JP2007239241A - 弾塑性ダンパ - Google Patents

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Takehiko Kato
武彦 加藤
Kenji Yoshimatsu
賢二 吉松
Hisayoshi Ishibashi
久義 石橋
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Abstract

【課題】製造が容易である、座屈を防止し得る弾塑性ダンパを提供すること。
【解決手段】建物(10)の制震のために用いられる弾塑性ダンパ(12)であって、建物への取付に供される上端部(22)及び下端部(24)を有する金属製の板状体(20)からなる。板状体(20)は、その上下両端部の一方から他方に向けて上下に伸びる少なくとも1つの窪み(26)を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、建物に地震動が作用した場合における建物の応答加速度や応答変位を低減し、これにより建物の損傷を防止するために用いられる制震ダンパの一つである弾塑性ダンパに関する。
従来、弾塑性ダンパとして鋼製の板状体からなるものが提案されている。これによれば、前記弾塑性ダンパによる耐震補強をされた建物に地震動が作用するとき、前記板状体が水平方向に剪断変形し、地震エネルギを吸収する。
ところで、前記弾塑性ダンパにあっては、剪断変形時に生じる板状体の面外への撓み現象である座屈現象による急激な耐力低下ために地震エネルギの吸収能力が減殺されることから、これを防止するため、前記鋼板の表面に縦リブを取り付けることが提案されている(後記特許文献1参照)。
しかし、前記鋼板への縦リブの取り付けは溶接によって行われるところ、前記縦リブの溶接に当たっては、前記鋼板の弾塑性ダンパとしての変形能力の発揮を損なうこととなる前記鋼板の脆性化、前記溶接の開始点及び終了点の欠陥等が生じないように、細心の注意と慎重な温度管理とが求められる。このため、前記弾塑性ダンパの製造には多大の時間、労力及び費用を要し、また前記縦リブを有する弾塑性ダンパは大量生産に適さなかった。
特開2003−321945号公報
したがって、本発明の目的は、製造が容易である、座屈を防止し得る弾塑性ダンパを提供することにある。
本発明は、建物の制震のために用いられる弾塑性ダンパに係り、前記建物への取付に供される上端部及び下端部を有する金属製の板状体からなる。前記板状体は、その上下両端部の一方から他方に向けて上下に伸びる少なくとも1つの窪みを有する。
前記窪みは、前記上下両端部の一方から他方まで伸びるものとすることができる。前記板状体は、例えば、その窪みを横切る横断面の形状が波形を呈するものとすることができる。
また、前記窪みは、前記上下両端部の一方及び他方間を伸びるものとすることができる。さらに、前記上下両端部は、それぞれ、これらを貫通する複数のボルト穴を有し、あるいはこれらに設けられた複数の凹所を有し、あるいはこれらに設けられた複数のアンカー部材を有するものとすることができる。
本発明によれば、金属製の板状体を上下に伸びる窪みは前記板状体に高い曲げ剛性を付与する。また、前記窪みは例えば板状体のプレス加工により例えば前記板状体を波形の断面形状を有するように成型することによって付与することができ、これには前記従来における縦リブの溶接において不可避であった前記板状体への熱的影響及びこれに伴う前記板状体の材質変化、亀裂の発生等を回避することができる。このため、弾塑性ダンパとしての前記板状体が水平方向に剪断変形をするときの座屈及びこれに伴う急激な耐力低下の発生を効果的に防止することができ、前記板状体は、その降伏後、安定した履歴特性を発揮し、地震エネルギを効果的に吸収する。また、前記窪みを有する板状体は前記プレス加工により容易にまた短時間で製造することができる。したがって、また、本発明に係る弾塑性ダンパは大量生産に適する。
前記窪みは、前記板状体をその上端部からその下端部に至るまで伸びるものとし、あるいは前記上下両端部の間を伸びるものとすると共に前記上下両端部にそれぞれ前記板状体を建物の上下の梁に固定するために利用されるボルト穴や複数の凹所を設け、又は複数のアンカー部材を取り付けることができる。
図1を参照すると、鉄筋コンクリート造の建物10に適用された本発明に係る弾塑性ダンパが全体に符号12で示されている。
弾塑性ダンパ12は、建物10の上下の梁14,16に、これらの梁から下方及び上方へそれぞれ伸びる鉄筋コンクリート製の上下のブラケット18を介して取り付けられている。
図2に示すように、弾塑性ダンパ12は金属製の板状体20からなり、その上端部22及びその下端部24においてそれぞれ両ブラケット18に埋め込まれている。好ましくは、両端部22,24にこれらの上方及び下方にそれぞれ伸びる複数のアンカー部材(図示せず)が設けられる。
弾塑性ダンパ12は、前記鉄筋コンクリート造の建物に限らず、鉄骨造の建物(図5参照)、鉄筋鉄骨造の建物(図示せず)あるいは木造の建物(図示せず)に適用することができる。また、弾塑性ダンパ12は新築の建物及び既存の建物のいずれにも適用することができる。
図2に示すように、弾塑性ダンパ12を構成する板状体20は、その上下両端部22,24の一方からその他方に向けて上下に伸びる複数の窪み26を有する。
窪み26を有する板状体20は、矩形の平面形状を有する金属板にプレス加工を施すこと、すなわち前記金属板に折り曲げ加工を施すことにより形成することができる。図示の例では、板状体20はその両面にそれぞれ窪み(凹条)26と該凹条に対応する凸条27とが現れる波形の横断面形状を有する(図3参照)。前記板状体の形成は、前記金属板のプレス加工による他、例えば比較的厚さの厚い金属板の一部を削り取ってその片面又は両面に少なくとも1つの窪みを形成することにより、行うことができる。
このような窪み26を設けることにより、板状体20に高い曲げ剛性を与えることができ、これにより、建物10に取り付けられた板状体20が地震動により水平方向への剪断力を受けて変形(剪断変形)するときの座屈及びこれに伴う急激な耐力低下の発生を効果的に防止することができる。剪断変形をする板状体20は、これが降伏した後、安定した履歴特性を発揮し、地震エネルギを効果的に吸収する。
板状体20は前記プレス加工のような成型技術を用いることにより容易にまた短時間で大量に製造することができる。
窪み26は少なくとも1つあればよく、また窪み26の数量は任意に定めることができる。複数の窪み26は、窪み26に対して直交する横方向(図1において左右方向)に等しい間隔をおいて、板状体20上に均等に配置されていることが望ましい。しかし、不等間隔であるいは不均等に配置することは妨げられない。
図示の例では、各窪み26は、比較的細長くかつその長さ方向に関して幅寸法が変化しない同一のものとされているが、これに限らず、幅寸法がより大きい若しくはより小さいもの、又は前記長さ方向に関して幅寸法が変化するものとすることができる。
また、図示の例では、各窪み26を横切る横断面形状がほぼ半円形からなるが、他の横断面形状(例えば矩形)に定めることができる。各窪み26の深さ寸法については任意に定めることができる。
さらに、各窪み26が板状体20の両端部22,24の一方から他方へ連続して伸びる図示の例に代えて、各窪みが一直線上を断続して伸びる複数の窪み部分からなるものとすることができる。
板状体20は、吸収すべき地震エネルギの設定量に合わせて、これを構成する材料として、普通鋼、高強度鋼、低降伏点鋼、極低降伏点鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等から任意に選択し、また板状体20の大きさ、厚さ寸法等を定めることができる。特に前記低降伏点鋼又は極低降伏点鋼からなる板状体20は、比較的小さい剪断力を受けてその変形を開始することから、前記鉄筋コンクリート造の建物の制震に適する。
前記したところでは、窪み26が板状体20の上下両端部22,24及び該両端部間の中間部28の全てにわたって上下に伸びる例を示したが、これに代えて、図4に示すように、板状体20の上下両端部22,24間の中間部28のみを上下に伸びるものとすることができる。中間部28は、地震の際、剪断変形をして地震エネルギの吸収機能を発揮する。
窪み26が形成されない上下両端部22,24には、それぞれ、窪み26に対して直交する方向である前記横方向(図4において左右方向)に伸びる長円形状の複数の凹所30が設けられている。これらの凹所30は、プレス加工により窪み26と共にこれらと同時に形成することができる。凹所30は、これを長円形状とする図示の例に代えて、例えば円形とすることができる。
これらの凹所30は、弾塑性ダンパ10の設置のために鉄筋コンクリート製の両ブラケット18にそれぞれ埋設される上下両端部22,24の定着性を高めることに寄与する。これによれば、両端部22,24へのアンカー部材(図示せず)の溶接による取り付けを不要とし、また前記溶接に伴う加熱による板状体20の性質変化の可能性を排除することができる。
図5に示すように、弾塑性ダンパ10の板状体12における、窪み26が形成されない上下両端部22,24には、それぞれ、前記横方向に互いに間隔をおいて複数のボルト穴32を設けることができる。
ボルト穴32は、例えば鉄骨造の建物に弾塑性ダンパ10、すなわち板状体12を取り付ける際の取付穴として用いることができる。より詳細には、前記建物の上下の梁に設けられ該梁から下方及び上方へそれぞれ伸びる一対の鉄骨製のブラケット(図示せず)に、各ボルト穴32に通されるボルト及びこれに螺合されるナットの組立体(図示せず)を介して、板状体12をその上下両端部22,24を固定することができる。この例によれば、地震後、前記ボルト及びナットの組立体を取り外すことにより、変形後の板状体12を新たな板状体に容易に交換することができる。
鉄筋コンクリート製の建物に適用された本発明に係る弾塑性ダンパの一例の部分的な正面図である。 弾塑性ダンパの他の一例の正面図である。 図2の線3−3に沿って得た横断面図である。 弾塑性ダンパのさらに他の一例の正面図である。 弾塑性ダンパのさらに他の一例の正面図である。
符号の説明
10 建物
12 弾塑性ダンパ
20 板状体
22,24,28 板状体の上端部、下端部及び中間部
26 窪み
30 凹所
32 ボルト穴

Claims (7)

  1. 建物の制震のために用いられる弾塑性ダンパであって、
    前記建物への取付に供される上端部及び下端部を有する金属製の板状体からなり、
    前記板状体の上下両端部の一方から他方に向けて上下に伸びる少なくとも1つの窪みを有する、弾塑性ダンパ。
  2. 前記窪みは、前記上下両端部の一方から他方まで伸びる、請求項1に記載の弾塑性ダンパ。
  3. 前記窪みは、前記上下両端部の一方及び他方間を伸びる、請求項1に記載の弾塑性ダンパ。
  4. 前記上下両端部は、それぞれ、これらを貫通する複数のボルト穴を有する、請求項3に記載の弾塑性ダンパ。
  5. 前記上下両端部は、それぞれ、これらに設けられた複数の凹所を有する、請求項3に記載の弾塑性ダンパ。
  6. 前記上下両端部は、それぞれ、これらに設けられた複数のアンカー部材を有する、請求項3に記載の弾塑性ダンパ。
  7. 前記板状体の前記窪みを横切る横断面の形状が波形である、請求項1に記載の弾塑性ダンパ。
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