しかしながら、特許文献1に提案されたブレーキ制御装置では、ラピッド起動時においては、マスタシリンダとホイールシリンダとがマスタカット弁で遮断され、かつ、シミュレータカット弁が閉弁状態に維持されるため、マスタシリンダから送出できる作動液量が非常に少量となり、ブレーキペダル直下の液圧剛性が増大する。これにより、ブレーキペダルへの踏力に対してペダルストロークが小さくなり、ドライバーに対して違和感を与えてしまう。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ラピッド起動時におけるブレーキ操作フィーリングを向上させることを目的とする。
上記課題を解決する本発明の特徴は、複数の車輪のそれぞれに設けられ作動液の液圧を受けて車輪に制動力を与える複数のホイールシリンダ(82)と、ブレーキペダルに入力された操作力により液圧を発生させるマスタシリンダ(20)と、前記ブレーキペダルの操作とは無関係に液圧を発生させる動力液圧源(30)と、前記マスタシリンダに接続され、前記マスタシリンダから送出され作動液の流入を許容しブレーキ操作量に応じた反力を発生させるストロークシミュレータ(71)と、前記ブレーキペダル操作を検出するペダル操作検出手段(101,102,52R,52L)と、前記複数のホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断した状態で、前記ストロークシミュレータを作動させつつ目標液圧が前記動力液圧源から前記ホイールシリンダに付与されるように前記ホイールシリンダの液圧制御を行う電子制御装置(40,100)と、ブレーキペダル操作を契機として前記電子制御装置を起動させるラピッド起動手段(100c,S11)とを備え、前記電子制御装置が起動していない状態においては、前記ストロークシミュレータの機能が停止された状態で前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部とが連通する状態に維持される車両のブレーキ制御装置において、
前記電子制御装置は、前記ラピッド起動手段によって起動した場合には、前記ストロークシミュレータの機能を停止させた状態で、前記ホイールシリンダと前記マスタシリンダとの連通を遮断して前記ホイールシリンダの液圧制御を開始するラピッド起動時制御手段(S12)と、前記ラピッド起動時制御手段の作動開始後、前記ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値が予め設定された基準範囲を超えたときに、前記ホイールシリンダと前記マスタシリンダとを連通させる、あるいは、前記ストロークシミュレータを作動可能状態にするペダル踏み込み剛性制御手段(S13、S14,S24,S34,S44,S141,S142,S241,S242)とを備えたことにある。
本発明においては、電子制御装置が起動すると、複数のホイールシリンダをマスタシリンダから遮断した状態で、ストロークシミュレータを作動させつつ目標液圧が動力液圧源からホイールシリンダに付与されるようにホイールシリンダの液圧制御を行う。例えば、電子制御装置は、ホイールシリンダ圧を調整する液圧制御弁、ホイールシリンダの液圧を検出する液圧センサ、弁駆動回路、動力液圧源を駆動制御する駆動回路、液圧センサにより検出されるホイールシリンダ圧と目標液圧とに基づいて液圧制御弁を制御するマイコン等を備えるとよい。電子制御装置は、通常、イグニッションスイッチのオン作動により起動するが、本発明においては、ラピッド起動手段を備えており、ブレーキペダルが操作された場合においても起動するように構成されている。また、電子制御装置が起動していない状態においては、ストロークシミュレータの機能が停止された状態でマスタシリンダと複数のホイールシリンダの少なくとも一部とが連通する状態に維持される。
電子制御装置は、ラピッド起動時制御手段とペダル踏み込み剛性制御手段とを備えている。ラピッド起動時制御手段は、ラピッド起動手段によって電子制御装置が起動した場合(ラピッド起動と呼ぶ)、ストロークシミュレータの機能を停止させた状態で、ホイールシリンダとマスタシリンダとの連通を遮断してホイールシリンダの液圧制御を開始する。ラピッド起動した場合、マスタシリンダから送出できる作動液量が非常に少量となり、ブレーキペダル直下の液圧剛性が増大する。ペダル操作量が少ないときには問題ないが、ペダル操作量が多くなると、ブレーキペダルへの踏力に対してペダルストロークが小さくなり、ドライバーに対して違和感を与えてしまう。
そこで、本発明においては、ペダル踏み込み剛性制御手段が、ラピッド起動時制御手段の作動開始後、ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値が予め設定された基準範囲を超えたときに、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる、あるいは、ストロークシミュレータを作動可能状態にする。これにより、マスタシリンダからホイールシリンダ、あるいは、マスタシリンダからストロークシミュレータに作動液が流れる。従って、ブレーキペダルへの踏力に対して適度なペダルストロークが得られ、ブレーキ操作フィーリングを向上させることができる。
本発明の他の特徴は、前記ホイールシリンダと前記マスタシリンダとは常開弁(46,47)を介して接続されており、前記ストロークシミュレータと前記マスタシリンダとは常閉弁(72)を介して接続されており、前記ペダル踏み込み剛性制御手段は、前記常開弁の通電制御により前記常開弁を開度を絞った状態に開弁して前記ホイールシリンダと前記マスタシリンダとを連通させる(S24,S242)、あるいは、前記常閉弁の通電制御により前記常閉弁を開度を絞った状態に開弁して前記ストロークシミュレータを作動可能状態にする(S14,S34,S44,S142)ことにある。
本発明においては、ホイールシリンダとマスタシリンダとは常開弁を介して接続されているため、電子制御装置が起動していない状態においては、ホイールシリンダとマスタシリンダとが連通している。また、ストロークシミュレータとマスタシリンダとは常閉弁を介して接続されているため、電子制御装置が起動していない状態においては、ストロークシミュレータとマスタシリンダとは連通していないため、ストロークシミュレータの機能が停止された状態となっている。ラピッド起動時においては、ラピッド起動時制御手段が、常開弁を閉弁してホイールシリンダとマスタシリンダとの連通を遮断してホイールシリンダの液圧制御を開始する。そして、ペダル踏み込み剛性制御手段は、ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値が予め設定された基準範囲を超えたときに、常開弁の通電制御により常開弁を開度を絞った状態に開弁してホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる、あるいは、常閉弁の通電制御により常閉弁を開度を絞った状態に開弁してストロークシミュレータを作動可能状態にする。従って、マスタシリンダから送出される作動液の量を適切にすることができ、一層、ブレーキ操作フィーリングを向上させることができる。
本発明の他の特徴は、前記ペダル踏み込み剛性制御手段(S34,S44)は、前記常閉弁の通電制御により前記常閉弁の開度を徐々に大きくしていくものであり、前記ブレーキペダルの踏み込み量あるいは踏み込み力が大きいほど前記開度を増加させる速度を大きくすることにある。
本発明においては、ペダル踏み込み剛性制御手段がストロークシミュレータを作動可能状態にする際、マスタシリンダとストロークシミュレータとの間に設けられた常閉弁の開度を徐々に大きくしていく。これにより、ストロークシミュレータを徐々に機能させることができ、ブレーキ操作フィーリングの急変を防止することができる。また、ペダル踏み込み剛性制御手段は、ブレーキペダルの操作量(踏み込み量あるいは踏み込み力)が大きいほど、この開度を増加させる速度を大きくする。これにより、ブレーキペダルの操作量が大きいほど、ストロークシミュレータの機能が早く得られるようになる。この結果、ドライバーのペダル踏み込み力に応じた適切なペダル反力を創出することができ、ペダル操作フィーリングを一層向上させることができる。
本発明の他の特徴は、前記ペダル踏み込み剛性制御手段は、予め設定された前記ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係を表す基準データを記憶する記憶手段(100a)と、実際の前記ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力とを表す実データを取得する実データ取得手段(101,52)とを備え、前記実データの表す前記ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係と、前記基準データの表す前記ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係との相違度合(e)が少なくなるように、前記常開弁あるいは前記常閉弁の開度を制御する(S141,S142,S241,S242)ことにある。
この場合、前記相違度合は、実際のブレーキペダルの踏み込み量に対する前記基準データが表す踏み込み力(Pmref)と実際の踏み込み力(Pm)との偏差(e=Pm−Pmref)で表されるとよい。
本発明においては、記憶手段が、予め設定されたブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係を表す基準データを記憶している。この基準データは、例えば、通常時(ストロークシミュレータが機能している液圧制御時)における関係を設定したものであるとよい。また、実データ取得手段が、実際のブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力とを表す実データを取得する。そして、ペダル踏み込み剛性制御手段は、実データの表すブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係と、基準データの表すブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係との相違度合が少なくなるように、常開弁あるいは常閉弁の開度を制御する。例えば、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する踏み込み量検出手段と、ブレーキペダルの踏み込み力を検出する踏み込み力検出手段とを備え、これらの検出手段によりラピッド起動後の液圧制御中におけるブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力とを検出する。そして、検出したブレーキペダルの踏み込み量に対する基準データが表す踏み込み力と、検出した踏み込み力との偏差を計算し、この偏差を相違度合とする。あるいは、検出したブレーキペダルの踏み込み力に対する基準データが表す踏み込み量と、検出した踏み込み量との偏差を計算し、この偏差を相違度合としてもよい。
相違度合が大きいほど、ブレーキ操作フィーリングが通常時と比べて相違してくる。そこで、ペダル踏み込み剛性制御手段は、相違度合が少なくなるように常開弁あるいは常閉弁の開度を制御する。これにより、ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係が通常時とあまり変わらないようになる。従って、良好なブレーキ操作フィーリングが得られる。
本発明の他の特徴は、前記ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値は、前記ブレーキペダルの踏み込み量であることにある。
本発明においては、ブレーキペダルの踏み込み量が基準範囲を超えたとき、つまり、踏み込み量が閾値を超えたとき、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる、あるいは、ストロークシミュレータを作動可能状態にする。従って、適切なタイミングでペダル踏み込み剛性制御(ブレーキペダル直下の液圧剛性制御)を開始することができる。
本発明の他の特徴は、前記ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値は、前記ブレーキペダルの踏み込み力であることにある。
本発明においては、ブレーキペダルの踏み込み力が基準範囲を超えたとき、つまり、踏み込み力が閾値を超えたとき、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる、あるいは、ストロークシミュレータを作動可能状態にする。従って、適切なタイミングでペダル踏み込み剛性制御を開始することができる。
本発明の他の特徴は、前記ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値は、予め設定された前記ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係と、実際の前記ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係との相違度合を表す値であることにある。
本発明においては、予め設定されたブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係と、実際のブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力との関係との相違度合を表す値を取得し、この相違度合を、ブレーキペダルの操作に連動して変化する操作関連値として使用する。この相違度合を表す値が基準範囲を超えたとき、つまり、相違度合を表す値が閾値を超えたとき、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる、あるいは、ストロークシミュレータを作動可能状態にする。従って、適切なタイミングでペダル踏み込み剛性制御(ブレーキペダル直下の液圧剛性制御)を開始することができる。
本発明の他の特徴は、複数の車輪のそれぞれに設けられ作動液の液圧を受けて車輪に制動力を与える複数のホイールシリンダ(82)と、ブレーキペダルに入力された操作力により液圧を発生させるマスタシリンダ(20)と、前記ブレーキペダルの操作とは無関係に液圧を発生させる動力液圧源(30)と、前記マスタシリンダに接続され、前記マスタシリンダから送出され作動液の流入を許容しブレーキ操作量に応じた反力を発生させるストロークシミュレータ(71)と、前記ブレーキペダル操作を検出するペダル操作検出手段(101,102,52R,52L)と、前記複数のホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断した状態で、前記ストロークシミュレータを作動させつつ目標液圧が前記動力液圧源から前記ホイールシリンダに付与されるように前記ホイールシリンダの液圧制御を行う電子制御装置(40,100)と、ブレーキペダル操作を契機として前記電子制御装置を起動させるラピッド起動手段(100c,S11)とを備え、前記電子制御装置が起動していない状態においては、前記ストロークシミュレータの機能が停止された状態で前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部とが連通する状態に維持される車両のブレーキ制御装置において、
前記電子制御装置は、前記ラピッド起動手段によって起動した場合には、前記ストロークシミュレータの機能を停止させた状態で、前記ホイールシリンダと前記マスタシリンダとの連通を遮断して前記ホイールシリンダの液圧制御を開始するラピッド起動時制御手段(S12)と、前記ラピッド起動時制御手段の作動開始後、前記ホイールシリンダと前記マスタシリンダとを開度を絞った状態で連通させる、あるいは、前記ストロークシミュレータと前記マスタシリンダとを開度を絞った状態で連通させるペダル踏み込み剛性制御手段(S14,S24,S34,S44,S141,S142,S241,S242)とを備えたことにある。
本発明においては、ラピッド起動時制御手段が、ラピッド起動した場合に、ストロークシミュレータの機能を停止させた状態で、ホイールシリンダとマスタシリンダとの連通を遮断してホイールシリンダの液圧制御を開始する。そして、ペダル踏み込み剛性制御手段が、ラピッド起動時制御手段の作動開始後、ホイールシリンダとマスタシリンダとを開度を絞った状態で連通させる、あるいは、ストロークシミュレータとマスタシリンダとを開度を絞った状態で連通させる。これにより、マスタシリンダからホイールシリンダ、あるいは、マスタシリンダからストロークシミュレータに適量の作動液が流れる。従って、ブレーキペダルへの踏力に対して適度なペダルストロークが得られ、ブレーキ操作フィーリングを向上させることができる。
尚、「ホイールシリンダとマスタシリンダとを開度を絞った状態で連通させる」とは、電子制御装置が起動していないときのホイールシリンダとマスタシリンダとの連通開度に比べて開度を絞った状態でホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させることを意味する。また、「ストロークシミュレータとマスタシリンダとを開度を絞った状態で連通させる」とは、通常液圧制御(ストロークシミュレータを機能させながら行う液圧制御)におけるストロークシミュレータとマスタシリンダとの連通開度に比べて開度を絞った状態でストロークシミュレータとマスタシリンダとを連通させることを意味する。
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
以下、本発明の一実施形態に係る車両ブレーキ制御装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両のブレーキ制御装置の概略システム構成図である。
本実施形態のブレーキ制御装置は、ブレーキペダル10と、マスタシリンダ20と、動力液圧発生装置30と、ブレーキアクチュエータ40と、リザーバ60と、ストロークシミュレータ装置70と、各車輪にそれぞれ設けられるディスクブレーキユニット80FR,80FL,80RR,80RLと、ブレーキ制御を司る電子制御装置であるブレーキECU100とを備えている。
ディスクブレーキユニット80FR,80FL,80RR,80RLは、ブレーキディスク81FR,81FL,81RR,81RLとブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLとを備えている。尚、車輪毎に設けられる構成については、その符号の末尾に、右前輪についてはFR、左前輪についてはFL、右後輪についてはRR、左後輪についてはRLを付しているが、以下、車輪位置を特定しない場合には、末尾の符号を省略する。また、必要に応じて、前輪側に設けられるホイールシリンダ82FR,82FLをフロントホイールシリンダ82Fと呼び、後輪側に設けられるホイールシリンダ82RR,82RLをリアホイールシリンダ82Rと呼ぶ。
ホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLは、ブレーキアクチュエータ40に接続され、ブレーキアクチュエータ40から供給される作動液(ブレーキフルード)の液圧により、車輪と共に回転するブレーキディスク81FR,81FL,81RR,81RLにブレーキパッドを押し付けて車輪に制動力を付与する。
マスタシリンダ20は、2つの加圧室21,22を備えている。加圧室21,22は、マスタ通路23,24により前輪側のホイールシリンダ82FR,82FLに接続されており、ブレーキペダル10の踏み込みにより加圧ピストンが前進して作動液を加圧し、その加圧された液圧(マスタシリンダ圧)をホイールシリンダ82FR,82FLに伝達する。マスタシリンダ20の加圧室21,22にはリザーバ60が接続されている。リザーバ60は、作動液が大気圧で蓄えられている。マスタシリンダ20は、加圧ピストンの後退時にはリザーバ60から加圧室21,22への作動液の流れを許容し、加圧ピストンの前進時には作動液の逆向きの流れを阻止するように構成されている。
マスタシリンダ20の一方の加圧室22には、ストロークシミュレータ装置70が接続されている。ストロークシミュレータ装置70は、ストロークシミュレータ71とシミュレータカット弁72とから構成される。シミュレータカット弁72は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ開弁状態となる常閉式電磁弁である。シミュレータカット弁72が閉弁状態にあるときには、マスタ通路24とストロークシミュレータ71との間の作動液の流通が遮断され、シミュレータカット弁72が開弁状態にあるときには、マスタ通路24とストロークシミュレータ71との間の作動液の流通が双方向に許容される。
ストロークシミュレータ71は、複数のピストンやスプリングを備えており、シミュレータカット弁72が開弁状態にあるときに、ブレーキ操作量に応じた量の作動液を内部に導入してブレーキペダル10のストローク操作を可能にするとともに、ペダル操作量に応じた反力を発生させて、ドライバーのブレーキ操作フィーリングを良好にするものである。
動力液圧発生装置30は、動力液圧源であって、吸入通路61を介してリザーバ60から作動液を汲み上げるポンプ31と、ポンプ31を駆動するモータ32と、アキュムレータ33とを備えている。アキュムレータ33は、ポンプ31により加圧された作動液の圧力エネルギーを窒素等の封入ガスの圧力エネルギーに変換して蓄える。動力液圧発生装置30は、ブレーキアクチュエータ40に接続され、加圧された作動液をブレーキアクチュエータ40に供給する。
ブレーキアクチュエータ40は、動力液圧発生装置30から加圧された作動液が供給されるアキュムレータ通路41と、リザーバ60に接続されるリターン通路42と、各ホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLに接続される4つの個別通路43FR,43FL,43RR,43RLとを備えている。また、ブレーキアクチュエータ40は、増圧用リニア制御弁44FR,44FL,44RR,44RLを備えており、この増圧用リニア制御弁44FR,44FL,44RR,44RLを介して個別通路43FR,43FL,43RR,43RLをアキュムレータ通路41に接続している。また、ブレーキアクチュエータ40は、減圧用リニア制御弁45FR,45FL,45RR,45RLを備えており、この減圧用リニア制御弁45FR,45FL,45RR,45RLを介して個別通路43FR,43FL,43RR,43RLをリターン通路42に接続している。以下、4つの個別通路43FR,43FL,43RR,43RL、4つの増圧用リニア制御弁44FR,44FL,44RR,44RL、4つの減圧用リニア制御弁45FR,45FL,45RR,45RLに関して、前後左右輪の任意のものを特定する必要が無い場合には、単に、個別通路43、増圧用リニア制御弁44、減圧用リニア制御弁45と総称する。
増圧用リニア制御弁44および減圧用リニア制御弁45は、その上流側と下流側との液圧差とソレノイドへの通電量との間に予め定められた一定の関係を有し、通電量の増減に応じて開弁圧が変化する電磁制御弁である。このため、増圧用リニア制御弁44および減圧用リニア制御弁45は、通電量の制御により、ホイールシリンダ82の液圧であるホイールシリンダ圧を連続的に変化させることができる。本実施形態においては、4つの増圧用リニア制御弁44FR,44FL,44RR,44RLおよび前輪側の減圧用リニア制御弁45FR,45FLについては、常閉式電磁制御弁が用いられ、後輪側の減圧用リニア制御弁45RR,45RLについては、常開式電磁制御弁が用いられる。従って、4つの増圧用リニア制御弁44FR,44FL,44RR,44RLは、ソレノイドに通電されていない状態では閉弁し、ソレノイドに通電されている状態では、その通電量に応じた開度で開弁して動力液圧発生装置30からホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLへの作動液の流入を許容してホイールシリンダ圧を増加させる。また、前輪側の減圧用リニア制御弁45FR,45FLは、ソレノイドに通電されていない状態では閉弁し、ソレノイドに通電されている状態では、その通電量に応じた開度で開弁してホイールシリンダ82FR,82FLからリザーバ60への作動液の流出を許容してホイールシリンダ圧を減少させる。また、後輪側の減圧用リニア制御弁45RR,45RLは、ソレノイドに通電されていない状態では開弁してホイールシリンダ82RR,82RLからリザーバ60への作動液の流出を許容してホイールシリンダ圧を減少させ、ソレノイドに通電されると閉弁してホイールシリンダ82RR,82RLからリザーバ60への作動液の流出を阻止する。この場合、減圧用リニア制御弁45RR,45RLは、ソレノイドの通電量が少ない場合には、閉弁位置にまで弁体が移動せずに通電量に応じた開度に調整される。
従って、増圧用リニア制御弁44と減圧用リニア制御弁45との通電制御を行うことにより、動力液圧発生装置30からホイールシリンダ82への作動液の流入を許容する状態と、ホイールシリンダ82からリザーバ60への作動液の流出を許容する状態と、動力液圧発生装置30からホイールシリンダ82への作動液の流入もホイールシリンダ82からリザーバ60への作動液の流出も許容しない状態とに切り替え可能となっている。これにより、各ホイールシリンダ圧を独立して目標液圧に制御することができる。
これにより、増圧用リニア制御弁44FRと減圧用リニア制御弁45FRとにより、ホイールシリンダ82FRの液圧を制御する液圧制御弁50FRが構成され、増圧用リニア制御弁44FLと減圧用リニア制御弁45FLとにより、ホイールシリンダ82FLの液圧を制御する液圧制御弁50FLが構成され、増圧用リニア制御弁44RRと減圧用リニア制御弁45RRとにより、ホイールシリンダ82RRの液圧を制御する液圧制御弁50RRが構成され、増圧用リニア制御弁44RLと減圧用リニア制御弁45RLとにより、ホイールシリンダ82RLの液圧を制御する液圧制御弁50RLが構成される。以下、液圧制御弁50FR,50FL,50RR,50RLを区別しない場合には、単に、液圧制御弁50と呼ぶ。
また、ブレーキアクチュエータ40は、2つのマスタカット弁46、47を備えており、一方のマスタカット弁46を介してマスタ通路23と個別通路43FRとを接続し、他方のマスタカット弁47を介してマスタ通路24と個別通路43FLとを接続する。2つのマスタカット弁46,47は、ともにソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ閉弁状態となる常開式電磁弁である。マスタカット弁46が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ20の加圧室21とホイールシリンダ82FRとの間の作動液の流通が遮断され、マスタカット弁46が開弁状態にあるときには、マスタシリンダ20の加圧室21とホイールシリンダ82FRとの間の作動液の流通が双方向に許容される。同様に、マスタカット弁47が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ20の加圧室22とホイールシリンダ82FLとの間の作動液の流通が遮断され、マスタカット弁47が開弁状態にあるときには、マスタシリンダ20の加圧室22とホイールシリンダ82FLとの間の作動液の流通が双方向に許容される。
また、ブレーキアクチュエータ40は、アキュムレータ通路41とリターン通路42とを接続するリリーフバルブ48を備えており、アキュムレータ通路41における作動液の液圧が異常に高まった場合には、開弁して作動液をリザーバ60に戻すように構成されている。
また、ブレーキアクチュエータ40は、アキュムレータ圧センサ51と、2つのマスタシリンダ圧センサ52R,52Lと、4つのホイールシリンダ圧センサ53FR,53FL,53RR,53RLとを備えている。アキュムレータ圧センサ51は、動力液圧発生装置30と各増圧用リニア制御弁44との間の通路であるアキュムレータ通路41に設けられ、動力液圧発生装置30の出力する液圧であるアキュムレータ圧Paを検出する。マスタシリンダ圧センサ52R,52Lは、マスタシリンダ20の加圧室21,22とマスタカット弁46,47との間のマスタ通路23,24に設けられ、加圧室21,22にて加圧された作動液の液圧を検出する。このマスタシリンダ圧センサ52R,52Lにより検出される液圧をマスタシリンダ圧Pmと呼ぶ。ホイールシリンダ圧センサ53FR,53FL,53RR,53RLは、各個別通路43FR,43FL,43RR,43RLに設けられ、ホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLの液圧を検出する。このホイールシリンダ圧センサ53FR,53FL,53RR,53RLにより検出される液圧をホイールシリンダ圧Pwと呼ぶ。以下、ホイールシリンダ圧センサ53FR,53FL,53RR,53RLについては、前後左右輪の任意のものを特定する必要が無い場合には、単に、ホイールシリンダ圧センサ53と総称する。
動力液圧発生装置30、ブレーキアクチュエータ40、ストロークシミュレータ装置70は、ブレーキECU100により駆動制御される。ブレーキECU100は、CPU,RAM,ROM,入出力インターフェース等を備えたマイコン100aと、ポンプ駆動回路、電磁弁駆動回路、センサ駆動回路などを備えた駆動回路100bと、マイコン100a,駆動回路100bに車載バッテリ(図示略)から電力を供給する電源回路100cを含んで構成されている。ブレーキアクチュエータ40に設けられた4つの増圧用リニア制御弁44、4つの減圧用リニア制御弁45、2つのマスタカット弁46,47、および、ストロークシミュレータ装置70に設けられたシミュレータカット弁72は、全てブレーキECU100に接続され、駆動回路100bから出力されるソレノイド駆動信号により開閉状態および開度が制御される。また、動力液圧発生装置30に設けられたモータ32についても、ブレーキECU100に接続され、駆動回路100bから出力されるモータ駆動信号により駆動制御される。
また、ブレーキECU100は、アキュムレータ圧センサ51、マスタシリンダ圧センサ52R,52L、ホイールシリンダ圧センサ53FR,53FL,53RR,53RLを接続し、アキュムレータ圧Pa、マスタシリンダ圧Pm、ホイールシリンダ圧Pwを表す信号を入力する。
また、ブレーキECU100には、ペダルストロークセンサ101と、ペダルスイッチ102と、カーテシスイッチ103と、イグニッションスイッチ104が接続される。ペダルストロークセンサ101は、ペダル操作検出装置の一種であり、ブレーキペダル10の踏み込み量であるペダルストロークを検出し、検出したペダルストロークSpを表す信号をブレーキECU100のマイコン100aに出力する。ペダルスイッチ102は、ペダル操作検出装置の一種であり、ブレーキペダル10が設定位置にまで踏み込まれたときにオンして図示しないストップランプを点灯させるためのスイッチで、スイッチ状態Sw1を表す信号(ペダルスイッチ信号Sw1と呼ぶ)をブレーキECU100のマイコン100aに出力する。このペダルスイッチ信号Sw1は、後述するラピッド起動のトリガとしても利用される。
ブレーキECU100は、ブレーキペダル10の操作量を検出する手段として、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する手段と、ブレーキペダルの踏み込み力を検出する手段との両方を備えている。ブレーキペダルの踏み込み量は、ペダルストロークセンサ101の出力するペダルストロークSpにより検出され、ブレーキペダルの踏み込み力は、マスタシリンダ圧センサ52R,52Lの出力するマスタシリンダ圧Pmにより検出される。ブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み力とは、どちらもブレーキペダルの操作量を表す。
尚、マスタシリンダ圧センサ52R,52Lは2つ設けられているため、ブレーキECU100は、2つのマスタシリンダ圧Pmを取得するが、例えば、何れか一方(例えば、圧力の大きい方)のマスタシリンダ圧Pmに基づいて踏み込み力を検出してもよいし、例えば、2つのマスタシリンダ圧Pmの平均値に基づいて踏み込み力を検出してもよい。以下、ブレーキペダルの踏み込み力を検出するために用いるマスタシリンダ圧センサ52R,52Lをマスタシリンダ圧センサ52と呼び、そのマスタシリンダ圧をマスタシリンダ圧Pmと呼ぶ。また、本実施形態においては、ブレーキペダル10の踏み込み力を検出する手段として、マスタシリンダ圧センサ52を用いるが、ドライバーがブレーキペダル10を踏み込む力を直接検出するペダル踏力センサ(図示略)を設け、このペダル踏力センサにより検出される踏力に基づいて、ブレーキペダルの踏み込み力を検出するようにしてもよい。
カーテシスイッチ103は、車両のドアの開閉状態に応じた信号を出力するスイッチであり、スイッチ状態Sw2を表す信号(ドアスイッチ信号Sw2と呼ぶ)をブレーキECU100に出力する。イグニッションスイッチ104は、車両を起動させるためのイグニッション信号IGを車両内の各種のECUに出力する。このイグニッション信号IGは、ブレーキECU100にも入力される。
ブレーキECU100は、電源回路100cからマイコン100aおよび駆動回路100bに電力供給されると起動し、それに伴って、ブレーキアクチュエータ40、動力液圧発生装置30、ストロークシミュレータ装置70が作動可能状態となる。つまり、電源回路100cから電力供給されていない状態においては、ブレーキ制御システムが停止した状態となっており、電源回路100cから電力供給されると、マイコン100aが起動して駆動回路100bの制御を開始し、ブレーキアクチュエータ40、動力液圧発生装置30、ストロークシミュレータ装置70を制御下におく。
この電源回路100cは、イグニッションスイッチ104、カーテシスイッチ103、ペダルスイッチ102に接続されており、それらのスイッチの何れかがオフ状態からオンすると、バッテリ電力をマイコン100aおよび駆動回路100bに供給する。これにより、ブレーキECU100が起動する。イグニッションスイッチ104のオン作動、あるいは、車両のドアの開成によるカーテシスイッチ103のオン作動によりブレーキECU100が起動することを通常起動と呼び、ブレーキペダル10の踏み込みによりペダルスイッチ102がオン作動してブレーキECU100が起動することをラピッド起動と呼ぶ。電源回路100cは、何れの起動であっても、イグニッションスイッチ104がオフに切り替えられるまで(あるいは、オフに切り替えられて所定時間経過するまで)は、バッテリ電力をマイコン100aおよび駆動回路100bに供給し続ける。
ブレーキECU100のマイコン100aは、電力供給されて起動したときのイグニッション信号IG、ドアスイッチ信号Sw2、ペダルスイッチ信号Sw1に基づいて、通常起動であるかラピッド起動であるかを判定し、通常起動であれば、通常起動時制動制御を実行し、ラピッド起動であれば、ラピッド起動時制動制御を実行する。マイコン100aは、ラピッド起動時においては、ブレーキ操作が開放された時点でラピッド起動時制動制御を終了して、通常起動時制動制御に切り替える。
ブレーキECU100が起動する前においては、マスタカット弁46,47は開弁状態にあり、シミュレータカット弁72は閉弁状態にある。ブレーキECU100が起動すると、マイコン100aは、通常起動時においては、マスタカット弁46,47を通電により閉弁してマスタ通路を遮断し、シミュレータカット弁72を通電により開弁してストロークシミュレータ71を作動可能状態にする。また、マイコン100aは、動力液圧発生装置30を作動させて、アキュムレータ圧センサ51により検出されるアキュムレータ圧Paを所定の周期で読み込み、アキュムレータ圧Paが予め設定した最低設定圧を下回る場合にはモータ32を駆動してポンプ31により作動液を加圧し、常にアキュムレータ圧Paが設定圧範囲内に維持されるように制御する。
そして、マイコン100aは、ブレーキペダル10の操作量に基づいて、液圧制御弁50FR,50FL,50RR,50RLの通電によりホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLの液圧制御を行う。この場合、マイコン100aは、ブレーキペダルの操作量(例えば、踏み込み量を表すペダルストロークSp、あるいは、踏み込み力を表すマスタシリンダ圧Pm)に基づいて、ホイールシリンダ82FR,82FL,82RR,82RLについてそれぞれ目標液圧を設定し、ホイールシリンダ圧センサ53FR,53FL,53RR,53RLにより検出されるホイールシリンダ圧Pwが目標液圧と等しくなるように、フィードバック制御により増圧用リニア制御弁44FR,44FL,44RR,44RLと減圧用リニア制御弁45FR,45FL,45RR,45RLとの駆動電流を制御する。
一方、ラピッド起動時においては、起動と同時にはシミュレータカット弁72を開弁しない点において通常起動時と異なる。従って、ラピッド起動時には、マスタカット弁46,47が閉弁され、動力液圧発生装置30の作動が開始され、液圧制御弁50による液圧制御が開始される点において通常起動時と共通する。また、ラピッド起動時においては、後述するように、ブレーキペダル10の操作に連動して変化する操作関連値が予め設定された基準範囲を超えたときに、シミュレータカット弁72あるいはマスタカット弁46,47を所定の開度にまで開弁してマスタシリンダ20の作動液を流出させてペダル踏み込み剛性を制御する点において相違する。以下、この相違点となるペダル踏み込み剛性制御について説明する。
<ペダル踏み込み剛性制御の実施形態1>
図2は、実施形態1としてのブレーキECU100の実行するペダル踏み込み剛性制御ルーチンを表す。ブレーキECU100は、ステップS11において、ブレーキECU100(マイコン100a)がスリープ中であって、且つ、ペダルスイッチ102がオンしたか否かを判断する。この処理は、電源回路100cにより行われるもので、ブレーキECU100が作動停止状態のときに、ペダルスイッチ102から入力されるペダルスイッチ信号Sw1がオンするまで所定の短い周期で繰り返される。電源回路100cに入力されるペダルスイッチ信号Sw1がオンすると(S11:Yes)、電源回路100cは、バッテリ電力をマイコン100aおよび駆動回路100bに供給する。これにより、マイコン100aは、起動する。この場合、マイコン100aは、ペダルスイッチ信号Sw1がオンしていることを確認して、ステップS12において、ラピッド起動する。つまり、ラピッド起動時制動制御を開始する。このラピッド起動により、マスタカット弁46,47が閉弁され、動力液圧発生装置30の作動が開始され、液圧制御弁50によるホイールシリンダ圧制御が開始される。尚、この時点では、シミュレータカット弁72は閉弁状態に維持される。
続いて、マイコン100aは、ステップS13において、ペダル剛性制御許可条件が成立したか否かを判断する。このペダル剛性制御許可条件は、本実施形態においては、マスタシリンダ圧センサ52により検出されるマスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えることに設定されている。つまり、ブレーキペダル10への踏力が所定値を超えたときにペダル剛性制御許可条件が成立するように設定されている。
マイコン100aは、ステップS13において、マスタシリンダ圧センサ52により検出されるマスタシリンダ圧Pmを読み込み、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えていない場合には、ペダル剛性制御許可条件が成立していないと判定して、その処理をステップS15に進める。マイコン100aは、ステップS15において、ペダルスイッチ信号Sw1がオフしたか否かを判断し、ペダルスイッチ信号Sw1がオフしていない場合は、その処理をステップS13に戻す。
従って、ラピッド起動した後は、ブレーキペダル10が踏まれている間、ペダル剛性制御許可条件が成立したか否かについての判断が繰り返される。そして、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えるとペダル剛性制御許可条件が成立し、マイコン100aは、その処理をステップS14に進める。
ラピッド起動時においては、マスタシリンダ20とホイールシリンダ82とがマスタカット弁46,47で遮断され、かつ、シミュレータカット弁72が閉弁状態に維持されるため、マスタシリンダ20から送出できる作動液量が非常に少量となり、ブレーキペダル直下の液圧剛性が増大する。ペダル操作量が少ないときには問題ないが、ペダル操作量が多くなると、ブレーキペダル10への踏力に対してペダルストロークが小さくなり、ドライバーに対して違和感を与えてしまう。つまり、硬いブレーキ操作フィーリング(いわゆる板踏感)を感じさせてしまう。そこで、本実施形態においては、ブレーキペダル操作量が大きくなったときに、以下に示すようにブレーキペダル10直下の液圧剛性を下げる。
ペダル剛性制御許可条件が成立すると(S13:Yes)、マイコン100aは、ステップS14において、シミュレータカット弁72にデューティ信号を出力して、シミュレータカット弁72を開弁する。シミュレータカット弁72は、ソレノイドに通電するデューティ比を可変することにより、弁体の開度を調整できる電磁弁が採用されている。シミュレータカット弁72は、通常起動時においては、ソレノイドへの連続通電(デューティ比100%の通電)により開弁するように制御されるが、このステップS14においては、通常起動時よりも小さなデューティ比(<100%)にてソレノイドに通電される。従って、ステップS14においては、シミュレータカット弁72は、通常起動時の開度よりも絞った開度に開弁される。
これにより、マスタシリンダ20からストロークシミュレータ71に作動液が流れて、ブレーキペダル10直下の液圧剛性の増加が抑制される。
マイコン100aは、ペダルスイッチ信号Sw1がオフになるまで、ステップS13〜S15の処理を繰り返す。そして、ペダルスイッチ信号Sw1がオフになるとペダル踏み込み剛性制御ルーチンを終了する。尚、マイコン100aは、ラピッド起動後、ペダルスイッチ信号Sw1がオフになると(S15:Yes)、通常起動時制動制御に切り替える。従って、シミュレータカット弁72は、デューティ比100%にてソレノイドに通電される。
以上説明した実施形態1に係るペダル踏み込み剛性制御によれば、ブレーキペダル10への踏力が小さい段階ではドライバーに板踏感を感じさせないため、ペダル踏み込み剛性制御(S14)を行わず、その後、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えたときにマスタシリンダ20からストロークシミュレータ71に作動液を流す。これにより、ブレーキペダル10への踏力に対して適度なペダルストロークが得られ、ドライバーに与える板踏感を緩和することができる。この場合、通常起動時に比べてシミュレータカット弁72の開度が絞られているため、ドライバーにブレーキペダル10が入り込んだ印象を与えにくい。更に、この実施形態1においては、ペダルストロークセンサ101を備えなくても実施できるため、システム構成を簡略化することができる。
<ペダル踏み込み剛性制御の実施形態2>
図3は、実施形態2としてのブレーキECU100の実行するペダル踏み込み剛性制御ルーチンを表す。この実施形態2のペダル踏み込み剛性制御ルーチンは、実施形態1のペダル踏み込み剛性制御ルーチンのステップS14に代えてステップS24を行うものであって、他の処理については実施形態1と同一である。共通する処理については、図面に実施形態1と同じステップ符号を付して説明を省略する。
マイコン100aは、ステップS13において、ペダル剛性制御許可条件が成立すると、続くステップS24において、マスタカット弁46,47にデューティ信号を出力して、マスタカット弁46,47を開弁する。マスタカット弁46,47は、ソレノイドに通電するデューティ比を可変することにより、弁体の開度を調整できる電磁弁が採用されている。マスタカット弁46,47は、ブレーキECU100が非作動時(起動していない状態)においては、ソレノイドに通電されないため開弁状態に維持され、ブレーキECU100の起動によりソレノイドに連続通電(デューティ比100%の通電)されて、電磁力により閉弁される。このステップS24においては、ソレノイドへの通電量を減らすことにより、つまり、ソレノイドに通電するデューティ比を下げることにより、電磁力を低下させて弁体をスプリング(図示略)により開弁方向に移動させる。従って、マスタカット弁46,47は、ブレーキECU100の非作動時における開度(全開)に比べて絞った開度に開弁される。
これにより、マスタシリンダ20からフロントホイールシリンダ82FR,82FLに作動液が流れて、ブレーキペダル10直下の液圧剛性の増加が抑制される。
以上説明した実施形態2に係るペダル踏み込み剛性制御によれば、ブレーキペダル10への踏力が小さい段階ではドライバーに板踏感を感じさせないため、ペダル踏み込み剛性制御(S24)を行わず、その後、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えたときにマスタシリンダ20からフロントホイールシリンダ82FR,82FLに作動液を流す。これにより、ブレーキペダル10への踏力に対して適度なペダルストロークが得られ、ドライバーに与える板踏感を緩和することができる。この場合、マスタカット弁46,47の開度が絞られているため、マスタシリンダ20からフロントホイールシリンダ82FR,82FLに流す作動液の流量を適量にすることができ、ドライバーにブレーキペダル10が入り込んだ印象を与えにくい。また、この実施形態2においては、ペダルストロークセンサ101を備えなくても実施できるため、システム構成を簡略化することができる。
また、ブレーキペダル10が踏まれて起動するラピッド起動時においては、起動直後の動力液圧発生装置30の出力する液圧(アキュムレータ圧)が設定圧範囲よりも低下しているケースが考えられる。そうしたケースにおいては、実施形態2では、マスタシリンダ20からフロントホイールシリンダ82FR,82FLに作動液を補給することで、早くホイールシリンダ圧を高くすることができる。従って、実施形態2のペダル踏み込み剛性制御ルーチンは、フェイルセーフの観点においても、特に有効利用することができる。
<ペダル剛性制御許可条件の変形例1>
上述したペダル踏み込み剛性制御の実施形態1,2においては、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えることをペダル剛性制御許可条件としているが、ペダル剛性制御許可条件は、これに限るものではない。例えば、ブレーキペダル10の踏み込み量が所定値を超えることをペダル剛性制御許可条件に設定しても良い。この場合、マイコン100aは、ステップS13において、ペダルストロークセンサ101により検出されるペダルストロークSpを読み込み、ペダルストロークSpが閾値Sprefを超えているときに、ペダル剛性制御許可条件が成立していると判定(S13:Yes)すればよい。
<ペダル剛性制御許可条件の変形例2>
また、ブレーキペダル10の踏み込み力と踏み込み量との少なくとも一方が所定値を超えることをペダル剛性制御許可条件に設定しても良い。この場合、マイコン100aは、ステップS13において、マスタシリンダ圧センサ52により検出されるマスタシリンダ圧Pm、および、ペダルストロークセンサ101により検出されるペダルストロークSpを読み込み、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えている、あるいは、ペダルストロークSpが閾値Sprefを超えているときに、ペダル剛性制御許可条件が成立していると判定(S13:Yes)すればよい。
<ペダル剛性制御許可条件の変形例3>
また、ブレーキペダル10の踏み込み量と踏み込み力との関係に基づいて、踏み込み量に対する踏み込み力が所定値を超えることをペダル剛性制御許可条件に設定しても良い。例えば、マイコン100aは、図4に実線にて示すように、通常起動時制動制御における平均的なペダルストロークSpとマスタシリンダ圧Pmrefとの関係を表す基準マップ(基準データ)を記憶しており、ラピッド起動開始後において検出したペダルストロークSpとマスタシリンダ圧Pmとの関係と基準マップにおける関係との相違度合を計算する。基準マップは、ペダルストロークSpの増加にしたがってマスタシリンダ圧Pmrefが大きくなる特性を有する。
この場合、マイコン100aは、ステップS13において、ペダルストロークセンサ101により検出されるペダルストロークSpとマスタシリンダ圧センサ52により検出されるマスタシリンダ圧Pmとを読み込み、検出したペダルストロークSpに対する基準マップ上でのマスタシリンダ圧Pmrefと、検出したマスタシリンダ圧Pmとの偏差eを計算する。ラピッド起動した場合には、シミュレータカット弁72が閉弁されているので、実際のマスタシリンダ圧Pmは基準マップでのマスタシリンダ圧Pmref(参照マスタシリンダ圧Pmrefと呼ぶ)に比べて高くなる。従って、マスタシリンダ圧Pmから参照マスタシリンダ圧Pmrefを減算した値が偏差e(Pm−Pmref)となる。
ラピッド起動した場合には、図4に破線で示すような特性を示す。このため、ラピッド起動した場合には、通常起動した場合に比べて、硬いブレーキ操作フィーリングとなり、ペダルストロークSpが大きくなるにしたがって、マスタシリンダ圧の偏差eが大きくなる。そこで、この変形例3においては、マイコン100aは、偏差eを相違度合を表す指標として使って、ステップS13において、偏差eが閾値erefを超えたとき(e>eref)にペダル剛性制御許可条件が成立したと判定する。
これによれば、ペダルストロークSpに対するマスタシリンダ圧の偏差eを使って、ペダル剛性制御許可条件の成立を判定するため、通常起動時における特性との相違度合を精度良く判定することができ、この結果、適切なタイミングにてペダル踏み込み剛性制御(S14,S24)を開始することができる。このため、ペダル踏み込み剛性制御の開始が遅れたり、逆に、早すぎたりすることが防止され、安定したペダル踏み込み剛性制御を行うことができる。
尚、この変形例3においては、ブレーキペダル10の踏み込み量と踏み込み力との関係から、踏み込み量に対する踏み込み力の偏差に基づいてペダル剛性制御許可条件を設定しているが、それに代えて、踏み込み力に対する踏み込み量の偏差に基づいてペダル剛性制御許可条件を設定してもよい。この場合には、マイコン100aは、検出したマスタシリンダ圧Pmに対するペダルストロークの偏差e’(基準マップ上におけるマスタシリンダ圧Pmに対するペダルストロークSprefから、検出したペダルストロークSpを減算した値(Spref−Sp))を計算し、この偏差e’を相違度合を表す指標として使って、ステップS13において、偏差e’が閾値eref’を超えたときにペダル剛性制御許可条件が成立したと判定すればよい。
<デューティ比制御の変形例1>
上述したペダル踏み込み剛性制御の実施形態1,2においては、ステップS14,S24においてペダル踏み込み剛性制御を行う場合、予め設定されたデューティ比にて、シミュレータカット弁72、あるいは、マスタカット弁46,47のソレノイドを通電するようにしているが、デューティ比を可変するようにしてもよい。図5は、デューティ比制御の変形例1として、上述した実施形態1のペダル踏み込み剛性制御ルーチン(図2)におけるステップS13〜S15の処理に代えて行う処理を表すフローチャートである。この処理においては、ステップS14に代えてステップS34の処理が組み込まれている。尚、ステップS11,S12の処理については、実施形態と同一である。
マイコン100aは、ステップS13においてペダル剛性制御許可条件の成立判定を行う。このペダル剛性制御許可条件の成立判定に当たっては、上述したように、マスタシリンダ圧Pmが閾値Pmrefを超えていること(Pm>Pmref)を判定してもよいし、ペダル剛性制御許可条件の変形例1,2,3にて説明した判定を行うようにしてもよい。マイコン100aは、ペダル剛性制御許可条件が成立すると(S13:Yes)、続くステップS34において、マスタシリンダ圧センサ52により検出されるマスタシリンダ圧Pmを読み込み、マスタシリンダ圧Pmに基づいて、シミュレータカット弁72のデューティ比dを次式(1)により設定する。
d=d+k×f(Pm)・・・・(1)
ここで、kは予め設定された係数である。f(Pm)は、例えば、マスタシリンダ圧Pmに比例した値を算出する関数(例えば、一次関数)である。従って、f(Pm)は、マスタシリンダ圧Pmが大きいほど大きな値をとる。また、デューティ比dの初期値は、任意の値(例えば、ゼロ)に設定されている。マイコン100aは、デューティ比dを設定すると、その設定したデューティ比にてシミュレータカット弁72のソレノイドに通電する。これにより、シミュレータカット弁72は、デューティ比dに応じた開度にて開弁する。
ステップS13,S34,S15の処理は、ペダルスイッチ信号Sw1がオフするまで繰り返される。従って、k×f(Pm)は、1演算周期におけるデューティ比の増加量を表す。これにより、デューティ比dは、初期値から徐々に増加する。従って、ストロークシミュレータ71を徐々に機能させることができ、ブレーキ操作フィーリングの急変を防止することができる。また、デューティ比dの増加速度は、マスタシリンダ圧Pmが大きいほど速くなる。従って、マスタシリンダ圧Pmが大きいほど、ストロークシミュレータ71の機能が早く得られるようになる。この結果、ドライバーのペダル踏み込み力に応じた適切なペダル反力を創出することができ、ペダル操作フィーリングを一層向上させることができる。
<デューティ比制御の変形例2>
図6は、デューティ比制御の変形例2として、上述した実施形態1のペダル踏み込み剛性制御ルーチン(図2)におけるステップS13〜S15の処理に代えて行う処理を表すフローチャートである。この処理においては、ステップS14に代えてステップS44の処理が組み込まれている。
マイコン100aは、ステップS13においてペダル剛性制御許可条件の成立判定を行う。このステップS13の判定は、デューティ比制御の変形例1で説明した通りである。マイコン100aは、ペダル剛性制御許可条件が成立すると(S13:Yes)、続くステップS44において、ペダルストロークセンサ101により検出されるペダルストロークSpを読み込み、ペダルストロークSpに基づいて、シミュレータカット弁72のデューティ比dを次式(2)により設定する。
d=d+k×f(Sp)・・・・(2)
ここで、kは予め設定された係数である。f(Sp)は、例えば、ペダルストロークSpに比例した値を算出する関数(例えば、一次関数)である。従って、f(Sp)は、ペダルストロークSpが大きいほど大きな値をとる。また、デューティ比dの初期値は、任意の値(例えば、ゼロ)に設定されている。マイコン100aは、デューティ比dを設定すると、その設定したデューティ比にてシミュレータカット弁72のソレノイドに通電する。これにより、シミュレータカット弁72は、デューティ比dに応じた開度にて開弁する。
ステップS13,S44,S15の処理は、ペダルスイッチ信号Sw1がオフするまで繰り返される。従って、k×f(Sp)は、1演算周期におけるデューティ比の増加量を表す。これにより、デューティ比dは、初期値から徐々に増加する。従って、ストロークシミュレータ71を徐々に機能させることができ、ブレーキ操作フィーリングの急変を防止することができる。また、デューティ比dの増加速度は、ペダルストロークSpが大きいほど速くなる。従って、ペダルストロークSpが大きいほど、ストロークシミュレータ71の機能が早く得られるようになる。この結果、ドライバーのペダル踏み込み力に応じた適切なペダル反力を創出することができ、ペダル操作フィーリングを一層向上させることができる。
尚、デューティ比制御の変形例1,2において、シミュレータカット弁72のデューティ比dが100%に到達した場合には、それ以降、デューティ比dを100%に維持するようにすればよい。従って、スムーズにラピッド起動時制動制御から通常起動時制動制御に移行させることができる。
<デューティ比制御の変形例3>
上述したデューティ比制御の変形例1,2においては、シミュレータカット弁72のデューティ比dを徐々に増加させるように構成しているが、この変形例3においては、ブレーキペダル10の踏み込み量と踏み込み力との関係(つまり、ペダルストロークとマスタシリンダ圧との関係)が、通常起動時制動制御と変わらないようにシミュレータカット弁72のデューティ比dを制御する。図7は、デューティ比制御の変形例3として、上述した実施形態1のペダル踏み込み剛性制御ルーチン(図2)におけるステップS13〜S15の処理に代えて行う処理を表すフローチャートである。この処理においては、ステップS14に代えてステップS141,S142の処理が組み込まれている。
マイコン100aは、ステップS13においてペダル剛性制御許可条件の成立判定を行う。このステップS13の判定は、デューティ比制御の変形例1で説明した通りである。マイコン100aは、ペダル剛性制御許可条件が成立すると(S13:Yes)、続くステップS141において、ペダルストロークセンサ101により検出されるペダルストロークSpとマスタシリンダ圧センサ52により検出されるマスタシリンダ圧Pmとを読み込み、検出したペダルストロークSpに対する基準マップ上でのマスタシリンダ圧Pmrefと、検出したマスタシリンダ圧Pmとの偏差eを計算する。この基準マップは、ペダル剛性制御許可条件の変形例3で説明した図4に実線にて示すマップである。
続いて、マイコン100aは、ステップS142において、偏差eに基づいて、シミュレータカット弁72のデューティ比dを次式(3)により設定する。
d=f(e)・・・・(3)
f(e)は、偏差eをパラメターとして偏差eが少なくなるようにデューティ比を設定する関数であり、偏差eが大きいほど大きくなるデューティ比を設定する。例えば、偏差eに比例した大きさのデューティ比を設定する一次関数であってもよいし、偏差eを使ったフィードバック制御、例えば、PID制御にてデューティ比を設定する関数等であってもよい。
マイコン100aは、デューティ比dを設定すると、その設定したデューティ比dにてシミュレータカット弁72のソレノイドに通電する。これにより、シミュレータカット弁72は、デューティ比dに応じた開度にて開弁する。
ステップS13,S141,S142,S15の処理は、ペダルスイッチ信号Sw1がオフするまで繰り返される。これにより、偏差eが少なくなるようにシミュレータカット弁72の開度が調整される。従って、ペダルストロークとマスタシリンダ圧との関係が、ラピッド起動であっても、通常起動時制動制御における関係とあまり変わらないようになり、ブレーキペダル10直下の液圧剛性の増加が抑制される。このため、ブレーキペダル10への踏力に対して適度なペダルストロークが得られ、ドライバーに与える板踏感を緩和することができる。
<デューティ比制御の変形例4>
上述したデューティ比制御の変形例3においては、シミュレータカット弁72のデューティ比を制御することにより、ラピッド起動時におけるドライバーに与える板踏感を緩和するが、このデューティ比制御の変形例4においては、デューティ比を制御する対象をシミュレータカット弁72に代えてマスタカット弁46,47としたものである。図8は、デューティ比制御の変形例4として、上述した実施形態2のペダル踏み込み剛性制御ルーチンにおけるステップS13,S24,S15の処理に代えて行う処理を表すフローチャートである。この処理においては、ステップS24に代えてステップS241,S242の処理が組み込まれている。ステップS241の処理は、デューティ比制御の変形例3におけるステップS141の処理と同一である。
マイコン100aは、ステップS241において、検出したペダルストロークSpに対する基準マップ上でのマスタシリンダ圧Pmrefと、検出したマスタシリンダ圧Pmとの偏差eを計算する。続いて、マイコン100aは、ステップS242において、偏差eに基づいて、マスタカット弁46,47のデューティ比dmを次式(4)により設定する。
dm=f(e)・・・・(4)
f(e)は、偏差eをパラメターとして偏差eが少なくなるようにデューティ比を設定する関数であり、偏差eが大きいほど大きくなるデューティ比を設定する。例えば、偏差eに比例した大きさのデューティ比を設定する一次関数であってもよいし、偏差eを使ったフィードバック制御、例えば、PID制御にてデューティ比を設定する関数等であってもよい。尚、マスタカット弁46,47は、常開式電磁弁であるため、通電量が少ないほど開度が大きくなる。このため、デューティ比dmは、オフデューティ比、つまり、通電のオンオフ1周期におけるオフ期間の比を表している。従って、偏差eが大きいほどオフデューティ比dmが大きくなってマスタカット弁46,47の開度が大きくなる。
マイコン100aは、デューティ比dmを設定すると、その設定したデューティ比dmにてマスタカット弁46,47のソレノイドに通電する。これにより、マスタカット弁46,47は、デューティ比dmに応じた開度にて開弁する。
ステップS13,S241,S242,S15の処理は、ペダルスイッチ信号Sw1がオフするまで繰り返される。これにより、偏差eが少なくなるようにマスタカット弁46,47の開度が調整される。従って、ペダルストロークとマスタシリンダ圧との関係が、ラピッド起動であっても、通常起動時制動制御における関係とあまり変わらないようになり、ブレーキペダル10直下の液圧剛性の増加が抑制される。このため、ブレーキペダル10への踏力に対して適度なペダルストロークが得られ、ドライバーに与える板踏感を緩和することができる。
また、デューティ比制御の変形例4によれば、ペダル踏み込み剛性制御の実施形態2で説明したように、ラピッド起動直後の動力液圧発生装置30の出力する液圧(アキュムレータ圧)が設定圧範囲よりも低下している場合でも、マスタシリンダ20からフロントホイールシリンダ82FR,82FLに作動液を補給するため、早くホイールシリンダ圧を高くすることができる。従って、フェイルセーフの観点においても、特に有効利用することができる。
尚、デューティ比制御の変形例3,4においては、ラピッド起動時であっても、ブレーキペダル10の踏み込み量と踏み込み力との関係が変わらないように、ペダルストロークSpに対する基準マップ上でのマスタシリンダ圧Pmrefと検出したマスタシリンダ圧Pmとの偏差eを使って、シミュレータカット弁72あるいはマスタカット弁46,47のデューティ比を制御しているが、それに代えて、踏み込み力に対する踏み込み量の偏差に基づいて上記デューティ比を制御する構成であってもよい。この場合には、マイコン100aは、検出したマスタシリンダ圧Pmに対するペダルストロークの偏差e’(基準マップ上におけるマスタシリンダ圧Pmに対するペダルストロークSprefから、検出したペダルストロークSpを減算した値(Spref−Sp))を計算し、この偏差e’を使って、偏差e’が少なくなるようにシミュレータカット弁72あるいはマスタカット弁46,47のデューティ比を制御すればよい。
<ペダル踏み込み剛性制御の実施形態3>
上述したペダル踏み込み剛性制御の実施形態1,2、および、その変形例においては、ステップS13において、ペダル剛性制御許可条件の成立を判定し、ペダル剛性制御許可条件が成立した場合に(S13:Yes)、シミュレータカット弁72、あるいは、マスタカット弁46,47を開弁(半開)して、ブレーキペダル10直下の液圧剛性を下げるように構成しているが、この実施形態3では、各実施形態および変形例において、ステップS13の処理を省略したものである。つまり、図2〜図3,図5〜図8に示したフローチャートのステップS13を全て削除して、ペダル剛性制御許可条件の成立を判定することなしに、常に、ペダル踏み込み剛性制御を行う。この実施形態3によれば、ラピッド起動後、シミュレータカット弁72、あるいは、マスタカット弁46,47がデューティ比により調整された開度(全開よりも絞られた開度)で開弁するため、ブレーキペダル10の入り込み感、および、板踏感を抑制することができる。
以上、本実施形態および変形例の車両のブレーキ制御装置について説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、4輪のホイールシリンダ圧を各輪毎に設けたリニア制御弁にて独立して制御する形式のブレーキ制御装置に適用しているが、各ホイールシリンダ圧を共通のリニア制御弁(例えば、一対となる増圧用リニア制御弁と減圧用リニア制御弁)にて制御する形式のブレーキ制御装置に適用することもできる。
また、本実施形態においては、マスタシリンダ20がマスタカット弁を介して前輪側のホイールシリンダにのみ連通する構成であるが、例えば、マスタシリンダ20がマスタカット弁を介して4輪のホイールシリンダに連通する構成であってもよい。
また、本実施形態においては、ペダル踏み込み剛性制御を行う場合、2つのマスタカット弁46,47を同時に開弁しているが、何れか一方のマスタカット弁46(47)のみを開弁するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、イグニッションスイッチとカーテシスイッチとの何れかがオン作動したときに通常起動するように構成されているが、イグニッションスイッチのみにより通常起動する構成であってもよい。