JP2007238980A - 電解アルミニウムめっき方法およびアルミニウムめっき部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】凹部を有する被めっき物の凹部にもアルミニウムめっき皮膜を形成することのできるつき回り性に優れた電解アルミニウムめっき方法および凹部にもアルミニウムめっき皮膜が形成された被めっき物を提供する。
【解決手段】被めっき物にアルミニウムめっき皮膜を形成する第一段電解アルミニウムめっき工程と、前記アルミニウムめっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する不導体化工程と、第一段電解アルミニウムめっき工程でアルミニウムめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にアルミニウムめっき皮膜を形成する第二段電解アルミニウムめっき工程とを備える電解アルミニウムめっき方法。
【選択図】図1
【解決手段】被めっき物にアルミニウムめっき皮膜を形成する第一段電解アルミニウムめっき工程と、前記アルミニウムめっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する不導体化工程と、第一段電解アルミニウムめっき工程でアルミニウムめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にアルミニウムめっき皮膜を形成する第二段電解アルミニウムめっき工程とを備える電解アルミニウムめっき方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、被めっき物の表面に耐腐食性や着色性を付与したいときに用いられる電解アルミニウムめっき方法および生成しためっき膜に関するものであり、特に電流密度の上がりにくい凹部を有する被めっき物にもめっきすることのできる電解アルミニウムめっき方法および生成しためっき膜に関する。
電解めっきは、めっき皮膜を形成させるべき金属イオンを含む水溶液をめっき浴として調製し、このめっき浴中に陰極として設置した導電性を有する被めっき物と陽極として設置した金属板との間に電流を流し、被めっき物の表面に還元した金属イオンを析出させてめっき皮膜を形成させる技術である。しかし、アルミニウムの電析電位は水素発生の電位よりも卑であるため、水の電気分解反応が優先的に行われ陰極では水素が発生してしまい水溶液からアルミニウムを電析させることは非常に困難である。従って、電解アルミニウムめっきに関しては、非水溶媒めっき液が多く研究されてきた。例えば、特許文献1にはジメチルスルホンを溶媒とした低温溶融塩電解めっき液が報告されている。これは金属無水塩をジメチルスルホンに混合した後、徐々に加熱すると110℃程度で金属無水塩は溶解され、このめっき浴を用いて電解めっきを行うと陰極の被めっき物の表面に金属が還元析出され、めっき皮膜を形成できるというものである。特許文献1の記載によれば、この発明はアルミニウムやマグネシウム等の還元電位の低い金属でめっき皮膜を形成できることに加えて、他の非水溶媒に比較して金属イオンの溶解度が大きいため電解めっき時における成膜速度を大きくすることができるという効果を有している。
上述の電解アルミニウムめっきを含めて一般に電解めっきを行う際には被めっき物の形状等に依存して電解分布が生じ、最凹部ではめっき膜が生成しなくなることがある。これを解決するため、補助電極を用いる方法や、特許文献2のように添加剤やパルス電解を用いる方法が用いられている。特許文献2のめっき浴はハロゲン化アルミニウム50〜80モル%とブチルピリジニウムクロリド20〜50モル%からなる溶融塩浴に(ジ)エチルベンゼン、クメン、メシチレン、(ジ、トリ)クロロベンゼンの1種又は2種以上からなる添加剤を特定量添加するもので、浴の粘性の低下により付き回り性が向上するとしている。
特開2004− 76031号公報
特開平02−133596号公報
ところが、添加剤は全てのめっき液に汎用的に使用できるわけではなく、めっき液ごとに試行錯誤しながら種類や添加量を選定する必要がある。また、パルス電解ではつき回り性改善効果に限界がある。一方、補助電極を用いる方法では電極形状が複雑になり、被めっき物の形状が変わるごとにそれに応じた形状の補助電極に変更しなければならない。
電解アルミニウムめっきでは非水溶媒を使用しているものの、僅かな水分の混入により低電流密度で水の電気分解が生じる。従って、雰囲気制御が不充分な場合には空気中の水分の影響により無めっきが生じやすい。
電解アルミニウムめっきでは非水溶媒を使用しているものの、僅かな水分の混入により低電流密度で水の電気分解が生じる。従って、雰囲気制御が不充分な場合には空気中の水分の影響により無めっきが生じやすい。
したがって本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み凹部を有する被めっき物の凹部にもアルミニウムめっき皮膜を形成することのできるつき回り性に優れた電解アルミニウムめっき方法および凹部にもアルミニウムめっき皮膜が形成された被めっき物を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究の結果、電解めっきでは被めっき物の形状により電流密度が高い表面と低い表面とが生じるが、電流密度が高い表面を表面処理して電流が流れ難い表面に変えることにより、電流密度が低い表面により多くの電流を供給でき電流密度を上げられることを知見して本発明に想到した。すなわち、本発明者は、一度目の電解めっきで生じためっき皮膜上に電気絶縁層を形成するか、又は一度目の電解めっきで生じためっき皮膜自身の少なくとも表面を電気絶縁層に変えることにより相対的に電流を流れ難くし、一度目の電解めっきでめっきされなかった表面(以下、不めっき表面と記載することがある)に二度目の電解めっきでめっき皮膜を形成できることを見出したのである。
よって、本願第一の発明は、被めっき物にめっき皮膜を形成する第一段電解めっき工程と、前記めっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する不導体化工程と、第一段電解めっき工程でめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にめっき皮膜を形成する第二段電解めっき工程とを備えることを特徴とする電解めっき方法である。
本願第二の発明は、被めっき物にアルミニウムめっき皮膜を形成する第一段電解アルミニウムめっき工程と、前記アルミニウムめっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する不導体化工程と、第一段電解アルミニウムめっき工程でアルミニウムめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にアルミニウムめっき皮膜を形成する第二段電解アルミニウムめっき工程とを備えることを特徴とする電解アルミニウムめっき方法である。
本願第三の発明は、被めっき物にアルミニウムめっき皮膜を形成する第一段電解アルミニウムめっき工程と、前記アルミニウムめっき皮膜の表面を酸化する酸化工程と、第一段電解アルミニウムめっき工程でアルミニウムめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にアルミニウムめっき皮膜を形成する第二段電解アルミニウムめっき工程とを備えることを特徴とする電解アルミニウムめっき方法である。
本願第三の発明における酸化工程の目的は、第一段電解アルミニウムめっき工程で形成されたアルミニウムめっき皮膜の表面を酸化することであるが、酸化の手段によっては不めっき表面も酸化されてしまうことがある。不めっき表面が酸化膜で被覆されていると第二段電解アルミニウムめっき工程で不めっき表面の電流密度を十分に高めることができない。よって、本願第三の発明においては、被めっき物のアルミニウムめっき皮膜が形成されていない表面の酸化膜を取り除く除去工程を酸化工程と第二段電解アルミニウムめっき工程との間に備えることが好ましい。
本願第四の発明は、第一のアルミニウムめっき皮膜で被覆された表面と第一のアルミニウムめっき皮膜と別工程で形成される第二のアルミニウムめっき皮膜で被覆された凹部とを有することを特徴とするアルミニウムめっき部材である。
上述のように、本発明の電解めっき方法によれば、第一段電解めっき工程で形成された不めっき表面を第二段電解めっき工程で形成されるめっき皮膜により被覆することができるため被めっき物の凹部にも付き回り性に優れた電解めっき皮膜を形成することができる。
不導体化工程では第一段電解めっき工程で形成するめっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する。この電気絶縁層はめっき皮膜の上に新たに絶縁膜を形成するか、又はめっき皮膜の表面を含む層を電気絶縁性に変えることにより設けることができる。新たに絶縁膜を形成する手段としては化成処理膜を採用することができる。このときの化学浴はめっき皮膜を構成する金属と化学反応し、その表面に腐食生成物皮膜を作り、かつ不めっき表面を構成する金属とは化学反応しない組成を有するものとする。めっき皮膜の表面を含む層を電気絶縁性に変える手段としては自然酸化、熱酸化、熱水酸化、陽極酸化等を採用することができるが、めっき皮膜がアルミニウムからなる場合は熱水酸化が好ましい。熱水酸化の利点は得られる酸化膜が比較的厚く絶縁性が高いこと、及び不めっき表面から素材が溶解することがないことである。熱水酸化の実施条件は例えば90℃の熱水に1時間浸漬すると厚さ約400nm、電気抵抗(端子間固定)>107Ωの酸化アルミニウムからなる電気絶縁層を得ることができる。また、この絶縁層は耐食性にも優れ塩水噴霧144時間でも腐食しない。電気絶縁層は不めっき表面には形成されないことが重要な点である。
本発明では、電解アルミニウムめっき後に熱水処理により表面に酸化膜を形成し、酸洗浄により無めっき部分の素材酸化膜のみを除去後、再度電解アルミニウムめっきすることで無めっき部分のみをめっきし、つき回り性の良好なめっき膜を得ることができた。アルミニウムめっき液としては、トルエン−トリエチルアルミニウム−ふっ化ナトリウム浴、テトラヒドロフラン−塩化アルミニウム−水素化リチウム浴、ジメチルスルホン−塩化アルミニウム浴などが使用できる。めっき膜の厚さは500nm以上が好ましい。500nm未満になると熱水処理の際に素地まで酸化が進行し、処理中に被めっき物が錆びる恐れがある。めっき膜厚に上限はないが、めっき液の能力及び生産性等を考慮して適度な膜厚まで使用することができる。酸化膜の厚さは厚いほど好ましいが、後のめっきの際に印加する電圧に耐えるだけの絶縁耐圧を有する膜を形成し、且つめっき膜厚未満の厚さに設定する必要がある。膜厚は時間に対して指数関数的に成長することが知られているが、必要に応じてトリエタノールアミンなどの被膜促進物質を添加することもできる。
1段目のめっきは定電流で行うのに対し2段目のめっきは不めっき表面の面積を正確に把握できないため絶縁耐圧以下の定電圧で行う。絶縁耐圧以下でも漏れ電流により絶縁部分にめっきされる恐れがあるので、酸化膜厚を考慮した上で充分低い電圧を使用する必要がある。一方、印加電圧が低くなりすぎると、無めっき部分にめっき膜が生成しなくなる。電解アルミニウムめっきの場合、2段目のめっきは3〜5Vの定電圧で行うことが好ましい。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。本発明の電解アルミニウムめっき膜形成方法について、その一例を以下に述べる。被めっき物に最適な前処理を行うことができればどのような素材にもめっき可能であるが、本発明では80mm×80mm×5mmt、肉厚1mmの箱型の銅成形体(図1)を使用した。この箱型銅成形体は一つの底面とそれを囲む四つの側面からなり、底面と側面が90°で交わる入角部と、底面と二つの側面が互いに90°で交わる三面入角部とを有する。
(比較例1)
試料表面の汚れを取り除くため、硫酸-硝酸水溶液で洗浄し水洗後、温風にて充分に乾燥した。乾燥窒素ガス雰囲気下で無水塩化アルミニウムとジメチルスルホンを1:5のモル比となるように混合し、アルミニウムめっき液を建浴した。陽極には純度99.99%のAl板(80mm×80mm×2mmt)2枚を使用し、それらの間に陰極となる図1の試料を設置して110℃にて3.5A/dm2の電流密度で直流電流を60min間通電した(図2)。このとき電極間にかかる電圧は4.9〜5.0Vを示した。試料の表面には平均厚さ約43μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には図3に示すように無めっき領域が認められた。底面と各側面の表面には一定の電流密度で電流が流れアルミニウムが還元析出するが、底面と側面の交点に近づくと急激に電流密度が低下するため入角部ではほとんどアルミニウムめっき膜は形成されない。本発明でいうところの凹部とは被めっき物表面の入角部の他に溝、窪み、穴なども含む概念である。
試料表面の汚れを取り除くため、硫酸-硝酸水溶液で洗浄し水洗後、温風にて充分に乾燥した。乾燥窒素ガス雰囲気下で無水塩化アルミニウムとジメチルスルホンを1:5のモル比となるように混合し、アルミニウムめっき液を建浴した。陽極には純度99.99%のAl板(80mm×80mm×2mmt)2枚を使用し、それらの間に陰極となる図1の試料を設置して110℃にて3.5A/dm2の電流密度で直流電流を60min間通電した(図2)。このとき電極間にかかる電圧は4.9〜5.0Vを示した。試料の表面には平均厚さ約43μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には図3に示すように無めっき領域が認められた。底面と各側面の表面には一定の電流密度で電流が流れアルミニウムが還元析出するが、底面と側面の交点に近づくと急激に電流密度が低下するため入角部ではほとんどアルミニウムめっき膜は形成されない。本発明でいうところの凹部とは被めっき物表面の入角部の他に溝、窪み、穴なども含む概念である。
(比較例2)
通電時間を20secとした他は比較例1と同様の条件で電解めっきをおこなった。試料の表面には平均厚さ約0.2μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には図4に示すように無めっき領域が認められた。この試料を90℃の熱水に1時間浸漬した。図4に示すようにアルミニウムめっき膜は薄く透明なベーマイト膜になり、特に薄い個所では素地の銅成形体の色が透過して認められた。また、素地の銅は全体的に酸化し変色している。ベーマイト膜はアルミニウムの酸化によって生じたものであり、耐食性、絶縁性を上げるために必要であるが、アルミニウムめっき膜厚が薄すぎたために、アルミニウムと素地の銅が共に酸化したと考えられる。
通電時間を20secとした他は比較例1と同様の条件で電解めっきをおこなった。試料の表面には平均厚さ約0.2μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には図4に示すように無めっき領域が認められた。この試料を90℃の熱水に1時間浸漬した。図4に示すようにアルミニウムめっき膜は薄く透明なベーマイト膜になり、特に薄い個所では素地の銅成形体の色が透過して認められた。また、素地の銅は全体的に酸化し変色している。ベーマイト膜はアルミニウムの酸化によって生じたものであり、耐食性、絶縁性を上げるために必要であるが、アルミニウムめっき膜厚が薄すぎたために、アルミニウムと素地の銅が共に酸化したと考えられる。
(比較例3)
通電時間を1minとした以外は比較例1と同様の条件で電解めっき(第一段電解めっき工程)をおこなった。図5(a)に示すように試料の表面には平均厚さ約0.6μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。この試料を90℃の熱水に1時間浸漬したところアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された(b)。次いで10%塩酸に1分間浸漬し、入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した(c)。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから更に同じ印加電圧(5V)で1分間の定電圧電解アルミニウムめっき(第二段電解めっき工程)を行った結果、アルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみが被覆され、無めっき領域が減少した(d)。無めっき領域が完全に無くならなかったのは無めっき領域が広いため2段目のめっきの際にも電解の分布を生じ、電流密度の低い領域で無めっき箇所が残留したためと考えられる。更に3段、4段のめっきを行うことでこの無めっき箇所をなくすことができると考えられる。
通電時間を1minとした以外は比較例1と同様の条件で電解めっき(第一段電解めっき工程)をおこなった。図5(a)に示すように試料の表面には平均厚さ約0.6μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。この試料を90℃の熱水に1時間浸漬したところアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された(b)。次いで10%塩酸に1分間浸漬し、入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した(c)。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから更に同じ印加電圧(5V)で1分間の定電圧電解アルミニウムめっき(第二段電解めっき工程)を行った結果、アルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみが被覆され、無めっき領域が減少した(d)。無めっき領域が完全に無くならなかったのは無めっき領域が広いため2段目のめっきの際にも電解の分布を生じ、電流密度の低い領域で無めっき箇所が残留したためと考えられる。更に3段、4段のめっきを行うことでこの無めっき箇所をなくすことができると考えられる。
(実施例1)
第一段電解めっき工程の通電時間を2分とした以外は比較例3と同様の処理を行った。試料の表面には平均厚さ約1.2μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。熱水浸漬によりアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された。次いで塩酸浸漬し入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから第二段電解めっき工程を行った結果、図6に示すようにアルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみがアルミニウムめっき皮膜で被覆され、無めっき領域は消滅し付き回り性の良好なアルミニウムめっき膜が得られた。無めっき領域が完全に無くなったのはめっき時間が長いため1段目のめっきで生じる無めっき領域が狭くなり、2段目のめっきの際に生じる電解分布の影響が小さいため無めっき領域が均一にめっきされたためと考えられる。
第一段電解めっき工程の通電時間を2分とした以外は比較例3と同様の処理を行った。試料の表面には平均厚さ約1.2μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。熱水浸漬によりアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された。次いで塩酸浸漬し入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから第二段電解めっき工程を行った結果、図6に示すようにアルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみがアルミニウムめっき皮膜で被覆され、無めっき領域は消滅し付き回り性の良好なアルミニウムめっき膜が得られた。無めっき領域が完全に無くなったのはめっき時間が長いため1段目のめっきで生じる無めっき領域が狭くなり、2段目のめっきの際に生じる電解分布の影響が小さいため無めっき領域が均一にめっきされたためと考えられる。
(実施例2)
第一段電解めっき工程の通電時間を5分とした以外は比較例3と同様の処理を行った。試料の表面には平均厚さ約3.6μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。熱水浸漬によりアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された。次いで塩酸浸漬し入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから第二段電解めっき工程を行った結果、アルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみがアルミニウムめっき皮膜で被覆され、無めっき領域は消滅し付き回り性の良好なアルミニウムめっき膜が得られた。
第一段電解めっき工程の通電時間を5分とした以外は比較例3と同様の処理を行った。試料の表面には平均厚さ約3.6μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。熱水浸漬によりアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された。次いで塩酸浸漬し入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから第二段電解めっき工程を行った結果、アルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみがアルミニウムめっき皮膜で被覆され、無めっき領域は消滅し付き回り性の良好なアルミニウムめっき膜が得られた。
(比較例4)
第一段電解めっき工程の通電時間を30分とした以外は比較例3と同様の処理を行った。試料の表面には平均厚さ約22μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。熱水浸漬によりアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された。次いで塩酸浸漬し入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから第二段電解めっき工程を行った結果、アルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみがアルミニウムめっき皮膜で被覆され、無めっき領域は消滅し付き回り性の良好なアルミニウムめっき膜が得られた。しかし、図7に示すように酸化膜の表面に均一に瘤状電析物が確認された。図8はその断面写真であるが瘤状電析物は熱水酸化により生成した酸化膜の上に生成しているのがわかる。瘤状電析物はアルミニウムを主成分としていることや電流密度ではなくめっき時間が増すと増大することから、第二段電解めっき工程における漏れ電流により還元析出したものと考えられる。漏れ電流が生じる原因は酸化膜の絶縁破壊やピンホールの存在が考えられる。
第一段電解めっき工程の通電時間を30分とした以外は比較例3と同様の処理を行った。試料の表面には平均厚さ約22μmのアルミニウムめっき膜が形成されたが、入角部には無めっき領域が認められた。熱水浸漬によりアルミニウムめっき膜の表面は酸化されてベーマイト膜を主成分とする酸化膜(電気絶縁層)となり、入角部では素材表面が酸化された。次いで塩酸浸漬し入角部の銅表面の酸化膜のみを溶解除去した。このときベーマイト膜を主成分とする酸化膜は耐食性に優れるため溶解除去されることはなかった。試料を充分に水洗、乾燥してから第二段電解めっき工程を行った結果、アルミニウムめっき膜は電気絶縁性の酸化膜で被覆されているためめっきされることはなく、入角部の無めっき面のみがアルミニウムめっき皮膜で被覆され、無めっき領域は消滅し付き回り性の良好なアルミニウムめっき膜が得られた。しかし、図7に示すように酸化膜の表面に均一に瘤状電析物が確認された。図8はその断面写真であるが瘤状電析物は熱水酸化により生成した酸化膜の上に生成しているのがわかる。瘤状電析物はアルミニウムを主成分としていることや電流密度ではなくめっき時間が増すと増大することから、第二段電解めっき工程における漏れ電流により還元析出したものと考えられる。漏れ電流が生じる原因は酸化膜の絶縁破壊やピンホールの存在が考えられる。
本発明は、被めっき物の表面に耐腐食性や着色性を付与したいときに用いられる電解めっき方法および生成しためっき膜に関するものであり、被めっき物の凹部に電解めっき皮膜を形成する際に利用出来る。
Claims (5)
- 被めっき物にめっき皮膜を形成する第一段電解めっき工程と、前記めっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する不導体化工程と、第一段電解めっき工程でめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にめっき皮膜を形成する第二段電解めっき工程とを備えることを特徴とする電解めっき方法。
- 被めっき物にアルミニウムめっき皮膜を形成する第一段電解アルミニウムめっき工程と、前記アルミニウムめっき皮膜の表面に電気絶縁層を形成する不導体化工程と、第一段電解アルミニウムめっき工程でアルミニウムめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にアルミニウムめっき皮膜を形成する第二段電解アルミニウムめっき工程とを備えることを特徴とする電解アルミニウムめっき方法。
- 被めっき物にアルミニウムめっき皮膜を形成する第一段電解アルミニウムめっき工程と、前記アルミニウムめっき皮膜の表面を酸化する酸化工程と、第一段電解アルミニウムめっき工程でアルミニウムめっき皮膜が形成されない被めっき物の表面にアルミニウムめっき皮膜を形成する第二段電解アルミニウムめっき工程とを備えることを特徴とする電解アルミニウムめっき方法。
- 被めっき物のアルミニウムめっき皮膜が形成されていない表面の酸化膜を取り除く除去工程を酸化工程と第二段電解アルミニウムめっき工程との間に備えることを特徴とする請求項3に記載の電解アルミニウムめっき方法。
- 第一のアルミニウムめっき皮膜で被覆された表面と第一のアルミニウムめっき皮膜と別工程で形成される第二のアルミニウムめっき皮膜で被覆された凹部とを有することを特徴とするアルミニウムめっき部材。
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