JP2007222670A - ターボ式血液ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】インペラを安定して回動自在に支持し、しかも、実用上の高回転域で使用しても、溶血の少ないターボ式血液ポンプを提供する。
【解決手段】ハウジング1内に回転自在に支持され従動磁石12を有するインペラ5と、ハウジングの底部下方に配置され駆動磁石16を有するロータ13とを備え、ハウジングの底部壁を挟んだ磁気結合を介してインペラが駆動される。インペラは、回転軸7が上部軸受け9と下部軸受け10により支持され、複数のベーン6と、ベーンを回転軸に結合する支持柄40と、各ベーンの外周側に連結された環状連結部8を有する。環状連結部がインペラの下部に形成する円筒形空間に対応させて、ハウジングの底部壁内側の中央部に台座が形成され、下部軸受けは台座の上面部に設けられ、環状連結部、ベーンおよび支持柄と、台座の表面との間に形成された空隙が、複数のベーンおよび支持柄の間を通してインペラの上部の空間と通じている。
【選択図】図1

Description

本発明は、医療用送液ポンプに関し、特にインペラの回転によって血液に推力を与えて、送血するターボ式血液ポンプに関する。
人工心肺手術等の血液体外循環において、従来ではローラー式血液ポンプが多く使用されてきたが、最近では遠心型血液ポンプを使用する比率が高くなっている。それは、ローラー式血液ポンプに比べ、遠心型血液ポンプは血液損傷が少ない等、様々な利点があるからである。また、従来の大型のローラー式血液ポンプの駆動部に比べれば、遠心型血液ポンプのそれは小さくて済むため、設置や移動が非常に簡便となる。
しかし、遠心型ポンプは臨床使用の際に、以下に記載するような問題点もあり、未だ充分に満足すべきものではなかった。第1に、遠心型ポンプの血液充填量の問題があった。遠心型血液ポンプでは、溶血を低減するために、低回転での駆動が望ましい。しかし、回転数を下げると、同じ駆出能(送液量)を得るためにはポンプを大型化する必要があった。ところが、血液ポンプを大型化すると、血液充填量が増加し、その結果体外循環血液量が増え、患者の負担は大きいものとなる。
逆に、ポンプを小型化して充分な血液流量を得るためには、インペラを高速回転させなくてはならず、溶血(血液損傷)等の問題があった。また、回転数、液駆出量、充填量等の規格において、成人用に設計された遠心ポンプを、小児や血液循環量の多く取れない患者に適用すると、低回転域で使用しなくてはならず、低流量の調整や維持が困難であった。
さらに、従来の遠心型ポンプはモーターの回転をインペラの回転軸に伝えるため、血液の流入・流出するポンプ室と駆動手段、或いは前記ポンプ室と駆動伝達のための従動磁石を収納した空間とを遮断する軸シールを有するものが多かったが、この軸シールが有ると、血液リークの対策を考慮しなくてはならず、また軸シール部分が発熱の原因になったり、血栓形成の誘引となったりして望ましくなかった。一方、軸シールが無い場合でも、従来の遠心ポンプは滞留し易い部分が少なくなかったので、血栓が形成し易く、長時間の体外循環に使用することが困難であった。
例えば特許文献1に記載されているターボ式血液ポンプの例では、インペラは、円錐形の台座の円錐面上に複数個の羽根が放射状に設けられた構造を有する。この台座の底面は、ハウジングの底面のほぼ全体を覆う程度の面積を有するので、台座近傍における渦流の発生が少なく、渦流による溶血の問題はない。
しかし、台座の下面とハウジングとの間に必然的に存在する間隙に、血液が滞留する淀み部が形成され、インペラの軸受け部に発生した熱が淀み部の血液に蓄積される。そして、インペラの回転による剪断力と合わせて、淀み部における溶血が生じるという問題を発生する。これを解決するために特許文献1では、台座に、上面から下面まで貫通する血液流通孔が設けられている。それにより、淀み部の血液は軸受け部の近傍を通過し血液流通孔を通つて台座の上面に達し、羽根車の外径方向に向かってスムーズに流れ、滞留防止効果を得ることができる。
一方、特許文献1のターボ式血液ポンプでは、インペラの駆動力をハウジング壁を介した磁気結合により外部から付与する構造が用いられている。すなわちインペラの円錐形台座の下部に磁石が装着され、ハウジングの外部下方に駆動用の磁石が配置されてインペラの磁石と対向している。駆動用の磁石はモータにより回転駆動され、磁気結合によりインペラの磁石を介してインペラが回転駆動される。
特開平4−224760号公報
本発明の目的は既述したような様々な問題を解決した血液ポンプを提供することである。即ち、第1に小型(血液充填量が小さく)で、微量の流量調整・流量維持が可能なターボ式血液ポンプを提供すること。第2に、(所定の駆出能を得るために必要な)実用上の高回転域で使用しても、溶血の少ないターボ式血液ポンプを提供すること。
第3に送血時に血栓の形成が極力抑えられ、長時間の体外循環に適応できる血液ポンプを提供すること。第4に長時間使用しても、安定した送液ができる血液ポンプを提供すること。
本発明のターボ式血液ポンプは、ポンプ室、入口ポートおよび出口ポートを有するハウジングと、前記ポンプ室内に回転自在に支持され、外周域下部に従動磁石を有するインペラと、前記ハウジングの底部下方に配置され上面部に駆動磁石を有する回動可能なロータとを備え、前記ロータの前記駆動磁石と前記インペラの前記従動磁石とが、前記ハウジングの底部壁を挟んで形成する磁気結合を介して、前記ロータの回転が前記インペラに伝達されるように構成される。
前記インペラは、上部軸受けと下部軸受けにより回転自在に支持された回転軸と、複数のベーンと、少なくとも一部の前記ベーンの内周側を前記回転軸に結合する支持柄と、前記各ベーンの外周側に連結された環状連結部とを有し、前記従動磁石は、前記インペラにおける前記環状連結部の下部に設けられ、前記環状連結部が前記インペラの下部に形成する円筒形内周面に包囲された空間領域に対応させて、前記ハウジングの底部壁内側の中央部に上方に突出した円筒形外周面を有する台座が形成され、前記下部軸受けは前記台座の上面部に設けられ、前記従動磁石、前記環状連結部、前記ベーンおよび前記支持柄と、前記台座の表面との間に形成された空隙が、前記複数のベーンおよび支持柄の間を通して前記インペラの上部の空間と通じている。
また、本発明は以下のような種々の実施態様によって、さらなる利点を得ることができる。すなわち、前記ロータの上面は円錐面を形成し、前記ハウジングの底部壁下面は、前記ロータの円錐面と対応する凹部形状を有し、前記駆動磁石と前記従動磁石が対向する方向は、前記インペラの回転軸に対して傾斜していることが好ましい。
その場合、前記ベーンは、前記ハウジングの底部壁下面の凹部形状に対応するように、前記インペラの回転軸から外周に向かって傾斜した構造を有し、前記台座の上面は、前記ベーンの傾斜した下面に対応する円錐面状を有することが好ましい。
本発明の医療用送液ポンプを使用することによって、既述した様々な問題を解消することができる。第1に小型(血液充填量が小さく)の送液ポンプであっても、高流量の送液が可能である。第2に、本送液ポンプを実用上の高回転域で駆動しても、溶血度が小さく生体に与えるダメージを軽減できる。その結果、長時間の血液体外循環にも対応可能となる。
第3に、送血時での血栓の形成が抑えられること。本願の血液ポンプでは、ポンプ内の滞留し易い箇所・構造を避け、(滞留し難いように)改善されているため、血栓の形成が抑制できる。そのため、低流量域の送液においても、血栓の形成が抑えられ、且つ長時間の使用にも耐え得る。
第4に、インペラの回転軸を支える軸受けが高い摺動特性と寸法安定性を有しているため、長時間の駆動によっても、疲労する度合いが少なく、良好な耐久性を示し、その結果、安定した送液能(特性)を有する。
以下、図によって本発明の医療用送液ポンプの実施態様を簡単に説明する。図1は、本発明の血液ポンプについて、1つの実施態様の内部構造を示す断面図である。1はハウジングであり、血液を通過させ流動させるためのポンプ室2を有する。ハウジング1には、ポンプ室2の上部に連通する入口ポート3と、ポンプ室2の側部に連通する出口ポート4とが設けられている。ポンプ室2内には、インペラ5が配置されている。
インペラ5は複数枚(本例では、6枚)のベーン6、回転軸7、及びリング状の環状連結部8を有する。ベーン6の幾つかの中心部は支持柄40によって、回転軸に結合されており、ベーン6の全ての周縁部は環状連結部8に結合されている。ベーンの数が多ければ、それだけ駆出能が向上するが、流路の確保が困難となり、溶血を引き起こすもとになる。また、ベーンの数が多ければ、製造する上でもより困難になる。従って、より好ましいベーンの数は4〜8程度である。
本例では、図1、3に示すように、3枚のベーン6aは大きめに形成され、それらの中心部が回転軸に結合されているが、残りの3枚のベーン6bは小さめに形成され、回転軸には結合されていない。ベーン6bは、ベーンの下端部が環状連結部8に結合されているだけである。
ベーン6の全てを回転軸に結合すると、支持柄の数が多くなって、インペラを製造し難くなる。また、支持柄が多いと流路の妨げになるため、好ましくない。支持柄はインペラの回転を(回転)軸に伝える上で、最小限の数を有していれば良い。また、ベーンの大きさを異なったものにしたのは、流路の確保、流体の乱れの低減等といった理由からである。
ベーン6(6a,6bとも)の形状は3次元曲面形状であり、流体に接触(衝突?)する入口部の回転軸に対する傾斜角度γを所定の値(20〜40度)に設定することによって、ベーン後面で発生するキャビテーション(流れの剥離,渦流?)を抑制し、溶血を低減化している。そして、出口部の回転軸に対する傾斜角度δを0°、即ち回転軸と平行に近くなるようにすることによって、駆出能を向上させている。すなわち、図5に示すように、インペラのベーン入口とインペラ回転軸とのなす角度γは、前記ベーン出口とインペラ回転軸とのなす角度δより大きく形成されている。より詳細には、以下のような構成が望ましい。
図2に示すように、ベーン6の入口上部端と出口上部端とを結ぶ線(ベーン上面線m)と回転軸とのなす角度αは、ベーン6の入口下面と出口下面を結ぶ線(ベーン下面線n)と回転軸とのなす角度βよりも小さいものである。ベーン上面線mは回転軸に対して、45°〜 °の角度を形成し、また、ベーン下面線nは回転軸に対して、60°〜 °の角度を形成する。その結果、インペラでの血液の流れは回転軸に対して、垂直でも平行でもなく、斜めの流れとなる。
図3のようなインペラを上方からみた図、またベーン上面線m、下面線nを位置関係を模式的に示した図6において、ベーン上面線mと(ベーン入口上部端を通過するインペラと同心円のベーン入口における)接線pとのなす角度θが、ベーン下面線nと(ベーン出口下面におけるインペラ外周との)接線qとのなす角度εより小さいものである。また、インペラのベーン入口線k(即ち、入口上部端と入口下部端とを結ぶ線分)は回転軸(仮想線)oに対して約30°になるように角度γを形成し、インペラベーン出口線l(即ち、出口上部端と出口下部端とを結ぶ線分)は仮想線oに対して0°、即ち回転軸に平行になるように角度δを形成する。上記のような構成をとることによって、充分な駆出能を有しながら、溶血の低減した血液ポンプが実現できる。
また、複数のベーン6を下部の環状連結部8で連結し、インペラをフルオープン構造にすることによって、中央のスペース41にも血液が流通し、血液の滞留を防止することができる。
インペラ及びハウジングの素材として、軽量化、易成型性、強度、寸法安定性等の点からポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルフォン等の合成樹脂が望ましい。
回転軸7は、ハウジング1に設けた上部軸受け9及び下部軸受け10により、回転自在に支持されている。軸受けの素材は耐摩耗性の大きいものであれば良く、例えば超高分子量ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKともいう)等の高耐久性プラスチックが好適に利用できる。環状連結部8には、複数個の従動磁石12が一定間隔でもって埋設、固定されている。ハウジングの下部にはロータ13が配置されている。ロータ13は、互いに結合された駆動軸14と略円柱状の軸結合部15を有する。図1に示されるように、軸結合部の上面部にはインペラの環状連結部8下方に埋設された従動磁石12と磁気結合できるように、駆動磁石16が埋設されている。
前述の各磁石を埋設された環状連結部下面と磁気結合部上面部は、強力な磁気結合を得ると同時に、溶血性や滞留部位の低減を実現するため、回転軸に対して斜め方向に対面している。図示しないが、ローターにモーターを結合し、モーターを回転させることによって、ローターやインペラを回転させ、その結果推力によって血液が送液される。
ハウジングの下方内周面部43と、環状連結部の出口側周面44とは所定の距離を置いて配置されている。上記の離間距離は血液ポンプの回転数によって、影響される。上記距離が小さ過ぎると、溶血し易くなるが、逆に多過ぎると、血液充填量が増えるなどの問題を引き起こす。
また、血栓形成を防止するため、ハウジング内やインペラ外面等のポンプ室内で血液と接触する全ての構成要件を抗血液凝固化しても良い。抗血液凝固の手段としては、特に限定されないが、抗血栓性ムコ多糖を血液接触表面にイオン結合させる方法は応用範囲が広く、且つ効果的である。例えば、本出願人による特願平11-99485号の明細書中に開示した、ヘパリンと4級化アンモニウム塩との複合体をプラスチック表面にコーティングする方法等が好適に適用される。
図4に本発明の、小型で軽量のターボ式血液ポンプを示す。各構成の図番は既述した実施態様で使用した図番と一致させている。ポンプの寸法は外径、高さがそれぞれ58mm、56mmであり、重量は43g、ポンプ室の血液充填量は20mLである。ハウジング、インペラの素材はポリカーボネート等であり、回転軸はステンレス鋼、上部および下部軸受けは前述のPEEKによって形成されている。
ベーンの取付位置について、前述した規定角度によって説明する。ベーン上面線と回転軸とのなす角度αが45°、ベーン下面線と回転軸とのなす角度βが60°、ベーン入口線kと回転軸とのなす角度γは30°、ベーン出口線lと回転軸とのなす角度δが0°、ベーン上面線と接線pとのなす角度θが26°、ベーン下面線と接線qとのなす角度εが95°である。環状連結部の外円直径は39.0mm、内円直径は22.0mm、環状連結部からベーン入口上端部までの長さは20.0mmで、回転軸長さは10.0mmである。
本発明の1つの実施形態であるターボ式血液ポンプ本体部の大まかな構造を示す断面的概略図。 本発明の一例の血液ポンプにおいて、インペラ部分の形状を示す側面概略図。 本発明の一例の血液ポンプにおいて、インペラ部分の形状を示す平面概略図。 本発明の他の実施形態であるターボ式血液ポンプ本体部の大まかな構造を示す断面的概略図。 本発明の血液ポンプにおいて、ベーンの取付け位置を示す模式図。 本発明の血液ポンプにおいて、インペラ上方からみたベーンの取付け位置を示す模式図。
符号の説明
1.ハウジング
2.ポンプ室
3.入口ポート
4.出口ポート
5.インペラ
6.ベーン
6a.ベーン(大)
6b.ベーン(小)
7.回転軸
8.環状連結部
9.上部軸受け
10.下部軸受け
12.従動磁石
13.ローター
14.駆動軸
15.軸結合部
16.駆動磁石
17.入口上部端
18.入口下部端
19.出口上部端
20.出口下部端
40.支持柄
41.スペース
43.下方内周面部
44.出口側周面
k.ベーン入口線
l.ベーン出口線
m.ベーン上面線
n.ベーン下面線
o.回転軸仮想線
p.ベーン入口上部端を通るインペラと同心円のベーン入口における接線
q.ベーン出口下面におけるインペラ外周との接線
α.ベーン上面線と回転軸とのなす角度
β.ベーン下面線と回転軸とのなす角度
γ.ベーン入口線kと回転軸とのなす角度
δ.ベーン出口線lと回転軸とのなす角度
θ.ベーン上面線と接線pとのなす角度
ε.ベーン下面線と接線qとのなす角度

Claims (3)

  1. ポンプ室、入口ポートおよび出口ポートを有するハウジングと、
    前記ポンプ室内に回転自在に支持され、外周域下部に従動磁石を有するインペラと、
    前記ハウジングの底部下方に配置され上面部に駆動磁石を有する回動可能なロータとを備え、
    前記ロータの前記駆動磁石と前記インペラの前記従動磁石とが、前記ハウジングの底部壁を挟んで形成する磁気結合を介して、前記ロータの回転が前記インペラに伝達されるように構成されたターボ式血液ポンプにおいて、
    前記インペラは、上部軸受けと下部軸受けにより回転自在に支持された回転軸と、複数のベーンと、少なくとも一部の前記ベーンの内周側を前記回転軸に結合する支持柄と、前記各ベーンの外周側に連結された環状連結部とを有し、
    前記従動磁石は、前記インペラにおける前記環状連結部の下部に設けられ、
    前記環状連結部が前記インペラの下部に形成する円筒形内周面に包囲された空間領域に対応させて、前記ハウジングの底部壁内側の中央部に上方に突出した円筒形外周面を有する台座が形成され、
    前記下部軸受けは前記台座の上面部に設けられ、
    前記従動磁石、前記環状連結部、前記ベーンおよび前記支持柄と、前記台座の表面との間に形成された空隙が、前記複数のベーンおよび支持柄の間を通して前記インペラの上部の空間と通じていることを特徴とするターボ式血液ポンプ。
  2. 前記ロータの上面は円錐面を形成し、
    前記ハウジングの底部壁下面は、前記ロータの円錐面と対応する凹部形状を有し、
    前記駆動磁石と前記従動磁石が対向する方向は、前記インペラの回転軸に対して傾斜している請求項1に記載のターボ式血液ポンプ。
  3. 前記ベーンは、前記ハウジングの底部壁下面の凹部形状に対応するように、前記インペラの回転軸から外周に向かって傾斜した構造を有し、
    前記台座の上面は、前記ベーンの傾斜した下面に対応する円錐面状を有する請求項2に記載のターボ式血液ポンプ。
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