JP2007242599A - 導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に内部電極層の各厚みが薄層化し、しかも、Ni粒子の粒度分布にバラツキがあったとしても、内部電極層の全体にわたり、均一に、Niの粒成長を抑制し、球状化、電極途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制すること。
【解決手段】 Niを主成分とする第1導電性粉末42と、貴金属とNiとの合金を主成分とする第2導電性粉末44と、を有する導電性ペーストである。第1導電性粉末42の平均粒子径をD1とし、第2導電性粉末44の平均粒子径をD2とした場合に、D1が50nm以上で、300nm以下であり、D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内である。第2導電性粉末44における貴金属の含有割合は、3.2モル%以上、25モル%未満が好適である。
【選択図】図5
【解決手段】 Niを主成分とする第1導電性粉末42と、貴金属とNiとの合金を主成分とする第2導電性粉末44と、を有する導電性ペーストである。第1導電性粉末42の平均粒子径をD1とし、第2導電性粉末44の平均粒子径をD2とした場合に、D1が50nm以上で、300nm以下であり、D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内である。第2導電性粉末44における貴金属の含有割合は、3.2モル%以上、25モル%未満が好適である。
【選択図】図5
Description
本発明は、導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法に係り、さらに詳しくは、内部電極層の厚みが薄層化した場合においても、焼成段階でのNi粒子の粒成長を抑制し、粒子の球状化や内部電極の途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制することができる積層セラミックコンデンサなどの電子部品の製造工程に用いられる導電性ペーストに関する。
電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に複数配置された積層構造の素子本体を有する。素子本体の両端部には、一対の外部端子電極が形成してある。この積層セラミックコンデンサは、まず焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とを必要枚数だけ交互に複数積層させて焼成前素子本体を製造し、次にこれを焼成した後、焼成後素子本体の両端部に一対の外部端子電極を形成して製造される。
焼成前誘電体層は、セラミックグリーンシートが用いられ、焼成前内部電極層は所定パターンの内部電極ペースト膜や金属薄膜などが用いられる。
セラミックグリーンシートは、シート法や延伸法などで製造することができる。シート法とは、誘電体粉末、バインダ、可塑剤および有機溶剤などを含む誘電体塗料を、ドクターブレード法などを用いてPETなどのキャリアシート上に塗布し、加熱乾燥させて製造する方法である。延伸法とは、誘電体粉末とバインダが溶媒に混合された誘電体懸濁液を押出成形して得られるフィルム状成形体を二軸延伸して製造する方法である。
所定パターンの内部電極ペースト膜は、印刷法により製造される。印刷法とは、Pd、Ag−Pd、Niなどの金属を含む導電材と、バインダおよび有機溶剤などを含む導電塗料を、セラミックグリーンシート上に所定パターンで塗布形成する方法である。所定パターンの金属薄膜は、スパッタリングなどの薄膜法により製造される。
このように、積層セラミックコンデンサの製造に際しては、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とを同時に焼成することになる。このため、焼成前内部電極層に含まれる導電材には、焼成前誘電体層に含まれる誘電体粉末の焼結温度よりも高い融点を持つこと、誘電体粉末と反応しないこと、焼成後誘電体層に拡散しないこと、が要求される。
従来は、これらの要求を満足させるために、焼成前内部電極層に含まれる導電材には、PtやPdなどの貴金属を使用してきた。しかしながら、貴金属はそれ自体が高価であり、結果として最終的に得られる積層セラミックコンデンサがコスト高になるという欠点があった。そこで、従来は、誘電体粉末の焼結温度を900〜1100℃に低下させ、焼成前内部電極層に含まれる導電材にAg−Pd合金を用いたり、Niなどの安価な卑金属を用いたものが広く知られている。
ところで、近年、各種電子機器の小型化により、電子機器の内部に装着される積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化が進んでいる。この積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化を進めるために、誘電体層はもとより、薄くて欠陥の少ない内部電極層を積層することが求められる。
しかしながら、焼成前内部電極層に含まれる導電材にNiを用いた場合を例示すると、このNiは、焼成前誘電体層に含まれる誘電体粉末と比較して融点が低い。このため、これらを同時焼成した場合、両者の焼結温度の間で大きな差が生じていた。焼結温度に大きな差がある場合に高い温度で焼結させると、内部電極層の割れや剥離が生じ、一方、低い温度で焼結させると、誘電体粉末の焼成不良を生じることがある。
また、焼成前内部電極層の厚みを薄くしていくと、還元雰囲気での焼成中に、導電材に含まれるNi粒子は粒成長により球状化し、焼成前には連結していた隣接するNi粒子同士の間隔が開いて任意の箇所に空孔を生じ、その結果、焼成後内部電極層を連続的に形成することが困難になる。焼成後内部電極層が連続していない場合、積層セラミックコンデンサの静電容量が低下するという問題がある。
そこで、本出願人は、これらの課題を解決するために、下記の特許文献1に示すように、ニッケル粒子の周囲を白金層で被覆してある導電性粒子を開発している。このように構成してある導電性粒子を用いることにより、特に内部電極層の各厚みが薄層化した場合でも、焼成段階でのNi粒子の粒成長を抑制し、球状化、電極途切れを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制することができる。
しかしながら、ニッケル粒子を白金で被覆した粒子は、被覆層の厚みが一定であると考えた場合、ニッケル粒子の径によりニッケルと白金の組成比率が異なってしまう問題がある。すなわち、ニッケル粒子の粒径が大きい場合には、白金に対して相対的にニッケルの含有量が多くなり、逆に、ニッケル粒子の粒径が小さい場合には、白金に対して相対的にニッケルの含有量が少なくなる。
コア粒子の粒度分布にバラツキがなければ、1粒子ごとの組成は均一のはずであるが、実際には、ニッケル粒子の粒度分布にはバラツキがある。このため、内部電極層内で、粒子径の大きいニッケル粒子が多く集まっているところでは、相対的に白金の含有量が少なくなり、ニッケル粒子の粒成長の抑制、球状化の防止、内部電極の途切れ防止などの効果が小さい。その結果、静電容量値は、満足するが、充分な被覆が得られないため、破壊電圧値(VB値)が上がらない。逆に、粒子径の小さいニッケル粒子が多く集まっているところでは、相対的に白金の含有量が多くなり、ニッケル粒子の粒成長の抑制などの効果が大きい。
また、白金で被覆された粒子を作製するには、溶液を低濃度に管理するなどの制約があり、一度に多量の粒子を作製することが難しく、また製造プロセスが長く、安価に作製できないというデメリットがある。
国際公開第04/070748号パンフレット
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、特に内部電極層の各厚みが薄層化し、Ni粒子の粒度分布にバラツキがあっても、焼成段階でのNi粒子の粒成長を抑制し、球状化、電極途切れを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制することができる積層セラミックコンデンサなどの電子部品、その製造方法、その製造方法に用いられる導電性ペーストを提供することである。本発明の他の目的は、白金でニッケル粒子を被覆した粒子の作製に必要な工程を省略することで、製造効率が高くかつ安価で上記の効果を奏する導電性ペーストを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る導電性ペーストは、
少なくとも、ニッケルを主成分とする第1導電性粉末と、
貴金属とニッケルとの合金を主成分とする第2導電性粉末と、
を有する導電性ペーストであり、
前記第1導電性粉末の平均粒子径をD1、前記第2導電性粉末の平均粒子径をD2とした場合、D1が50nm以上で、300nm以下であり、
D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内であり、
第2導電性粉末における前記貴金属の含有割合が、3.2モル%以上で、25モル%未満である。
少なくとも、ニッケルを主成分とする第1導電性粉末と、
貴金属とニッケルとの合金を主成分とする第2導電性粉末と、
を有する導電性ペーストであり、
前記第1導電性粉末の平均粒子径をD1、前記第2導電性粉末の平均粒子径をD2とした場合、D1が50nm以上で、300nm以下であり、
D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内であり、
第2導電性粉末における前記貴金属の含有割合が、3.2モル%以上で、25モル%未満である。
本発明において、ニッケルを主成分とする第1導電性粉末とは、ニッケルを、好ましくは99重量%以上含む導電性粉末を意味する。また、第1導電性粉末において貴金属含有量が0.3モル%未満であることを意味する。
本発明では、第1導電性粉末の平均粒子径に対する第2導電性粉末の平均粒子径の比が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内に入っている。そのため、導電性ペースト中における第1導電性粉末(Ni粒子)と第2導電性粉末との分散性が良く、ニッケルと貴金属との合金である第2導電性粉末が、Ni粒子間に存在することで、Ni粒子の焼結を遅らせ、Ni粒子の粒成長を抑制できる。また、粒子径の大きいNi粒子が多く集まっているところでは、第2導電性粉末も比較的粒子径の大きい粒子が集まる。粒子径の小さいNi粒子が多く集まっているところでは、第2導電性粉末も比較的粒子径の小さい粒子が集まる。したがって、内部電極層内におけるニッケルと貴金属との組成比率は、各部分においても均一であり、電極層の全体に渡り、Ni粒子の粒成長を抑制できる。
本発明では、Niを主成分とする第1導電性粉末の平均粒子径D1が、50nm以上で、300nm以下である。前記第2導電性粉末の平均粒子径をD2とした場合、D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内であり、好ましくは、0.65〜1.35の範囲内、さらに好ましくは、0.85〜1.15の範囲内、特に好ましくは、D1と、D2とが、実質的に同一である。すなわち、Niを主成分とする第1導電性粉末と、ニッケルと貴金属との合金を主成分とする第2導電性粉末とが、ほぼ同一の粒子径を持つことが好ましい。
したがって、第2導電性粉末は、第1導電性粉末と均一に分散され、第1導電性粉末と第2導電性粉末とが交互に並ぶことで、第1導電性粉末(Ni粒子)同士の焼結を抑制し、焼結開始温度を上昇させる。
また、第2導電性粉末に含まれる貴金属は、Niよりも融点が高く、誘電体層との濡れ性および密着性に優れている。したがって、本発明の導電性ペーストでは、内部電極層が薄層化され、さらには第1導電性粉末の粒度分布にバラツキがあったとしても、第2導電性粉末粒子が第1導電性粉末粒子(Ni粒子)間に介在することにより、内部電極層の全体に渡り、均一に、焼成段階でのNiの粒成長を抑制し、球状化、電極途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制し、かつ、破壊電圧値(VB値)を高めることが可能である。
なお、前述した特許文献1に記載の貴金属被覆Ni粒子は、コアとなるNi粒子の粒度分布にバラツキが大きいと組成比率が異なり、電極層の箇所によって、球状化・電極途切れ防止に効果が出る部分と出ない部分とが発生してしまう。その結果、静電容量値を満足するデータは得られるが、充分な被覆率が得られず、VB値が上がらない。すなわち、被覆層の膜厚が一定だとすると、粒子径の大きいNi粒子に貴金属が被覆された場合、ニッケルと貴金属との組成比率は、ニッケルの方が大きくなり、球状化・電極途切れ防止効果が少ない。逆に、粒子径の小さいNi粒子に貴金属が被覆された場合、ニッケルと貴金属との組成比率は、貴金属の方が大きくなり、球状化・電極途切れ防止効果は高い。また、貴金属被覆Ni粒子を作製するにあたり、溶液を低濃度に管理するなどの制約があり一度に多量の粒子を作製できず、またプロセスが長く、安価に作製できないというデメリットがある。
これに対して、本発明の導電性ペーストは、第1導電性粉末(Ni粒子)と、第2導電性粉末(ニッケルと貴金属との合金粒子)とが同程度の粒径を持ち、これらをペースト中に含ませるのみで、導電性ペーストを作製することができる。しかも、ペースト中では、Ni粒子およびニッケルと貴金属との合金粒子として存在しているが、焼成段階では、ニッケルと貴金属との組成比率が変化せずに、ニッケルと貴金属との合金粒子が、Ni粒子と交互に並ぶことで、Ni粒子の粒成長を抑制しつつ、Ni粒子と合金化する。したがって、本発明では、貴金属被覆Ni粒子を含む従来のペーストに比較し、同等以上の性能を有し、しかも製造プロセスが短く、安価に製造することができる導電性ペーストを提供することができる。
また、所望の組成比のニッケルと貴金属との合金粒子を含む従来の導電性ペーストに比較して、本発明の導電性ペーストは、次に示す作用効果を有する。すなわち、本発明では、第1導電性粉末(Ni粒子)と第2導電性粉末(ニッケルと貴金属との合金粒子)とを混合して用いているため、焼結開始温度を遅らせることができる。これに対して、合金粉の場合も焼結開始温度を上げることができるが、本発明よりも焼結開始温度が低く、その結果、被覆率およびVB値が低い。また、内部電極層全体に渡り、第1導電性粉末と第2導電性粉末とは均一に分散され、焼成時には、ニッケルと貴金属との組成比率が変化せずに、第1導電性粉末と第2導電性粉末とが交互に並ぶことで、Niの粒成長を抑制する。その結果、電極被覆率およびVB値が向上する。
なお、本発明において、第1導電性粉末の平均粒子径が小さすぎると、他の添加粉末との分散状態が悪化する。第1導電性粉末の平均粒子径が大きくなりすぎると、印刷膜の表面粗さおよびNi粒子の充填性が悪化する傾向にある。第1導電性粉末の平均粒子径をD1、第2導電性粉末の平均粒子径をD2としたときに、D2/D1が上記の範囲から外れると、Ni粒子同士が接触しやすくなり、本発明の作用効果が少なくなる。
好ましくは、前記貴金属が、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする。
好ましくは、前記第2導電性粉末の添加量が、ペースト中の全導電性成分に対して、10wt%以上、50wt%以下であり、さらに好ましくは、20〜45wt%である。第2導電性粉末の添加量が少なすぎると、Ni粒子間に介在しない所が存在し、本発明の作用効果が小さく、添加量が多すぎると、Ni粒子の粒成長を抑制する効果は大きいが、誘電損失(tanδ)が悪化する。
好ましくは、前記導電性ペーストは、前記第1導電性粉末および前記第2導電性粉末以外に、共材粒子、バインダー、溶剤および分散剤を含有する。共材粒子は、電子部品の誘電体層を構成する誘電体粒子と同様な誘電体粒子であり、Niを主成分とする第1導電性粉末の周囲に介在し、Ni粒子の粒成長を抑制する。共材粒子が第1導電性粉末の周囲に分散することで、より効果的に、Niの粒成長を抑制することができる。
好ましくは、ペースト中の全導電性成分のうち、ニッケルの含有量が、87モル%以上で、100モル%より小さく、貴金属の含有量が0モル%より大きく13モル%以下である。貴金属の含有量が少なすぎると、本発明の作用効果が少なくなる傾向にあり、多すぎると、製造コストが増大する傾向にある。
本発明に係る電子部品は、内部電極層と誘電体層とを有する電子部品であって、前記内部電極層が、上記に記載の導電性ペーストを用いて形成される。
好ましくは、前記内部電極層の厚みが、0.7μm以下であり、さらに好ましくは、0.5μm以下である。本発明の導電性ペーストを用いることで、内部電極層の薄層化を図ることができる。
本発明において、前記誘電体層が還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成してあることが好ましい。内部電極層は、ニッケルおよびニッケルと貴金属との合金で構成されるので、同時焼成時に酸化しないように、誘電体層は、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成することが好ましい。
本発明に係る電子部品の製造方法は、上記に記載の導電性ペーストを用いて前記内部電極層を形成する工程と、
前記内部電極層を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと積層させる工程と、
前記グリーンシートと前記内部電極層との積層体を焼成する工程とを有する。
前記内部電極層と前記グリーンシートとの間には、接着層を介在させてもよい。グリーンシートおよび内部電極層を薄層化させると、通常の印刷法などによりグリーンシートの表面に内部電極層を形成することが困難になる傾向にあり、内部電極層は、転写法によりグリーンシートの表面に積層されることが好ましい。その場合において、内部電極層とグリーンシートとの接着が困難になる傾向にあり、これらは接着層により接着させることが好ましい。なお、接着層は、積層体の脱バインダ処理および/または焼成処理により除去される。
前記内部電極層を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと積層させる工程と、
前記グリーンシートと前記内部電極層との積層体を焼成する工程とを有する。
前記内部電極層と前記グリーンシートとの間には、接着層を介在させてもよい。グリーンシートおよび内部電極層を薄層化させると、通常の印刷法などによりグリーンシートの表面に内部電極層を形成することが困難になる傾向にあり、内部電極層は、転写法によりグリーンシートの表面に積層されることが好ましい。その場合において、内部電極層とグリーンシートとの接着が困難になる傾向にあり、これらは接着層により接着させることが好ましい。なお、接着層は、積層体の脱バインダ処理および/または焼成処理により除去される。
好ましくは、前記積層体を10−10〜10−2Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1000〜1300°Cの温度で焼成する。
好ましくは、前記積層体を焼成した後に、10−2〜100Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1200°C以下の温度でアニールする。上記焼成後に、特定の条件でアニールすることで、誘電体層の再酸化が図られ、誘電体層の半導体化を阻止し、高い絶縁抵抗を取得することができる。
なお、本発明で用いることのできるグリーンシートの材質および製造方法などは、特に限定されず、ドクターブレード法により成形されるセラミックグリーンシート、押出成形されたフィルムを二軸延伸して得られる多孔質のセラミックグリーンシートなどであってもよい。
また、本発明において、電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。ここにおいて、
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は、本発明の一実施形態に係る内部電極層用導電性ペーストの概略断面図、
図3(A)〜図3(C)および図4(A)〜図4(C)は、内部電極層用導電性ペースト膜の転写方法を示す要部断面図、
図5(A)は、図2に示す内部電極層用導電性ペーストを用いて形成したペースト膜の概略図、
図5(B)は、従来例に係る内部電極層用導電性ペーストを用いて形成したペースト膜の概略図、
図6は、内部電極の厚みを測定する方法および平均電極長さを測定する方法を説明するための積層セラミックコンデンサの要部断面図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は、本発明の一実施形態に係る内部電極層用導電性ペーストの概略断面図、
図3(A)〜図3(C)および図4(A)〜図4(C)は、内部電極層用導電性ペースト膜の転写方法を示す要部断面図、
図5(A)は、図2に示す内部電極層用導電性ペーストを用いて形成したペースト膜の概略図、
図5(B)は、従来例に係る内部電極層用導電性ペーストを用いて形成したペースト膜の概略図、
図6は、内部電極の厚みを測定する方法および平均電極長さを測定する方法を説明するための積層セラミックコンデンサの要部断面図である。
まず、本発明に係る電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。この誘電体層10は、好ましくは、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成してある。
各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
本実施形態では、図1に示す各内部電極層12は、ニッケルと貴金属との合金層で構成してある。内部電極層12の詳細な製造方法に関しては、後述するが、図2に示す内部電極層用導電性ペースト12aを用いて形成され、図3〜4に示すように、内部電極層用導電性ペースト膜12bをグリーンシート10aに転写して形成される。内部電極層12の厚みは、焼成による水平方向の収縮分だけ内部電極層用導電性ペースト膜12bよりも厚くなる。
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられ、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.1〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
次に、積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の粉末として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉末を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いられるが、好ましくはポリビニルブチラールなどのブチラール系樹脂が用いられる。
また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も特に限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。また、水系ペーストにおけるビヒクルは、水に水溶性バインダを溶解させたものである。水溶性バインダとしては特に限定されず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。誘電体ペースト中の各成分の含有量は特に限定されず、通常の含有量、たとえばバインダは1〜5重量%程度、溶剤(または水)は10〜50重量%程度とすればよい。
誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。ただし、これらの総含有量は、10重量%以下とすることが望ましい。バインダ樹脂として、ブチラール系樹脂を用いる場合には、可塑剤は、バインダ樹脂100重量部に対して、25〜100重量部の含有量であることが好ましい。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートが脆くなる傾向にあり、多すぎると、可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
次に、上記誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、図4(A)に示すように、第2支持シートとしてのキャリアシート30上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、グリーンシート10aを形成する。グリーンシート10aは、キャリアシート30に形成された後に乾燥される。グリーンシート10aの乾燥温度は、好ましくは50〜100°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜5分である。
次に、上記のキャリアシート30とは別に、図3(A)に示すように、第1支持シートとしてのキャリアシート20を準備し、その上に、剥離層22を形成する。次に、剥離層22の表面に、焼成後に内部電極層12を構成することになる内部電極層用導電性ペースト膜12bを所定パターンで形成する。
内部電極層用導電性ペースト膜12bは、図2に示す内部電極層用導電性ペースト12aで形成される。形成される内部電極層用導電性ペースト膜12bの厚さt1(図3参照)は、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μm程度である。なお、剥離層22の厚さt2は、内部電極層用導電性ペースト12bの厚さt1に対して、60%以下の厚さである。
内部電極層用導電性ペースト膜12bは、たとえば印刷法により形成される。印刷法としては、たとえば、スクリーン印刷などが挙げられる。印刷法の1種であるスクリーン印刷法により、剥離層22の表面に内部電極層用導電性ペースト膜12bを形成する。
内部電極層用導電性ペースト12bは、図2に示す導電性ペースト12aを印刷法により形成することができる。この導電性ペースト12aは、少なくとも、ニッケルを主成分とする第1導電性粉末42と、貴金属とニッケルとの合金を主成分とする第2導電性粉末44とを有している。
第1導電性粉末42の平均粒子径をD1とすると、D1が、50nm以上で、300nm以下である。前記第2導電性粉末44の平均粒子径をD2とした場合、D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内であり、好ましくは、0.65〜1.35の範囲内、さらに好ましくは、0.85〜1.15の範囲内、特に好ましくは、D1と、D2とが、実質的に同一である。
第1導電性粉末42の平均粒子径が小さすぎると、第2導電性粉末44が、第1導電性粉末間に介在しなくなる傾向にあり、他の添加粉末との分散状態が悪化する。逆に、第1導電性粉末の平均粒子径が大きくなりすぎると、印刷膜の表面粗さおよびNi粒子の充填性が悪化する傾向にある。第1導電性粉末の平均粒子径をD1、第2導電性粉末の平均粒子径をD2としたときに、D2/D1が上記の範囲から外れると、Ni粒子同士が接触しやすくなり、本発明の作用効果が少なくなる。
第2導電性粉末44における貴金属の含有割合は、3.2モル%以上、25モル%未満である。第2導電性粉末における貴金属の含有割合が多すぎると、焼成中に均一な合金になりにくい傾向があり、効果の大きい部分と小さい部分とが発生し、全体的には、容量が低下する傾向にある。
第2導電性粉末44における貴金属は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする金属であることが好ましい。特に好ましくはレニウム(Re)である。
第2導電性粉末44の添加量は、ペースト中の全導電性成分に対して、10wt%以上、50wt%以下であり、好ましくは、20〜45wt%である。第2導電性粉末44の添加量が少なすぎると、本発明の作用効果が小さく、添加量が多すぎると、Ni粒子の粒成長を抑制する効果は大きいが、誘電損失(tanδ)が悪化する。
第1導電性粉末42におけるニッケルの割合は、第1導電性粉末の全体を100重量%として、好ましくは99〜100重量%、さらに好ましくは99.5〜100重量%である。主成分としてのニッケルの割合が少なすぎると、焼成時に酸化され易くなり、電極途切れ、静電容量の低下、誘電体層への金属成分の拡散などの不具合が多くなる傾向にある。第1導電性粉末42における貴金属含有量は、第1導電性粉末42の全体を100モル%として、0.3モル%未満である。
第2導電性粉末44に主成分として含まれるニッケルと貴金属との合金の割合は、第2導電性粉末44の全体を100重量%として、好ましくは99〜100重量%、さらに好ましくは99.5〜100重量%である。主成分の割合が少なすぎると、焼成段階でのNi粒子の粒成長を抑制する効果が少なくなる傾向にある。第2導電性粉末44に主成分以外に含まれても良い金属成分(不純物)としては、Cu,Co,Fe,Ta,Nb,W,Zr,Au,Pdなどが例示される。
なお、第1導電性粉末42および/または第2導電性粉末44中には、S、C、P等の各種微量成分が0.1モル%程度以下で含まれていてもよい。
導電性ペースト12aは、第1導電性粉末42および第2導電性粉末44が、有機ビヒクルとともに混練されて、ペースト化される。有機ビヒクルは、上記の誘電体ペーストにおける場合と同様なものを用いることができる。本実施形態では、導電性ペースト12aには、図2に示す共材46も含まれる。共材46の粒子の平均粒径は、第1導電性粉末および第2導電性粉末より小さいことが好ましく、具体的には、0.01〜0.05μmが好ましい。
共材46は、誘電体ペーストに含まれる誘電体粒子と同様な誘電体粒子であり、Niを主成分とする第1導電体粉末42の周囲に介在され、Niの粒成長を抑制する。第2導電性粉末44が、第1導電性粉末42の周囲に均一に分散され、さらに共材46の粒子を導電性ペースト中に含ませることで、より効果的に、Niの粒成長を抑制することができる。
この導電性ペースト12aを用いて図3(A)に示すペースト膜12bを形成した後は、次に、上記のキャリアシート20および30とは別に、キャリアシート26の表面に接着層28が形成してある接着層転写用シートを準備する。キャリアシート26は、キャリアシート20および30と同様なシートで構成される。
図3(A)に示す内部電極層用導電性ペースト膜12bの表面に、接着層を形成するために、本実施形態では、転写法を採用している。すなわち、図3(B)に示すように、キャリアシート26の接着層28を、内部電極層用導電性ペースト膜12bの表面に押し付け、加熱加圧して、その後キャリアシート26を剥がすことにより、図3(C)に示すように、接着層28を、内部電極層用導電性ペースト膜12bの表面に転写する。
その時の加熱温度は、40〜100°Cが好ましく、また、加圧力は、0.2〜15MPaが好ましい。加圧は、プレスによる加圧でも、カレンダロールによる加圧でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。
その後に、内部電極層用導電性ペースト膜12bを、図4(A)に示すキャリアシート30の表面に形成してあるグリーンシート10aの表面に接着する。そのために、図4(B)に示すように、キャリアシート20の内部電極層用導電性ペースト膜12bを、接着層28を介して、グリーンシート10aの表面にキャリアシート20と共に押し付け、加熱加圧して、図4(C)に示すように、内部電極層用導電性ペースト膜12bを、グリーンシート10aの表面に転写する。ただし、グリーンシート側のキャリアシート30が引き剥がされることから、グリーンシート10a側から見れば、グリーンシート10aが内部電極層用導電性ペースト膜12bに接着層28を介して転写される。
この転写時の加熱および加圧は、プレスによる加圧・加熱でも、カレンダロールによる加圧・加熱でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。その加熱温度および加圧力は、接着層28を転写するときと同様である。
このような図3(A)〜図4(C)に示す工程により、単一のグリーンシート10a上に、所定パターンの内部電極層用導電性ペースト膜12bが形成される。これを用いて、内部電極層用導電性ペースト膜12bおよびグリーンシート10aが交互に多数積層された積層体を得る。
その後、この積層体を最終加圧した後、キャリアシート20を引き剥がす。最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaである。また、加熱温度は、40〜100°Cが好ましい。
その後に、積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成する。そして、グリーンチップを脱バインダ処理および焼成する。
本発明のように内部電極層を形成するための導電性粉末に、卑金属としてのNiを用いる場合、脱バインダ処理における雰囲気は、AirまたはN2 雰囲気にすることが好ましい。また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300°C/時間、より好ましくは10〜50°C/時間、保持温度を好ましくは200〜400°C、より好ましくは250〜350°C、温度保持時間を好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは1〜10時間とする。
本発明では、グリーンチップを、10−10 〜10−2Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で焼成する。酸素分圧は、好ましくは10−10〜10−5Paである。焼成時の酸素分圧が低すぎると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがあり、逆に酸素分圧が高すぎると、内部電極層が酸化する傾向がある。
本発明では、グリーンチップの焼成を、1000〜1300°Cの温度、好ましくは1150〜1250°Cの温度で行う。焼成温度が低すぎると、焼結後の誘電体層の緻密化が不十分となり、静電容量が不足する傾向にあり、また、高すぎると、誘電体層が過焼成となり、直流電界印加時の容量経時変化が大きくなる傾向にある。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500°C/時間、より好ましくは200〜300°C/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500°C/時間、より好ましくは200〜300°C/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、N2 とH2 との混合ガスをウェット(加湿)状態で用いることが好ましい。
本発明では、焼成後のコンデンサチップ体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗(IR)の加速寿命を著しく長くすることができ、信頼性が向上する。
本発明では、焼成後コンデンサチップ体のアニールを、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧下で行うことが好ましく、具体的には、酸素分圧が好ましくは10−2〜100Pa、より好ましくは10−2〜10Paの雰囲気で行う。アニール時の酸素分圧が低すぎると、誘電体層2の再酸化が困難であり、逆に高すぎると、内部電極層のニッケルが酸化して絶縁化する傾向にある。
本発明では、アニール時の保持温度または最高温度を、好ましくは1200°C以下の温度、より好ましくは900〜1150°C、さらに好ましくは、1000〜1100°Cとする。また、本発明では、これらの温度の保持時間を、好ましくは0.5〜4時間とする。アニール時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では誘電体材料の酸化が不十分なために絶縁抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、冷却速度を好ましくは50〜500°C/時間、より好ましくは100〜300°C/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したN2 ガス等を用いることが好ましい。
なお、N2 ガスを加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75°C程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行っても、独立に行ってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、アニールの保持温度に達したときに雰囲気を変更してアニールを行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処理時の保持温度までN2 ガスあるいは加湿したN2 ガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、アニール時の保持温度まで冷却した後は、再びN2 ガスあるいは加湿したN2 ガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、アニールに際しては、N2 ガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、アニールの全過程を加湿したN2 ガス雰囲気としてもよい。
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、例えばバレル研磨、サンドブラスト等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。端子電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したN2 とH2 との混合ガス中で600〜800°Cにて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した電極ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
本実施形態では、静電容量の低下が効果的に抑制された積層セラミックコンデンサ2を提供することができる。その理由は、たとえば次のようにして説明することができる。
図5(A)に示すように、本実施形態では、導電性ペースト膜12bの内部において、第1導電性粉末42と、第2導電性粉末44とが、ほぼ同一の粒子径および粒度分布を持ち均一に分散することになる。
したがって、図5(A)において、左側に比較的に大きな粒径の第1導電性粉末42が偏り、逆に右側には、比較的に小さな粒径の第1導電性粉末42が偏ったとしても、第2導電性粉末44は、第1導電性粉末42の周囲に均一に分散する。
第2導電性粉末44は、Niを主成分とする第1導電性粉末(Ni粒子)と交互に並び、Ni粒子同士の焼結を遅らせる働きがあり、焼結開始温度を上昇させる。また、第2導電性粉末44に含まれる貴金属は、Niよりも融点が高く、誘電体層との濡れ性および密着性に優れている。したがって、本実施形態の導電性ペースト膜12bでは、内部電極層12が薄層化されたとしても、さらには、Niを主成分とする第1導電性粉末42の粒度分布にバラツキがあったとしても、内部電極層の全体にわたり、均一に、ニッケルと貴金属との組成比率を変化させずに、焼成段階でのNiの粒成長を抑制し、球状化、電極途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、ペースト膜12b中に、共材46の粒子を導電性ペースト中に含ませることで、共材46の粒子が、Niを主成分とする第1導電体粉末42の周囲に分散し、より効果的に、Niの粒成長を抑制することができる。
なお、図5(B)に示すように、前述した特許文献1に記載の貴金属被覆Ni粒子48は、コアとなるNi粒子の粒度バラツキが大きいと組成比率が異なり、ペースト膜12cの箇所によって、貴金属がリッチな箇所と、貴金属がプアな箇所が生じる。このため、ペースト膜12c中に、球状化・電極途切れ防止に効果が大きい部分と効果の小さい部分が発生してしまう。
また、貴金属被覆Ni粒子48を作製するにあたり、溶液を低濃度に管理するなどの制約があり一度に多量の粒子を作製できず、またプロセスが長く、安価に作製できないというデメリットがある。
これに対して、本実施形態の導電性ペースト膜12bでは、Niを主成分とする第1導電性粉末42と、ニッケルと貴金属との合金である第2導電性粉末44とをペースト中に含ませるのみで導電性ペーストを作成することができる。しかも、ペースト中では、これらの粉末が非合金形態であっても、1000°C以上の焼成過程で、ニッケルと貴金属との組成比率を変化させずに、第2導電性粉末44が、Niの粒成長を抑制しつつ、Ni粒子と合金化する。したがって、本実施形態では、貴金属被覆Ni粒子48を含む従来のペーストに比較し、同等以上の性能を有し、しかも製造プロセスが短く、安価に製造することができる導電性ペーストを提供することができる。
また、所望の組成比の貴金属とNiとの合金粒子のみを含む従来の導電性ペーストに比較して、本実施形態の導電性ペーストは、次に示す作用効果を有する。すなわち、本実施形態では、Niを主成分とする第1導電性粉末42およびニッケルと貴金属との合金である第2導電性粉末44を混合して用いているため、焼結開始温度を遅らせることができる。これに対して、合金粉のみの場合も、焼結開始温度を上げることができるが、本発明よりも焼結開始温度が低く、その結果、被覆率およびVB値は小さい。また、内部電極層全体に渡り、第1導電性粉末と第2導電性粉末とが均一に分散され、焼成時には、ニッケルと貴金属との組成比率が変化せずに、第1導電性粉末と第2導電性粉末とが交互に並ぶことで、Niの粒成長を抑制する。その結果、電極被覆率およびVB値が向上する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の電子部品に適用することが可能である。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
導電性ペーストの作製
実施例1
導電性ペーストの作製
まず、平均粒子径200nmのNi粉末と、平均粒子径200nmのNi/Pt合金粉末との混合粉末を準備した。Ni粉末の平均粒子径をD1とし、Ni/Pt合金粉末の平均粒子径をD2とすると、D2/D1は、1である。混合粉末に対するNi/Pt合金粉末の添加量は、35wt%であった。また、Ni/Pt合金粉末におけるPt含有量は、15モル%であった。
この混合粉末100重量部に対して、共材粒子としての平均粒径0.05μmのBaTiO3 粉末(BT−005/堺化学工業(株))を20重量部加え、さらに有機ビヒクル(バインダー樹脂としてエチルセルロース樹脂4.5重量部をターピネオール228重量部に溶解したもの)を加え、3本ロールにより混練し、スラリー化して、内部電極形成用の導電性ペーストとした。ペースト中の全導電性成分に対するPt量は、1.3モル%であった。
誘電体層用ペーストの作製
誘電体層用ペーストの作製
BaTiO3 粉末(BT−02/堺化学工業(株))と、MgCO3 、MnCO3 、(Ba0.6Ca0.4)SiO3および希土類(Gd2 O3 、Tb4 O7 、Dy2 O3 、Ho2 O3 、Er2 O3 、Tm2 O3 、Yb2 O3 、Lu2 O3 、Y2 O3 )から選択された粉末とを、ボールミルにより16時間、湿式混合し、乾燥させることにより誘電体材料とした。これら原料粉末の平均粒径は0.1〜1μmであった。(Ba0.6Ca0.4)SiO3は、BaCO3、CaCO3およびSiO2をボールミルにより湿式混合し、乾燥後に空気中で焼成したものを、ボールミルにより湿式粉砕して作製した。
得られた誘電体材料をペースト化するために、有機ビヒクルを誘電体材料に加え、ボールミルで混合し、誘電体グリーンシート用ペーストを得た。有機ビヒクルは、誘電体材料100質量部に対して、バインダとしてポリビニルブチラール:6質量部、可塑剤としてフタル酸ビス(2エチルヘキシル)(DOP):3質量部、酢酸エチル:55質量部、トルエン:10質量部、剥離剤としてパラフィン:0.5質量部の配合比である。
次に、前記の誘電体グリーンシート用ペーストをエタノール/トルエン(55/10)によって重量比で2倍に希釈したものを剥離層用ペーストとした。
次に、誘電体粒子および剥離剤を入れない以外は同様な前記の誘電体グリーンシート用ペーストを、トルエンによって重量比で4倍に希釈したものを接着層用ペーストとした。
グリーンシートの形成
グリーンシートの形成
まず、上記の誘電体グリーンシート用ペーストを用いて、PETフィルム(第2支持シート)上に、ワイヤーバーコーターを用いて、厚み1.0μmのグリーンシートを形成した。
内部電極層用導電性ペースト膜の形成
内部電極層用導電性ペースト膜の形成
上記の剥離層用ペーストを、別のPETフィルム(第1支持シート)上に、ワイヤーバーコーターにより塗布乾燥させて、厚み0.3μmの剥離層を形成した。
上記の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷により、図4に示すように、剥離層の表面に、所定パターンの内部電極層用導電性ペースト膜12bを形成した。この膜12bの乾燥後の厚さは、0.5μmであった。なお、調製した導電性ペーストを用いてスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。
接着層の形成
接着層の形成
上記の接着層用ペーストを、別の、表面にシリコーン系樹脂による剥離処理を施したPETフィルム(第3支持シート)の上に、ワイヤーバーコーターにより塗布乾燥させて、厚み0.2μmの接着層28を形成した。
最終積層体(焼成前素子本体)の形成
最終積層体(焼成前素子本体)の形成
まず、内部電極層用導電性ペースト膜12bの表面に、図4に示す方法で接着層28を転写した。転写時には、一対のロールを用い、その加圧力は0.1MPa、温度は80°Cとした。
次に、図5に示す方法で、接着層28を介してグリーンシート10aの表面に内部電極層用導電性ペースト膜12bを接着(転写)した。転写時には、一対のロールを用い、その加圧力は0.1MPa、温度は80°Cとした。
次に、内部電極層用導電性ペースト膜12bおよびグリーンシート10aを次々に積層し、最終的に、21層の内部電極層用導電性ペースト膜12bが積層された最終積層体を得た。積層条件は、加圧力は50MPa、温度は120°Cとした。
焼結体の作製
焼結体の作製
次いで、最終積層体を所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)を行って、チップ形状の焼結体を作製した。
脱バインダは、
昇温速度:5〜300°C/時間
保持温度:200〜400°C、
保持時間:0.5〜20時間、
雰囲気ガス:加湿したN2 とH2 の混合ガス、
で行った。
昇温速度:5〜300°C/時間
保持温度:200〜400°C、
保持時間:0.5〜20時間、
雰囲気ガス:加湿したN2 とH2 の混合ガス、
で行った。
焼成は、
昇温速度:5〜500°C/時間
保持温度:1200°C、
保持時間:0.5〜8時間
冷却速度:50〜500°C/時間
雰囲気ガス:加湿したN2 とH2 の混合ガス、
酸素分圧:10−7Pa、
で行った。
昇温速度:5〜500°C/時間
保持温度:1200°C、
保持時間:0.5〜8時間
冷却速度:50〜500°C/時間
雰囲気ガス:加湿したN2 とH2 の混合ガス、
酸素分圧:10−7Pa、
で行った。
アニール(再酸化)は、
昇温速度:200〜300°C/時間、
保持温度:1050°C、
保持時間:2時間、
冷却速度:300°C/時間、
雰囲気ガス:加湿したN2 ガス、
酸素分圧:10−1Pa、
で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0〜75°Cにて行った。
昇温速度:200〜300°C/時間、
保持温度:1050°C、
保持時間:2時間、
冷却速度:300°C/時間、
雰囲気ガス:加湿したN2 ガス、
酸素分圧:10−1Pa、
で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0〜75°Cにて行った。
次いで、チップ形状の焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを端面に転写し、加湿したN2 +H2 雰囲気中において、800°Cにて10分間焼成して外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。
このようにして得られた各サンプルのサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は21、その厚さは1μmであり、内部電極層12の厚さは0.5μmであった。
また、各サンプルについて、特性評価として電極被覆率の測定を行った。
電極被覆率は、積層セラミックコンデンサのサンプルを電極表面が露出するように切断し、その電極面をSEM観察し、画像処理することにより測定した。電極被覆率は、70%以上を良好とした。
さらに、各サンプルについて電気特性(静電容量C、誘電損失tanδ)の特性評価を行った。電気特性(静電容量C、誘電損失tanδ)は、次のようにして評価した。
静電容量C(単位はμF)は、サンプルに対し、基準温度25°CでデジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で測定した。静電容量Cは、好ましくは0.9μF以上を良好とした。
誘電損失tanδ(単位は%)は、25°Cにおいて、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で測定した。誘電損失tanδは、好ましくは0.1未満を良好とした。
なお、これらの特性値は、サンプル数n=10個を用いて測定した値の平均値から求めた。これらの結果を表1に示す。なお、表1において、評価基準の欄の「○」は、スクリーン印刷が可能で、積層セラミックコンデンサのサンプルを得ることができたもののうち、上記の全ての特性において良好な結果を示したものを示している。「×」は、スクリーン印刷が不可能で積層セラミックコンデンサが作製できなかったもの、または、上記特性の内の1つでも良好な結果が得られなかったものを示す。
実施例2〜6
実施例2〜6
Ni粉末の平均粒子径、Ni/Pt合金粉末の平均粒子径およびNi/Pt合金粉末におけるPtの含有量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、コンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表1に示す。
参考例1
参考例1
貴金属被覆Ni粒子48は、特許文献1の実施例3に記載の方法と同様にして作製した。すなわち、被覆されるNi粉末を、塩化第2白金溶液中(PtCl4 ・5H2O)に浸し、これを環流器付きの容器内で加熱乾燥させ、N2中または真空中で熱処理(100〜400°C)した。その結果、Pt膜がNi粉に対して析出し、Pt膜で被膜されたNi粉から成る貴金属被覆Ni粒子48を製造することができた。被覆されるNi粉末の平均粒径は、200nmであった。
得られた貴金属被覆Ni粒子に、実施例1と同様にして、共材および有機ビヒクルを添加して、内部電極形成用の導電性ペーストとした。この導電性ペーストを用いて、実施例1と同様にして、コンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜5
比較例1〜5
Ni粉末の平均粒子径、Ni/Pt合金粉末の平均粒子径およびNi/Pt合金粉末におけるPtの含有量をおよびNi/Pt合金粉末の添加量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、コンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜6については、すべてスクリーン印刷が可能であり、電極厚み、電極被覆率、静電容量およびtanδが良好であった。また、参考例1は、実施例と同程度の特性であった。
これに対し、第1導電性粉末の平均粒子径(D1)および第2導電性粉末の平均粒子径(D2)の比D2/D1が、本発明の範囲よりも小さい場合(比較例1)には、導電性ペーストの分散が悪く、電極被覆率が悪化した。その結果、内部電極に途切れが見られ、静電容量が低下した。D2/D1が、本発明の範囲よりも大きい場合(比較例2)には、第2導電性粉末が、第1導電性粉末(Ni粒子)の間に介在できないため、電極被覆率が悪化し、静電容量が低下した。D1およびD2が小さい場合(比較例3)には、導電性ペーストが増粘し、スクリーン印刷が不可能となり、大きい場合(比較例4)には、ペースト膜の表面性および充填性が悪化し、特性を満足しない。第2導電性粉末のPt量が多い場合(比較例5)には、均一な合金組成とならず、電極の場所により効果が大きい部分と小さい部分とが生じ、結果として、静電容量が低下した。
実施例11〜16
実施例11〜16
貴金属として、Ptの代わりにReを用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表2に示す。
参考例11
参考例11
貴金属として、Ptの代わりにReを用いた以外は、参考例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表2に示す。
比較例11〜15
比較例11〜15
貴金属として、Ptの代わりにReを用い、Ni粉末の平均粒子径、Ni/Re合金粉末の平均粒子径、Ni/Re合金粉末におけるReの含有量およびNi/Re合金粉末の添加量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表2に示す。
実施例21〜26
実施例21〜26
貴金属として、Ptの代わりにRuを用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表3に示す。
参考例21
参考例21
貴金属として、Ptの代わりにRuを用いた以外は、参考例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表3に示す。
比較例21〜25
比較例21〜25
貴金属として、Ptの代わりにRuを用い、Ni粉末の平均粒子径、Ni/Ru合金粉末の平均粒子径、Ni/Ru合金粉末におけるRuの含有量およびNi/Ru合金粉末の添加量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表3に示す。
実施例31〜36
実施例31〜36
貴金属として、Ptの代わりにRhを用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表4に示す。
参考例31
参考例31
貴金属として、Ptの代わりにRhを用いた以外は、参考例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表4に示す。
比較例31〜35
比較例31〜35
貴金属として、Ptの代わりにRhを用い、Ni粉末の平均粒子径、Ni/Rh合金粉末の平均粒子径、Ni/Rh合金粉末におけるRhの含有量およびNi/Rh合金粉末の添加量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表4に示す。
実施例41〜46
実施例41〜46
貴金属として、Ptの代わりにOsを用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表5に示す。
参考例41
参考例41
貴金属として、Ptの代わりにOsを用いた以外は、参考例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表5に示す。
比較例41〜45
比較例41〜45
貴金属として、Ptの代わりにOsを用い、Ni粉末の平均粒子径、Ni/Os合金粉末の平均粒子径、Ni/Os合金粉末におけるOsの含有量およびNi/Os合金粉末の添加量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表5に示す。
実施例51〜56
実施例51〜56
貴金属として、Ptの代わりにIrを用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表6に示す。
参考例51
参考例51
貴金属として、Ptの代わりにIrを用いた以外は、参考例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表6に示す。
比較例51〜55
比較例51〜55
貴金属として、Ptの代わりにIrを用い、Ni粉末の平均粒子径、Ni/Ir合金粉末の平均粒子径、Ni/Ir合金粉末におけるIrの含有量およびNi/Ir合金粉末の添加量を、それぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表6に示す。
表2〜6についても、表1と同様の結果が得られ、本発明の有効性が確認された。
実施例61〜66
実施例61〜66
ペースト中の全導電性成分に対する貴金属量(mol%)を表7に示す値とし、実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、電極被覆率、電極厚みのバラツキ、平均電極長さ、破壊電圧(VB)、破壊電圧(VB)のバラツキおよび直流等価抵抗(ESR)について評価を行った。電極厚みのバラツキ、平均電極長さ、破壊電圧(VB)、破壊電圧(VB)のバラツキおよび直流等価抵抗(ESR)は、次のようにして評価した。
電極厚みのバラツキ(単位はμm)は、積層セラミックコンデンサのサンプルを電極断面が露出するように内部電極層12に対し垂直に切断し、その断面をSEM観察して測定した。具体的には、図6に示すように、電極面のSEM写真において、内部電極層12に垂直な方向(図6においては上下方向)に線を引き、各電極の厚みを測定し、平均値を求める。これを、コンデンササンプル100個に対して行い、電極厚みの平均値の標準偏差σを算出し、σを電極厚みのバラツキとした。
電極厚みのバラツキが小さいほど、破壊電圧(VB)のバラツキが小さくなる傾向にある。したがって、電極厚みのバラツキは小さいほど好ましく、0.06μm以下を良好とした。
平均電極長さ(単位はμm)は、積層セラミックコンデンサのサンプルを電極断面が露出するように内部電極層12に対し垂直に切断し、その断面をSEM観察し、画像処理を行うことで測定した。具体的には、まず、図6に示すように、画像処理により、内部電極が連続している部分と途切れている部分とを判別する。次に、内部電極層12に平行な方向(図6においては左右方向)に対して、内部電極が連続している部分の端から端までの長さを測定し、平均値を求める。これを、コンデンササンプル100個に対して行い、平均電極長さとした。
電極被覆率が同じであっても、平均電極長さが長いほど、破壊電圧(VB)のバラツキが小さくなる傾向にある。したがって、平均電極長さは長いほど好ましく、5.3μm以上を良好とした。
破壊電圧VB(単位はV)は、昇圧スピード100V/sec、検出電流10mA時の電圧値をVBとした。破壊電圧は、好ましくは、70V以上を良好とした。結果を表7に示す。
破壊電圧(VB)のバラツキ(単位はV)は、破壊電圧値の測定を、コンデンササンプル100個に対して行い、破壊電圧値の標準偏差σを算出し、σを破壊電圧値のバラツキとすることで求めた。
破壊電圧のバラツキが小さいほど、コンデンサを高寿命化できる傾向にある。したがって、破壊電圧のバラツキは小さいほど好ましく、5V以下を良好とした。
直流等価抵抗ESR(単位はmΩ)は、インピーダンスアナライザー(HP社製4194A)にて、測定電圧1Vrmsの条件下で、周波数−ESR特性を測定し、インピーダンスが最小となる値を読み取ることにより測定した。直流等価抵抗は、好ましくは、20mΩ以下を良好とした。結果を表7に示す。
参考例61〜66
参考例61〜66
ペースト中の全導電性成分に対する貴金属の含有量(mol%)を表7に示す値とし、参考例1と同様にして、貴金属被覆Ni粒子を作製した。得られた貴金属被覆Ni粒子を用いて、参考例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、電極被覆率、電極厚みのバラツキ、平均電極長さ、破壊電圧(VB)、破壊電圧(VB)のバラツキおよび直流等価抵抗(ESR)について評価を行った。結果を表7に示す。
表7より、ペースト中の全導電性成分に対する貴金属の含有量が参考例と同程度であるにもかかわらず、実施例は、参考例よりも電極被覆率が高く、しかも、電極厚みのバラツキが小さく、平均電極長さが長いことが確認できる。その結果、破壊電圧および直流等価抵抗についても、参考例よりも良好であることが確認できた。
中でも、貴金属としてReを用いた場合に最も良好な特性を示していることが確認できた。
表1〜7より、本発明に係る導電性ペーストは、内部電極層を薄層化した場合であっても、Niの粒成長を抑制し、球状化、電極途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制できることが確認できた。また、貴金属被覆Ni粒子を含む導電性ペーストと、同等以上の性能を有しており、さらに製造プロセスが短く、貴金属の使用量が少ないため、安価に製造することができる。
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
4a… 第1端部
4b… 第2端部
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 導電性ペースト
12b… 導電性ペースト膜
20… キャリアシート
22… 剥離層
26… キャリアシート
28… 接着層
30… キャリアシート
42… 第1導電性粉末
44… 第2導電性粉末
46… 共材
48… 貴金属被覆Ni粒子
4… コンデンサ素体
4a… 第1端部
4b… 第2端部
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 導電性ペースト
12b… 導電性ペースト膜
20… キャリアシート
22… 剥離層
26… キャリアシート
28… 接着層
30… キャリアシート
42… 第1導電性粉末
44… 第2導電性粉末
46… 共材
48… 貴金属被覆Ni粒子
Claims (12)
- 少なくとも、ニッケルを主成分とする第1導電性粉末と、
貴金属とニッケルとの合金を主成分とする第2導電性粉末と、
を有する導電性ペーストであり、
前記第1導電性粉末の平均粒子径をD1、前記第2導電性粉末の平均粒子径をD2とした場合、D1が50nm以上で、300nm以下であり、
D2/D1が、0.5〜1.5(ただし、0.5および1.5を除く)の範囲内であり、
第2導電性粉末における前記貴金属の含有割合が、3.2モル%以上で、25モル%未満であることを特徴とする導電性ペースト。 - 前記第1導電性粉末の平均粒子径D1と、前記第2導電性粉末の平均粒子径D2とが、実質的に同一である請求項1に記載の導電性ペースト。
- 前記貴金属が、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする金属である請求項1または2に記載の導電性ペースト。
- 前記第2導電性粉末の添加量が、ペースト中の全導電性成分に対して、10wt%以上であり、50wt%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 前記第1導電性粉末および前記第2導電性粉末以外に、共材粒子、バインダー、溶剤および分散剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。
- ペースト中の全導電性成分のうち、ニッケルの含有量が、87モル%以上で、100モル%より小さく、貴金属の含有量が0モル%より大きく13モル%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペースト。
- 内部電極層と誘電体層とを有する電子部品であって、
前記内部電極層が、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成された電子部品。 - 前記内部電極層の厚みが、1.0μm以下である請求項7に記載の電子部品。
- 内部電極層と誘電体層とを有する電子部品を製造する方法であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて前記内部電極層を形成する工程と、
前記内部電極層を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと積層させる工程と、
前記グリーンシートと前記内部電極層との積層体を焼成する工程とを有する
電子部品の製造方法。 - 前記積層体を、10−10 〜10−2Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1000℃以上、1300℃未満の温度で焼成する請求項9に記載の電子部品の製造方法。
- 前記積層体を焼成した後に、10−2〜100Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1200℃以下の温度でアニールする請求項9または10に記載の電子部品の製造方法。
- 内部電極層と誘電体層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサを製造する方法であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて前記内部電極層を形成する工程と、
前記内部電極層を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと交互に積層させる工程と、
前記グリーンシートと前記内部電極層との積層体を焼成する工程とを有する
積層セラミックコンデンサの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007021837A JP2007242599A (ja) | 2006-02-09 | 2007-01-31 | 導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 |
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JP2006032788 | 2006-02-09 | ||
JP2007021837A JP2007242599A (ja) | 2006-02-09 | 2007-01-31 | 導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 |
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ID=38587910
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JP2007021837A Withdrawn JP2007242599A (ja) | 2006-02-09 | 2007-01-31 | 導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011218268A (ja) * | 2010-04-07 | 2011-11-04 | Murata Mfg Co Ltd | 塗膜形成方法および電子部品 |
CN112242246A (zh) * | 2019-07-17 | 2021-01-19 | 株式会社村田制作所 | 电子部件 |
-
2007
- 2007-01-31 JP JP2007021837A patent/JP2007242599A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
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