JP2007234620A - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料に対してビームを傾斜しても分解能低下の少ない荷電粒子線装置を提供する

【解決手段】複数のレンズ6,7に対して一次ビーム4の軌道を偏向器、或いは可動絞り
によって、軸外に通し、その軸外軌道を制御することにより、ビーム傾斜時に対物レンズ
7で発生する収差を他のレンズ6の収差でキャンセルする手段を備えた。
【選択図】図4

Description

本発明は、電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いる荷電粒子線装置に係り、特に、試
料上で荷電粒子線を傾斜した場合にも分解能の劣化を抑えて高分解能像を得るのに好適な
荷電粒子線装置に関する。
走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く集束された荷電粒子線を試料上
で走査して試料から所望の情報(例えば試料像)を得る。このような荷電粒子線装置では
、年々高分解能化が進むと同時に、近年では試料に対して荷電粒子線を傾斜させて試料の
傾斜像を得ることが必要とされている。試料の傾斜像を得るには試料ステージを傾斜させ
るのが一般的であるが、高倍率での視野ずれを防止したり、より高速に試料傾斜像を得る
には、試料ステージを機械的に傾斜するよりも荷電粒子線を試料に対して傾斜するほうが
合理的であることがその理由である。
装置の高分解能条件を維持して荷電粒子線を傾斜させる技術として、実開昭55-48610号
公報および特開平2-33843号公報に、荷電粒子線を対物レンズの軸外に入射させて、対物
レンズの集束作用(振り戻し作用)を利用する方法が開示されている。また、特開2000-3
48658号公報には、荷電粒子線を対物レンズの集束磁界内で互いに逆向きに偏向させる2
段の偏向手段を設け、荷電粒子線を対物レンズ軸外で傾斜したときに発生する軸外色収差
を補正する技術が開示されている。特開2001-15055号公報には、荷電粒子線を対物レンズ
の軸外に通すための偏向手段を対物レンズよりも電子源側に設け、対物レンズの軸外で発
生する色収差(軸外色収差)を対物レンズよりも電子源側に設けたウィーンフィルタで補
正することにより、荷電粒子線を傾斜したときの分解能劣化を低減する技術が開示されて
いる。さらに、WO 01/33603には、光軸と直交する任意の2次元方向に直交電磁界を発生
させるウィーンフィルタを対物レンズよりも電子源側の光軸上に配置して、任意方向の軸
外色収差を補正する技術が開示されている。
実開昭55-48610号公報 特開平2-33843号公報 特開2000-348658号公報 特開2001-15055号公報 WO 01/33603
特開2000-348658号公報に記載されている、対物レンズの磁界内で荷電粒子線を2段偏
向させる方法は、近年一般的になっている対物レンズ磁場を試料側に漏洩させて高分解能
を得る方式に対しては、2段の偏向手段を配置すべき空間が対物レンズ磁極と試料との間
になるため、対物レンズ磁極と試料との距離を大きくする必要が生じて高分解能が得られ
なくなる問題がある。このために、特開2000-348658号公報では、対物レンズの磁極を4
個設けて、高分解能観察用と荷電粒子線傾斜用とで磁極の組み合わせを切り替える技術を
示しているが、この方法においては、磁極の数が多くなる分だけ磁極間の軸ずれや切り替
えたときの諸問題(倍率ずれ、軸ずれ、走査条件の変化など)を解決する必要があり、実
用面での困難が伴う問題がある。
一般に、対物レンズの軸外の性質を利用して荷電粒子線を傾斜する場合には軸外色収差
だけでなくコマ収差も発生し、低加速電圧時には軸外色収差が支配的であるが、比較的高
い加速電圧を使用する場合には、軸外色収差よりもむしろコマ収差が問題となる。したが
って、比較的高い加速電圧ではコマ収差を除去することが重要になる。また、低加速電圧
であっても、荷電粒子線の傾斜角度を大きくするとコマ収差が大きくなるため、軸外色収
差を補正しても高分解能が得られない。したがって、荷電粒子線を高角度に傾斜させて高
分解能像を得るには、軸外色収差とコマ収差を同時に補正する必要があるが、特開2000-3
48658号公報に記載されている従来技術ではこの点の配慮がなされておらず、高角度傾斜
時に分解能が低下する問題がある。
一方、特開2001-15055号公報に記載の技術では、荷電粒子線を対物レンズの軸外に入射
させたときに発生する軸外色収差をウィーンフィルタで補正しているが、ウィーンフィル
タではコマ収差の除去ができないため、高角度な荷電粒子線の傾斜、あるいは、比較的高
加速電圧に対する荷電粒子線の傾斜においては、分解能が低下する問題がある。
対物レンズの振り戻し作用を利用して荷電粒子線(ビーム)を試料上で傾斜するときに
発生する収差について、図2により説明する。ビーム4をビーム傾斜角制御コイル51に
より対物レンズ7の物点で偏向して対物レンズ7の軸外に入射させると、対物レンズ7の
集束作用によりビーム4が試料10上で傾斜する。この場合、対物レンズ7から見た物点
位置が移動していないため、ビームを傾斜しても視野が移動しない。ビームを傾斜したと
きの視野ずれを補正すると、ビームは原理的に図2に示す偏向条件を満たすことになる。
物点が光軸上にあるときに発生する対物レンズの収差は、球面収差と軸上色収差である
。このとき、対物レンズで発生する収差(Δwi)は、試料上での軌道勾配(w'i)の関数
として次の多項式(1)で表現される。なお、軌道勾配は、軌道関数w(w = x + j・y:jは
複素数の虚数単位)の光軸zに関する微分で表し、本明細書ではzに関する微分をダッシ
ュ「'」で表す。
Figure 2007234620
対物レンズの振り戻し作用によりビームを傾斜した場合、試料上での軌道勾配(w'i
は、ビーム傾斜角度に対応する軌道勾配(w't)とビーム開き角に関連する軌道勾配(w'f
)の和として、次のように書ける。
Figure 2007234620
試料上での軌道勾配座標系(w'i -座標系)でビームの状況を表した模式図を図3に示
す。図3の横軸は像面上におけるX方向の軌道の傾きを表し、縦軸はY方向の軌道の傾きを
表す。軌道の勾配はzに関する微分で表されるため、先に述べたようにダッシュ「'」を
つけた記述になっている。図3に示す円形図形(ビーム領域)は、一次ビームがレンズの
集束作用によって種々の勾配を持つ軌道の集合として表されるため、この集合の領域を表
している。図3において、ビームの集束軌道の中心がビーム傾斜(w't)に対応するため
、この分だけ円形図形が(xi',yi')の座標系の中心からずれている。ビーム傾斜時の収
差は、式(1)に式(3),(4)を代入して式(5)のように得られる。
Figure 2007234620
式(5)を展開すると、式(6)となり、本来は軸上収差のみの系からビーム傾斜(軌道の離
軸)によってザイデル収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲収差、歪曲収差)
と軸上色収差、軸外色収差が発生することがわかる。
Figure 2007234620
これらの収差を以下に項目別に列挙する。
Figure 2007234620
上記した項目の中で、w'tを含む項がビーム傾斜で発生する収差であり、コマ収差、非
点収差、像面湾曲収差、歪曲収差、軸外色収差が該当するが、ビーム集束角度(w'f)、
およびエネルギー幅ΔVの関数εiを含む収差のみ(コマ収差、非点収差、像面湾曲収差、
軸外色収差)がビーム傾斜時の分解能低下を起こす。
ビーム傾斜時に分解能を低下させる収差のなかで、非点収差は通常用いられている非点
補正コイルにより容易に補正できる。また、像面湾曲収差はビーム傾斜によるフォーカス
ずれのため、フォーカス条件(対物レンズ電流)を補正すれば消すことができる。さらに
、歪曲収差は、ビーム傾斜による照射位置のずれのため、ビーム傾斜に連動して照射位置
を補正すれば消すことができる。したがって、最終的に考慮すべき収差は軸外色収差とコ
マ収差であり、どちらもビーム傾斜角(w't)に比例して増大する。
本発明の目的は、上述した軸外色収差とコマ収差を実用的に容易な方法により除去して
、分解能の低下を抑えた高角度ビーム傾斜が可能な荷電粒子線装置を提供することにある
上記目的を達成するため、対物レンズを含む少なくとも2段以上の集束レンズを配置し
、各々のレンズ軸外にビームを入射させる偏向手段を設け、各レンズで発生した軸外収差
(軸外色収差及び/又はコマ収差)が互いにキャンセルするように、すなわち各レンズで
発生した軸外収差の総和がゼロ、或いはゼロに近くなるようにした。また、ビーム傾斜角
度に連動して非点収差を制御する手段を設けて、ビーム傾斜角によって変化する非点収差
の補正を可能にした。ビーム傾斜角に連動して対物レンズの焦点距離を制御するのも有効
である。さらに、ビーム傾斜角に連動して照射位置のずれを補正することも可能にした。
更に他の構成として、偏向手段に換えて、絞り機構を設け、ビームの通過を制限するこ
とで、実質的にレンズ軸外にビームを入射させるようにした。
本発明によれば、対物レンズの集束作用を利用したビーム傾斜を行っても、軸外色収差
やコマ収差、および非点収差の影響を受けず、高分解能な傾斜観察像を得ることが可能に
なる。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。以下の図において、同じ機能部分
には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極1と第一陽極2
の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により電圧が印加され、所定
のエミッション電流で一次電子線4が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間
には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により加速電圧が印加され、陰極
1から放出された一次電子線4が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は
、レンズ制御電源21で制御された集束レンズ5で集束され、絞り板8で一次電子線の不
要な領域が除去された後に、レンズ制御電源22で制御された集束レンズ6、および対物
レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により、試料10に微小スポットとして集
束される。対物レンズ7は、インレンズ方式、アウトレンズ方式、およびシュノーケル方
式(セミインレンズ方式)など、種々の形態をとることができる。また、試料に負の電圧
を印加して一次電子線を減速させるリターディング方式も可能である。さらに、各々のレ
ンズは、複数の電極で構成される静電型レンズで構成してもよい。
一次電子線4は、走査コイル制御電源24によって制御される走査コイル9で試料10
上を二次元的に走査される。一次電子線の照射で試料10から発生した二次電子等の二次
信号12は、対物レンズ7の上部に進行した後、二次信号分離用の直交電磁界発生装置1
1により、一次電子と分離されて二次信号検出器13に検出される。二次信号検出器13
で検出された信号は、信号増幅器14で増幅された後、画像メモリ25に転送されて像表
示装置26に試料像として表示される。
走査コイル9と同じ位置に2段の偏向コイル51が配置されており、傾斜制御電源31
によって対物レンズの物点が偏向支点となるように、対物レンズに入射する一次電子線4
の位置を二次元的に制御できる。こうして、対物レンズの光軸に対してビームを傾斜させ
ることができる。集束レンズ6の付近に非点収差補正コイル53が配置されており、ビー
ム傾斜条件に連動して非点補正電源33で制御される。集束レンズ6と絞り板8の間には
2段の偏向コイル52が配置されており、集束レンズ6の物点が偏向の支点となるように
、収差制御電源32によって集束レンズ6に入射する一次電子線4の位置を二次元的に制
御できる。偏向コイル51には、対物レンズの物点が偏向支点となる一次電子線位置制御
信号に加えて、一次電子線の試料上での照射位置を二次元的に制御できる制御信号も流す
ことができ、ビーム傾斜条件に連動して照射位置のずれを補正できる。
試料ステージ15は、試料を少なくとも一次電子線と垂直な面内の2方向(X方向、Y
方向)に試料10を移動することができる。入力装置42からは、画像の取り込み条件(
走査速度、加速電圧など)やビーム傾斜条件(傾斜方向や傾斜角度)の指定、および画像
の出力や記憶装置41への保存などを指定することができる。
〔実施例1〕
図1の構成を有する走査電子顕微鏡により、ビーム傾斜時に発生する軸外色収差を補正
するための実施例について、その主要部分を抜粋した図4を用いて以下に詳細に説明する

偏向コイル52(以下、この偏向コイル52を収差制御コイルという)により、集束レ
ンズ6の物点が偏向支点となるように一次ビーム4を偏向すると、ビーム傾斜時と同じ性
質の収差を集束レンズ6で発生させることができる。集束レンズ6の像点(クロスオーバ
点)でのビームエネルギーをV1とすると、式(2)に対応するエネルギー幅のパラメータは
、次式(13)となる。
Figure 2007234620
一方、対物レンズの角倍率をMaとすると、収差補正レンズ像点でのビームの集束角(w'
f1)は、式(14) で与えられる。
Figure 2007234620
さらに、集束レンズ6のビーム傾斜角(収差補正用)をw't1とし、対物レンズ7による
ビーム傾斜角w'tとの比をkで表すと、式(15) より、集束レンズ6で発生した収差が最終
フォーカス点に現れる量Δw1は、対物レンズの光学倍率をMとするとき、式(16) となる
Figure 2007234620
Cs1:集束レンズ6の球面収差係数
Cc1:集束レンズ6の軸上色収差係数
これより、対物レンズ7が作る軸外色収差をキャンセルするための集束レンズ6のビー
ム傾斜条件(kの条件)は、式(17) より、式(18) となる。
Figure 2007234620
ここで、式(18)の右辺にはマイナスの符号がついているが、図4の構成の場合には、光
学倍率Mがマイナスの値となって式(18)のkの値がプラスになる。例えば、式(18)の値が0
.2になったとすると、対物レンズ7によるビーム傾斜角度の0.2倍の角度だけ、集束レン
ズ6でビームを傾斜させればよい。対物レンズ7によるビーム傾斜角度は、偏向コイル5
1(以下、この偏向コイル51をビーム傾斜角制御コイルという)の電流に比例するため
、予めビーム傾斜角制御コイル51の電流と対応する対物レンズ7によるビーム傾斜角度
との関係を記憶装置41に登録することでプリセットしておくことができる。また、集束
レンズ6によるビーム傾斜角度は、収差制御コイル52の電流に比例するため、収差制御
コイル52の電流と集束レンズ6によるビーム傾斜角度の関係を予め記憶装置41に登録
する等してプリセットしておくことができる。これらのプリセット条件と式(18)の値によ
り、ビーム傾斜角制御コイル51と収差制御コイル52の電流の比例関係が式(18)のkの
値を満たすように、ビーム傾斜角制御電源31と収差制御電源32をコンピュータ40に
より制御することができる。一方、式(18)のkの符号がマイナスになる場合には、対物レ
ンズでのビーム傾斜の方向と逆向きの方向で集束レンズ6によるビーム傾斜を行うことを
意味するため、この場合には、ビーム傾斜角制御コイル51に対する収差補正コイル52
の電流が逆極性になる。
一方、コマ収差をキャンセルする条件を求めると、式(19)より式(20)のようになる。
Figure 2007234620
この場合のkの値は、一般には式(18)のkの値と異なるため、式(20)のkの値を選択し
たときには、式(18)を満足しなくなり、ビーム傾斜に伴って色収差が発生する。これは、
対物レンズ7と集束レンズ6の形状が異なるために、対物レンズ7でビームを傾斜したと
きに発生する色収差とコマ収差の大きさの比が、集束レンズ6でビームを傾斜したときに
発生する色収差とコマ収差の大きさの比に一致しないことによる。
本実施例では、例えば、加速電圧5kV以下の低加速電圧において軸外色収差が支配的
の場合には、式(18)の条件を満たすようにビーム傾斜角制御コイル51と収差制御コイ
ル52を連動して制御する。また、加速電圧が5kVを超える条件ではコマ収差が支配的
となるため、式(20)を満たすようにビーム傾斜角制御コイル51と収差制御コイル52を
連動して制御する。なお、色収差支配かコマ収差支配かの境界を決める加速電圧は対物レ
ンズの球面収差係数と軸上色収差係数、および一次電子線のエネルギー幅に依存するため
、この境となる加速電圧は5kVに限定されるものではない。収差制御コイル52の最適
制御条件は、ビーム傾斜角度に比例するため、本実施例では、予め特定のビーム傾斜角度
に対して適切な条件をプリセットし、この値から、任意のビーム傾斜角に対する制御条件
を計算してビーム傾斜角制御コイル51と収差制御コイル52の連動条件を決めて、各コ
イルの制御を行う。
〔実施例2〕
ビーム傾斜時に軸外色収差とコマ収差が同程度に影響する場合、あるいは、ビーム傾斜
角度が例えば5°以上と大きい場合には、軸外色収差とコマ収差とを同時に補正する必要
がある。
軸外色収差とコマ収差とを同時に補正するには、式(18)と式(20)が同じkの値になるこ
とが必要である。この条件を満たすには、対物レンズの光学倍率(横倍率)を含む条件の
設定が必要となる。この条件は、電子光学理論で周知の関係式(21) を用いて、式(22) で
与えられる。
Figure 2007234620
式(22)は、集束レンズ6の焦点位置を所定の条件にすることで満足させることができ
る。すなわち、集束レンズ6の焦点位置を対物レンズ側に移動するとMの値が大きくなり
、対物レンズから遠ざけるとMの値が小さくなる。したがって、図5に示すように、縦軸
にA(=M2(Cci/Csi)-(Cc1/Cs1))を取り、横軸に集束レンズ6の焦点位置を取ると、A=0に
なる焦点位置を見出すことができる。A=0になる焦点位置は、すなわち、式(22)を満足す
る条件であるので、この焦点位置を、予めシミュレーションや実験により決定することが
できる。
式(21)の関係を用いると、収差制御コイル52の最適制御条件を与える式(20)は、式
(23)となる。
Figure 2007234620
本実施例では、式(21)の関係を満たすように集束レンズ6の励磁条件を設定するととも
に、式(23)の関係を満たすようにビーム傾斜角制御コイル51と収差制御コイル52を連
動して制御する。
図6のフローチャートを用いて、色収差とコマ収差を同時に補正する制御フローを説明
する。
最初、式(22)を満たすMの値を実現するための集束レンズ6の焦点位置を予めシミュレ
ーションや実験で求めて記憶装置41に登録する(ステップ11)。次に、式(23)を満た
すkの値を予め計算して記憶装置41に登録する。kの値は、予めシミュレーションや実
験で決めた値を使うこともできる(ステップ12)。
更に、対物レンズ7によるビーム傾斜角とビーム傾斜角制御コイル51の電流の関係を
予めシミュレーションや実験で求めて記憶装置41に登録し(ステップ13)、集束レン
ズ6によるビーム傾斜角と収差制御コイル52の電流の関係を予めシミュレーションや実
験で求めて記憶装置41に登録する(ステップ14)。次に、式(23)を満たすkの値から
、ビーム傾斜角制御コイル51と収差制御コイル52の電流の関係を求めて記憶装置41
に登録する(ステップ15)。
次に、コンピュータ40により、ステップ13で登録した関係とビーム傾斜角からビー
ム傾斜角制御コイル51の電流を設定し(ステップ16)、ステップ15で登録した関係
から、ビーム傾斜角制御コイル51に対応する収差制御コイル52の電流を設定する(ス
テップ17)。
〔実施例3〕
本実施例では、さらに、ビーム傾斜に連動して非点収差補正コイルと対物レンズ電流を
制御する。ビーム傾斜で発生する非点収差は、式(9)から明らかなように、ビーム傾斜角
(w't)の2乗に比例して増大する。ビーム傾斜角(w't)は、ビーム傾斜角制御コイル5
1の電流に比例するため、本実施例では、ビーム傾斜角制御コイル51の電流に対して予
め定めた複数の条件に対して、図9に示すように非点収差が補正される非点収差補正コイ
ル53の動作条件を記憶装置41に登録するなどしてプリセットしておく。ビーム傾斜に
よって発生する非点収差は、ビーム傾斜角が0(ビーム傾斜角制御コイル51の電流が0
)のときの非点補正量(Isx0, Isy0)と任意のビーム傾斜角での非点補正量の差で与えら
れる。よって、ビーム傾斜角制御コイル51の電流(Ix, Iy)が(0, 0)の条件と、予め
定めた電流(Ix0, Iy0)の条件における非点収差補正電流を(Isx0, Isy0)at (Ix, Iy)=(0
, 0), (Isx1, Isy1) at (Ix, Iy)=(Ix0, 0), (Isx2, Isy2) at (Ix, Iy)=(0, Iy0), (Isx
3, Isy3) at (Ix, Iy)=(Ix0, Iy0)として記憶装置41にプリセットしておき、コンピュ
ータ40は、これらのプリセット値から任意のビーム傾斜角制御コイル51の電流(Ix,
Iy)に対する非点収差補正コイル53の電流(Isx, Isy)を、次のように連動して制御す
る。
Figure 2007234620
この制御により、ビーム傾斜角制御コイル51の電流を設定してビーム傾斜角を制御し
ても非点収差が自動的に補正されるように非点収差補正コイル53が設定される。
さらに、ビーム傾斜角制御コイル51の電流(Ix, Iy)を(0, 0)から(Ix0, 0)にし
たときのフォーカス電流(対物レンズ電流)ずれをΔIo1、(Ix, Iy)を(0, 0)から(0
, Iy0)にしたときのフォーカス電流のずれをΔIo2としてそれぞれ記憶装置41に登録す
る。コンピュータ40は、これらの登録値を用いて、任意のビーム傾斜角制御コイル51
の電流(Ix, Iy)に対してフォーカス電流の補正値ΔIoを次のように連動して制御する。
Figure 2007234620
この制御により、ビーム傾斜角制御コイル51の電流を設定してビーム傾斜角を制御し
ても、フォーカスのずれが自動的に補正される。
〔実施例4〕
図7に、集束レンズ6を2個のレンズで構成した実施例を示す。ビーム傾斜により対物
レンズで発生したコマ収差をキャンセルする収差を、対物レンズより電子源側の集束レン
ズで発生させるには、集束レンズの球面収差を大きくする必要がある。何となれば、式(2
3)で示される通り、集束レンズの球面収差が最終フォーカス点に与える寄与(収差の補正
量)が対物レンズの光学倍率(M<1)の3乗に比例して小さくなるためである。そのた
め、ビーム傾斜時には大きな球面収差が得られるように、磁極孔径とギャップの小さい集
束レンズが望ましい。一方で、球面収差が大きいレンズは、高分解能観察に対してはデメ
リットをもたらす。本実施例では、高分解能に特化した用途とビーム傾斜機能とを両立さ
せるために、球面収差などの幾何収差が小さいレンズ61と逆に幾何収差の大きなレンズ
62をペアにしている。
本実施例によれば、ビームを傾斜しない用途には高分解能用のレンズ(孔径の大きい磁
極を有するレンズ)61を用い、ビームを傾斜する用途には幾何収差の大きなレンズ(孔
径とギャップの小さい磁極を有するレンズ)62に切り替えて使用できる。つまり、高分
解能観察時には、幾何収差の小さな高分解能用レンズ61を使用し、幾何収差の大きなレ
ンズ62はオフにする。一方、ビーム傾斜時には、幾何収差の大きなレンズ62を用い、
高分解能用レンズ61はオフにする。また、収差制御用コイル63に軸ずれ補正用のアラ
イメントコイルとしての機能を兼用させることで、磁極の切り替えに伴う軸ずれを解決で
きる。
以上述べた実施例では、ビーム傾斜で発生する対物レンズの収差を他の一個のレンズで
補正する方法を開示したが、対物レンズの収差を補正するのに2個以上の複数のレンズを
用いることも可能である。
例えば、ビーム傾斜時に発生する色収差を例に複数のレンズで対物レンズの収差を補正
する原理について、図8を用いて説明する。対物レンズでビームを傾斜したときに発生す
る色収差は、ビーム傾斜方向に対応してX成分とY成分が発生する。この収差は、対物レ
ンズに限らず、どのような集束レンズでもビームを傾斜すれば発生するが、その大きさは
レンズの磁極形状や動作条件(焦点距離など)で異なる。そのため、複数のレンズを用い
て、それぞれのレンズでビームを傾斜させたときに、それらが作る色収差のベクトルと対
物レンズで作る色収差のベクトルの総和(ベクトル和)が図8に示すように0に戻るよう
にすれば、対物レンズの色収差が補正されることになる。したがって、補正に用いるレン
ズは何個でもよく、要は、色収差ベクトルの総和を0にすることが重要なのである。コマ
収差についても同様に、ビーム傾斜に対応した方向と大きさで収差が発生するため、図8
に示した図が、そのままコマ収差の補正原理としても当てはまる。
以下に、図10から図18を用いて本発明の他の実施例について説明する。図10から
図18は、対物レンズでビームを傾斜させたときに、対物レンズを含む複数のレンズで発
生する収差の総和を0にするための軌道制御の例を示す図である。
〔実施例5〕
図10は、集束レンズ6と絞り8との間に偏向器を一個配置したときの軌道制御の例を
示す図である。この例では、絞り8と集束レンズ5の間に配置した2段の偏向器からなる
収差制御コイル52によって、一次電子線4が絞り8の孔中心で傾斜して通過する条件を
作り、絞り8と集束レンズ6の間に配置した偏向器521で、集束レンズ6から見た一次
電子線4の偏向支点が、集束レンズ5の集束点Aになるように軌道を制御する。また、集
束レンズ6の集束点Bはビーム傾斜角制御コイル51の偏向支点に一致しており、ビーム
傾斜角制御コイル51と対物レンズ7の動作で一次電子線4を傾斜させる。
〔実施例6〕
図11は、集束レンズ6と絞り8の間に偏向器が配置できないときの軌道制御の例を示
す図である。この例では、集束レンズ5と電子源の間に配置した2段の偏向器からなる収
差制御コイル52によって、一次電子線4の偏向支点が見かけ上、電子源位置と一致する
ように一次電子線4の軌道を制御する。このとき、集束レンズ5で発生した収差は、集束
レンズ6でその向きが反転するため、対物レンズ7で発生する収差をキャンセルするため
には、集束レンズ5を通過するときの一次電子線4の軌道のずれ方向が図10の場合と逆
向き(収差の向きが逆向き)になる。また、集束レンズ5の集束点Aの位置は偏向器52
1の位置(偏向支点)と一致しており、集束点Aを偏向支点として一次電子線4の軌道を
再び光軸と一致させている。
〔実施例7〕
図12は、絞り8を集束レンズ6と対物レンズ7との間に配置したときの軌道制御の例
を示す図である。この例では、集束レンズ6で対物レンズ7の収差を補正することが困難
なため、図11と同様に集束レンズ5によって、一次電子線4を傾斜したときに発生する
対物レンズの収差を補正するのに必要な収差を発生させる。
〔実施例8〕
図13は、2段のレンズ系を用いて、レンズ間で一旦ビームを集束させて使用する光学
系において、収差を補正してビームを傾斜するときの軌道制御の例を示す図である。図1
3の例では、絞り8を集束レンズ5と電子源の間に配置し、絞り8と集束レンズ5の間に
配置された2段の偏向器からなる収差制御コイル52により、見かけ上、電子源位置が偏
向支点となるようにビームを偏向する。また、集束レンズ5によるビーム集束点には、ビ
ーム傾斜角制御コイル51が配置され、このビーム傾斜角制御コイル51により試料10
上でのビーム傾斜角を制御する。
〔実施例9〕
図14は、2段のレンズ系を用い、レンズ間の途中でビームを集束させないで使用する
光学系において、収差を補正してビームを傾斜するときの軌道制御の例を示す図である。
レンズ間の途中でビームが集束しない場合には、集束レンズ5で発生した収差の方向が途
中で反転しないため、集束レンズ5の収差と対物レンズ7の収差をキャンセルするために
、ビーム傾斜角制御コイル51で偏向する方向と収差制御コイル52の偏向方向とが逆向
きになる。
〔実施例10〕
図15は、図14の光学系(途中でクロスオーバを作らない)に対して、絞り8の位置
を集束レンズ5と対物レンズ7の途中に配置した実施例を示す図である。この例では、一
次電子線4が絞り8の孔中心を通過するように、絞り8の前後にビーム傾斜角制御コイル
51を配置し、偏向された軌道が絞り8の中心を通るようにビーム傾斜角制御コイル51
を動作させる。
〔実施例11〕
図16は、試料10に負の電圧(Vr)を印加した状態で、一次電子線4を対物レンズ
7で傾斜したときの軌道制御の例を示す図である。試料10に負電圧(Vr)を印加する
と、一次電子線4は試料10の直前で急激に減速するため、負電圧を印加しない場合に比
べて試料上でのビーム傾斜角を大きくすることができる。
〔実施例12〕
図17は、薄膜の試料10に対物レンズ7で傾斜させた一次電子線4を照射して、試料
10を透過した電子121を検出する実施例を示す図である。結晶構造を有する薄膜試料
の走査透過像(STEM像)を取得する場合、しばしば、一次電子線の照射方位を試料の
結晶方位と対応させることが必要となる。試料の結晶方位は薄膜切片を切り出すときのば
らつきで異なるため、結晶方位は任意の方向に数度から10度程度のずれを生じる。その
ため、試料を機械的に傾斜させて方位合わせを行う方法に比較して、本実施例のように、
分解能の低下を抑えて一次電子線を任意に傾斜させることにより、結晶と電子線の方位合
わせ操作が極めて簡単になる。薄膜試料10より下方には、透過電子121を透過電子検
出器131に対してアライメントするための偏向器54が配置され、この偏向器54は、
一次電子線4の傾斜角に連動して制御される。また、図17には図示していないが、薄膜
試料10と透過電子検出器131の間に、透過電子の検出角を制限する手段(レンズや絞
りなど)を配置することも可能である。
〔実施例13〕
図18は、絞り8と対物レンズ7との間に2個の集束レンズ6a,6bを配置したとき
の軌道制御の例を示す図である。この例では、集束レンズ6aと6bの間に一次電子線4
の集束点を設け、この集束点の位置に収差制御コイル52を配置して、集束レンズ6bで
収差を発生させる。集束レンズ6bによる一次電子線の焦点位置には、ビーム傾斜角制御
コイル51が配置され、対物レンズ7の軸外に一次電子線4を入射させてビームを光軸に
対して傾斜する。収差制御コイル52は、対物レンズ7で発生した収差が集束レンズ6b
の収差でキャンセルするように制御される。
〔実施例14〕
図19乃至図25は荷電粒子線を集束するための複数のレンズ群に対して入射位置を制
御する光軸制御手段として、絞り移動機構を採用した実施例を示している。特に図19は
半導体ウェーハ上に形成されたパターン寸法計測や形状観察のための走査電子顕微鏡の全
体構成である。ここでは図1の概略構成図と違っている部分について説明する。
第一集束レンズ5と実質的に同じ高さに非点収差補正コイル53と、非点収差補正コイ
ル53の動作に伴う照射位置ずれを補正するアライナコイル55が配置され、それぞれ電
源33と35を介してコンピュータ40に接続されている。絞り板8は、駆動機構18に
より、光軸に垂直な平面内を高精度に移動可能である。駆動機構18はコンピュータ40
に接続されている。走査コイル9と同じ位置に二段のイメージシフトコイル57とアライ
メントコイル56が配置され、それぞれ電源37と36を介してコンピュータ40に接続
されている。
半導体ウェーハを観察する走査電子顕微鏡は一般的に試料のダメージ防止の観点から数
100V程度の低加速の一次電子線を利用する。低加速でかつ高分解能を実現するため、
リターディング電源38を接続して試料10に負の電圧を印加して一次電子線4を減速さ
せる。また、ブースティング電源39を接続してブースティング電極16に正の高電圧を
印加して一次電子線を後段加速させることで、対物レンズ7の色収差を低減し高分解能化
している。
リターディングおよびブースティングの電圧は、試料10の表面近傍に、二次電子12
を反射板(変換電極)17側に加速する電界分布を形成している。この結果、加速された
二次電子12は走査コイル9を通り抜けて反射板17に衝突し、新たな二次電子65に変
換される。変換された二次電子65は二次信号検出器13で検出される。
図20は本実施例での一次電子線4の軌道を詳細に示している。この例では第二集束レ
ンズ6のクロスオーバ4cをアライナコイル56の位置に一致させた。陰極1から引き出
された放出電子4aは絞り板8の絞り径に比べて十分に広がっている。放出電子4aの照
射範囲内で絞りを移動することで軸外の一次電子線4bを選択して利用することができる
。第二集束レンズ6の傾斜角w't1と絞りの移動量δは比例関係にあり、式(18)を満足す
るようにアライナコイル56でビーム傾斜角w'tを制御することで軸外色収差のない傾斜
像が得られる。
本方式の特長は、絞りを手動からコンピュータ制御された駆動機構に置換するだけで実
現できる点である。また、一次電子線4bが陰極1から第二集束レンズ6のクロスオーバ
4cまで軸外を通ることから、補正レンズの収差係数が、第二集束レンズのみの収差係数
に比べて数倍大きくなることで、大きな傾斜角度までの軸外色収差補正が可能になる。
図21は、クロスオーバ4cの位置を第二集束レンズ6側から対物レンズ7側に変化さ
せていったときの補正条件kの変化を示している。クロスオーバ4cを対物レンズ7に近
づけるとkが小さくなり、軸外色収差とコマ収差が同時に補正できる条件、即ち式(22)を
満足するクロスオーバ4cが1点存在することが確認できる。
また、図22は、軸外色収差を補正した式(18)の条件下で、クロスオーバ4cの位置を
第二集束レンズ6側から対物レンズ7側に変化させていったときの絞り8の移動量δの変
化を示している。クロスオーバ4cを対物レンズ7に近づけると、移動量δが小さくなる
ことが分かる。
図23は、軸外色収差を補正した式(18)の条件下で、クロスオーバ4cの位置を第二集
束レンズ側から対物レンズ側に変化させていったときの個別の収差量と最終的なビーム径
(あるいは分解能)の変化を示している。クロスオーバ4cを対物レンズに近づけると、
コマ収差は減少するが、逆に回折収差と光源サイズの映り込み(レンズによる電子源先端
径の収縮率)が大きくなり、最適なクロスオーバ4cの位置が決まる。
図24は、分解能を優先し、クロスオーバ4cの位置をアライナコイル56の位置に一
致させなかった場合の実施例を示している。この場合、対物レンズ7から見た仮想物点4
dはクロスオーバ4cと一致しないので、試料10上のビーム到達位置4eが中心軸上か
ら位置ずれするが、イメージシフトコイル57を制御して中心軸上に移動できる。あるい
は、試料ステージ15を移動し、視野ずれを回避することもできる。いずれの場合も、ビ
ーム傾斜角度の関係を予め記憶装置41に登録する等してプリセットしておくことでコン
ピュータ40により制御することができる。
図25に、上記視野ずれ補正を含めて、ビーム傾斜の実行フローチャートを示した。観
察点に移動し(S21)、ビーム傾斜のコマンドが発行されると(S22)、要求された
ビーム傾斜角度に応じて、プリセット値から絞り8の移動量とアライナコイル56の電流
量を計算し、ビーム傾斜と絞り移動を実行する(S23)。同時に、要求されたビーム傾
斜角度に応じて、プリセット値からフォーカス補正値および非点補正値を予測し、一次補
正を実行する(S24)。続いて、要求されたビーム傾斜角度に応じて、視野ずれ補正、
歪み補正を実行する(S25)。ステップ24の一次補正でフォーカスおよび非点補正が
大凡合っているので、通常の自動焦点・自動非点合わせに比べて狭い探索範囲で二次補正
を完了でき(S26)、高分解能の画像収得ができる(S27)。画像を取得した後は、
ビーム傾斜角度を0に戻し、ステップ25の視野ずれ補正をキャンセルする(S28)。
本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図。 対物レンズの集束作用を利用したビーム傾斜法の原理図。 ビーム傾斜時の軌道勾配の分布を示す図。 ビーム傾斜時の収差を補正する原理図。 色収差とコマ収差を同時に補正するための集束レンズ焦点位置の条件を表す図。 色収差とコマ収差を同時に補正するビーム傾斜のフローチャート。 4個の磁極で構成させる集束レンズの構成図。 複数のレンズの作用でビーム傾斜時に発生する対物レンズの色収差を補正する原理を示す図。 ビーム傾斜角制御コイル電流と、ビーム傾斜により発生する非点収差を補正するための非点収差補正コイル電流の関係を表す図。 対物レンズの収差を補正するための軌道制御の例を示す図。 対物レンズの収差を補正するための軌道制御の例を示す図。 対物レンズの収差を補正するための軌道制御の例を示す図。 2段のレンズ系において、途中にビームのクロスオーバ(集束点)を作ってビームを傾斜するときの軌道制御の例を示す図。 2段のレンズ系において、途中にビームのクロスオーバ(集束点)を作らないでビームを傾斜するときの軌道制御の例を示す図。 2段のレンズ系において、絞り板が2段レンズの間に配置され、途中にビームのクロスオーバ(集束点)を作らないでビームを傾斜するときの軌道制御の例を示す図。 試料に負の電圧を印加して、対物レンズにより一次電子線を傾斜させるときの軌道制御の例を示す図。 薄膜試料に対物レンズで傾斜させたビームを照射して、走査透過像(STEM像)を得る実施例を示す図。 絞りと対物レンズとの間に2個の集束レンズを配置したときの軌道制御の例を示す図。 本発明の他の例である走査電子顕微鏡の全体構成図。 一次電子線の軌道の詳細説明図。 第二集束レンズのクロスオーバ位置を変化させた場合の補正条件kの変化を示す図。 第二集束レンズのクロスオーバ位置を変化させた場合の絞り移動量δの変化を示す図。 第二集束レンズのクロスオーバ位置を変化させた場合の個別の収差量と最終的なビーム径の変化を示す図。 クロスオーバの位置をアライナコイルの位置に一致させなかった場合の実施例を示す図。 ビーム傾斜の実行フローチャート。
符号の説明
1…陰極、2…第一陽極、3…第二陽極、4…一次電子線、5…第一集束レンズ、6…第
二集束レンズ、7…対物レンズ、8…絞り板、9…走査コイル、10…試料、11…二次
信号分離用直交電磁界(ExB)発生器、12…二次信号、13…二次信号用検出器、1
4…信号増幅器、15…試料ステージ、20…高圧制御電源、21…第一集束レンズ制御
電源、22…第二集束レンズ制御電源、23…対物レンズ制御電源、24…走査コイル制
御電源、25…画像メモリ、26…像表示装置、31…ビーム傾斜角制御電源、32…収
差制御電源、33…非点補正電源、40…コンピュータ、41…記憶装置、42…入力装
置、51…ビーム傾斜角制御コイル、52…収差制御コイル、53…非点収差補正コイル
、54…偏向器、61…高分解能用レンズ、62…ビーム傾斜用(収差補正用)レンズ、
63…アライメント兼用収差制御用偏向器、121…透過電子、131…透過電子検出器
、521…偏向器

Claims (10)

  1. 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束して試料上で走査する荷電粒子光学系とを備えた荷電粒子線装置において、
    前記荷電粒子光学系は、
    試料上に前記荷電粒子線を集束して照射する対物レンズと、
    当該対物レンズと前記荷電粒子源との間に配置され、前記対物レンズとの間にクロスオーバーを作らないで、前記荷電粒子線を対物レンズに照射する他のレンズと、
    前記対物レンズの軸外を通過させることによって、前記荷電粒子線を前記対物レンズの軸外から傾斜して試料に照射するように偏向する第1の偏向器と、
    当該第1の偏向器の偏向方向に対し逆の方向に、前記荷電粒子線を偏向することによって、前記他のレンズの軸外を通過させ、前記対物レンズと前記他のレンズが発生するコマ収差をキャンセルする第2の偏向器とを有していることを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項1記載の荷電粒子線装置において、前記第1の偏向器は、前記他のレンズを通過した荷電粒子線を、前記第2の偏向器による偏向方向と逆の方向に偏向する第1のコイルと、当該第1のコイルによって偏向された荷電粒子線を、前記対物レンズに向かって偏向する第2のコイルを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
  3. 請求項2記載の荷電粒子線装置において、前記第1のコイルと第2のコイルの間に、絞りを配置したことを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項1記載の荷電粒子線装置において、前記試料に負の電圧を印加する手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
  5. 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束して試料上で走査する荷電粒子光学系とを備えた荷電粒子線装置において、
    前記荷電粒子光学系は、
    試料上に前記荷電粒子線を集束して照射する対物レンズと、
    当該対物レンズと前記荷電粒子源との間に配置され、前記対物レンズとの間で前記荷電粒子線を集束させないで、前記荷電粒子線を対物レンズに照射する他のレンズと、
    前記対物レンズの軸外を通過させることによって、前記荷電粒子線を前記対物レンズの軸外から傾斜して試料に照射するように偏向する第1の偏向器と、
    当該第1の偏向器の偏向方向に対し逆の方向に、前記荷電粒子線を偏向することによって、前記他のレンズの軸外を通過させ、前記対物レンズと前記他のレンズが発生するコマ収差をキャンセルする第2の偏向器を有していることを特徴とする荷電粒子線装置。
  6. 請求項5記載の荷電粒子線装置において、前記第1の偏向器は、前記他のレンズを通過した荷電粒子線を、前記第2の偏向器による偏向方向と逆の方向に偏向する第1のコイルと、当該第1のコイルによって偏向された荷電粒子線を、前記対物レンズに向かって偏向する第2のコイルを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 請求項6記載の荷電粒子線装置において、前記第1のコイルと第2のコイルの間に、絞りを配置したことを特徴とする荷電粒子線装置。
  8. 請求項5記載の荷電粒子線装置において、前記試料に負の電圧を印加する手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
  9. 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束して試料上で走査する荷電粒子光学系とを備えた荷電粒子線装置において、
    前記荷電粒子光学系は、
    試料上に前記荷電粒子線を集束して照射する対物レンズと、
    当該対物レンズと前記荷電粒子源との間に配置され、前記対物レンズとの間にクロスオーバーを作らないで、前記荷電粒子線を前記対物レンズに照射する他のレンズと、
    前記他のレンズを通過した前記荷電粒子線を偏向する第1のコイルと、
    当該第1のコイルによって偏向された荷電粒子線を前記第1のコイルとは逆の方向に偏向して前記対物レンズの軸外に照射する第2のコイルと、
    前記荷電粒子源から放出された荷電粒子線を、前記第1のコイルとは逆の方向に偏向する第3のコイルと、
    当該第3のコイルとは逆の方向に前記荷電粒子線を偏向する第4のコイルを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
  10. 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束して試料上で走査する荷電粒子光学系とを備えた荷電粒子線装置において、
    前記荷電粒子光学系は、
    試料上に前記荷電粒子線を集束して照射する対物レンズと、
    前記対物レンズの軸外を通過させることによって、前記荷電粒子線を前記対物レンズの軸外から傾斜して試料に照射するように偏向する偏向器と、
    前記試料に負の電圧を印加させる負電圧印加手段を備え、
    前記荷電粒子線の傾斜角は、前記偏向器の偏向角と前記試料に印加される負電圧によって決定されることを特徴とする荷電粒子線装置。
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