JP2007216354A - 高硬度材の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

高硬度材の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】高硬度材の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】 工具基体の表面に、特定の組成式;(Ti1−XCr)C1−Y を満足するTiとCrの複合炭窒化物層からなる下地層、Ti炭窒化物層からなる下部層、炭酸化チタン層および炭窒酸化チタン層のうちのいずれか1層、または両層からなる層間密着層、Al層からなる上部層を、工具基体側から順に化学蒸着で形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、上記Ti炭窒化物層は、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて測定した構成原子共有格子点分布グラフで構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60%以上である事を示すTiCN層で構成する。
【選択図】図3

Description

この発明は、特に、合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材等のような高硬度材の高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来の表面被覆サーメット製切削工具として、炭化タングステン基(以下、WC基で示す)超硬合金または炭窒化チタン基(以下、TiCN基で示す)サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下地層として、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式;(Ti1−XCr)C1−Y (ただし、原子比で、X:0.01〜0.1、Y:0.35〜0.55)を満足するTiとCrの複合炭窒化物(以下、(Ti,Cr)CNで示す)層、
(b)下部層としてTi炭窒化物層、
(c)上部層として酸化アルミニウム層、かつ、下部層と上部層の合計平均層厚は10〜30μm、
以上(a)〜(c)で構成された下地層、下部層及び上部層からなる硬質被覆層を、工具基体側から順に化学蒸着で形成した表面被覆サーメット製切削工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
特開平10−244405号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材等のような高硬度材の高速断続切削加工、すなわち切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し機械的衝撃の加わる高速断続切削、に用いた場合、硬質被覆層の下部層を構成するTi炭窒化物層の高温強度が不十分となるため、前記の機械的衝撃に対して満足に対応することができず、この結果硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層の耐チッピング性向上をはかるべく、これの下部層を構成するTi炭窒化物(以下、TiCNでしめす)層、すなわちTi化合物層のうちで比較的高い高温硬さと高温強度を有し、かつ図1(a)に模式図で示される通り、格子点にTi、炭素、および窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造(なお、図1(b)は(011)面で切断した状態を示す)を有するTiCN層に着目し、研究を行った結果、
(a)従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する下部層としてのTiCN層は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CHCN:0.5〜3%、N2:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件(通常条件という)で蒸着形成されるが、これを、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:0.1〜0.8%、CHCN:0.05〜0.3%、Ar:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:930〜1000℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件、すなわち上記の通常条件に比して、反応ガス組成では、TiClおよびCHCNを相対的に低く、かつN2ガスに代ってArガスを添加し、さらに雰囲気温度を相対的に高くした条件(反応ガス組成調整高温条件)で蒸着形成すると、この結果の反応ガス組成調整高温条件で形成したTiCN層(以下、「改質TiCN層」という)は、高温強度が一段と向上し、すぐれた耐機械的衝撃性を具備するようになることから、硬質被覆層の下地層が前記(Ti,Cr)CN層、下部層が前記改質TiCN層、上部層が前記Al23層、からなる被覆サーメット工具は、特に、合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材等のような高硬度材の激しい機械的衝撃を伴う高速断続切削加工でも、前記硬質被覆層はすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
(b)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の下部層を構成するTiCN層(以下、「従来TiCN層」という)と上記(a)の改質TiCN層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2(a),(b)に概略説明図で例示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角(図2(a)には前記結晶面のうち(001)面の傾斜角が0度、(011)面の傾斜角が45度の場合、同(b)には(001)面の傾斜角が45度、(011)面の傾斜角が0度の場合を示しているが、これらの角度を含めて前記結晶粒個々のすべての傾斜角)を測定し、この場合前記結晶粒は、上記の通り格子点にTi、炭素、および窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表し、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係でNの上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した場合、いずれのTiCN層もΣ3に最高ピークが存在するが、前記従来TiCN層は、図4に例示される通り、Σ3の分布割合が30%以下の相対的に低い構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、前記改質TiCN層は、図3に例示される通り、Σ3の分布割合が60%以上のきわめて高い構成原子共有格子点分布グラフを示し、この高いΣ3の分布割合は、反応ガスを構成するTiCl、CHCNおよびArの含有量、さらに雰囲気反応温度によって変化すること。
(c)上記の改質TiCN層は、TiCN自体が具備する高温硬さと高温強度に加えて、上記従来TiCN層に比して一段と高い高温強度を有するので、これを硬質被覆層の下部層として蒸着形成してなる被覆サーメット工具は、同上部層であるAl23層が具備するすぐれた高温硬さおよび耐熱性と相俟って、特に高硬度材の高速断続切削加工に用いた場合にも、同じく前記従来TiCN層を蒸着形成してなる従来被覆サーメット工具に比して、硬質被覆層が一段とすぐれた耐チッピング性を発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式;(Ti1−XCr)C1−Y (ただし、原子比で、X:0.01〜0.1、Y:0.35〜0.55)を満足するTiとCrの複合炭窒化物層((Ti,Cr)CN層)からなる下地層、
(b)2.5〜15μmの合計平均層厚を有するTi炭窒化物層(TiCN層)からなる下部層、
(c)0.1〜1μmの平均層厚を有する、炭酸化チタン層(TiCO層)および炭窒酸化チタン層(TiCNO層)のうちのいずれか1層、または両層からなる層間密着層、
(d)1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層(Al23層)からなる上部層、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を、工具基体側から下地層、下部層、層間密着層及び上部層の順で化学蒸着により形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
上記(b)のTi炭窒化物層(TiCN層)は、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にTi、炭素、および窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係で上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示すTi炭窒化物層、
で構成したことを特徴とする高硬度材の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層について、上記の通りに数値限定した理由を以下に説明する。
(a)(Ti,Cr)CN層(下地層)
組成式;(Ti1−XCr)C1−Y (ただし、原子比で、X:0.01〜0.1、Y:0.35〜0.55)を満足するTiとCrの複合炭窒化物層((Ti,Cr)CN層)は、複合炭窒化物中のTi成分が高温硬さの向上に寄与し、また、同Cr成分が高温強度の向上に寄与し、さらに、C成分には層の硬さを向上させ、N成分には層の強度を向上させる作用があり、したがって、層中のCr成分の含有割合(X値)が0.01未満あるいは層中のN成分の含有割合(Y値)が0.35未満では、下地層に所望の高温強度を付与することができず、一方、X値が0.1を越えたり、Y値が0.55を越えたりすると、所望の高温硬さを確保することが難しくなることから、X値を0.01〜0.1に、また、Y値を0.35〜0.55に定めた。X値、Y値を上記のとおり定めたことにより、(Ti,Cr)CN層は、すぐれた高温硬さとすぐれた高温強度を備えた下地層となるが、同時に、上記組成割合の(Ti,Cr)CN層は、熱膨張特性がTiCN層よりも大きいため、下地層上に改質TiCN層からなる下部層を成膜した際に、下部層に圧縮残留応力を付与し、改質TiCN層(下部層)へのクラックの導入を抑制することができ、その結果として、改質TiCN層からなる下部層の高温強度をさらに向上させることができる。ただ、(Ti,Cr)CN層からなる下地層の平均層厚が0.5μm未満では、すぐれた高温硬さとすぐれた高温強度を期待することはできず、一方、その平均層厚が2.0μmを越えると偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生しやすくなり、耐摩耗性が低下することから、下地層の平均層厚を0.5〜2.0μmと定めた。
(b)改質TiCN層(下部層)
上記の改質TiCN層の構成原子共有格子点分布グラフにおけるΣ3の分布割合は、上記の通り反応ガスを構成するTiCl、CHCNおよびArの含有量、さらに雰囲気反応温度を調整することによって、60%以上とすることができるが、この場合Σ3の分布割合が60%未満では、高速断続切削加工で、硬質被覆層にチッピングが発生しない程度にすぐれた高温強度向上効果を確保することができず、したがってΣ3の分布割合は高ければ高いほど望ましい。ただ、Σ3の分布割合を80%を越えて高くすることは層形成上困難であることから、実施上のΣ3の分布割合の上限値は80%程度となる。このように改質TiCN層は、下地層として(Ti,Cr)CN層を設けたことと相俟って、通常条件で蒸着形成した従来TiCN層のもつ高温硬さと高温強度に加えて、さらに、一段とすぐれた高温強度を有するようになるが、その平均層厚が2.5μm未満では所望のすぐれた高温強度向上効果を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を2.5〜15μmと定めた。
(c)TiCO層,TiCNO層(層間密着層)
TiCO層およびTiCNO層は、下部層である改質TiCN層および上部層であるAl23層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その平均層厚が0.1μm未満では、所望の密着性を確保することができず、一方前記のすぐれた密着性は1μmの平均層厚で十分確保できることから、その平均層厚を0.1〜1μmと定めた。
(d)Al23層(上部層)
Al23層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明の被覆サーメット工具は、合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材のような高硬度材の機械的熱的衝撃がきわめて高い高速断続切削でも、硬質被覆層の下部層である改質TiCN層が、特に一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で48時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで48時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、以下の手順で、下地層、下部層、層間密着層および上部層をそれぞれ蒸着形成した。
(a)まず、硬質被覆層の下地層である(Ti,Cr)CN層を、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:3〜10%の範囲内の所定量、CrF:0.1〜0.4%の範囲内の所定量、CHCN:0.5〜3%の範囲内の所定量、N:20〜40%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:6〜20kPaの範囲内の所定圧力、
の表3に示される条件で、かつ、表6に示される組み合わせと目標平均層厚で蒸着形成し、
(b)つぎに、下部層である改質TiCN層を、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:0.1〜0.8%の範囲内の所定量、CHCN:0.05〜0.3%の範囲内の所定量、Ar:10〜30%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:930〜1000℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の表4に示される条件で、かつ、表6に示される組み合わせと目標平均層厚で蒸着形成し、
(c)ついで、層間密着層としてのTiCO層およびTiCNO層のいずれか、または両方を、表3に示される条件で、かつ、表6に示される組み合わせと目標平均層厚で蒸着形成し、
(d)最後に、上部層としてのAl23層を、表3に示される条件で、かつ、表6に示される組み合わせと目標平均層厚で蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の下部層である従来TiCN層を、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%の範囲内の所定量、CHCN:0.5〜3%の範囲内の所定量、N2:10〜30%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:6〜20kPaの範囲内の所定圧力、
の表5に示される条件で、かつ、表7に示される組み合わせと目標平均層厚で蒸着形成し、従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。なお、下地層、層間密着層および上部層の形成条件(即ち、上記手順(a)、(c)、(d))は、本発明被覆サーメット工具1〜13の場合と全く同様である。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具と従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の下部層を構成する改質TiCN層および従来TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記構成原子共有格子点分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係で上限値を28とする)に占める分布割合を求めることにより作成した。
この結果得られた各種の改質TiCN層および従来TiCN層の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、ΣN+1全体(Nは2〜28の範囲内のすべての偶数)に占めるΣ3の分布割合をそれぞれ表6,7にそれぞれ示した。
上記の各種の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、表6,7にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の改質TiCN層は、いずれもΣ3の占める分布割合が60%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具の従来TiCN層は、いずれもΣ3の分布割合が30%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示すものであった。
なお、図3は、本発明被覆サーメット工具6の改質TiCN層の構成原子共有格子点分布グラフ、図4は、従来被覆サーメット工具6の従来TiCN層の構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ示すものである。
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有する下部層、層間密着層および上部層からなることが確認された。また、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、
被削材:JIS・SKD8の焼入れ材(硬さ:HRC53)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:240 m/min、
切り込み:0.7 mm、
送り:0.12 mm/rev、
切削時間:7 分、
の条件(切削条件A)での合金工具鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は130m/min)、
被削材:JIS・SKT6の焼入れ材(硬さ:HRC58)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:230 m/min、
切り込み:0.65 mm、
送り:0.13 mm/rev、
切削時間:7 分、
の条件(切削条件B)での合金工具鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は120m/min)、
被削材:JIS・SUJ3の焼入れ材(硬さ:HRC55)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:220 m/min、
切り込み:0.68 mm、
送り:0.13 mm/rev、
切削時間:7 分、
の条件(切削条件C)での軸受鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は100m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Figure 2007216354
Figure 2007216354
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Figure 2007216354
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表6〜8に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の下部層が、Σ3の分布割合が60%以上の構成原子共有格子点分布グラフを示す改質TiCN層で構成され、機械的衝撃がきわめて高い合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材のような高硬度材の高速断続切削でも、前記改質TiCN層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の下部層が、Σ3の分布割合が30%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示す従来TiCN層で構成された従来被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも高速断続切削では硬質被覆層の耐機械的衝撃性が不十分であるために、硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材等の高硬度材の特に高い高温強度が要求される高速断続切削でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層の下部層を構成するTiCN層が有するNaCl型面心立方晶の結晶構造を示す模式図である。 硬質被覆層の下部層を構成するTiCN層における結晶粒の(001)面および(011)面の傾斜角の測定態様を示す概略説明図である。 本発明被覆サーメット工具6の硬質被覆層の下部層を構成する改質TiCN層の構成原子共有格子点分布グラフである。 従来被覆サーメット工具6の硬質被覆層の下部層を構成する従来TiCN層の構成原子共有格子点分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)0.5〜2.0μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式;(Ti1−XCr)C1−Y (ただし、原子比で、X:0.01〜0.1、Y:0.35〜0.55)を満足するTiとCrの複合炭窒化物層からなる下地層、
    (b)2.5〜15μmの合計平均層厚を有するTi炭窒化物層からなる下部層、
    (c)0.1〜1μmの平均層厚を有する、炭酸化チタン層および炭窒酸化チタン層のうちのいずれか1層、または両層からなる層間密着層、
    (d)1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる上部層、
    以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を、工具基体側から下地層、下部層、層間密着層及び上部層の順で化学蒸着により形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
    上記(b)のTi炭窒化物層は、
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にTi、炭素、および窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(NはNaCl型面心立方晶の結晶構造上2以上の偶数となる)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体(ただし、頻度の関係で上限値を28とする)に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示すTi炭窒化物層、
    で構成したことを特徴とする高硬度材の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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