JP2007246424A - 有機材料の精製方法 - Google Patents

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【課題】 昇華精製中に母材粉末がガス流によって飛散することを防止するとともに母材粉末がクラスター状のかたまりとなって昇華してしまい、高純度化が達成できない点を改良した有機材料の精製方法を提供すること。
【解決手段】 有機材料粉末が封入される下部密封空間と、上部に放出孔を有する上部密封空間と、両密封空間を仕切り、上部及び下部密封空間を連通する連通孔が形成された仕切部とを含み、該有機材料粉末を加熱して昇華又は蒸発させる加熱容器、及び該加熱容器を収容し該加熱容器の放出孔から放出される該有機材料の精製物が付着される空間を有する密封管を用いた有機材料の精製方法であって、該有機材料の精製物を該加熱容器の下部密封空間に1回以上繰り返して再封入し、再精製することを特徴とする有機材料の精製方法により解決される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機材料を加熱して昇華又は蒸発させるための細孔付き密封型加熱容器を利用した有機材料精製方法に関する。
有機材料を使った素子には、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ素子、有機電界発光素子、有機薄膜太陽電池等の有機半導体素子がある。有機材料を使った素子では、有機材料の純度が素子性能に大きくかかわっており、純度が向上すればするほど素子性能は向上する。
化学合成により作られた有機材料は純度が97%以下と低く、そのまま素子を作製しても十分な性能を得ることはできない。このため従来は、図7にあるように、昇華性や蒸発性をもつ材料母材を開放型母材粉末皿22に載せ、不活性ガスを導入した真空中、もしくはガスを導入しない高真空中で加熱し、温度勾配をつけた壁面に蒸着分子200を付着させ、それを取り出すことで精製が行われていた。
しかし、従来の有機材料の精製方法では、昇華精製中の母材粉末がガス流により飛散され、また有機材料が分子ごとではなくクラスター状のかたまりとなって昇華してしまう問題があり、その際に精製物分子(精製目標分子)5とともに不純物分子4が付着してしまい高純度の材料を得ることはできなかった。
特開2003−95992号公報 特開2005−511864号公報
本発明は、昇華精製中に母材粉末がガス流によって飛散することを防止するとともに母材粉末がクラスター状のかたまりとなって昇華してしまい、高純度化が達成できない点を改良した有機材料の精製方法を提供することを課題とする。
上記課題は、次のような方法によって解決される。
(1)有機材料粉末が封入される下部密封空間と、上部に放出孔を有する上部密封空間と、両密封空間を仕切り、上部及び下部密封空間を連通する連通孔が形成された仕切部とを含み、該有機材料粉末を加熱して昇華又は蒸発させる加熱容器、及び該加熱容器を収容し該加熱容器の放出孔から放出される該有機材料の精製物が付着される空間を有する密封管を用いた有機材料の精製方法であって、該有機材料の精製物を該加熱容器の下部密封空間に1回以上繰り返して再封入し、再精製することを特徴とする有機材料の精製方法。
(2)上記連通孔は、上記放出孔を通して上記有機材料粉末が見通せない位置に設置されていることを特徴とする有機材料の精製方法。
(3)上記密封管中には不活性ガスが流入していることを特徴とする有機材料の精製方法。
(4)上記密封管は真空に保持されていることを特徴とする有機材料の精製方法。
(5)上記有機材料は、亜鉛フタロシアニンである有機材料の精製方法。
本発明によれば、連通孔によりつながれた複式部屋構造により、クラスター化して塊となった有機材料は単分子のレベルまで粉砕され効率よく精製することができる。また併せて、材料を密封することにより、昇華精製中の導入ガスによる母材粉末の飛散を防ぎ、回収精製物に材料母材が混入することを防ぐことが可能となり、回収精製物の高純度化を達成することができる。しかも回収精製物を再精製することにより高純度の有機材料を精製することが可能となる。
以下発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の精製方法に用いられる装置の概略断面図である。密封型加熱容器は、上部密封空間2と下部密封空間1で構成されており、仕切板7により仕切られている。仕切板7には、上部密封空間と下部密封空間とを連通する細孔(連通孔3)が設けられている。母材粉末は下部密封空間1に封入されており、加熱により昇華若しくは蒸発ガスが、細孔を通して上部密封空間に運ばれる。上部密封空間にも細孔(放出孔)が加工されており、下部密封空間から上部密封空間まで運ばれた昇華又は蒸発ガスは外部に放出される。
この細孔によりつながれた複式部屋構造により、クラスター化して塊となった有機材料は単分子のレベルまで粉砕され、精製目標分子と不純物分子は有効に分離され、効率よく精製することができる。放出された有機材料のガスは、高純度精製回収物100として密封管10内に付着する。
図2、3は本発明の昇華精製方法に用いられる昇華精製装置の構成を示す概略断面図である。昇華精製の方法には、図2に示すガスフロー式と図3に示す高真空式が一般的である。ガスフロー式は、加熱管片端から不活性ガスが導入される。反対の加熱管端から液体窒素冷却トラップ付きロータリーポンプ等でガスの排気を行う。真空度は100Pa程度である。ガス流と加熱炉により形成される温度勾配により材料の分離が行われる。
高真空式ではガスの導入はしない。加熱管片端を封じ、反対の加熱管端からターボ分子ポンプ等の高真空生成装置により排気する。真空度は10−5Pa程度である。加熱炉により形成される温度勾配にのみにより有機材料の分離が行われる。
細孔付き密封型加熱容器を用いてガスフロー式の昇華精製を行い有機半導体材料の高純度化を行った。精製回数は3回であり、1回目の精製回収物を2回目に細孔付き密封型加熱容器に封入し、2回目の精製回収物を3回目に封入することにより高純度化を行った。使用した有機半導体材料は、p型有機半導体亜鉛フタロシアニンである。
図4は、密封型加熱容器の構造図である。下部密封空間に亜鉛フタロシアニン(母材粉末16)が封入されており、下部密封空間1と上部密封空間2は2個の直径1mmの連通孔3によりつながれている。外部への昇華ガスの放出は、上部密封空間の最上部の直径1mmの放出孔6により行われる。
ここで連通孔と放出孔とは、加熱容器の外部から放出孔を通して上記有機材料粉末が見通せない位置に配置されていることが肝要である。
精製された有機材料の純度の評価のため、亜鉛フタロシアニンを用いた有機薄膜太陽電池を作製した。その素子構造を図5に示す。下部電極としてITO基板17、上部電極としてマグネシウム銀合金電極21を用いた。n型半導体としてフラーレン(C60)を用い、精製したp型半導体亜鉛フタロシアニンとの共蒸着(1:1)を行い50nm厚さの有機層19とした。
太陽電池特性は、擬似太陽光(Air Mass 1.5 Global 100mW/cm)照射下で、電流電圧特性を評価し、短絡光電流(Isc)、開放電圧(Voc)、形状因子(FF)、エネルギー変換効率(PCE)の太陽電池パラメータを導出した。
図6は、本発明の昇華精製法を用いた精製物を導入した素子の擬似太陽光照射下の電流電圧特性を示ものである。同図において、a、b、c、dは、それぞれ昇華精製0回、1回、2回、3回の材料で作製した素子の電流電圧特性である。
図から明らかなように、昇華精製を重ねるごとに電流電圧特性が向上している。
次に表1は、従来の開放型母材粉末皿を用いた昇華精製法と本発明の細孔付き密封型加熱容器を用いた昇華精製方法を用いた場合の太陽電池パラメータの比較表である。昇華精製はそれぞれ3回行っている。
Figure 2007246424
太陽電池パラメータを比較すると、本発明の細孔付き密封型加熱容器を用いた場合のすべての太陽電池パラメータは、従来の開放型母材粉末皿のパラメータより向上している。特に、Vocが0.7Vも向上しており、亜鉛フタロシアニンの半導体物性が変化していることが裏付けられる。これは、高純度化により、亜鉛フタロシアニン中の不純物濃度が低下し、エネルギー準位の変化と漏れ電流の抑制が行われ、Vocパラメータの向上に現れたと考えられる。また、キャリア輸送性能が大きく影響するIscとダイオード特性の良否が大きく影響するFFの両方ともパラメータが向上しており、高純度化により亜鉛フタロシアニンの半導体性能が向上しているのは明らかである。最終的なエネルギー変換効率(PCE)は従来の方法より30%程度高く、本発明の昇華精製法により材料の高純度化が進められ、太陽電池としての素子性能が飛躍的に向上していることが分かる。
細孔付き密封型加熱容器を用いて高真空式の昇華精製を行い有機半導体材料の高純度化を行った。本発明の密封型加熱容器の形状、使用材料、精製回数、素子構造、評価法は実施例1と同じである。
表2は従来の開放型母材粉末皿を用いた昇華精製法と本発明の細孔付き密封型加熱容器を用いた昇華精製方法を用いた場合の太陽電池パラメータの比較表である。昇華精製はそれぞれ3回行っている。
Figure 2007246424
太陽電池パラメータを比較すると、本発明の密封型加熱容器を用いた場合の太陽電池パラメータは、従来の開放型母材粉末皿のパラメータより向上している。Iscは同程度であったが、VocとFFは向上している。向上の理由として、実施例1と同様に亜鉛フタロシアニンの高純度化による半導体性能の向上が挙げられる。最終的なエネルギー変換効率(PCE)は従来の方法より、40%程度高く、本発明の昇華精製法により材料の高純度化が進められ、太陽電池としての素子性能が向上していることが分かる。
高真空式で精製した材料を用いた太陽電池素子(PCE=1.5%)はガスフロー式のもの(PCE=2.7%)より性能が劣る。高真空式では温度勾配のみにより材料の分離が行われるが、一方のガスフロー式では、温度勾配に加え不活性ガス流による材料の分離が行われる。ガス流により強制的に材料を分離するため、高真空式より材料の分離能が高くなる。したがって、酸化や分解が起こりやすい有機材料の場合は高真空式しか適用できないが、実施例の亜鉛フタロシアニンのような酸化や分解が起こりにくい材料の場合はガスフロー式の方が高い精製速度で超高純度化が可能である。
以上、実施例1と2により、本発明の密封型加熱容器は、酸化や分解のしやすい有機材料用の高真空式昇華精製法と高い精製速度を誇るガスフロー式昇華精製法の両方に適用可能で、材料純度向上の効果があることが示された。
有機材料を用いかつ材料純度が素子性能に大きく影響するもの、例えば、有機半導体トランジスタ、有機電界発光素子、有機キャパシタ、有機アクチュエーター、有機センサ、有機光学素子、色素増感太陽電池等の用途に適用できる。
本発明の精製方法の説明図である。 ガスフロー式昇華精製方法の説明図である。 高真空式昇華精製方法の説明図である。 密封型加熱容器の構造図である。 有機薄膜太陽電池の構造図である。 有機薄膜太陽電池の電流電圧特性図である。 従来の精製方法を説明する図面である。
符号の説明
1 下部密封空間
2 上部密封空間
3 連通孔
4 不純物分子
5 精製物分子(精製目標分子)
6 放出孔
7 仕切板
8 加熱炉
9 低温温度勾配炉
10 密封管
11 不活性ガス導入器
12 液体窒素冷却トラップ
13 ロータリーポンプ
14 ターボ分子ポンプ用ロータリーポンプ
15 ターボ分子ポンプ
16 母材粉末
17 ITO基板
18 下部バッファー層
19 有機層
20 上部バッファー層
21 マグネシウム銀合金電極
22 開放型母材粉末皿
100 不純物がない本発明の高純度精製回収物
200 不純物が含まれてしまう従来法の精製回収物

Claims (5)

  1. 有機材料粉末が封入される下部密封空間と、上部に放出孔を有する上部密封空間と、両密封空間を仕切り、上部及び下部密封空間を連通する連通孔が形成された仕切部とを含み、該有機材料粉末を加熱して昇華又は蒸発させる加熱容器、及び該加熱容器を収容し該加熱容器の放出孔から放出される該有機材料の精製物が付着される空間を有する密封管を用いた有機材料の精製方法であって、
    該有機材料の精製物を該加熱容器の下部密封空間に1回以上繰り返して再封入し、再精製することを特徴とする有機材料の精製方法。
  2. 上記連通孔は、上記放出孔を通して上記有機材料粉末が見通せない位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機材料の精製方法。
  3. 上記密封管中には不活性ガスが流入していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機材料の精製方法。
  4. 上記密封管は真空に保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機材料の精製方法。
  5. 上記有機材料は、亜鉛フタロシアニンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機材料の精製方法。
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