JP2007231064A - ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発泡後に変形を生じることがなく、5倍以上の発泡倍率を有する発泡体を容易に製造することができるポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂と、加熱時に分解して炭酸ガス及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生する炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、70〜120℃で1〜24時間加熱処理するものである。この加熱処理は、前記ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、3時間以内に行うことが好ましい。また、前記原料には架橋剤を含有することが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂と、加熱時に分解して炭酸ガス及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生する炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、70〜120℃で1〜24時間加熱処理するものである。この加熱処理は、前記ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、3時間以内に行うことが好ましい。また、前記原料には架橋剤を含有することが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、例えば自動車部品、建築材料などとして利用され、発泡後に変形を生じることがなく、高発泡倍率の発泡体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法に関するものである。
従来、ポリエチレン樹脂発泡体などのポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に際しては、発泡剤として熱分解型の発泡剤が用いられ、その発泡剤が熱分解する温度に加熱されることによって分解ガスを生じ、その分解ガスによってポリオレフィン系樹脂を発泡させることができる。例えば、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂にアゾジカルボンアミド及び重炭酸ナトリウムを主成分とする混合発泡剤並びに金属フタロシアニン化合物を添加して発泡させてポリオレフィン発泡体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法によれば、金属フタロシアニン化合物がアゾジカルボンアミドの分解を促進し、分解残渣の生成を抑えてシアン化物イオンを減少させることができるものと推測される。
特開平10−251430号公報(第2頁及び第3頁)
ところが、従来の特許文献1に記載されたポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法においては、シアン化物イオンなどの有害成分を減少させることができるものの、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いるためその分解生成物として臭気成分であるアンモニアやフォギング(ガラスの曇り)の原因となる尿素の発生を全くなくすことはできない。そこで、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いることなく、重炭酸ナトリウムのみを用いることが考えられる。しかしながら、その場合には5倍以上の発泡倍率を有する発泡体を製造しようとすると、得られる発泡体は発泡後数時間で収縮によって大きな変形が起こり、製品として使用できないものとなる。そのため、発泡倍率が5倍未満という極めて低い発泡体を得ることしかできず、それ以上の高い発泡倍率を有する発泡体を得るには他の発泡剤を併用しなければならないという問題があった。
そこで、本発明の目的とするところは、発泡後に変形を生じることがなく、5倍以上の発泡倍率を有する発泡体を容易に製造することができるポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂と、加熱時に分解して炭酸ガス及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生する炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、70〜120℃で1〜24時間加熱処理することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、請求項1に係る発明において、前記加熱処理は、ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後3時間以内に行うことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記原料には架橋剤を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂と、加熱時に分解して炭酸ガス及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱することによって行われる。その過程で、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生した炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂が発泡すると同時に、同じく炭酸水素ナトリウムの分解によって発泡体の気泡(セル)内に存在する水蒸気が発泡後の加熱処理によって外部に放出され、空気と置換される。
請求項1に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂と、加熱時に分解して炭酸ガス及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱することによって行われる。その過程で、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生した炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂が発泡すると同時に、同じく炭酸水素ナトリウムの分解によって発泡体の気泡(セル)内に存在する水蒸気が発泡後の加熱処理によって外部に放出され、空気と置換される。
この場合、発泡後の加熱処理の条件が70〜120℃で1〜24時間に設定されていることから、セル内の水蒸気がセル間を通って外部へ容易に放出される。このため、水蒸気が冷却されて水になることで体積減少しセル内の圧力低下で収縮を起こし発泡体が変形することを回避することができる。従って、発泡後に変形を生じることがなく、5倍以上の発泡倍率を有する発泡体を容易に製造することができる。
請求項2に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法においては、前記加熱処理はポリオレフィン系樹脂を発泡させた後3時間以内に行われることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、発泡体のセル内に残存している水蒸気をその状態で外部へ容易に放出させることができる。
請求項3に記載の発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法においては、原料には架橋剤を含有することから、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、発泡体の機械的物性を向上させることができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるポリオレフィン系樹脂発泡体(以下、単に発泡体ともいう)は、次のようにして製造される。すなわち、ポリオレフィン系樹脂と、発泡剤として加熱時に分解して炭酸ガス(二酸化炭素)及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生する炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂を発泡させる。ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後には、70〜120℃で1〜24時間加熱処理され、目的とするポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる。
本実施形態におけるポリオレフィン系樹脂発泡体(以下、単に発泡体ともいう)は、次のようにして製造される。すなわち、ポリオレフィン系樹脂と、発泡剤として加熱時に分解して炭酸ガス(二酸化炭素)及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生する炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂を発泡させる。ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後には、70〜120℃で1〜24時間加熱処理され、目的とするポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる。
まず、発泡体の原料について順に説明する。
(ポリオレフィン系樹脂)
上記のポリオレフィン系樹脂発泡体は、柔軟性が良く、低硬度なものであることが望ましく、従って発泡倍率が5〜50倍であることが好ましい。ここで、発泡倍率が5〜50倍であるということは、JIS K 6767−1:1995附属書Bに準拠して測定される見掛け密度が20〜200kg/m3(発泡倍率の逆数)であることを意味する。この発泡倍率が5倍未満の場合には、発泡体は硬くなって柔軟性に欠けるものとなり、緩衝材などとして使用するときに好ましくない。一方、50倍を越える場合には、発泡体が柔軟化され過ぎて形状が保持ができなくなるため好ましくない。
(ポリオレフィン系樹脂)
上記のポリオレフィン系樹脂発泡体は、柔軟性が良く、低硬度なものであることが望ましく、従って発泡倍率が5〜50倍であることが好ましい。ここで、発泡倍率が5〜50倍であるということは、JIS K 6767−1:1995附属書Bに準拠して測定される見掛け密度が20〜200kg/m3(発泡倍率の逆数)であることを意味する。この発泡倍率が5倍未満の場合には、発泡体は硬くなって柔軟性に欠けるものとなり、緩衝材などとして使用するときに好ましくない。一方、50倍を越える場合には、発泡体が柔軟化され過ぎて形状が保持ができなくなるため好ましくない。
ポリオレフィン系樹脂発泡体を形成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン樹脂のほかオレフィン及びそれと共重合可能な単量体との共重合体であるポリオレフィン共重合樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン共重合樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等、エステルの含有量は45モル%以下)共重合樹脂、又はそれらの塩素化物(塩素含有量45モル%以下)、或いはポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン又はアタクチックポリプロピレン)との混合物等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種又は2種以上が適宜選択して用いられる。
(発泡剤)
発泡剤としては炭酸水素ナトリウム(重曹、NaHCO3)が用いられ、その分解開始温度はポリオレフィン系樹脂発泡体の原料の混合(混練)温度(通常90〜130℃)よりも高く、発泡時における加熱温度(通常130〜160℃)よりも低い。すなわち、炭酸水素ナトリウムは、原料の混合時には分解せず、発泡時の加熱によって分解が始まり、下記に示す反応式に基づいて炭酸ナトリウムに変化すると共に、炭酸ガスと水蒸気とを発生する。
(発泡剤)
発泡剤としては炭酸水素ナトリウム(重曹、NaHCO3)が用いられ、その分解開始温度はポリオレフィン系樹脂発泡体の原料の混合(混練)温度(通常90〜130℃)よりも高く、発泡時における加熱温度(通常130〜160℃)よりも低い。すなわち、炭酸水素ナトリウムは、原料の混合時には分解せず、発泡時の加熱によって分解が始まり、下記に示す反応式に基づいて炭酸ナトリウムに変化すると共に、炭酸ガスと水蒸気とを発生する。
2NaHCO3 → Na2CO3+CO2+H2O
発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部当たり5〜50質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が5質量部未満の場合には、十分な炭酸ガス発生量が得られず、発泡体が硬くなって柔軟性に欠けるようになり、好ましくない。一方、50質量部を越える場合には、発泡剤による炭酸ガスの発生量が過剰となって発泡体が低密度となり、発泡体の形状保持性等が低下して好ましくない。
(架橋剤)
続いて、ポリオレフィン系樹脂発泡体に架橋構造を形成して所定の硬さや強度を保持するため、ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料には架橋剤を配合することが好ましい。係る架橋剤としては、ポリオレフィン系樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するもので、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してポリオレフィン系樹脂に架橋結合を生ぜしめる有機過酸化物が用いられる。有機過酸化物として具体的には、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)−n−ブチルバレエート、α,α´−ジ(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス−t−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン等が挙げられる。架橋剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部当たり通常0.1〜10質量部、好ましくは1〜3質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満の場合には発泡体に十分な架橋構造を形成することができず、10質量部を越える場合には架橋剤が過剰になって発泡体の架橋構造が密になり過ぎ、発泡体が柔軟性に欠けるものとなる。
発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部当たり5〜50質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が5質量部未満の場合には、十分な炭酸ガス発生量が得られず、発泡体が硬くなって柔軟性に欠けるようになり、好ましくない。一方、50質量部を越える場合には、発泡剤による炭酸ガスの発生量が過剰となって発泡体が低密度となり、発泡体の形状保持性等が低下して好ましくない。
(架橋剤)
続いて、ポリオレフィン系樹脂発泡体に架橋構造を形成して所定の硬さや強度を保持するため、ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料には架橋剤を配合することが好ましい。係る架橋剤としては、ポリオレフィン系樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するもので、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してポリオレフィン系樹脂に架橋結合を生ぜしめる有機過酸化物が用いられる。有機過酸化物として具体的には、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)−n−ブチルバレエート、α,α´−ジ(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス−t−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン等が挙げられる。架橋剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部当たり通常0.1〜10質量部、好ましくは1〜3質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満の場合には発泡体に十分な架橋構造を形成することができず、10質量部を越える場合には架橋剤が過剰になって発泡体の架橋構造が密になり過ぎ、発泡体が柔軟性に欠けるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料には、上記の各成分に加えて、無機充填剤、整泡剤、難燃剤、安定剤、着色剤、可塑剤等を常法に従って配合することができる。それらのうち、特に無機充填剤について説明する。
(無機充填剤)
無機充填剤は、発泡体を所望の硬さにするとともに、発泡体中のセルの大きさ(セル径)を無機充填剤の粒子径に基づいて微細なものにするために配合される。この無機充填剤を配合することにより、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との間に界面が形成され、そこに界面張力が生じ、その部分がセル核となる。従って、無機充填剤の平均粒子径は100〜200μmであることが好ましい。無機充填剤の平均粒子径が100μm未満では、発泡体中のセルが細かくなり過ぎ、発泡体が硬くなる傾向を示す一方、200μmを越えると発泡体中のセルが粗くなって、発泡体表面の凹凸が大きくなる傾向を示す。無機充填剤としては特に限定されないが、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。無機充填剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部当たり5〜100質量部であることが好ましい。無機充填剤の含有量が5質量部未満のときには、発泡体の硬さを十分に硬くすることができず、また発泡体中のセルを十分に微細なものにすることができなくなる一方、100質量部を越えると発泡体が硬くなり過ぎるとともに、セル径も大きくなり過ぎる傾向を示して好ましくない。
(無機充填剤)
無機充填剤は、発泡体を所望の硬さにするとともに、発泡体中のセルの大きさ(セル径)を無機充填剤の粒子径に基づいて微細なものにするために配合される。この無機充填剤を配合することにより、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤との間に界面が形成され、そこに界面張力が生じ、その部分がセル核となる。従って、無機充填剤の平均粒子径は100〜200μmであることが好ましい。無機充填剤の平均粒子径が100μm未満では、発泡体中のセルが細かくなり過ぎ、発泡体が硬くなる傾向を示す一方、200μmを越えると発泡体中のセルが粗くなって、発泡体表面の凹凸が大きくなる傾向を示す。無機充填剤としては特に限定されないが、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。無機充填剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部当たり5〜100質量部であることが好ましい。無機充填剤の含有量が5質量部未満のときには、発泡体の硬さを十分に硬くすることができず、また発泡体中のセルを十分に微細なものにすることができなくなる一方、100質量部を越えると発泡体が硬くなり過ぎるとともに、セル径も大きくなり過ぎる傾向を示して好ましくない。
次に、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、上述したポリオレフィン系樹脂発泡体の原料を混合した後、例えば発泡型内に注入し、加熱して発泡させることによって製造される。その際、加熱後速やかに炭酸水素ナトリウムが分解して炭酸ガスを発生することで発泡が開始され、その粘性が次第に高くなると共に発泡が継続され、独立気泡構造を有する発泡体が形成される。
ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料を発泡させるに際し、1段発泡法及び2段発泡法のいずれも採用される。1段発泡法は、ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料を発泡型に充填し、加熱及び加圧して発泡剤及び必要により架橋剤を分解し、その後除圧することにより、一度に所望の見掛け密度に膨張させる方法である。2段発泡法は、1段発泡法で得られる中間発泡体を常圧で加熱し、2段発泡させて、所望の見掛け密度を有する最終発泡体を得る方法である。1段発泡法では、装置が簡易で操作手順も容易であるが、得られる発泡体の硬さが比較的高いため、物理的変形によって破断しやすく、発泡時に割れやすい傾向を示す。一方、2段発泡法では、装置が複雑で操作手順も難しくなりやすいが、2段階に分けて順次発泡させるため、発泡時に割れ、空洞の形成等が生じにくい傾向を示す。どちらの発泡法を採用するかは、発泡倍率、発泡体の品質、用途等によって適宜決定される。
このようにして製造されるポリオレフィン系樹脂発泡体は、その後速やかに加熱処理される。この加熱処理を行うことにより、発泡体のセル中に存在する水蒸気が除去されて外部の空気と置換され、水蒸気が凝縮して収縮することによる変形が防止される。加熱処理は、例えば所定温度に加熱された恒温槽内に発泡体を投入し、所定時間放置する方法により行われる。加熱処理の温度は70〜120℃で加熱時間は1〜24時間である。加熱温度が70℃未満又は加熱時間が1時間未満の場合には、加熱処理による水蒸気の除去が不足し、発泡体に陥没や大きな変形が生じて目的とする発泡体を得ることができなくなる。一方、加熱温度が120℃を越える場合又は加熱時間が24時間を越える場合には、過度の加熱により発泡体が軟化して形状に変化が生じ、寸法収縮率が大きくなって不適当である。
ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、加熱処理を行うまでの時間は3時間以内であることが好ましく、1時間以内であることがより一層好ましい。この時間が3時間を越えると、発泡体が冷えて発泡体のセル内に存在する水蒸気が冷却して凝縮が始まるため、その後に加熱処理を行ってもその効果が十分に得られないからである。
さて、本実施形態の作用について説明すると、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、ポリオレフィン系樹脂を発泡させることによって行われる。そのとき、炭酸水素ナトリウムが熱分解して炭酸ガスを発生し、発生した炭酸ガスによってポリオレフィン系樹脂が発泡し、発泡体内に多数の微細なセルが形成される。それと同時に、炭酸水素ナトリウムの熱分解によって水蒸気が発生し、その水蒸気がセル内に存在する。
発泡体の形成後には加熱処理が行われ、セル内の水蒸気が外部に放出されると同時に外部から空気が吸入され、水蒸気が空気と置換される。このとき、発泡後における加熱処理の条件が70〜120℃で1〜24時間という適切な範囲に設定されていることから、セル内の水蒸気がセル間を通って外部へ速やかに放出され、放出された水蒸気量に見合う空気が外部から吸い込まれるものと考えられる。このため、水蒸気が凝縮して水になることで体積減少しセル内の圧力が低下して収縮を起こすことがなくなり、セル内の圧力を維持することができ、発泡体の変形が回避される。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態におけるポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法の特徴は、原料の発泡後に加熱処理する点にあり、その加熱処理により発泡体のセル内に存在する水蒸気が外部に放出され、空気と置換される。この場合、発泡後の加熱条件が70〜120℃で1〜24時間に設定されていることから、セル内の水蒸気と外部の空気との置換が円滑に行われる。その結果、発泡後に変形を生じることがなく、5倍以上の発泡倍率を有する発泡体を容易に製造することができる。
・ 本実施形態におけるポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法の特徴は、原料の発泡後に加熱処理する点にあり、その加熱処理により発泡体のセル内に存在する水蒸気が外部に放出され、空気と置換される。この場合、発泡後の加熱条件が70〜120℃で1〜24時間に設定されていることから、セル内の水蒸気と外部の空気との置換が円滑に行われる。その結果、発泡後に変形を生じることがなく、5倍以上の発泡倍率を有する発泡体を容易に製造することができる。
・ また、前記加熱処理は、ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後3時間以内に行われることにより、発泡体のセル内に残存している水蒸気をその状態で外部へ容易に放出させることができる。
・ さらに、ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料に架橋剤を含有することにより、発泡体の硬さ、強度などの機械的物性を向上させることができる。
・ 加えて、発泡剤として無機の発泡剤である炭酸水素ナトリウムのみを用いることにより、従来用いられていたアゾジカルボンアミドなどの有機の発泡剤に比べて発泡体中における揮発成分の含有量が少なくなり、発泡体の臭気を抑制することができる。
・ 加えて、発泡剤として無機の発泡剤である炭酸水素ナトリウムのみを用いることにより、従来用いられていたアゾジカルボンアミドなどの有機の発泡剤に比べて発泡体中における揮発成分の含有量が少なくなり、発泡体の臭気を抑制することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
まず、実施例1〜6及び比較例1〜5では、低密度ポリエチレン樹脂発泡体の原料として下記に示す低密度ポリエチレン樹脂発泡体100質量部あたり、下記の炭酸水素ナトリウムを15質量部及び下記の架橋剤1を2.0質量部混合して用いた。
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
まず、実施例1〜6及び比較例1〜5では、低密度ポリエチレン樹脂発泡体の原料として下記に示す低密度ポリエチレン樹脂発泡体100質量部あたり、下記の炭酸水素ナトリウムを15質量部及び下記の架橋剤1を2.0質量部混合して用いた。
低密度ポリエチレン樹脂(LDPE):MFR(メルトフローレート)3g/10min、密度0.923g/cm3、旭化成(株)製、サンテックF2225.4。
炭酸水素ナトリウム:重曹〔NaHCO3〕、永和化成工業(株)製、セルボンFE−507。
炭酸水素ナトリウム:重曹〔NaHCO3〕、永和化成工業(株)製、セルボンFE−507。
架橋剤1:ジクミルパーオキサイド、化薬アクゾ(株)製、カヤクミルD−40C。
そして、この原料を容積1Lのニーダー中で混練した後、100℃に加熱したミキシングロールにて5分間混練した。次いで、混練した練り生地約1kgを縦160mm、横160mm及び深さが33mmの金型内に投入し、155℃で50分間加熱、加圧して発泡させることにより低密度ポリエチレン樹脂発泡体の原反を得た(1段発泡法)。金型内の圧力は、発泡時における発泡圧に抗し、発泡倍率が10倍の発泡体を成形できるように設定した。続いて、低密度ポリエチレン樹脂発泡体の原反を得た直後、すなわち成形後1時間以内に表1に示す加熱温度及び加熱時間で加熱処理を行った。
そして、この原料を容積1Lのニーダー中で混練した後、100℃に加熱したミキシングロールにて5分間混練した。次いで、混練した練り生地約1kgを縦160mm、横160mm及び深さが33mmの金型内に投入し、155℃で50分間加熱、加圧して発泡させることにより低密度ポリエチレン樹脂発泡体の原反を得た(1段発泡法)。金型内の圧力は、発泡時における発泡圧に抗し、発泡倍率が10倍の発泡体を成形できるように設定した。続いて、低密度ポリエチレン樹脂発泡体の原反を得た直後、すなわち成形後1時間以内に表1に示す加熱温度及び加熱時間で加熱処理を行った。
ここで、比較例1では発泡体の原反について加熱処理を行わなかった例を示し、比較例2及び3では原反についての加熱処理で加熱温度が70℃未満の例、比較例4では原反についての加熱処理で加熱時間が1時間未満の例及び比較例5では原反についての加熱処理で加熱温度が120℃を越える例を示す。
そして、得られた原反の加熱処理品を24時間放置した後、その変形状態を目視にて観察する共に、原反に対する寸法収縮量を百分率で表す寸法収縮率(%)を測定した。それらの結果を表1に示した。
(発泡体の成形後加熱処理までの時間についての検討)
次に、前記実施例1及び実施例4について、発泡体の成形後加熱処理を行うまでの時間を2時間、3時間及び4時間に変更して加熱処理を実施した。その結果、2時間及び3時間の場合には、加熱処理後の原反に若干の変形が見られるが全体として良好であった。これに対し、4時間の場合には、加熱処理後の原反に明らかに陥没が見られた。従って、発泡体の成形後加熱処理までの時間は、3時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましいことが明らかになった。
(実施例7〜13)
実施例7では、実施例4において、低密度ポリエチレン樹脂に代えて下記に示すエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を用い、その他は実施例4と同様に実施した。すなわち、加熱処理の条件は、実施例4と同じ100℃、6時間である。実施例8では、実施例4において、架橋剤1のジクミルパーオキサイドを下記に示す架橋剤2に代えると共に、その含有量を表2に示すように変更した他は実施例4と同様に実施した。実施例9では、実施例4において、架橋剤1のジクミルパーオキサイドを下記に示す架橋剤3に代え、その他は実施例4と同様に実施した。実施例10では、実施例4において、架橋剤1のジクミルパーオキサイドを下記に示す架橋剤4に代え、その他は実施例4と同様に実施した。実施例11では、実施例4において、炭酸水素ナトリウムの含有量を約半分(7質量部)に変更した(発泡倍率7倍)以外は実施例4と同様に実施した。
実施例12及び13においては、2段発泡法でポリオレフィン系発泡体を製造した。発泡体の原料については、実施例12では、実施例4において炭酸水素ナトリウムの含有量を45質量部に増量し(発泡倍率40倍)、実施例13では、実施例4において炭酸水素ナトリウムの含有量を50質量部に増量した(発泡倍率45倍)。
1段目の発泡では、発泡体の原料をニーダー及びロールで混練した後、155℃で40分間加熱して発泡を行ない1次発泡体を得た。前記実施例4の1段発泡法の60分より短い加熱時間であるため、炭酸水素ナトリウムの分解は途中である。2段目の発泡では、1次発泡体を160℃で40分間加熱してさらに発泡させ、2次発泡体を得た。
そして、得られた原反の加熱処理品を24時間放置した後、その変形状態を目視にて観察する共に、原反に対する寸法収縮量を百分率で表す寸法収縮率(%)を測定した。それらの結果を表2に示した。
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA):酢酸ビニル含有量10質量%、MFR(メルトフローレート)3g/10min、密度0.929g/cm3、東ソー(株)製、ウルトラセン540。
架橋剤2:4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)−n−ブチルバレエート、化薬アクゾ(株)製、トリゴノクッス17−40。
架橋剤3:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、化薬アクゾ(株)製、カヤヘキサAD−40C。
架橋剤3:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、化薬アクゾ(株)製、カヤヘキサAD−40C。
架橋剤4:α,α´−ジ(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、化薬アクゾ(株)製、パーカドクッス14−40C。
さらに、2段発泡法で製造された発泡体で、炭酸水素ナトリウムの含有量を増加させて発泡倍率を高めた実施例12及び13では、原反の変形は認められず、寸法収縮率は12%であった。
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記発泡体の加熱処理を、70〜120℃の温度範囲で温度の上昇と下降を繰り返して行い、発泡体のセル中に存在する水蒸気の放出と空気の吸入とを効率良く行うように構成することもできる。
・ 前記発泡体の加熱処理を、70〜120℃の温度範囲で温度の上昇と下降を繰り返して行い、発泡体のセル中に存在する水蒸気の放出と空気の吸入とを効率良く行うように構成することもできる。
・ 前記発泡体の加熱処理を、所定の時間をおいて間欠的に実施することも可能である。
・ 前記発泡体の原反を一定の厚さ、例えば10mmにスライスして変形の評価を行うこともできる。
・ 前記発泡体の原反を一定の厚さ、例えば10mmにスライスして変形の評価を行うこともできる。
・ ポリオレフィン系樹脂を複数種類用い、発泡体の物性を調整することもできる。
・ 前記発泡体の原料に、吸水性樹脂、水と反応する酸化カルシウム、酸化カリウムなどの吸水剤を少なくとも一種配合することも可能である。
・ 前記発泡体の原料に、吸水性樹脂、水と反応する酸化カルシウム、酸化カリウムなどの吸水剤を少なくとも一種配合することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料の発泡倍率は、5〜50倍であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、発泡倍率の高い柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。
・ 前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料の発泡倍率は、5〜50倍であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、発泡倍率の高い柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。
・ 前記加熱処理は、ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後1時間以内に行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、発泡体の変形を効果的に抑制することができる。
Claims (3)
- ポリオレフィン系樹脂と、加熱時に分解して炭酸ガス及び水蒸気を発生する炭酸水素ナトリウムとを含有する原料を混合後加熱し、炭酸水素ナトリウムの分解によって発生する炭酸ガスによりポリオレフィン系樹脂を発泡させた後、70〜120℃で1〜24時間加熱処理することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
- 前記加熱処理は、ポリオレフィン系樹脂を発泡させた後3時間以内に行うことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
- 前記原料には架橋剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
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