JP2007227888A - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光効率が高く、低電圧で駆動でき、駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】陽極及び陰極間に、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であることを特徴とする有機電界発光素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、「発光素子」、又は「EL素子」ともいう。)に関する。
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、中でも有機電界発光(EL)素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されている。
有機電界発光素子は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機層を挟んだ対向電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子からの発光を利用するもの、又は、前記励起子からエネルギー移動によって生成する他の分子の励起子からの発光を利用するものである。
有機電界発光素子に要求される特性としては、高発光効率、低駆動電圧、高耐久性(長寿命化)などがある。
高発光効率、長寿命化に関しては、例えば、発光層への電子の流れを抑制する電子移動制御層を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、正孔阻止層を設けることによって正孔の漏れを阻止して発光効率を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。
しかしながら、上記のいずれ文献に開示される有機電界発光素子についても、発光効率、駆動電圧、及び耐久性が充分とは言えず、特性向上が求められている。
特開2004−273163号公報 特開2000−243571号公報 特開2000−3790号公報
本発明は、発光効率が高く、低電圧で駆動でき、駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
本発明者は検討の結果、有機電界発光素子における発光層と陰極との間に、特定の態様に構成した電子輸送層と有機薄膜層とをこの順に有することで、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
則ち、前記課題は、下記の手段によって解決された。
<1> 陽極及び陰極間に、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であることを特徴とする有機電界発光素子。
以下、本態様の有機電界発光素子を「第1の態様」と称する場合がある。
<2> 前記電子輸送層(ETL1)の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、前記有機薄膜層(ETL2)の電子親和力の値(ETL2(Ea)とが、下記式(1)で表される関係を満たすことを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子。
式(1):ETL1(Ea)<ETL2(Ea)
<3> 陽極及び陰極間に、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、前記有機薄膜層(ETL2)の電子親和力の値(ETL2(Ea)とが、下記式(2)で表される関係を満たし、前記有機薄膜層(ETL2)が陰極層に隣接していることを特徴とする有機電界発光素子。
式(2):ETL1(Ea)>ETL2(Ea)
以下、本態様の有機電界発光素子を「第2の態様」と称する場合がある。
<4> 前記陰極層を構成する材料の仕事関数が、2.5〜4.5eVの範囲であることを特徴とする前記<3>に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記有機薄膜層(ETL2)が、ピレン、カルバゾール、イミダゾピリジン及びそれらの誘導体、並びに金属錯体から選択される少なくとも1種を含む層であることを特徴とする前記<3>又は<4>に記載の有機電界発光素子。
<6> 前記膜厚比(ETL1/ETL2)が7〜70であることを特徴とする前記<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<7> 前記膜厚比(ETL1/ETL2)が10〜50であることを特徴とする前記<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<8> 前記電子輸送層(ETL1)が金属錯体を含む層であることを特徴とする前記1>乃至<7>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
本発明によれば、発光効率が高く、低電圧で駆動でき、駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
以下、本発明の有機電界発光素子について、第1の態様及び第2の態様に分けて詳細に説明する。
(第1の態様)
本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子は、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、該電子輸送層(ETL1)に隣接する有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であることを特徴とする。
本発明の有機電界発光素子は、上記構成としたことにより、発光効率を向上させるとともに、低電圧駆動、及び、駆動耐久性についても優れた効果を奏することができる。
本発明の作用は未だ明確ではないが、上記構成としたことにより、電極からの電子注入が促進されると共に、素子の耐性劣化が効果的に抑制されることから、発光効率の向上、低電圧駆動、及び駆動耐久性の向上が可能になったものと推測される。
本発明における電子輸送層(ETL1)は、陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。本発明においては、発光層と電子輸送層(ETL1)との間に、更に他の電子輸送層を有してもよい。
本発明における有機薄膜層(ETL2)は、電子輸送層(ETL1)と陰極との間に設けられる層であり、電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであることが必要である。本発明においては、陰極と有機薄膜層(ETL2)との間に、更に他の有機薄膜層を有してもよい。
電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)とは、隣接する層であることが好ましい。
なお、以下の説明では、電子輸送層(ETL1)及び有機薄膜層(ETL2)を、単に「ETL1層」及び「ETL2」層と称する場合がある。
本発明においては、電子輸送層(ETL1層)と有機薄膜層(ETL2層)との膜厚比(ETL1/ETL2)は5〜500であることが必要である。該膜厚比は、7〜70であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。
ETL1層の膜厚としては、10〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましく、10〜30nmであることが更に好ましい。
本発明の有機電界発光素子が、ETL1層以外の他の電子輸送層を有する場合、素子における電子輸送層全体の膜厚としては、電子移動度がホールの移動度に比べ小さいことから可能な限り薄い方が好ましく、20〜60nmであることがより好ましく、20〜30nmであることが更に好ましい。
ETL2層の膜厚は0.01〜3nmであり、0.05〜2nmであることが好ましく、0.5〜1nmであることが更に好ましい。
本発明の有機電界発光素子において、ETL2層と他の有機化合物層とを含む有機化合物層全体の膜厚としては、駆動電圧の点から、100〜400nmであることがより好ましく、200〜350nmであることが更に好ましい。
ETL1層及びETL2層の膜厚は、前記の膜厚比(ETL1/ETL2)を満たすように決定される。
有機薄膜層は、被形成面に対して、一定或いは不均一な膜厚で膜状に形成される態様であってもよいし、非連続的に形成される態様(例えば、島状に形成される態様)であってもよい。
なお、本発明における膜厚とは平均膜厚を指す。具体的な膜厚の設定は、各層を構成するそれぞれの材料からなる50〜200nm程度の単層を形成し、その膜厚を段差計あるいは光学式膜厚計等の手段で測定しておき、素子作製時にはその換算値から設定する。
また、膜厚は、ULVAC製触針式表面形状測定器(DEKTAK)により測定した値である。
本発明の第1の態様においては、ETL1と陰極の電子親和力の障壁差を小さくするという観点から、ETL1層の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、ETL2層の電子親和力の値(ETL2(Ea))が、下記式(1)で表される関係を満たすことが好ましい。
式(1):ETL1(Ea)<ETL2(Ea)
ETL1(Ea)及びETL2(Ea)が、上記式(1)の関係を満たす場合において、ETL2(Ea)−ETL1(Ea)=0.01〜0.3eVであることがより好ましく、ETL2(Ea)−ETL1(Ea)=0.01〜0.2eVであることが更に好ましい。
本発明において、各層の電子親和力(Ea)とは、その層で最も大きな割合を占める材料の電子親和力を意味する。
また、本発明における電子親和力Eaは、単層膜の吸収スペクトルからバンドギャップを算出し、これと別に測定したイオン化ポテンシャル(Ip)の値から電子親和力を求め、この値で規定する。該イオン化ポテンシャルはAC−1(理研計器社)を用いて室温・大気下で測定した値で規定する。AC−1の測定原理については、安達千波矢等著「有機薄膜仕事関数データ集」シーエムシー出版社2004年発行に記載されている。
ETL2層の電子移動度は、発光層内のホールと電子とのキャリアバランスの観点から、2.0×10−5cm/V・s以上1.0×10−2cm/V・s以下であることが好ましく、1.0×10−4cm/V・s以上1.0×10−3cm/V・s以下であることがより好ましく、5.0×10−4cm/V・s以上3.0×10−3cm/V・s以下であることがさらに好ましい。
また、ETL1層の電子移動度は、ETL2層と同様、発光層内のホールと電子のキャリアバランスの観点から、2.0×10−5cm/V・s以上1.0×10−2cm/V・s以下であることが好ましく、1.0×10−4cm/V・s以上1.0×10−3cm/V・s以下であることがより好ましく、5.0×10−4cm/V・s以上3.0×10−3cm/V・s以下であることがさらに好ましい。
本発明の第1の態様において、ETL1層に含有される電子輸送材料としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等が挙げられる。
ETL1層は、材料内を流れる電子に対する材料の耐久性の観点から、金属錯体を含む層であることが好ましい。該金属錯体としては、8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体が好ましい。
本発明の有機電界発光素子が、発光層とETL1層との間に、ETL1層以外の他の電子輸送層を有す場合、他の電子輸送層が含有する電子輸送材料としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等が挙げられる。
他の電子輸送層(発光層とETL1層との間の層)は発光層とETL1層との電子親和力の障壁を緩和する為に用いる為、また発光層からのホール移動をブロックする役割を果たす為、下記式(3)又は(4)で表される関係を満たすことが好ましい。
式(3):発光層(Ea)<他の電子輸送層(Ea)<ETL1(Ea)
式(4):発光層(Ip)<他の電子輸送層(Ip)
本発明の第1の態様における有機薄膜層(ETL2)に含有される電子輸送材料としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、フェナンスロリン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等が挙げられ、ETL1と陰極の電子親和力の障壁差を小さくするという観点からは、式(1)を満たす材料がより好ましい。
本発明の第1の態様において、電子輸送層(ETL1)及び有機薄膜層(ETL2)に含有される電子輸送材料の組み合わせとしては、ETL1層が含有する電子輸送材料は8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体であり、ETL2層が含有する電子輸送材料はフェナンスロリン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体である組み合わせが好ましい。材料内を流れる電子に対する材料の耐久性と駆動電圧の観点からは、ETL1層が含有する電子輸送材料8−キノリノール誘導体の金属錯体であり、ETL2層が含有する電子輸送材料がフェナンスロリン誘導体である組み合わせがより好ましい。
以下、本発明の有機電界発光素子に適用される構成について更に詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子は、陽極及び陰極間に、発光層と、電子輸送層(ETL1層、又は、ETL1層及び他の電子輸送層)と、有機薄膜層(ETL2層、又は、ETL2層及び他の有機薄膜層)と、を陽極側からこの順に有して構成される。
陰極及び陽極は基板上に形成されることが好ましい。また、陽極と陰極との間には、上記以外の他の有機化合物層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。通常の場合、陽極が透明である。
本発明における有機電界発光素子の積層の具体的な態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、有機薄膜層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間には電荷ブロック層等を有していてもよい。
なお、以下の説明において、陽極及び陰極間に設けられる発光層を含む各層は、「有機化合物層」と総称する場合がある。
<基板>
本発明で使用することができる基板としては、発光層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
<陽極>
陽極は、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常、透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/sq.以下が好ましく、10Ω/sq.以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
<陰極>
陰極は、通常、前記有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機薄膜層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等を含む誘電体層を0.1〜5nmの厚みで有していてもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
<有機化合物層>
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも、発光層、電子輸送層、及び有機薄膜層を有するが、前述の通りその他の層を含んでもよい。その他の層としては、正孔輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層等の各層が挙げられる。これらの層の詳細については後述する。
−有機化合物層の形成−
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
−電子輸送層、有機薄膜層−
本発明の第1の態様における電子輸送層(ETL1層、又は、ETL1層及び他の電子輸送層)と、有機薄膜層(ETL2層、又は、ETL2層及び他の有機薄膜層)についての詳細は既述した通りである。
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は発光材料を含有する層であり、ホスト材料と発光材料とをドーパントとして含有する層であることが好ましい。
発光材料としては、燐光発光材料であることがより好ましい。
ホスト材料としては、特に限定されるものではないが、電荷輸送材料であることが好ましい。
発光層は1層であっても2層以上であってもよい。
発光層に含有しうる燐光発光材料は、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体である。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜20体積%含有されることが好ましく、0.5〜10体積%含有されることがより好ましい。
また、本発明における発光層に含有しうるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するもの等が挙げられ、特に限定するものではないが、中でもカルバゾール骨格を有するものが好ましい。
ホスト材料のT(最低多重項励起状態のエネルギーレベル)は、ドーパント材料のTレベルより大きいことが好ましい。なお、ホスト材料とドーパント材料とを共蒸着することによって、ドーパント材料がホスト材料にドープされた発光層を好適に形成することができる。
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
ホスト材料は、発光層中に、50〜99.9体積%含有されることが好ましく、70〜99.9体積%含有されることがより好ましい。
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。発光層の陽極側に正孔輸送層を設けることによりホールの輸送を促進することが可能である。また、正孔輸送層よりも陽極側にさらに正孔注入層を設けることによって陽極からのホールの注入を促進することが可能である。
正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、5〜50nmであることが好ましく、10〜40mであることが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.5〜50nmであることが好ましく、1〜40nmであることが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、ボトムエミッションでITOを陽極として使用する状況ではITOの凹凸を緩和する為、100nm以上の厚さが必要となる場合がある。この場合、正孔注入層、正孔輸送層が厚膜となる為、駆動電圧が上昇し、ホールの輸送性が低下し発光層内のキャリアバランスが崩れる。これを防ぐ為、正孔注入層、輸送層にPドープを施し、材料内のホール数を増加させる。ドープする材料としては、F4−TCNQ等の材料が挙げられる。ドープ量は0.05〜0.5体積%が好ましく、0.1〜0.3体積%であることが更に好ましい。
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
<封止>
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
(第2の態様)
本発明の第2の態様に係る有機電界発光素子は、一対の電極間に、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、前記有機薄膜層(ETL2)の電子親和力の値(ETL2(Ea)とが、下記式(1)で表される関係を満たし、前記有機薄膜層(ETL2)が陰極層に隣接していることを特徴とする。
式(2):ETL1(Ea)>ETL2(Ea)。
かかる構成とすることで、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子と同様の作用効果が発揮される。以下、本発明の第2の態様に係る有機電界発光素子について説明するが、特に説明しない構成については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子と同様の構成を、適宜、適用することができる。
本発明の第2の態様における有機薄膜層(ETL2)は、電子輸送層(ETL1)と陰極との間に設けられる層であり、電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ電子輸送層(ETL1)の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、有機薄膜層(ETL2)の電子親和力の値(ETL2(Ea)とが、下記式(2)で表される関係を満たすこことが必要である。
式(2):ETL1(Ea)>ETL2(Ea)
また、本発明の第2の態様における有機薄膜層(ETL2)は、陰極層に隣接している層である。
ここで、「陰極層」とは、有機EL素子において、陰極として機能する領域、及び、陰極と該陰極に隣接して形成される無機化合物層とを含んで構成される領域の双方を意味する。該無機化合物層としては、例えば、後述する誘電体層(電子注入層)のごとき無機化合物層が挙げられる。
なお、以下の説明では、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子と同様に、電子輸送層(ETL1)及び有機薄膜層(ETL2)を、単に「ETL1」層及び「ETL2」層と称する場合がある。
本発明においては、電子輸送層(ETL1)と有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)は5〜500であることが必要である。該膜厚比は、10〜70であることが好ましく、20〜50であることがより好ましい。
本発明の第2の態様おけるETL1層及びETL2層の膜厚、膜厚比(ETL1/ETL2)、有機薄膜層の態様などは、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
本発明の第2の態様においては、ETL2への電子の注入を促進するため、ETL2より電子親和力の小さな薄い層を設け、高電圧を加えた場合に生じるトンネル効果という観点から、ETL1層の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、ETL2層の電子親和力の値(ETL2(Ea))が、下記式(2)で表される関係を満たすことが必要である。
式(2):ETL1(Ea)>ETL2(Ea)
ETL1(Ea)とETL2(Ea)が、上記式(2)の関係を満たす場合において、ETL1(Ea)−ETL2(Ea)=0.01〜0.9eVであることがより好ましく、ETL1(Ea)−ETL2(Ea)=0.01〜0.3eVであることが更に好ましい。
本発明の第2の態様において、各層の電子親和力(Ea)、ETL2層の電子移動度、ETL1層の電子移動度は、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
また、本発明の第2の態様におけるETL1層に含有される電子輸送材料も、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。有機電界発光素子が、発光層とETL1層との間に、ETL1層以外の他の電子輸送層を有する場合、他の電子輸送層が含有する電子輸送材料も、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。さらに、他の電子輸送層(発光層とETL1層との間の層)は発光層とETL1層との電子親和力の障壁を緩和する為に用いる為、また発光層からのホール移動をブロックする役割を果たす為、既述の式(3)または(4)で表される関係を満たすことが好ましい。
本発明の第2の態様における有機薄膜層(ETL2)に含有される電子輸送材料としては、ピレン、カルバゾール、イミダゾピリジン及びそれらの誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレンの芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、フェナンスロリン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、2−(2−フェノラト)イミダゾピリジンの誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体等が挙げられ、ETL1と陰極の電子親和力の障壁差を小さくするという観点から、式(2)を満たす材料が選択される。
本発明の第2の態様における有機薄膜層(ETL2)としては、材料内を流れる電子に対する材料の耐久性の観点から、上記の材料の中でも、ピレン、カルバゾール、イミダゾピリジン及びそれらの誘導体、並びに、2−(2−フェノラト)イミダゾピリジンの誘導体を含む金属錯体から選択される少なくとも1種を含む層であることが特に好ましい。
本発明の第2の態様において、電子輸送層(ETL1)及び有機薄膜層(ETL2)に含有される電子輸送材料の組み合わせとしては、ETL1層が含有する電子輸送材料が、8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体であり、ETL2層が含有する電子輸送材料が、ピレン、カルバゾール、イミダゾピリジン及びそれらの誘導体、ナフタレン、ペリレン、ピレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、8−キノリノール誘導体を含む金属錯体に代表される各種金属錯体である組み合わせが好ましく、材料内を流れる電子に対する材料の耐久性の観点からは、ETL1層が含有する電子輸送材料が8−キノリノール誘導体の金属錯体であり、ETL2層が含有する電子輸送材料が、ピピレン、カルバゾール、イミダゾピリジン及びそれらの誘導体、2−(2−フェノラト)イミダゾピリジンの誘導体を含む金属錯体である組み合わせがより好ましい。
以下、本発明の第2の態様に係る有機電界発光素子に適用される構成について更に詳細に説明する。
本発明の第2の態様に係る有機電界発光素子は、一対の電極間に、発光層と、電子輸送層(ETL1層、又は、ETL1層及び他の電子輸送層)と、有機薄膜層(ETL2層)と、を陽極側からこの順に有して構成される。
陽極および基板については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
本発明の第2の態様に係る陰極層は、既述のごとく、有機EL素子において、陰極として機能する領域、及び、陰極と該陰極に隣接して形成される無機化合物層とを含んで構成される領域の双方を意味する。
陰極は、の形状、構造、大きさ本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。
陰極を構成する材料の具体例としてはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法及び陰極形成位置については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
また、陰極の隣接する無機化合物層として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等を含む誘電体層を0.1〜3nmの厚みで有していてもよい。
この誘電体層については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
陰極層を構成する材料の仕事関数としては、2.5〜4.5eVの範囲であることが好ましく、2.8〜4.0eVの範囲)であることがより好ましい。
陰極の厚みや態様については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。また、陰極とともに上記誘電体層等の無機化合物層が設けられる場合には、該無機化合物層の厚みとしては、通常、0.1〜3nm程度であり、0.5〜2nmが好ましい。
また、有機化合物層、有機化合物層の形成方法などについては、第2の態様で言及した内容、およびそれ以外については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。さらに、正孔注入層、正孔輸送層、保護層については、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。封止についても、本発明の第1の態様に係る有機電界発光素子の場合と同様である。
以上のような本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。そして、本発明によれば、発光効率が高く、低電圧で駆動でき、駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
本発明における有機電界発光素子の駆動耐久性は、特定の輝度における輝度半減時間により測定することができる。例えば、KEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させ、初期輝度1500cd/mとなるように電流を設定し、その電流値が一定となる条件で連続駆動試験をおこない、輝度が20%減じるまでに要した時間を測定し、駆動耐久性とした。この駆動耐久性(時間)を従来発光素子と比較することにより求めることができる。本発明においてはこの数値を用いた。
また、発光特性としての発光効率は、前記駆動耐久性の測定と同時に、輝度−電流−電圧特性を測定し、本発明における発光効率(外部量子効率(%))とした。
本発明の有機EL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[比較例1]
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板にIn含有率が95質量%であるITOタ−ゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基材温度100℃、酸素圧1×10−3Pa)により、透明陽極としてのITO薄膜(厚み0.2μm)を形成した。ITO薄膜の表面抵抗は10Ω/sq.であった。
次に、前記透明陽極を形成した基板を洗浄容器に入れ、IPA洗浄した後、これにUV−オゾン処理を5分おこなった。この透明陽極上に銅フタロシアニン(CuPC)を真空蒸着法にて、0.1nm/秒の速度で10nmの正孔注入層を設けた。
その上に、α−NPD((N,N’−ジ−α−ナフチル−N,N’−ジフェニル)−ベンジジン)を真空蒸着法にて0.3nm/秒の速度で蒸着し30nmの正孔輸送層を設けた。
この上に発光層中のホスト材料としてmCP、発光層中の発光材料として下記発光材料FIrpicを真空蒸着法にて100/5の割合で共蒸着して、30nmの発光層を設けた。
発光層の上に、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し10nmの電子輸送層Aを設け、その上に、Alq3を真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着して30nmの電子輸送層Bを設けた。
さらに、この層上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを真空蒸着法にて1nm蒸着した。更に、この上にアルミニウムを真空蒸着法にて蒸着し0.1μmの陰極を設けた。
得られた発光積層体をアルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、乾燥剤を設けたステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止し、比較例1の発光素子を得た。
なお、銅フタロシアニンの蒸着から封止までの作業は、真空または窒素雰囲気下で行い、大気に暴露することなく素子作製を行った。
以下に、比較例1の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
[評価]
−膜厚測定−
ガラス基板に一層蒸着するごとにULVAC製触針式表面形状測定器(DEKTAK)により測定し各層の膜厚を測定した。その結果を下記表1に示す。
−電子親和力の測定−
ETL1層の電子親和力ETL1(Ea)、ETL2層の電子親和力ETL2(Ea)は、それぞれ単層膜(単独層)の吸収スペクトルの長波端からバンドギャップを算出し、この値と紫外線光電子分析装置AC−1(理研計器製)により測定したイオン化ポテンシャル(Ip)の値から電子親和力(Ea)を算出した。その結果を下記表1に示す。
また、上記により得られた発光素子を用いて、以下の方法で、駆動電圧、駆動耐久性、及び発光効率を測定した。
−駆動電圧−
発光素子を電流密度1mA/cmで一定になるよう加えた電圧値を駆動電圧とした。
−駆動耐久性試験−
発光素子を発光初期の輝度が1500cd/mとなる電流値を一定とした条件で連続駆動試験をおこない、輝度減衰量が20%を超えたときの時間を測定し、駆動耐久性とした。
−外部量子効率−
発光素子に電圧を印加して、この素子の光量−電流特性を測定し、発光効率(外部量子効率(%))を算出した。
[比較例2]
比較例1の電子輸送層Bにおいて、Alqに代えてBCPを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で30nm蒸着した以外は、比較例1と同様に素子作製行い、比較例2の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を表1に示す。
以下に比較例2の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/BCP(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
[実施例1]
比較例1において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し15nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、BCPを真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して2nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例1と同様に素子作製を行い、実施例1の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を下記表1に示す。
以下に実施例1の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(15nm)/BCP(2nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[比較例3]
比較例1において、発光層に用いた発光材料Aに代えてIr(ppy)を用いた以外は、比較例1と同様に素子作製行い、比較例2の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を表1に示す。
以下に比較例3の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
[実施例2]
比較例2において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し25nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、BCPを真空蒸着法にて0.01nm/秒の速度で蒸着して0.05nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例2と同様に素子作製を行い、実施例2の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を下記表1に示す。
以下に実施例2の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(25nm)/BCP(0.05nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[実施例3]
比較例2において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し39nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、BCPを真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して1nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例2と同様に素子作製を行い、実施例3の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を下記表1に示す。
以下に実施例3の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(39nm)/BCP(1nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[実施例4]
比較例1において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し39nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、Alqを真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して1nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例1と同様に素子作製を行い、実施例4の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を下記表2に示す。
以下に実施例4の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(39nm)/Alq(1nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[比較例4]
比較例1において、発光層と電子輸送層Aとの間に下記化合物Aを真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して1nmの電子輸送層Cを設けた以外は、比較例1と同様に素子作製行い、比較例4の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を表2に示す。
以下に比較例4の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+発光材料C(100:5、30nm)/化合物A(1nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
[実施例5]
比較例4において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し39nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、BCPを真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して1nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例3と同様に素子作製を行い、実施例5の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を下記表2に示す。
以下に実施例5の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/化合物A(1nm)/BAlq(39nm)/BCP(1nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[比較例5]
比較例1において、正孔注入層(銅フタロシアニン(CuPC)、10nm)及び正孔輸送層(NPD、30nm)に代えて、2−TNATAとF4-TCNQとを真空蒸着法にて1000/3の割合で0.5nm/秒の速度で共蒸着した160nmの正孔注入層及びNPDとF4-TCNQとを真空蒸着法にて1000/3の割合で0.5nm/秒の速度で共蒸着した5nmの正孔輸送層を設け、後は比較例1と同様に素子作製行い、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を表2に示す。
以下に比較例5の発光素子の構成を示す。
ITO/2−TNATA+F4-TCNQ(1000:3、160nm)/NPD+F4-TCNQ(1000:3、5nm)/mCP+発光材料E(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[実施例6]
比較例1において、正孔注入層(銅フタロシアニン(CuPC)、10nm)及び正孔輸送層(NPD、30nm)に代えて、2−TNATAとF4-TCNQとを真空蒸着法にて1000/3の割合で0.5nm/秒の速度で共蒸着した160nmの正孔注入層及びNPDとF4-TCNQとを真空蒸着法にて1000/3の割合で0.5nm/秒の速度で共蒸着した5nmの正孔輸送層を設け、更に、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.1nm/秒の速度で蒸着し15nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、BCPを真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して1nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例1と同様に素子作製を行い、実施例6の発光素子を得て、比較例1と同様の評価試験を行った。結果を下記表2に示す。
以下に実施例6の発光素子の構成を示す。
ITO/2−TNATA+F4-TCNQ(1000:3、160nm)/NPD+F4-TCNQ(1000:3、5nm)/mCP+発光材料E(100:5、30nm)/BAlq(15nm)/BCP(1nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
Figure 2007227888
Figure 2007227888
表1及び表2に示されるように、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)とを有し、これらの層の膜厚比が本発明の範囲内である実施例の発光素子は、発光効率が高く、低電圧で駆動でき、駆動耐久性に優れた素子であることが分かる。
[比較例6]
比較例1において、電子輸送層Bを設けた後、さらに、この層上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、アルミニウムを真空蒸着法にて蒸着し100nmの陰極層を設けた以外は、比較例1と同様にして、比較例6の発光素子を得た。
以下に、比較例6の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/Al(100nm)
[評価]
−膜厚測定−
比較例1と同様にして、各層の膜厚を測定した。その結果を下記表3に示す。
−電子親和力の測定−
電子輸送層A又はETL1層の電子親和力(Ea)、電子輸送層B又はETL2層の電子親和力(Ea)は、比較例1と同様にして算出した。その結果を下記表3に示す。
また、上記により得られた発光素子を用いて、以下の方法で、駆動電圧、駆動耐久性、及び発光効率を測定した。
−駆動電圧−
発光素子を電流密度1mA/cmで一定になるよう加えた電圧値を駆動電圧とした。
−駆動耐久性試験−
発光素子の初期輝度が1500cd/mとなるように電流を設定し、その電流値が一定となる条件で連続駆動試験をおこない、輝度が20%減じるまでに要した時間を測定し、駆動耐久性とした。
−発光効率−
発光素子に電圧を印加して、この素子の光量−電流特性を測定し、発光効率(外部量子効率 %)を算出した。
[実施例7]
比較例6において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)に代えて、BAlqを真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着し15nmの電子輸送層(ETL1層)を設け、その上に、下記ピレン誘導体の化合物B(以下「化合物B」と記す)を真空蒸着法にて0.05nm/秒の速度で蒸着して2nmの有機薄膜層(ETL2層)を設けた以外は、比較例6と同様に素子作製を行い、実施例7の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表3に示す。
以下に実施例7の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(15nm)/化合物B(2nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
[実施例8]
実施例7におけるETL1層(BAlq、膜厚:15nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:2nm)を、ETL1層(Alq、膜厚:25nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:0.05nm)に変更した以外は、実施例7と同様に素子作製を行い、実施例8の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表3に示す。
以下に実施例8の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/化合物B(1n)/Alq(25nm)/化合物B(0.05nm)/Al(100nm)
[実施例9]
実施例7におけるETL1層(BAlq、膜厚:15nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:2nm)を、ETL1層(BAlq、膜厚:35nm)及びETL2層(イミダゾピリジン誘導体の化合物A、膜厚:0.5nm)に変更した以外は、実施例7と同様に素子作製を行い、実施例9の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表3に示す。
以下に実施例9の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(35nm)/化合物A(0.5nm)/Al(100nm)
[実施例10]
実施例7におけるETL1層(BAlq、膜厚:15nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:0.05nm)を、ETL1層(BAlq、膜厚:10nm)及びETL2層(カルバゾール誘導体の化合物C(以下「化合物C」と記す。)、膜厚:1nm)に変更した以外は、実施例7と同様に素子作製を行い、実施例10の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表3に示す。
以下に実施例10の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+発光材料A(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/化合物C(0.5nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
[実施例11]
実施例7におけるETL1層(BAlq、膜厚:15nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:0.05nm)を、ETL1層(BAlq、膜厚:39nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:1nm)に変更した以外は、実施例7と同様に素子作製を行い、実施例11の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表3に示す。
以下に実施例11の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(39nm)/化合物B(1nm)/Al(100nm)
[実施例12]
実施例7におけるETL1層(BAlq、膜厚:15nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:0.05nm)を、ETL1層(BAlq、膜厚:50nm)及びETL2層(化合物B、膜厚:1nm)に変更した以外は、実施例7と同様に素子作製を行い、実施例12の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表3に示す。
以下に実施例12の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+FIrpic(100:5、30nm)/BAlq(50nm)/化合物B(1nm)/Al(100nm)
[比較例7]
比較例6において、発光層(mCP+FIrpic、膜厚:30nm)に代えて、発光層中のホスト材料としてmCP、発光層中の発光材料としてIr(ppy)を真空蒸着法にて100/5の割合で共蒸着して、30nmの発光層を設けた。さらに、陰極層(Al、100nm)に代えて、リチウム−アルミニウム合金(アルミニウムにリチウムが0.6%含有)を真空蒸着法にて0.3nm/秒の速度で共蒸着した100nmの陰極層を設けた以外は、比較例6と同様に素子作製を行い、比較例7の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表4に示す。
以下に比較例7の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/Li−Al(100nm)
[実施例13]
比較例7において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)を、ETL1層(BAlq、膜厚:39nm)及びETL2層(下記金属錯体A、膜厚:1nm)に変更した。(LiFの項は削除)した以外は、比較例7と同様に素子作製を行い、実施例13の発光素子を得て、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表4に示す。
以下に実施例13の発光素子の構成を示す。
ITO/CuPC(10nm)/NPD(30nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(39nm)/金属錯体A(1nm)/Li−Al(100nm)
Figure 2007227888
[比較例8]
比較例6において、正孔注入層(銅フタロシアニン(CuPC)、10nm)及び正孔輸送層(NPD、30nm)に代えて、2−TNATAとF4−TCNQとを真空蒸着法にて1000/3の割合で0.5nm/秒の速度で共蒸着した100nmの正孔注入層及びNPDとF4−TCNQとを真空蒸着法にて1000/3の割合で0.5nm/秒の速度で共蒸着した10nmの正孔輸送層を設け、発光層(mCP+FIrpic、膜厚:30nm)に代えて、発光層中のホスト材料としてmCP、発光層中の発光材料としてIr(ppy)を真空蒸着法にて100/5の割合で共蒸着して、30nmの発光層を設け、更に、陰極層(Al、100nm)に代えて、フッ化リチウムを真空蒸着法にて1nm蒸着した層、及び、この上にアルミニウムを真空蒸着法にて100nm蒸着した層からなる陰極層を設けた以外は、比較例6と同様に素子作製を行い、比較例8の発光素子を得た。そして、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表4に示す。
以下に比較例8の発光素子の構成を示す。
ITO/2−TNATA+F4−TCNQ(1000:3、100nm)/NPD+F4−TCNQ(1000:3、10nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(10nm)/Alq(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
[実施例14]
比較例8において、電子輸送層A(BAlq、膜厚:10nm)及び電子輸送層B(Alq、膜厚:30nm)を、ETL1層(BAlq、膜厚:39nm)及びETL2層(金属錯体A、膜厚:1nm)に変更した以外は、比較例8と同様に素子作製を行い、実施例14の発光素子を得た。そして、比較例6と同様の評価試験を行った。結果を下記表4に示す。
以下に実施例14の発光素子の構成を示す。
ITO/2−TNATA+F4−TCNQ(1000:3、100nm)/NPD+F4−TCNQ(1000:3、10nm)/mCP+Ir(ppy)(100:5、30nm)/BAlq(39nm)/金属錯体A(1nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
Figure 2007227888
Figure 2007227888
表3及び表4に示されるように、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)とを有し、これらの層の膜厚比及びEa値の比が本発明の範囲内である実施例の発光素子は、発光効率が高く、低電圧で駆動でき、駆動耐久性に優れた素子であることが分かる。

Claims (8)

  1. 陽極及び陰極間に、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であることを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 前記電子輸送層(ETL1)の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、前記有機薄膜層(ETL2)の電子親和力の値(ETL2(Ea)とが、下記式(1)で表される関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
    式(1):ETL1(Ea)<ETL2(Ea)
  3. 陽極及び陰極間に、発光材料を含有する発光層と、電子輸送層(ETL1)と、有機薄膜層(ETL2)と、を陽極側からこの順に有し、前記有機薄膜層(ETL2)は電子輸送材料を含有し且つその膜厚が0.01〜3nmであり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)と前記有機薄膜層(ETL2)との膜厚比(ETL1/ETL2)が5〜500であり、且つ、前記電子輸送層(ETL1)の電子親和力の値(ETL1(Ea))と、前記有機薄膜層(ETL2)の電子親和力の値(ETL2(Ea)とが、下記式(2)で表される関係を満たし、前記有機薄膜層(ETL2)が陰極層に隣接していることを特徴とする有機電界発光素子。
    式(2):ETL1(Ea)>ETL2(Ea)
  4. 前記陰極層を構成する材料の仕事関数が、2.5〜4.5eVの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記有機薄膜層(ETL2)が、ピレン、カルバゾール、イミダゾピリジン及びそれらの誘導体、並びに金属錯体から選択される少なくとも1種を含む層であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の有機電界発光素子。
  6. 前記膜厚比(ETL1/ETL2)が7〜70であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  7. 前記膜厚比(ETL1/ETL2)が10〜50であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  8. 前記電子輸送層(ETL1)が金属錯体を含む層であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
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