JP4459494B2 - 難燃性樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境に負荷の少ないノンハロゲンの材料を使用した難燃性に優れた樹脂発泡体に関するものである。この樹脂発泡体は、例えば、電子機器等の内部絶縁体、緩衝材、遮音材、断熱材、食品包装材、衣用材、建材用など、柔らかさやクッション性の要求される用途に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
電子機器等の内部絶縁体、緩衝材、遮音材、断熱材、衣用材、建材用等として用いられる発泡体には、部品として組み込まれている場合にそのシール性という観点から、柔らかさ、クッション性および断熱性等に優れるという特性が要求される。これまでこのような特性を有する樹脂発泡体が種々提案されている。
【0003】
樹脂発泡体等の発泡体材料は、例えば、水密、気密、断熱、防音、緩衝等の目的で様々な部位に使用されているが、電子機器用途などのように、使われる部位によっては、材料に難燃性を要求されることもあり、材料の難燃化が種々検討されている。しかし、樹脂発泡体は熱可塑性ポリマーで構成されているため燃えやすいという欠点を有している。そのため、特に電子機器用途等では、難燃性の付与が不可欠である。
【0004】
発泡体では、もともとの素材にもよるが、一般的に難燃剤として、塩素化ポリエチレン、塩素化パラフィン、デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモンから選択された1種または2種以上の化合物と、水酸化アルミニウムとを併用して難燃化する方法が広く用いられていた。しかし、難燃剤として塩素系材料を使用すると、発泡体からの塩素イオンの発生により腐食の原因となりやすく、また、デカブロモジフェニルエーテルは焼却の際のダイオキシンの発生が懸念され環境問題により、その使用は望ましくないと考えられる。また、三酸化アンチモンは環境負荷物質であり有害物質であるため、その使用は望ましくない。そのため、これらの化合物を含んでいない難燃剤が検討されている。例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を配合することにより、難燃性を付与させる試みが行われているが、従来から用いられているハロゲン系化合物より難燃性に劣り、ハロゲン系化合物と同等の難燃性を付与させるにはかなりの量の配合量を必要とし、発泡成形に関して成形性が劣る。
【0005】
一方、内部に気泡を有する発泡体を形成する方法として、一般的には物理発泡法及び化学発泡法が行われている。物理発泡とは、炭化水素系あるいはクロロフルオロカーボン系の低沸点液体をポリマーに含浸させた後、ポリマーを加熱することで、内部に含浸させた低沸点液体をガス化させ、これを駆動力としてポリマーを発泡させる手法である。また化学発泡とは、ポリマーに熱分解型発泡剤を添加した樹脂組成物を加熱し、該分解型発泡剤の分解により発生したガスにより気泡形成を行う手法である。しかしながら、物理発泡による技術には、発泡剤として用いる物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念される。また、化学発泡法では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存するため、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる。なお、これらの物理発泡法及び化学発泡法では、いずれにおいても微細な気泡構造を形成することは難しく、特に300μm以下の微細気泡を形成することはできないとされている。
【0006】
近年、微細気泡構造を有する発泡体を得る方法として、不活性ガスを高圧下でポリマーに溶解させた後、急激に圧力を低下させて発泡構造を形成する方法が提案されている。例えば、特開平6−322168号公報には、圧力容器に熱可塑性ポリマーを仕込み、ポリマーの軟化点まで加熱しながら高圧ガスを仕込み、その後圧力を低下させて気泡を形成させる方法が開示されている。しかし、この方法では、減圧する際、ポリマーが溶融状態にあるため、ポリマーが膨張し易くなり、得られる発泡体の気泡径が大きくなりやすい。また、通常、ガラス転移温度が150℃以上のポリマーを用いるため、室温では柔軟性が低い。従って、電子機器用の防音材として使用するには、形状追随性、クッション性の点から問題がある。また、特開平10−168215号公報には、熱可塑性ポリウレタンからなるシートに、加圧下で無機ガスを含浸させた後、加熱することにより発泡させる熱可塑性ポリウレタン発泡シートの製造法が開示されている。しかし、これらの公報には、難燃化の手法については何ら開示も示唆もされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い難燃性を有するとともに、高発泡で柔軟性に優れ、且つ環境への負荷が少ない難燃性樹脂発泡体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、環境への負荷が少ない難燃剤として用いられる金属水酸化物をカーボンブラックと組み合わせて用いると、従来のような金属水酸化物のみを使用した場合と比較して大幅に難燃性を改良することができ、しかも難燃剤の配合量を減量することができ、また環境への負荷が低減され、さらには発泡時における樹脂の流動性が確保され、その結果、高発泡で難燃性及び柔軟性に優れた樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(イ)〜(ハ)成分を含有する難燃性樹脂発泡体であって、(イ)熱可塑性ポリマーが、エチレン−プロピレン共重合体又はJIS−A硬度が69のポリマーからなるオレフィン系エラストマーと、ポリプロピレンからなるポリオレフィン系ポリマーとの混合物であり、且つ金属水酸化物(ロ)の含有量が熱可塑性ポリマー(イ)100重量部に対して30〜200重量部、カーボンブラック(ハ)の含有量が同1〜20重量部であって、カーボンブラック(ハ)と金属水酸化物(ロ)との割合が、前者/後者(重量部)=1/100〜20/100であり、且つ(イ)〜(ハ)成分を含む混合物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成された相対密度が0.3以下の発泡体であることを特徴とする難燃性樹脂発泡体を提供する。
(イ)熱可塑性ポリマー
(ロ)金属水酸化物
(ハ)カーボンブラック
【0010】
前記(ロ)成分である金属水酸化物としては、下記式(1)で表される複合化金属水酸化物を好適に用いることができる。
m(MaOb)・n(QdOe)・cH2O (1)
[上記式中、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは周期律表のIVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib及びIIbから選択された族に属する金属元素である。m、n、a、b、c、d、eは正数であって、互いに同一の値であってもよく、異なる値であってもよい]
【0011】
前記式(1)で表される複合化金属水酸化物中の金属元素を示すMが、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、スズ、亜鉛、銅、鉄、チタン及びホウ素からなる群から選択された少なくとも一つの金属であることが好適である。また、前記式(1)で表される複合化金属水酸化物中の金属元素を示すQが、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも一つの金属であることが好適である。
【0012】
このような難燃性樹脂発泡体は、前記(イ)〜(ハ)成分を含む混合物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成することができる。前記不活性ガスとしては二酸化炭素又は窒素が好適である。
【0013】
なお、本明細書では、「熱可塑性ポリマー」を通常の熱可塑性樹脂のほか、ゴム・エラストマーや熱可塑性エラストマーをも含む広い意味に用いる。また、ホウ素(B)も金属元素に含めるものとする。
【0014】
【発明の実施の態様】
[(イ)熱可塑性ポリマー]
本発明の難燃性樹脂発泡体を構成する(イ)熱可塑性ポリマーとしては、発泡体を形成可能なポリマーであれば特に限定されない。このような熱可塑性ポリマー(イ)としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン、ABS樹脂等のポリスチレン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィド;エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール等との共重合体(エチレン系共重合体);エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、それらの水素添加物ポリマーなどのスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの熱可塑性ポリマーは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0015】
これらの中でも、(i)熱可塑性エラストマー、(ii)ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー、(iii)ゴム(エラストマー)又は熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性ポリマー(例えば、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマーと、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマーとの混合物)などが好適である。なお、本発明においては、(イ)熱可塑性ポリマーが、オレフィン系エラストマーとポリオレフィン系ポリマーとの混合物であって、前記オレフィン系エラストマーはエチレン−プロピレン共重合体又はJIS−A硬度が69のポリマーであり、前記ポリオレフィン系ポリマーはポリプロピレンである。
【0016】
[(ロ)金属水酸化物]
本発明の難燃性樹脂発泡体を構成する(ロ)金属水酸化物としては、加熱することによって水分を放出し、消炎することが可能な金属水酸化物を用いることができる。このような金属水酸化物(ロ)における金属元素としては、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ホウ素(B)等があげられる。中でも、アルミニウム、マグネシウムなどが好ましい。
【0017】
金属水酸化物(ロ)は、1種の金属元素で構成されていてもよく、2種以上の金属元素で構成されていてもよい。本発明では、1種の金属元素で構成された金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが好適に用いられる。
【0018】
本発明では、2種以上の金属元素で構成された金属水酸化物である複合化金属水酸化物も好適に用いることができる。このような複合化金属水酸化物としては、例えば、前記式(1)で表される複合化金属水酸化物が好ましい。前記式(1)で表される複合化金属水酸化物において、金属元素を示すMとしては、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ホウ素(B)等があげられる。中でも、マグネシウムなどが好ましい。前記Mは1種の金属元素で構成されていてもよく、2種以上の金属元素で構成されていてもよい。
【0019】
また、前記式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物中のもう一つの金属元素を示すQは、周期律表のIVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib及びIIbから選ばれた族に属する金属である。例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)等が挙げられる。中でも、ニッケル、亜鉛等が好ましい。前記Qは1種の金属元素で構成されていてもよく、2種以上の金属元素で構成されていてもよい。
【0020】
複合化金属水酸化物は、多面体形状を有していてもよく、薄平板形状を有していてもよい。多面体形状の複合化金属水酸化物を用いると、高発泡の樹脂発泡体を得ることができる。このような結晶形状が多面体形状を有する複合化金属水酸化物は、公知の方法により製造できる(特開2000−53875号公報等参照)。例えば、複合化金属水酸化物の製造工程における各種条件等を制御することにより、縦、横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、所望の多面体形状、例えば、略12面体、略8面体、略4面体等の形状を有する複合化金属水酸化物を得ることができる。
【0021】
上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物の具体的な代表例としては、sMgO・(1−s)NiO・cH2O[0<s<1、0<c≦1]、sMgO・(1−s)ZnO・cH2O[0<s<1、0<c≦1]、sA12O3・(1−s)Fe2O3・cH2O[0<s<1、0<c≦3]等が挙げられる。これらのなかでも、sMgO・(1−s)Q1O・cH2O[但し、Q1はNi又はZnを示し、0<s<1、0<c≦1である]で表される複合化金属水酸化物、例えば、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物が特に好ましく用いられる。
【0022】
金属水酸化物(ロ)の平均粒子径(平均粒径)は、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは0.6〜6μm程度である。平均粒径は、例えばレーザー式粒度測定器により測定できる。なお、平均粒径が10μmを超えると、高発泡の樹脂発泡体が得られ難くなる。
【0023】
なお、金属水酸化物(ロ)は、表面処理が施されていてもよい。また、金属水酸化物(ロ)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記金属水酸化物(ロ)の含有量は、熱可塑性ポリマー(イ)100重量部に対して30〜200重量部であり、好ましくは50〜150重量部程度である。この含有量が少なすぎると難燃化効果が小さくなり、逆に多すぎると、成形性が低下し、高発泡の樹脂発泡体が得られ難くなる。
【0025】
[(ハ)カーボンブラック]
本発明の難燃性樹脂発泡体を構成する(ハ)カーボンブラックは、特に限定されず、一般的にゴムやプラスティックの補強に用いられているものから適宜選択することができる。カーボンブラック(ハ)としては、例えば、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。カーボンブラック(ハ)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。カーボンブラック(ハ)としては、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックを好適に用いることができる。
【0026】
カーボンブラック(ハ)の含有量は、熱可塑性ポリマー(イ)100重量部に対して1〜20重量部であり、好ましくは3〜15重量部程度である。この含有量が少なすぎると、難燃化効果が小さくなり、または金属水酸化物(ロ)の使用量をそれほど低減させることができない。逆に多すぎると、成形性が低下し、高発泡の樹脂発泡体が得られ難くなる。
【0027】
また、カーボンブラック(ハ)と、金属水酸化物(ロ)との割合は、前者/後者(重量部)=1/100〜20/100であり、好ましくは3/100〜15/100程度である。
【0028】
本発明の難燃性樹脂発泡体は、前記(イ)成分、(ロ)成分および(ハ)成分のほか、必要に応じて、添加剤が添加されていてもよい。添加剤の種類は特に限定されず、発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリマーの成形に用いられる添加量を採用できる。
【0029】
[難燃性樹脂発泡体の製造]
本発明の難燃性樹脂発泡体を製造する方法としては、物理的方法、化学的方法等、発泡成形に通常用いられる方法が採用できる。一般的な物理的方法は、クロロフルオロカーボン類または炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)をポリマーに分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発させることにより気泡を形成させるものである。また化学的方法は、ポリマーベースに添加された化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得る方法である。最近の環境問題などに鑑みると、物理的手法が好ましい。
【0030】
特に本発明では、セル径が小さくセル密度の高い発泡体が得られることから、高圧の不活性ガスを発泡剤として用いる方法、例えば、(イ)〜(ハ)成分を含む混合物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て、発泡体を形成する方法が好ましい。具体的には、(イ)〜(ハ)成分を含む混合物に、不活性ガスを高圧下で含浸させるガス含浸工程と、該工程後に圧力を低下させて樹脂を発泡させる減圧工程、及び必要に応じて加熱により気泡を成長させる加熱工程を経て形成する方法などが挙げられる。この場合、予め成形した未発泡成形物を不活性ガスに含浸させてもよく、また、溶融した熱可塑性ポリマー(イ)を含む混合物((ロ)成分及び(ハ)成分を含む)に不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧の際に成形に付してもよい。これらの工程は、バッチ方式、連続方式の何れの方式で行ってもよい。
【0031】
バッチ方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を形成できる。すなわち、まず、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマー(イ)を含む混合物を押し出すことにより、未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。或いは、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型の羽根を設けた混練機を使用して、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマー(イ)を含む混合物を均一に混練しておき、これを熱板のプレス機を用いてプレス成形し、熱可塑性ポリマーを基材樹脂として含む未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。そして、得られた未発泡成形物を耐圧容器中に入れ、高圧の不活性ガスを導入し、該不活性ガスを未発泡成形物中に含浸させる。この場合、未発泡成形物の形状は特に限定されず、ロール状、板状等の何れであってもよい。また、高圧の不活性ガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。十分に高圧の不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、基材樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよく、また、必要に応じて加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0032】
一方、連続方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を形成できる。すなわち、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して、熱可塑性ポリマー(イ)を含む混合物を混練しながら高圧の不活性ガスを注入し、十分にガスを熱可塑性ポリマー中に含浸させた後、押し出して圧力を解放し(通常、大気圧まで)、発泡と成形とを同時に行い、場合によっては加熱することにより気泡を成長させる。気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0033】
前記不活性ガスとしては、上記熱可塑性ポリマーに対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、二酸化炭素、窒素が好ましく、特に、発泡体の素材として用いる熱可塑性ポリマーへの含浸量が多く、含浸速度の速い二酸化炭素が好適である。
【0034】
熱可塑性ポリマーに含浸させる際の不活性ガス(二酸化炭素など)は超臨界状態であるのが好ましい。超臨界状態では、ポリマーへのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃であり、臨界圧力は7.4MPaである。
【0035】
なお、前記ガス含浸工程における圧力は、例えば6MPa以上(例えば6〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば8〜100MPa程度)である。圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎる。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0036】
また、ガス含浸工程における温度は、用いる不活性ガスや熱可塑性ポリマーの種類等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば10〜350℃程度である。例えば、シート状などの未発泡成形物に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では10〜200℃程度、好ましくは40〜200℃程度である。また、ガスを含浸させた溶融ポリマーを含む混合物を押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では60〜350℃程度が一般的である。なお、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は32℃以上、特に40℃以上であるのが好ましい。
【0037】
前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒程度である。また、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃程度、好ましくは60〜250℃程度である。
【0038】
本発明における発泡体は、平均気泡径が0.1〜300μm、好ましくは5〜250μm、さらに好ましくは30〜200μmの微細な気泡サイズを有することができる。また、相対密度(発泡後の密度/未発泡状態での密度)は、0.3以下(例えば、0.002〜0.3程度)、好ましくは0.25以下(例えば、0.005〜0.25程度)であってもよい。さらにまた、50%圧縮したときの対反発荷重(「50%圧縮荷重」と称する場合がある)が20N/cm2以下(例えば、0.1〜20N/cm2程度)、特に15N/cm2以下(例えば、0.3〜15N/cm2程度)であることが好ましい。このような発泡体は特に柔軟性に優れる。
【0039】
上記の平均気泡径、相対密度及び50%圧縮荷重は、用いる不活性ガス及び熱可塑性ポリマーや熱可塑性エラストマーの種類に応じて、例えば、ガス含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後の加熱温度などを適宜選択、設定することにより調整することができる。
【0040】
こうして得られる難燃性樹脂発泡体は、発泡時に樹脂の流動性が確保され、気泡の成長が阻害されないためか、十分な発泡倍率が得られ、高い柔軟性が付与される。例えば、相対密度が、0.01〜0.10程度、好ましくは0.01〜0.06程度の樹脂発泡体が得られる。相対密度とは下記式により算出される値をいう。
相対密度(−)=(発泡体の密度)÷[発泡させる前のシート(樹脂成形体)の密度]
【0041】
また、(ロ)金属水酸化物を、(ハ)カーボンブラックと組み合わせて用いているので、難燃性を大きく改善することができ、例えば、金属水酸化物の使用量を減少させても、難燃化効果の低下が抑制又は防止される。しかも、樹脂の流動性を確保しつつ発泡させることができる。そのため、高発泡で、且つ優れた柔軟性を有している難燃性樹脂発泡体が得られる。
【0042】
さらにまた、本発明の難燃性樹脂発泡体は、従来の塩素系樹脂やアンチモン系等の難燃剤のみを含有する発泡体と比較して安全性が高く、環境への負荷も少ない。
【0043】
なお、本発明の難燃性樹脂発泡体は、平均気泡径が0.1〜300μmの範囲の微細な気泡サイズとすることができ、また、相対密度が0.3以下で、50%圧縮した時の対反発荷重が20N/cm2以下となるように調整することができるため、柔軟性があり、しかも難燃性を有するため、発泡体残渣などが存在せずクリーンな発泡体である。そのため、電子機器等の内部に用いる防音材として好適に用いることができる。
【0044】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、発泡体の相対密度、50%圧縮荷重、平均気泡径は、以下の方法により求めた。
【0045】
(相対密度)
相対密度は下記式により求めた。
相対密度(−)=(発泡体の密度)÷(発泡させる前のシートの密度)
(50%圧縮荷重)
直径30mmの円形状に切り出した試験片を、複数枚重ねて厚みを約25mmとし、圧縮速度10mm/minで50%まで圧縮したときの応力を単位面積(cm2)当たりに換算して、50%圧縮荷重とした。
(平均気泡径)
作成した発泡シートを液体窒素中で凍結して割断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(Hitachi-570)を用い、加速電圧10kVにて観察し、得られた観察像から画像処理により平均気泡径を求めた。
(酸素指数)
JIS K 7201に準じて、発泡させる前の混合樹脂の酸素指数を測定した。
(難燃性)
1mmの厚さにスライスし、UL94規格(HF−1)に準じて、発泡体の燃焼試験を行い、難燃性の判定(合格又は不合格)をした。
【0046】
(実施例1)
密度が0.9g/cm3、230℃のメルトフローレートが4であるポリプロピレン50重量部と、JIS−A硬度が69のオレフィン系エラストマー50重量部と、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラック10重量部と、MgO・NiO・H2Oの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm)100重量部とを、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)により180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、オレフィン系ポリマーによる発泡体を得た。この発泡体は、表1に示されるように、相対密度が0.033であり、平均セル径が83μmであり、50%圧縮荷重が2.49N/cm2であった。
【0047】
(実施例2)
密度が0.9g/cm3、230℃のメルトフローレートが4であるポリプロピレン30重量部と、JIS−A硬度が69のオレフィン系エラストマー70重量部と、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラック10重量部と、MgO・NiO・H2Oの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm)100重量部とを、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)により180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、オレフィン系ポリマーによる発泡体を得た。この発泡体は、表1に示されるように、相対密度が0.045であり、平均セル径が93μmであり、50%圧縮荷重が1.49N/cm2であった。
【0048】
(実施例3)
密度が0.9g/cm3、230℃のメルトフローレートが4であるポリプロピレン50重量部と、JIS−A硬度が69のオレフィン系エラストマー50重量部と、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラック5重量部と、MgO・NiO・H2Oの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm)100重量部とを、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)により180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、オレフィン系ポリマーによる発泡体を得た。この発泡体は、表1に示されるように、相対密度が0.026であり、平均セル径が80μmであり、50%圧縮荷重が2.10N/cm2であった。
【0049】
(実施例4)
密度が0.9g/cm3、230℃のメルトフローレートが4であるポリプロピレン40重量部と、JIS−A硬度が69のオレフィン系エラストマー60重量部と、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラック10重量部と、MgO・NiO・H2Oの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm)120重量部とを、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)により180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、オレフィン系ポリマーによる発泡体を得た。この発泡体は、表1に示されるように、相対密度が0.045であり、平均セル径が75μmであり、50%圧縮荷重が1.45N/cm2であった。
【0050】
(比較例1)
密度が0.9g/cm3、230℃のメルトフローレートが4であるポリプロピレン50重量部と、JIS−A硬度が69のオレフィン系エラストマー50重量部と、MgO・NiO・H2Oの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm)110重量部とを、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)により180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、オレフィン系ポリマーによる発泡体を得た。この発泡体は、表1に示されるように、相対密度が0.046であり、平均セル径が90μmであり、50%圧縮荷重が3.10N/cm2であった。
【0051】
(比較例2)
密度が0.9g/cm3、230℃のメルトフローレートが4であるポリプロピレン50重量部と、JIS−A硬度が69のオレフィン系エラストマー50重量部と、MgO・NiO・H2Oの式で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(平均粒径0.7μm)120重量部とを、ローラ型の翼を設けたラボプラストミル(東洋精機製作所製)により180℃の温度で混練した後、180℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ0.5mm、φ80mmのシート状に成型した。このシートを耐圧容器に入れ、150℃の雰囲気中、15MPaの加圧下で、10分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。次いで、急激に減圧することにより、オレフィン系ポリマーによる発泡体を得た。この発泡体は、表1に示されるように、相対密度が0.040であり、平均セル径が90μmであり、50%圧縮荷重が2.95N/cm2であった。
【0052】
実施例1〜4および比較例1〜2により得られた発泡体について、発泡させる前の混合樹脂における混合樹脂の酸素指数(JIS K 7201に準じる)と、難燃性(UL94規格(HF−1)に準じる)とを評価したところ、表1に示される結果が得られた。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、本発明に相当する実施例の樹脂発泡体、すなわち難燃剤としての金属水酸化物及びカーボンブラックが併用されている樹脂発泡体は、比較例の樹脂発泡体と比較して、高発泡で柔軟性に優れている。また、相対密度も小さい。もちろん、優れた難燃性を有している。
【0055】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂発泡体は、高い難燃性を有するとともに、高発泡で柔軟性も優れている。また、環境への負荷も少ない。
Claims (9)
- 下記の(イ)〜(ハ)成分を含有する難燃性樹脂発泡体であって、(イ)熱可塑性ポリマーが、エチレン−プロピレン共重合体又はJIS−A硬度が69のポリマーからなるオレフィン系エラストマーと、ポリプロピレンからなるポリオレフィン系ポリマーとの混合物であり、且つ金属水酸化物(ロ)の含有量が熱可塑性ポリマー(イ)100重量部に対して30〜200重量部、カーボンブラック(ハ)の含有量が同1〜20重量部であって、カーボンブラック(ハ)と金属水酸化物(ロ)との割合が、前者/後者(重量部)=1/100〜20/100であり、且つ(イ)〜(ハ)成分を含む混合物に、高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成された相対密度が0.3以下の発泡体であることを特徴とする難燃性樹脂発泡体。
(イ)熱可塑性ポリマー
(ロ)金属水酸化物
(ハ)カーボンブラック - (ロ)成分である金属水酸化物が、下記式(1)で表される複合化金属水酸化物である請求項1記載の難燃性樹脂発泡体。
m(MaOb)・n(QdOe)・cH2O (1)
[上記式中、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは周期律表のIVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib及びIIbから選択された族に属する金属元素である。m、n、a、b、c、d、eは正数であって、互いに同一の値であってもよく、異なる値であってもよい] - 式(1)で表される複合化金属水酸化物中の金属元素を示すMが、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、スズ、亜鉛、銅、鉄、チタン及びホウ素からなる群から選択された少なくとも一つの金属である請求項2記載の難燃性樹脂発泡体。
- 式(1)で表される複合化金属水酸化物中の金属元素を示すQが、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも一つの金属である請求項2又は3記載の難燃性樹脂発泡体。
- 式(1)で表される複合化金属水酸化物の平均粒径が0.5〜10μmである請求項2〜4の何れかの項に記載の難燃性樹脂発泡体。
- 不活性ガスが二酸化炭素又は窒素である請求項1〜5の何れかの項に記載の難燃性樹脂発泡体。
- 含浸時の不活性ガスが超臨界状態である請求項6記載の難燃性樹脂発泡体。
- 平均気泡径が0.1〜300μmである請求項1〜7の何れかの項に記載の難燃性樹脂発泡体。
- 50%圧縮した時の対反発荷重が20N/cm2以下である請求項1〜8の何れかの項に記載の難燃性樹脂発泡体。
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