JP2007223381A - インホイールモータ車用のブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】インホイールモータにおいてホイール内にブレーキオイルの圧力源を効率的に配置すること。
【解決手段】本発明は、車輪を回転駆動するモータ60をホイール内に備えるインホイールモータ車用のブレーキ装置において、モータの出力軸に接続され、モータの回転出力により作動する油圧ポンプ90と、前記油圧ポンプにより生成される油圧を用いて、モータ内に油を循環させる油循環機構(111,121等)と、油圧により車輪の制動力を生成する油圧ブレーキ機構(40,50等)と、前記油圧ポンプにより生成される油圧を用いて、前記油圧ブレーキ機構に導く油圧回路300と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、車輪を回転駆動するモータをホイール内に備えるインホイールモータ車用のブレーキ装置に関する。
従来から、ホイール外にブレーキオイルの圧力源が設けられるインホイールモータは知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、車輪毎に装備される制動エネルギー回生ユニットと、前記制動エネルギー回生ユニットで発生した制動エネルギーを蓄える蓄積装置と、前記制動エネルギー回生ユニットを制御する制御装置とを有する車両用制動装置において、前記制動エネルギー回生ユニットは、車輪軸に連結され、かつ車輪の回転力で駆動される油圧ポンプモータと、前記油圧ポンプモータの発生した油圧を蓄える前記蓄積装置としてのアキュムレータとを有し、アキュムレータに蓄積した制動エネルギーを車両発進時の駆動力として用いることを特徴とする車両用制動装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2005−81872号公報 特開平11−157422号公報
ところで、上記の特許文献1に記載されるように、インホイールモータにおいては、車輪内のスペースが車輪駆動用モータにより大きく占領されるので、ブレーキオイルの圧力源としては、ホイール外に配置されるポンプ系(モータ、ポンプ、アキュムレータ)を用いることが一般的である。
しかしながら、インホイールモータにおいても、ホイール内にブレーキオイルの圧力源を効率的に配置できれば、スペース効率やコスト等の観点から有用である。
そこで、本発明は、ホイール内にブレーキオイルの圧力源が効率的に配置されるインホイールモータ車用のブレーキ装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明は、車輪を回転駆動するモータをホイール内に備えるインホイールモータ車用のブレーキ装置において、
モータの出力軸に接続され、モータの回転出力により作動する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより生成される油圧を用いて、モータ内に油を循環させる油循環機構と、
油圧により車輪の制動力を生成する油圧ブレーキ機構と、
前記油圧ポンプにより生成される油圧を、前記油圧ブレーキ機構に導く油圧回路と、を備えることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明に係るブレーキ装置において、
モータの回転速度に基づいて、油圧ポンプで生成される油圧の大きさを推定する油圧推定手段を有することを特徴とする。これにより、油圧ポンプで生成される油圧の大きさを検出する油圧センサを無くすことができる。
第3の発明は、第1又は2の発明に係るブレーキ装置において、
モータの出力軸と油圧ポンプの入力軸の間に設けられる開閉制御可能なクラッチ手段と、
油圧ポンプの入力軸に設けられる回転慣性体とを備えることを特徴とする。これにより、モータの出力軸の回転数が低下した場合であっても、回転慣性体の回転を利用して油圧ポンプを駆動することができる。
第4の発明は、第1〜3のいずれかにの発明に係るブレーキ装置において、
ブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生するマスタシリンダと、
前記マスタシリンダにより生成される油圧を、開閉制御可能なバルブを介して前記油圧ブレーキ機構に導く第2油圧回路とを備えることを特徴とする。これにより、例えばモータの出力軸の回転数が低下した場合であっても、マスタシリンダ圧を用いて、必要な制動力を確保することができる。
第5の発明は、第1〜3のいずれかにの発明に係るブレーキ装置において、
電動ブレーキ装置を有し、
前記油圧ポンプにより生成される油圧が所定値以下となった場合、前記電動ブレーキ装置による制動力を車輪に作用させることを特徴とする。これにより、例えばモータの出力軸の回転数が低下した場合であっても、電動ブレーキ装置の発生する制動力を用いて、必要な制動力を確保することができる。
本発明によれば、ホイール内にブレーキオイルの圧力源が効率的に配置されるインホイールモータ車用のブレーキ装置が得られる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本発明によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の実施例1が適用された車輪の主要部を示す断面図である。尚、以下の説明では、1つの車輪について説明するが、他の車輪については、特に言及しない限り、同様の構成であってよい。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、用語「ホイール内」とは、ホイール10のリム内周面10aより囲繞される略円柱形の空間を意味する。但し、ある部品がホイール内に配置される等の表現は、必ずしも当該部品の全体がホイール内に配置されることを意味せず、部分的にホイール内からはみ出す構成を除外するものではない。
インホイールモータ車においては、図1に示すように、ホイール内に駆動用モータ60及びプラネタリギア80が配置される。
モータ60は、ステータコア61と、ステータコイル62と、ロータ63とを含む。ステータコア61は、ケース32に固定される。ステータコイル62は、ステータコア61に巻回される。モータ60が三相モータである場合、ステータコイル62は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルからなる。ロータ63は、ステータコア61およびステータコイル62の内周側に配置される。
プラネタリギア80は、プラネタリギア80はモータ60の回転の減速機構を構成し、サンギア軸81と、サンギア82と、ピニオンギア83と、プラネタリキャリア84と、リングギア85と、ピン86とを含む。
サンギア軸81は、モータ60のロータ63と連結される。サンギア軸81は、ベアリング73,74により回転自在に支持される。サンギア82は、サンギア軸81に連結される。ピニオンギア83は、サンギア82と噛合い、ピン86の外周に配設されたベアリング77により回転自在に支持される。プラネタリキャリア84は、ピニオンギア83に連結され、シャフト110にスプライン嵌合される。プラネタリキャリア84は、ベアリング76により回転自在に支持される。リングギア85は、ケース32に固定される。モータ60のロータ63が回転すると、ピニオンギア83が自転しながらサンギア82回りを公転する。この自転分により、モータ60のロータ63の回転が、プラネタリギア80を介してシャフト110に減速して伝達されることになる。
尚、本発明は、モータ60の構成や減速機構について特定するものではなく、如何なるモータ60の構成や減速機構に対しても適用可能である。例えばモータは、図示のようなインナーロータ式のモータである必要はなく、アウターロータ式のモータであってもよい。また、モータ60の回転出力は、例えばプラネタリーギアユニットからなる変速機構を介して出力されるものであってもよい。
シャフト110は、車軸を構成し、ホイールハブ20およびプラネタリキャリア84にスプライン嵌合され、モータ60の回転出力に伴って回転する。シャフト110には、内部にオイル通路111およびオイル孔112が形成される。シャフト110の端部(車両内側の端部)には、オイルポンプ90が配設される。オイルポンプ90の入力軸(回転軸)は、シャフト110に回転不能に接続される。尚、オイルポンプ90の入力軸は、シャフト110と一体であってもよい。
オイルポンプ90は、オイル溜130に溜まったオイルをオイル通路120を介して汲み上げ、その汲み上げたオイルをオイル通路111へ供給する。オイル通路111のオイルは、シャフト110回転時の遠心力により、オイル孔112を介してプラネタリギア80へと供給される。例えば、図示の例では、オイル通路121が、プラネタリギア80のピン86の内部に設けられる。これにより、プラネタリギア80の冷却及び潤滑が実現される。尚、このようにしてプラネタリギア80へと供給されたオイルは、オイル溜130に戻される。このようにして、本実施例では、モータ60の回転出力を利用してモータ60内に油を循環させる油循環機構が構成される。
尚、本発明は、特に油循環機構の詳細について特定するものではなく、モータ60の回転出力を利用してモータ60内に油を循環させる機構であれば、オイルポンプの構成や循環路の構成は如何なるものであってもよい。例えば、図示の例では、オイルポンプ90は、ギアポンプで構成されているが、外接歯車ポンプ、内接歯車ポンプ(クレセントの有無を問わず)等如何なる種類のギアポンプであってもよく、また、ベーンポンプ等の他のタイプのポンプであってもよい。
ケース32には、ボールジョイント140,150が固定される。アッパーアーム170は、一方端がボールジョイント140に連結され、他方端が車体200に固定される。ロアアーム180は、一方端がボールジョイント150に連結され、他方端が車体に固定される。そして、アッパーアーム170およびロアアーム180は、他方端が矢印6の方向に自在に回転できるように車体に固定される。また、バネ190が車体とロアアーム180との間に設けられる。これにより、車輪は車体に懸架される。尚、本発明は、特に油懸架機構について特定するものではなく、図示のようなマルチリンク式のサスペンションに限らず、ストラット式サスペンション等の他の形式のサスペンションが採用されてもよい。
インホイールモータ車においては、図1に示すように、ホイール内に油圧ブレーキ機構が配設される。図示の例の油圧ブレーキ機構は、ディスクブレーキ装置からなり、ブレーキロータ40とブレーキキャリパ50とを含む。尚、本発明は、ホイール内のスペースに依存するが、油圧ブレーキ機構であれば、ドラム式ブレーキ等のような他の種類の油圧ブレーキ機構にも適用可能である。
ブレーキロータ40は、内周端がネジ3,4によってホイールハブ20の外周端に固定され、外周端がブレーキキャリパ50内を通過するように配置される。ブレーキキャリパ50は、ケース32に固定される。ブレーキキャリパ50は、ブレーキピストン51と、ホイルシリンダ55と、ブレーキパッド52,53とを含む。ブレーキパッド52,53は、ブレーキロータ40の外周端を挟み込む。
ブレーキオイルがホイルシリンダ55に供給されると、ブレーキピストン51は、紙面右側へ移動し、ブレーキパッド52を紙面右側へ押す。ブレーキパッド52がブレーキピストン51によって紙面右側へ移動すると、それに応答してブレーキパッド53が紙面左側へ移動する。これにより、ブレーキパッド52,53は、ブレーキロータ40の外周端を挟み込み、車輪にブレーキがかけられる。
本実施例による油圧ブレーキ機構は、オイルポンプ90を油圧発生源として動作するように構成されている。具体的には、ホイルシリンダ55とオイルポンプ90の吐出口との間には、オイル通路300が設定される。オイル通路300は、図示のようにブレーキホース等を介してホイルシリンダ55に連通されてよい。これにより、プラネタリギア80の冷却及び潤滑のための油循環機構で用いるオイルを利用して、車輪の制動力を発生させることが可能となる。また、制動力の発生に必要な油圧は、油循環機構用のオイルポンプ90を利用して生成されるので、新たなポンプを設定することなく、車輪の制動力を発生させることが可能となる。即ち、オイルポンプ90を油循環機構と油圧ブレーキ機構とで共用することで、限られたホイール内のスペースを効率的に用いて、ホイール内に油圧ブレーキ機構の油圧発生源を設定することができる。尚、この目的のため、オイルポンプ90は、油圧ブレーキ機構で必要とされる制動能力を考慮して、容量や出力等のオイル性能が設計される。
また、本実施例では、ホイール内に油圧ブレーキ機構と共にその油圧発生源(オイルポンプ90)が配置されているので、ホイール外に(典型的には、ブレーキブースタの前側に)ポンプを油圧発生源として設けられる構成に比べて、油圧発生源からホイルシリンダ55までのオイル通路を短くできるので、配管振動が低減され、ブレーキの応答性も良くなる。
オイル通路300には、後述する冷却カット弁400、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420(図2参照)が設けられる。尚、図示の例では、冷却カット弁400(図1のビューでは見えない)、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420を含むユニットは、オイルポンプ90の径方向外側に隣接して配置されているが、オイルポンプ90の車両内側に隣接して配置されてもよく、また、オイルポンプ90を含む一体のユニットで構成されてもよい。
オイル通路300には、また、逆止弁310が設けられてよい。逆止弁310は、オイルポンプ90からホイルシリンダ55に向かうオイルの流れのみを許容する一方向弁である。
図2は、本実施例のインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。図2に示すように、オイルポンプ90の吐出口は、冷却カット弁400を介してオイル通路111に接続される。冷却カット弁400は、常態が開であるノーマルオープンバルブである。冷却カット弁400が開状態のとき、上述の如く、オイルポンプ90の吐出口から供給されるオイルは、モータ60の冷却ないしプラネタリギア80の潤滑のために用いられる。
オイルポンプ90の吐出口は、オイル通路300により増圧リニア弁410を介して車輪のブレーキキャリパ50のホイルシリンダ55に接続される。増圧リニア弁410は、常態が閉であるノーマルクローズドバルブである。増圧リニア弁410は、後述する制御装置500から駆動信号を供給されると、その駆動信号の大きさに応じて開度を増加させるリニア制御弁である。従って、増圧リニア弁410に供給する駆動電流に基づいて、ホイルシリンダ55へ流入するブレーキフルードの量をリニアに制御することができる。これにより、ホイルシリンダ55の油圧は、増圧リニア弁410の開度の増加量に比例して増加される。
増圧リニア弁410とホイルシリンダ55との間には、減圧リニア弁420が接続される。減圧リニア弁420は、ホイルシリンダ55とオイル溜(リザーバータンク)130とを接続する。減圧リニア弁420は、常態が閉であるノーマルクローズドバルブである。減圧リニア弁420は、主にホイルシリンダ55の油圧を減少させるために開弁される。
ホイルシリンダ55の前段には、油圧センサ430が設けられる。油圧センサ430は、ホイルシリンダ55内の油圧(ホイルシリンダ圧)を検出するために設けられる。また、オイルポンプ90と増圧リニア弁410との間には、油圧センサ432が設けられる。油圧センサ432は、オイルポンプ90により生成される油圧(ポンプ圧)を検出するために設けられる。
図3は、本実施例のインホイールモータ車用のブレーキ装置に対する制御装置500の機能ブロック図である。制御装置500は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
制御装置500には、CAN(Controller Area Network)や高速通信バス等の適切なバスを介して、モータ60の回転駆動を制御するECU等の各種制御装置や、油圧センサ430,432や、ブレーキ操作量検出手段600、車輪速センサ610等の各種センサが接続される。また、制御装置500には、制御対象部品である冷却カット弁400、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420が電気的に接続される。
ブレーキ操作量検出手段600は、ブレーキペダルの操作量(操作ストローク)に応じた信号を出力するストロークセンサや、ブレーキ踏力に応じた信号を出力する踏力センサであってよい。或いは、マスタシリンダを有する構成の場合には、ブレーキ操作量検出手段600は、マスタシリンダ圧に応じた信号を出力するマスタ圧センサであってよい。複数のセンサ(例えばストロークセンサ及びマスタ圧センサ等)を有する場合、ブレーキ操作量検出手段600は、これらの信号から多数決の原理でブレーキ操作量を決定してもよい。これにより、ストロークセンサ及びマスタ圧センサ等の一部に異常が生じた場合にも、ブレーキ操作量を適正に検出することができる。
制御装置500は、図3に示すように、ブレーキ操作判定部510及びブレーキ操作時制御部530を備える。
ブレーキ操作判定部510は、ブレーキ操作量検出手段600の検出結果に基づいて、ブレーキペダルの操作の有無を検出する。尚、マスタシリンダを有する構成の場合は、ブレーキ操作判定部510は、マスタシリンダ圧を検出するマスタ圧センサなどに基づいて、ブレーキペダルの操作を検出してもよい。
ブレーキ操作時制御部530は、ブレーキ操作判定部510の判定結果、ブレーキペダルが操作されたと判定された場合に、動作する。ブレーキペダルが操作されたと判定されると、通常走行時制御部520は冷却カット弁400を閉弁する。冷却カット弁400が閉弁されると、オイルポンプ90の吐出口から吐出されるオイルは、オイル通路300により車輪のブレーキキャリパ50のホイルシリンダ55に供給可能な状態となる。
以後、ブレーキ操作時制御部530は、ブレーキペダルの操作が終了するまで、通常のブレーキ制御と同様の態様で、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の開閉状態を制御して、ブレーキペダルの操作量に応じた制動力を発生させる。即ち、ブレーキ操作時制御部530は、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の開度を調整することで、ホイルシリンダ圧を任意の液圧に制御する。
このように、本実施例によれば、オイルポンプ90の発生する油圧を利用して、ブレーキ操作量に応じたホイルシリンダ圧を発生することで、通常ブレーキ制御を実現することができる。また、通常ブレーキ制御中に車輪のロック傾向が生じた場合に、車輪のスリップ率が所定値を越えないように各輪のホイルシリンダ圧を増減させることで、アンチロックブレーキシステム(ABS)の機能を実現することができる。更に、自動ブレーキ制御の要求に応じて各輪のホイルシリンダ圧を適宜制御することで、トラクションコントロール(TRC)の機能、車両姿勢制御(VSC)、その他のブレーキ制御を実現することができる。
また、本実施例では、上述の如く、油循環機構で用いられるオイルポンプ90を油圧ブレーキ機構の油圧発生源として利用することで、油圧発生源として通常的に用いられるブレーキアクチュエータのポンプ系(ポンプ、モータ、アキュムレータ)を廃止することが可能となる。但し、本発明は、この種のポンプ系を設定する構成を完全に除外するものではなく、例えばオイルポンプ90から吐出された高圧のブレーキオイルを蓄えるアキュムレータが、オイルポンプ90と増圧リニア弁410の間に設けられてもよい。また、本実施例では、上述の如く、油循環機構で用いられるオイルポンプ90を油圧ブレーキ機構の油圧発生源として利用することで、マスタシリンダと特定車輪のホイルシリンダ55とを接続する油圧回路を無くし又はマスタシリンダ自体を無くし、油圧ブレーキ機構の構成全体を簡素化することができる。
図4は、実施例2によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。実施例2は、上述の実施例1に対して、マスタシリンダ700からの油圧回路が付加されたものである。以下、尚、上述の実施例1と同一の構成については、同一の参照符号を付して、冗長となる説明を省略する。
マスタシリンダ700には、ブレーキペダル720が連結されている。マスタシリンダ700はその内部に液圧室705を備えている。液圧室705には、ブレーキ踏力に応じたマスタシリンダ圧が発生する。マスタシリンダ700は、通常の車両(インホイールモータ車で無い車両)と同様、ブレーキペダル720に隣接して配置されてよい。
液圧室705にはマスタ通路715が接続される。マスタ通路715は、マスタカット弁710を介して、ホイルシリンダ55に接続されている。この際、マスタ通路715は、オイル通路300におけるオイルポンプ90と増圧リニア弁410との間の位置に接続される。マスタカット弁710は、常態が開であるノーマルオープンバルブである。
尚、マスタカット弁710は、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420と同様、ホイール内に配設されてよいし、通常の車両と同様、エンジンルーム等に配置されてもよい。マスタカット弁710は、例えば車両の全輪(典型的には、4輪)のうちの所定の1輪に対してのみ設定されてもよく、或いは、所定の2輪又は3以上の輪に対してそれぞれ別個独立に設定されてもよい。所定の2輪に対してそれぞれ設定される場合、マスタシリンダの液圧室が2つ設定され、それぞれの液圧室が、同様のマスタカット弁を介して、対応する車輪のホイルシリンダに連通されればよい。
マスタ通路715には、また、シミュレータカット弁740を介してストロークシミュレータ730が接続されてよい。シミュレータカット弁740は、常態でマスタ通路715とストロークシミュレータ730とを遮断状態とし、制御装置500からオン信号を供給されることにより、これらを導通状態とする常閉の電磁開閉弁である。ストロークシミュレータ730は、シミュレータカット弁740が開弁された状況下で、マスタシリンダ700の液圧室705に発生するマスタシリンダ圧に応じた量のブレーキオイルをその内部に流入させるように構成されている。
シミュレータカット弁740は、マスタカット弁710が閉弁状態にある場合に、開弁状態とされる。これにより、マスタシリンダ圧に応じた量のブレーキオイルが液圧室705からストロークシミュレータ730に流入される。従って、マスタカット弁710が閉弁された状態で、ブレーキ踏力に応じたペダルストロークが発生される。
マスタカット弁710が開弁状態にある場合、オイルポンプ90の生成するポンプ油圧と、マスタシリンダ700で生成されるマスタシリンダ圧とをホイルシリンダ55に供給可能な状態となる。この状態では、オイルポンプ90の生成するポンプ油圧と、マスタシリンダ700で生成されるマスタシリンダ圧とを用いて、ホイルシリンダ圧を制御することが可能である。
図5(A)は、オイルポンプ90の生成するポンプ油圧と車速(V)との関係を示す図である。図5(A)に示すように、ポンプ油圧(又はポンプ吐出量)は、車速(V)と略比例した関係を有する。即ち、ポンプ油圧は、モータ60の回転速度(又はモータ60の回転数)に依存する。これは、オイルポンプ90は、上述の如くモータ60の回転出力により動作されるためである。このため、モータ60の回転出力が低くなる低車速領域では、モータ60の回転出力の低下に伴って、生成可能なポンプ油圧(又は吸入可能な油量)が不足し、ポンプ油圧だけでは必要な制動力を得られない虞がある。
これに対して、本実施例では、オイルポンプ90の生成するポンプ油圧に加えて、マスタシリンダ700で生成されるマスタシリンダ圧を用いて、ホイルシリンダ圧を制御するので、モータ60の回転出力の低下に伴ってポンプ油圧が低下した場合にも、マスタシリンダ圧を用いて、所望の制動力を発生することができる。例えば、図5(B)に示すように、車速が所定値Vmin未満である低車速領域において、ポンプ油圧の不足分をマスタシリンダ圧で補うことで、車両停止に必要な制動力を得ることができる。
図6は、本実施例による制御装置500の機能ブロック図である。制御装置500は、図6に示すように、ブレーキ操作判定部510及びブレーキ操作時制御部530を備える。ブレーキ操作時制御部530には、油圧センサ430,432に加えて車輪速センサ610が接続される。また、ブレーキ操作時制御部530には、冷却カット弁400、増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420に加えて、マスタカット弁710が制御対象として接続される。
図7は、本実施例によるブレーキ操作時制御部530の機能ブロック図である。ブレーキ操作時制御部530は、図7に示すように、補助油圧要否判定部532と、通常ブレーキ制御部534と、補助ブレーキ制御部536と、弁制御部538を備える。これら各部の処理について、図8を参照して説明する。
図8は、停車に至るまでのブレーキ操作過程で、本実施例による制御装置500により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。
ステップ100では、ブレーキ操作判定部510によりブレーキ操作が開始されたか否かが判定される。ブレーキ操作判定部510によりブレーキ操作が開始されたと判定されると、ステップ110に進む。
ステップ110では、弁制御部538により冷却カット弁400が閉弁される。冷却カット弁400が閉弁されると、オイルポンプ90の生成するポンプ油圧をオイル通路300によりホイルシリンダ55に供給可能な状態となる。
ステップ120では、補助油圧要否判定部532により、車輪速センサ610の出力信号に基づいて、車速が所定値Vmin以上であるか否かが判定される。車速が所定値Vmin以上である場合には、ステップ130に進み、車速が所定値Vmin未満の場合には、ステップ140に進む。
ステップ130では、通常ブレーキ制御部534によりポンプ油圧を用いた通常ブレーキ制御が実行される。具体的には、通常ブレーキ制御部534は、弁制御部538を介して増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の開閉状態を制御して、ブレーキペダルの操作量に応じた制動力を発生させる。例えば、通常ブレーキ制御部534は、ブレーキペダルの操作量に応じた目標制動力を演算し、当該目標制動力に応じた増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の目標開度を決定し、当該目標開度が実現されるように弁制御部538に指示を出力する。この通常ブレーキ制御部534による通常ブレーキ制御は、当該通常ブレーキ制御により車速が所定値Vmin未満になるまで継続される。
ステップ140では、弁制御部538によりマスタカット弁710が開弁される。マスタカット弁710が開弁されると、マスタシリンダ圧を増圧リニア弁410を介してホイルシリンダ55に供給可能な状態となる。
ステップ150では、補助ブレーキ制御部536によりポンプ油圧及びマスタシリンダ圧を用いた補助ブレーキ制御が実行される。具体的には、補助ブレーキ制御部536は、弁制御部538を介して増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の開閉状態を制御して、ブレーキペダルの操作量に応じた制動力を発生させる。例えば、補助ブレーキ制御部536は、停車に必要な制動力を演算し、当該制動力に応じた増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の目標開度を決定し、当該目標開度が実現されるように弁制御部538に指示を出力する。この際、マスタシリンダ圧は、図5(B)に示したように、車速が小さくなるにつれて大きくなる態様で、ホイルシリンダ55に導入されてよい。この補助ブレーキ制御部536による補助ブレーキ制御は、当該補助ブレーキ制御により車速がゼロになるまで継続される(即ち、ステップ160にて停車が判定されるまで継続される)。
このように本実施例によれば、ポンプ油圧が不足する低車速領域において、マスタシリンダ圧がホイルシリンダ55に導入されるので、ポンプ油圧の不足分をマスタシリンダ圧で補って車両停止に必要な制動力を確保することができる。
また、本実施例によれば、車速に基づいてポンプ油圧の不足状態を推定し、通常ブレーキ制御と補助ブレーキ制御とを切り換えるので、油圧センサ432を無くすことも可能である。同様に、モータ60又はオイルポンプ90の回転数(又は回転速度、以下同じ)が所定値を下回った場合に、通常ブレーキ制御から補助ブレーキ制御への切り換えを実現してもよい。この場合も、油圧センサ432を無くすことも可能である。但し、これらの場合であっても、油圧センサ432を廃止せずに設けておき、油圧センサ432の出力信号を他の用途(例えば異常検出)に用いることは可能である。
実施例3は、ポンプ油圧の不足分を、マスタシリンダ圧ではなく電動パーキングブレーキ(EPB)による制動力により補填する点が、上述の実施例2と異なる。以下、実施例3特有の構成を説明するが、その他の構成については上述の実施例2と同様であってよい。
図9は、本実施例のインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。電動パーキングブレーキ800は、PKBアクチュエータ810(例えば電動モータ)を備える。PKBアクチュエータ810は、制御装置500の制御下で、ケーブルを巻き上げまたは巻き戻し駆動して、車輪に設けたパーキングブレーキ機構(図示せず)を作動させる。PKBアクチュエータ810によりケーブルが巻き上げまたは巻き戻しされると、パーキングブレーキ機構は、ケーブルを介して伝達される張力により、車輪に対する制動力の付与又は解除を実現する。尚、パーキングブレーキ機構は、ケーブル式である必要はなく、他の形式(例えばボールネジを用いた車輪内蔵型のパーキングブレーキ機構)であってもよい。
図10は、本実施例による制御装置500におけるブレーキ操作時制御部530の機能ブロック図である。ブレーキ操作時制御部530は、図10に示すように、補助油圧要否判定部532と、通常ブレーキ制御部534と、補助ブレーキ制御部536と、弁制御部538を備える。補助ブレーキ制御部536には、電動パーキングブレーキ800が接続される。
図11は、停車に至るまでのブレーキ操作過程で、本実施例による制御装置500により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。ステップ200から230の処理は、図8を参照して説明したステップ100から130までの処理と同様であってよいので、説明を省略する。
車速が所定値Vmin未満の場合には、ステップ240に進む。ステップ240では、補助ブレーキ制御部536からの指示に応じて電動パーキングブレーキ800が作動される。例えば、補助ブレーキ制御部536は、停車に必要な制動力を演算し、当該制動力が生成されるように電動パーキングブレーキ800に指示を出力する。この際、電動パーキングブレーキ800の発生する制動力は、上述の実施例2におけるマスタシリンダ圧と同様、図5(B)に示したように、車速が小さくなるにつれて大きくなる態様で変化されてもよく、或いは、固定であってもよい。
この補助ブレーキ制御部536による補助ブレーキ制御は、当該補助ブレーキ制御により車速がゼロになるまで継続される(即ち、ステップ250にて停車が判定されるまで継続される)。
このように本実施例によれば、ポンプ油圧が不足する低車速領域において、電動パーキングブレーキ800が作動されるので、ポンプ油圧の不足分を、電動パーキングブレーキ800の発生する制動力で補い、車両停止に必要な制動力を確保することができる。
また、本実施例によれば、車速に基づいてポンプ油圧の不足状態を推定し、通常ブレーキ制御と補助ブレーキ制御とを切り換えるので、油圧センサ432を無くすことも可能である。同様に、モータ60又はオイルポンプ90の回転数が所定値を下回った場合に、通常ブレーキ制御から補助ブレーキ制御への切り換えを実現してもよい。この場合も、油圧センサ432を無くすことも可能である。
図12は、実施例4によるインホイールモータ車用のブレーキ装置を備える車輪の主要部を概略的に示す断面図である。本実施例によるブレーキ装置は、主に、クラッチ900とフライホイール910とを備える点で、図1に示した構成(実施例1による構成)と異なる。以下、実施例4特有の構成を説明するが、その他の構成については上述の実施例1と同様であってよい。
クラッチ900は、モータ60の出力軸とオイルポンプ90の入力軸との間に設けられ、モータ60とオイルポンプ90の間の接続状態を係合又は解放に切り替える機能を有する。図12に示す例では、プラネタリキャリア84にスプライン接続されるシャフト110(モータ60の出力軸)の車両内側端部は、プラネタリキャリア84を超えて更に車両内側に延長される。シャフト110の延長部には、クラッチ900を介して、オイルポンプ90の入力軸が接続される。オイルポンプ90の入力軸は、シャフト110と同軸上に延在し、回転慣性体を構成するフライホイール910が設けられる。尚、クラッチ900は、モータ60の一方向の回転(例えば車両前進方向の回転)のみを伝達する例えばワンウェイクラッチであってよいし、正逆方向の回転を伝達可能なクラッチであってもよい。クラッチ900の状態(係合又は解放)の切り換えは、クラッチ制御用のアクチュエータにより実現されてよい。
モータ60とオイルポンプ90の間のクラッチ900が係合されると、上述の如く、モータ60の回転出力によりオイルポンプ90が作動される。
一方、モータ60とオイルポンプ90の間のクラッチ900が解放されると、オイルポンプ90の入力軸に対するモータ60の回転出力の伝達が遮断される。この場合、モータ60の回転数がゼロでないときにクラッチ900が解放されると、その際のフライホイール910の回転慣性によりオイルポンプ90の入力軸は回転し続ける。
ところで、モータ60とオイルポンプ90の間のクラッチ900が係合された状態では、上述の如く、モータ60の回転出力が低くなる低車速領域においては、モータ60の回転出力の低下に伴って、生成可能なポンプ油圧(又は吸入可能な油量)が不足し、ポンプ油圧だけでは必要な制動力を得られない虞がある。
そこで、本実施例では、モータ60の回転出力が低くなる低車速領域に至る前に、モータ60とオイルポンプ90の間のクラッチ900が解放される。これにより、低車速領域においても、フライホイール910の回転慣性によりオイルポンプ90の入力軸は回転し続けるので、低車速領域におけるポンプ油圧の低下が防止される。
図13は、本実施例による制御装置500におけるブレーキ操作時制御部530の機能ブロック図である。ブレーキ操作時制御部530は、図13に示すように、補助油圧要否判定部532と、通常ブレーキ制御部534と、補助ブレーキ制御部536と、弁制御部538を備える。補助ブレーキ制御部536は、クラッチ900に関連した油圧制御を行う。
図14は、停車に至るまでのブレーキ操作過程で、本実施例による制御装置500により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。ステップ300及び310の処理は、図8を参照して説明したステップ100及び110までの処理と同様であってよいので、説明を省略する。
ステップ320では、補助油圧要否判定部532により、車輪速センサ610の出力信号に基づいて、車速が所定値V0以上であるか否かが判定される。車速が所定値V0以上である場合には、ステップ330に進み、車速が所定値V0未満の場合には、ステップ340に進む。所定値V0は、当該所定値V0の車速をゼロにするのに必要は制動エネルギー等を考慮して決定され、上述の所定値Vminよりも大きい値であってよい。これは、フライホイール910の回転慣性によっても、オイルポンプ90の入力軸の回転数は徐々に減少していくからである。
ステップ330では、通常ブレーキ制御部534によりポンプ油圧を用いた通常ブレーキ制御が実行される。通常ブレーキ制御部534による通常ブレーキ制御は、当該通常ブレーキ制御により車速が所定値V0未満になるまで継続される。
ステップ340では、補助ブレーキ制御部536によりクラッチ900が解放される。クラッチ900が解放されると、オイルポンプ90の入力軸は、モータ60のシャフト110から切り離され、制動力によるシャフト110の回転数減少の影響を受けることなく、フライホイール910の回転慣性により回転し続ける。即ち、オイルポンプ90の回転数は、以後の制動により減少していくシャフト110の回転数から独立し、それ故にシャフト110の回転数よりも大きくなる。
ステップ350では、補助ブレーキ制御部536によりポンプ油圧を用いた補助ブレーキ制御が実行される。具体的には、補助ブレーキ制御部536は、弁制御部538を介して増圧リニア弁410及び減圧リニア弁420の開閉状態を制御して、ブレーキペダルの操作量に応じた制動力を発生させる。これにより、車速が約V0であるときのフライホイール910の回転エネルギーが、ポンプ油圧の発生源(制動力の発生源)として利用される。この補助ブレーキ制御部536による補助ブレーキ制御は、当該補助ブレーキ制御により車速がゼロになるまで継続される(即ち、ステップ360にて停車が判定されるまで継続される)。
このように本実施例によれば、ポンプ油圧が不足しうる低車速領域において、フライホイール910の回転慣性を利用することで、ポンプ油圧の不足を防止して車両停止に必要な制動力を確保することができる。
また、本実施例によれば、車速に基づいてポンプ油圧の不足状態を推定し、通常ブレーキ制御と補助ブレーキ制御とを切り換えるので、油圧センサ432を無くすことも可能である。同様に、モータ60又はオイルポンプ90の回転数が所定値を下回った場合に、通常ブレーキ制御から補助ブレーキ制御への切り換えを実現してもよい。この場合も、油圧センサ432を無くすことも可能である。
尚、本実施例において、上述の如く解放されたクラッチ900は、その後の発進時や再加速時等、モータ60のシャフト110の回転数が上昇し、オイルポンプ90の回転数に追いついた際に、係合状態に切り替えられる。これにより、効率が良くショックの少ない滑らかなクラッチ900の係合が実現される。
図15は、実施例5によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。本実施例によるブレーキ装置は、主に、増圧リニア弁410や油圧センサ432,430が省略されている点で、図1に示した構成(実施例1による構成)と異なる。以下、実施例4特有の構成を説明するが、その他の構成については上述の実施例1と同様であってよい。
減圧リニア弁420は、ホイルシリンダ55とオイル溜130とを接続する。減圧リニア弁420は、制御装置500から駆動信号を供給されると、その駆動信号の大きさに応じて開度を増加させるリニア制御弁である。従って、減圧リニア弁420に供給する駆動電流に基づいて、ホイルシリンダ圧をリニアに制御することができる。制御装置500には、モータ60(又はオイルポンプ90)の回転数(回転数センサの出力)が入力される。制御装置500は、モータ60の回転数に基づいて、減圧リニア弁420に供給する駆動電流を決定する。
図16は、実施例5による制御装置500により実現される駆動電流値決定処理の流れを示すフローチャートである。
ステップ400では、回転数センサの出力に基づいて、モータ60の回転数が計測される。
ステップ410では、計測されたモータ60の回転数に基づいて、当該回転数に対応した減圧リニア弁420の流量が推定(演算)される。
ステップ420では、制動力の目標値(目標制動力)が取り込まれる。目標制動力は、他の制御装置(例えばブレーキECU)にて演算され、制御装置500に取り込まれる。但し、上述の実施例と同様、制御装置500自身が、ブレーキ操作量検出手段600から得られるブレーキ操作量に応じて、演算してもよい。
ステップ430では、取り込んだ目標制動力に基づいて、油圧の目標値が演算される。
ステップ440では、演算された油圧の目標値と、推定された減圧リニア弁420の流量とに基づいて、減圧リニア弁420の目標バルブ開度が演算される。即ち、推定された減圧リニア弁420の流量で供給されるオイルにより油圧目標値が実現されるようなバルブ開度が、目標バルブ開度として演算される。
ステップ450では、目標バルブ開度に対応した駆動電流(ソレノイド電流値)が決定される。このようにして決定された駆動電流は、減圧リニア弁420に供給される。制御装置500から駆動信号を供給されると、その駆動信号の大きさに応じて開度が減圧リニア弁420において実現される。
このように本実施例によれば、1車輪に対してリニア制御弁を1つだけ用いる簡易な構成で、ポンプ油圧に基づく最適な制動力を発生させることができる。また、モータ60の回転数に基づいて減圧リニア弁420の流量を推定し、当該推定結果に基づいて減圧リニア弁420の開度を制御するので、油圧センサ432,430を省略した簡易な構成で、ポンプ油圧に基づく最適な制動力を発生させることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例2及び実施例3は、組み合わせて実現することも可能である。この場合、マスタシリンダ圧による補助制動力と電動パーキングブレーキ800による補助制動力を選択的に用いてもよいし、協調させて用いてもよい。
また、上述した実施例2では、ポンプ油圧を主としマスタシリンダ圧を従としてホイルシリンダ55を制御し、低車速域で生ずるポンプ油圧の不足分をマスタシリンダ圧で補うような制御態様を実現しているが、他の制御態様で、ポンプ油圧とマスタシリンダ圧とを適切に分配してホイルシリンダ55に導入してもよい。
また、上述した実施例2では、油圧センサ432の省略を可能とすべく、車速に基づいてポンプ油圧の不足状態を推定しているが、油圧センサ432の出力信号に基づいて、ポンプ油圧が所定値を下回った場合に、通常ブレーキ制御から補助ブレーキ制御への切り換えを実現してもよい。
本発明によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の実施例1が適用された車輪の主要部を示す断面図である。 実施例1によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。 実施例1によるインホイールモータ車用のブレーキ装置に対する制御装置500の機能ブロック図である。 実施例2によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。 図5(A)は、ポンプ油圧と車速との相関関係を示す図であり、図5(B)は、低車速域で生ずるポンプ油圧の不足分をマスタシリンダ圧で補う制御態様の一例を示す図である。 実施例2によるインホイールモータ車用のブレーキ装置に対する制御装置500の機能ブロック図である。 実施例2によるブレーキ操作時制御部530の機能ブロック図である。 停車に至るブレーキ操作過程で、実施例2による制御装置500により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3のインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。 実施例3によるブレーキ操作時制御部530の機能ブロック図である。 停車に至るブレーキ操作過程で、実施例3による制御装置500により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。 実施例4によるインホイールモータ車用のブレーキ装置を備える車輪の主要部を概略的に示す断面図である。 実施例4による制御装置500におけるブレーキ操作時制御部530の機能ブロック図である。 停車に至るブレーキ操作過程で、実施例4による制御装置500により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。 実施例5によるインホイールモータ車用のブレーキ装置の主要回路を示す図である。 実施例5による制御装置500により実現される駆動電流値決定処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
40 ブレーキロータ
50 ブレーキキャリパ
55 ホイルシリンダ
52,53 ブレーキパッド
60 モータ
61 ステータコア
62 ステータコイル
63 ロータ
80 プラネタリギア
81 サンギア軸
82 サンギア
83 ピニオンギア
84 プラネタリキャリア
85 リングギア
86 ピン
90 オイルポンプ
110 シャフト
111,120,121 オイル通路
112 オイル孔
130 オイル溜
140,150 ボールジョイント
170 アッパーアーム
180 ロアアーム
190 バネ
300 オイル通路
400 冷却カット弁
410 増圧リニア弁
420 減圧リニア弁
500 制御装置
510 ブレーキ操作判定部
530 ブレーキ操作時制御部
600 ブレーキ操作量検出手段
610 車輪速センサ

Claims (5)

  1. 車輪を回転駆動するモータをホイール内に備えるインホイールモータ車用のブレーキ装置において、
    モータの出力軸に接続され、モータの回転出力により作動する油圧ポンプと、
    前記油圧ポンプにより生成される油圧を用いて、モータ内に油を循環させる油循環機構と、
    油圧により車輪の制動力を生成する油圧ブレーキ機構と、
    前記油圧ポンプにより生成される油圧を、前記油圧ブレーキ機構に導く油圧回路と、を備えることを特徴とするブレーキ装置。
  2. モータの回転速度に基づいて、油圧ポンプで生成される油圧の大きさを推定する油圧推定手段を有する、請求項1に記載のブレーキ装置。
  3. モータの出力軸と油圧ポンプの入力軸の間に設けられる開閉制御可能なクラッチ手段と、
    油圧ポンプの入力軸に設けられる回転慣性体とを備える、請求項1又は2に記載のブレーキ装置。
  4. ブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生するマスタシリンダと、
    前記マスタシリンダにより生成される油圧を、開閉制御可能なバルブを介して前記油圧ブレーキ機構に導く第2油圧回路とを備える、請求項1〜3のいずれかに記載のブレーキ装置。
  5. 電動ブレーキ装置を有し、
    前記油圧ポンプにより生成される油圧が所定値以下となった場合、前記電動ブレーキ装置による制動力を車輪に作用させる、請求項1〜3のいずれかに記載のブレーキ装置。
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