JP2007253655A - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】変速時にも良好なブレーキフィーリングを実現する。
【解決手段】車両の変速段の切り替えが検知されたときに、Gセンサから取得した実減速度に基づく目標減速度の補正が一時的に停止され、フィードバック項KFBとして変速前の値が用いられる。そして、その変速ショックによる減速度の影響がなくなる所定期間後に通常のフィードバック制御に復帰されるようにした。その結果、変速ショック時の減速度の急変が後のブレーキ制御に与える影響がなくなり、運転者に違和感を与えることが防止される。
【選択図】図6
【解決手段】車両の変速段の切り替えが検知されたときに、Gセンサから取得した実減速度に基づく目標減速度の補正が一時的に停止され、フィードバック項KFBとして変速前の値が用いられる。そして、その変速ショックによる減速度の影響がなくなる所定期間後に通常のフィードバック制御に復帰されるようにした。その結果、変速ショック時の減速度の急変が後のブレーキ制御に与える影響がなくなり、運転者に違和感を与えることが防止される。
【選択図】図6
Description
本発明は、車両に設けられた車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。
従来から、マスタシリンダにおける液圧とブレーキペダルのペダルストロークとに基づいて目標減速度を算出し、その目標減速度が車両に付与されるように制動力を制御するブレーキ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなブレーキ制御装置は、ブレーキペダルの操作量に応じて加圧されたブレーキフルードを各ホイールシリンダへ向けて送出する。このブレーキ制御は、ブレーキペダルの操作量に基づく要求減速度と、Gセンサ等から取得した車両の実際の減速度(以下「実減速度」という)との偏差を逐次算出し、その偏差を解消するように制動制御量を決定するフィードバック制御により実行される。
特開昭62−18359号公報
しかしながら、自動変速機を搭載した車両においてブレーキペダルを踏み込んでいるときに、変速段が切り替わって実減速度が急変したような場合には、フィードバック制御の遅れにより運転者に違和感を与える可能性がある。
すなわち、制動中のシフトダウンによる変速時のショック(以下「変速ショック」という)は瞬間的で比較的速い動きである。一方、その変速ショックに伴う減速度がフィードバックによりブレーキ制御に反映されるまでには、ある程度の時間がかかる。このため、その変速ショックにより実減速度が急激に大きくなったときには、ブレーキ制御装置がブレーキの効きを下げるように制御するが、そのころには既に変速ショックが終わっているような事態が生じる。そうなると、変速ショックが終わって減速度が安定しているにもかかわらず減速度を緩めるような制御が働くため、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、フィードバック制御則を用いたブレーキ制御において、変速時にも良好なブレーキフィーリングを保持できるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御する。このブレーキ制御装置は、ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、目標減速度演算手段により演算された目標減速度と実減速度とに基づいてフィードバック項を演算して目標減速度を補正するとともに、車両の変速段の切り替えを検知または推定したときには、その目標減速度の補正を一時的に制限する目標減速度補正手段と、目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、を備えた。
この態様によれば、車両の変速段の切り替えが検知または推定されたときに、目標減速度の補正が一時的に制限されるため、変速ショック時の減速度の急変が後のブレーキ制御に与える影響がなくなるか、少なくとも緩和される。
この「目標減速度の補正の制限」は、例えば、目標減速度補正手段が車両の変速段の切り替えを検知または推定したときに、その検知または推定前に演算されたフィードバック項を用いるようにして行ってもよい。
このようにすれば、変速前に演算されたフィードバック項が用いられるため、変速時に減速度が急変しても、その影響が変速ショック後に現れることを防止できる。したがって、運転者に減速感の不足などの違和感を与えることを防止または抑制できる。
また、このような目標減速度の補正の制限は一時的なものであるから、目標減速度補正手段は、変速段の切り替えが終了した所定期間後に、フィードバック項を目標減速度と実減速度とに基づくように更新してもよい。
このようにすれば、実減速度に基づく通常のフィードバック制御に復帰することができ、その後のブレーキ制御との整合性を確保することができる。
ただし、その際に補正時の目標減速度と更新時の目標減速度との差が大き過ぎると、意図しない車両のショックが発生する可能性がある。そこで、目標減速度補正手段が、フィードバック項の更新に際して、そのフィードバック項をその更新すべき値に徐々に近づける徐変制御を行うようにしてもよい。
本発明のブレーキ制御装置によれば、フィードバック制御則を用いたブレーキ制御において、変速時にも良好なブレーキフィーリングを実現することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作量に基づいて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に制御するものである。
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り換えられる常閉型の電磁開閉弁である。また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを貯留するためのリザーバタンク26が接続されている。
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されており、ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FRおよび48FLによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。なお、以下では適宜、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。
右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「WC圧センサ44」という。
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
ECU200には、上述の電磁開閉弁22FR,22FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等の油圧アクチュエータ80を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、WC圧センサ44FR〜44RLから、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力される。また、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が入力され、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLからマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示す信号が入力される。さらに、ECU200には、図示しないシフトポジションセンサから現在のシフトポジションを示す信号が入力され、図示しないアクセル開度センサからアクセルペダルの踏み込み量を示す信号が入力される。
このように構成されるブレーキ制御装置10では、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度が算出され、算出された目標減速度に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標油圧、つまり目標ホイールシリンダ圧が求められる。そして、ECU200により増圧弁40および減圧弁42が制御され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御される。
一方、このとき電磁開閉弁22FR及び22FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏込によりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
また、アキュムレータ圧が予め設定された制御範囲の下限値未満であるときには、ECU200によりオイルポンプ34が駆動されてアキュムレータ圧が昇圧され、アキュムレータ圧がその制御範囲に入ればオイルポンプ34の駆動が停止される。
次に、本実施の形態のブレーキ制御の概要について説明する。
まず、運転者がイグニションスイッチをオンにする前、すなわち各電磁弁に対する通電前においては、各電磁弁は内蔵しているバネの付勢力により、図1に示した状態にある。このとき、マスタシリンダ14から大気圧のブレーキオイルが右および左電磁開閉弁22FR、22FLを介して、それぞれ右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに達している。一方、右後輪と左後輪のホイールシリンダ20RR、20RLにも、油圧給排管28と常開型の減圧弁42RR、42RLを介して、リザーバタンク26内の液圧と同じ大気圧のブレーキオイルが到達している。この時点では、4つすべてのホイールシリンダ圧が大気圧であり、制動力は発生しない。ただし、非通電時であっても、運転者がブレーキペダル12を踏めば、その踏込力に応じた制動力が右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに直接作用し、これら右前輪と左前輪には制動力が生じる。
運転者がイグニションスイッチをオンすると、必要に応じてモータ32が作動し、アキュムレータ圧が制御範囲に入る。この後、通常走行に入ったときも各電磁弁は図1の状態にある。続いて、運転者がブレーキペダル12を踏むと、まずマスタシリンダ14が押し込まれ、マスタシリンダ14とリザーバタンク26の連通が遮断される。また、右および左電磁開閉弁22FR、22FLが閉じられ、シミュレータカット弁23が開かれ、マスタシリンダ14から右前輪および左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLへの大気圧のブレーキオイルの連通が遮断される。また、右後輪用、左後輪用の減圧弁42RR、42RLが閉じられ、4個の増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLが開けられる。各電磁弁の開度は、後述する各種演算を経て算出された各車輪の目標ホイールシリンダ圧をもとに制御される。
図2は、ブレーキ制御装置によるブレーキ制御に係る機能ブロック図である。
ECU200ではまず、目標減速度演算部61により、ストロークセンサ46を介して取得されたペダルストロークSTとマスタシリンダ圧センサ48を介して取得されたマスタシリンダ圧PMCとに基づき、既知の手法で目標減速度GxRefが演算される。
そして、目標減速度補正部62により、目標減速度GxRefに対してフィードフォワード制御則およびフィードバック制御則を用いて所定の外乱を考慮した補正が施される。すなわち、補正係数演算部63により、車両の現在の加速度を検出するGセンサ70から入力された実際の減速度(以下「実減速度」という)Gを用いて補正係数Kが演算される。この補正係数Kは、後に詳述するフィードフォワード項KFFとフィードバック項KFBとの積により算出される。そして、目標減速度補正演算部64により、補正係数Kによって補正された目標減速度GxRefhが演算される。
そして、目標油圧演算部65により、この補正後の目標減速度GxRefhに基づく各車輪のホイールシリンダ20の目標ホイールシリンダ圧Prefが既知の手法で演算される。
そして、油圧制御部66により、この目標ホイールシリンダ圧Prefが実現されるように増圧弁40および減圧弁42に制御電流Iが付与されてこれらが開閉制御され、各車輪に適正な制動力が付与される。
なお、本実施の形態において、目標減速度演算部61が目標減速度演算手段に該当し、目標減速度補正部62が目標減速度補正手段に該当し、目標油圧演算部65が目標油圧演算手段に該当し、油圧制御部66が油圧制御手段に該当する。
次に、本実施の形態のブレーキ制御処理の流れについて具体的に説明する。図3は、ブレーキ制御処理を表すフローチャートである。この処理は、制動時に所定の周期ごとにECU200により実行される。
処理が開始されると、ECU200ではまず、目標減速度演算部61が、ストロークセンサ46により検出されたペダルストロークSTを読み込み(S10)、続いて、マスタシリンダ圧センサ48により検出されたマスタシリンダ圧PMCを読み込む(S12)。なお、測定値として2つのマスタシリンダ圧センサ48のいずれかの測定値を用いてもよいし、2つの測定値の平均値を用いてもよい。また、マスタシリンダ圧を示す信号にフィルタを適宜かけて滑らかな信号としてもよい。
続いて、目標減速度演算部61は、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて目標減速度GxRefを演算する(S14)。ECU200には、ペダルストロークST、マスタシリンダ圧PMCおよび目標減速度GxRefの関係が予めマップ化されて記憶されている。
続いて、目標減速度補正部62が、この目標減速度GxRefを適正に補正し、補正後の目標減速度GxRefhを得る(S16)。なお、この補正処理については後に詳述する。
続いて、目標油圧演算部65が、この補正後の目標減速度GxRefhに基づく各車輪の目標ホイールシリンダ圧Prefを演算する(S18)。なお、ECU200には、目標減速度GxRefhと目標ホイールシリンダ圧Prefとの関係が予めマップ化されて記憶されている。
そして、油圧制御部66が、この目標ホイールシリンダ圧Prefに応じた制御電流Iを演算し、増圧弁40または減圧弁42を通電して適正な油圧制御を実行する(S20)。これにより、増圧弁40および減圧弁42が開閉制御され、各車輪に適正な制動力が付与される。
なお、以上の処理を終了したときに、イグニッションスイッチがオフにされたことが確認されると(S22のYES)、目標減速度補正部62は、次回の処理のために今回の効き補正係数Hosei(後述する)をバックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶しておく(S24)。この効き補正係数記憶処理の詳細については後述する。
図4は、目標減速度補正処理を表すフローチャートである。
上述したS16の目標減速度補正処理において、補正係数演算部63は、下記式(1)で表される補正係数Kを演算する。
K=KFF・KFB ・・・(1)
KFF:フィードフォワード項
KFB:フィードバック項
すなわち、補正係数演算部63はまず、フィードフォワード項KFFを演算する(S30)。このフィードフォワード項KFFは、各車輪のブレーキパッドの個体間のばらつきや経年変化に伴う長期的なブレーキの効きの変化に対応した補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
KFF:フィードフォワード項
KFB:フィードバック項
すなわち、補正係数演算部63はまず、フィードフォワード項KFFを演算する(S30)。このフィードフォワード項KFFは、各車輪のブレーキパッドの個体間のばらつきや経年変化に伴う長期的なブレーキの効きの変化に対応した補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
続いて、補正係数演算部63は、フィードバック項KFBを演算する(S32)。このフィードバック項KFBは、運転者によるブレーキペダルの踏み込みに基づいて演算された車両の目標減速度と実減速度との偏差を解消するために、その踏み込み操作の都度変動する補正項であるが、その具体的な演算手順については、後に詳述する。
続いて、補正係数演算部63は、このようにして演算されたフィードフォワード項KFFおよびフィードバック項KFBを用いて、上記式(1)から補正係数Kを算出する(S34)。
そして、目標減速度補正演算部64は、下記式(2)により、補正された目標減速度GxRefhを演算する(S36)。
GxRefh=K・GxRef ・・・(2)
図5は、フィードフォワード項演算処理を表すフローチャートである。
図5は、フィードフォワード項演算処理を表すフローチャートである。
上述したS30のフィードフォワード項KFFは、下記式(3)により表される。
KFF=KFFA・KFFB・KFFC ・・・(3)
KFFA:効き計測補正項
KFFB:フェード補正項
KFFC:重量学習補正項
ここで、効き計測補正項KFFAは、各車輪のブレーキの構成要素であるブレーキパッドやその周辺部品などの個体間のばらつきや経年劣化など、ブレーキの効きに長期的にゆっくり影響を及ぼす外乱に対する補正項である。また、フェード補正項KFFBは、ブレーキパッドのフェード現象など、ブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。さらに、重量学習補正項KFFCは、車両の乗員人数や積載重量の変化など、車両走行時の慣性力によりブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。
KFFA:効き計測補正項
KFFB:フェード補正項
KFFC:重量学習補正項
ここで、効き計測補正項KFFAは、各車輪のブレーキの構成要素であるブレーキパッドやその周辺部品などの個体間のばらつきや経年劣化など、ブレーキの効きに長期的にゆっくり影響を及ぼす外乱に対する補正項である。また、フェード補正項KFFBは、ブレーキパッドのフェード現象など、ブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。さらに、重量学習補正項KFFCは、車両の乗員人数や積載重量の変化など、車両走行時の慣性力によりブレーキの効きに短期的に影響を及ぼす外乱に対する補正項である。
このフィードフォワード項演算処理において、補正係数演算部63は、まず効き計測補正項KFFAを演算するために、下記式(4)によりブレーキの効きを表す効き計測値ErrRatetempを算出する(S40)。
ErrRatetemp=(realGx−realGx0)/nominalGx−1 ・・・(4)
ここで、realGxは実減速度に対応するが、詳細には、Gセンサ70から取得した実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いたものであり、本実施の形態では下記式(5)により算出される。
ここで、realGxは実減速度に対応するが、詳細には、Gセンサ70から取得した実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いたものであり、本実施の形態では下記式(5)により算出される。
realGx=Gセンサ値−他システム減速度−坂路補正分減速度 ・・・(5)
すなわち、realGxは、Gセンサ値からエンジンブレーキによる減速度などの他システム減速度を差し引き、さらに坂路補正分の減速度を差し引いて算出される。ここで、坂路補正分の減速度とは、車両が坂道を走行しているときに作用する慣性力により発生する減速度を意味する。このrealGxには、例えば車両の減速過程において車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。なお、車両がハイブリッド車両などの場合には、他システム減速度に回生ブレーキによる減速度も含まれ得る。
すなわち、realGxは、Gセンサ値からエンジンブレーキによる減速度などの他システム減速度を差し引き、さらに坂路補正分の減速度を差し引いて算出される。ここで、坂路補正分の減速度とは、車両が坂道を走行しているときに作用する慣性力により発生する減速度を意味する。このrealGxには、例えば車両の減速過程において車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。なお、車両がハイブリッド車両などの場合には、他システム減速度に回生ブレーキによる減速度も含まれ得る。
なお、他システム減速度は、運転者によりアクセルペダルが両踏みされているときなどの加速時、図示しないパーキングブレーキがオンにされているとき、図示しないステアリングホイールの操舵角が所定値以上または操舵角変化が大きいときには適正な値が算出されないことがある。このため、このような場合には効き計測値の計測自体を行わないようにする。
また、realGx0は、運転者がブレーキペダルを踏み込む直前のrealGxである。ここでは、効き計測値ErrRatetempの精度を高めるために、Gセンサの実測値そのものではなく、その変化量を基準に計測するようにしたものである。さらに、nominalGxは、WC圧センサ44により検出されたホイールシリンダ圧から演算される減速度であり、車速が所定値を経由するときの所定時間の平均値を用いることができる。
なお、以上に説明した効き計測値ErrRatetempは、計測の精度を向上させるために所定の計測有効条件が満たされたときにその計測が実施される。すなわち、1)車速が所定値のときに所定時間の効き計測が可能であること、2)効き計測時のrealGxの変動が所定値以下であることが、計測有効条件とされ得る。条件1)は、ブレーキの効きの車速依存性が大きいために、ある速度を基準に変化量を計測するものである。条件2)は、過渡特性の影響を低減するために設定される。つまり、車速が所定値であっても、例えば運転者によるブレーキペダルの操作量が非常に速い場合には、誤差を多く含むことになる。そこで、このようにrealGxの変動が大きい場合には、効き計測を行わないか無視するようにするものである。
続いて、補正係数演算部63は、予め設定した効き計測値の上限値および下限値に基づいて、上述のようにして算出した効き計測値ErrRatetempのフィルタリング処理を行う(S42)。これは、ブレーキの効き状態としてあり得ない部分を除くものであり、その効き計測値ErrRatetempがその上限値を超えたり、下限値を下回る場合には、今回の計測値を無視する。これは、効き計測値ErrRatetempの大きなずれを無視して、制御の安定性を確保するものである。
続いて、補正係数演算部63は、計測の精度を向上させるために効き計測値の平均化処理を行い、効き計測値ErrRatetempの平均値ErrRateを算出する(S44)。例えば、過去から記憶されてきたErrRatetempの平均値を算出する。
そして、補正係数演算部63は、下記式(6)で表される効き補正係数Hoseiを演算する(S46)。
Hosei=1/(1+ErrRate) ・・・(6)
これは、ブレーキの効きが当初予定していた値に対して低下したときに、その低下分を上乗せしてブレーキの効きを補うための補正係数である。
これは、ブレーキの効きが当初予定していた値に対して低下したときに、その低下分を上乗せしてブレーキの効きを補うための補正係数である。
続いて、補正係数演算部63は、このようにして算出した効き補正係数Hoseiに対して予め設定した1トリップ変動量制限値に基づくフィルタリング処理を行う(S48)。ここで、1トリップとはイグニッションスイッチのオン−オフ間を意味するが、1トリップにおけるブレーキの効きの変化はある程度限られるものであることから、そのブレーキの効きが過大である場合には、何らかの異常が生じていると考えられる。そこで、前回のイグニッションスイッチのオフのときに記憶した効き補正係数Hoseiの平均値(後述する)と今回算出した効き補正係数Hoseiとの差、つまり効き補正係数Hoseiの変動量が、その1トリップ変動量制限値よりも大きい場合には、今回の効き補正係数Hoseiを無視する。
さらに、補正係数演算部63は、予め設定した効き補正係数の上限値および下限値に基づいて、上述のようにして算出した効き補正係数Hoseiのフィルタリング処理を行う(S50)。つまり、その効き補正係数Hoseiがその上限値を超えたり、下限値を下回る場合には、今回の計測値を無視する。これは、効き補正係数Hoseiの大きなずれを無視して、制御の安定性を確保するものである。
以上のようにして、無視されることなく算出された効き補正係数Hoseiが効き計測補正項KFFAとして設定される(S52)。
続いて、補正係数演算部63は、ブレーキパッドのフェード現象による外乱を解消するフェード補正項KFFBを演算する(S54)。このフェード補正項KFFBを組み込むことにより、例えばブレーキパッドの温度が短期的に上昇してブレーキの効きが低下したときに、そのブレーキの効きを補うことができる。
すなわち、補正係数演算部63は、ブレーキパッドの温度をその周辺に設置された図示しない温度センサ等の検出値に基づいて推定する。ECU200には、このブレーキパッドの推定温度とフェード補正項KFFBとの関係が予めマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、ブレーキパッドの推定温度に基づいてマップを参照し、フェード補正項KFFBを設定する。
続いて、補正係数演算部63は、車両の乗員人数や積載重量の変化など車両重量による慣性力に起因する外乱を解消する重量学習補正項KFFCを演算する(S56)。この重量学習補正項KFFCを組み込むことにより、例えば車両の下り坂の走行中にブレーキの効きが低下したときに、そのブレーキの効きを補うことができる。
すなわち、補正係数演算部63は、図示しないトルクセンサから取得した車両の加速トルクおよびGセンサ70から取得した加速度や、図示しない車高センサから取得した車高等から現在の車両重量を推定する。ECU200には、加速トルクおよび加速度と車両重量との関係、並びに車両重量と重量学習補正項KFFCとの関係が予めマップ化されて記憶されている。補正係数演算部63は、前者のマップを参照して車両重量を取得し、さらに後者のマップを参照して重量学習補正項KFFCを設定する。
そして、補正係数演算部63は、以上のようにして設定した効き計測補正項KFFA、フェード補正項KFFBおよび重量学習補正項KFFCを上記式(3)に代入することによりフィードフォワード項KFFを算出する(S58)。
次に、上述したS32で実行されるフィードバック項演算処理について説明する。ここでは、そのフィードバック項演算処理の流れを説明する前に、その処理の概要について簡単に説明しておく。図6は、フィードバック項演算処理の過程で行われる補正制限処理の概要を表すタイミングチャートである。同図において、横軸は時間tを表し、縦軸はフィードバック項KFBを表している。また、同図において、実線が補正制限処理をした場合のフィードバック項KFBの変化を表し、一点鎖線が仮に補正制限処理をしなかった場合のフィードバック項KFBの変化を表している。
本実施の形態では、変速動作により実減速度が急変したような場合に、フィードバック制御の遅れによって運転者に違和感を与えないように、目標減速度の補正を一時的に制限する処理を行う。すなわち、補正係数演算部63は、PID制御による下記式(7)で表されるフィードバック項KFBを演算するのであるが、変速動作が行われたときには、その演算を中止して後述する補正制限処理を実行する。
KFB=1+Pgain・err+Igain・∫err+d/dt(Dgain・err) ・・・(7)
Pgain:比例ゲイン
Igain:積分ゲイン
Dgain:微分ゲイン
なお、errはフィードフォワード項KFFを加味した目標減速度と実減速度との偏差であり、下記式(8)により演算されるものである。
Pgain:比例ゲイン
Igain:積分ゲイン
Dgain:微分ゲイン
なお、errはフィードフォワード項KFFを加味した目標減速度と実減速度との偏差であり、下記式(8)により演算されるものである。
err=GxRef・KFF−G ・・・(8)
G:実減速度
すなわち、図6に示すように、フィードバック制御が行われている過程で、時間t1において変速段の切り替えがあった場合、上記式(7)の演算を適用すると、図中一点鎖線で示されるようにフィードバック項KFBが急激に変化する。フィードバック制御には遅れがあるため、このフィードバック項KFBの急変が変速ショック後に影響して運転者に違和感を与える可能性がある。そこで、補正係数演算部63は、上記式(7)による演算は行わず、図中実線で示されるように、フィードバック項KFBとして前回の処理で算出した値(以下、「KFB前回値(CONST)」という)を設定する。ここで、KFB前回値(CONST)は、前回の処理ステップで演算されたフィードバック項KFBであるので、固定値である。
G:実減速度
すなわち、図6に示すように、フィードバック制御が行われている過程で、時間t1において変速段の切り替えがあった場合、上記式(7)の演算を適用すると、図中一点鎖線で示されるようにフィードバック項KFBが急激に変化する。フィードバック制御には遅れがあるため、このフィードバック項KFBの急変が変速ショック後に影響して運転者に違和感を与える可能性がある。そこで、補正係数演算部63は、上記式(7)による演算は行わず、図中実線で示されるように、フィードバック項KFBとして前回の処理で算出した値(以下、「KFB前回値(CONST)」という)を設定する。ここで、KFB前回値(CONST)は、前回の処理ステップで演算されたフィードバック項KFBであるので、固定値である。
この補正制限処理は、変速段の切り替え終了後までの所定期間Δt継続的に実行される。すなわち、補正係数演算部63は、当該補正制限処理を開始してから例えば500msの間、フィードバック項KFBをその変速前のKFB前回値(CONST)に保持する。
そして、補正係数演算部63は、この補正制限処理を終了してフィードバック項KFBを更新するための条件(以下「KFB更新条件」という)が成立すると、KFB更新処理を実行する。ここでは、上述のように補正制限処理が開始されてから500msを経過した時間t2においてKFB更新条件が満たされている。
このKFB更新処理は、変速段の切り替えが終了した後に、運転者によるブレーキペダルの踏み込み動作に基づく本来の目標減速度と実減速度Gとの偏差に基づく演算処理に徐々に近づけるための中間的な処理である。すなわち、変速動作の前後において、実減速度Gに応じて本来更新したいフィードバック項KFBの値(以下「KFB更新したい値」という)と上記KFB前回値(CONST)との差が大きい場合、そのKFB更新したい値を直ちに用いると、フィードバック項KFBが急変して車両にショックが発生する可能性がある。そこで、このようなショックによって運転者に違和感を与えないよう、フィードバック項KFBをKFB更新したい値に徐々に近づける徐変制御が行われる。なお、同図に一点鎖線にて示されるように、KFB更新したい値は、車両の状態により時々刻々変化し得る。
すなわち、補正係数演算部63は、下記式(9)に基づいて、KFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分を算出し、この差分を解消するように徐々にフィードバック項KFBを更新していく。
KFBOFF=KFB更新したい値−KFB前回値(CONST) ・・・(9)
KFB=更新中に前回演算されたKFB+dKFBOFF
KFBOFF<0のとき、dKFBOFF=−ΔKFB
KFBOFF≧0のとき、dKFBOFF=ΔKFB
dKFBOFF:徐変量
すなわち、補正係数演算部63は、KFB更新処理に移行したときに、まずGセンサ70から取得した実減速度Gに基づいてKFB更新したい値を演算し、そのKFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分KFBOFFを算出する。なお、同図では便宜上、差分KFBOFFが正である場合を例示している。
KFB=更新中に前回演算されたKFB+dKFBOFF
KFBOFF<0のとき、dKFBOFF=−ΔKFB
KFBOFF≧0のとき、dKFBOFF=ΔKFB
dKFBOFF:徐変量
すなわち、補正係数演算部63は、KFB更新処理に移行したときに、まずGセンサ70から取得した実減速度Gに基づいてKFB更新したい値を演算し、そのKFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分KFBOFFを算出する。なお、同図では便宜上、差分KFBOFFが正である場合を例示している。
そして、この差分KFBOFFが負である場合には、徐変量dKFBOFFとして予め設定した値−ΔKFBを毎秒加算する割合でフィードバック項KFBを徐々に更新していく。一方、差分KFBOFFが正である場合には、徐変量dKFBOFFとして予め設定した値ΔKFBを毎秒加算する割合でフィードバック項KFBを徐々に更新していく。ΔKFBとしては、例えば2/secに対応した値を設定して、フィードバック項KFBが2/secで徐々にKFB更新したい値に近づくようにすることができる。
これにより、処理が繰り返されるごとにKFBOFFが0に近づくように、つまりフィードバック項KFBがKFB更新したい値に近づくように変化していく。すなわち、処理が継続的に行われることにより、下記式(10)の関係が成立する。
KFB=KFB更新したい値−KFBOFF’ ・・・(10)
KFBOFF’=KFBOFF’前回値+dKFBOFF
dKFBOFF<0のとき、KFBOFF’=MIN(KFBOFF’,0)
dKFBOFF>0のとき、KFBOFF’=MAX(KFBOFF’,0)
ここで、KFBOFF’は、KFB更新処理の過程で逐次更新される差分であり、その初期値は差分KFBOFFとなる。
KFBOFF’=KFBOFF’前回値+dKFBOFF
dKFBOFF<0のとき、KFBOFF’=MIN(KFBOFF’,0)
dKFBOFF>0のとき、KFBOFF’=MAX(KFBOFF’,0)
ここで、KFBOFF’は、KFB更新処理の過程で逐次更新される差分であり、その初期値は差分KFBOFFとなる。
すなわち、差分KFBOFF’は、そのKFB更新処理における前回の値であるKFBOFF’前回値にdKFBOFFを加算することにより算出されるが、dKFBOFFが負のときには、今回演算された差分KFBOFF’と0の小さい方が差分KFBOFF’として設定される。このため、差分KFBOFF’が徐々に0に近づいていく。また、dKFBOFFが正のときには、今回演算された差分KFBOFF’と0の大きい方が差分KFBOFF’として設定される。このため、差分KFBOFF’が徐々に0に近づいていく。そして、差分KFBOFF’が0、つまりフィードバック項KFBがKFB更新したい値になると、この徐変制御は終了する。
図7は、フィードバック項演算処理を表すフローチャートである。
補正係数演算部63は、シフトポジションセンサにより検出されたシフトポジションに基づく変速情報を検知して、シフトダウンにより変速機の変速段が切り替えられたか否かを判断する(S60)。
このとき、変速段が切り替えられたと判断されると(S60のYES)、補正係数演算部63は、フィードバック項KFBの補正の制限を行う(S61)。すなわち、補正係数演算部63は、上記式(7)による演算は行わず、フィードバック項KFBとしてKFB前回値(CONST)を設定する。このとき、補正係数演算部63は、当該補正制限処理が実行されると同時にECU200内に設けられた計時用カウンタを起動して補正制限処理開始からの経過時間の計測を開始する。
一方、S60にて変速段が切り替えられていないと判断されると(S60のNO)、補正係数演算部63は、続いてS61の補正制限処理が現在も継続して実行中であるか否かを判断する(S62)。このとき、この補正制限処理が実行中であれば(S62のYES)、補正係数演算部63は、上述したKFB更新条件が成立したか否かを判断する(S63)。ここでは、上述のように補正制限処理を開始してから500msを経過することをKFB更新条件として設定しているため、補正係数演算部63は、補正制限処理開始からの経過時間を上記計時用カウンタから取得して、KFB更新条件の成立の有無を判断する。
このとき、KFB更新条件が成立していないと判断されると(S63のNO)、補正係数演算部63は、そのまま処理を終了する。したがって、上述した補正制限処理が継続され、フィードバック項KFBが変速前のKFB前回値(CONST)に保持される。
一方、S63にてKFB更新条件が成立したと判断されると(S63のYES)、補正係数演算部63は、上述したKFB更新処理を実行する(S64)。すなわち、補正係数演算部63は、まずGセンサ70から取得した実減速度Gに基づいてKFB更新したい値を演算し、そのKFB更新したい値とKFB前回値(CONST)との差分KFBOFFを算出する。
そして、この差分KFBOFFが負である場合には、徐変量dKFBOFFの割合でフィードバック項KFBを徐々に更新していく。そして、逐次更新される差分KFBOFF’が0、つまりフィードバック項KFBがKFB更新したい値になると、補正係数演算部63は、この徐変制御を終了する。
一方、S62にて上記補正制限処理が実行中でなければ(S62のNO)、補正係数演算部63は、上記式(7)および(8)に基づいて本来のフィードバック項KFBを演算し、これを設定する(S65)。
なお、アクセルペダルとブレーキペダルが両踏みされているようなときには、適正なフィードバック項KFBの演算が困難になる。そこで、補正係数演算部63は、アクセル開度センサやストロークセンサ46を介してこの両踏みの状態を検知したときには、フィードバック項KFBの演算を行わずに、前回処理時のフィードバック項KFBを用いるようにするとよい。
図8は、補正係数記憶処理を表すフローチャートである。この処理は既述のS24の処理であり、次回のS48の処理に用いる「前回の効き補正係数Hosei」を記憶しておくものである。補正係数演算部63は、イグニッションスイッチがオフにされたことが確認されると、次回の処理の便宜のために今回の効き補正係数HoseiをバックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶しておく。
すなわち、補正係数演算部63はまず、ブレーキパッドの温度をその周辺に設置された図示しない温度センサ等の検出値に基づいて推定する(S70)。
そして、補正係数演算部63は、そのブレーキパッドの温度が予め設定した記憶許可温度以下であるか否かを判断する(S72)。このとき、ブレーキパッドの温度がその記憶許可温度を超えている場合には(S72のNO)、ブレーキパッドまたはその周辺部品に以上が生じていると考えられるため、当該補正係数記憶処理を中断する。つまり、次回のS48の処理には現在記憶されている前回の効き補正係数Hoseiを用いるようにする。
一方、ブレーキパッドの温度がその記憶許可温度以下であれば(S72のYES)、補正係数演算部63は、続いて効き補正係数記憶値平均化処理を実行する(S74)。ここでは、今回の演算処理により算出された効き補正係数Hoseiの影響が過大にならないように、下記式(11)に基づいて前回記憶された効き補正係数Hoseiとの間でなまし処理を行う。
Hosei記憶値=β・Hosei+(1−β)・Hosei前回記憶値 ・・・(11)
Hosei記憶値:今回記憶する効き補正係数Hosei
Hosei前回記憶値:前回のイグニッションスイッチのオフ時に記憶された
効き補正係数Hosei
ここで、βは重み付け係数であり、例えば0.2(つまり20%)を設定することができる。
Hosei記憶値:今回記憶する効き補正係数Hosei
Hosei前回記憶値:前回のイグニッションスイッチのオフ時に記憶された
効き補正係数Hosei
ここで、βは重み付け係数であり、例えば0.2(つまり20%)を設定することができる。
補正係数演算部63は、上記式(11)で演算されたHosei記憶値を、バックアップRAM等の不揮発性メモリに記憶する(S76)。
以上に説明したように、本実施の形態においては、車両の変速段の切り替えが検知されたときに、Gセンサ70から取得した実減速度Gに基づく目標減速度GxRefの補正が一時的に停止され、フィードバック項KFBとして変速前のKFB前回値(CONST)が用いられる。そして、その変速ショックによる減速度の影響がなくなる所定期間後に通常のフィードバック制御に復帰するようにした。その結果、変速ショック時の減速度の急変が後のブレーキ制御に与える影響がなくなり、運転者に違和感を与えることを防止できる。その結果、変速時にも良好なブレーキフィーリングが実現される。
また、本実施の形態においては、通常のフィードバック制御への復帰の際に、復帰前後の減速度の急変を防止するために、フィードバック項KFBが実減速度Gに基づく本来更新したい値になるまで徐変されるようにした。その結果、通常のフィードバック制御への復帰時に意図しない車両のショックが発生することが防止される。
さらに、本実施の形態においては、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて演算された目標減速度GxRefに、フィードフォワード制御則およびフィードバック制御則に基づく補正がなされ、その補正後のGxRefhを実現する目標ホイールシリンダ圧Prefが演算される。特に、フィードフォワード項KFFにブレーキパッド等の状態に基づいて学習した効き計測補正項KFFAが用いられるため、フィードバック制御におけるブレーキ装置の構成要素の経年劣化等の影響が少なくなる。したがって、制御量のハンチングを防止または抑制することができる。また、フィードフォワード項KFFを加味しながらフィードバック制御が継続的に実行されるため、制御の追従性を保持することもできる。その結果、ブレーキ装置の構成要素の経年劣化等に起因する外乱があっても、制御系の安定性を保持して良好なブレーキフィーリングを保持することができる。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
例えば、上記実施の形態では、シフトポジションに基づく変速情報から変速段の切り替えを判断した例を示したが、補正係数演算部63は、このように変速段の切り替えを直接的に検知するのではなく、車両の状態または制御量から推定するようにしてもよい。
例えば、シフトダウン時に変速段が切り替えられると、エンジンブレーキがかかってエンジントルクが急激に変動すると考えられる。また、ハイブリッド車両の場合には、シフトダウン時にエンジンブレーキに加えてさらに回生ブレーキが加わると、エンジントルクがさらに大きく変動すると考えられる。そこで、補正係数演算部63は、図示しないトルクセンサ等のトルク検出部によりエンジントルクの急変を検知し、それにより変速段の切り替えを推定するようにしてもよい。
また、例えば車両がトルクコンバータを搭載している場合には、補正係数演算部63は、そのトルクコンバータの入力軸の回転数と出力軸の回転数との比が急変したことをもって、変速段の切り替えを推定するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、フィードバック項KFBの演算に用いる上記式(8)にて、Gセンサ70から取得した実減速度Gを用いた例を示したが、実減速度Gからブレーキの油圧制御に無関係な減速要因の減速度を差し引いた実減速度加工値を用いるようにしてもよい。例えば上記式(5)に示したrealGxを用いてもよい。
また、上記実施の形態では、車両の変速段の切り替えが検知されたときに、フィードバック項KFBとして前回の処理タイミングで演算したフィードバック項KFBであるKFB前回値(CONST)を用いた例を示したが、それ以前に演算したフィードバック項KFBを固定値として設定してもよい。
さらに、上記実施の形態では、ブレーキペダル12の踏み込み量に応じて変化するペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCに基づいて目標減速度GxRefを演算し、その目標減速度GxRefにフィードフォワード制御則およびフィードバック制御則に基づく補正を行った例を示したが、その目標減速度GxRefを、ペダルストロークSTおよびマスタシリンダ圧PMCの一方に基づいて演算するようにしてもよい。あるいは、ストロークシミュレータ24に付与されるストロークシミュレータ圧を検出する圧力センサなどを設け、そのストロークシミュレータ圧に基づいて目標減速度GxRefを演算するようにしてもよい。
10 ブレーキ制御装置、 12 ブレーキペダル、14 マスタシリンダ、20 ホイールシリンダ、24 ストロークシミュレータ、40 増圧弁、42 減圧弁、44 WC圧センサ、48 マスタシリンダ圧センサ、61 目標減速度演算部、62 目標減速度補正部、63 補正係数演算部、64 目標減速度補正演算部、65 目標油圧演算部、66 油圧制御部、70 Gセンサ、200 ECU
Claims (4)
- ホイールシリンダに供給する油圧を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置において、
ブレーキ操作部材の操作に基づく車両の目標減速度を演算する目標減速度演算手段と、
前記目標減速度演算手段により演算された目標減速度と実減速度とに基づいてフィードバック項を演算して前記目標減速度を補正するとともに、前記車両の変速段の切り替えを検知または推定したときには、前記目標減速度の補正を一時的に制限する目標減速度補正手段と、
前記目標減速度補正手段により補正された目標減速度に基づいて、前記ホイールシリンダへ供給すべき目標油圧を演算する目標油圧演算手段と、
前記目標油圧演算手段により演算された目標油圧に基づいて、前記ホイールシリンダに供給する油圧を制御する油圧制御手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記目標減速度補正手段は、前記車両の変速段の切り替えを検知または推定したときには、その検知または推定前に演算されたフィードバック項を用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記変速段の切り替えが終了した所定期間後に、前記フィードバック項を前記目標減速度と実減速度とに基づくように更新することを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御装置。
- 前記目標減速度補正手段は、前記フィードバック項の更新に際して、前記フィードバック項を更新すべき値に徐々に近づける徐変制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP2043220A2 (en) | 2007-09-28 | 2009-04-01 | Hitachi Ltd. | Multi-series battery control system |
CN112236342A (zh) * | 2018-06-18 | 2021-01-15 | 日立汽车系统株式会社 | 刹车系统 |
-
2006
- 2006-03-20 JP JP2006077318A patent/JP2007253655A/ja active Pending
Cited By (3)
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