JP2007239024A - 鋼材の熱処理方法 - Google Patents

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泰久 長山
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Abstract

【課題】塑性変形加工が施された鋼材に対して適切な熱処理を行い、生産効率を向上させる。
【解決手段】組成比が所定範囲内であるワークは、第1工程S1において、熱間鍛造によってリテーナの形状に塑性変形され、高温が保持された状態で熱処理炉に導入される。このリテーナは、次に、熱処理炉内でAc1〜Ac3点間の温度まで昇温されて保持される(第2工程S2)。昇温・保持は10分以内で十分であり、好ましくは3分程度である。リテーナは、次に、5〜45℃/分、好ましくは5〜20℃/分の冷却速度で除冷される(第3工程S3)。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱間温度域で塑性変形加工が施された鋼材の諸特性を向上するための鋼材の熱処理方法に関する。
自動車の走行機関を構成する等速ジョイントのリテーナは、一般的に、円柱体からなる炭素鋼製ワークを加熱して熱間温度域まで昇温し、圧潰、穿孔(ピアッシング)、再圧潰を順次行い、高さ方向略中腹部が若干膨出したリング体に鍛造加工(塑性変形加工)されることによって製造されている。
このようにして成形加工されたリテーナは、室温まで冷却された後、熱処理設備まで搬送される。そして、リテーナを軟化させて変形能を向上させたり、又は硬度の均質化を図るべく、この熱処理設備において、低温焼き鈍し、球状化焼き鈍し、又は焼きならし等の各種の熱処理が施される。
次に、前記熱処理の際に発生する酸化スケール等を除去するショットブラスト処理が行われ、さらに、必要に応じてリテーナの外表面にリン酸亜鉛等からなる潤滑用化成皮膜が形成される。その後、切削加工によって寸法調整がなされ、さらに、前記等速ジョイントの外輪部材に形成される溝と対となってボールを挟持するための窓が設けられる。
ところで、このような製造過程を経る場合、熱処理を施す前のリテーナを保管しておくための広大なスペースが必要であるが、保管の目的のみにスペースを確保することは経済的に不利である。
また、熱処理は、例えば、トランスファー上に載置されたリテーナを連続式加熱炉内で移動させながら行われるが、リテーナが連続式加熱炉内に搬入されてから搬出されるまでの時間、換言すれば、処理時間が長く、このためにリテーナの生産効率が低いという不具合が顕在化している。なお、バッチ式加熱炉に変更しても、処理時間を短縮することはできない。
さらに、低温焼き鈍し、球状化焼き鈍し、又は焼きならしを行うための熱処理設備は、いずれも大規模な設備が必要であり、従って、設備投資が高騰してしまう。
しかしながら、このような不具合を回避するべく熱処理を省略すると、リテーナが軟化することも硬度が均質になることもないので、窓を設けることや切削加工を施すことが容易でなくなる。
以上のような観点から、短時間で終了し、且つ簡素な設備で実施することが可能な熱処理方法を確立することが希求されており、例えば、特許文献1には、焼入れを省いて焼き戻しのみを行うようにすることが提案されている。また、特許文献2には、鋼製ワークをAc1〜Ac3点間の温度で加工度45〜65%の塑性変形加工を行い、その後、空冷(自然放冷)することが開示されている。
特開平5−302117号公報 特開平5−255739号公報
特許文献1に記載された熱処理方法では、鍛造加工後の成形品が放冷される。このため、成形品を保管するスペースを確保しなければならない。換言すれば、特許文献1記載の熱処理方法では、保管スペースを狭小化することができない。
また、特許文献2記載の加工方法は温間鍛造であり、そのために加工率が制限されてしまうという問題がある。
さらに、成分・組成比が規定された鋼材に対して各種の熱処理を行っても、例えば、研削能が向上しないことがある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、保管スペースを不要とし、短時間で、しかも、簡素な設備で実施することが可能で、しかも、特定の鋼種の研削能を向上させることも可能な鋼材の熱処理方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、質量%で0.1〜0.25%のC、0.03〜0.15%のSi、0.2〜0.6%のMn、0.003%〜0.03%のS、1〜1.5%のCr、0.0005〜0.005%のB、0.05〜0.2%のTi、0.01%以下のNを少なくとも含有する鋼材の熱処理方法であって、
前記鋼材に対して熱間温度域で塑性変形加工を施す第1工程と、
塑性変形加工が施されることに伴って加工熱を帯びた前記鋼材を、加工熱が残留している時点で加熱してAc1〜Ac3点間の温度に保持する第2工程と、
加熱保持された前記鋼材を、パーライトの析出が終了する温度となるまで5〜45℃/分の冷却速度で冷却する第3工程と、
を有し、
前記第2工程での保持時間を10分以内とすることを特徴とする。
第2工程及び第3工程を経ることにより、鋼材が軟化するとともに、該鋼材の硬度が部位や表面からの距離によらず略同等となる。
しかも、本発明においては、加工熱が残留している時点で熱処理を行うので、塑性変形加工が施された鋼材を保管する必要がない。従って、保管のためのスペースを用意することも不要となるので、スペースを他の用途に有効活用することができる。
また、保持時間を10分以内とするので、熱処理設備の規模を球状化焼き鈍し設備等の従来の熱処理設備に比して小さくすることができる。このため、設備投資が高騰することが回避される。その上、熱処理効率が向上するので、熱処理に要するエネルギが低減されるとともに、生産効率が向上する。結局、コスト的に有利となる。
鋼材は、P、Al等をさらに含有するものであってもよい。
前記第2工程の冷却速度は、600℃となるまでを5〜20℃/分とし、600℃以降を15〜25℃/分とすることが好ましい。この場合、組織が一層微細化し、その結果、硬度のバラツキが一層抑制される。
また、塑性変形加工は、1000〜1300℃で行うことが好ましい。1000℃未満では加工率が低く塑性変形が困難であり、また、1300℃を超える温度ではコスト的に不利である。
本発明によれば、加工熱が残留している状態の鋼材に対し、所定の条件下で熱処理を施すようにしている。この熱処理によって鋼材が軟化するとともに、該鋼材の硬度が略一定となる。このため、切削加工や穿孔加工等の機械加工を行う際に各部位の寸法精度が良好となる。
また、加工熱が残留している時点で熱処理を行うので、保管のためのスペースを用意する必要もない。
さらに、保持時間を10分以内とするので、熱処理設備の構成が簡素になる。しかも、保持時間が短いので熱処理効率が向上し、その上、熱処理に要するエネルギが低減されるとともに、生産効率が向上する。
以下、本発明に係る鋼材の熱処理方法につき、ワークに対して熱間鍛造加工を施して等速ジョイントのリテーナを作製する場合を例として好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る鋼材の熱処理方法をフローチャートにして図1に示す。この熱処理方法は、熱間鍛造加工を行う第1工程と、得られたリテーナをAc1〜Ac3点間の温度に保持する第2工程と、加熱保持が終了したリテーナを冷却する第3工程とを有する。
図2A〜図2Fは、第1工程S1において、鋼材からなる円柱体形状のワーク10から第1次成形品12、第2次成形品14、第3次成形品18を経てリテーナ20が形成されるまでの過程を示すフローチャートである。これら図2A〜図2Fから諒解されるように、リテーナ20は、ワーク10に対し、熱間鍛造による成形加工とピアッシングが実施されて設けられる。
先ず、ワーク10の材質である鋼材につき説明する。この鋼材は、少なくともC、Si、Mn、P、S、Cr、B、Ti、Al、Nを含有する。
Cは、ワーク10、ひいてはリテーナ20の焼入れ性を向上させる役割を果たす。すなわち、リテーナ20は、焼入れが施されると焼入れ前に比して硬度が顕著に上昇する。また、Cは、引っ張り強度及び曲げ強度を上昇させる機能も有する。
Cの組成比は、0.1〜0.25%(数字は質量%、以下同じ)に設定される。0.1%未満であると十分な強度を確保することが困難となる。また、0.25%よりも多いと、熱間加工後の硬度が過度に大きくなるので被削性が低下するとともに、耐衝撃性が低下する。
Siは、リテーナ20中の酸素を低減させる脱酸剤として機能する元素であるが、その割合が0.03%未満では該効果に乏しい。また、その割合が過度に大きいと熱間加工後のリテーナ20の硬度が過度に上昇し、被削性が低下する。このため、Siは、0.03〜0.15%に設定される。
Mnは、リテーナ20の焼入れ性及び強度を向上させる。この効果を確実に得るべく、Mnの組成比は、0.2〜0.6%に設定される。Mnが0.6%を超えると、リテーナ20の硬度が過度に上昇するので被削性が低下する。
Sは、ワーク10の金属組織中でMn、TiとともにMnS、TiSを形成することにより、該ワーク10の被削性を向上させる成分である。Sの組成比は、0.003〜0.03%に設定される。0.003%未満では被削性を向上させる効果に乏しく、0.03%を超えると、冷間加工時の加工率が低減する。
Crは、Mn同様にリテーナ20の焼入れ性及び強度を向上させる。Crの組成比は、1〜1.5%に設定される。1%未満では、リテーナ20として希求される強度を確保することが困難となる。一方、1.5%を超えると、熱間鍛造後の硬度が過度に上昇するので被削性が低下する。
Bは、粒界に偏析して粒界強度を向上させ、これによりリテーナ20の焼入れ性を著しく向上させる元素である。この効果を得るべく、Bの組成比は、0.0005〜0.005%(5〜50ppm)に設定される。5ppm未満であると、焼入れ性を向上させる効果に乏しい。一方、50ppmを超えると焼入れ性は飽和するのでコスト的に不利であり、また、熱間加工時に割れが生じ易くなることがある。
Tiは、ワーク10中における遊離Nを捕捉する機能を有する。このように遊離Nが捕捉された場合、上記したBの添加効果が一層顕著となる。また、Cと結合して炭化物を形成することによって、結晶粒の微細化に寄与する。
Tiの組成比は、0.05〜0.2%に設定される。0.05%未満では結晶粒を微細化させることが容易ではない。一方、0.2%を超えると、微細化効果が飽和するのでコスト的に不利となり、また、熱間鍛造後の硬度が過度に上昇するので被削性が低下する。
ここで、遊離Nがリテーナ20中に過剰に存在すると、上記したTiと結合してTiNが過度に生成し、その結果、被削性等が低下する。このような事態を回避するべく、Nの組成比は、0.01%以下に設定される。
ワーク10には、さらに、加工性や被削性を低下させない程度の量のP、Al等が含有されていてもよい。
このように構成されたワーク10からリテーナ20を得るには、先ず、ワーク10を熱間鍛造の温度域に昇温する。具体的には、ワーク10の温度を1000〜1300℃とすることが好ましい。1000℃未満では塑性変形を生じさせることが容易ではなく、特に、800℃未満には鋼材の変態点が存在するため、ワーク10を所定の組織とすることが容易でなくなる。また、ワーク10の変形能は1300℃で略飽和するので、1300℃を超える温度としてもコスト的に不利となる。
次に、温度が上昇したワーク10に対し、予備成形を施す。すなわち、ワーク10の一端面を支持した状態で該ワーク10を他端面側から押圧する。これに伴って円柱体形状のワーク10が圧潰され、図2Bに示すように、両端面から中腹部にかけて膨出した樽型円柱体形状の第1次成形品12となる。その後、さらなる圧潰が行われ、図2Cに示すように、ディスク形状の第2次成形品14が作製される。
次に、第2次成形品14に対し、側周壁方向からの圧潰が行われる。これにより第2次成形品14の側周壁が縮径されるとともに鉛直方向に延伸され、図2Dに示すように、略中腹部に仕切壁16(図2E参照)が残留した断面略H字形状の第3次成形品18が作製される。
そして、図2Eに示すように、ピアッシング加工が施されて第3次成形品18から仕切壁16が打ち抜かれる。さらに、図2Fに示すように、第3次成形品18に再度の圧潰が施され、該第3次成形品18の略中腹部が直径方向に沿って膨出する。これにより、リテーナ20が得られるに至る。
なお、各熱間鍛造は別個の熱間鍛造成形装置で行われ、ワーク10、第1次成形品12、第2次成形品14、第3次成形品18は、各熱間鍛造成形装置間をトランスファー等の搬送装置によって移送される。
以上の熱間鍛造が施されたリテーナ20は、図3に示すように、鍛造加工ステーション30から熱処理炉32に移送され、この熱処理炉32において、本実施の形態に係る熱処理方法の第2工程S2及び第3工程S3が実施される。
鍛造加工ステーション30から熱処理炉32までの距離は、鍛造加工が施されたリテーナ20を速やかに熱処理炉32内に導入するべく、可及的に短く設定されている(図3参照)。また、トランスファー36による搬送速度は、リテーナ20の単位時間当たりの生産数に合わせて設定される。
このように、本実施の形態によれば、塑性変形された直後で熱を帯びたリテーナ20を熱処理炉32に可及的に速やかに導入するようにしている。このため、リテーナ20を保管するスペースが不要となり、従って、スペースを他の用途に有効利用することができるようになる。
リテーナ20は、熱処理炉32に至るまでの間に大気に露呈され、このために温度が若干降下するが、図4に示すように、本実施の形態においては、リテーナ20は、熱間鍛造が施されて塑性変形を起こすことに伴って帯びた加工熱が残留している時点で熱処理炉32内に導入される。
熱処理炉32に導入される直前のリテーナ20の温度は、500℃以上とすることが好ましい。500℃を下回るまで温度が降下したリテーナ20を熱処理炉32に導入すると、Ac1〜Ac3点まで短時間で昇温するために昇温速度を大きく設定する必要があるが、この場合、結晶粒が粗大化することに起因して金属組織に欠陥が生じたりすることがあり、リテーナ20としては強度が十分でないものとなることがある。
また、これを回避するべく、500℃を下回る温度まで降下したリテーナ20を緩慢な昇温速度で昇温するには、熱処理炉32を大規模なものとして設ける必要があり、設備投資の高騰を招く。
熱処理炉32に導入される直前のリテーナ20の好適な温度範囲は、600〜720℃程度であるが、図4に示すように、冷却時におけるオーステナイトからフェライトとセメンタイトへの共析変態の開始温度であるAr1点を下回る温度、例えば、Ar1点の数値から50℃を差し引いた程度の温度まで、さらには500℃まで降下した時点で、リテーナ20が熱処理炉32に導入されるようにしてもよい。この場合、リテーナ20の金属組織からオーステナイトが消失するので、フェライトとパーライトが共存する略均一な金属組織が形成されたリテーナ20を容易に得られるからである。
Ar1点の数値は温度降下速度の相違に応じて変化し、一定ではないが、温度降下速度が20〜40℃である場合、概ね710〜720℃である。
この場合、熱処理炉32は、昇温炉38、均熱炉40、除冷炉42の3炉を有する。このうち、昇温炉38と均熱炉40は同一温度に保持されている。なお、3炉の内部にN2ガスを導入してN2雰囲気で加熱・保持・除冷が行われるようにしてもよい。
リテーナ20は、トランスファー36上に載置された状態で昇温炉38に導入され、該昇温炉38から、図1に示す第2工程S2が開始される。
昇温炉38に導入されたリテーナ20は、Ac1〜Ac3点の間の温度となるまで加熱される。
ここで、昇温速度を過度に大きく設定すると、リテーナ20の金属組織において結晶粒が粗大化し、欠陥が発生することがある。このことを回避するべく、昇温炉38の温度は、50℃/分以下の昇温速度が得られるように設定することが好ましい。なお、昇温速度が15℃/分未満であると、リテーナ20の熱処理効率が低下する。また、15℃/分未満の昇温速度でも熱処理効率を低下させないようにするには、熱処理炉32を大規模化する必要があるので設備投資が高騰してしまう。結局、好適な昇温速度は15〜50℃/分であり、17〜46℃/分とすることが一層好ましい。
この昇温速度を得るためには、昇温炉38の温度を、例えば、800〜850℃に設定すればよい。昇温炉38の導入前に500〜720℃であったリテーナ20は、昇温炉38を通過する前までに720〜780℃に達する。
そして、昇温炉38を通過したリテーナ20は、次に、均熱炉40に導入される。この均熱炉40では、昇温炉38で720〜780℃程度に昇温されたリテーナ20が、その温度に保持される。
以上の昇温・保持は、合わせて10分以内とすれば十分である。加熱処理をこれ以上行うようにした場合、熱処理炉32やトランスファー36が長くなるので熱処理設備が大規模となる。すなわち、設備投資が高騰する。また、10分を超える加熱保持を行っても、軟化や硬度の均質化の度合いは10分以内の場合とほとんど同等であるので、コスト的に不利である。昇温・保持時間は、合わせて5分以内であっても十分であり、例えば、3分とすることができる。
Ac1〜Ac3点の間の温度に保持されたリテーナ20では、オーステナイトとフェライトが共存する金属組織となる。
なお、リテーナ20の最終的な温度がAc1点未満である場合、該リテーナ20を軟化することや硬度の均質化を図ることが困難となる。また、Ac3点を超える温度まで昇温・保持した場合、オーステナイトの粗大化(異常粒成長)が起こる。このため、表面の各部位や、深さ方向で硬度にバラツキが認められる。
Ac1〜Ac3点の間の温度に所定時間保持されたリテーナ20は、次に、除冷炉42に導入され、これにより第3工程S3が開始される。
除冷炉42では、リテーナ20の冷却速度が所定の範囲内、具体的には、5〜45℃/分となるように設定される。冷却速度をこのような範囲に設定することにより、表面から内部に至るまで略均一な組織が得られ、硬度のバラツキがほとんど認められなくなる。
冷却速度は、5〜20℃/分であることがより好ましい。この場合、球状化組織が形成され、表面から内部に至る硬度が一層均一になるとともに、リテーナ20の伸びや絞りが向上する。
除冷は、パーライトの析出が終了する温度まで行えばよい。この析出終了温度は、降温速度や鋼材の種類に応じて相違するが、概ね680〜600℃の間である。従って、除冷は、温度が680〜600℃の間となるまで続行することが好ましく、例えば、650℃に低下するまで行えばよい。この温度降下に伴い、リテーナ20には、フェライトとパーライトが共存する金属組織が形成される。
このように、本実施の形態においては、リテーナ20が昇温炉38、均熱炉40、除冷炉42を短時間で通過するようにしている。このため、昇温炉38から除冷炉42に至る熱処理設備を簡素な構成とすることができる。
第3工程S3が終了したリテーナ20は、トランスファー36で除冷炉42から搬出され、室温まで冷却された後、ショットブラスト処理、必要に応じては潤滑用化成皮膜形成処理が行われ、切削加工、窓開け加工が行われる加工ステーションに移送される。
これら切削加工、窓開け加工を行うに際しては、リテーナ20の伸びや絞りが向上しているため、該リテーナ20の変形が容易に進行する。すなわち、後加工が極めて容易である。
しかも、リテーナ20の硬度は、表面では部位に関わらず略同等で、且つ表面から内部に至るまでも略一定である。このため、変形能はすべての部位にわたって略同等となり、従って、変形する度合いも略同等である。このため、寸法精度に優れたリテーナ20を作製することができる。
すなわち、本実施の形態に係る熱処理方法によれば、組成比が上記の範囲内であるリテーナ20の硬度が、部位や深さに関わらず均質化される。このため、変形能が均質化し、寸法精度に優れるリテーナ20を得ることができる。
リテーナ20には、さらに、その側周壁を貫通する保持窓が設けられる。この際には、例えば、打ち抜きパンチ等が使用される。なお、保持窓は、一般的には6個形成され、各々に、等速ジョイントを構成するアウタ部材及びインナ部材の各ボール溝に挿入される転動ボールが収容される。
さらに、浸炭処理、ペーパー加工、研削加工等が施され、等速ジョイントを構成する最終製品としてのリテーナ20が得られるに至る。
なお、上記した実施の形態は、ワーク10を熱間鍛造によって等速ジョイントのリテーナ20に塑性変形させる場合を例示して説明したが、リテーナ20以外のものを最終製品として作製するようにしてもよいことはいうまでもない。例えば、インナ部材やローラであってもよい。
さらに、塑性変形加工は鍛造加工に特に限定されるものではなく、ワークに圧力を付与して該ワークを変形させる加工であればよい。例えば、圧延加工が含まれる。
成分・組成比が図5に示される鋼材製のワーク10(図2A参照)を用い、図2B〜図2Fに示すような過程を経る熱間鍛造によって、同一のリテーナ20(図2F参照)を3個ずつ作製した。熱間鍛造時の温度は1250℃とした。
なお、図5中、実施例1、2のワーク10は各成分を上記した組成比で含むものであり、一方、比較例1〜7のワークは、上記した成分を含まないか、含んでいても上記の組成比の範囲外のものである。
この中、各リテーナのうちの1個は、鍛造加工後、500℃を下回らない時点で熱処理炉32に導入し、昇温及びAc1〜Ac3点間の温度保持を合計3分間行った後、600℃となるまで5〜45℃/分の冷却速度で冷却し、さらに大気中で自然冷却した。これをこれをA処理とする。
また、別の1個は、鍛造加工後に室温まで降下した後、740〜900℃に加熱し1時間保持して空冷した。これをB処理とする。
さらに残余の1個に対しては、鍛造加工後に圧縮エアを当てて強制的に冷却した。これをC処理とする。
各々の処理後、各リテーナ20に対して内周壁及び外周壁の研削加工を行い、被削性の評価を行った。結果を併せて図5に示す。この図5から諒解されるように、比較例1〜7の成分・組成比ではB処理又はC処理を施しても十分ないしは若干不十分な被削性が発現したのに対し、実施例1、2の成分・組成比では、A処理、すなわち、上記した実施の形態に準拠する熱処理方法を実施しなければ、被削性は不十分であった。
このことから、上記した実施の形態に係る熱処理方法によれば、通常の熱処理方法では被削性を向上させることが困難な鋼材であっても、研削能を容易に向上させることが明らかである。
本実施の形態に係る鋼材の熱処理方法のフローチャートである。 図2A〜図2Fは、ワークからリテーナに塑性変形されるまでを示す工程説明図である。 リテーナを鍛造加工ステーションから熱処理炉に移送するまでの作業場を説明する模式図である。 熱間鍛造を行った場合の温度パターンを示すグラフである。 実施例1、2、比較例1〜7のワーク(鋼材)における成分・組成比と、熱処理後の被削性の関係を示す図表である。
符号の説明
10…ワーク 12、14、18…成形品
20…リテーナ 30…鍛造加工ステーション
32…熱処理炉 38…昇温炉
40…均熱炉 42…除冷炉

Claims (3)

  1. 質量%で0.1〜0.25%のC、0.03〜0.15%のSi、0.2〜0.6%のMn、0.003%〜0.03%のS、1〜1.5%のCr、0.0005〜0.005%のB、0.05〜0.2%のTi、0.01%以下のNを少なくとも含有する鋼材の熱処理方法であって、
    前記鋼材に対して熱間温度域で塑性変形加工を施す第1工程と、
    塑性変形加工が施されることに伴って加工熱を帯びた前記鋼材を、加工熱が残留している時点で加熱してAc1〜Ac3点間の温度に保持する第2工程と、
    加熱保持された前記鋼材を、パーライトの析出が終了する温度となるまで5〜45℃/分の冷却速度で冷却する第3工程と、
    を有し、
    前記第2工程での保持時間を10分以内とすることを特徴とする鋼材の熱処理方法。
  2. 請求項1記載の熱処理方法において、前記第2工程の冷却速度を、600℃となるまでを5〜20℃/分、以降を15〜25℃/分とすることを特徴とする鋼材の熱処理方法。
  3. 請求項1又は2記載の熱処理方法において、前記第1工程で、1000〜1300℃で塑性変形加工を行うことを特徴とする鋼材の熱処理方法。
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