JP2007234346A - 電極材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高容量、低インピーダンス特性を有する電極材料とその製造方法およびそれを用いた電気化学素子を提供する。
【解決手段】 本発明の直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブ表面にポリフルオレンまたはその誘導体を担持させてなる電極材料は、単層カーボンナノチューブとポリフルオレンまたはその誘導体の密着性が良好で、電極材料の抵抗が低減し、放電の際のIRドロップによる電圧低下が少なく、さらに負極の酸化還元電位が低く、正極の酸化還元電位が高いので、高電圧特性を有し、さらに高容量、低インピーダンス特性を有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電極材料およびそれを用いた二次電池やキャパシタなどの電気化学素子に関し、さらに詳しくは出力やサイクル特性にすぐれ、高容量、低インピーダンス特性を有する電極材料に関する。
近年、地球の環境問題などから、エンジン駆動であるガソリン車やディーゼル車に代わり、電気自動車やハイブリッド車への期待が高まっている。これらの電気自動車やハイブリッド車では、モーターを駆動させるための電源としては、高エネルギー密度かつ高出力密度特性を有する電気化学素子が用いられる。このような電気化学素子としては、二次電池、電気二重層キャパシタがある。
二次電池には、鉛電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル水素電池、またはプロトン電池などがある。これらの二次電池は、イオン伝導性の高い酸性またはアルカリ性の水系電解液を用いているため、充放電の際に大電流が得られるという優れた出力特性を有するが、水の電気分解電圧が1.23Vであるため、それ以上の高い電圧を得ることができない。電気自動車の電源としては、200V前後の高電圧が必要であるため、それだけ多くの電池を直列に接続しなければならず、電源の小型・軽量化には不利である。
高電圧型の二次電池としては、有機電解液を用いたリチウムイオン二次電池が知られている。このリチウムイオン二次電池は、分解電圧の高い有機溶媒を電解液溶媒としているため、最も卑な電位を示すリチウムイオンを充放電反応に関与する電荷とすれば、3V以上の電位を示す。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵、放出する炭素を負極とし、コバルト酸リチウム(LiCoO2 )を正極として用いたものが主流である。電解液には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )などのリチウム塩をエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどの溶媒に溶解させたものが用いられている。このようなリチウムイオン二次電池は、平均作動電圧として3.6Vを示す。
しかしながら、このリチウムイオン二次電池は、電圧が高くエネルギー密度も高いので電源として優れているが、充電反応が電極のリチウムイオンの吸蔵、放出であるため、出力特性に劣るという問題があり、大きな瞬間電流が必要とされる電気自動車用の電源には不利である。そこで、高電圧で、かつ充放電特性を改善するために正極にポリチオフェンの誘導体を用いる試みがあるが、作動電圧としては4.0Vである。(特許文献1)
また、電気二重層キャパシタは、活性炭などの分極性電極を正負極とし、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒に四フッ化ホウ素や六フッ化リンの四級オニウム塩を溶解させたものを電解液としている。このような、電気二重層キャパシタは電極表面と電解液との界面に生じる電気二重層を静電容量としており、電池のようなイオンが関与する反応がないので、充放電特性が高く、また充放電サイクルによる容量劣化が少ない。しかし、二重層容量によるエネルギー密度は電池に比べてエネルギー密度が低く、電気自動車の電源としては、大幅に不足する。これに対して、大容量化を目的として正極にポリピロールを用いる試みがあるが、作動電圧は2.6Vである。(特許文献2)
そこで、高エネルギー密度と、高出力特性を有する、導電性高分子や金属酸化物を電極材料として用いた電気化学キャパシタが開発されている。この電気化学キャパシタは、電解液中のアニオン、カチオンの電極への吸脱着を電荷貯蔵機構としており、エネルギー密度、出力特性ともに優れている。なかでも、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体などの導電性高分子を用いた電気化学キャパシタは、非水系電解液中のアニオン、もしくはカチオンが導電性高分子にp-ドーピングまたはn-ドーピングすることによって、充放電を行う。このドーピングの電位は負極側では低く、正極側では高いので、2.5V以上の高電圧特性が得られる。(特許文献3)
特開2003−297362号公報 特開平6−104141号公報 特開2000−315527号公報
しかしながら、電気自動車等の電源用途では高電圧化に加えて、小型化、高サイクル特性の要求は恒常的で、そのため高容量化、低インピーダンス化という強い要求がある。そこで、本発明は高電圧特性を有し、高容量、低インピーダンス特性を有する電極材料を提供することをその目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、電極材料として導電性高分子とその製造方法の検討を行った結果、直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブ表面にポリフルオレンまたはその誘導体を担持させてなる電極材料を用いると高容量、低インピーダンス特性を有する電気化学素子が得られることが判明した。以上のようにして作成した電極材料は、直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブ表面にポリフルオレンまたはその誘導体を担持させた際に、直径が小さいので単位体積あたりのカーボンの比表面積増大化によって容量が増大し、単層カーボンナノチューブが長いのでカーボンナノチューブ同士の接触点の減少による低抵抗化を図ることができ、この電極を用いることによって、高容量、低インピーダンス特性を有する電気化学素子を提供することができる。
そして、ポリフルオレンの誘導体としては、フルオレンの9位の置換基がアルキル基、カルボキシル基,ニトロ基,シアノ基,アルキルシアノ基,フェニル基(-Ph),ハロゲン原子(-X),-CX3,ハロゲン化フェニル基,アルキルフェニル基,アルキルハロゲン化フェニル基であるものを用いることが好ましい。
そして、ドーピングしたポリフルオレンまたはその誘導体を塩基性溶媒に溶解した溶液に直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブに浸漬して引き上げ、溶媒を蒸発させて、ポリフルオレンまたはその誘導体の膜を前記単層カーボンナノチューブ上に形成した電極を用いると、薄く均一な電極膜を形成することができ、電極の抵抗を低減させて放電電圧を高く保つことができるので、さらに高容量、低インピーダンス特性を得ることができる。
以上のように、直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブ表面にポリフルオレンまたはその誘導体を担持させてなる電極材料を用いることによって、ポリフルオレンの負極の低酸化還元電位、正極の高酸化還元電位による高電圧特性に加えて、高容量、低インピーダンス特性を有する電気化学素子を得ることができる。
本発明のポリフルオレンまたはその誘導体は、フルオレンまたはその誘導体のモノマーを化学重合、または電解重合によって重合させて得ることができる。そして、電解重合または化学重合によって得たポリフルオレンまたはその誘導体をクロロホルム、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の塩基性の溶媒に溶解し、この溶液に直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブを浸漬して引きあげ、溶媒を蒸発させて電極を形成する。この時に、ポリフルオレンまたはその誘導体の薄く均一な層を形成することができ、ポリマーと炭素材料の良好な密着性による電極材料の抵抗の低減に加えて、層の抵抗も低減するので、放電の際のIRドロップがさらに小さくなり、高容量、低インピーダンス特性を得ることができる。
本発明に用いる直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブは,化学気相反応(CVD)法を用い, 単層カーボンナノチューブ成長中の水分量制御により,基板上の触媒活性の持続を促進することで得られる。
そして、このようにして重合形成したポリフルオレンまたはその誘導体は重合液中のアニオンがドーピングして酸化状態となっているので、これを正極として用いる。この正極はアニオンを脱ドーピングすることによって放電反応、還元反応を生ずる。そして、このポリフルオレンの誘導体を電気的または化学的に還元して、カチオンをドーピングして負極として用いる。この負極はカチオンを脱ドーピングすることによって放電反応、酸化反応を生ずる。また、重合後のポリマーを還元して中性状態にして両極とし、充電反応によって負極の還元、正極の酸化を行ってもよい。
さらに、フルオレンまたはその誘導体に、アルキルスルフォン酸、アルキルホスホン酸のようなフルオレンと共有結合することができるアニオンを反応させ、重合して、自己ドープ型の正極とすることができる。この正極は電解液中のカチオンとドーピングすることによって放電反応、酸化反応を生ずる。また、ポリフルオレンまたはその誘導体に3級アンモニウムのようなフルオレンと共有結合することができるカチオンを反応させ、重合して、自己ドープ型の負極とすることができる。この負極は電解液中のアニオンとドーピングすることによって放電反応、酸化反応を生ずる。
ここで、ポリフルオレンの誘導体としては、フルオレンの9位に置換基がある誘導体が好ましい。それは電子伝導性が低下せず、この置換基によってドーピングするアニオン、カチオンのドープ、脱ドープの反応が速くなって出力特性が向上するからである。なお、置換基としては、アルキル基、カルボキシル基,ニトロ基,シアノ基,アルキルシアノ基,フェニル基(-Ph),ハロゲン原子(-X),-CX3,ハロゲン化フェニル基,アルキルフェニル基,アルキルハロゲン化フェニル基であるものを用いることが好ましい。なお、9位に置換基のないフルオレンは9位の水素の反応性が高く、還元電位をかけた時にプロトンが脱離し、このプロトンの還元電位がフルオレンより高いのでフルオレンの還元反応がおこりにくく、フルオレンを負極として用いることは難しい。
このようなポリフルオレンの誘導体のなかでも、9位の置換基がアルキル基またはフェニル基を有する置換基であるとドーピングするアニオン、カチオンのドープ、脱ドープの反応がさらに速くなって出力特性が向上するので好ましい。前者としては9,9−ジメチルフルオレン、9,9−ジオクチルフルオレン等、後者としては9−メチル−9−フェニルフルオレン,9−メチル−9−ベンジルフルオレン,ベンザルフルオレン,ベンズヒドリリジンフルオレン等を挙げることができる。なかでも、分子の大きなカチオンをドープ、脱ドープする負極、または自己ドープ型の正極として用いる場合は、n=1〜8のアルキル基が好ましい。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
アセトニトリルにフルオレンの誘導体を溶解後,十分量の塩化鉄(III)を溶解させ72時間撹拌して重合を進行させた。次に反応液を減圧下で濾過し,濾過物を60COで約12時間真空乾燥して粗生成物を得た。この粗生成物をクロロホルムに溶解させ飽和状態にし,メタノールを加えることで生成物を再析出させた。再析出物を再び減圧濾過し,濾過物を60COで約12時間真空乾燥して精製したポリフルオレンの誘導体を得た。
THF溶媒1Lに対して,得られたポリフルオレンの誘導体1.2gを溶解させ,ポリフルオレンの誘導体溶液を作製した。この溶液中に直径3.5nm、長さ2mmの単層カーボンナノチューブ(SWNT)を浸漬して引き上げ、溶媒を蒸発させて電極を形成した。この電極をアルミ集電体に接合して集電体上にポリフルオレン/SWNT膜を形成し実施例とした。また、SWNTにかえてカーボンファイバーも用い、同様にして集電体/ポリフルオレン/カーボンファイバー膜を形成し比較例とした。これらの電極を正極に用い、白金板を負極、Ag−Agイオン電極を参照電極として用いて、容量密度、内部抵抗を測定した。
以上のように、本発明の電気化学素子の作動電圧は容量密度、内部抵抗は比較例に比べて良好であった。

Claims (3)

  1. 直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブ表面にポリフルオレンまたはその誘導体が担持した電極材料。
  2. ポリフルオレンの誘導体の9位の置換基がアルキル基、カルボキシル基,ニトロ基,シアノ基,アルキルシアノ基,フェニル基(-Ph),ハロゲン原子(-X),-CX3,ハロゲン化フェニル基, アルキルフェニル基,アルキルハロゲン化フェニル基である請求項1記載の電極材料。
  3. ドーピングしたポリフルオレンまたはその誘導体を塩基性溶媒に溶解した溶液に直径2〜5nm、長さ0.3〜3mmの単層カーボンナノチューブに浸漬して引き上げ、溶媒を蒸発させて、ポリフルオレンまたはその誘導体の膜を前記単層カーボンナノチューブ上に形成した請求項1または2記載の電極材料。
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