JP2007217312A - ナフトジチオフェン化合物、ナフトジチオフェンオリゴマー化合物、および有機発光素子 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ナフトジチオフェン化合物、ナフトジチオフェンオリゴマー化合物、およびこれらの化合物を用いた有機発光素子、より詳しくは電荷注入型発光素子に関する。
有機発光素子は、陽極と陰極間に発光性有機化合物を含む薄膜を挟持させて、各電極から電子およびホール(正孔)を注入することにより、発光性化合物の励起子を生成させ、この励起子が基底状態にもどる際に放射される光を利用する素子である。
有機発光素子を、各種発光装置に応用して望ましい低消費電力性、高輝度性を得るためには、更なる高輝度の光出力あるいは高効率の光出力が必要である。
近年、重原子効果による三重項励起状態から基底状態への発光遷移確率を増強した三重項発材料(燐光材料)、具体的にはイリジウム錯体などを用いての高発光効率の有機発光素子が報告されている(非特許文献1)。イリジウム錯体では、イリジウム原子の重原子効果のために電荷再結合により生成する一重項励起状態を効率的に三重項に変換させることができるために、理論上では内部量子効率100%を達成可能である。
一方、イリジウム錯体を増感剤として、直接または間接的にエネルギー移動を通して蛍光色素から発光させて高発光効率を得るという報告がある。
非特許文献2では、イリジウム錯体を増感剤として用い、イリジウム錯体の三重項エネルギーを直接的に蛍光色素の励起一重項状態へエネルギー移動させることで、生成したイリジウム錯体の三重項状態を蛍光材料の励起一重項状態に変換し高効率化を図っている。
また、イリジウム錯体を上記と同様に増感剤としてイリジウム錯体の三重項エネルギーをまず蛍光色素の励起三重項状態にエネルギー移動させたのち、逆項間交差機構を利用して蛍光に変換することで有機発光素子の高効率発光を得るとしている(特許文献1)。
一般的に低分子系の有機材料を用いた有機発光素子において、電荷注入励起により生成する励起種である励起一重項種と励起三重項種は、それぞれ1:3の比率で生成する。重原子を分子内に持つイリジウム錯体などの燐光材料は、重原子効果によって効率的に一重項状態を三重項状態に変換することで内部量子収率は100%に達する。近年は有機発光素子の高効率化のために発光材料開発は燐光材料が主体となってきている。
しかし、有機ELディスプレイの実用化において、燐光発光を用いて有機発光素子のRGB全色の高効率化を図る上で燐光材料に関わる問題として、次の4点を挙げることができる。
1)常温で高効率に燐光発光する物質は稀であり、必要な発光色のIr錯体等を合成する上で材料の自由度が少ない
2)イリジウム錯体等の材料は原材料が高価である。
3)高輝度領域では三重項−三重項消滅のために素子の発光効率が低下する。
4)高発光効率のためには三重項励起状態からエネルギー散逸を防ぐ必要があるために、燐光材料よりも高い三重項エネルギー準位を持つホスト、及び周辺材料が必要になる(たとえば非特許文献3)。
1)常温で高効率に燐光発光する物質は稀であり、必要な発光色のIr錯体等を合成する上で材料の自由度が少ない
2)イリジウム錯体等の材料は原材料が高価である。
3)高輝度領域では三重項−三重項消滅のために素子の発光効率が低下する。
4)高発光効率のためには三重項励起状態からエネルギー散逸を防ぐ必要があるために、燐光材料よりも高い三重項エネルギー準位を持つホスト、及び周辺材料が必要になる(たとえば非特許文献3)。
こうした問題点を鑑みると、一重項発光材料、即ち蛍光材料を用いた有機発光素子での内部量子効率限界25%を越えることは、高発光効率の有機発光素子のための材料開発を進めていく上での燐光材料以外の選択子として考慮すべき課題といえる。
非特許文献2と特許文献1に示したようなイリジウム錯体を三重項増感剤として使うことは、蛍光材料の近傍にイリジウム錯体などの重原子が近傍に存在することで、該蛍光材料が外部重原子効果を受け蛍光消光する可能性を常に持つため好ましいとはいえない。
したがって、蛍光材料を用いた有機発光素子において、イリジウムのような重原子を用いることなく励起三重項種を励起一重項種に変換することが、発光効率向上にとって重要であると考えられる。
本発明は、極めて発光効率が高く、しかも、プロセス及び設計の自由度が広い新規有機発光材料を提供することを目的とする。
また、該新規有機発光材料を用いて内部量子効率25%を越える高効率の有機発光素子を提供することを目的とする。
また、種々の発光色を呈する有機発光素子を提供することを目的とする。
さらには、蒸着プロセスだけでなく塗布プロセスでも製造可能で高発光効率を有する有機発光素子を提供することを目的とする。
即ち、本発明のナフトジチオフェン化合物は、下記一般式[1]で示されることを特徴とする。
(R1乃至R6は水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のシクロアルキル基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のシクロアルケニル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のヘテロ環基、置換または未置換の縮合多環芳香族基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または未置換のエステル基、置換または未置換のカルバモイル基を表す。
ただし、R1、R2の少なくとも一方は、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ピリジン、ビピリジンのいずれかを部分構造として含む置換基である。)
また、本発明のオリゴナフトジチオフェン化合物は、下記一般式[3]乃至[5]で示されることを特徴とする。
また、本発明のオリゴナフトジチオフェン化合物は、下記一般式[3]乃至[5]で示されることを特徴とする。
(R16乃至R21は水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のシクロアルキル基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のシクロアルケニル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のヘテロ環基、置換または未置換の縮合多環芳香族基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または未置換のエステル基、置換または未置換のカルバモイル基を表す。
ただし、ユニット間の接続部を成すR16及びR19はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子を除く前記置換基群のうちのいずれかに対応する2価の置換基である。
nは0以上20以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。)
(R22乃至R27は水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のシクロアルキル基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のシクロアルケニル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のヘテロ環基、置換または未置換の縮合多環芳香族基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または未置換のエステル基、置換または未置換のカルバモイル基を表す。
ただし、ユニット間の接続部を成すR23及びR26はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子を除く前記置換基群のうちのいずれかに対応する2価の置換基である。
nは0以上20以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。)
(R28乃至R33は水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のシクロアルキル基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のシクロアルケニル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のヘテロ環基、置換または未置換の縮合多環芳香族基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または未置換のエステル基、置換または未置換のカルバモイル基を表す。
ただし、ユニット間の接続部を成すR30及びR33はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子を除く前記置換基群のうちのいずれかに対応する2価の置換基である。
nは0以上20以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。)
本発明によれば、極めて発光効率が高く、しかも、プロセス及び設計の自由度が広い発光材料およびそれを用いた高発光効率の有機発光素子が実現できる。
まず、本発明のナフトジチオフェン化合物およびオリゴナフトジチオフェン化合物について説明する。
本発明のナフトジチオフェン化合物は、上記一般式[1]で示される。具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のナフトジチオフェン化合物は、R1、R2の少なくとも一方が、下記一般式[2]で示される化合物であることが好ましい。
(R7乃至R15はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のシクロアルキル基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のシクロアルケニル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のヘテロ環基、置換または未置換の縮合多環芳香族基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換または未置換のエステル基、置換または未置換のカルバモイル基を表す。
mは0以上10以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。)
具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
一般式[2]において、フルオレンユニットの繰り返し数mは0以上10以下の整数であるが、ユニット数によって発光波長を調整することが可能である。
本発明のナフトジチオフェン化合物の絶対分子量は特に規定するものではないが、分子量の増加と共に膜安定性も良好となるため、300以上5000以下であることが好ましい。また、分子量の増加と共に溶解度の低下が懸念されるが、例示化合物No.10,11のように、長鎖アルキル基やトリフルオロメチル基などを導入することで溶媒への溶解度を向上することができる。
次に、本発明のオリゴナフトジチオフェン化合物は、上記一般式[3]乃至[5]で示される。具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
本発明のオリゴナフトジチオフェン化合物の絶対分子量は特に規定するものではないが、分子量の増加と共に膜安定性が求められるため、300以上5000以下であることが好ましい。また、分子量の増加と共に溶解度の低下が懸念されるため、溶解度向上のために、メチル基より長鎖のアルキル基やトリフルオロメチル基などの置換基を導入することが好ましい。
一般式[1]乃至[5]における置換基R1乃至R33の具体的な例を次に示す。
置換あるいは未置換のアルキル基、アラルキル基としては、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、ter−ブチル基、オクチル基、2−エチル−オクチル基、ドデカン基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンタニル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基(2−プロペニル基)、1−プロペニル基、iso−プロペニル基、2−ブテニル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のシクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロへキセニル基、シクロヘキセジエニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、フェノキシ基、4−ブチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のアリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ter−ブチルフェニル基、4−オクチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、トリフェニルアミノ基等が挙げられる。
置換あるいは未置換の縮合多環芳香族基としては、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、カルバゾイル基、フェナントリル基、アントラニル基、ピレニル基、ピリジル基、ビピリジル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のヘテロ環基としては、ピリジル基、ビピリジル基、メチルピリジル基、チエニル基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、フリル基、キノリル基、カルバゾリル基、N−エチルカルバゾリル基等が挙げられる。
置換または未置換のアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ベンジルアミノ基、メチルベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、フェニルトリルアミノ基、ジトリルアミノ基等が挙げられる。
置換または未置換のカルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントライル基、トルオイル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のエステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、フェニルエステル基、フェニルエチルエステル基等が挙げられる。
置換あるいは未置換のカルバモイル基としては、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、イソプロカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、フェニルエチルカルバモイル基等が挙げられる。
これらのR1乃至R33が有しても良い置換基としては、上記のようなアルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、カルバモイル基、更にはハロゲン、ニトロ基、シアノ基等を挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
本発明のナフトジチオフェン化合物およびオリゴナフトジチオフェン化合物の合成法は特に制限されない。ナフトジチオフェンの合成法としては、例えばTakimiyaら(k.Takimiya,k.Kato,Y.Aso,F.Ogura,and T.Otsubo,Bull.Chem.Soc.Jpn.,75,1795−1805(2002))とErikら(Erik Wiklund and Rolf Hakansson,Chemica Scripta.,3,220−225(1973))を挙げることができる。
また、ナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物の合成法としては、例えばパラジウム触媒を用いたsuzuki coupling法(例えばChem.Rev.1995,95,2457−2483)、ニッケル触媒を用いたYamamoto法(例えばBull.Chem.Soc.Jpn.51,2091,1978)、アリールスズ化合物を用いて合成する方法(例えばJ.Org.Chem.,52,4296,1987)などが挙げられる。
次に、本発明の有機発光素子について説明する。
本発明の有機発光素子は、一対の電極と、該電極間に挟持された一または複数の有機化合物層を有する有機発光素子において、前記有機化合物層のうち少なくとも一層、好ましくは発光層が、上記本発明のナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする。
図1は、図3乃至図8に示す素子構成における発光領域に含まれる発光分子の励起状態のエネルギーダイアグラムであり、本発明の有機発光素子が高効率発光する原理を説明するものである。
本発明の有機発光素子で用いる発光は、図中に示される第一励起一重項(S1)状態から基底(S0)状態への蛍光発光である。素子に注入されたホールと電子は発光分子にて再結合し、高次の励起一重項(Sn)状態と高次の励起三重項(Tn)状態を生成する。その確率は励起一重項状態が25%、励起三重項状態が75%といわれている。そのうち生成されたSn状態は、S1状態までエネルギー緩和し、前述の蛍光発光に寄与する。一方、生成されたTn状態は、第二励起三重項(T2)状態にまでエネルギー緩和するが、その一部がT2状態からS1状態への遷移(逆項間交差)を起こし、S0状態への蛍光発光に寄与する。したがって、従来の蛍光発光素子では利用されなかった励起三重項状態を有効に発光に利用することができるため、高効率発光が可能となる。
逆項間交差を効率的に機能させるためには、第一励起一重項状態(S1)、第一励起三重項状態(T1)と第二励起三重項状態(T2)のエネルギー準位をそれぞれES1、ET1、ET2とすると、下記関係を満たすことが好ましい。
ET2>ES1>ET1、かつET2−ET1>0.7eV
上記のような逆項間交差過程は、通常の分子においてはほとんど起こらないことが知られている。これは、通常、生成された励起三重項状態は速やかにT1状態にまでエネルギー緩和するためであり、Kashaの法則として知られている(Kasha則に関しては、例えば「岩波講座 現代化学12 光と分子 下」、岩波書店、P.264に記載がある)。したがって、逆項間交差が起こるためには、(1)T2状態からS1状態への遷移速度が大きく、さらに、(2)T2状態からT1状態への緩和速度が遅い、という2つの条件が求められる。
前記(1)のT2状態からS1状態への逆項間交差の遷移速度を速めるためには、T2状態とS1状態のスピン軌道相互作用が大きいことが重要である。本発明においては、有機化合物層に含まれるナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物のいずれも、分子骨格中に比較的重い硫黄原子を含み、その内部重原子効果により上記のスピン軌道相互作用を増大させる。また、T2状態とS1状態のエネルギーが、ET2>ES1であり、かつ、エネルギー差があまり大きくないことが好ましく、0.4eV以下であることが望ましい。
前記(2)の通常分子に比してT2状態からT1状態への緩和速度を遅くするためには、T2状態とT1状態のエネルギー差が大きいことが好ましい(例えば「光化学I」、丸善出版社、P.77)。本発明においては、0.7eV以上であることが望ましい。
本発明のナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物における基本骨格であるナフトジチオフェンについて、密度汎関数法(使用ソフト:Gaussian98,計算手法:B3LYP/3−21G*)を用いて計算した。その結果、図2に示すように、逆項間交差を起こすのに理想的なエネルギー準位および、発光遷移強度を有している。
したがって、置換基の導入によってもこのナフトジチオフェン自身の逆項間交差を起こす性質は維持されると予想され、高発光効率が期待できる。
以上の原理から明らかなように、本発明の有機発光素子では、注入された電荷(電子とホール)は発光分子上で再結合し励起状態を生成することが望ましい。そのために、発光分子のHOMOエネルギー・LUMOエネルギーと、発光領域中の他の化合物のHOMOエネルギー・LUMOエネルギーの関係が、発光分子が電子および正孔のいずれかまたは両者をトラップするような関係となるようにすることが望ましい。
図3乃至図8に本発明の有機発光素子の構成例を示す。
図3は、本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。図3は、基板1上に、陽極2、発光層3及び陰極4を順次設けた構成のものである。発光材料自身でホール輸送能、電子輸送能及び発光性の性能を単一で有している場合や、それぞれの特性を有する化合物を混ぜて使う場合に有用である。
図4は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図4は、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。ホール輸送性かあるいは電子輸送性のいずれか、あるいは両方の機能を有している材料をそれぞれの層に用い、発光性の無い単なるホール輸送物質あるいは電子輸送物質と組み合わせて用いる場合に有用である。この場合、発光層は、ホール輸送層5あるいは電子輸送層6のいずれかから成る。
図5は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図5は、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、発光層3,電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。これは、キャリヤ輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した化合物を適時組み合わせて用いられ、極めて材料選択の自由度が増す。しかも、発光波長を異にする種々の化合物が使用できるため、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリヤあるいは励起子を有効に閉じこめて、発光効率の向上を図ることも可能になる。
図6は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図6は、図5に対して、ホール注入層7を陽極2側に挿入した構成であり、陽極2とホール輸送層5の密着性改善あるいはホールの注入性改善に効果があり、低電圧化に効果的である。
図7は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図7は、図5の各輸送層に代わって、ホール注入層7を陽極2側に、電子注入層9を陰極4側に挿入した構成であり、正孔と電子のそれぞれの注入性が改善されて、低電圧化に効果的である。
図8は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図8は、図5に対してホールあるいは励起子(エキシトン)が陰極4側に抜けることを阻害する層(ホール/エキシトンブロッキング層8)を、発光層3、電子輸送層6間に挿入した構成である。イオン化ポテンシャルの非常に高い化合物をホール/エキシトンブロッキング層8として用いる事により、発光効率の向上に効果的な構成である。
ただし、図3乃至図8はあくまで、ごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される、など多様な層構成をとることができる。
本発明のナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物を含有する層は、発光層または発光領域にある一層であることが好ましい。該層における本発明のナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物の含有量は0.01wt%以上50wt%以下であることが好ましい。他の有機化合物層の構成成分として、公知のホール輸送性化合物、電子輸送性化合物などを必要に応じて用いることができる。
本発明のナフトジチオフェン化合物、オリゴナフトジチオフェン化合物を含有する有機化合物層の形成方法は特に限定されず、用いる化合物の溶解度により、真空蒸着プロセス、塗布プロセスを適宜選択することができる。
塗布プロセスとしては、スピンコート法、インクジェット法、印刷法(オフセット、グラビア、凸、凹、スクリーン印刷など)、スプレー法、電子写真法を応用した液体現像法などが挙げられるが、これに限られるものではない。
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよく、例えば、金、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いてもよく、複数併用することもできる。
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよく、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体あるいは複数の合金として用いることができる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
本発明で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜などを用いて発色光をコントロールする事も可能である。
なお、作成した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属などをカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<合成例1>
合成例の一例として例示化合物1の合成を示す。
合成例の一例として例示化合物1の合成を示す。
(A1)4.7g、(A2)3.3g、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム0.22g、2M−炭酸ナトリウム水溶液20ml、エタノール10ml、トルエン20mlを200mlのナスフラスコに入れた。そして、窒素気流下6時間、加熱還流下で攪拌を行う。反応溶液を冷水100mlに注ぎ、トルエンを50ml加えて分液を行い有機層を単離後、濃縮した。得られた固形物をシリカゲルカラム(溶離液:トルエン)で精製し、ヘキサンで再結晶して例示化合物No.1の結晶5.3gを得た。
図9に、例示化合物No.1を濃度10-5M含むトルエン溶液の蛍光スペクトルを示す。発光ピークは575nm付近であり、鮮やかな橙色蛍光を示した。
<実施例1>
例示化合物No.1が逆項間交差を起こし得ることを確かめるべく、短パルスレーザーを用いた二段階励起発光測定を実施した。
例示化合物No.1が逆項間交差を起こし得ることを確かめるべく、短パルスレーザーを用いた二段階励起発光測定を実施した。
一段目の励起にはXeClエキシマーレーザー(LamdaPhysiks社製,波長:308nm,パルス幅:10ns,出力:5mJ/パルス)を、二段目の励起にはNd:YAGレーザー(Spectra Physics社製、GCR14,波長:532nm,パルス幅:15ns,出力:30mJ/パルス)の2台のナノ秒パルスレーザーを使用した。両励起パルス間の遅延間隔のためのタイミング調整には、デジタルディレイパルスジェネレーター(Stanford Research System社製、DG535)を用い、両励起パルス間には数百ナノ乃至10マイクロ秒の遅延を設定した。試料溶液から発せられる蛍光は、発光極大(575nm)に設定した分光器を通して分光したのち、光電子増倍管(浜松ホトニクス、R928)で検出した。
実験に用いた試料溶液には、例示化合物No.1を5.0×10-5M、三重項増感剤(ナフタレン)を10-4M程度とし、溶媒はアセトニトリルを用いた。三重項光増感を行った理由は、例示化合物No.1が非常に蛍光性が高いため、直接励起による三重項生成がほとんど認められなかったからである。ナフタレンの三重項生成の量子収率は約0.8で、T1準位のエネルギーは2.6eVである(例えばS.L.Murovら著による“Handbook of Photochemistry”のSection3に記載がある)。
図10に従って、短パルスレーザーを用いた二段階励起発光測定で逆項間交差の有無を調べる手法について説明する。まず一段目の励起パルス(308nm)で三重項増感剤であるナフタレンを励起する。励起されたナフタレンはその後1μ秒程度でナフタレンのT1状態を経て、例示化合物No.1のT1状態にエネルギー移動をし、例示化合物No.1のT1状態が生成する。ここに2段目の励起パルス(532nm)を入射すると、例示化合物No.1はT1状態からTn状態へと励起される。その後Tn状態からT2状態まで緩和が起こり、T2状態からT1状態への緩和と競合してS1状態へ逆項間交差するし蛍光を発する。本実験において、二段目の励起パルスの入射に伴った蛍光が観測された。
短パルスレーザーを用いた二段階励起発光測定から、図10にしたがって例示化合物No.1が逆項間交差による蛍光を発することが分かった。これにより、本発明の他の化合物も逆項間交差を起こし得ることが分かる。
<実施例2>
例示化合物No.1を発光材料として用い、図5に示す素子を作成し評価を行った。
例示化合物No.1を発光材料として用い、図5に示す素子を作成し評価を行った。
ガラス基板(基板1)上に、陽極2として酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、IPAで煮沸洗浄、乾燥をした。さらに、UV/オゾン洗浄した。
この基板上に、まず、ホール輸送層5として、以下に示すホール輸送材料を200Å真空蒸着した。次に、発光層3として、以下に示す発光層ホスト材料と、例示化合物No.1を4:1で共蒸着した層200Åを真空蒸着した。さらに、電子輸送層6として、以下に示す電子輸送材料(バソフェナントロリン)を400Å真空蒸着した。
次に、陰極4として、LiFを5Å、Al金属層膜を120nm、真空蒸着法で形成し、素子を作成した。
蒸着時の真空度は3×10-6Torrであり、有機層の成膜速度は1Å/s以上2Å/s以下、陰極の成膜速度は10Å/sである。
この様にして得られた素子のITO電極(陽極2)を正極、LiF/Al電極(陰極4)を負極にして、5mA/cm2で駆動したところ、約935cd/m2の橙色発光が得られた。
<実施例3乃至10、比較例1乃至3>
例示化合物No.1に代えて、表1に示す化合物を用いた他は実施例2と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。その結果を表1に示す。尚、比較化合物No.1乃至3は以下に示す化合物である。
例示化合物No.1に代えて、表1に示す化合物を用いた他は実施例2と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。その結果を表1に示す。尚、比較化合物No.1乃至3は以下に示す化合物である。
<実施例11>
例示化合物No.10を発光材料として用い、図7に示す素子を作成し評価を行った。
例示化合物No.10を発光材料として用い、図7に示す素子を作成し評価を行った。
実施例2と同様の透明導電性支持基板上に、まず、ホール注入層9として、以下に示すPEDOT/PSS(H.C.Stark社製,Baytron P AI 4083)を4000回転でスピンコートして390Åの薄膜を形成した。
次に発光層3として、以下に示すポリフルオレン(American Dye Source社製)と例示化合物No.10を全重量濃度1.0wt%、9:1で混合されたキシレン溶液を1000回転でスピンコートし800Åの膜を形成した。
さらに、電子注入層9として、0.2wt%Cs2CO3の2−エトキシエタノール溶液を4000回転でスピンコートして約20Åの薄膜を形成した。
次に、陰極4として、Alからなる蒸着材料を用いて金属層膜を120nm、真空蒸着法で形成し、素子を作成した。蒸着時の真空度は3×10-6Torrであり、成膜速度は2Å/s以上3Å/s以下である。
この様にして得られた素子のITO電極(陽極1)を正極、Al電極(陰極4)を負極にして、直流5mA/cm2で駆動したところ、約850cd/m2の橙色発光が得られた。
<実施例12乃至17、比較例4乃至6>
例示化合物No.10に代えて、表2に示すものを用いた他は実施例11と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。その結果を表2に示す。尚、比較化合物No.1乃至3は比較例1乃至3で使用した化合物と同様である。
例示化合物No.10に代えて、表2に示すものを用いた他は実施例11と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。その結果を表2に示す。尚、比較化合物No.1乃至3は比較例1乃至3で使用した化合物と同様である。
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホール/エキシトンブロック層
9 電子注入層
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホール/エキシトンブロック層
9 電子注入層
Claims (7)
- 下記一般式[1]で示されることを特徴とするナフトジチオフェン化合物。
ただし、R1、R2の少なくとも一方は、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ピリジン、ビピリジンのいずれかを部分構造として含む置換基である。) - 前記R1、R2の少なくとも一方が、下記一般式[2]で示されることを特徴とする請求項1に記載のナフトジチオフェン化合物。
mは0以上10以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。) - 下記一般式[3]で示されることを特徴とするオリゴナフトジチオフェン化合物。
ただし、ユニット間の接続部を成すR16及びR19はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子を除く前記置換基群のうちのいずれかに対応する2価の置換基である。
nは0以上20以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。) - 下記一般式[4]で示されることを特徴とするオリゴナフトジチオフェン化合物。
ただし、ユニット間の接続部を成すR23及びR26はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子を除く前記置換基群のうちのいずれかに対応する2価の置換基である。
nは0以上20以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。) - 下記一般式[5]で示されることを特徴とするオリゴナフトジチオフェン化合物。
ただし、ユニット間の接続部を成すR30及びR33はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子を除く前記置換基群のうちのいずれかに対応する2価の置換基である。
nは0以上20以下の整数を表す。
また、繰り返し単位の芳香族ユニットは同一でも異なってもよい。) - 一対の電極と、該電極間に挟持された一または複数の有機化合物層を有する有機発光素子において、前記有機化合物層のうち少なくとも一層が請求項1または2に記載のナフトジチオフェン化合物の少なくとも一種、或いは請求項3乃至5のいずれかに記載のオリゴナフトジチオフェン化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする有機発光素子。
- 前記ナフトジチオフェン化合物或いはオリゴナフトジチオフェン化合物を含有する層が発光層であることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。
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-
2006
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