JP2012161526A - 遠心式血液ポンプおよび遠心式血液ポンプ装置 - Google Patents

遠心式血液ポンプおよび遠心式血液ポンプ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インペラの回転時におけるインペラの過剰上昇およびハウジング内面との接触を防止し、かつ、インペラの回転抵抗および発熱が少ない遠心式血液ポンプを提供する。
【解決手段】遠心式血液ポンプ1は、ハウジング2と、インペラ3とを備える。ハウジング2は、血液流入ポート22と、血液流出ポート23と、ハウジング2の内部上面より、下方に突出し、軸部52を有する軸部形成部5とを備える。インペラ3は、磁性体41と、軸部形成部5の軸部52を受け入れ可能な凹部36を有する軸受部35とを備える。ハウジングおよびインペラは、軸受部に軸部形成部の軸部を受け入れた状態にて、インペラの回転を可能とするとともに、インペラの中央部付近の上面のハウジング内面への接触を防止する。
【選択図】図4

Description

本発明は、血液を送液するための遠心式血液ポンプおよびそれを用いた遠心式血液ポンプ装置に関する。
最近では、人工心肺装置における体外血液循環、人工心臓用ポンプなどに遠心式血液ポンプを使用する例が増加している。遠心ポンプとしては、外部とポンプ内の血液室との物理的な連通を完全に排除し、細菌等の侵入を防止できることにより、外部モータからの駆動トルクを磁気結合を用いて伝達する方式のものが用いられている。
そして、このような遠心式血液ポンプとして、特開2002−349482号公報(特許文献1)に示される人工心臓用遠心ポンプがある。
この人工心臓用遠心ポンプは、インペラ軸部を円筒部1とし、その下部に遠心羽根3を配置し、底部に永久磁石11を設け、ケーシング底部に設けた回転磁界を発生する駆動装置によってインペラを回転させる。インペラの底部中心にはピボット軸受を設け、図示実施例においてはインペラ側にピボット軸6を、ケーシングの底壁側にはピボット受け10を設けている。ピボット軸6とピボット受け10の材質は、例えばセラミックスと超高分子量ポンプの組のように、互いに硬度の異なる材質のものを選択する。また、ピボット軸とピボット受けの球面の直径を略等しく形成するものとなっている。
そして、遠心式血液ポンプでは、インペラの回転時に、インペラの基部の一側から血液を吸い込んだ際、基部の一側よりも他側が高い圧力になる圧力差が生じ、インペラを一側に押す軸スラスト荷重が作用することにより、軸心がずれて血液ポンプの作動不良を招来すること、また、インペラの回転時にインペラの下面側が上面側より圧力が高くなることに起因するインペラの上昇により、インペラ上面がハウジング内面に当接することがある。
ターボ式血流ポンプとして、特開2008−183229号公報(特許文献2)に示される人工心臓用遠心ポンプがある。
この血液ポンプでは、インペラ22は、上部軸受け9と下部軸受け10により上下端で回転自在に支持された回転軸7と、複数のベーン6と、ベーンの内周側を回転軸に結合するアーム18と、各ベーンの外周側に連結された環状連結部8と、環状連結部の下部に配置された従動磁石部12とを有する。ロータ13に設けられた駆動磁石部16と従動磁石部12とが、ハウジングの底部壁を挟んで対向し、磁気結合を介してロータの回転がインペラに伝達される。ベーンの下方に封鎖部材23が配置され、回転軸と環状連結部の間に亘る領域の空間を、少なくとも回転軸の周囲に開口部24を残して封鎖している。
特開2002−349482号公報 特開2008−183229号公報
特許文献1のものでは、ピボット軸とピボット受けにより構成されたハウジング内でのインペラの軸受機構を有しているため、ベアリング機構等が不要であり、小型化等の利点を備えている。しかし、特許文献1のものでは、インペラの回転時にインペラの下面側が上面側より圧力が高くなることがあり、この圧力差により、インペラが上昇し、インペラ上面がハウジング内面に当接することがある。また、特許文献2のものでは、上部軸受けを有することにより、インペラの回転時におけるインペラの上昇を防止している。しかし、特許文献2のものでは、上下において軸受けが設けられており、摩擦抵抗が高く、かつ、2つの軸受け部での発熱が生じる可能性がある。
そこで、本発明は、インペラの回転時におけるインペラの過剰上昇を防止し、インペラのハウジング内面との接触を抑制し、かつ、インペラの回転抵抗および発熱が少ない遠心式血液ポンプおよびそれを用いた遠心式血液ポンプ装置を提供する。
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に収納されたインペラとを備え、かつ、前記ハウジングの外部より前記インペラを吸引しかつ回転させるためのインペラ回転トルク発生手段による前記インペラの回転によって血液を送液する遠心式血液ポンプであって、前記ハウジングは、中央部上方に延びる血液流入ポートと、前記ハウジングの側部に設けられた血液流出ポートと、前記ハウジングの内部上面より、下面方向に突出し、先端部に軸部を有する軸部形成部とを備え、前記インペラは、前記インペラ回転トルク発生手段との磁気的結合のための磁性体と、前記インペラの中央部に設けられ、前記軸部形成部の前記軸部を受け入れ可能な凹部を有する軸受部とを備え、前記ハウジングおよび前記インペラは、前記軸受部に前記軸部形成部の前記軸部を受け入れた状態にて、前記インペラの回転を可能とし、かつ、前記インペラの中央部付近の上面の前記ハウジング内面への接触を防止するものである遠心式血液ポンプ。
(2) 前記軸部形成部は、前記軸部より、放射方向かつ斜め上方に延びる複数の棒状フレームを備えている上記(1)に記載の遠心式血液ポンプ。
(3) 前記軸部は、前記棒状フレームの一端部に位置し、前記棒状フレームの他端部は、前記ハウジングの内部上面に開口する前記血液流入ポートの基部開口部の周縁部に固定されており、かつ、前記軸部は、前記血液流入ポートの前記基部開口部の下方に位置している上記(2)に記載の遠心式血液ポンプ。
(4) 前記軸部形成部の前記軸部は、前記血液流入ポートの中心軸の延長線上もしくはその付近に位置するものとなっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
(5) 前記棒状フレームは、湾曲している上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
(6)前記複数の棒状フレームは、前記軸部を中心軸としてほぼ等角度となるように配置されている上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
(7)前記軸部および前記軸受部は、ピボット軸受機構を形成している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
(8)前記軸部形成部は、前記複数の棒状フレームの端部に固定された環状部を備え、該環状部が、前記ハウジングの前記血液流入ポートの基部開口部の周縁部に固定されている上記(2)ないし(7)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
(9) 前記インペラは、中央開口部と、該中央開口部と連通し、前記インペラの側部まで延びる複数の血液流路を有し、前記軸受部は、前記中央開口部の下方に位置している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
(10) 前記軸部および前記軸受部の前記凹部は、略半球形状となっており、かつ両者の半径はほぼ等しいものとなっている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の遠心式血液ポンプと、前記インペラの前記磁性体を吸引するとともに該インペラを回転させるためのインペラ回転トルク発生手段とからなることを特徴とする遠心式血液ポンプ装置。
本発明の遠心式血液ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に収納されたインペラとを備え、かつ、ハウジングの外部よりインペラを吸引しかつ回転させるためのインペラ回転トルク発生手段によるインペラの回転によって血液を送液する遠心式血液ポンプである。ハウジングは、中央部上方に延びる血液流入ポートと、ハウジングの側部に設けられた血液流出ポートと、ハウジングの内部上面より、下面方向に突出し、先端部に軸部を有する軸部形成部とを備え、インペラは、インペラ回転トルク発生手段との磁気的結合のための磁性体と、インペラの中央部に設けられ、軸部形成部の軸部を受け入れ可能な凹部を有する軸受部とを備え、ハウジングおよびインペラは、軸受部に軸部形成部の軸部を受け入れた状態にて、インペラの回転を可能とし、かつ、インペラの中央部付近の上面のハウジング内面への接触を防止するものとなっている。
このため、インペラの回転時においてインペラが上昇しても、インペラの上面の中央部がハウジングの内面に当接することがなく、また、インペラの基部の一側から血液を吸い込んだ際、基部の一側よりも他側が高い圧力になる圧力差が生じ、インペラを一側に押す軸スラスト荷重が作用しても、軸部と軸受部によりインペラの移動を抑制し、血液ポンプの作動不良を招くことがなく、そして、インペラの回転時には、軸部と軸受部とが接触するのみであり、発熱の発生も少ない。
図1は、本発明の実施例の遠心式血液ポンプの正面図である。 図2は、図1に示した遠心式血液ポンプの平面図である。 図3は、図1に示した遠心式血液ポンプの斜視図である。 図4は、図2のA−A線断面図である。 図5は、図1に示した遠心式血液ポンプに用いられるインペラの斜視図である。 図6は、図2のB−B線でのインペラの断面図である。 図7は、図2に示した遠心式血液ポンプの断面のインペラ中央部付近の拡大図である。 図8は、図7に示した遠心式血液ポンプに用いられている軸部形成部の平面図である。 図9は、図8に示した遠心式血液ポンプの軸部形成部の棒状フレームの断面図である。 図10は、本発明の遠心式血液ポンプに用いる他の例の軸部形成部の棒状フレームの断面図である。 図11は、本発明の他の実施例の遠心式血液ポンプのインペラ中央部付近の拡大断面図である。 図12は、本発明の他の実施例の遠心式血液ポンプのインペラ中央部付近の拡大断面図である。 図13は、図14に示した遠心式血液ポンプに用いられている軸部形成部の底面図である。 図14は、本発明の他の実施例の遠心式血液ポンプに用いられる軸部形成部の平面図である。 図15は、本発明の他の実施例の遠心式血液ポンプに用いられる軸部形成部の平面図である。 図16は、本発明の他の実施例の遠心式血液ポンプのインペラ中央部付近の拡大断面図である。 図17は、図16に示した遠心式血液ポンプに用いられているインペラの中央部の平面図である。 図18は、本発明の遠心式血液ポンプ装置の部分破断断面図である。
本発明の遠心式血液ポンプおよび遠心式血液ポンプ装置を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の遠心式血液ポンプ1は、ハウジング2と、ハウジング2内に回転可能に収納されたインペラ3とを備え、かつ、ハウジング2の外部よりインペラを吸引しかつ回転させるためのインペラ回転トルク発生手段50によるインペラ3の回転によって血液を送液するものである。
ハウジング2は、中央部上方に延びる血液流入ポート22と、ハウジング2(具体的には、上部ハウジング20)の側部に設けられた血液流出ポート23と、ハウジング2の内部上面より、下面方向に突出し、先端部に軸部52を有する軸部形成部5とを備える。インペラ3は、インペラ回転トルク発生手段50との磁気的結合のための磁性体41と、インペラ3の中央部に設けられ、軸部形成部5の軸部52を受け入れ可能な凹部36を有する軸受部35とを備える。ハウジング2およびインペラ3は、軸受部35に軸部形成部5の軸部52を受け入れた状態にて、インペラ3の回転を可能とし、かつ、軸受部35と軸軸部52との接触により、インペラ3の中央部付近の上面のハウジング内面への接触を防止するものとなっている。
図1ないし図8に示すように、この実施例の遠心式血液ポンプ1は、ハウジング2とその内部に回転可能に収納されたインペラ3とからなる。 インペラ3は、ハウジング2内で回転し、回転時の遠心力によって血液を送液する。
そして、ハウジング2は、図1ないし図4に示すように、上部ハウジング20と上部ハウジングに液密に固定された下部ハウジング21とを備える。ハウジング2内には、血液流入ポート22および血液流出ポート23と連通するインペラ収納室(血液室)が形成されている。特に、この実施例の遠心式血液ポンプ1では、ハウジング2は、中央部上方に延びる血液流入ポート22と、ハウジング2の側部に設けられた血液流出ポート23と、ハウジング2(具体的には、上部ハウジング20)の内部上面より、下面方向に突出し、先端部に軸部52を有する軸部形成部5を備える。
上部ハウジング20は、血液流入ポート22と血液流出ポート23とを備え、非磁性材料により形成されている。上部ハウジング20内には、血液流入ポート22および血液流出ポート23と連通する血液室が形成されている。血液流入ポート22は、上部ハウジング20の上面の中央付近よりほぼ垂直に突出するように設けられている。なお、血液流入ポート22は、このようなストレート管に限定されるものでなく、湾曲管もしくは屈曲管でもよい。血液流出ポート23は、図1ないし図3に示すように、薄くかつほぼ円筒状に形成された上部ハウジング20の側面よりほぼ接線方向に突出するように設けられている。また、下部ハウジング21は、図1および図4に示すように、上部ハウジングの血液流入ポート22方向に窪んだ凹部形状の底部を備えている。
そして、上部ハウジング20の内部上面、具体的には、ハウジング2の内部上面に開口する血液流入ポートの基部開口部の周縁部に固定された軸部形成部5を備えている。そして、軸部形成部5は、図2、図4、図7および図8に示すように、軸部形成部のほぼ中心に位置する軸部52、軸部52より、放射方向かつ斜め上方に延びる複数の棒状フレーム53a,53b,53c,53d、棒状フレーム53a,53b,53c,53dの端部に固定された環状部51、軸部52を棒状フレームの端部に固定するための軸部保持部54とを備えている。この実施例では、軸部保持部54は、軸部を固定するために半球状内面を有するとともに、棒状フレーム53a,53b,53c,53dの一端が固定されている。棒状フレームの数としては、2ないし5が好ましく、特に、3もしくは4が好ましい。この実施例の軸部形成部5では、棒状フレーム(言い換えれば、スポーク部)は、4本となっている。また、複数の棒状フレーム53a,53b,53c,53dは、図8に示すように、軸部52を中心軸としてほぼ等角度となるように配置されている。
また、棒状フレーム53a,53b,53c,53dの断面形状(棒状フレームの軸に直交する方向の断面形状)は、図9に示すように、血液流入ポート22方向(言い換えれば、上方)に頂点53eを有する略三角形状、もしくは、図10に示すような半球状であり、円弧状頂点53fを有するものが好ましい。このようにすることにより、当接する血液流により受ける抵抗を少なくすることができる。そして、この実施例の軸部形成部5では、環状部51が、上部ハウジング20の血液流入ポートの基部開口部の周縁部に、流入する血液流が当接しないように、固定されている。環状部51から見れば、複数の棒状フレームは、環状部51の中心方向かつ下方に斜めに延び、その端部が、軸部保持部54に連結されたものとなっている。また、軸部形成部としては、環状部を備えず、棒状フレームの他端部をハウジングの内部上面に開口する血液流入ポートの基部開口部の周縁部に固定したものであってもよい。
そして、軸部52(軸部保持部54)は、血液流入ポートの基部開口部の下方に位置している。そして、この軸部52および後述するインペラ3の軸受部35により、ピボット軸受機構が形成されている。そして、この実施例の軸部形成部5では、軸部52(軸部保持部54)は、血液流入ポート22の中心軸の延長線上もしくはその付近に位置するものとなっている。特に、この実施例のものでは、軸部52(軸部保持部54)の中心は、血液流入ポート22の中心軸の延長線上にほぼ位置するものとなっている。そして、軸部52は、球状となっており、下部側部分が、露出し、上半分部分が、軸部保持部54に被包されるとともに、固定されている。よって、この実施例の軸部形成部5では、環状部51,棒状フレーム53a,53b,53c,53dおよび軸部保持部54と、軸部52とにより形成されている。軸部(言い換えれば、ピボット軸、球体)52は、後述する軸受部35の凹部36の半径より、若干小さいものとなっている。軸部(球状体)52としては、セラミックスボール、金属球などが使用できる。また、軸部形成部5の形成材料としては、金属、セラミックス、樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリアセタール)などが好ましく、特に、上述した金属が好ましく、特に熱伝導性が良好な金属が好ましい。
また、軸部形成部は、図11に示す軸部形成部5aのように、軸部52aが、本体部と一体に形成されたものであってもよい。この場合、複数の棒状フレーム53a,53b,53cは、軸部52aの側部と直結し、斜め上方に延びるものとなる。また、軸部形成部5aは、軸部保持部を持たないものとなる。
インペラ3は、図2、図4ないし図6に示すように、インペラ本体と、インペラ本体内に収納された複数の磁性体41を備える。
また、この実施例の遠心式血液ポンプ1では、インペラ3は、中央部の上面に設けられた中央開口部30と、中央開口部30と連通し、インペラ3の側部まで延びる複数の血液流路31と、インペラ回転トルク発生手段50との磁気的結合のための磁性体41と、中央開口部30の下方に位置する軸受部35とを備える。なお、インペラ3としては、クローズドタイプの血液流路を有するものであることが好ましい。しかし、上面が開口したタイプの血液流路を有するものであってもよい。例えば、インペラとしては、いわゆる羽根タイプのものであってもよい。
この実施例のインペラ本体は、インペラ上部部材32と、インペラ上部部材32の下面に取り付けられるとともに、内部に磁性体41を収納したインペラ下部部材33を備えている。そして、インペラ上部部材32とインペラ下部部材33間に、上面および下面が開口せず、かつ、一端が開口部30と連通し、他端がインペラ3の側部にて開口する複数の血液流路31が形成されている。この実施例では、血液流路31は、ほぼ同じ幅にて直線状に延びるものとなっており、かつ、血液流路は、開口部30の中心に対して、ほぼ等角度となるように設けられている。さらに、インペラ3は、図5に示すように、血液流路間に形成された複数の突出部32bを備えている。
インペラ上部部材32は、図4ないし図7に示すように、中心部に開口部30を有する所定の肉厚を有し、若干中央部に向かって盛り上がる傘状となっている円盤状部材であり、底面には、開口部30と連通する複数の凹部32aが形成されており、この凹部32aが、血液流路31を構成している。
また、インペラ下部部材33は、所定の肉厚を有し、若干中央部に向かって盛り上がる傘状となっている円盤状部材であり、上面には、インペラ上部部材32の凹部32a内に進入する複数のリブを備えている。また、インペラ下部部材33は、図4および図6に示すように、複数の磁性体収納用凹部を備えている。また、この実施例では、複数(好ましくは、3〜10)の磁性体収納用凹部は、インペラの中心に対して等角度となるように配置されている。また、凹部の数(言い換えれば、磁性体の数)は、好ましくは、3〜10であり、特に、好ましくは、4〜8である。そして、各磁性体収納用凹部には、磁性体41が収納されている。磁性体41としては、磁性ステンレス、永久磁石等が使用される。
そして、図7に示すように、インペラ3は、中央開口部30の下方に位置する軸受部35とを備える。この軸受部35と上述した軸部52とにより、ピボット軸受機構が形成されている。この実施例のインペラ3では、インペラ3の中央開口部の下方、言い換えれば、インペラ下部部材32の中央部上面には、軸受部収納用凹部34が形成されており、その収納用凹部34に軸受部35が埋設されている。そして、軸受部35の上面には、上述した軸部52を収納可能な凹部36が形成されている。軸受部35の凹部36は、軸部52の下面(下部側部分)の形状に対応した表面形状、具体的には、略半球形状となっており、かつ両者の半径はほぼ等しいものとなっている。
そして、インペラ3は、上方に移動したとき、軸受部35の凹部36に、ハウジング2の軸部52が進入し、当接することにより、それ以上のインペラの上昇を防止し、インペラの中央部付近のハウジング内面への接触を防止する。そして、本発明のポンプ1では、インペラの中央部付近のハウジング内面への接触を防止することにより、インペラ3の中央部上面がハウジング内面に接触した状態にて、インペラが回転することを防止し、さらに、インペラの揺動時のインペラ上面の周縁部のハウジング2の内面に接触することも抑制する。
具体的には、インペラ3が下部ハウジング21上に載置された状態におけるハウジング2の軸部形成部5の軸部52とインペラ3の軸受部35の凹部36間の距離が、インペラ3が下部ハウジング21上に載置された状態におけるインペラ3の上面と上部ハウジング20の内面間の距離より短いものとなっている。このため、インペラ3の回転時に、インペラが上昇したとしても、インペラ3の中央部の上面が上部ハウジングの内面(ハウジングの上部内面)に当接する前に、軸受部35の凹部36に軸部52が受け入れられることにより当接し、それ以上のインペラ3の上昇を阻止するものとなっている。
また、軸受部35、上述した軸部保持部54には、血液流入ポートより流入する血液流が、当接するため、両者は、血液流により、冷却されるため、発熱が生じることが少ない。そして、軸受部35の形成材料としては、樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリアセタール)、金属、セラミックスなどが好ましく、特に、金属が好ましく、より好ましくは、熱伝導性が良好な金属である。
また、本発明の遠心式血液ポンプにおける軸受機構は、上述したものに限定されるものではなく、図12および図13に示すようなものであってもよい。
図12および図13に示すものと、図7および図8に示し上述したものとの相違は、軸部および軸受部の凹部の形態のみであり、棒状フレーム等のその他の部分については、上述したものと同じである。
この実施例における軸部形成部5bは、複数の棒状フレーム53a,53b,53c,53dを備え、その先端部は一体化した軸部55を形成している。そして、軸部55の下面は、下端が丸味帯びた略円錐状のものとなっている。そして、インペラ3の軸受部35aの凹部36aは、軸部55の下面形状に対応した円錐状の凹部となっている。この実施例のポンプでは、軸部55と軸受部35aとにより、ピボット軸受機構が構成されている。
また、上述したすべての実施例の遠心式血液ポンプにおいて、軸部形成部における棒状フレームの数としては、図14に示す軸部形成部5cのように、3つの棒状フレーム63a、63b、63cを有するものであってもよい。この場合においても、各棒状フレーム63a,63b,63cは、図14に示すように、軸部(軸部保持部54)を中心軸としてほぼ等角度となるように配置されている。
また、上述したすべての実施例の遠心式血液ポンプにおいて、軸部形成部における棒状フレームは、図15に示す軸部形成部5dのように、湾曲しているものであってもよい。図15に示すものでは、湾曲する棒状フレーム73a,73b,73cは、略円弧状のもので、棒状フレームの中央付近に頂点を有するものとなっている。そして、各棒状フレーム73a,73b,73cは、同じ周方向に湾曲するものとなっている。
また、上述したすべての実施例の遠心式血液ポンプにおいて、インペラは、図16および図17に示すインペラ3aのように、中央開口部とインペラの下面とを連通する連通路38を有するものであってもよい。図16および図17に示すものでは、インペラは、軸受部35の外側に形成された複数(具体的には、3つ)の連通路38を備えている。このような連通路38を設けることにより、インペラ3aの上面より下面まで貫通して流れる血液流路を形成することができ、インペラの上面と下面間の圧力均衡を図ることが可能となる。
また、本発明の遠心式血液ポンプの血液接触面には、抗血栓性材料が固定されていることが好ましい。
抗血栓性材料としては、ヘパリン、ポリアルキルスルホン、エチルセルロース、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体(例えば、ポリHEMA[ポリヒドロキシエチルメタクリレート])、疎水性セグメントと親水性セグメントの両者を有するブロックまたはグラフト共重合体(例えば、HEMA−スチレン−HEMAのブロック共重合体、HEMA−MMA[メチルメタアクリレート]のブロック共重合体、HEMA−LMA[ラウリルメタアクリレート]のブロック共重合体、PVP[ポリビニルピロリドン]−MMAのブロック共重合体、HEMA−MMA/AA[アクリル酸]のブロック共重合体、さらにこのブロック共重合体にアミノ基を有するポリマーを混合したブレンドポリマー、および含フッ素樹脂などが使用できる。好ましくは、HEMA−スチレン−HEMAのブロック共重合体、HEMA−MMA[メチルメタアクリレート]のブロック共重合体、HEMA−MMA/AA[アクリル酸]のブロック共重合体などが好ましい。そして、上記のヘパリンを除く親水性樹脂を血液接触面に被覆した後、さらにその上にヘパリンを固定することが好ましい。この場合、ヘパリンをこの親水性樹脂の表面に固定するためには、親水性樹脂は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、エポキシ基、チオシアネート基、酸クロリド基、アルデヒド基および炭素−炭素二重結合のうちのいずれかを有するか、もしくは容易にこれらの基に変換可能な基を有していることが好ましい。特に好ましくは、上記親水性樹脂にアミノ基を有するポリマーを混合したブレンドポリマーを用いることであり、アミノ基を有するポリマーとしては、ポリアミン、特にPEI[ポリエチンイミン]が好ましい。
上述した実施例の血液ポンプでは、血液流入ポート22より流入した血液は、回転するインペラ3の中央部の開口部30に流入し、分流し、各血液流路31内に流入する。また、一部の血液は、軸部形成部5に当接するため、当接する血液により冷却されるとともに、血液流との当接は継続するため、発熱の発生を防止する。
そして、本発明の遠心式血液ポンプ装置は、遠心式血液ポンプ1と、インペラ3の磁性体41を吸引するとともにインペラ3を回転させるためのインペラ回転トルク発生手段50とからなる。
遠心式血液ポンプ1としては、上述した実施例のものを用いることができる。
インペラ回転トルク発生手段50は、図18に示すように、ハウジング内に収納されたロータ81とロータ81を回転させるためのモータ(図示せず)を備える。ハウジングは、血液ポンプ1の下部ハウジングの外方突出部を収納する凹部を備えている。ロータ81は、インペラ3に設けられた磁性体41を下面側からではなく、側面側より吸引し、インペラ3の磁性体41と磁気的結合を行うための複数の永久磁石82を備えている。特に、この実施例のインペラ回転トルク発生手段50では、ロータ81は、血液遠心ポンプ1側の面に設けられ、インペラ3に設けられた磁性体41の傾斜配置形態に対応して、傾斜配置された(言い換えれば、ポンプの側部かつ若干下方となるように配置されたた)複数の永久磁石82を備える。ロータ81の中心は、モータの回転軸に固定されている。永久磁石82は、インペラ3の磁性体41の配置形態(数および配置位置)に対応するように、複数かつ等角度ごとに設けられている。また、ロータ81を回転駆動させるモータとしては、DCブラシレスモータを含む同期モータ、インダクションモータを含む非同期モータなどが使用されるが、モータの種類はどのようなものであってもよい。また、モータの回転時における複数の永久磁石82の中心とロータの中心は一致している。
1 遠心式血液ポンプ
2 ハウジング
3 インペラ
5 軸部形成部
30 中央開口部
51 環状部
52 軸部
53 棒状フレーム
35 軸受部
36 凹部

Claims (11)

  1. ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に収納されたインペラとを備え、かつ、前記ハウジングの外部より前記インペラを吸引しかつ回転させるためのインペラ回転トルク発生手段による前記インペラの回転によって血液を送液する遠心式血液ポンプであって、
    前記ハウジングは、中央部上方に延びる血液流入ポートと、前記ハウジングの側部に設けられた血液流出ポートと、前記ハウジングの内部上面より、下面方向に突出し、先端部に軸部を有する軸部形成部とを備え、
    前記インペラは、前記インペラ回転トルク発生手段との磁気的結合のための磁性体と、前記インペラの中央部に設けられ、前記軸部形成部の前記軸部を受け入れ可能な凹部を有する軸受部とを備え、
    前記ハウジングおよび前記インペラは、前記軸受部に前記軸部形成部の前記軸部を受け入れた状態にて、前記インペラの回転を可能とし、かつ、前記インペラの中央部付近の上面の前記ハウジング内面への接触を防止するものであることを特徴とする遠心式血液ポンプ。
  2. 前記軸部形成部は、前記軸部より、放射方向かつ斜め上方に延びる複数の棒状フレームを備えている請求項1に記載の遠心式血液ポンプ。
  3. 前記軸部は、前記棒状フレームの一端部に位置し、前記棒状フレームの他端部は、前記ハウジングの内部上面に開口する前記血液流入ポートの基部開口部の周縁部に固定されており、かつ、前記軸部は、前記血液流入ポートの前記基部開口部の下方に位置している請求項2に記載の遠心式血液ポンプ。
  4. 前記軸部形成部の前記軸部は、前記血液流入ポートの中心軸の延長線上もしくはその付近に位置するものとなっている請求項1ないし3のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  5. 前記棒状フレームは、湾曲している請求項2ないし4のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  6. 前記複数の棒状フレームは、前記軸部を中心軸としてほぼ等角度となるように配置されている請求項2ないし5のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  7. 前記軸部および前記軸受部は、ピボット軸受機構を形成している請求項1ないし6のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  8. 前記軸部形成部は、前記複数の棒状フレームの端部に固定された環状部を備え、該環状部が、前記ハウジングの前記血液流入ポートの基部開口部の周縁部に固定されている請求項2ないし7のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  9. 前記インペラは、中央開口部と、該中央開口部と連通し、前記インペラの側部まで延びる複数の血液流路を有し、前記軸受部は、前記中央開口部の下方に位置している請求項1ないし8のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  10. 前記軸部および前記軸受部の前記凹部は、略半球形状となっており、かつ両者の半径はほぼ等しいものとなっている請求項1ないし9のいずれかに記載の遠心式血液ポンプ。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の遠心式血液ポンプと、前記インペラの前記磁性体を吸引するとともに該インペラを回転させるためのインペラ回転トルク発生手段とからなることを特徴とする遠心式血液ポンプ装置。
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