JP2007216770A - 車両用ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車体速度が遅くなったときに突発的な制動力が発生したような感覚をドライバに与えることを防止し、ブレーキフィーリングの向上を図る。
【解決手段】車体速度が小さくなるほど目標W/C圧の変化勾配よりも実際に発生させるW/C圧の変化勾配が小さくなるように、実際に発生させるW/C圧を設定する。例えば、車体速度が第1しきい値を超えているときには、目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧と1:1で対応する差圧量となるように、各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定する。そして、車体速度が第1しきい値以下になると目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧の変化勾配が小さくなるような差圧量を設定し、その差圧量となるように各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定する。
【選択図】図2
【解決手段】車体速度が小さくなるほど目標W/C圧の変化勾配よりも実際に発生させるW/C圧の変化勾配が小さくなるように、実際に発生させるW/C圧を設定する。例えば、車体速度が第1しきい値を超えているときには、目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧と1:1で対応する差圧量となるように、各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定する。そして、車体速度が第1しきい値以下になると目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧の変化勾配が小さくなるような差圧量を設定し、その差圧量となるように各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定する。
【選択図】図2
Description
本発明は、ポンプによる加圧によりホイールシリンダ(以下、W/Cという)に圧力(以下、W/C圧という)を発生させられる車両用ブレーキ制御装置に関するものである。
従来、特許文献1において、各車輪に対応して1つずつポンプを設けると共に、各配管系統毎に1つずつモータを設け、各モータによって各配管系統の2つのポンプを駆動するように構成したブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ制御装置が提案されている。
特開平10−203338号公報
上記のようなブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ制御装置では、ブレーキペダルの操作量と比例する値として目標W/C圧を求め、この目標W/C圧が得られるようにモータを駆動している。
しかしながら、車体速度がある程度大きなときにはブレーキペダルの操作量通りの目標W/C圧とすれば良いが、車体速度が遅くなったときにまでブレーキペダルの操作量通りの目標W/C圧を発生させると、制動力が掛かり過ぎてしまい、ドライバに対して突発的に制動力が発生したような感覚を与え、ブレーキフィーリングを悪化させることになる。
本発明は上記点に鑑みて、ブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ制御装置において、車体速度が遅くなったときに突発的な制動力が発生したような感覚をドライバに与えることを防止し、ブレーキフィーリングの向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、制御手段に、操作量センサに基づいてブレーキ操作部材が操作されたことを検出したときに、操作量センサにて検出された操作量に対応する目標ホイールシリンダ圧(P(n))を求める目標ホイールシリンダ圧演算部(100a)と、目標ホイールシリンダ圧の変化勾配(ΔP/ΔT)を演算する目標ホイールシリンダ圧変化勾配演算部(100b)と、車体速度の演算を行う車体速度演算部(100c)と、車体速度演算部で演算された車体速度に基づいて目標ホイールシリンダ圧を変化させることで実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定し、車体速度が小さくなるほど目標ホイールシリンダ圧の変化勾配よりも実際に発生させるホイールシリンダ圧の変化勾配が小さくなるように、実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定する実ホイールシリンダ圧設定部(100d)と、を備え、実際に発生させるホイールシリンダ圧に基づいて、第1〜第4リニア弁および第1、第2モータを駆動することを特徴としている。
このように、車体速度が小さくなるほど目標ホイールシリンダ圧の変化勾配よりも実際に発生させるホイールシリンダ圧の変化勾配が小さくなるように、実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定している。これにより、車体速度が遅いときに制動力が掛かり過ぎて大きな減速度が生じてしまうことがないため、ドライバに対して突発的に制動力が発生したという感覚を与えてしまうことを防止でき、ブレーキフィーリングの向上を図ることができる。
例えば、請求項2に示すように、実ホイールシリンダ圧設定部は、車体速度が第1しきい値を超えている場合には目標ホイールシリンダ圧をそのまま実際に発生させるホイールシリンダ圧として設定し、第1しきい値以下の場合に車体速度が小さくなるほど目標ホイールシリンダ圧の変化勾配よりも実際に発生させるホイールシリンダ圧の変化勾配が小さくなるように、実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定することができる。
請求項3に記載の発明では、実ホイールシリンダ圧設定部は、2つの前輪と2つの後輪それぞれに備えられる摩擦材の車体速度に対する摩擦係数の変化に対応して、車体速度が小さくなるほど目標ホイールシリンダ圧に対して実際に発生させるホイールシリンダ圧を小さく設定することを特徴としている。
このように、摩擦材の車体速度依存性を考慮して目標ホイールシリンダ圧を変化させることで実際に発生させるホイールシリンダ圧を求めている。これにより、摩擦材の速度依存性による影響を抑制することが可能となり、よりブレーキフィーリングを向上させることが可能となる。
例えば、請求項4に示すように、実ホイールシリンダ圧設定部は、車体速度が第2しきい値以下になったときにのみ、摩擦材の車体速度に対する摩擦係数の変化に対応して、車体速度が小さくなるほど目標ホイールシリンダ圧に対して実際に発生させるホイールシリンダ圧を小さく設定することができる。
請求項5に記載の発明では、第1〜第4リニア弁が発生させる差圧量が実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、第1〜第4リニア弁に対して流す電流値を演算するリニア弁出力演算部(100d)を有し、実ホイールシリンダ圧設定部は該リニア弁出力演算部に備えられていることを特徴としている。
このように、リニア弁出力演算部にて、第1〜第4リニア弁が発生させる差圧量が実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、第1〜第4リニア弁に対して流す電流値を求める。このような電流値の電流を第1〜第4リニア弁に流すことにより、実ホイールシリンダ圧設定部で設定したホイールシリンダ圧を発生させることができる。
具体的には、請求項6に示すように、リニア弁出力演算部は、第1〜第4リニア弁が発生させる差圧量が実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、第1〜第4リニア弁に対して流す電流のデューティ比を演算すれば良い。
請求項7に記載の発明では、第1、第2モータの回転数が実際に発生させるホイールシリンダと対応した値となるように、第1、第2モータに流す電流値を演算するモータ出力演算部を有し、実ホイールシリンダ圧設定部は該モータ出力演算部に備えられていることを特徴としている。
このように、モータ弁出力演算部にて、第1、第2モータの回転数が実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、第1、第2モータに対して流す電流値を求める。このような電流値の電流を第1、第2モータに流すことにより、実ホイールシリンダ圧設定部で設定したホイールシリンダ圧を発生させることができる。
具体的には、請求項8に示すように、モータ出力演算部は、第1、第2モータの回転数が実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、第1、第2モータに対して流す電流のデューティ比を演算すれば良い。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態を適用した車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を図1に示す。また、図2に、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の制御系を司るブレーキECU100の信号の入出力の関係を示す。以下、これらの図を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の構成について説明する。ここでは右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明する。
本発明の一実施形態を適用した車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を図1に示す。また、図2に、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の制御系を司るブレーキECU100の信号の入出力の関係を示す。以下、これらの図を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の構成について説明する。ここでは右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明する。
図1に示されるように、車両用ブレーキ制御装置には、上述したブレーキECU100(図2参照)に加えて、ブレーキペダル1、踏力センサ2、マスタシリンダ(以下、M/Cという)3、ストローク制御弁SCSS、ストロークシミュレータ4、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5、ホイールシリンダ(以下、W/Cという)6FL、6FR、6RL、6RRが備えられている。
ドライバによってブレーキ操作部材に相当するブレーキペダル1が踏み込まれると、ブレーキペダル1に加えられる踏力が踏力センサ2に入力され、踏力センサ2から加えられた踏力に応じた検出信号が出力されるように構成されている。この検出信号はブレーキECU100に入力され、ブレーキECU100でブレーキペダル1に加えられた踏力が検出される。なお、ここではブレーキ操作部材の操作量を検出するための操作量センサとして踏力センサ2を例に挙げているが、ストロークセンサ等であっても良い。また、ストロークセンサの検出信号や後述するM/C圧を検出するための圧力センサ17、18の検出信号に基づいてドライバによるブレーキペダル1の操作状態を検出できるようにしても構わない。
ブレーキペダル1には、加えられた踏力をM/C3に伝達するプッシュロッド等が接続されており、このプッシュロッド等が押されることでM/C3に備えられるプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられるようになっている。
M/C3には、プライマリ室3aとセカンダリ室3bを構成するプライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dが備えられ、これらがスプリング3eの弾性力を受けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれていないときには各ピストン3c、3dを押してブレーキペダル1を初期位置側に戻すように構成されている。
M/C3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bからそれぞれブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に伸びる管路A、Bが備えられている。
また、M/C3には、マスタリザーバ3fが備えられている。マスタリザーバ3fは、ブレーキペダル1が初期位置のときに、プライマリ室3aおよびセカンダリ室3bのそれぞれと図示しない通路を介して接続されるもので、M/C3内にブレーキ液を供給したり、M/C3内の余剰ブレーキ液を貯留する。
このマスタリザーバ3fからは、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて直接管路Cが延設されている。
ストロークシミュレータ4は、管路Bに繋がる管路Dに接続されており、セカンダリ室3b内のブレーキ液を収容する役割を果たす。管路Dには、管路Dの連通・遮断状態を制御できる常閉型の二位置弁により構成されたストローク制御弁SCSSが備えられ、このストローク制御弁SCSSにより、ストロークシミュレータ4へのブレーキ液の流動が制御できるように構成されている。なお、ここではストロークシミュレータ4を管路Dに接続しているが、管路Aに接続しても良い。
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5は、以下のように構成されている。
M/C3のプライマリ室3aと前輪FRに対応するW/C(前輪用第1W/C)6FRを接続するように、管路Aに繋げられる管路Eが備えられている。この管路Eには、第1常開弁SNO1が備えられている。第1常開弁SNO1は、非通電時には連通状態、通電時には遮断状態となる二位置弁であり、この第1常開弁SNO1によって管路Eの連通・遮断状態が制御される。
また、M/C3のセカンダリ室3bと前輪FLに対応するW/C(前輪用第2W/C)6FLを接続するように、管路Bが繋げられる管路Fが備えられている。この管路Fには、第2常開弁SNO2が備えられている。第2常開弁SNO2は、非通電時には連通状態、通電時には遮断状態となる二位置弁であり、この第2常開弁SNO2によって管路Fの連通・遮断状態が制御される。
また、マスタリザーバ3fから延設された管路Cが接続される管路Gが設けられている。この管路Gは、管路G1、G2、G3、G4という4本の管路に分岐して、上述した前輪FL、FRに対応するW/C6FL、6FR、および、後輪RL、RRに対応するW/C(後輪用第1、第2W/C)6RL、6RRに接続される。
各管路G1〜G4には、それぞれ1つずつポンプ(第1〜第4ポンプ)7、8、9、10が備えられている。各ポンプ7〜10は、例えば静寂性に有効なトロコイドポンプにより構成されている。ポンプ7〜10のうち、ポンプ7、8は、第1モータ11によって駆動され、ポンプ9、10は、第2モータ12によって駆動される。第1、第2モータ11、12としてどのようなモータを用いても良いが、立上りが早いブラシレスモータを用いると好ましい。
また、ポンプ7〜10のそれぞれには、並列的に調圧回路を構成する管路H1、H2、H3、H4が備えられている。
ポンプ7に対して並列的に接続された管路H1には、直列的に接続された第1常閉弁SWC1と第1リニア弁SLFRが備えられ、第1常閉弁SWC1がポンプ7の吸入ポート側(上流側)に第1リニア弁SLFRが吐出ポート側(下流側)に位置するように配置されている。つまり、第1常閉弁SWC1により、管路H1を通じてマスタリザーバ3f側へのブレーキ液の返流を制御できる構成とされている。
ポンプ8に対して並列的に接続された管路H2には、第2リニア弁SLRLが備えられている。
ポンプ9に対して並列的に接続された管路H3には、直列的に接続された第2常閉弁SWC2と第3リニア弁SLFLが備えられ、第2常閉弁SWC2がポンプ9の吸入ポート側(上流側)に第3リニア弁SLFLが吐出ポート側(下流側)に位置するように配置されるている。つまり、第2常閉弁SWC2により、管路H3を通じてマスタリザーバ3f側へのブレーキ液の返流を制御できる構成とされている。
ポンプ10に対して並列的に接続された管路H4には、第4リニア弁SLRRが備えられている。
そして、管路G1〜G4のうち、各ポンプ7〜10と各W/C6FR〜6RRの間に圧力センサ(第1〜第4圧力センサ)13、14、15、16が配置されることで、各W/C圧が検出できるように構成されていると共に、管路E、Fのうち第1、第2常開弁SNO1、SNO2よりも上流側(M/C3側)にも圧力センサ17、18が配置されることで、M/C3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bに発生しているM/C圧を検出できるように構成されている。そして、これら各圧力センサ13〜18の検出信号が図2に示すようにブレーキECU100に入力される。
さらに、前輪FRに対するW/C6FRを加圧するためのポンプ7の吐出ポートおよび前輪FLに対するW/C6FLを加圧するためのポンプ9の吐出ポートには、それぞれ、逆止弁20、21が備えられている。これら逆止弁20、21は、W/C6FR、6FL側からポンプ7、9側へのブレーキ液の流動を禁止するために備えられている。このような構造により、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5が構成されている。
このような車両用ブレーキ制御装置では、上述した管路A、管路Eを通じてプライマリ室3aとW/C6FRを繋ぐ油圧回路(第1補助管路)と、管路C、管路G、G1、G2を通じてマスタリザーバ3fとW/C6FR、6RLを繋ぐ油圧回路(主管路)、および、ポンプ7、8に並列的に接続された管路H1、H2の油圧回路(第1、第2調圧回路)が第1配管系統を構成するものとなる。
また、管路B、管路Fを通じてセカンダリ室3bとW/C6FRを繋ぐ油圧回路(第2補助管路)と、管路C、管路G、G3、G4を通じてマスタリザーバ3fとW/C6FL、6RRを繋ぐ油圧回路(主管路)、および、ポンプ9、10に並列的に接続された管路H3、H4の油圧回路(第3、第4調圧回路)が第2配管系統を構成するものとなる。
また、車両用ブレーキ制御装置には、図1および図2に示すように、各車輪FR〜RRの車輪速度を検出するための車輪速度センサ23FR、23RL、23FL、23RRが備えられ、これら各車輪速度センサ23FR〜23RRの検出信号がブレーキECU100に入力されるようになっている。
ブレーキECU100は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種処理を実行する。このブレーキECU100には、例えば、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12への電力供給ラインのON/OFFを制御する半導体スイッチング素子(図示せず)が備えられており、この半導体スイッチング素子のON/OFFを制御すること等により、電力供給のON/OFFや単位時間当たりに供給する電流値を制御できるようになっている。
具体的には、ブレーキECU100は、目標W/C圧演算部100a、目標W/C圧変化勾配演算部100b、車体速度演算部100c、リニア弁出力演算部100dおよびリニア弁出力調整部100e等を有して構成されている。
目標W/C圧演算部100aは、目標制動力を発生させるために必要となる目標W/C圧の演算を行うものである。具体的には、目標W/C圧演算部100aは、踏力センサ2の検出信号からブレーキ操作量に相当する踏力の物理値を求めたのち、それに相応した目標W/C圧を求める。このブレーキペダル1の操作量に対する目標W/C圧は、例えば単純な比例関係として示され、予め記憶しておいたブレーキペダル1の操作量−目標W/C圧の関係式もしくは関係を示すマップに基づいて求められる。
目標W/C圧変化勾配演算部100bは、目標W/C圧演算部100aの演算結果に基づいて目標W/C圧変化勾配を演算するものである。図3は、ブレーキ操作量に対する目標W/C圧と、その変化勾配の求め方を模式的に示した図である。この図に示すように、目標W/C圧変化勾配演算部100bは、目標W/C圧演算部100aで演算周期毎に求められた目標W/Cを利用して、前回の演算タイミングT(n−1)で演算された目標W/C圧P(n−1)と今回の演算タイミングT(n)で演算された目標W/C圧P(n)の差分ΔPを求め、その差分ΔPを演算間隔ΔT(=T(n)−T(n−1))で割った値(ΔP/ΔT)を目標W/C圧変化勾配としている。
車体速度演算部100cは、各車輪FR〜RRに備えられた車輪速度センサ23FR〜23RRからの検出信号に基づいて車両の車体速度を演算するものである。車体速度の演算手法は、周知な事項であるため、ここでは詳細については省略する。
リニア弁出力演算部100dは、目標W/C圧に応じたリニア弁出力、すなわち各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流の電流値を決めるためのもので、本実施形態の場合には、各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定することで単位時間当たりに流す電流の電流値を決めている。
具体的には、リニア弁出力演算部100dは、目標W/C圧の変化勾配に対して実際に発生させるW/C圧の変化勾配(つまり第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRの差圧の変化勾配)の車体速度に対する関係式もしくはその関係を示したマップを予め記憶しており、それに基づいて第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRの差圧量を設定し、設定した差圧量に対応するように上記デューティ比を設定する。
図4は、目標W/C圧の変化勾配に対して実際に発生させるW/C圧の変化勾配の比の車体速度に対する関係を示したマップである。この図に示されるように、車体速度が第1しきい値(例えば、10〜30km/h、ここでは30km/hとしてある)を超えていれば、目標W/C圧の変化勾配に対して実際に発生させるW/Cの変化勾配は1:1の関係となっており、目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧と1:1で対応する差圧量が求められる。これに対して、車体速度が第1のしきい値以下になると、目標W/C圧の変化勾配に対して実際に発生させるW/Cの変化勾配が小さくされる。このため、この場合には、目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧に対して所定の比(例えば0.5)を掛けた差圧量が設定される。
したがって、リニア弁出力演算部100dは、基本的には目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧に1:1で対応する差圧量に基づいて各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定する。そして、車体速度が第1しきい値以下になると、目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧の変化勾配が小さくなるような差圧量を設定し、その差圧量に基づいて各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定する。
なお、このようなリニア弁出力演算部100dでは、実際に発生させるW/C圧に相当する差圧量を設定し、この差圧量に対応した各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定することになる。このため、リニア弁出力演算部100dは、実際に発生させるW/C圧を演算する実W/C圧演算部を備えた構成に相当する。
リニア弁出力調整部100eは、リニア弁出力演算部100dの演算結果に基づいて、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流の調整を行うものである。例えば、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRへの電力供給ラインに備えられる半導体スイッチング素子のON/OFFを制御することで、単位時間当たりに供給する電流値を制御し、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRで発生させる差圧が設定された目標W/C圧に応じた値となるようにする。
また、ブレーキECU100は、リニア弁出力演算部100dでの演算結果に基づき、リニア弁出力調整部100eを介して第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRに流す電流の制御を行うのに加え、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2や第1、第2モータ11、12を駆動するための制御信号(制御電流)を出力することで、各W/C6FR〜6RRに対してW/C圧を発生させる。そして、ブレーキECU100は、各圧力センサ13〜18の検出信号からW/C圧およびM/C圧を求めることで、実際に発生させられている制動力(実制動力)をフィードバックし、目標制動力に近づけるようにする。
なお、ブレーキECU100や各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動するための制御信号の出力は、図示しない車載バッテリからの電力供給に基づいて行われる。
続いて、上記のように構成される車両用ブレーキ制御装置の動作について、通常ブレーキ時と車両用ブレーキ制御装置に異常が発生した場合(以下、異常時という)に分けて説明する。
図5は、通常ブレーキ時と異常時の各部の駆動状態を示した模式図である。なお、異常が発生したか否かに関しては、従来より行われているイニシャルチェックなどに基づいてブレーキECU100で判定され、一旦異常が発生するとそれが解除されるまでは異常時のブレーキ動作が行われることになる。以下、この図を参照して通常ブレーキ時と異常時の動作について説明する。
(1)通常ブレーキ時の動作
通常ブレーキ時には、ブレーキペダル1が踏み込まれて踏力センサ2の検出信号がブレーキECU100に入力されると、ブレーキECU100は、図5に示すような駆動形態となるように各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動する。
通常ブレーキ時には、ブレーキペダル1が踏み込まれて踏力センサ2の検出信号がブレーキECU100に入力されると、ブレーキECU100は、図5に示すような駆動形態となるように各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12を駆動する。
具体的には、ブレーキECU100は、踏力センサ2の検出信号に基づいて、目標W/C圧演算部100aにて目標W/C圧の演算を行うと共に、目標W/C圧変化勾配演算部100bにて目標W/C圧変化勾配の演算を行う。そして、これらの演算結果に基づいて、リニア弁出力演算部100dにて、上述した手法によって差圧量を設定し、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRに流す電流を制御することで、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRで設定された差圧量が発生させられるようにする。
また、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電は共にONされ、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電も共にONされる。これにより、第1、第2常開弁SNO1、SNO2は共に遮断状態、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2は共に連通状態とされる。
ストローク制御弁SCSSに関しては、通電がONされる。このため、管路B、Dを通じて、ストロークシミュレータ4がセカンダリ室3bと連通状態となり、ブレーキペダル1が踏み込まれたときに、各ピストン3c、3dが移動しても、セカンダリ室3b内のブレーキ液がストロークシミュレータ4に移動することになる。したがって、ドライバがブレーキペダル1を踏み込んだときに踏み込みに応じた反力が得られ、かつ、M/C圧が高圧になり過ぎることでブレーキペダル1に対して硬い板を踏み込むような感覚(板感)が発生することなく、ブレーキペダル1が踏み込めるようになっている。
さらに、第1、第2モータ11、12に電流が流されることで、ポンプ7〜10によるブレーキ液の吸入・吐出が行われる。このようにして、ポンプ7〜10によるポンプ動作が行われると、各W/C6FR〜6RRに対してブレーキ液が供給される。
このとき、第1、第2常開弁SNO1、SNO2が遮断状態とされているため、ポンプ7〜10によるブレーキ液吐出により、ポンプ7〜10の下流側のブレーキ液圧、つまり各W/C6FR〜6RRのW/C圧が増加させられることになる。
また、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2が連通状態とされ、かつ、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRへの単位時間当たりの通電量がデューティ制御されているため、デューティ比に応じて各W/C6FR〜6RRのW/C圧が調整される。
そして、ブレーキECU100にて、各圧力センサ13〜16の検出信号に基づいて各車輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRに発生しているW/C圧をモニタリングし、第1、第2モータ11、12の通電量を調整することで第1、第2モータ11、12の回転数を制御すると共に、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRへの通電のON/OFFのデューティ比を制御することで、各W/C圧が所望の値となるようにする。
これにより、ブレーキペダル1に加えられた踏力に応じた目標制動力となるように、制動力が発生させられることになる。
(2)異常時のブレーキ動作
異常時には、ブレーキECU100から制御信号が出力できなくなるか、もしくは、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12が正常に駆動されない可能性がある。このため、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12すべてに関して、図5に示されるように通電がOFFされる。
異常時には、ブレーキECU100から制御信号が出力できなくなるか、もしくは、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12が正常に駆動されない可能性がある。このため、各種制御弁SCSS、SNO1、SNO2、SWC1、SWC2、SLFR、SLRL、SLFL、SLRRや第1、第2モータ11、12すべてに関して、図5に示されるように通電がOFFされる。
すなわち、第1、第2常開弁SNO1、SNO2への通電が共にOFFとなるため、これらは共に連通状態となる。第1、第2常閉弁SWC1、SWC2への通電も共にOFFとなるため、これらは共に遮断状態とされる。
また、第1〜第4リニア弁SLFR、SLRL、SLFL、SLRRも、すべて通電がOFFとなるため、すべて連通状態となる。ストローク制御弁SCSSも通電がOFFとなるため、ストロークシミュレータ4とセカンダリ室3bの間が遮断状態となる。
さらに、第1、第2モータ11、12への通電が共にOFFとなり、ポンプ7〜10によるブレーキ液の吸入・吐出も停止される。
このような状態になると、M/C3におけるプライマリ室3aは、管路A、E、G1を介して右前輪FRにおけるW/C6FRとつながった状態となり、セカンダリ室3bは、管路B、F、G3を通じて左前輪FLにおけるW/C6FLとつながった状態となる。
このため、ブレーキペダル1が踏み込まれ、加えられた踏力に応じてプッシュロッド等が押されることで、M/C3におけるプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられると、それが両前輪FL、FRのW/C6FL、6FRに伝えられる。これにより、両前輪FL、FRに対して制動力が発生させられることになる。
なお、このような異常時の作動において、前輪側の各W/C6FR、6FLのW/C圧が管路G1、G3に発生することになるが、逆止弁20、21を備えているため、このW/C圧がポンプ7、9に加わることによってポンプ7、9でのブレーキ液漏れが発生し、W/C圧が低下してしまうことを防ぐことが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置によれば、車体速度に基づいて目標W/C圧を変化させることで実際に発生させるW/C圧を設定し、車体速度が小さくなるほど目標W/C圧の変化勾配よりも実際に発生させるW/C圧の変化勾配が小さくなるように、実際に発生させるW/C圧を設定している。
具体的には、車体速度が第1しきい値を超えているときには、目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧と1:1で対応する差圧量となるように、各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定している。そして、車体速度が第1しきい値以下になると目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧の変化勾配が小さくなるような差圧量を設定し、その差圧量となるように各リニア弁SLFR〜SLRRに対して流す電流のON/OFFのデューティ比を設定している。
例えば、このようなデューティ比の設定を行った場合、車体速度の変化に対する目標W/C圧、リニア弁出力および減速度の変化のタイミングチャートは、図6のようになる。このように、車体速度が第1しきい値を超えている場合には、目標W/C圧と同じ変化勾配でリニア弁出力が設定され、第1しきい値以下になると目標W/C圧の変化勾配よりも小さな変化勾配となるようにリニア弁出力が設定される。
これにより、車体速度が遅いときに制動力が掛かり過ぎて大きな減速度が生じてしまうことがないため、ドライバに対して突発的に制動力が発生したという感覚を与えてしまうことを防止できる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、さらにブレーキの摩擦材(ブレーキパッドやブレーキシュー等)の速度依存性を考慮に入れて目標W/C圧を設定するものである。したがって、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の基本構成などに関しては、第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、さらにブレーキの摩擦材(ブレーキパッドやブレーキシュー等)の速度依存性を考慮に入れて目標W/C圧を設定するものである。したがって、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の基本構成などに関しては、第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
図7は、摩擦材の速度依存性を示したものである。この図に示されるように、摩擦材の摩擦係数は車体速度が第2しきい値(例えば5km/h〜10km/h、ここでは10km/hを例に挙げている)を超えるまで大きく、第2しきい値を超えるとほぼ一定の値になるという特性を示す。
しかしながら、ブレーキペダル1の操作量に対応する目標W/C圧の設定は、摩擦材の摩擦力が一定値であるということを前提として行われる。このため、車体速度が第2しきい値以下となった場合において、ブレーキペダル1の操作量に対応する目標W/C圧通りに各W/C6FR〜6RRにW/C圧を発生させたとすると、実際には摩擦材の摩擦力が前提としている値よりも大きくなるから、発生させられるトータルの摩擦力が期待する摩擦力よりも大きくなる。
したがって、本実施形態では、車体速度が第2しきい値以下になった場合には図7に示す特性に基づいて目標W/C圧を変化させることで実際に発生させるW/C圧を求め、リニア弁出力を調整する。このようにすれば、目標W/C圧を変化させることにより摩擦材にて得られるトータルの摩擦力を、摩擦材の摩擦力が一定値であるということを前提として期待するトータルの摩擦力に近づけることができ、摩擦材の速度依存性による影響を抑制することが可能となる。
例えば、本実施形態では、上述したリニア弁出力演算部100dに、図8に示すような目標W/C圧に対して実際に発生させるW/C圧の比の車体速度に対する関係を示したマップを記憶させてある。この関係は、例えば、車体速度が第2しきい値を超えているときの摩擦材の摩擦力を1として、車体速度毎の摩擦材の摩擦力の比を求め、その逆数を取ったものに相当している。このようなマップが記憶してあるため、リニア弁出力演算部100dは、そのマップを用いて、目標W/C圧演算部100aで求めた目標W/C圧に基づき、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRの差圧量を演算するようになっている。
図9は、本実施形態のように摩擦材の速度依存性を考慮に入れてリニア弁出力を設定する場合の車体速度の変化に対する目標W/C圧、リニア弁出力および減速度の変化を示したタイミングチャートである。この図に示すように、車体速度が第2しきい値以下になると、目標W/C圧に対して実際に発生させるW/C圧が小さな値とされるため、リニア弁出力が小さくなる。
以上説明したように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置によれば、車体速度が第2しきい値以下になった場合には摩擦材の車体速度依存性を考慮して目標W/C圧を変化させることで実際に発生させるW/C圧を求め、リニア弁出力を調整している。これにより、摩擦材の速度依存性による影響を抑制することが可能となり、よりブレーキフィーリングを向上させることが可能となる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して車両用ブレーキ制御装置の構成を一部変更したものであり、基本的には第1実施形態と同様の構成となっているため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して車両用ブレーキ制御装置の構成を一部変更したものであり、基本的には第1実施形態と同様の構成となっているため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図10は、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示したものである。この図に示されるように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置では、管路Gが2つの管路Ga、Gbに分岐されており、管路Ga(つまり、分岐点よりも下流かつ管路H1、H2の上流側)に第1常閉弁SWC1が備えられ、管路Gb(つまり、分岐点よりも下流かつ管路H3、H4の上流側)に第2常閉弁SWC2が備えられた構成としてある。
このような構成においても、車体速度が小さくなるほど目標W/C圧の増加勾配よりも実際に発生させるW/C圧の増加勾配が小さくなるように、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRに流す電流のデューティ比を設定することで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、このような構成によれば、異常時に第1常閉弁SWC1が遮断状態となっても、管路H1、H2の上流側が遮断状態となるだけであるため、ブレーキペダル1の踏み込みによってM/C3のプライマリ室3aにM/C圧が発生させられると、それが右前輪FRのW/C6FRだけでなく左後輪RLのW/C6RLにも伝えられるようにできる。同様に、異常時に第2常閉弁SWC2が遮断状態となっても、管路H3、H4の上流側が遮断状態となるだけであるため、ブレーキペダル1の踏み込みによってM/C3のセカンダリ室3bにM/C圧が発生させられると、それが左前輪FLのW/C6FLだけでなく右後輪RRのW/C6RRにも伝えられるようにできる。
このように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置によれば、異常時に4輪FR〜RRのすべてについて、W/C6FR〜6RRにW/C圧を発生させることが可能となる。これにより、よりバランス良い制動力を発生させることができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態に示した逆止弁20、21を設けていないが、仮にポンプ7、9からブレーキ液漏れが発生したとしても、各ポンプ7、9の上流に位置する第1、第2常閉弁SWC1、SWC2によってブレーキ液が止められることになるため、W/C圧の低下は起こらない。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対して車両用ブレーキ制御装置の構成を一部変更したものであり、基本的には第3実施形態と同様の構成となっているため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対して車両用ブレーキ制御装置の構成を一部変更したものであり、基本的には第3実施形態と同様の構成となっているため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図11は、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置の油圧回路構成を示したものである。この図に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置は、第1、第2実施形態のように第1、第2常閉弁SWC1、SWC2の2つを備えた構造ではなく、1つの常閉弁SWCのみを2つの配管系統の双方で共用した構造としている。
このような構成においても、車体速度が小さくなるほど目標W/C圧の増加勾配よりも実際に発生させるW/C圧の増加勾配が小さくなるように、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRに流す電流のデューティ比を設定することで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、このような構成としても、通常ブレーキ時には、4輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRのW/C圧を適宜調圧でき、異常時には、4輪FR〜RRのW/C6FR〜6RRに対してブレーキペダル1の踏み込みに応じてM/C3に発生したM/C圧を伝えることが可能となる。
さらに、本実施形態では、異常時に、1つの常閉弁SWCにより、2つの配管系統のすべての車輪FR〜RRに対してM/C圧を伝えることが可能となるため、システムをコンパクトな構成とすることが可能となる。
なお、本実施形態の車両用ブレーキ制御装置において、常閉弁SWCの駆動形態は、図5に示した第1実施形態の車両用ブレーキ制御装置における第1、第2常閉弁SWC1、SWC2と同様である。
(他の実施形態)
上記各実施形態では、目標W/C圧の変化勾配に対する実際に発生させるW/C圧の変化勾配の調整により行っている。しかしながら、これは目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧に対して実際に発生させるW/C圧を車体速度に応じて変化させる一手法を示したものであり、必ずしもリニア弁出力の調整によって行わなければならない訳ではない。
上記各実施形態では、目標W/C圧の変化勾配に対する実際に発生させるW/C圧の変化勾配の調整により行っている。しかしながら、これは目標W/C圧演算部100aで求められた目標W/C圧に対して実際に発生させるW/C圧を車体速度に応じて変化させる一手法を示したものであり、必ずしもリニア弁出力の調整によって行わなければならない訳ではない。
例えば、車体速度が第1しきい値を超えている場合と第1しきい値以下の場合で、第1、第2モータ11、12に流す電流の電流値(例えば、電流のデューティ比)を変化させることによっても、実際に発生させるW/C圧の変化勾配を変えることが可能である。すなわち、第1、第2モータ11、12に流す電流値が第1、第2モータ11、12の回転数に対応しており、第1、第2モータ11、12の回転数が第1〜第4ポンプ7〜10のブレーキ液吐出量に対応しているため、第1、第2モータ11、12に流す電流値に基づいて、実際に発生させるW/C圧の変化勾配を変えることが可能となる。なお、このように第1、第2モータ11、12に流す電流の電流値を演算する場合、上述したリニア弁出力演算部をモータ出力演算部に置き換えれば良い。
もちろん、リニア弁出力と第1、第2モータ11、12に流す電流の電流値のいずれか一方のみの調整でも構わないが、これら双方の調整を行うことも可能である。
また、上記実施形態では、車体速度が第1しきい値以下になったときに、目標W/C圧の変化勾配に対する実際に発生させるW/C圧の変化勾配の比が一定値となるようなマップ(図4参照)を用いているが、図12に示すように車体速度が小さくなるほどその比が小さくなるようなマップもしくはそれと等価な関係式を用いても構わない。
さらに、上記実施形態では、W/C圧の変化勾配の比を変化させるパラメータとして車体速度を用いているが、本発明の本来の目的である突発ブレーキ感を防止するという観点で考えると、ドライバのブレーキ操作速度がある程度速い場合、つまりブレーキペダル1の踏み込みが早い場合のみW/C圧の変化勾配の比を変化させるのが好ましい。したがって、低車速であったとしても、ブレーキ操作速度がゆっくりな場合(例えば、しきい値以下の場合)には、W/C圧の変化勾配の比を1のままとし、ドライバに対してブレーキの効き遅れ感を与えてしまうことを防止することも可能である。
上記各実施形態に示した車両用ブレーキ制御装置は、本発明を適用できるブレーキ構成例として示したものであり、図1等に示したものに限定されるものではなく、様々な形態で変更可能である。
また、上記各実施形態では、右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に本実施形態の車両用ブレーキ制御装置を適用した例について説明したが、前後配管など他の系統にも本発明を適用可能である。
また、上記各実施形態では、マスタリザーバ3fに繋がるのが管路Cの一本のみで、この管路Cを通じて第1、第2配管系統の双方へのブレーキ液の供給が行われるようにした。しかしながら、管路Cの他にもう一本備え、例えば管路Cにて第1配管系統へのブレーキ液の供給を行い、もう一本の管路にて第2配管系統へのブレーキ液の供給を行うようにしても良い。
また、上記各実施形態では、第1〜第4ポンプ7〜10による加圧が行えない異常時を考慮して、M/C3と第1、第2配管系統を接続した構成とし、通常ブレーキ時にはマスタリザーバ3fからブレーキ液が供給されるようにしている。しかしながら、これも単なる一例であり、M/C3と第1、第2配管系統が接続される形態でなくても良いし、M/C3自体が無いようなブレーキ構成であっても構わない。また、ブレーキ液の供給もマスタリザーバ3fからでなく、ブレーキ液を貯留できる他のリザーバから行われるようにしても良い。
さらに、上記実施形態では、フェールセーフを考慮して、第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRRを駆動しなくてもブレーキペダル1の踏み込みに基づいて発生させられたM/C圧がW/C6FL、6FR等に伝えられるようにしている。しかしながら、異常が発生した場所が第1〜第4リニア弁SLFR〜SLRR以外の部位であれば、これらを駆動することができるため、これらに通電を行い管路H1〜H4を遮断状態(もしくは上下流間に最大差圧が発生させられる状態)にできるようにすれば、上記と同様にM/C圧をW/C6FL、6FR等に伝えることが可能となる。このため、必ずしも第1、第2常閉弁SWC1、SWC2および常閉弁SWCを備えなければならない訳ではなく、図13に示す油圧回路構成に示されるように、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2および常閉弁SWCを備えない構造であっても構わない。
ただし、すべて機械的にフェールセーフが行えるようにするという意味では、第1、第2常閉弁SWC1、SWC2および常閉弁SWCが重要となる。
このため、図14に示す油圧回路構成のように、第1リニア弁SLFRと第3リニア弁SLFLを常閉型のリニア弁として構成しておけば、機械的にフェールセーフを行うことも可能となるため、より好ましい構造となる。勿論、第2、第4リニア弁SLRL、SLRRに関しても、常閉型のリニア弁としても構わない。
なお、ブレーキ操作部材としてブレーキペダル1を例に挙げたが、ブレーキレバーなどであっても構わない。
1…ブレーキペダル、2…踏力センサ、3…M/C、3f…マスタリザーバ、4…ストロークシミュレータ、5…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、6FL、6FR、6RL、6RR…W/C、7〜10…ポンプ、11、12…モータ、13〜18…圧力センサ、100…ブレーキECU、100a…目標W/C圧演算部、100b…目標W/C圧変化勾配演算部、100c…車体速度演算部、100d…リニア弁出力演算部、100e…リニア弁出力調整部、A〜F、G1〜G4、H1〜H4…管路、FL、FR、RL、RR…車輪、SCSS…ストローク制御弁、SLFL、SLFR、SLRR、SLRR…第1〜第4リニア弁、SNO1、SNO2…第1、第2常開弁、SWC…常閉弁、SWC1、SWC2…第1、第2常閉弁。
Claims (8)
- ドライバによって操作されるブレーキ操作部材(1)と、
前記ブレーキ操作部材の操作量を検出する操作量センサ(2)と、
2つの前輪(FR、FL)それぞれに対応して設けられた前輪用第1、第2ホイールシリンダ(6FR、6FL)、および、2つの後輪(RL、RR)それぞれに対応して設けられた後輪用第1、第2ホイールシリンダ(6RL、6RR)と、
ブレーキ液を貯留しているリザーバ(3f)と、
前記リザーバと前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダをつなぎ、前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダそれぞれに接続されるように4つに分岐された主管路(C、G、G1〜G4)と、
前記主管路のうち4つに分岐された部位(G1〜G4)それぞれに対して1つずつ配置され、前記リザーバに貯留されたブレーキ液を吸入・吐出して、前記前輪用第1、第2および後輪用第1、第2ホイールシリンダそれぞれを加圧する第1〜第4ポンプ(7〜10)と、
前記第1、第2ポンプ(7、8)により加圧される系統を第1配管系統として、該第1配管系統に備えられた前記第1、第2ポンプを駆動するための第1モータ(11)と、
前記第3、第4ポンプ(9、10)により加圧される系統を第2配管系統として、該第2配管系統に備えられた前記第3、第4ポンプを駆動するための第2モータ(12)と、
前記第1〜第4ポンプに並列的に配置され、前記リザーバへブレーキ液を返流する管路となる第1〜第4調圧回路(H1〜H4)と、
前記第1〜第4調圧回路にそれぞれ対応して配置された第1〜第4リニア弁(SLFR、SLRL、SLFL、SLRR)と、
前記操作量センサで検出された操作量に基づいて、前記第1〜第4リニア弁および前記第1、第2モータを駆動することで前記前輪用第1、第2および前記後輪用第1、第2ホイールシリンダに対してホイールシリンダ圧を発生させる制御手段(100)と、を備えた車両用ブレーキ制御装置であって、
前記制御手段は、
前記操作量センサに基づいて前記ブレーキ操作部材が操作されたことを検出したときに、前記操作量センサにて検出された操作量に対応する目標ホイールシリンダ圧(P(n))を求める目標ホイールシリンダ圧演算部(100a)と、
前記目標ホイールシリンダ圧の変化勾配(ΔP/ΔT)を演算する目標ホイールシリンダ圧変化勾配演算部(100b)と、
車体速度の演算を行う車体速度演算部(100c)と、
前記車体速度演算部で演算された前記車体速度に基づいて前記目標ホイールシリンダ圧を変化させることで実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定し、前記車体速度が小さくなるほど前記目標ホイールシリンダ圧の変化勾配よりも前記実際に発生させるホイールシリンダ圧の変化勾配が小さくなるように、前記実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定する実ホイールシリンダ圧設定部(100d)と、を備え、
前記実際に発生させるホイールシリンダ圧に基づいて、前記第1〜第4リニア弁および前記第1、第2モータを駆動することを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。 - 前記実ホイールシリンダ圧設定部は、前記車体速度が第1しきい値を超えている場合には前記目標ホイールシリンダ圧をそのまま前記実際に発生させるホイールシリンダ圧として設定し、前記第1しきい値以下の場合に前記車体速度が小さくなるほど前記目標ホイールシリンダ圧の変化勾配よりも前記実際に発生させるホイールシリンダ圧の変化勾配が小さくなるように、前記実際に発生させるホイールシリンダ圧を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ制御装置。
- 前記実ホイールシリンダ圧設定部は、前記2つの前輪と前記2つの後輪それぞれに備えられる摩擦材の車体速度に対する摩擦係数の変化に対応して、前記車体速度が小さくなるほど前記目標ホイールシリンダ圧に対して前記実際に発生させるホイールシリンダ圧を小さく設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ブレーキ制御装置。
- 前記実ホイールシリンダ圧設定部は、前記車体速度が第2しきい値以下になったときにのみ、前記摩擦材の車体速度に対する摩擦係数の変化に対応して、前記車体速度が小さくなるほど前記目標ホイールシリンダ圧に対して前記実際に発生させるホイールシリンダ圧を小さく設定することを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ制御装置。
- 前記第1〜第4リニア弁が発生させる差圧量が前記実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、前記第1〜第4リニア弁に対して流す電流値を演算するリニア弁出力演算部(100d)を有し、前記実ホイールシリンダ圧設定部は該リニア弁出力演算部に備えられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ制御装置。
- 前記リニア弁出力演算部は、前記第1〜第4リニア弁が発生させる差圧量が前記実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、前記第1〜第4リニア弁に対して流す電流のデューティ比を演算することを特徴とする請求項5に記載の車両用ブレーキ制御装置。
- 前記第1、第2モータの回転数が前記実際に発生させるホイールシリンダと対応した値となるように、前記第1、第2モータに流す電流値を演算するモータ出力演算部を有し、前記実ホイールシリンダ圧設定部は該モータ出力演算部に備えられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ制御装置。
- 前記モータ出力演算部は、前記第1、第2モータの回転数が前記実際に発生させるホイールシリンダ圧と対応した値となるように、前記第1、第2モータに対して流す電流のデューティ比を演算することを特徴とする請求項7に記載の車両用ブレーキ制御装置。
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