JP2007218423A - デファレンシャル装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ピニオンシャフトやピニオンギアのための特別な支持構造が不要であり、部材の加工に高い精度が必要なく、構造が簡単で、駆動トルクの配分比を低コストで設定できるデファレンシャル装置を提供する。
【解決手段】フェースギアの出力ギア5,7を平歯車の差動ギア3に対して異なった噛み合いピッチ円径(R1,R2)で噛み合わせた。
【選択図】図1

Description

この発明は、車両に用いられるデファレンシャル装置に関する。
特許文献1にベベルギア式のデファレンシャル装置が記載されている。このデファレンシャル装置は、一対のサイドギアがピニオンギアに対して同一のピッチ円径で噛み合っており、左右の車輪に等しい駆動トルクを配分する等トルク配分比型のデファレンシャル装置である。
ベベルギア式デファレンシャル装置をセンターデフ(原動機の駆動力を前後輪に配分するデファレンシャル装置)に用い、さらに、駆動力を前輪と後輪に対して異なったトルクで配分(不等トルク配分比)するためには、一側サイドギアと他側サイドギアにピニオンギアに対する異なった噛み合いピッチ円径を与える必要がある。
従来は、ピニオンギアを支持するピニオンシャフトをデファレンシャル装置の回転軸に対して、直角ではなく、傾斜して配置することによりサイドギアとピニオンギアとの噛み合いピッチ円径を変えていた。
特開平1−275934号公報
しかし、ピニオンシャフトを傾斜して配置する(取り付ける)には、例えば、ピニオンシャフトを傾斜した状態で支持するためにデフケース上に特別な支持構造を設け、あるいは、傾斜した状態のピニオンシャフト上でピニオンギア支持するために特別な支持構造を設け、あるいは、スラストブロックでピニオンシャフトの内側端部を支持する必要があり、このような場合は、支持部や支持部材の加工に高い精度が要求されると共に、ピニオンギアとサイドギアの歯切りも難しくなり、また、デファレンシャル装置の構造が複雑になり、これらの理由によるコストの上昇を伴う。
そこで、この発明は、ピニオンシャフトやピニオンギアのための特別な支持構造が不要であり、部材などの加工に高い精度が必要なく、構造が簡単で、駆動トルクの配分比を低コストで設定できるデファレンシャル装置の提供を目的とする。
請求項1のデファレンシャル装置は、原動機からの駆動トルクを差動ギアから一対の出力ギアを介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、前記差動ギアに対する前記一対の出力ギアの噛み合いピッチ円径を、前記車輪に対する駆動トルクの配分比に応じて設定可能にしたことを特徴とする。
請求項2のデファレンシャル装置は、原動機からの駆動トルクを差動ギアから一対の出力ギアを介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、前記一対の出力ギアが、前記差動ギアと互いに異なった噛み合いピッチ円径で噛み合っていることを特徴とする。
請求項3のデファレンシャル装置は、原動機からの駆動トルクを差動ギアから一対の出力ギアを介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、前記差動ギアが、前記一対の出力ギアと互いに異なった噛み合いピッチ円径で噛み合っていることを特徴とする。
請求項4のデファレンシャル装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたデファレンシャル装置であって、前記一対の出力ギアにフェースギアを用い、前記差動ギアに平歯車を用いたことを特徴とする。
請求項5のデファレンシャル装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたデファレンシャル装置であって、前記一対の出力ギアの歯幅が、軸方向にオーバーラップしていることを特徴とする。
請求項6のデファレンシャル装置は、請求項5に記載されたデファレンシャル装置であって、前記一対の出力ギアの歯幅の前記軸方向オーバーラップ部が、前記差動ギアの歯幅の中央部分に位置していることを特徴とする。
請求項7のデファレンシャル装置は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたデファレンシャル装置であって、原動機からの駆動トルクによって前記差動ギアを公転させる収容部材と前記一対の出力ギアとの間に、前記出力ギアの噛み合い反力を受けて生じた摺動抵抗により前記車輪間の差動を制限する摺動部材が配置されていることを特徴とする。
請求項1のデファレンシャル装置は、一対の出力ギアの差動ギアに対する噛み合いピッチ円径を車輪に対する駆動トルクの配分比に応じて設定可能に構成したから、例えば、センターデフに用いて、一側車輪に伝達する駆動トルクを大きくし、他側車輪に伝達する駆動トルクをそれより小さくすることも、あるいは、両車輪に伝達する駆動トルクを等しくして車輪デフ(前輪側や後輪側に配置されるデファレンシャル装置)に用いることもできる。
請求項2のデファレンシャル装置は、一対の出力ギアを異なった噛み合いピッチ円径で差動ギアと噛み合わせたことにより、一側車輪(前輪)と他側車輪(後輪)に異なった駆動トルクを伝達するように構成されたセンターデフに最適であり、このようなセンターデフを極めて低コストで実施することができる。
また、各出力ギアを互いに異なった噛み合いピッチ円径で差動ギアと噛み合わせることによって上記の効果を得ているから、ピニオンシャフトを傾斜配置する従来例と異なって、デファレンシャル装置を収容する収容部材上や、差動ギアの支持軸上に特別な支持構造が不要で構造が簡単で、コストが大幅に低減される。
請求項3のデファレンシャル装置は、差動ギアを一対の出力ギアと互いに異なった噛み合いピッチ円径で噛み合わせたことにより、差動ギアが2種類の諸元を持つ歯部を有している。従って、差動ギアが1種類の諸元を持つ歯部を有している場合に比べ、差動ギアと一対の出力ギアとの噛み合いピッチ円径を全体的にコンパクトにすることができる。
また、差動ギアを一対の出力ギアと互いに異なった噛み合いピッチ円径で噛み合わせたことにより、差動ギアの歯部を一対の出力ギアに合わせて形成すれば良く、デファレンシャル装置全体の設定の汎用性を向上することができる。
請求項4のデファレンシャル装置は、一対の出力ギアにフェースギアを用い、差動ギアに平歯車を用いたこの構成では、差動ギアの歯幅を広くするだけで出力ギアと差動ギアとの噛み合いピッチ円径を容易に変えることが可能になるから、低コストで上記の効果が得られる。
請求項5のデファレンシャル装置は、両出力ギアの歯幅を軸方向にオーバーラップ(歯幅の軸方向投影をオーバーラップ)させ、差動ギアに対する噛み合い部を軸方向にオーバーラップさせたこの構成では、差動ギアに対する転倒トルクがそれだけ低減され、各ギアの噛み合いが正常な状態に保たれるから、各ギアの強度(耐久性)が大幅に向上する。
請求項6のデファレンシャル装置は、両出力ギアの歯幅間の軸方向オーバーラップ部を差動ギアの歯幅の中央部分に位置させたこの構成では、差動ギアの転倒トルクがさらに低減され、各ギアの噛み合い状態及び強度(耐久性)がさらに向上する。
請求項7のデファレンシャル装置は、収容部材と出力ギアとの間に配置した摺動部材に生じる摩擦トルクによって差動制限力が得られ、特に、各出力ギアを異なった噛み合いピッチ円径で差動ギアと噛み合わせて異なった駆動トルクを配分する上記の構成では、各摺動部材で生じる摩擦トルク(摩擦力×摩擦の径)が異なるから、一側車輪と他側車輪の間で異なった差動制限力を容易に得ることができる。
<第一実施形態>
図1と図2によって第一実施形態のセンターデフ1(デファレンシャル装置)を説明する。
[センターデフ1の特徴]
センターデフ1は、エンジン(原動機)からの駆動トルクを平歯車のピニオンギア3(差動ギア)から一対のサイドギア5,7(出力ギア)を介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、ピニオンギア3に対するサイドギア5,7の噛み合いピッチ円径(R1,R2)を、車輪に対する駆動トルクの配分比に応じて設定可能にしたことを特徴とする。
また、センターデフ1は、エンジン(原動機)からの駆動トルクを平歯車のピニオンギア3(差動ギア)から一対のサイドギア5,7(出力ギア)を介して一側車輪(前輪)と他側車輪(後輪)に配分するデファレンシャル装置であって、サイドギア5,7が、ピニオンギア3と互いに異なった噛み合いピッチ円径(R1,R2:R1>R2)で噛み合っており、
サイドギア5,7にフェースギアを用い、ピニオンギア3に平歯車を用い、
サイドギア5,7の歯幅(W1,W2)が、軸方向にオーバーラップして(歯幅W1,W2の軸方向投影が互いにオーバーラップして)おり、
サイドギア5,7の歯幅(W1,W2)の軸方向オーバーラップ部OLが、ピニオンギア3の歯幅(W3)の中央部分に位置しており、
ピニオンギア3が、エンジンからの駆動トルクによって回転するデフケース9(収容部材)と共に一体に公転し、このデフケース9とサイドギア5,7との間に、サイドギア5,7の噛み合い反力を受けて生じる摺動抵抗により前後輪間の差動を制限する大径のワッシャ11(摺動部材)と小径のワッシャ13(摺動部材)が配置されていることを特徴とする。
[センターデフ1の構成]
ピニオンギア3は合計2箇が、ピニオンシャフト15の両端部にそれぞれ1個ずつ支持されており、その歯幅(W3)は大径のサイドギア5と小径のサイドギア7とそれぞれ噛み合うために充分な広さを持っている。ピニオンシャフト15はデフケース9の貫通孔17,19を貫通して組み付けられ、スプリングピン21によって抜け止めされている。図1のように、ピニオンシャフト15はデフケース9の回転軸23に対し直角に配置されている。
サイドギア5,7は支持部25,25でデフケース9に支持されており、大径の噛み合いピッチ円径R1でピニオンギア3と噛み合ったサイドギア5はスプライン連結された車軸を介して前後輪の一方に連結され、小径の噛み合いピッチ円径R2でピニオンギア3と噛み合ったサイドギア7はスプライン連結された車軸を介して前後輪の他方に連結されている。デフケース9にはピニオンギア3と摺動する支持部27,27が形成され、ピニオンギア3の遠心力などを受けている。
また、サイドギア5,7とピニオンギア3の各歯面にはクラウニングや微少な面取りが施されており、両ギア組(サイドギア5とピニオンギア3及びサイドギア7とピニオンギア3)での振動や騒音の発生が軽減されていると共に、互いの間で伝搬する振動や騒音が軽減されている。ピニオンギア3とサイドギア5,7は歯切りや鍛造などで加工されている。
デフケース9を回転させるエンジンの駆動力はピニオンシャフト15とピニオンギア3からサイドギア5,7を通り、車軸を介して前後輪に配分される。
このとき、上記のようにサイドギア5,7の噛み合い反力によりワッシャ11,13がデフケース9に押圧されて生じた差動制限トルク(摺動抵抗)により、前後輪間で差動回転が制限され、車両の走行性や安定性などが向上する。また、このようにワッシャ11,13を異径にすれば前輪側と後輪側の間で差動制限トルクを変えることができるから、種々の車両において前後輪間の差動制限トルク比を調整し、走行性や安定性などを高めることが可能である。
[センターデフ1の効果]
センターデフ1は、サイドギア5,7のピニオンギア3に対する噛み合いピッチ円径(R1,R2)を前後輪に対する所望の駆動トルク配分比に応じて設定可能にしたから、上記のように、前後輪の一方に伝達する駆動トルクを大きくし、他方に伝達する駆動トルクを小さくすることも、あるいは、両車輪に伝達する駆動トルクを等しくして車輪デフ(フロントデフやリヤデフ)に用いることもできる。
また、センターデフ1は、サイドギア5の噛み合いピッチ円径R1を大きくし、サイドギア7の噛み合いピッチ円径R2を小さくしたことにより、前輪と後輪に異なった駆動トルクを伝達できると共に、このような構成を極めて低コストで実施できる。
また、サイドギア5,7を異なったピッチ円径R1,R2でピニオンギア3と噛み合わせるだけで上記の効果を得ているから、ピニオンシャフトを傾斜配置する従来例と異なって、ピニオンシャフト15やピニオンギア3のための特別な支持構造が不要であり、部材の加工やギアの歯切りに高い精度が必要なく、構造が簡単で、コストが大幅に低減されている。
また、ピニオンギア3に平歯車を用い、サイドギア5,7にフェースギアを用いたことにより、ピニオンギア3の歯幅W3を広くするだけでサイドギア5,7の噛み合いピッチ円径R1,R2を容易に変えることが可能であり、極めて低コストに上記の効果が得られる。
また、サイドギア5,7の歯幅W1,W2の軸方向投影をオーバーラップさせ、さらに、オーバーラップ部OLでピニオンギア3との噛み合い部を軸方向にオーバーラップさせたことによって、ピニオンギア3の転倒トルクが低減され、ピニオンギア3とサイドギア5,7の噛み合いが正常な状態に保たれるから、各ギア3,5,7の強度(耐久性)が大幅に向上している。
また、このオーバーラップ部OLをピニオンギア3の歯幅W3の中央部分に位置させたことによってピニオンギア3の転倒トルクがさらに低減され、各ギア3,5,7の噛み合い状態及び強度(耐久性)がさらに向上する。
また、デフケース9とサイドギア5,7の間に配置した異径のワッシャ11,13によって前輪側と後輪側の間で異なった差動制限力が容易に得られる。
<第二実施形態>
図3〜図5によって第二実施形態のセンターデフ101(デファレンシャル装置)を説明する。
[センターデフ101の特徴]
センターデフ101は、エンジン(原動機)からの駆動トルクをピニオンギア103(差動ギア)から一対のサイドギア105,107(出力ギア)を介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、ピニオンギア103が、一対のサイドギア105,107と互いに異なった噛み合いピッチ円径(R3,R4:R3>R4)で噛み合っている。
[センターデフ101の構成]
図3に示すように、ピニオンギア103は、ピニオンシャフト109の両端部にそれぞれ1個ずつ合計2個が支持されている。このピニオンギア103は、2つの歯部111,113を有している。歯部111は大径のサイドギア105と、歯部113は小径のサイドギア107とそれぞれ噛み合っている。なお、ピニオンギア103は、1つの基体に対して歯切りや鍛造などによって2種類の歯部111,113を形成しても良く、1つの基体に対して1種類の歯部111を形成し、別体で1つの基体に対して1種類の歯部113を形成し、それぞれを接合してピニオンギア103を形成しても良い。ピニオンシャフト109は、デフケース115の貫通孔117,119を貫通して組み付けられ、スプリングピン121によって抜け止めされている。
一対のサイドギア105,107はデフケース115に形成された支持部123,125で支持されている。大径のサイドギア105は、噛み合いピッチ円径R3でピニオンギア103の歯部111と噛み合っている。また、大径のサイドギア105とデフケース115との間には、大径のワッシャ127が設けられている。小径のサイドギア107は、噛み合いピッチ円径R4でピニオンギア103の歯部113と噛み合っている。また、小径のサイドギア113とデフケース115との間には、小径のワッシャ129が設けられている。
このようなセンターデフ101は、デフケース115を回転させるエンジンの駆動力はピニオンシャフト109とピニオンギア103からサイドギア105,107を通り、車軸を介して前後輪に配分される。
このとき、サイドギア105,107の噛み合い反力によりワッシャ127,129がデフケース115に押圧されて生じた差動制限トルク(摺動抵抗)により、前後輪間で差動回転が制限され、車両の走行性や安定性などが向上する。また、ワッシャ127,129を異径にすることにより、前輪側と後輪側の間で差動制限トルクを変えることができ、種々の車両において前後輪間の差動制限トルク比を調整して走行性や安定性などを高めることが可能である。
ここで、噛み合いピッチ円径R3,R4のとき、一対のサイドギア105,107及びピニオンギア103の歯部111,113の諸元は次のように設定される。
大径のサイドギア105を、モジュール:ms1、歯数:zs1、ピッチ円径:ds1とし、小径のサイドギア107を、モジュール:ms2、歯数:zs2、ピッチ円径:ds2とする。ここで、ギア比を同等とするため、歯数zs1,zs2を同等(zs)とした場合のサイドギア105,107の諸元は、ds1=ms1×zs,ds2=ms2×zsとなる。
ピニオンギア103の歯部111を、モジュール:mp1、歯数:zp1、ピッチ円径:dp1とし、ピニオンギア103の歯部113を、モジュール:mp2、歯数:zp2、ピッチ円径:dp2とする。ここで、ギア比を同等とするため、歯数zp1,zp2を同等(zp)とした場合のピニオンギア103の歯部111,113の諸元は、dp1=mp1×zp,dp2=mp2×zpとなる。
このように設定されたセンターデフ101は、例えば、図4、図5に示すような車両の動力系に適用される。
図4は、横置きエンジン201用のセンターデフ101が搭載された車両の動力系である。この車両の動力系は、横置きのエンジン201及びトランスミッション203と、センターデフ101と、トランスファ205と、フロントデフ207と、前車軸209,211と、前輪213,215と、後輪側プロペラシャフト217と、リヤデフ219と、後車軸221,223と、後輪225,227などから構成されている。
エンジン201の駆動力は、トランスミッション203内のセンターデフ101からトランスファ205内のフロントデフ207に伝達され、前車軸209,211から前輪213,215に配分されると共に、センターデフ101からフロントデフ207と後輪側プロペラシャフト217とを介してリヤデフ219に伝達され、後車軸221,223から後輪225,227に配分される。このエンジン201からの駆動トルクの配分は、センターデフ101によって成されている。
このセンターデフ101では、小径のサイドギア105がフロントデフ207のインナケース229に連結され、大径のサイドギア105がフロントデフ207のアウタケース231に連結されている。そして、デフケース115に入力された駆動トルクは、ピニオンギア103を介してサイドギア105,107に伝達される。小径のサイドギア107に入力された駆動トルクは、フロントデフ207のインナケース229を介して前輪213,215側に配分される。大径のサイドギア105に入力された駆動トルクは、フロントデフ207のアウタケース231から後輪側プロペラシャフト217を介してリヤデフ219に伝達され、後輪225,227側に配分される。
このようなセンターデフ101において、一対のサイドギア105,107とピニオンギア103の歯部111,113との噛み合いピッチ円径R3,R4は、R3>R4となっているので、大径のサイドギア105に入力される駆動トルクの方が小径のサイドギア107に入力される駆動トルクよりも大きくなっている。このため、前輪側と後輪側とに配分される駆動トルクの関係は、後輪側>前輪側となっている。
図5は、縦置きエンジン301用のセンターデフ101が搭載された車両の動力系である。この車両の動力系は、縦置きのエンジン301及びトランスミッション303と、トランスファ305と、センターデフ101と、フロントデフ307と、前車軸309,311と、前輪313,315と、後輪側プロペラシャフト317と、リヤデフ319と、後車軸321,323と、後輪325,327などから構成されている。
エンジン301の駆動力は、トランスファ305内のセンターデフ101からフロントデフ307に伝達され、前車軸309,311から前輪313,315に配分されると共に、センターデフ101から後輪側プロペラシャフト317を介してリヤデフ319に伝達され、後車軸321,323から後輪325,327に配分される。
このセンターデフ101では、小径のサイドギア107がフロントデフ307側の動力伝達機構329に連結され、大径のサイドギア105が後輪側プロペラシャフト317側に連結されている。そして、デフケース115に入力された駆動トルクは、ピニオンギア103を介してサイドギア105,107に伝達される。小径のサイドギア107に入力された駆動トルクは、動力伝達機構329からフロントデフ307を介して前輪313,315側に配分される。大径のサイドギア105に入力された駆動トルクは、後輪側プロペラシャフト317を介してリヤデフ319に伝達され、後輪325,327側に配分される。
このようなセンターデフ101において、一対のサイドギア105,107とピニオンギア103の歯部111,113との噛み合いピッチ円径R3,R4は、R3>R4となっているので、大径のサイドギア105に入力される駆動トルクの方が小径のサイドギア107に入力される駆動トルクよりも大きくなっている。このため、前輪側と後輪側とに配分される駆動トルクの関係は、後輪側>前輪側となっている。
なお、センターデフ101では、前輪側と後輪側とに配分される駆動トルクの関係を後輪側>前輪側としたが、後輪側<前輪側としても良い。この場合、一対のサイドギア105,107とピニオンギア103の歯部111,113との噛み合いピッチ円径R3,R4がR3<R4となるように、一対のサイドギア105,107及びピニオンギア103の歯部111,113の諸元を設定すれば良い。すなわち、前輪側と後輪側とに配分させる駆動トルクの調整を、一対のサイドギア及びピニオンギアの諸元の設定によって行えば良い。
また、センターデフ101及びフロントデフ207では、ピニオンギアとサイドギアのギア組がフェースギアとなっている。このため、ピニオンシャフトを傾斜配置させる必要がなく、ピニオンシャフトやピニオンギアのための特別な支持構造が不要であり、部材の加工やギアの歯切りに高い精度が必要なく、構造が簡単で、コストが大幅に低減されている。
[センターデフ101の効果]
ピニオンギア103を一対のサイドギア105,107と互いに異なった噛み合いピッチ円径R3,R4で噛み合わせたことにより、ピニオンギア103が2種類の諸元を持つ歯部111,113を有している。このため、噛み合うことのない余分な歯部をピニオンギア103に形成する必要がなく、ピニオンギア103と一対のサイドギア105,107とを必要最低限の噛み合いピッチ円径R3,R4で噛み合わすことができる。従って、ピニオンギアが1種類の諸元を持つ歯部を有している場合(例えば、第1実施形態のピニオンギア3)に比べ、ピニオンギア103と一対のサイドギア105,107との噛み合いピッチ円径を全体的にコンパクトにすることができる。
また、ピニオンギア103の歯部111,113を一対のサイドギア105,107に合わせて形成しているので、例えば、ピニオンギアとサイドギアとのギア組がフェースギア式だけでなく、ベベルギア式などにも適用することができ、デファレンシャル装置全体の設定の汎用性を向上することができる。
[本発明の範囲に含まれる他の態様]
なお、本発明のデファレンシャル装置は、上記実施形態と異なって、一対の出力ギアの差動ギアに対する噛み合いピッチ円径を等しくしてもよく、本発明によれば、等トルク配分比構成と不等トルク配分比構成の両方を容易に選択することができる。
また、請求項5の構成と異なって、両出力ギアの歯幅を軸方向にオーバーラップさせなくてもよい。オーバーラップさせない構成では駆動トルクの配分比をさらに大きく設定することができる。
また、一対の出力軸間で不等トルク配分を得るには一対の出力ギヤの互いのピッチ径を異ならせるのではなく、互いのピッチ径が仮に同じであっても一対の出力ギヤのそれぞれの歯数を異ならせても良い。この場合には一つの差動ギヤに噛み合う一対の出力ギヤは互いにギヤ諸元比、転位係数を変えることで成立する。
第一実施形態のセンターデフを示す断面図である。 図1のA−A断面図である。 第二実施形態のセンターデフを示す断面図である。 横置きエンジンにおける車両の動力系を示す概略図である。 縦置きエンジンにおける車両の動力系を示す概略図である。
符号の説明
1,101 センターデフ(デファレンシャル装置)
3,103 ピニオンギア(差動ギア:平歯車)
5,7,105,107 サイドギア(出力ギア:フェースギア)
9,115 デフケース(収容部材)
11,13,127,129 ワッシャ(摺動部材)
R1,R2,R3,R4 噛み合いピッチ円径
W1,W2 サイドギア5,7の歯幅
W3 ピニオンギア3の歯幅

Claims (7)

  1. 原動機からの駆動トルクを差動ギアから一対の出力ギアを介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、
    前記差動ギアに対する前記一対の出力ギアの噛み合いピッチ円径を、前記車輪に対する駆動トルクの配分比に応じて設定可能にしたことを特徴とするデファレンシャル装置。
  2. 原動機からの駆動トルクを差動ギアから一対の出力ギアを介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、
    前記一対の出力ギアが、前記差動ギアと互いに異なった噛み合いピッチ円径で噛み合っていることを特徴とするデファレンシャル装置。
  3. 原動機からの駆動トルクを差動ギアから一対の出力ギアを介して車輪側に配分するデファレンシャル装置であって、
    前記差動ギアが、前記一対の出力ギアと互いに異なった噛み合いピッチ円径で噛み合っていることを特徴とするデファレンシャル装置。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたデファレンシャル装置であって、
    前記一対の出力ギアにフェースギアを用い、前記差動ギアに平歯車を用いたことを特徴とするデファレンシャル装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたデファレンシャル装置であって、
    前記一対の出力ギアの歯幅が、軸方向にオーバーラップしていることを特徴とするデファレンシャル装置。
  6. 請求項5に記載されたデファレンシャル装置であって、
    前記一対の出力ギアの歯幅の前記軸方向オーバーラップ部が、前記差動ギアの歯幅の中央部分に位置していることを特徴とするデファレンシャル装置。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたデファレンシャル装置であって、
    原動機からの駆動トルクによって前記差動ギアを公転させる収容部材と前記一対の出力ギアとの間に、前記出力ギアの噛み合い反力を受けて生じた摺動抵抗により前記車輪間の差動を制限する摺動部材が配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
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