的なブレーキの効きの変化に対応した補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
KFF:フィードフォワード項
KFB:フィードバック項
すなわち、補正係数演算部63はまず、フィードフォワード項KFFを演算する(S30)。このフィードフォワード項KFFは、各車輪のブレーキパッドの個体間のばらつきや経年変化に伴う長期的なブレーキの効きの変化に対応した補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
続いて、補正係数演算部63は、PID制御による下記式(2)で表されるフィードバック項KFBを演算する(S32)。
KFB=1+Pgain・err+Igain・∫err+d/dt(Dgain・err) ・・・(2)
Pgain:比例ゲイン
Igain:積分ゲイン
Dgain:微分ゲイン
なお、errはフィードフォワード項を加味した目標減速度と実減速度加工値との偏差であり、下記式(3)により演算されるものである。
Pgain:比例ゲイン
Igain:積分ゲイン
Dgain:微分ゲイン
なお、errはフィードフォワード項を加味した目標減速度と実減速度加工値との偏差であり、下記式(3)により演算されるものである。
err=GxRef・KFF−G ・・・(3)
G:実減速度加工値
ここで、実減速度加工値Gは、下記式(4)のように表される。
G:実減速度加工値
ここで、実減速度加工値Gは、下記式(4)のように表される。
G=G0−トルクのG換算値 ・・・(4)
G0:Gセンサ値
このトルクのG換算値(減速度換算値)は、エンジンに作用するトルクを減速度に換算した値を意味する。ここでは、エンジンブレーキにより発生する減速度と、クリープトルクにより発生する減速度が設定されている。なお、エンジンブレーキは、減速側に作用するため、減速度換算値としては正の値をとる。クリープトルクは、加速側に作用するため、減速度換算値としては負の値をとることになる。なお、このトルクのG換算値は、エンジンブレーキやクリープトルクにより発生するトルクとの関係で予めECU200にマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、図示しないトルクセンサから取得した車速に基づいてこの制御マップを参照して今回のトルクのG換算値を設定する。
G0:Gセンサ値
このトルクのG換算値(減速度換算値)は、エンジンに作用するトルクを減速度に換算した値を意味する。ここでは、エンジンブレーキにより発生する減速度と、クリープトルクにより発生する減速度が設定されている。なお、エンジンブレーキは、減速側に作用するため、減速度換算値としては正の値をとる。クリープトルクは、加速側に作用するため、減速度換算値としては負の値をとることになる。なお、このトルクのG換算値は、エンジンブレーキやクリープトルクにより発生するトルクとの関係で予めECU200にマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、図示しないトルクセンサから取得した車速に基づいてこの制御マップを参照して今回のトルクのG換算値を設定する。
なお、ハイブリッド車両等の場合には、回生ブレーキによる制動トルクにより減速度が発生する。このため、回生ブレーキにより発生する減速度が設定されることになる。
このように、フィードバック項KFBの演算処理において、Gセンサ70によって検出された実減速度G0からトルクのG換算値が差し引かれて加工された実減速度加工値Gを用いる。この結果、エンジンブレーキによる制動トルクやクリープトルクによる加減速度が差し引かれて純粋にブレーキ操作部材の操作に起因した値、または少なくともそれに近い値がフィードバックされることになる。その結果、高速走行においてエンジンブレーキがかかったり、極低速でクリープ走行していたとしても、車両の減速度が運転者が意図した減速度に収束しやすくなる。
続いて、補正係数演算部63は、このようにして演算されたフィードフォワード項KFFおよびフィードバック項KFBを用いて、上記式(1)から補正係数Kを算出する(S34)。
そして、目標減速度補正演算部64は、下記式(5)により、補正された目標減速度GxRefhを演算する(S36)。
GxRefh=K・GxRef ・・・(5)
図5は、フィードフォワード項演算処理を表すフローチャートである。
図5は、フィードフォワード項演算処理を表すフローチャートである。
上述したS30のフィードフォワード項KFFは、下記式(6)により表される。
KFF=KFFA・KFFB・KFFC ・・・(6)
KFFA:効き計測補正項
KFFB:フェード補正項
KFFC:重量学習補正項
ここで、効き計測補正項KFFAは、各車輪のブレーキの構成要素であるブレーキパッドやその周辺部品などの個体間のばらつきや経年劣化など、ブレーキの効きに長期的にゆっくり影響を及ぼす外乱に対する補正項である。また、フェード補正項KFFBは、ブレーキパッドのフェード現象など、ブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。さらに、重量学習補正項KFFCは、車両の乗員人数や積載重量の変化など、車両走行時の慣性力によりブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。
KFFA:効き計測補正項
KFFB:フェード補正項
KFFC:重量学習補正項
ここで、効き計測補正項KFFAは、各車輪のブレーキの構成要素であるブレーキパッドやその周辺部品などの個体間のばらつきや経年劣化など、ブレーキの効きに長期的にゆっくり影響を及ぼす外乱に対する補正項である。また、フェード補正項KFFBは、ブレーキパッドのフェード現象など、ブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。さらに、重量学習補正項KFFCは、車両の乗員人数や積載重量の変化など、車両走行時の慣性力によりブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。
このフィードフォワード項演算処理において、補正係数演算部63は、まず効き計測補正項KFFAを演算するために、下記式(7)によりブレーキの効きを表す効き計測値ErrRatetempを算出する(S40)。
ErrRatetemp=(realGx−realGx0)/nominalGx−1 ・・・(7)
ここで、realGxは、Gセンサ70から取得した実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いたものであり、下記式(8)により算出されるが、上述した実減速度加工値Gを用いることができる。
ここで、realGxは、Gセンサ70から取得した実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いたものであり、下記式(8)により算出されるが、上述した実減速度加工値Gを用いることができる。
realGx=Gセンサ値−他システム減速度 ・・・(8)
このrealGxには、例えば車両の減速過程において車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。なお、車両がハイブリッド車両などの場合には、他システム減速度に回生ブレーキによる減速度も含まれ得る。
このrealGxには、例えば車両の減速過程において車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。なお、車両がハイブリッド車両などの場合には、他システム減速度に回生ブレーキによる減速度も含まれ得る。
なお、他システム減速度は、運転者によりアクセルペダルが両踏みされているときなどの加速時、図示しないパーキングブレーキがオンにされているとき、図示しないステアリングホイールの操舵角が所定値以上または操舵角変化が大きいときには適正な値が算出されないことがある。このため、このような場合には効き計測値の計測自体を行わないようにする。
また、realGx0は、運転者がブレーキペダルを踏み込む直前のrealGxである。ここでは、効き計測値ErrRatetempの精度を高めるために、Gセンサの実測値そのものではなく、その変化量を基準に計測するようにしたものである。さらに、nominalGxは、WC圧センサ44により検出されたホイールシリンダ圧から演算される(予測される)減速度であり、車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。
なお、以上に説明した効き計測値ErrRatetempは、計測の精度を向上させるために所定の計測有効条件が満たされたときにその計測が実施される。すなわち、1)車速が所定値のときに所定時間の効き計測が可能であること、2)効き計測時のrealGxの変動が所定値以下であることが、計測有効条件とされ得る。条件1)は、ブレーキの効きの車速依存性が大きいために、ある速度を基準に変化量を計測するものである。条件2)は、過渡特性の影響を低減するために設定される。つまり、車速が所定値であっても、例えば運転者によるブレーキペダルの操作量が非常に速い場合には、誤差を多く含むことになる。そこで、このようにrealGxの変動が大きい場合には、効き計測を行わないか無視するようにするものである。
続いて、補正係数演算部63は、予め設定した効き計測値の上限値および下限値に基づいて、上述のようにして算出した効き計測値ErrRatetempのフィルタリング処理を行う(S42)。これは、ブレーキの効き状態としてあり得ない部分を除くものであり、その効き計測値ErrRatetempがその上限値を超えたり、下限値を下回る場合には、今回の計測値を無視する。これは、効き計測値ErrRatetempの大きなずれを無視して、制御の安定性を確保するものである。
続いて、補正係数演算部63は、計測の精度を向上させるために効き計測値の平均化処理を行い、効き計測値ErrRatetempの平均値ErrRateを算出する(S44)。例えば、過去から記憶されてきた効き計測値ErrRatetempの平均値を算出する。
そして、補正係数演算部63は、下記式(9)で表される効き補正係数Hoseiを演算する(S46)。
Hosei=1/(1+ErrRate) ・・・(9)
これは、ブレーキの効きが当初予定していた値に対して低下したときに、その低下分を上乗せしてブレーキの効きを補うための補正係数である。
これは、ブレーキの効きが当初予定していた値に対して低下したときに、その低下分を上乗せしてブレーキの効きを補うための補正係数である。
続いて、補正係数演算部63は、このようにして算出した効き補正係数Hoseiに対して予め設定した1トリップ変動量制限値に基づくフィルタリング処理を行う(S48)。ここで、1トリップとはイグニッションスイッチのオン−オフ間を意味するが、1トリップにおけるブレーキの効きの変化はある程度限られるものであることから、そのブレーキの効きが過大である場合には、何らかの異常が生じていると考えられる。そこで、前回のイグニッションスイッチのオフのときに記憶した効き補正係数Hoseiの平均値(後述する)と今回算出した効き補正係数Hoseiとの差、つまり効き補正係数Hoseiの変動量が、その1トリップ変動量制限値よりも大きい場合には、今回の効き補正係数Hoseiを無視する。
さらに、補正係数演算部63は、予め設定した効き補正係数の上限値および下限値に基づいて、上述のようにして算出した効き補正係数Hoseiのフィルタリング処理を行う(S50)。つまり、その効き補正係数Hoseiがその上限値を超えたり、下限値を下回る場合には、今回の計測値を無視する。これは、効き補正係数Hoseiの大きなずれを無視して、制御の安定性を確保するものである。
以上のようにして、無視されることなく算出された効き補正係数Hoseiが効き計測補正項KFFAとして設定される(S52)。
続いて、補正係数演算部63は、ブレーキパッドのフェード現象による外乱を解消するフェード補正項KFFBを演算する(S54)。このフェード補正項KFFBを組み込むことにより、例えばブレーキパッドの温度が短期的に上昇してブレーキの効きが低下したときに、そのブレーキの効きを補うことができる。
すなわち、補正係数演算部63は、ブレーキパッドの温度をその周辺に設置された図示しない温度センサ等の検出値に基づいて推定する。ECU200には、このブレーキパッドの推定温度とフェード補正項KFFBとの関係が予めマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、ブレーキパッドの推定温度に基づいてマップを参照し、フェード補正項KFFBを設定する。
続いて、補正係数演算部63は、車両の乗員人数や積載重量の変化など車両重量による慣性力に起因する外乱を解消する重量学習補正項KFFCを演算する(S56)。この重量学習補正項KFFCを組み込むことにより、例えば車両の下り坂の走行中にブレーキの効きが低下したときに、そのブレーキの効きを補うことができる。
すなわち、補正係数演算部63は、図示しないトルクセンサから取得した車両の加速トルクおよびGセンサ70から取得した加速度や、図示しない車高センサから取得した車高等から現在の車両重量を推定する。ECU200には、加速トルクおよび加速度と車両重量との関係、並びに車両重量と重量学習補正項KFFCとの関係が予めマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、前者のマップを参照して車両重量を取得し、さらに後者のマップを参照して重量学習補正項KFFCを設定する。
そして、補正係数演算部63は、以上のようにして設定した効き計測補正項KFFA、フェード補正項KFFBおよび重量学習補正項KFFCを上記式(6)に代入することによりフィードフォワード項KFFを算出する(S58)。
図6は、補正係数記憶処理を表すフローチャートである。この処理は既述のS24の処理であり、次回のS48の処理に用いる「前回の効き補正係数Hosei」を記憶しておくものである。補正係数演算部63は、イグニッションスイッチがオフにされたことが確認されると、次回の処理の便宜のために今回の効き補正係数HoseiをバックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶しておく。
すなわち、補正係数演算部63はまず、ブレーキパッドの温度をその周辺に設置された図示しない温度センサ等の検出値に基づいて推定する(S70)。
そして、補正係数演算部63は、そのブレーキパッドの温度が予め設定した記憶許可温度以下であるか否かを判断する(S72)。このとき、ブレーキパッドの温度がその記憶許可温度を超えている場合には(S72のNO)、ブレーキパッドまたはその周辺部品に以上が生じていると考えられるため、当該補正係数記憶処理を中断する。つまり、次回のS48の処理には現在記憶されている前回の効き補正係数Hoseiを用いるようにする。
一方、ブレーキパッドの温度がその記憶許可温度以下であれば(S72のYES)、補正係数演算部63は、続いて効き補正係数記憶値平均化処理を実行する(S74)。ここでは、今回の演算処理により算出された効き補正係数Hoseiの影響が過大にならないように、下記式(10)に基づいて前回記憶された効き補正係数Hoseiとの間でなまし処理を行う。
Hosei記憶値=β・Hosei+(1−β)・Hosei前回記憶値 ・・・(10)
Hosei記憶値:今回記憶する効き補正係数Hosei
Hosei前回記憶値:前回のイグニッションスイッチのオフ時に記憶された
効き補正係数Hosei
ここで、βは重み付け係数であり、例えば0.2(つまり20%)を設定することができる。
Hosei記憶値:今回記憶する効き補正係数Hosei
Hosei前回記憶値:前回のイグニッションスイッチのオフ時に記憶された
効き補正係数Hosei
ここで、βは重み付け係数であり、例えば0.2(つまり20%)を設定することができる。
補正係数演算部63は、上記式(10)で演算されたHosei記憶値を、バックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶する(S76)。
以上に説明したように、本実施の形態においては、ブレーキ制御におけるフィードバック項KFBの演算処理において、Gセンサ70によって検出された実減速度G0そのものではなく、その実減速度G0をトルクのG換算値で加工した実減速度加工値Gがフィードバックされるようにした。その結果、エンジンブレーキによる制動トルクやクリープトルクによる加減速度が差し引かれた純粋にブレーキ操作部材の操作に起因した値、または少なくともそれに近い値がフィードバックされ、ブレーキ操作部材の操作に基づく油圧制御が行われる。その結果、高速走行においてエンジンブレーキがかかったり、極低速でクリープ走行していたとしても、車両の減速度が運転者が意図した減速度に収束しやすくなり、そのブレーキフィーリングを保持することができる。
また、本実施の形態においては、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて演算された目標減速度GxRefに、フィードフォワード制御則およびフィードバック制御則に基づく補正がなされ、その補正後のGxRefhを実現する目標ホイールシリンダ圧Prefが演算される。特に、フィードフォワード項KFFにブレーキパッド等の状態に基づいて学習した効き計測補正項KFFAが用いられるため、フィードバック制御におけるブレーキ装置の構成要素の経年劣化等の影響が少なくなる。したがって、制御量のハンチングを防止または抑制することができる。また、フィードフォワード項KFFを加味しながらフィードバック制御が継続的に実行されるため、制御の追従性を保持することもできる。その結果、ブレーキ装置の構成要素の経年劣化等に起因する外乱があっても、制御系の安定性を保持して良好なブレーキフィーリングを保持することができる。
本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
例えば、上記各実施の形態では、上記式(4)に示したように、Gセンサ70による実減速度GからトルクのG換算値を差し引くことにより実減速度加工値Gを演算した例を示したが、さらに、車両の走行抵抗による減速度分をも考慮するようにしてもよい。
すなわち、車両の走行時には、タイヤと路面との間に常に走行抵抗となる動摩擦力が発生し、その車輪の転がり抵抗が車両の減速度に寄与することになる。この転がり抵抗は、低車速ほど大きくなり、高車速ほど小さくなるため、この転がり抵抗を無視すると、減速度が変動して運転者に違和感を与えやすくなると考えられる。
そこで、実減速度加工値Gを、車速の変化に伴う転がり抵抗をも考慮した下記式(11)により演算するようにしてもよい。
G=G0−トルクのG換算値−転がり抵抗G換算値 ・・・(11)
G0:Gセンサ値
ここで、転がり抵抗G換算値は、車速の変化に伴う転がり抵抗による減速度換算値を意味する。つまり、上記式(11)によれば、実減速度加工値Gに転がり抵抗により発生する減速度分も差し引かれるため、車速の変化によって転がり抵抗が変動しても、その変動によるフィードバック制御への影響が少なくなる。その結果、フィードバック値が運転者のブレーキペダルの踏み込み量に対応した減速度により近くなり、ブレーキフィーリングをより安定に保持することができる。なお、この転がり抵抗G換算値は、車速との関係で予めECU200にマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、図示しない車速センサから取得した車速に基づいてこの制御マップを参照して今回の操舵G換算値を設定する。
G0:Gセンサ値
ここで、転がり抵抗G換算値は、車速の変化に伴う転がり抵抗による減速度換算値を意味する。つまり、上記式(11)によれば、実減速度加工値Gに転がり抵抗により発生する減速度分も差し引かれるため、車速の変化によって転がり抵抗が変動しても、その変動によるフィードバック制御への影響が少なくなる。その結果、フィードバック値が運転者のブレーキペダルの踏み込み量に対応した減速度により近くなり、ブレーキフィーリングをより安定に保持することができる。なお、この転がり抵抗G換算値は、車速との関係で予めECU200にマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、図示しない車速センサから取得した車速に基づいてこの制御マップを参照して今回の操舵G換算値を設定する。
ただし、周知のように、転がり抵抗はタイヤの空気圧が低下すると増加するため、その空気圧による転がり抵抗の変化が考慮されるのが好ましい。そこで、例えばブレーキペダルおよびアクセルペダルが踏み込まれておらず、車両が慣性により直進走行しているときなどに、転がり抵抗を学習するようにしてもよい。つまり、このような所定の走行状況において転がり抵抗が変化すると、ブレーキペダルの踏み込みやトルク変動等がなくても、車両の減速度が変化する。したがって、このような走行状況における減速度の平均値を求めておくなど予め学習しておけば、後にその減速度が大きくなった場合には、転がり抵抗が増えていると判断できる。逆に、その減速度が小さくなった場合には、転がり抵抗が減少したと判断できる。このような減速度と転がり抵抗との関係をマップ化してECU200に記憶しておくとよい。
さらに、車両がカーブを走行するようなときには、そのコーナリングフォースによりコーナリングドラッグが発生し、車両に減速度を発生させることもある。すなわち、車両の操舵によって車両の走行方向に対してタイヤが傾くために、タイヤと路面との間に摩擦による走行抵抗が発生する。運転者は、カーブ走行時にそのコーナリングドラッグによる減速感を期待してブレーキペダルを緩めに操作すると考えられるため、この操舵時による減速度を反映させなければ、運転者に違和感を与える可能性がある。
そこで、実減速度加工値Gを、操舵時に発生する減速度をも考慮した下記式(12)により演算するようにしてもよい。
G=G0−トルクのG換算値−転がり抵抗G換算値−操舵G換算値 ・・・(12)
G0:Gセンサ値
ここで、操舵G換算値は、車両の操舵に伴う走行抵抗による減速度換算値を意味する。コーナリングドラッグは、操舵量、車両の緒元、タイヤの状態、車速等の要因により決まるものであるため、これらの要因を適宜パラメータとした制御マップが予めECU200に記憶されている。補正係数演算部63は、今回の操舵G換算値をその制御マップを参照して設定する。
G0:Gセンサ値
ここで、操舵G換算値は、車両の操舵に伴う走行抵抗による減速度換算値を意味する。コーナリングドラッグは、操舵量、車両の緒元、タイヤの状態、車速等の要因により決まるものであるため、これらの要因を適宜パラメータとした制御マップが予めECU200に記憶されている。補正係数演算部63は、今回の操舵G換算値をその制御マップを参照して設定する。
上記式(12)によれば、実減速度加工値Gにさらに操舵時に発生する減速度分も差し引かれるため、操舵により一時的にコーナリングドラッグ等の走行抵抗が発生しても、そのフィードバック制御への影響が少なくなる。その結果、フィードバック値が運転者のブレーキペダルの踏み込み量に対応した減速度にさらに近くなり、ブレーキフィーリングをより安定に保持することができる。
さらに、実減速度加工値Gから坂路走行時に発生する減速度分を差し引くようにしてもよい。ここで、坂路補正分の減速度とは、車両が坂道を走行しているときに作用する慣性力により発生する減速度を意味する。
なお、以上の変形例により算出された実減速度加工値Gは、上記式(8)に示したrealGxに適用することもできる。
また、ブレーキペダル12の踏み込み量に応じて変化するペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて目標減速度GxRefを演算し、その目標減速度GxRefにフィードフォワード制御則およびフィードバック制御則に基づく補正を行った例を示したが、その目標減速度GxRefを、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCの一方に基づいて演算するようにしてもよい。あるいは、ストロークシミュレータ24に付与されるストロークシミュレータ圧を検出する圧力センサなどを設け、そのストロークシミュレータ圧に基づいて目標減速度GxRefを演算するようにしてもよい。
10 ブレーキ制御装置、 12 ブレーキペダル、14 マスタシリンダ、20 ホイールシリンダ、24 ストロークシミュレータ、40 増圧弁、42 減圧弁、44 WC圧センサ、48 マスタシリンダ圧センサ、61 目標減速度演算部、62 目標減速度補正部、63 補正係数演算部、64 目標減速度補正演算部、65 目標油圧演算部、66 油圧制御部、70 Gセンサ、200 ECU
Claims (4)
- ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置において、
ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、
前記目標減速度演算手段により演算された目標減速度と、実減速度から車両走行中の所定の減速度変動要因による減速度分を差し引いた実減速度加工値との偏差に基づいてフィードバック項を演算し、前記目標減速度を補正する目標減速度補正手段と、
前記目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、前記ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、
前記目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、前記ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記目標減速度補正手段は、前記減速度変動要因による減速度分として、トルクの減速度換算値を設定したことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記減速度変動要因による減速度分として、車速の変化に伴う転がり抵抗による減速度換算値を設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記減速度変動要因による減速度分として、車両の操舵に伴う走行抵抗による減速度換算値を設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006070751A JP2007245871A (ja) | 2006-03-15 | 2006-03-15 | ブレーキ制御装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2011145266A (ja) * | 2010-01-18 | 2011-07-28 | Advics Co Ltd | 車両の前後加速度修正装置を備えた車両の諸元推定装置、及び車両の前後加速度修正装置 |
JP2015044452A (ja) * | 2013-08-27 | 2015-03-12 | トヨタ自動車株式会社 | 運転支援装置 |
-
2006
- 2006-03-15 JP JP2006070751A patent/JP2007245871A/ja active Pending
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CN105492277A (zh) * | 2013-08-27 | 2016-04-13 | 丰田自动车株式会社 | 驾驶辅助设备 |
US9630599B2 (en) | 2013-08-27 | 2017-04-25 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Driving assistance apparatus |
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