JP2007231084A - 導電性樹脂組成物およびこれを用いた導電性樹脂シート - Google Patents

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Abstract

【課題】成形時の流動性、シート外観、成形体における耐折り曲げ性、およびヒートシール材の接着強度の経時劣化が改善された導電性樹脂組成物およびこれを用いた導電性樹脂シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂および導電剤を含有する導電性樹脂組成物であって、さらにテルペン系樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂およびこれらの水素添加物、ならびにアルキル−フェノール樹脂からなる群から選ばれる1種以上の粘着付与剤を組成物全体に対して0.5〜20質量%含有することを特徴とする導電性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性樹脂組成物およびこれを用いた導電性樹脂シートに関する。
従来から、電子部品の収納や搬送においては、電子部品を収納する凹部が形成されたキャリアテープやトレー等の電子部品用包装体が使用されている。その電子部品用包装体は、導電性塗料のコーティングまたは導電性カーボンや金属微粉末等の練り込みにより導電性が付与された樹脂シートを、圧縮成形あるいは真空成形法等により成形されたものである。このような導電性樹脂シートを構成する導電性樹脂組成物としては、剛性、透明性に優れ、しかも安価で比重が低く経済的であることから、スチレン系重合体を主成分とする熱可塑性樹脂組成物が一般的に用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開平3−87097号公報 特開平9−76423号公報 特開2002−292805号公報
しかしながら、従来のスチレン系の導電性樹脂組成物では、成形時の流動性を良好に保つことが難しく、シート成形の際にゲル、ヤケ等と呼ばれる欠点が生じ易いという問題がある。また、該導電性樹脂組成物を用いて成形したキャリアテープ等の成形体においては、耐折り曲げ性が充分でないという問題、および該成形体にヒートシールにより接着されたカバーテープ等のヒートシール材の接着強度が経時的に劣化し易いという問題があり、改善が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、成形時の流動性が良好で、外観に優れたシートを形成することができるとともに、成形体における耐折り曲げ性を向上させ、かつ成形体とヒートシール材の接着強度の経時劣化を改善できる導電性樹脂組成物およびこれを用いた導電性樹脂シートを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂および導電剤を含有する導電性樹脂組成物であって、さらにテルペン系樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、およびこれらの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の粘着付与剤を組成物全体に対して0.5〜20質量%含有することを特徴とする。
また本発明は、スチレン系樹脂組成物からなる芯層の少なくとも一方の面上に、本発明の導電性樹脂組成物からなる導電層が設けられていることを特徴とする導電性樹脂シートを提供する。
本発明の導電性樹脂組成物は、成形時の流動性が良好であり、外観に優れたシートを成形できる。また本発明の導電性樹脂組成物を用いて形成された成形体は、耐折り曲げ性が良好であり、該成形体とヒートシール材との接着強度の経時劣化も抑えられる。
本発明の導電性樹脂シートは、良好な外観を有しており、該シートを用いて形成された成形体は、耐折り曲げ性が良好であり、ヒートシール材の接着強度の経時劣化も抑えられる。
<導電性樹脂組成物>
[導電剤]
導電剤としては炭素粉末(慣用の人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、天然黒鉛粉末、コークス粉、カーボンブラック等)、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属酸化物などの金属粉末、金属繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどのπ電子共役系高分子等が使用でき、これらの中でもカーボンブラックが好ましく使用される。
カーボンブラックとしてはファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が好ましく用いられる。
これらの導電剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
特に、カーボンブラックと熱可塑性樹脂等とが予め溶融混練されたカーボンコンパウンドを用いると、カーボンブラックの良好な分散性が得られるので好ましい。かかるカーボンコンパウンドとしては、具体的に、東洋インキ製造社製のリオコンダクト(商品名)、東京インキ社製のパピオスタット(商品名)、大日精化工業社製のネオコン(商品名)等の市販品を用いることができる。
本発明の導電性樹脂組成物における導電剤の含有量は、15〜35質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。導電剤の割合が少なすぎると導電性が充分に付与されず、多すぎるとシートの機械的強度が低下する。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、スチレン系重合体およびオレフィン系重合体の中から1種または2種以上を用いることができる。スチレン系重合体の1種以上とオレフィン系重合体の1種以上を組み合わせてもよい。
スチレン系重合体とは、スチレン系単量体単位を含有する重合体であり、具体的にはスチレン系硬質樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、およびスチレン系エラストマーが挙げられる。
スチレン系硬質樹脂はスチレン系単量体と他の単量体とが共重合した共重合体であってもよい。他の単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル等のアクリル酸エステル単量体などが挙げられる。スチレン系硬質樹脂としてはスチレンの単独重合体(GPPS)が好適である。
ゴム変性スチレン系樹脂とは、スチレン系硬質樹脂からなる連続相中にゴム重合体からなる分散相が島状(粒子状)に分散した重合体のことである。この樹脂は、ゴム重合体にスチレン系硬質樹脂がグラフトしたグラフト共重合体を含有する。
ゴム変性スチレン系樹脂を構成するゴム重合体としては、共役ジエン共重合体を主成分とした重合体、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のブタジエン系重合体が挙げられる。また、ブタジエン系重合体以外にも、(メタ)アクリル酸プロピルや(メタ)アクリル酸ブチルを主成分とした(メタ)アクリル酸エステル重合体、エチレン−プロピレン−共役ジエン系ゴムなどが挙げられる。
ゴム重合体にグラフトするスチレン系硬質樹脂は上記のスチレン系硬質樹脂と同様である。
ゴム変性スチレン系樹脂の具体例としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂が挙げられる。これらの中でもHIPSが好適である。
またゴム変性スチレン系樹脂において、分散相を構成するゴム重合体の体積平均粒子径は0.05〜30μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲がより好ましく、0.2〜7μmの範囲がさらに好ましく、1〜4μmが特に好ましい。
ゴム重合体の含有量は1〜25質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がより好ましく、8〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン系単量体が重合したポリスチレンブロックを1個以上有し、共役ジエン単量体が重合したポリ共役ジエンブロックまたは共役ジエン単量体とスチレン系単量体とがランダムに共重合したブロックを1個以上有するスチレン−共役ジエンブロック共重合体や、スチレン系単量体と共役ジエン単量体とのランダム共重合、およびこれらの水素添加物が挙げられる。
スチレン系エラストマーを構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。これらは1種のみならす2種以上併用してもよい。上記スチレン系単量体の中でも、スチレンが好ましい。
共役ジエン単量体としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。上記共役ジエン単量体の中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好ましい。
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)、またこれらの水素添加物として、SEBS、SEPS、H−SBRなどが挙げられる。これらの中でもSBSとSEBSが好適である。
但し、SBS等のスチレン−共役ジエンブロック共重合体の場合、スチレン系単量体の含有量は65〜85質量%、好ましくは70〜80質量%である。スチレン系単量体が65質量%未満では、導電性樹脂組成物の流動性が損なわれる。また85質量%を超えると、添加量にもよるが成形体の折り曲げ性が劣る傾向がある。
これらのスチレン系重合体のうち、GPPS、HIPS、SBS、SEBSがより好ましい。スチレン系重合体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
オレフィン系重合体としては、オレフィン系単量体同士の重合体、オレフィン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体、オレフィン系単量体とビニルエステル系単量体との共重合体等が挙げられる。
前記オレフィン系単量体としては、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等の炭素原子数2〜10のオレフィン、好ましくは炭素原子数2〜4のオレフィンが挙げられ、特にエチレン、プロピレンが好ましい。
前記オレフィン系単量体同士の重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−ブテン共重合体(EBR)、PP−EPR共重合体、PP−EBR共重合体等が挙げられる。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンと炭素数が3〜12、好ましくは6〜8のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
前記アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、およびメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸と炭素原子数1〜10のアルキルとのエステルが挙げられる。好ましくは、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸と炭素原子数1〜4のアルキルとのエステルである。
前記ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルが例示できる。好ましくは酢酸ビニルである。
これらのオレフィン系重合体のうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−α−オレフィン共重合体がより好ましい。
オレフィン系重合体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の導電性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されないが、シートの機械的強度の点からは40質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。上限は他の成分とのバランスに応じて決めることができるが、例えば84.5質量%以下が好ましく、78質量%以下がより好ましい。
[粘着付与剤]
粘着付与剤として、テルペン系樹脂およびその水素添加物、石油樹脂およびその水素添加物、ロジン系樹脂およびその水素添加物、クマロン−インデン系樹脂およびその水素添加物、ならびにアルキル−フェノール樹脂からなる群から選ばれる1種以上が用いられる。
粘着付与剤は1種単独でも用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
テルペン系樹脂とはテレピン油を原料とした樹脂であって、例えばα−ピネンやβ−ピネンが重合したテルペン樹脂、フェノールとテルペンを反応させたテルペンフェノール樹脂、スチレンなどで極性を付与した芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂などが挙げられる。
石油樹脂とは石油類の熱分解により生成する分解油留分を重合し固化させた熱可塑性樹脂であって、例えばC5留分を原料とした脂肪族系石油樹脂、C9留分を原料とした芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエンを原料とした脂環族系石油樹脂、およびこれらを2種以上が共重合した共重合系石油樹脂、さらにこれらを水素化した水素化石油樹脂などが挙げられる。
ロジン系樹脂とはマツ類の樹脂などから得られるアビエチン酸またはその誘導体を主成分とする樹脂であって、例えばガムロジンやウッドロジン、水素化ロジン、アルコールでエステル化したエステル化ロジン、フェノールとロジンを反応させたロジンフェノール樹脂などが挙げられる。
クマロン−インデン系樹脂とはクマロンおよびインデンを主成分とする重合物からなる樹脂である。
アルキル−フェノール樹脂とはアルキルフェノールとアルデヒドの反応により得られる樹脂である。具体的にはヤスハラケミカル社製のクリアロン(商品名)、三井化学社製のハイレッツ(商品名)およびペトロジン(商品名)、荒川化学工業社製のアルコン(商品名)、トーネックス社製のエスコレッツ(商品名)などの市販品を用いることができる。
これらの粘着付与剤の中でも、溶融時の熱安定性の点で、水素化テルペン樹脂、水素化石油樹脂、水素化ロジンなどの水素添加誘導体が好ましい。
上記に挙げた粘着付与剤の数平均分子量Mnは通常、450〜1000の範囲内であり、この範囲内であれば本発明の所期の効果を得ることができる。
本発明の導電性樹脂組成物における粘着付与剤の含有量は、0.5〜25質量%の範囲であり、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。粘着付与剤の割合が少なすぎると充分な添加効果が得られず、多すぎると高温多湿環境下におけるヒートシール材の剥離強度の経時劣化が大きくなってしまう。
[その他の成分]
また、導電性樹脂組成物には必要に応じて、タルク、マイカ、シリカやアルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、酸化カルシウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等の無機充填剤、アクリルビーズ、スチレンビーズ、ナイロンビーズ、ポリエステルビーズなどの有機系微粒子、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤、カップリング剤、ブロッキング防止剤、紫外線防止剤、発泡剤、離型剤、難燃剤、着色料、ワックス類などの添加剤が適宜添加される。
[製造方法]
導電性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば各成分を混練して調整する方法で実施することができる。混練する場合の配合の順序は限定されない。例えば、全成分を同時に単軸押出機やニ軸押出機などで溶融混練してもよいし、予め熱可塑性樹脂の一部と導電剤および添加剤とを単軸押出機やニ軸押出機などで溶融混練した組成物(マスターバッチ)を用い、これと熱可塑性樹脂の残りと粘着付与剤とを単軸押出機やニ軸押出機などで溶融混練する方法でもよい。
<導電性樹脂シート>
本発明の導電性樹脂シートは、スチレン系樹脂組成物からなる芯層の少なくとも一方の面上に、上記導電性樹脂組成物からなる導電層が設けられた多層構造を有する。用途によっては芯層の片面のみに導電層を積層すれば充分な場合もあるが、通常、芯層の両面に導電層を積層するのが好ましい。
芯層を構成するスチレン系樹脂組成物は、上記スチレン系重合体と同様のスチレン系重合体を用いることができる。好適にはゴム変性スチレン系樹脂が用いられ、特にHIPSが好ましい。またゴム変性スチレン系樹脂に加えて、スチレン系エラストマーを用いることも好ましく、特にSBSが好ましい。
芯層を構成するスチレン系樹脂組成物におけるゴム変性スチレン系樹脂の含有量は80〜100質量%が好ましく、85〜100質量%がより好ましい。またスチレン系エラストマーの含有量は0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましい。スチレン系エラストマーが20質量%を超えるとシートの耐熱性が損なわれる可能性がある。
芯層には、本発明の導電性樹脂シートあるいは該シートの成形品を粉砕したものを芯層中に40質量%以下の範囲で添加して用いることができる。例えば導電性樹脂シートを所定の幅で切断して生じる半端な部分や、成形不良品などをリサイクルして用いることができる。
芯層を構成するスチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、タルク、マイカ、シリカやアルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、酸化カルシウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等の無機充填剤、アクリルビーズ、スチレンビーズ、ナイロンビーズ、ポリエステルビーズなどの有機系微粒子、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤、カップリング剤、ブロッキング防止剤、紫外線防止剤、発泡剤、離型剤、難燃剤、着色料、ワックス類などの添加剤が適宜添加される。
導電性樹脂シート全体の厚さは、0.15〜1mmであり、好ましくは0.2〜0.6mm程度である。
導電層の厚さを1とするとき、芯層の厚さの相対値は5〜20が好ましく、8〜15がより好ましい。該芯層の相対値が5より小さいと大幅なコストアップにつながり、20を超えると層比の安定性が悪くなる傾向がある。
芯層の両面上にそれぞれ導電層が設けられている場合、該2つの導電層の厚さの比は互いに異なっていてもよいが、互いに等しいことが好ましい。
[シートの製造方法]
導電性樹脂シートを製造する方法は、特に限定されず、前記導電性樹脂組成物および芯層用の樹脂組成物をそれぞれ調製し、これを用いて慣用の方法によりシート状に成形することにより製造できる。
シートの成形に用いる樹脂組成物は、各成分の粉粒体の混合物であってもよく、各成分を一括的に混練したものでもよく、またはマスターバッチを用いて調製したものでもよい。樹脂組成物はペレットの形態で用いてもよい。
シート状に成形する方法としては、例えば、押出成形法、延伸法などが挙げられる。導電性樹脂シートは、延伸(一軸延伸、二軸延伸等)してもよいし、未延伸であってもよい。
導電性樹脂シートは、芯層および導電層を別々に成形し、得られた各シートをヒートラミネーションやドライラミネーション等の方法により積層してもよいが、各層用の樹脂組成物を押出機で溶融し汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニーホールドダイ等を使用して共押出する方法により積層体(導電性樹脂シート)を製造するのが、導電層を薄く形成できる点、および量産性の点で好ましい。尚、ラミネーション法においては、必ずしも接着剤は必要としない。
このようにして得られる導電性樹脂シートは、半導体や電子部品、特にICやICを用いた電子部品を収容するための収容凹部を有する電子部品用包装体等の材料として有用である。
電子部品包装体の形態としては特に限定されず、例えば、キャリアテープ、トレーなどが挙げられる。
電子部品包装体の製造方法は特に限定されず、例えば真空成形、圧空成形、プレス成形、ロータリー成形などを用いることができる。
電子部品用包装体の材料として用いられる導電性樹脂シートには、摩擦による電子部品の帯電を防止するために表面粗さを付与することが好ましい。具体的にはシートの押出成形時に表面に凹凸を形成したピンチロールを用いる方法や、シート成形後に再加熱して表面に凹凸を成形したロールでシート表面に凹凸を形成する方法、サンドブラスト処理を用いる方法などが好ましく用いられる。
本発明の導電性樹脂組成物は、後述の実施例に示されるように、粘着付与剤を含有させたことにより、成形時における樹脂組成物の流動性が向上し、成形されたシート外観が向上する。また該シートを用いて成形された成形体(例えば、キャリアテープ)における耐折り曲げ性が向上し、該成形体にヒートシールにより接着されたヒートシール材(例えば、カバーテープ)の接着強度の経時劣化が抑えられる。
本発明における粘着付与剤として用いられる上記化合物は、いずれも分子量が比較的小さい樹脂であるため、これを導電剤とともに熱可塑性樹脂に配合することにより、溶融粘度が下がり成形時の流動性が向上して成形機内での滞留が生じ難くなり、これによってゲル、ヤケ、架橋物などの欠陥発生が抑えられシート外観が向上する。また、上記粘着付与剤は熱可塑性樹脂との相溶性が良好なため、成形体における柔軟性が向上して耐折り曲げ性が向上する。また、成形体とヒートシール材との接着強度の点において、上記粘着付与剤を使用することで温度や湿度の環境条件の影響を受け難くなり、剥離強度の経時劣化が抑制される。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
(実施例1〜6及び比較例1,2)
表1に示す配合で導電層用の導電性樹脂組成物、および芯層用のスチレン系樹脂組成物を調製し、単軸押出機を用いて芯層とその両側の導電層からなる3層シートを多層Tダイ法により製造した。具体的には、3台の押出機を使用して溶融樹脂を3層Tダイスから共押出して溶融樹脂シートを成形し、その溶融樹脂シートを冷却ロールで冷却し、ロール状に巻き取って、導電層/芯層/導電層からなる3層構造の導電性樹脂シートを得た。この導電性樹脂シートの層厚比は表層(導電層)/芯層/表層(導電層)=1/15/1とし、シート全体の厚さは0.3mm、シート幅は640mmとした。使用した樹脂の詳細は下記の通りである。
・カーボンマスターバッチ:東洋インキ製造社製、リオコンダクトS1498MB(商品名、熱可塑性樹脂の種類:スチレン系重合体、カーボンブラックの含有量:40質量%)。
・HIPS−A:PSジャパン社製、H0104(商品名)、体積平均ゴム粒径3.6μm、ゴム含有量12質量%、MFR=3g/10分。
・HIPS−B:PSジャパン社製、HT478(商品名)、体積平均ゴム粒径2.0μm、ゴム含有量9質量%、MFR=2.7g/10分。
・SBS−A:旭化成ケミカルズ社製、アサフレックス830(商品名)、スチレン/ブタジエン=70/30質量%。
・SBS−B:旭化成ケミカルズ社製、タフプレン126(商品名)、スチレン/ブタジエン=40/60質量%。
・EVA:東ソー社製、ウルトラセン541(商品名)、酢酸ビニル含有率10質量%。
・水素添加スチレンブタジエン共重合体:旭化成ケミカルズ社製、S.O.E.SSシリーズL605(商品名)。
・水素化テルペン樹脂−A:ヤスハラケミカル社製、クリアロンP125(商品名)、Tg(ガラス転移温度)=68℃、Mn=700。
・水素化テルペン樹脂−B:ヤスハラケミカル社製、クリアロンP105(商品名)、Tg=48℃、Mn=630。
得られた導電性樹脂シートを接触加熱方式圧空成形し、電子部品を収納する凹部を樹脂シートの長さ方向に一定間隔で形成してキャリアテープを得た。
また、これとは別にカバーテープとして、信越ポリマー社製、製品名:SPY11(PET層/PE層/ヒートシール層からなる。ヒートシール層はオレフィン系樹脂からなる。キャリアテープ成形体との界面で剥離するタイプである。)を用意した。
そして前記で得たキャリアテープの凹部の開口部を有する面上に、上記カバーテープをバンガード社製シール機「VS−120(製品名)」を用いて、表2に示す条件でヒートシールした。このとき、初期剥離強度が0.25〜0.35N/mmとなるように条件を調整した。
(1)流動性の評価
導電層樹脂組成物の流動性をJIS K7210(A法)に規定される方法に準拠し、200℃で6分間保持した後、荷重5kgfの条件でMFR1(メルトフローレイト)を測定した。また、200℃で60分間保持した後、荷重5kgfの条件でMFR2を測定した。
MFR2/MFR1の比が0.7以上の場合を“○”、0.7未満の場合を“×”と評価した。評価結果を表1に示す。
(2)シート外観の評価
樹脂シート表面(幅0.64m×長さ10m)を目視検査し、きょう雑物測定図表(JIS P8145)による0.1mm以上の欠点が10個/m以下の場合を“○”、10個/mを超える場合を“×”と評価した。評価結果を表1に示す。
(3)キャリアテープ(CT)成形体における耐折り曲げ性の評価
得られたキャリアテープの隣接する凹部の開口部同士を向かい合わせるようにして凹部の間のフランジ部分を180°に折り曲げ、フランジ部分が割れない場合を“○”、割れた場合を“×”と評価した。評価結果を表1に示す。
(4)ヒートシール材の接着強度(剥離強度)の経時劣化の評価
上記でキャリアテープ面上にカバーテープをヒートシールした後、温度25℃・相対湿度50%の室内で1時間保管した。保管後、バンガード社製剥離測定装置「VG−20(製品名)」を用い、300mm/minの引き剥がし速度で、JIS C 0806−3に準拠して測定される初期剥離強度(P1)を測定した。
また、カバーテープをヒートシールした後、温度25℃・相対湿度50%の室内、および温度40℃・相対湿度80%のギアオーブン中で、それぞれ168時間保管した。保管後、上記と同様な方法で剥離強度(P2)を測定した。
P2とP1の差が−0.15〜+0.30N/mmの範囲の場合を“○”、−0.15N/mm未満の場合を“△”、+0.30N/mmを超えた場合を“×”、保管後に剥離した場合を“××”、と評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2007231084
Figure 2007231084
表1の結果に示されるように、本発明にかかる実施例1〜6は、水素化テルペン樹脂を配合しなかった比較例1に比べて、導電性樹脂組成物の流動性、導電性樹脂シートの外観、成形体における耐折り曲げ性、およびヒートシール材の剥離強度の経時劣化が良好に改善された。また水素化テルペン樹脂の添加量が多い比較例2では、温度40℃・相対湿度80%で保管したときのヒートシール材の剥離強度の経時劣化が大きかった。


Claims (2)

  1. 熱可塑性樹脂および導電剤を含有する導電性樹脂組成物であって、さらにテルペン系樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂およびこれらの水素添加物、ならびにアルキル−フェノール樹脂からなる群から選ばれる1種以上の粘着付与剤を組成物全体に対して0.5〜20質量%含有することを特徴とする導電性樹脂組成物。
  2. スチレン系樹脂組成物からなる芯層の少なくとも一方の面上に、請求項1記載の導電性樹脂組成物からなる導電層が設けられていることを特徴とする導電性樹脂シート。


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